説明

タイヤ加熱装置

【課題】車両の走行開始直後であってもタイヤ温度を高めることが可能なタイヤ加熱装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ホイール3と一体に回転する外装部10内に収納されてホイール3の回転による遠心力でホイールの回転中心から外方に向かって移動する振動子11を有する発電部40aと、発熱モジュール42を含んで構成されてタイヤ空気室2a内の空気温度を高める発熱部40bと、を備える回転側装置1a、および、ホイール3の回転中心から外方に向かって移動している振動子11を周期的にホイール3の回転中心に向かって移動させる固定側装置1b、を有し、発電部40aは、ホイール3の回転にともなって振動子11が外装部10内で往復動するときに圧電素子12を振動させて発電し、発熱モジュール42は、発電部40aで発電された電力が供給されて発熱するタイヤ加熱装置1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールの回転によってタイヤ空気室内の空気温度を高めるタイヤ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行開始時などにタイヤ空気室内の空気温度(以下、タイヤ温度と称する)が低いと走行抵抗が大きくなって燃費が低下するため、走行開始後は速やかにタイヤ温度を高めることが好ましい。または、走行開始のときに、予めタイヤ温度がある程度まで高まっていることが好ましい。
例えば、特許文献1、2には、走行時にタイヤの回転を利用して発電する技術が開示されており、このように発電された電力を利用してタイヤ温度を高めることができれば、車両に備わる二次電池(バッテリ)など別のエネルギの消費量を増やすことなく、効率よくタイヤ温度を高めることができる。
特許文献1に開示される技術によると、走行中の車両におけるタイヤの温度上昇を利用し、ゼーベック効果によって発電することができる。
また、特許文献2に開示される技術によると、走行中の車両でタイヤに発生する静電気をキャパシタなどの蓄電器に蓄電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−40408号公報
【特許文献2】特表2006−521233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、車両が走行を開始してからタイヤ温度が上昇するまでは発電できない。また、特許文献2の技術では、車両が走行を開始してからタイヤに十分な静電気が蓄電されるまでは発電できない。したがって、特許文献1、2に開示される技術では走行開始直後に発電できず、特許文献1、2に開示される技術で発電される電力を利用してタイヤ温度を高める構成としても、走行開始後に速やかにタイヤ温度を高めることができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両の走行開始直後であってもタイヤ温度を高めることが可能なタイヤ加熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、タイヤが装着されるホイールと一体に回転する外装部内に収納されて前記ホイールの回転による遠心力で当該ホイールの回転中心から外方に向かって移動する振動子を有する発電部と、発熱モジュールを含んで構成されてタイヤ空気室内の空気温度を高める発熱部と、を備える回転側装置、および、前記ホイールの回転中心から外方に向かって移動している前記振動子を周期的に前記ホイールの回転中心に向かって移動させる固定側装置、を有し、前記発電部は、前記ホイールの回転にともなって前記振動子が前記外装部内で往復動するときの運動エネルギを電力に変換し、前記発熱モジュールは、前記発電部で変換された電力が供給されて発熱するタイヤ加熱装置とする。
【0007】
この発明によると、ホイールの回転にともなって外装部内を往復動する振動子の運動エ
ネルギを電力に変換することができ、さらに、この電力を利用して発熱モジュールを発熱してタイヤ温度を高めることができる。振動子は車両の走行開始直後であっても往復動して運動エネルギを電力に変換できることから、走行開始直後から発熱モジュールを発熱させることができタイヤ温度を高めることができる。また、二次電池など別のエネルギを消費することなく、タイヤ温度を高めることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は請求項1に記載のタイヤ加熱装置であって、前記外装部は、前記ホイールの回転中心の側となる底部と、前記底部と対向する頂部と、を有し、前記振動子11は、前記底部と前記頂部の間を往復動可能に収納され、前記発電部は、前記ホイールの回転による遠心力で前記振動子が当該ホイールの回転中心から外方に向かって移動して前記頂部に衝突したときに振動して電力を発生する圧電素子を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、往復動する振動子が外装部の頂部に衝突したときに圧電素子を振動させて電力を発生させることができる。つまり、往復動する振動子が圧電素子を振動させて電力を発生することによって、往復動する振動子の運動エネルギを電力に変換できる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は請求項1または請求項2に記載のタイヤ加熱装置であって、前記固定側装置は、前記ホイールに制動力を付与するディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石であり、前記振動子は、前記固定側装置に吸引される磁性部材を有していることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、ディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石を固定側装置とすることができる。そして、振動子は固定側装置に吸引される磁性部材を有し、振動子が固定側装置に吸引されるように構成できる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、タイヤが装着されるホイールと一体に回転する外装部内に収納されて前記ホイールの回転による遠心力で当該ホイールの回転中心から外方に向かって移動する振動子を備える回転側装置、および、前記ホイールの回転中心から外方に向かって移動している前記振動子を周期的に前記ホイールの回転中心に向かって移動させる固定側装置、を有し、前記回転側装置は、前記ホイールの回転にともなって前記振動子が前記外装部内で往復動するときの運動エネルギで発熱するタイヤ加熱装置とする。
【0013】
この発明によると、ホイールの回転にともなって外装部内を往復動する振動子の運動エネルギで発熱してタイヤ温度を高めることができる。振動子は車両の走行開始直後であっても往復動して運動エネルギで回転側装置を発熱できることから、走行開始直後からタイヤ温度を高めることができる。また、二次電池など別のエネルギを消費することなく、タイヤ温度を高めることができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は請求項4に記載のタイヤ加熱装置であって、前記回転側装置は、前記ホイールの回転にともなって往復動する前記振動子が前記外装部内を摺動し、前記振動子と前記外装部の間に発生する摩擦熱で発熱することを特徴とする。
【0015】
この発明によると、ホイールの回転にともなって往復動する振動子が外装部内を摺動して発生する摩擦熱で回転側装置を発熱できる。そして、発熱した回転側装置でタイヤ温度を高めることができる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は請求項4または請求項5に記載のタイヤ加熱装置であって、前記固定側装置は、前記ホイールに制動力を付与するディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石であり、前記振動子は、前記固定側装置に吸引される磁性部
材を有していることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、ディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石を固定側装置とすることができる。そして、振動子は固定側装置に吸引される磁性部材を有し、振動子が固定側装置に吸引されるように構成できる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は請求項4に記載のタイヤ加熱装置であって、前記固定側装置は、前記ホイールに制動力を付与するディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石であり、前記振動子は、前記固定側装置に吸引される磁性部材を有し、前記回転側装置は、前記ホイールの回転にともなって前記振動子が往復動するときに前記永久磁石が発生する磁束が変動することで発生する渦電流によって発熱することを特徴とする。
【0019】
この発明によると、ディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石を固定側装置とし、さらに、振動子は固定側装置に吸引される磁性部材を有して固定側装置に吸引されるように構成できる。そして、ホイールの回転にともなって振動子が往復動するときに固定側装置の永久磁石が発生する磁束を変動して渦電流を発生させ、その渦電流による発熱(ジュール熱)で回転側装置を発熱させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、車両の走行開始直後であってもタイヤ温度を高めることが可能なタイヤ加熱装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ホイールに備わる回転側装置とキャリパに備わる固定側装置を示す図である。
【図2】(a)は発電部と発熱部の構造を示す断面図、(b)は先細に形成される外装部と振動子を示す断面図、(c)は頂部が底部を含む周囲に弾性支持される構成を示す断面図である。
【図3】(a)は振動子がホイールの回転中心に向かって移動した状態を示す図、(b)は振動子がホイールの回転中心から外方に向かって移動した状態を示す図である。
【図4】(a)は発電部で発電した電力を蓄電する蓄電器を備える発熱部を示す図、(b)はタイヤ温度が低下する状態を示す図である。
【図5】(a)、(b)は発電部を備えない回転側装置を示す図である。
【図6】(a)、(b)は固定側装置がフェンダに備わる一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ加熱装置1は、例えば、ディスクブレーキ装置4とホイール3に取り付けられる。
具体的には、ナックル5に取り付けられて回転中心CLの周りに回転するホイール3のリム3aに取り付けられ、ホイール3に装着されるタイヤ2とリム3aの間に密閉空間として形成されるタイヤ空気室2a内に備わる回転側装置1aと、ディスクブレーキ装置4のキャリパ4bに備わる固定側装置1bと、を含んで構成される。回転側装置1aをリム3aに固定する方法および固定側装置1bをキャリパ4bに固定する方法は限定するものではなく、接着や溶接など適宜選択することができる。
【0023】
キャリパ4bは、ホイール3と一体に回転するブレーキディスクロータ4aを挟持するように備わるキャリパボディ4b1に、インナパッド4b3とアウタパッド4b2がブレーキディスクロータ4aを挟んで対向するように配置されて備わっている。そして、ピス
トン4b4がインナパッド4b3をブレーキディスクロータ4aに押し付けたときにインナパッド4b3とアウタパッド4b2がブレーキディスクロータ4aに圧接されてホイール3に制動力を付与する。
【0024】
図2の(a)に示すように、回転側装置1aは発電部40aと発熱部40bを備え、発電部40aは中空の外装部10の内部に収納される振動子11を有する。
外装部10は、ホイール3の回転中心の側となる底部10aがホイール3のリム3aに接するように、タイヤ空気室2a側に取り付けられている。そして、底部10aと対向する頂部10bに、薄膜状の圧電素子12が振動可能に取り付けられている。
【0025】
例えば、外装部10の頂部10bの一部に貫通孔10cが形成され、薄膜状の圧電素子12が適度な緊張を持って貫通孔10cを塞ぐように取り付けられている。また、圧電素子12には貫通孔12aが形成され、外装部10の中空部とタイヤ空気室2aが連通している。このように貫通孔12aを形成することで、圧電素子12が振動しているときの空気抵抗を軽減することができ、空気抵抗によって振動が減衰することを抑制できる。
なお、外装部10が金属素材など導体となる素材で形成される場合、圧電素子12は樹脂など絶縁性の部材を介して支持されることが好ましい。
【0026】
振動子11は、外装部10内で底部10aと頂部10bとの間を自在に往復動可能に収納され、ホイール3が回転するときの遠心力で頂部10bの側に移動するように構成される。つまり、振動子11は、ホイール3の回転によって回転中心から外方に向かって移動する。さらに、振動子11の底部10a側には、鉄などの磁性部材11aが取り付けられている。または、鉄などの磁性部材で振動子11を形成してもよい。
そして、振動子11が圧電素子12の側に移動したときに、外装部10の内側で頂部10bに衝突するように構成される。
【0027】
なお、外装部10はホイール3(リム3a)の周方向に沿った方向の断面形状が矩形の立方体形状であってもよいし、断面形状が円形の円筒形状であってもよい。
また、図2の(b)に示すように、底部10aの側から頂部10bの側に向かって先細に構成される外装部10であってもよい。ホイール3の周方向に沿った方向の断面形状が矩形の場合、外装部10は角錐台(四角錐台)形状となり、断面形状が円形の場合、外装部10は円錐台形状となる。
【0028】
そして、振動子11の側面を外装部10の傾斜に合わせて傾斜させ、頂部10bの側で振動子11の側面と外装部10の内側が接するように構成する。
このように構成すると、例えば、振動子11が外装部10内の底部10aの側で傾いた状態であっても、頂部10bの側で外装部10の内側の傾斜と振動子11の側面の傾斜とが一致するように振動子11の姿勢が修正されて振動子11の傾きが解消される。
【0029】
振動子11が頂部10bの側で傾いた状態にあると、振動子11の例えば隅部が貫通孔10cに入り込んで圧電素子12に接触し、圧電素子12が破損する虞がある。図2の(b)に示すように、外装部10を先細に形成して振動子11の側面を傾斜させ、振動子11の姿勢を修正するように構成することで、振動子11と圧電素子12の接触を回避することができ、ひいては、圧電素子12の破損を回避できる。
【0030】
また、図2の(b)に示すように、外装部10の底部10aから中空部に突出する突起部10dを形成し、さらに、振動子11に突起部10dと嵌合する凹部11bを形成し、振動子11が底部10aの側に移動したときに凹部11bと突起部10dとが嵌合する構成としてもよい。この構成によって、底部10aの側に移動した振動子11が、例えば、横方向(ホイール3(図1参照)の周方向)にずれることを防止できる。ひいては、振動
子11が横方向に振動することを防止できる。
なお、四角錐台形状、円錐台形状の他、例えば半球形状の外装部10なども考えられる。
【0031】
本実施形態に係る固定側装置1bは、図2の(a)に示すように、ディスクブレーキ装置4のキャリパボディ4b1のリム3a側に取り付けられ、振動子11を吸引する磁石(永久磁石)を含んで構成される。
【0032】
この構成によると、ホイール3が回転している場合、図3の(a)に示すように回転側装置1a(図1参照)の発電部40aがキャリパボディ4b1の位置に接近して振動子11と固定側装置1bが対峙したとき、振動子11は固定側装置1b(永久磁石)に吸引されて底部10aの側に移動する。つまり、固定側装置1bは、振動子11をホイール3の回転中心に向かって移動させる。また、回転側装置1aは、ホイール3の回転にともなって周期的にキャリパボディ4b1の位置に接近することから、固定側装置1bは周期的に振動子11をホイール3の回転中心に向かって移動させる。
そして、図3の(b)に示すように回転側装置1aがキャリパボディ4b1と離れると、振動子11は遠心力によって回転中心から外方に向かって移動し、外装部10の内側で頂部10bに衝突する。このとき、圧電素子12が振動して電力を発生する(発電する)。
【0033】
このように、ホイール3が回転している間、振動子11は、ホイール3の回転にともなって外装部10の内側で頂部10bの側と底部10aの側との間を往復動し、頂部10bに衝突したときに圧電素子12を振動させて電力を発生させる(発電させる)。
したがって、振動子11と圧電素子12を備える発電部40aはホイール3が回転している間、周期的に発電することができる。
このことによって、発電部40aは、振動子11がホイール3の回転にともなって外装部10の内部で往復動するときの運動エネルギを電力に変換する機能を有することになる。
【0034】
なお、振動子11が頂部10bに衝突したときに圧電素子12を効率よく振動させるため、頂部10bを、底部10aを含む周囲と別部材とし、頂部10bが底部10aに対して弾性支持されるように構成してもよい。
例えば、図2の(c)に示すように、頂部10bを、底部10aを含む周囲と別部材として構成し、バネなどの弾性体10b1で底部10aを含む周囲に弾性支持される構成とする。
このように構成すると、振動子11が衝突したときに頂部10bを効果的に振動させることができ、ひいては、頂部10bに備わる圧電素子12を効果的に振動させることができる。そして、効率よく発電することができる。
又は、例えば硬質ゴムなど弾性を有する部材で外装部10を構成しても、圧電素子12を効果的に振動させることができる。
【0035】
回転側装置1aの発熱部40bは、図2の(a)に示すように、発電部40aが発電した電力を整流する整流器41、整流器41で整流された電力が供給されて発熱する発熱モジュール42、および発熱モジュール42の発熱を広い範囲に伝熱する伝熱モジュール43がベース44に組み込まれて構成される。
ベース44は、例えば、発電部40aの外装部10の底部10aからホイール3の周方向(リム3aの周方向)に沿って延びるように形成され、熱伝導率の高い金属などを素材とすることが好ましい。
【0036】
発電部40aの圧電素子12が振動によって発生する電力は交流電力である。そこで、
発熱部40bは、図示しないダイオード等を含んで構成される整流器41を備え、交流電力を直流電力に変換する。
発熱モジュール42は、例えばニクロム線で構成される発熱体42aを含んで構成され、整流器41から供給される電力(直流電力)で発熱する。
また、整流器41を備えて発電部40aで発生する電力を整流することによって、発熱体42aに安定した電流を供給することができ、動作を安定できるとともに長寿命化を図ることができる。
【0037】
伝熱モジュール43は、例えば、容器内に真空封入された作動液の蒸発・凝縮によって伝熱するヒートパイプで構成され、発熱モジュール42の発熱をベース44に伝熱して加熱する。なお、伝熱モジュール43はヒートパイプに限定されず、例えば伝熱率の高い銅などの素材で形成されていてもよい。
そして、加熱されたベース44がタイヤ空気室2a内の空気温度を高める。つまり、タイヤ温度を高める。
【0038】
以上、図2の(a)に示すように、発電部40aと発熱部40bを含んで構成される回転側装置1aを、ホイール3(図1参照)のリム3aに取り付けると、ホイール3の回転で熱を発生させることができ、さらにタイヤ空気室2a内の空気温度(タイヤ温度)を高めることができる。
車両の走行開始時などタイヤ温度が低いときは走行時の抵抗が大きくなって、走行時の燃費が低下する。したがって、車両の走行時にはタイヤ温度を好適に上昇させることが好ましい。
【0039】
図2の(a)に示すように構成される回転側装置1aをホイール3(図1参照)のリム3aに取り付けてホイール3の回転に応じて発電し、さらに、発電した電力を発熱モジュール42に供給して発熱する構成とすると、発熱モジュール42を発熱させるためのエネルギをホイール3の回転で発生させることができる。
つまり、車両に備わる二次電池(図示せず)など別のエネルギを消費することなく、タイヤ温度を高めることができる。
【0040】
タイヤ温度が高まるとタイヤ空気室2a内の空気圧が上昇してタイヤ2(図1参照)の変形量が少なくなって転がり抵抗が低減する。
また、タイヤ温度が高まると、タイヤ2自体の温度も高まり、タイヤ2を形成するゴムのヒステリシスロスが少なくなって、転がり抵抗が低減する。
このように、タイヤ温度が高まると、転がり抵抗が低減して走行時の抵抗を小さくでき、燃費を向上できる。
また、本実施形態に係るタイヤ加熱装置1の発電部40a(図2の(a)参照)は、ホイール3(図1参照)の回転に応じて発電することができ、車両の走行開始時に速やかに発電可能であり、タイヤ温度を高めることができる。
【0041】
なお、本実施形態に係る回転側装置1aの振動子11(図2の(a)参照)は、ホイール3(図2の(a)参照)が回転するときの遠心力によって外装部10の頂部10b(図2の(a)参照)の側に移動し、固定側装置1b(図2の(a)参照)の吸引力(磁力)によって底部10a(図2の(a)参照)の側に移動する。したがって、ホイール3の回転速度が高いとき、すなわち、ホイール3が備わる車両の車速が高いとき、振動子11(図2の(a)参照)は大きな遠心力で頂部10bの側に押し付けられるため、固定側装置1bの吸引力が弱いと、固定側装置1bの吸引力で底部10a(図2の(a)参照)側に移動しない。つまり、圧電素子12(図2の(a)参照)が振動せず、発電部40a(図2の(a)参照)は発電しない。
【0042】
また、車速が高いとき、発熱部40b(図2の(a)参照)が発熱しなくてもタイヤ温度は速やかに高まることから、車速が高いときは発電部40a(図2の(a)参照)が発電しなくてもよい。
したがって、タイヤ温度を発熱部40bの発熱で高める必要がある所定の車速のときに振動子11(図2の(a)参照)が往復動するように固定側装置1bの吸引力(磁力)を設定することが好ましい。このような所定の車速と固定側装置1bの吸引力は、走行実験等で決定する値とすればよい。
【0043】
例えば、永久磁石の磁力を高めるなど固定側装置1b(図2の(a)参照)が振動子11(図2の(a)参照)を吸引する吸引力を強くすると、車両の車速が高くホイール3(図2の(a)参照)の回転速度が高いときに振動子11を外装部10の底部10aの側に移動させることができ、振動子11を往復動させることができる。そして、圧電素子12(図2の(a)参照)を振動させて発電できる。
つまり、固定側装置1bの吸引力(磁力)を強くすれば、高い車速でも発電部40a(図2の(a)参照)が発電して、タイヤ加熱装置1(図1参照)でタイヤ温度を高めることができる。
【0044】
なお、図2の(a)に示すように、振動子11には磁性部材11aが取り付けられて固定側装置1bに吸引されるが、磁性部材11aを、固定側装置1bと逆の磁極の永久磁石としてもよい。つまり、固定側装置1bに備わる永久磁石のリム3a側をS極(N極)とした場合、底部10aの側がN極(S極)の永久磁石を磁性部材11aとして振動子11に取り付ける構成としてもよい。
この構成によると、固定側装置1bと振動子11との間の吸引力(磁力)を、より高めることができ、高い車速の場合でも発電部40aが発電して、タイヤ加熱装置1(図1参照)でタイヤ温度を高めることができる。
【0045】
また、ホイール3の周方向に沿って複数個の回転側装置1a(図2の(a)参照)が取り付けられる構成であってもよいし、1つの回転側装置1aに1つ以上の発電部40a(図2の(a)参照)と1つ以上の発熱部40b(図2の(a)参照)が備わる構成であってもよい。
また、発熱部40b(図2の(a)参照)は、リム3aの幅方向に延びるように構成されていてもよい。
また、発電部40aと発熱部40bとが一体に形成される構成に限定されず、発電部40aと発熱部40bを別体に構成し、発電部40aで発電した電力を発熱部40bに供給する導線で発電部40aと発熱部40bを接続する構成であってもよい。
【0046】
また、例えば、図4の(a)に示すように、発熱モジュール42に、発電部40aが発電した電力を蓄電するキャパシタなどの蓄電器42bと、タイヤ温度に応じて発熱体42aへの電力の供給を入切り可能に構成されるサーモスタット42cと、を備える構成としてもよい。サーモスタット42cは、例えばバイメタルを利用した簡易な構成のものでよく、タイヤ温度が所定の温度以上になると、整流器41と発熱体42aとの間を電気的に遮断して、発熱体42aへの電力の供給を停止するように構成する。ここでいう所定の温度は、走行実験等で決定される値とすればよい。
また、蓄電器42bはキャパシタに限定されるものではなく、充放電可能な二次電池などであってもよい。
【0047】
さらに、サーモスタット42cの上流側、すなわち、整流器41側に蓄電器42bを備え、整流器41と発熱体42aとの間がサーモスタット42cによって遮断されたときに、整流器41が出力する電力を蓄電器42bに蓄電するように構成する。
【0048】
この構成によると、タイヤ温度が所定の温度以上のときは、発電部40aで発電された電力を蓄電器42bに蓄電することができる。そして、タイヤ温度が所定の温度より下がって整流器41と発熱体42aの間をサーモスタット42cが電気的に接続すると、ホイール3(図1参照)が回転していない場合であっても蓄電器42bに電力が蓄電されているときは、その電力を発熱体42aに供給して発熱させてタイヤ温度を高めることができる。
【0049】
例えば、車両が停車中でホイール3(図1参照)が回転しない場合であっても、蓄電器42bに電力が蓄電されていればタイヤ温度を適宜高めることができ、車両が走行開始する前にタイヤ温度を予め高めておくことが可能になる。そして、走行開始時の抵抗を小さくして燃費を向上できる。
【0050】
図4の(b)に示すように、外気温Tlowまでタイヤ温度が低下した車両が時刻t0で走行開始し、時刻t1でタイヤ温度が温度Thighまで上昇して走行する場合、時刻t2で停車すると、タイヤ温度は時間の経過にともなって徐々に低下し、例えば時刻t3で外気温Tlowまで低下する。しかしながら、図4の(a)に示すように、発電部40aで発電した電力を蓄電器42bに蓄電し、さらに、蓄電器42bに蓄電される電力で適宜タイヤ温度を高める構成とすれば、図4の(b)に破線で示すように、タイヤ温度の低下を遅らせることができる。例えば、タイヤ温度が外気温Tlowまで低下する時刻t4をt3より遅くすることができる。
【0051】
この場合、時刻t3とt4の間に走行を再開すると、タイヤ温度が外気温Tlowまで下がりきらないうちに走行を再開することができる。したがって、走行抵抗が小さいうちに走行を再開することができ燃費を向上できる。
【0052】
また、図4の(a)に示すサーモスタット42cに替わって図示しないスイッチを備え、さらに、回転側装置1aに備わる図示しない制御装置で当該スイッチを開閉制御する構成としてもよい。そして、例えば運転者が予め設定する所定の時刻に制御装置が当該スイッチを制御して整流器41と発熱体42aの間を電気的に接続する構成とすれば、運転者が設定する所定の時刻にタイヤ温度を高めることができる。運転者が走行開始する時刻を設定すれば、走行開始のときにタイヤ温度を予め高めておくことができ、燃費を向上できる。このような制御装置としては、例えば、図示しないTPMS(Tire Pressure Monitoring System)の制御装置を利用することができる。
【0053】
なお、図2の(a)に示すタイヤ加熱装置1は、発電部40aが発電する電力で発熱部40bが発熱する構成であるが、発電部40aを備えない構成であってもよい。
【0054】
例えば、図5の(a)に示すように、金属などの導体で形成される底部10a、頂部10bと、樹脂などの絶縁体で構成される側壁部10eで囲まれた外装部10と、外装部10に収納される振動子11と、を有して回転側装置1a1を構成し、ホイール3の回転と固定側装置1b(永久磁石)の磁力とで、前記したように磁性部材11aを備える振動子11を往復動させる。
【0055】
回転側装置1a1がキャリパボディ4b1に接近して、外装部10の頂部10b側に移動している振動子11が固定側装置1bに吸引されて底部10aの側に移動するとき、固定側装置1bに備わる永久磁石が発生する磁束Mが変動して渦電流が発生する。この渦電流が導体で形成される底部10aを流れるときに発熱(ジュール熱による発熱)することから、このときの発熱でタイヤ温度を高める構成としてもよい。
【0056】
この構成によると、回転側装置1a1は、図2の(a)に示すような発電部40a、発
熱部40bを備えることなくタイヤ空気を高めることができる。
なお、発生した渦電流が底部10aを介してホイール3に流れないように、底部10aとホイール3の間は、電気的に絶縁されていることが好ましい。例えば、底部10aとホイール3の間に図示しない絶縁部材を介在することで、底部10aとホイール3の間を電気的に絶縁できる。
【0057】
また、図5の(b)に示すように、外装部10の側面と振動子11の側面が摺動するように構成する回転側装置1a2とし、ホイール3の回転にともなって往復動する振動子11と外装部10の間に摩擦による摩擦熱を発生させる構成、つまり、振動子11と外装部10の間の摩擦熱で回転側装置1a2が発熱する構成であってもよい。そして、回転側装置1a2の発熱でタイヤ温度を高める構成とすれば、図2の(a)に示すような発電部40a、発熱部40bを備えることなくタイヤ温度を高めることができる。
【0058】
このように、図5の(a)に示す回転側装置1a1、図5の(b)に示す回転側装置1a2は、ホイール3の回転にともなって往復動する振動子11の運動エネルギで発熱する構成であり、図2の(a)に示す発電部40aを備える場合と同様に、二次電池など別のエネルギを消費することなくタイヤ温度を高めることができる。
【0059】
なお、図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ加熱装置1の固定側装置1bはディスクブレーキ装置4のキャリパボディ4b1に備わる構成としたが、ホイール3の回転に対して停止している部位であれば、キャリパボディ4b1に限定するものではない。
【0060】
例えば、図6の(a)に示すように、フェンダ100のタイヤハウス部など、回転側装置1aの、ホイール3の回転中心から向かって外方に永久磁石からなる固定側装置1bを取り付ける構成としてもよい。そして、図6の(b)に示すように、回転側装置1aの振動子11は、固定側装置1bと同じ磁極の永久磁石11cを頂部10bの側に備える構成とする。
つまり、固定側装置1bのホイール3側がS極(N極)の場合、永久磁石11cはフェンダ100側がS極(N極)となるように構成される。
【0061】
この構成によると、ホイール3の回転による遠心力で頂部10bの側に移動した振動子11は、回転側装置1aが固定側装置1bに接近すると、永久磁石11cと固定側装置1b(永久磁石)とが反発して発生する反発力で底部10aの側に移動する。
そして、回転側装置1aが固定側装置1bから離れると、振動子11は遠心力によって頂部10bの側に移動する。
このように、振動子11はホイール3の回転に伴って外装部10の内部を往復動し、圧電素子12を振動させて発電させることができる。
【0062】
また、ナックル5(図1参照)など他の固定部に固定側装置が備わる構成であってもよい。
【0063】
また、近年は、電気自動車など走行音の小さな車両に取り付けて意図的に走行音を発生させる装置の検討がなされているが、図2の(a)に示すように構成される本実施形態に係る回転側装置1aは、車両が走行してホイール3が回転すると振動子11が外装部10の内側で頂部10bに衝突するときに衝突音が発生するため、走行音を発生させる装置として利用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 タイヤ加熱装置
1a 回転側装置
1b 固定側装置
2 タイヤ
2a タイヤ空気室
3 ホイール
3a リム
4 ディスクブレーキ装置
4b キャリパ
10 外装部
10a 底部
10b 頂部
11 振動子
12 圧電素子
40a 発電部
40b 発熱部
42 発熱モジュール
CL 回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着されるホイールと一体に回転する外装部内に収納されて前記ホイールの回転による遠心力で当該ホイールの回転中心から外方に向かって移動する振動子を有する発電部と、発熱モジュールを含んで構成されてタイヤ空気室内の空気温度を高める発熱部と、を備える回転側装置、および、
前記ホイールの回転中心から外方に向かって移動している前記振動子を周期的に前記ホイールの回転中心に向かって移動させる固定側装置、を有し、
前記発電部は、前記ホイールの回転にともなって前記振動子が前記外装部内で往復動するときの運動エネルギを電力に変換し、
前記発熱モジュールは、前記発電部で変換された電力が供給されて発熱することを特徴とするタイヤ加熱装置。
【請求項2】
前記外装部は、
前記ホイールの回転中心の側となる底部と、前記底部と対向する頂部と、を有し、
前記振動子は、前記底部と前記頂部の間を往復動可能に収納され、
前記発電部は、前記ホイールの回転による遠心力で前記振動子が当該ホイールの回転中心から外方に向かって移動して前記頂部に衝突したときに振動して電力を発生する圧電素子を備えることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加熱装置。
【請求項3】
前記固定側装置は、前記ホイールに制動力を付与するディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石であり、
前記振動子は、前記固定側装置に吸引される磁性部材を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加熱装置。
【請求項4】
タイヤが装着されるホイールと一体に回転する外装部内に収納されて前記ホイールの回転による遠心力で当該ホイールの回転中心から外方に向かって移動する振動子を備える回転側装置、および、
前記ホイールの回転中心から外方に向かって移動している前記振動子を周期的に前記ホイールの回転中心に向かって移動させる固定側装置、を有し、
前記回転側装置は、前記ホイールの回転にともなって前記振動子が前記外装部内で往復動するときの運動エネルギで発熱することを特徴とするタイヤ加熱装置。
【請求項5】
前記回転側装置は、前記ホイールの回転にともなって往復動する前記振動子が前記外装部内を摺動し、前記振動子と前記外装部の間に発生する摩擦熱で発熱することを特徴とする請求項4に記載のタイヤ加熱装置。
【請求項6】
前記固定側装置は、前記ホイールに制動力を付与するディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石であり、
前記振動子は、前記固定側装置に吸引される磁性部材を有していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のタイヤ加熱装置。
【請求項7】
前記固定側装置は、前記ホイールに制動力を付与するディスクブレーキ装置のキャリパに取り付けられる永久磁石であり、
前記振動子は、前記固定側装置に吸引される磁性部材を有し、
前記回転側装置は、
前記ホイールの回転にともなって前記振動子が往復動するときに前記永久磁石が発生する磁束が変動することで発生する渦電流によって発熱することを特徴とする請求項4に記載のタイヤ加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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