説明

タイヤユニフォミティ試験装置及びタイヤユニフォミティ試験方法

【課題】タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正転時から逆転時への切り換えを行った直後の計測波形から正確なタイヤユニフォミティを求める。
【解決手段】本発明の試験装置1は、タイヤTを装着可能なスピンドル軸3と、スピンドル軸3に装着されたタイヤTをドラム5の外周面に押し当てるドラム機構6とを備えており、ドラム機構6は、タイヤTの回転を反転させる際に、ドラム5をタイヤTとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤTの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラム5を前進させて負荷荷重をタイヤTに与えることが可能に構成され、ドラム機構6によるタイヤTの回転の反転動作後に計測されたユニフォミティ波形に存在するシフト勾配αをなくすように、当該ユニフォミティ波形を補正する補正部9と、補正部9で補正されたユニフォミティ波形からフォースバリエーションを求める測定部8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのユニフォミティを計測可能なタイヤユニフォミティ試験装置及びこの試験装置を用いて行うタイヤユニフォミティ試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製品上がりのタイヤに対してはユニフォミティ(均一性)などを計測して良否を判定するユニフォミティ検査が行われている。例えば乗用車用のタイヤについてユニフォミティを計測する場合を例に取れば、このタイヤ試験は概ね特許文献1に示される試験装置を用いて以下のような手順で行われる。
すなわち、特許文献1のタイヤユニフォミティ試験装置でタイヤ試験を行う場合は、まず検査ラインの上流から流れてきたタイヤを上下に分割されたリムで挟み込む。そして、次にビードシート系統の配管を用いてタイヤを短時間で膨らます。次に、このタイヤユニフォミティ試験装置では、切替弁を用いて圧縮空気の流路をビードシート系統の配管からテスト系統の配管に切り替える。そして、テスト圧に保持されたタイヤにドラムを押し付けて正転させ、ドラムに設けた荷重計測器を用いてタイヤに発生する反発力を計測することにより、タイヤのユニフォミティを計測する。その後、タイヤを逆転させて、逆転時でのタイヤのユニフォミティも計測する。
【0003】
特許文献2は、特許文献1と同様なタイヤ試験機を開示するが、タイヤ反転時に負荷ドラムの接触面をタイヤトレッド面から後退させて、タイヤ停止時におけるタイヤに作用する圧力を軽減する方法を開示している。
一方、特許文献3には、タイヤユニフォミティ試験装置で得られた結果(波形信号)に対して、タイヤ1回転の力の変動波形のサンプリング値と次回転目のサンプリング値の差と、タイヤ1回転の周期とから、タイヤ1回転の間のウオーミングアップ特性による力の変動波形のシフト勾配を求め、該勾配がゼロになるよう力の変動波形を補正し、該補正された力の変動波形からフォースバリエイションを求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−95057号公報
【特許文献2】特開平2−223843号公報
【特許文献2】特開平6−265444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたタイヤユニフォミティ試験装置を用いて、タイヤ正転時及びタイヤ逆転時のタイヤユニフォミティを計測するに際しては、負荷ドラムが一定方向に回転している状態から逆転させる時に、負荷ドラムは瞬間的に回転停止状態となる。タイヤには一定の圧力が作用している状態で、タイヤが回転停止状態になると、負荷ドラムの圧力により生じている凹みが残留凹みとなる。この残留凹みはタイヤのゴム材料の粘弾性特性によるものである。
【0006】
図4に示す様に、残留凹みは、元の状態に復元するまでには時間がかかり、この状態でユニフォミティを測定するとユニフォミティの測定精度に大きく影響することが明らかとなっている(特許文献2を参照)。そこで、タイヤの復元を待ちユニフォミティの波形が安定してから計測する必要があり、その分、時間がかかるという問題がある。
この問題を解決する方法として、特許文献2は、タイヤ反転時に負荷ドラムの接触面をタイヤトレッド面から後退させて、タイヤ停止時におけるタイヤに作用する圧力を軽減するようにしている。
【0007】
しかしながら、特許文献2の技術を採用した場合、新たな問題が発生することが明らかとなっている。
すなわち、正転試験時の終了後、ドラムを後退させると、負荷ドラムによる圧力で生じるタイヤの凹みがなくなる為に、タイヤ内の体積が増加する。その結果、タイヤ内の圧力は低下する。すると、タイヤユニフォミティ試験装置に備えられた空気圧回路(特に、圧力調整弁)の働きにより、タイヤ内を所定の試験圧力にしようと、タイヤ内部に圧縮空気が送り込まれる。
【0008】
その後、逆転試験のために負荷ドラムを所定の位置(正転時と同じ位置)にまで前進させるが、この時、タイヤには負荷ドラムの圧力により再度凹みが生じてタイヤ内体積(内容積)が減少する。体積の減少によりタイヤ内圧が瞬間的に増加する。このタイヤ内圧が圧力調整弁により所定の試験圧力に安定するのに時間を要する。
図3には、このときのタイヤ内圧の変化、測定されたRFV(ラジアルフォースバリエーション)の波形が示されている。この図に示す如く、試験圧力が安定しないシフトする状態では、RFVすなわちタイヤユニフォミティの波形もグラフ上で上下方向にシフトして安定せず、正しいフォースバリエーションを求めることが出来ない。圧力が安定していてRFVの波形が安定している領域での波形振幅値RFV0が求めたい値の正値であって、シフト勾配がある段階(グラフ全体が傾いている段階)では、計測タイミングによって、RFV1の様に大きく見積もったり、RFV2の様に小さく見積もることがある。
【0009】
特許文献3には、タイヤ1回転の間の変動波形のシフト勾配をシフト量が一定と仮定して求め、この勾配がゼロになるよう力の変動波形を補正することは開示されている。しかしながら、ドラム前進・後退により生じるデータシフトは、タイヤ回転の数回転分に亘ることが多くシフト量が一定とも限らないため、単純に適用することは困難である。特許文献3に基づくシフト補正計算が悪影響を及ぼす場合すらあると思われる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正転時から逆転時への切り換えを行った直後の計測波形から正確なタイヤユニフォミティ、特にタイヤ半径方向の力の変動(RFV)を精度良く求めることができるタイヤユニフォミティ試験装置及びタイヤユニフォミティ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のタイヤ検査装置は、タイヤを装着可能なスピンドル軸と、ドラムを回転自在に支持すると共に前記スピンドル軸に装着されたタイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置において、前記ドラム機構は、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成されており、前記ドラム機構によるタイヤの回転の反転動作後に計測されたユニフォミティ波形に存在するシフト勾配αをなくすように、当該ユニフォミティ波形を補正する補正部と、前記補正部で補正されたユニフォミティ波形から、フォースバリエーションを求める測定部とが備えられたことを特徴とする。
好ましくは、前記補正部に代えて、第2の補正部が備えられており、前記第2の補正部は、ユニフォミティ波形の計測開始時より早い時間からユニフォミティ波形を記録するように構成され、前記早い時間からのユニフォミティ波形より得られたシフト勾配α'をなくすように、早い時間からのユニフォミティ波形を補正するように構成されているとよい。
【0012】
また、本発明のタイヤユニフォミティ試験方法は、タイヤを装着可能なスピンドル軸と、回転可能なドラムを前記タイヤの外周に押し当てるドラム機構とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置におけるタイヤユニフォミティ試験方法において、前記ドラム機構を、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成しておき、前記ドラム機構によるタイヤの回転の反転動作後に計測されたユニフォミティ波形に存在するシフト勾配αをなくすように、当該ユニフォミティ波形を補正し、補正されたユニフォミティ波形から、フォースバリエーションを求めることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記ユニフォミティ波形の計測開始時より早い時間からユニフォミティ波形を記録するようにしておき、前記シフト勾配αをなくすようなユニフォミティ波形の補正に代えて、前記早い時間からのユニフォミティ波形より得られたシフト勾配α'をなくすように、早い時間からのユニフォミティ波形を補正するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤユニフォミティ試験装置及びタイヤユニフォミティ試験方法によれば、タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正転時から逆転時への切り換えを行った直後の計測波形から正確なタイヤユニフォミティを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るタイヤ検査装置の正面図である。
【図2】タイヤ正転時〜逆転時における、タイヤ回転数、ドラム位置、ドラム荷重、RFV波形(補正無し及び補正有り)、タイヤ内圧の変化をそれぞれ示した図である。
【図3】従来のタイヤ検査装置において、タイヤ正転時〜逆転時にかけてのRFV波形とタイヤ内圧との変化を示した図である。
【図4】従来のタイヤ検査装置において、タイヤを逆転させた状況を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明に係るタイヤユニフォミティ試験装置及び試験方法の第1実施形態を図面に基づき、説明する。
図1に示されるように、第1実施形態のタイヤユニフォミティ試験装置1は、軸心が上下を向くように配備された円筒状のフレーム本体2と、このフレーム本体2内に軸受部を介して上下軸回りに回転自在となるように取り付けられたスピンドル軸3と、を有している。スピンドル軸3は、フレーム本体2の上端から上方へ突出状とされており、スピンドル軸3の上方突出部分にタイヤTを固定する上下一対のリム4,4が設けられている。さらに、リム4で固定されたタイヤTの側方には、その外周面に模擬路面6aが形成されたドラム5(負荷ドラム)が備えられている。このドラム5はドラム機構6に備えられている。
【0017】
ドラム機構6は、ドラム5を上下軸回りに駆動回転できるように支持すると共に、水平に移動してタイヤTに模擬路面6aを接触できる構成となっている。本実施形態のドラム機構6は、タイヤTの回転を反転させる際に、ドラム5をタイヤTとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤTの回転を正転(一方向回転)から逆転(他方向回転)へと切り換え、その後、ドラム5を前進させて負荷荷重をタイヤTに与えることが可能に構成されている。
【0018】
また、タイヤ試験を行う際には、タイヤTを所定の空気圧に調整しておく必要がある。そこで、タイヤユニフォミティ試験装置1には、タイヤT内に圧縮空気を供給したりタイヤTから圧縮空気を排出したりしてタイヤT内の空気圧を調整する空気圧回路7が配備されている。
この空気圧回路7は、2系統の供給配管系を備えている。その一つはタイヤTを短時間で膨らまし、タイヤTをリム4に装着するビードシート系統の配管であり、もう一つがタイヤTを試験する際に用いられるテスト系統の配管である。これらのビードシート系統の配管とテスト系統の配管とを切替弁を用いて切り替え可能となっている。また、空気圧回路7には、タイヤT内の圧力を一定とするために圧力調整弁が設けられている。
【0019】
さらに、タイヤユニフォミティ試験装置1では、スピンドル軸3を支持する軸受部に、ロードセルで構成された荷重検出器が配備されていいる。この分力計で計測された力成分は、ユニフォミティ測定部8(測定部)にユニフォミティ波形(以降、RFV波形と表記)の信号として送られる。図2、図3には、RFV波形の信号の例が示されている。
加えて、本実施形態の場合、ドラム機構6によるタイヤTの回転の反転動作後に計測されたRFV波形に存在するシフト勾配αをなくすように、当該RFV波形を補正する補正部9(第1の補正部)が備えられている。
【0020】
この補正部9の詳細を以下説明する。
タイヤT正転試験時の終了後、ドラム機構6によりドラム5を後退させると、ドラム5による圧力で生じるタイヤTの凹みがなくなる為に、タイヤT内の体積(内容積)が増加する。その結果、タイヤT内の圧力は低下する。すると、タイヤユニフォミティ試験装置1に備えられた空気圧回路7(特に、圧力調整弁)の働きにより、タイヤT内を所定の試験圧力にしようと、タイヤT内部に圧縮空気が送り込まれる。その後、逆転試験のためにドラム5を所定の位置(正転時と同じ位置)にまで前進させるが、この時、タイヤTにはドラム5の圧力により再度凹みが生じてタイヤT内容積が減少する。容積の減少により、図2(e)、図3(b)に示す如く、タイヤT内圧が瞬間的に増加する。
【0021】
図2(d)、図3(a)には、タイヤT逆転時に測定されたRFV波形(従来計測法での波形)が示されている。この図に示す如く、タイヤT内の圧力が安定しない状態では、RFV波形もグラフ上で上下方向に移動(シフト)して安定せず、正しいフォースバリエーションを求めることが出来ない。
補正部9は、このようなシフト勾配αをなくすように、RFV波形を補正するものである。
【0022】
この補正部9ならびにユニフォミティ測定部8は、コンピュータ等で構成されている。
以下、補正部9の作動態様を、タイヤユニフォミティ試験装置1でのユニフォミティ計測の手順と併せて説明する。
まず、このタイヤユニフォミティ試験装置1でユニフォミティ計測を行う場合は、まず検査ラインの上流から流れてきたタイヤTを上下に分割されたリム4,4で挟み込む。そして、次に、空気圧回路7のビードシート系統の配管を用いてタイヤTを短時間で膨らます。このときタイヤTに供給される圧縮空気の空気圧は、タイヤT試験時のテスト圧よりも高圧(例えば、約0.4MPa)とされるのが一般的であり、タイヤTはこのテスト圧に圧力上昇時間も含めて1秒程度に亘り保持される。
【0023】
次に、このタイヤユニフォミティ試験装置1では、切り替え弁を用いて圧縮空気の流路をビードシート系統の配管から、空気圧回路7のテスト系統の配管に切り替える。このテスト系統の配管の途中には圧力調整弁が設けられており、高圧の圧縮空気をテスト圧(例えば、約0.2MPa)に減圧・圧力制御が可能となっている。それゆえ、テスト系統の配管を通じて圧縮空気を供給することでタイヤT内の空気圧がテスト圧に調整される。そして、テスト圧に保持されたタイヤTにドラム5を押付けて「正回転」させ、荷重検出器を用いてタイヤTに発生する反発力を計測することにより、タイヤTのRFV波形が計測される。
【0024】
次に、タイヤTを「逆回転」させRFV波形を計測する。
まず、タイヤT正転中において、タイヤT回転数を変化させる直前にドラム位置の後退を開始し、回転数を低下させると同時にドラム5を後退させていく。このドラム後退に伴いドラム荷重が低下するようになる。ドラム5の後退量は、タイヤTとドラム5との間でスリップが生じない程度にドラム荷重が残る量とすることが好ましい。なぜならば、ドラム5の回転は、モータ駆動のタイヤ軸からタイヤTを介してドラム5に伝えられているため、ドラム5とタイヤTの接触圧力が小さいと、ドラム回転の減速・加速時の慣性力によりタイヤTがスリップする可能性があるからである。
【0025】
その後、タイヤTの回転数が0、すなわちドラム5の回転が停止したタイミングで、ドラム5荷重が最小となる様にドラム位置を制御する。このドラム位置において、今度はタイヤTを逆転し始め、タイヤTが逆転方向に加速する時にドラム5を徐々に前進させ、タイヤT回転数が所定の試験回転数になるタイミングで、ドラム5が所定の試験位置に達するようにする。その上で、タイヤTを逆回転し、逆回転におけるユニフォミティ波形を計測するようにする。
【0026】
図2(a)〜図2(e)には、タイヤTを正転から逆転させる際における、タイヤ回転数、ドラム位置、ドラム荷重、RFV波形、タイヤ内圧の変化が示されている。図2(d)のRFV波形は、ユニフォミティ計測部で計測されたものである。
図2から明らかなように、タイヤT反転時にドラム後退・前進動作を行うと、前進完了後にタイヤ内圧力が大幅に増加し、その圧力が試験圧力にまで戻るのにほぼ直線的に減少する。この間、RFV波形もある一定の傾きを持ってシフトする。このシフト量(シフト勾配α)は、計測されたRFV波形から計算できるので、得られたシフト勾配αを基に当該RFV波形のシフト量を補正すれば、正しいRFV波形を求めることが出来る。
【0027】
補正部9にて実施されるRFV波形の補正は、以下の通りである。
まず、図2(d)に示すように、RFV波形の計測は通常、60rpmのタイヤT回転の1回転分に相当する1秒間の波形が採取される。その1秒間のデータで分析が行われる。この1秒において2個のRFVの実測データ(点データ)があれば、シフト勾配αの算出が可能となる。
【0028】
図2(d)に示すRFV波形において、計測データの1秒間の最初のデータをRFV0s、最後のデータをRFV1sとおくと、シフト勾配αは式(1)で求められる。
α=(RFV1s−RFV0s)/1 (1)
式(1)で得られたシフト勾配αを用いることで、RFV(t)の補正値は、式(2)で表される。ここで、tは計測データの時間情報である。
【0029】
RFV'(t)=RFV(t)−αt (2)
式(2)を図2(d)に適用すると、図2(f)となる。図2(f)に示されるRFV波形においては、RFV波形のpeak to peakや1次ハーモニック成分などをシフトの影響を排除して精度良く求めることができる。
以上まとめれば、本実施形態のタイヤユニフォミティ試験装置1において、ドラム機構6を、タイヤTの回転を反転させる際に、ドラム5をタイヤTとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤTの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラム5を前進させて負荷荷重をタイヤTに与えるようにし、ドラム機構6によるタイヤTの回転の反転動作後に計測されたRFV波形に存在するシフト勾配αをなくすように、RFV波形を補正し、補正されたRFV波形から、RFVを求めることにより、タイヤ正転時から逆転時への切り換えを行った直後の計測波形から正確なタイヤTのユニフォミティ、特にRFVを精度良く求めることができるようになる。
【0030】
また、タイヤTの回転の反転動作後のタイヤT圧力が安定しない状態で、ユニフォミティ計測ができるようになるため、計測時間の短縮が図れ、生産性の向上に寄与できるものとなる。
[第2実施形態]
次に、本発明に係るタイヤユニフォミティ試験装置及び試験方法の第2実施形態を図面に基づき、説明する。
【0031】
第2実施形態が、第1実施形態と大きく異なる点は、第1実施形態の補正部9に代えて、第2の補正部10を有しており、この第2の補正部10は、ユニフォミティ波形の計測開始時より早い時間からユニフォミティ波形を記録するように構成され、早い時間からのRFV波形より得られたシフト勾配α'をなくすように、早い時間からのRFV波形を補正するように構成されている点にある。
【0032】
なお、他の構成については、第1実施形態と略同様である故、その説明は省略する。
第1実施形態と同様に、まず、タイヤT正転中において、タイヤT回転数を変化させる直前にドラム位置の後退を開始し、回転数を低下させると同時にドラム5を後退させていく。このドラム後退に伴いドラム荷重が低下するようになる。その後、タイヤTの回転数が0、すなわちドラム5の回転が停止したタイミングで、ドラム荷重が最小となる様にドラム位置を制御する。このドラム位置において、今度はタイヤTを逆転し始め、タイヤTが逆転方向に加速する時にドラム5を徐々に前進させ、タイヤT回転数が所定の試験回転数になるタイミングで、ドラム5が所定の試験位置に達するようにする。その上で、タイヤTを逆回転し、逆回転におけるユニフォミティ波形を計測するようにする。
【0033】
このとき、第2の補正部10では、正規のRFV計測データ(図2(d)の0sec)よりも早いタイミング(−βs)からデータを記録し、その最初の波形データをRFV−βsとする。−1≦β<0である。RFV計測範囲内の(1−β)sにおけるデータをRFV(1−β)sとすると、計測範囲より前のシフト勾配α’は、式(3)で算出される。
α’=(RFV(1−β)s−RFV−βs)/1 (3)
次に、式(1)算出したシフト勾配αと、第2の補正部10が式(3)で算出したシフト勾配α'とを比較する。
【0034】
比較の結果、シフト勾配αの傾きがシフト勾配α'の1/2以下になっている場合は、RFV0s〜RFV1sのデータに対してはシフト補正を行わなず、RFV−βs〜RFV(1−β)sのデータに対してシフト勾配α'を基に波形補正を行う。
このように、データ範囲内(0sec以降)でシフト勾配αが大きく変化していて、第1実施形態の補正部9におけるシフト勾配補正計算により、計測精度を悪化させる状況下であっても、第2実施形態のように早い時間(0sec以前)からのデータに対してシフト勾配補正を行うことで、タイヤTユニフォミティ、特にRFVを精度良く求めることができるようになる。また、タイヤTの回転の反転動作後のタイヤ圧力が安定しない状態で、ユニフォミティ計測ができるようになるため、計測時間の短縮が図れ、生産性の向上に寄与できるものとなる。
【0035】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、タイヤTの反転時におけるタイヤTの内圧の変化波形(図2(e))の勾配を基に、RFV波形に存在するシフト勾配αを補正するようにしてもよい。
また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0036】
1 タイヤユニフォミティ試験装置
2 フレーム本体
3 スピンドル軸
4 リム
5 ドラム
6 ドラム機構
6a 模擬路面
7 空気圧回路
8 ユニフォミティ測定部
9 第1の補正部
10 第2の補正部
T タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを装着可能なスピンドル軸と、ドラムを回転自在に支持すると共に前記スピンドル軸に装着されたタイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置において、
前記ドラム機構は、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成されており、
前記ドラム機構によるタイヤの回転の反転動作後に計測されたユニフォミティ波形に存在するシフト勾配αをなくすように、当該ユニフォミティ波形を補正する補正部と、
前記補正部で補正されたユニフォミティ波形から、フォースバリエーションを求める測定部とが備えられたことを特徴とするタイヤユニフォミティ試験装置。
【請求項2】
前記補正部に代えて、第2の補正部が備えられており、
前記第2の補正部は、ユニフォミティ波形の計測開始時より早い時間からユニフォミティ波形を記録するように構成され、前記早い時間からのユニフォミティ波形より得られたシフト勾配α'をなくすように、早い時間からのユニフォミティ波形を補正するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤユニフォミティ試験装置。
【請求項3】
タイヤを装着可能なスピンドル軸と、回転可能なドラムを前記タイヤの外周に押し当てるドラム機構とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置におけるタイヤユニフォミティ試験方法において、
前記ドラム機構を、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成しておき、
前記ドラム機構によるタイヤの回転の反転動作後に計測されたユニフォミティ波形に存在するシフト勾配αをなくすように、当該ユニフォミティ波形を補正し、
補正されたユニフォミティ波形から、フォースバリエーションを求めることを特徴とするタイヤユニフォミティ試験方法。
【請求項4】
前記ユニフォミティ波形の計測開始時より早い時間からユニフォミティ波形を記録するようにしておき、
前記シフト勾配αをなくすようなユニフォミティ波形の補正に代えて、前記早い時間からのユニフォミティ波形より得られたシフト勾配α'をなくすように、早い時間からのユニフォミティ波形を補正することを特徴とする請求項3に記載のタイヤユニフォミティ試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83475(P2013−83475A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222012(P2011−222012)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)