説明

タイヤ後方散布装置

【課題】 走行機体の前方に設けられた散布ブームによる除草剤等の散布に合わせて、タイヤ後方の轍部分への除草剤等の散布を行い、その際に、前記タイヤ後方の前記轍部分への前記除草剤等の散布が、前記走行機体の旋回時においても前記タイヤ後方に形成される前記轍から外れることがなく、該轍に追従して行われ、前記轍部分の薬効を維持する散布が行われるタイヤ後方散布装置を提供する。
【解決手段】 タイヤ22,23を操向させるナックル部1に基端部2aが取り付けられて前記タイヤ22,23と略平行に後方へ延長された支持杆2と、該支持杆2の先端部2bであり且つ前記タイヤ22,23の後方位置に下向きに設けられた散布ノズル3と、からなり、好ましくは、前記支持杆2が略中間部において折畳み自在であり且つ折畳み状態が維持可能に構成され、さらに好ましくは、前記タイヤ22,23と前記散布ノズル3との間に泥除け板8が介在させられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前方に散布ブームを有する乗用管理機による除草剤等の散布作業において機能するタイヤ後方散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体の前方に散布ブームを有する乗用管理機が提供されている(特許第3613315号公報、特許第3673428号公報等参照)。前記乗用管理機によって除草剤等の散布を行った場合には、前記走行機体の前方の散布ブームに設けられた散布ノズルから散布された除草剤等が、前記乗用管理機のタイヤによって踏み付けられ、該タイヤによって形成された轍部分の薬効が減退するという問題があった。
【0003】
そこで、前記轍部分の薬効を維持するためには、再度、前記轍部分に除草剤等を散布しなおす必要があるが、該散布は、きわめて時間と手数を要するという問題が残されていた。
【特許文献1】特許第3613315号公報
【特許文献2】特許第3673428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記事情に鑑み、前記走行機体の前方における前記散布ブームによる除草剤等の散布に合わせて、前記タイヤ後方の轍部分への除草剤等の散布行い、散布作業の効率化を図るものであり、その際に、前記タイヤ後方の轍部分への除草剤等の散布が、前記走行機体の旋回時においても前記タイヤ後方に形成される轍から外れることがなく、該轍に追従して行なわれ、該轍部分の薬効を維持する散布を行うことを目的とする。その他、タイヤに付いた泥、土などがタイヤグリップを下げてしまい、作業時、走行時に本来の走行トルクを回復させるタイヤ洗浄装置としても利用が可能であることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的達成のために、本発明のタイヤ後方散布装置は、タイヤを操向させるナックル部に基端部が取り付けられて前記タイヤと略平行に後方へ延長された支持杆と、該支持杆の先端部であり且つ前記タイヤの後方位置に下向きに設けられた散布ノズルと、からなるものである(請求項1)。
【0006】
本発明が適用されるのは、前記走行機体の前方に前記散布ブームを有する乗用管理機であり、前タイヤと後タイヤの旋回軌跡が異なる場合には、該後タイヤのみではなく、前記前タイヤにも適用される。
【0007】
また、前記本発明は、その詳細を図示しないが、前記支持杆の先端部であり且つ前記タイヤの後方位置に下向きに設けられた前記散布ノズルが、前記走行機体の前方の前記散布ブームと連通させられ、あるいは別に設けた薬液ポンプ等と連通させられて使用される。
【0008】
そして、前記走行機体の走行に合わせて、該走行機体の前方の前記散布ブームに設けられた散布ノズルからの除草剤等の散布が行われ、該前方における除草剤等の散布に合わせて、前記支持杆の先端部に設けられた前記散布ノズルからも前記タイヤの後方に形成された轍に向けて除草剤等の散布が行われる。
【0009】
前記本発明では、前記支持杆の基端部が、前記タイヤを操向させるナックル部に取り付けられているため、前記走行機体の旋回に伴い前記タイヤの向きが一時的に変わった場合であっても、前記支持杆の先端部に設けられた前記散布ノズルが、前記タイヤの後方に形成された轍から外れることがない。したがって、前記走行機体の通過後には、前記轍部分を含めて均一に除草剤等の散布が行われる。
【0010】
本発明の実施の一形態は、前記支持杆が略中間部において折畳み自在であり且つ折畳み状態を維持可能に構成されたことを特徴とする(請求項2)。この実施の一形態によれば、散布作業を行わない前記走行機体の走行時、作業終了時及び格納時等には、前記支持杆を折畳み、コンパクトに形成することにより、人、物との接触等による本装置の損傷を防止することができる。
【0011】
本発明の実施の一形態は、前記タイヤと前記散布ノズルとの間に泥除け板を介在させたことを特徴とする(請求項3)。この実施の一形態によれば、前記タイヤの泥はねによる前記散布ノズルの汚損を防止できる。
【0012】
本発明の実施の一形態は、前記散布ノズルの向きをタイヤの方向へ変更可能としたことを特徴とする(請求項4)。この実施の一形態によれば、前記散布ノズルを前記タイヤの方向へ向けて、清水等を噴射しながら走行することにより、タイヤを自動洗浄することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行機体前方における散布ブームによる除草剤等の散布に合わせて、タイヤの後方の轍部分への除草剤等の散布を行うことができるため、散布作業の効率化が図られる。また、その際に、前記タイヤ後方の轍部分への除草剤等の散布が、走行機体の旋回時においても前記タイヤの後方に形成される轍から外れることがなく、該轍に追従して行われ、該轍部分の薬効を維持することができる。その他、タイヤの自動洗浄装置としても利用できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための一形態を説明する。図1は、本発明の一実施例に係るタイヤ後方散布装置部の一部切り欠き側面図、図2は、本発明の一実施の形態に係るタイヤ後方散布装置とタイヤの関係を示す平面図、図3は、本発明の他の実施の一形態を示す一部切り欠き側面図、図4は、図3の要部の平面図、図5は、走行機体の前方に散布ブームを有する乗用管理機の一例を示す一部省略平面図である。
【0015】
図5は、走行機体20の前方に散布ブーム21を有する乗用管理機の一例であり、前タイヤ22及び後タイヤ23を有する。
【0016】
図中、24は、前記散布ブーム21に所定間隔をあけて設けられた散布ノズル、25は、薬液タンク、26は、内燃エンジン、27は、運転席、28は、操舵用ハンドル、29は、薬液ポンプである。また、30、31は、轍である。
【0017】
図1には、本発明のタイヤ後方散布装置が示されている。すなわち、後タイヤ23(さらには、前タイヤ22)を操向させるナックル部1に基端部2aが取り付けられて前記後タイヤ23と略平行に後方へ延長された支持杆2と、該支持杆2の先端部2bであり且つ前記後タイヤ23の後方位置に下向きに設けられた散布ノズル3と、からなる。
【0018】
図面実施の一形態では、前記支持杆2の前記基端部2aが、前記ナックル部1にボルト等4により取り付けられ、先端部2bが、前記後タイヤ23の後方へ向けて折り曲げられ、その先端に前記散布ノズル3が下向きに設けられている。図中、5は、前記散布ノズル3への薬液供給ホース、6は、前記支持杆2の補強杆であり、ボルト等7により前記ナックル部1から設けられている。
【0019】
また、前記後タイヤ23と前記散布ノズル3との間には、泥除け板8が介在させられる。図面実施の一形態では、前記泥除け板8は、前記散布ノズル3の取り付け部から設けられている。
【0020】
前記構成のタイヤ後方散布装置は、走行機体20の旋回時における前記後タイヤ23の方向が変化させられた場合であっても、図2に示すように、前記散布ノズル3が常に前記後タイヤ23の後方に位置する。したがって、前記後タイヤ23の後方に形成される轍31(さらには、轍30)から外れることがなく、該轍31に追従して除草剤等の散布が行われる。
【0021】
図3及び図4には、他の実施の一形態が示されている。すなわち、前記支持杆
2が略中間部において折畳み自在であり且つ折畳み状態を維持できる構成とされ
ている。
【0022】
具体的には、前記支持杆2が略中間部において、固定側支持杆2cと揺動側支
持杆2dに分割され、前記固定側支持杆2cの先端にジョイント金具9を設け、
該ジョイント金具9に、前記揺動側支持杆2dの後端部をピン10によって枢支
して上方へ折畳み自在に構成してなる。
【0023】
さらに、前記上方へ折畳んだ後の折畳み状態の維持は、前記揺動側支持杆2d
の、例えば後端部を、前記ジョイント金具9に対して蝶ネジ11によって固定する方法によって行っている。もっとも、前記折畳み方向、折畳み方法及び折畳み状態の維持手段は、前記の手段に限られるものではなく、各種公知の方法を採用することができる。
【0024】
さらに、前記散布ノズル3の向きを前記タイヤ22,23方向へ変更可能に構成することが好ましい。それらの構成は、前記支持杆2の先端部2bに、前記散布ノズル3部を固定することなく、前記タイヤ22,23の方向へ揺動自在に支持し、また、固定自在に構成することにより行われる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係るタイヤ後方散布装置部の一部切り欠き側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るタイヤ後方散布装置とタイヤとの関係を示す平面図である。
【図3】本発明の他の実施の一形態を示す一部切り欠き側面図である。
【図4】図3の要部の平面図である。
【図5】走行機体の前方に散布ブームを有する乗用管理機の一例を示す一部省略平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ナックル部
2 支持杆
3 散布ノズル
8 泥除け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(22,23)を操向させるナックル部(1)に基端部(2a)が取り付けられて前記タイヤ(22,23)と略平行に後方へ延長された支持杆(2)と、該支持杆(2)の先端部(2b)であり且つ前記タイヤ(22,23)の後方位置に下向きに設けられた散布ノズル(3)と、からなるタイヤ後方散布装置。
【請求項2】
前記支持杆(2)が略中間部において折畳み自在であり且つ折畳み状態を維持可能に構成された請求項1に記載のタイヤ後方散布装置。
【請求項3】
前記タイヤ(22,23)と前記散布ノズル(3)との間に、泥除け板(8)を介在させた請求項1又は2に記載のタイヤ後方散布装置。
【請求項4】
前記散布ノズル(3)の向きをタイヤ(22,23)方向へ変更可能とした請求項1、2又は3に記載のタイヤ後方散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−222027(P2007−222027A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43926(P2006−43926)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【Fターム(参考)】