説明

タイヤユニフォミティ試験装置及びタイヤユニフォミティ試験方法

【課題】タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正転時から逆転時への切り換えを行った直後から正確なタイヤユニフォミティを精度良く求める。
【解決手段】本発明のタイヤユニフォミティ試験装置1は、ドラム5を回転自在に支持すると共に、スピンドル軸3に装着されたタイヤTをドラム5の外周面に押し当て可能とするドラム機構6と、タイヤTに対し圧縮空気を供給する空気圧回路7とを備えたものであって、ドラム機構6は、タイヤTとの接触状態を維持しつつドラム5を後退させ、タイヤTの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラム5を前進させて負荷荷重をタイヤTに与えることが可能に構成されており、空気圧回路7には、タイヤTの回転を一方向回転から他方向回転へと反転動作を行う時に、ドラム5の後退前進の動作に併せて、タイヤT内への空気の流入を規制する空気流出規制手段20が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤユニフォミティマシンの試験技術に関するものであり、特に、タイヤ半径方向の力の変動(Radial Force Variation:RFV)の測定精度を向上させることのできるタイヤユニフォミティの試験技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、製品上がりのタイヤに対してはユニフォミティ(均一性)などを計測して良否を判定するタイヤ試験(ユニフォミティ検査)が行われている。例えば、乗用車用のタイヤについてユニフォミティを計測する場合であれば、このタイヤ試験は概ね特許文献1に示される試験装置を用いて以下のような手順で行われる。
すなわち、特許文献1のタイヤ試験装置は、リム上に着座するタイヤに対して工場空気源から供給された圧縮空気を圧力調整して供給する空気圧回路を備えており、テスト圧にタイヤを膨らませた後でタイヤ試験を行うものである。
【0003】
このタイヤ試験装置でタイヤ試験を行う場合は、検査ラインの上流から流れてきたタイヤを上下に分割されたリムで挟み込む。次に空気圧回路の途中で2系統に分岐された一つの配管であるビードシート系統の配管を用いてタイヤを短時間で膨らましリムに固定する。もう一つの配管であるテスト系統からの圧縮空気でテスト圧に保持されたタイヤにドラムを押し付けて正転させ、タイヤのユニフォミティを計測する。その後、タイヤを逆転させて、逆転時でのタイヤのユニフォミティも計測する。
【0004】
ところで、上述のようなタイヤユニフォミティの測定方法において、負荷ドラムが一定方向に回転している状態から逆転させる時に、負荷ドラムは瞬間的に回転停止状態となる。タイヤに一定の圧力が作用している状態で、タイヤが回転停止状態になると、負荷ドラムの圧力により生じているタイヤの凹みが、後に残留凹みとなる(図5参照)。これはタイヤのゴム材料の粘弾性特性によるものである。この残留凹みは元の状態に復元するまでには時間がかかり、この状態でユニフォミティを測定するとこの測定精度に大きく影響することが、特許文献1で明らかにされている。タイヤの復元を待ちユニフォミティの波形が安定してから計測する必要があり、その分、時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献2では、上記した問題の解決方法の一つとして、タイヤ逆転時に負荷ドラムの接触面をタイヤトレッド面から後退させて、タイヤ停止時におけるタイヤに作用する圧力を軽減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−95057号公報
【特許文献2】特開平2−223843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2に開示されたタイヤ試験装置を用いて、タイヤ逆転時のタイヤユニフォミティを計測するに際しては、タイヤから負荷ドラムを後退させると、負荷ドラムによる圧力で生じるタイヤの凹みがなくなる為に、タイヤ内の体積(内容積)が増加する。その結果、タイヤ内の圧力は低下する。圧力調整弁の働きにより、タイヤ内圧を試験圧力にしようと、タイヤ内部に圧縮空気が送り込まれる。逆転終了後に、負荷ドラムを正転時と同じ位置にまで前進させ負荷を付与するが、この時、タイヤには負荷ドラムの圧力により再度凹みが生じてタイヤ内体積が減少する。体積の減少によりタイヤ内圧が瞬間的に増加する。このタイヤ内圧が圧力調整弁により所定の試験圧力に安定するのに時間を要する。このタイヤ内圧の試験圧力が安定しない状態では、ユニフォミティの波形も安定しないことから、単純に負荷ドラムの後退・前進動作だけでは、測定時間の短縮には繋がらないことが明らかとなった。
【0008】
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正転時から逆転時への切り換えを行った直後から正確なタイヤユニフォミティ、特にタイヤ半径方向の力の変動(RFV)を精度良く求めることができるタイヤユニフォミティ試験装置及びタイヤユニフォミティ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のタイヤユニフォミティ検査装置は、ドラムを回転自在に支持すると共に、スピンドル軸に装着されたタイヤの外周面に前記ドラムを押し当て可能とするドラム機構と、前記タイヤに対し圧縮空気を供給する空気圧回路とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置において、前記ドラム機構は、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成されており、前記空気圧回路には、前記ドラム機構によるドラムの後退動作にあたって前記タイヤ内への空気の流入を規制する共に、前記ドラム機構による前進動作の後に前記空気の流入規制を解除する空気流出規制手段が備えられていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記空気圧回路は、タイヤに対し圧縮空気を供給する空気供給源と、タイヤ内に作用する空気圧を検知する圧力検知部と、この圧力検知部で検知された空気圧に基づいて前記空気供給源から送られてきた圧縮空気の圧力を所定の空気圧に調整する圧力調整弁と、を備えており、前記空気流出規制手段は、前記圧力調整弁とタイヤとの間に配備されて、圧力調整弁からタイヤに向かう圧縮空気の供給を遮断する遮断弁を有しているとよい。
【0011】
好ましくは、前記空気圧回路は、前記空気供給源とタイヤとの間に、互いに並列とされた複数の分岐配管を備えており、それぞれの分岐配管に、前記圧力調整弁と当該圧力調整弁からタイヤに向かう圧縮空気の供給を遮断する遮断弁とが設けられているとよい。
また、本発明のタイヤユニフォミティ試験方法は、ドラムを回転自在に支持すると共に、スピンドル軸に装着されたタイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構と、前記タイヤに対し圧縮空気を供給する空気圧回路とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置を用いたタイヤユニフォミティ測定方法において、前記ドラム機構を、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成しておき、前記タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと反転動作を行う時には、前記ドラムの後退動作に合わせて前記空気圧回路を介してタイヤ内に圧縮空気が流入することを規制し、次に前記ドラムの前進動作の後に、前記タイヤ内への圧縮空気の流入規制を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタイヤユニフォミティ試験技術によれば、タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正転時から逆転時への切り換えを行った直後から正確なタイヤユニフォミティ、特にタイヤ半径方向の力の変動(RFV)を精度良く求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るタイヤユニフォミティ試験装置の概略図である。
【図2】第1実施形態の空気圧回路を示す図である。
【図3】タイヤ内圧やユニフォミティ波形を、空気流出規制手段を設けた場合と設けなかった場合とで比較して示したグラフである。
【図4】第2実施形態の空気圧回路を示す図である。
【図5】従来のタイヤユニフォミティ試験装置において、タイヤを逆転させた状況を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「第1実施形態」
本発明に係るタイヤユニフォミティ試験装置1及びタイヤユニフォミティ試験方法を図面に基づき、説明する。
図1に示されるように、タイヤユニフォミティ試験装置1は、製品上がりのタイヤTのタイヤユニフォミティ特性、特に、タイヤ半径方向の力の変動(Radial Force Variation:RFV)を製品検査として評価するものである。
【0015】
具体的には、タイヤユニフォミティ試験装置1は、軸心が上下を向くように配備された円筒状のフレーム本体2と、このフレーム本体2内に図示しない軸受部を介して上下軸回りに回転自在となるように取り付けられたスピンドル軸3と、を有している。スピンドル軸3は、フレーム本体2の上端から上方へ突出状とされており、スピンドル軸3の上方突出部分にタイヤTを固定する上下一対のリム4が設けられている。さらに、リム4で固定されたタイヤTの側方には、その外周面に模擬路面6aが形成された略円筒状のドラム5(負荷ドラム)が備えられている。このドラム5はドラム機構6に備えられている。
【0016】
なお、本明細書の説明においては、図1の紙面の上下をタイヤユニフォミティ試験装置を説明する際の上下としている。
本実施形態のドラム機構6は、ドラム5を上下軸回りに駆動回転できるように支持すると共に、水平に移動してタイヤTに模擬路面6aを接触できる構成となっている。ドラム機構6は、タイヤTの回転を逆転させる際に、ドラム5をタイヤTとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤTの回転を一方向回転(正転)から他方向回転(逆転)へと切り換え、その後、ドラム5を前進させて負荷荷重をタイヤTに与えることが可能に構成されている。
【0017】
図1に示すように、タイヤ試験を行う際には、タイヤTを所定の空気圧に調整しておく必要がある。そこで、タイヤユニフォミティ試験装置1には、空気供給源9で発生した圧縮空気をタイヤTの内部に供給したり、タイヤTの内部から圧縮空気を大気などの外部に排出したりしてタイヤT内の空気圧を調整する空気圧回路7が配備されている。
詳しくは図2に示すように、この空気圧回路7は、2系統の供給配管系を備えている。その一つはタイヤTを短時間で膨らまし、タイヤTをリム4に装着するビードシート系統10の配管であり、もう一つがタイヤTを試験する際に用いられるテスト系統11の配管である。
【0018】
ビードシート系統10を介して流通される圧縮空気は0.4MPa程度の空気圧(ビード圧)に調整され、テスト系統11を介して流通される圧縮空気はビードシート系統10より低い0.2MPa程度の空気圧(テスト圧)に調整されている。これらのビードシート系統10とテスト系統11とは、空気供給源9からタイヤTに至る途中で空気流路が分岐し、それぞれの空気圧に調整された後、再び1つの配管に合流するようになっている。これらのビードシート系統10の配管とテスト系統11の配管とは切替弁を用いて切り替え可能となっている。
【0019】
テスト系統11の配管経路には、上流側(空気供給源9に近い側)から下流側に向かって順番に、空気供給源9、圧力調整弁(以降、テスト圧調整弁13ということもある)、給排弁14、切替弁15、圧力検知部17が配備されている。また、ビードシート系統10の配管経路には、空気供給源9の下流側でテスト系統11の配管から分岐し、別の圧力調整弁(以降、ビード圧調整弁12ということもある)でビード圧に調整された後、切替弁15でテスト系統11の配管に合流する。そして、これらのビードシート系統10及びテスト系統11の配管経路には、後述する空気流出規制手段20を構成する遮断弁16が設けられている。
【0020】
空気供給源9は、図示していないエアコンプレッサや工場エアの供給源につながっており、ビードシート系統10を通じてタイヤTを膨らませる際の空気圧と同等か又は高圧の圧縮空気を発生させている。その下流側には、空気供給源9から流入するダストなどを捕集するエアフィルタ18が設けられており、またエアフィルタ18の下流側には空気供給源9で発生する圧縮空気の圧力をチェックする圧力計19が設けられている。
【0021】
ビートシート系統10に設けられるビート圧調整弁12と、テスト系統11に設けられるテスト圧調整弁13とは、いずれも空気供給源9から送られてきた圧縮空気を所定の圧力に調整する圧力レギュレータである。これらの圧力調整弁12、13にはリリーフ機能を備えた内部パイロット式で制御される減圧弁が用いられており、空気供給源9で発生した圧縮空気の圧力がビート圧(例えば0.4MPa)やテスト圧(例えば0.2MPa)に減圧して調整可能とされている。
【0022】
給排弁14は、テスト系統11に設けられたテスト圧調整弁13の下流側に設けられた方向制御弁(電磁式でパイロット圧が制御される方向制御弁)であり、弁の切替えにより、タイヤ試験開始前のタイヤTへの給気とタイヤ試験終了後のタイヤTからの排気(大気への放出)とを制御している。
切替弁15は、圧縮空気の流路を、テスト系統11側とビードシート系統10側との間で切り替えるものであり、タイヤTの内部の空気圧をビード圧とテスト圧とを切り替えるために用いられる。切替弁15は、電磁式でパイロット圧が制御される方向制御弁で構成されている。
【0023】
圧力検知部17は、給排弁14の下流側に設けられた空気圧センサを備えており、タイヤTの内部に作用する空気圧を検知している。
ところで、上述したドラム機構6は、タイヤTの回転を逆転させる際に、ドラム5をタイヤTとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤTの回転を正転から逆転へと切り換え、その後、ドラム5を前進させて負荷荷重をタイヤTに与えることが可能に構成されている。このようにドラム5を後前に移動させると、特許文献1で明らかにされた「タイヤTの表面に残留凹みが発生する」ことは防止できるが、タイヤTの回転方向を切り換える時に、ドラム5からタイヤTに加えられていた負荷荷重が変化してタイヤT内の体積(内容積)も変動する。
【0024】
例えば、回転方向の逆転前にドラム5をタイヤTから後退させると、タイヤT内の内容積が増加して、タイヤT内の圧力が低下する。そうすると、テスト圧調整弁13の働きにより、タイヤTの内圧を試験圧力にしようと、タイヤTの内部に圧縮空気が送り込まれる。その後、ドラム5を正転時と同じ位置にまで前進させ負荷荷重をかけると、今度はタイヤTの内部の内容積が減少しタイヤTの内圧が瞬間的に増加する。
【0025】
つまり、回転方向の反転に伴ってタイヤTの内圧が瞬間的に変動すると、この変動したタイヤTの内圧を安定させようとしてテスト圧調整弁13による余計な圧力調整が行われ、この変動した内圧を安定化させる間は、タイヤユニフォミティ試験の精度が保証できない状態となる。
そこで、本発明のタイヤユニフォミティ試験装置1の空気圧回路7には、ドラム機構6によるドラム5の後退動作にあたってタイヤTの内部への圧縮空気の流入を規制する共に、ドラム機構6による前進動作の後に圧縮空気の流入規制を解除する空気流出規制手段20が備えられている。具体的には、この空気流出規制手段20は、上述した圧力調整弁とタイヤTとの間に配備されて、圧力調整弁からタイヤTに向かう圧縮空気の供給を遮断する遮断弁16からなる。
【0026】
この遮断弁16は、本実施形態では、切替弁15からタイヤTまで(切替弁15の下流側)の配管、言い換えれば上述したビードシート系統の配管経路とテスト系統の配管経路とが合流している配管に設けられている。遮断弁16は、方向制御弁であり、弁を切り替えることで圧縮空気の流路を遮断して、遮断弁16の下流側のタイヤT内へ至る配管内に圧縮空気を封じ込めることができるようになっている。つまり、この遮断弁16で切り替え可能となっている一方の配管は空気供給源9に繋がっているが、もう一方の配管はメクラ栓などで封止されていて、封止された方に弁を切り替えればタイヤTの内部及び遮断弁16からタイヤTまでの配管に圧縮空気を封入することができるようになっている。
【0027】
このような空気流出規制手段20(遮断弁16)を設けて空気の流入を規制すれば、ドラムの後退前進の動作に併せて圧力調整弁13が作動しても、その影響はタイヤTの内部の体積や圧力に全く影響しない。つまり、ドラム5が後退すると、タイヤTの内部の体積が大きくなってタイヤTの内圧が下がり、圧力調整弁13はタイヤTの内部に圧縮空気を供給しようとする。ところが、遮断弁16が空気供給源9からタイヤ内までの圧縮空気の供給を規制しているため、圧力調整弁13が作動してもタイヤ内に空気が供給されることはない。また、ドラム5が前進すると、後退時とは逆に圧力調整弁13はタイヤTの内部から圧縮空気を排出しようとするが、遮断弁16が空気供給源9からタイヤ内までの圧縮空気の供給を規制しているため、タイヤ内から空気が排出されることがない。その結果、ドラム5が後退したり前進したりしても、タイヤ内の圧縮空気の体積や圧力は一定のまま保持され、従来のやり方のようにタイヤ内圧の安定化を待つことなくタイヤユニフォミティを精確かつ効率よく計測することができるのである。
【0028】
言い換えれば、本発明の空気流出規制手段20は、ドラム5の後退前進の間だけタイヤTの内部を空気の出入りができないように空気供給源9から封止(遮断)して、逆転時の計測直後からタイヤユニフォミティの精確な計測を可能としたものということもできる。
次に、本発明のタイヤユニフォミティ試験装置1を用いてタイヤユニフォミティを計測する手順を説明する。
【0029】
まず、タイヤユニフォミティ計測を行う場合は、検査ラインの上流から流れてきたタイヤTを上下に分割されたリム4で挟み込み、空気圧回路7のビードシート系統10の配管を用いてタイヤTを短時間で膨らます。このようにしてタイヤTを瞬時に膨張させ、タイヤTのビード部をリム4に強固に装着させた後、タイヤTの内部の空気圧をテスト圧(例えば0.2MPa)に切り替える。そして、タイヤTにドラム5を押付けて「正回転」させ、荷重検出器(ロードセル)などを用いてタイヤTに発生する反発力を計測することにより、タイヤTの正回転でのRFV波形が計測される。
【0030】
このようにして正回転でのRFV波形の計測が終わった後、タイヤTを反転させ「逆回転」のRFV波形を計測する。
まず、タイヤ正転中(正回転でのRFV波形の計測の終盤)において、タイヤTの回転数を変化させる(下げる)直前にドラム位置の後退を開始し、回転数を低下させると同時にドラム5をさらに後退させる。このドラム5の後退開始時に遮断弁16(空気流出規制手段20)を動作させ、遮断弁16の下流側の配管内及びタイヤTの内部を遮断弁16の上流側(空気供給源9)から封鎖する。
【0031】
一方、ドラム後退に伴いドラム5によるドラム荷重(負荷荷重)が低下するようになる。ドラム5の後退量は、タイヤTとドラム5との間でスリップが生じない程度にドラム荷重が残る量とすることが好ましい。なぜならば、ドラム5の回転は、モータ駆動のスピンドル軸3からタイヤTを介してドラム5に伝えられているため、タイヤTとドラム5との接触圧力が小さいと、ドラム回転の減速・加速時の慣性力によりタイヤTがスリップする可能性があるからである。
【0032】
その後、タイヤTの回転数が0、すなわちドラム5の回転が停止したタイミングで、ドラム荷重が最小となる様にドラム位置を制御する。このドラム位置において、今度はタイヤTの回転方向を反転し、逆転方向に向かってタイヤTの回転数が増加(加速)するのに合わせてドラム5を徐々に前進させ、タイヤTの回転数が所定の試験回転数になるタイミングで、ドラム5が所定の試験位置に達するようにする。その上で、遮断弁16(空気流出規制手段20)による規制(遮断)を解除し、解除後にタイヤTを逆回転させ、逆回転におけるユニフォミティ波形を計測するようにする。
【0033】
このようにドラム5の後退前進に合わせて空気流出規制手段20を作動させれば、ドラム5の後退前進の間だけタイヤTの内部に対する圧縮空気の出入りが規制され、空気供給源9や圧力調整弁13からタイヤTの内部が封鎖状態に保持される。つまり、空気流出規制手段20によって、ドラム5が後退する前の状態が保持されるので、空気流出規制手段20による規制を解除すれば逆転時の計測直後からタイヤユニフォミティの精確な計測が可能となる。
【0034】
次に、具体例を挙げて、本発明のタイヤユニフォミティ試験装置1を用いた場合の効果を説明する。
図3(a)〜図3(g)は、タイヤTを正転から逆転に反転させる際において、タイヤTの回転数、ドラム位置、ドラム荷重、従来技術のRFV波形、本発明のRFV波形、タイヤTの内圧の変化を示したものである。図3(d)及び図3(f)のRFV波形は、ユニフォミティ測定部8で計測されたものである。
【0035】
空気流出規制手段20が設けられていない場合は、タイヤTの逆転時にドラム5の後退前進動作を行うと、図3(e)に示すように、タイヤTの内圧は一旦減少した後に、ドラム5の前進時に(計測時間で2.5〜3秒)には大幅に増加して、その後、タイヤTの内圧は、所定の試験圧力に戻るまでにほぼ直線的に減少する(計測時間で3〜5秒)。この間、図3(d)に示すように、RFV波形もある傾きを持って波形が上下にシフト移動している。このようにシフト移動しているRFV波形を用いても正しいRFVを求めることは困難であり、得られたRFVにも誤差が含まれる。
【0036】
一方、空気流出規制手段20を用いた場合は、タイヤTの逆転時にドラム5の後退前進動作を行うと、図3(g)示すように、ドラム5の後退前と前進完了後とでタイヤTの内圧はほぼ等しくなる。それゆえ、図3(f)に示すように、前進完了後すぐにRFV波形を計測してもシフト移動は起こらず、タイヤTを逆転した直後に精確なRFVのデータを得ることが可能となる。
【0037】
このように、本発明の空気流出規制手段20を用いることで、タイヤTの逆転直後であってもタイヤTをテスト圧に維持することが可能となり、常に正確なユニフォミティ波形及びユニフォミティ計測値を得ることができ、計測時間の短縮、ひいては生産性の向上に寄与できるものとなる。
なお、タイヤ試験を行った後でタイヤTを取り外す場合は、テスト系統11の配管にした状態で給排弁14を作動させ、タイヤTの内部の圧縮空気を大気中に放出し、次のタイヤTの装着準備が行われる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態のタイヤユニフォミティ試験装置1を説明する。
【0038】
図4に示すように、第2実施形態のタイヤユニフォミティ試験装置1は、給排弁14より上流側の配管、言い換えればビードシート系統10の配管経路とテスト系統11の配管経路とのそれぞれに遮断弁16a、16bが設けられている。これらの遮断弁16a、16bは、いずれも方向制御弁であり、いずれか一方の弁を開放しつつ他方の弁を遮断することにより空気の流路をビート系統10とテスト系統11との間で切り替えると共に、一度に2つの弁を同じタイミングで遮断側に切り替えることで2つの配管経路を通る圧縮空気の流路を完全に遮断して、遮断弁16a、16bから給排弁14を通って下流側のタイヤTの内部へ至る配管内に圧縮空気を封じ込めることができるようになっている。
【0039】
このような空気流出規制手段20を用いても、タイヤユニフォミティの計測精度と計測時間の短縮化とが可能となり、生産性の向上に寄与することができる。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0040】
1 タイヤユニフォミティ試験装置
2 フレーム本体
3 スピンドル軸
4 リム
5 ドラム
6 ドラム機構
6a 模擬路面
7 空気圧回路
8 ユニフォミティ測定部
9 空気供給源
10 ビードシート系統
11 テスト系統
12 ビード圧調整弁
13 テスト圧調整弁
14 給排弁
15 切替弁
16 遮断弁
16a ビートシート系統の遮断弁
16b テスト系統の遮断弁
17 圧力検知部
18 エアフィルタ
19 圧力計
20 体積調整機構
T タイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムを回転自在に支持すると共に、スピンドル軸に装着されたタイヤの外周面に前記ドラムを押し当て可能とするドラム機構と、前記タイヤに対し圧縮空気を供給する空気圧回路とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置において、
前記ドラム機構は、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成されており、
前記空気圧回路には、前記ドラム機構によるドラムの後退動作にあたって前記タイヤ内への空気の流入を規制する共に、前記ドラム機構による前進動作の後に前記空気の流入規制を解除する空気流出規制手段が備えられていることを特徴とするタイヤユニフォミティ試験装置。
【請求項2】
前記空気圧回路は、タイヤに対し圧縮空気を供給する空気供給源と、タイヤ内に作用する空気圧を検知する圧力検知部と、この圧力検知部で検知された空気圧に基づいて前記空気供給源から送られてきた圧縮空気の圧力を所定の空気圧に調整する圧力調整弁と、を備えており、
前記空気流出規制手段は、前記圧力調整弁とタイヤとの間に配備されて、圧力調整弁からタイヤに向かう圧縮空気の供給を遮断する遮断弁を有していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤユニフォミティ試験装置。
【請求項3】
前記空気圧回路は、前記空気供給源とタイヤとの間に、互いに並列とされた複数の分岐配管を備えており、
それぞれの分岐配管に、前記圧力調整弁と当該圧力調整弁からタイヤに向かう圧縮空気の供給を遮断する遮断弁とが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤユニフォミティ試験装置。
【請求項4】
ドラムを回転自在に支持すると共に、スピンドル軸に装着されたタイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構と、前記タイヤに対し圧縮空気を供給する空気圧回路とを備えたタイヤユニフォミティ試験装置を用いたタイヤユニフォミティ測定方法において、
前記ドラム機構を、タイヤの回転を反転させる際に、ドラムをタイヤとの接触状態を維持しつつ後退させ、タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと切り換え、その後、ドラムを前進させて負荷荷重をタイヤに与えることが可能に構成しておき、
前記タイヤの回転を一方向回転から他方向回転へと反転動作を行う時には、前記ドラムの後退動作に合わせて前記空気圧回路を介してタイヤ内に圧縮空気が流入することを規制し、次に前記ドラムの前進動作の後に、前記タイヤ内への圧縮空気の流入規制を解除することを特徴とするタイヤユニフォミティ試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83476(P2013−83476A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222013(P2011−222013)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)