説明

タイヤ搬送装置

【課題】タイヤの搬送所要時間の短縮化、更には、タイヤのセンタリング動作に要する時間の短縮化を図る。
【解決手段】水平姿勢でタイヤWを前後方向に搬送する搬送径路と直交する左右両側からタイヤWを把持可能なタイヤ把持装置17A,17Bを、前後間隔をもって2台配備し、前後の各タイヤ把持装置17A,17Bには、搬送径路を挟んで対向する左右一対のタイヤ支持機構20を備え、2台のタイヤ把持装置17A,17Bの前後間隔に等しいストロークで2台のタイヤ把持装置17A,17Bを一体に前後移動させる駆動手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造ライン等においてタイヤを搬送するタイヤ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造ラインに利用されるタイヤ搬送装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、ローラコンベアを用いるのが一般的であり、載置したタイヤを駆動回転されるローラ群で搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−329658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ローラコンベアでは、搬送速度を高めるためにローラ回転速度を上げると、タイヤとローラとの間でスリップが発生しやすくなる。このために搬送速度にムラが生じたり、タイヤ搬送方向にズレが発生するおそれがあり、このような不具合の発生することのない低速での搬送を強いられていた。
【0005】
また、例えば、タイヤの動的釣合いを試験するタイヤ試験システムでは、タイヤ搬送径路に沿って配置された複数の処理ステージごとに、搬送されてきたタイヤのセンタリング動作を行う必要があり、ローラコンベアによる搬送所要時間とは別にセンタリング動作の時間が必要となる。更に、処理ステージ内のタイヤを次の処理ステージへ搬出した後に、次のタイヤを当該処理ステージ内に搬入する、すなわち、タイヤの搬出と次のタイヤの搬入とを同時に行えず、時間的なずれが生じるのを回避できず、上記のセンタリング動作に要する時間と共にタイヤ試験システムにおける試験時間の短縮化を阻む一因となっていた。
【0006】
また、タイヤ試験システムの測定処理ステージでタイヤのアンバランスを測定した後、次のマーキング処理ステージへローラコンベアによってタイヤを搬送する際に、タイヤが回転してしまって周方向の位置が変化し、測定したアンバラス位置がずれてしまい、マーキング処理ステージで正しい位置にマーキングができない場合がある。
【0007】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、タイヤの搬送所要時間の短縮化を図ることを主たる目的とし、更には、タイヤ試験システムの試験時間の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
【0009】
(1)本発明のタイヤ搬送装置は、タイヤを外周側又は内周側から把持するタイヤ把持手段を前記タイヤの搬送方向に沿って複数備えると共に、前記複数のタイヤ把持手段を前記搬送方向に沿って移動させる駆動手段を備え、前記駆動手段は、前記搬送方向の上流側のタイヤ把持手段、及び、その下流側のタイヤ把持手段を、タイヤをそれぞれ把持した状態で前記搬送方向の下流側へ共に移動させる。
【0010】
本発明のタイヤ搬送装置によると、タイヤ把持手段によってタイヤを外周側又は内周側から把持し、タイヤ把持手段を搬送方向に移動させるので、ローラコンベアによってタイヤを搬送する従来例のようにタイヤとローラとの間でスリップが発生するといったことがなく、高速なタイヤの搬送が可能となると共に、搬送中にタイヤが回転して周方向の位置がずれるといったこともない。
【0011】
しかも、タイヤ把持手段でタイヤを外周側又は内周側から把持する際に、タイヤのセンタリングを行うことができ、センタリングした状態のタイヤを次の処理ステージに送り込むことができ、その処理ステージでは、タイヤのセンタリングを行う必要がなく、また、上記のタイヤの回転によるずれも生じないので、直ちに所定の処理を行なうことができる。
【0012】
また、タイヤの搬送方向の上流側、及び、その下流側の各タイヤ把持手段を、それぞれタイヤを把持した状態で共に下流側へ移動させるので、各タイヤ把持手段で各タイヤをそれぞれ把持して同時に下流側へ搬送することができる、すなわち、処理ステージ内のタイヤを下流側のタイヤ把持手段によって次の処理ステージに搬出すると同時に、上流側のタイヤ把持手段によって次のタイヤを当該処理ステージ内に搬入することができ、搬送方向に沿って配置された複数の処理ステージへタイヤを同時に順送りすることができる。これによって、複数の処理ステージを備えるタイヤ試験システムなどにおける処理時間を一層短縮することができる。
【0013】
(2)本発明のタイヤ搬送装置の他の実施態様では、前記駆動手段は、前記タイヤ把持手段を前記搬送方向に沿って移動させる移動体を備え、該移動体が、前記タイヤの搬送経路を挟む両側又は一方側に配置された移動経路に沿って移動する。
【0014】
この実施態様によると、タイヤ把持手段を移動させるための移動経路や移動体等の移動機構は、タイヤの搬送経路を挟む両側又は一方側に配置されるので、タイヤの搬送経路の上方の空いた空間を利用して、各種のタイヤ処理装置、例えば、タイヤのダイナミックバランスを測定する測定装置の下リムに載置された測定タイヤに対して、上方から上リムを昇降させる昇降装置やタイヤに対して、ダイナミックバランスの測定結果を刻印する刻印ヘッドを昇降させるマーキング装置などを配置することができる。
【0015】
(3)上記(2)の実施態様では、前記移動経路を、前記タイヤの搬送経路に沿って延びるレールとし、前記移動体を、前記タイヤ把持手段を搭載支持して前記レールに沿って移動する可動台としてもよい。
【0016】
この実施態様によると、タイヤ把持手段は、タイヤの搬送経路を挟む両側又は一方側に配置されたレールに沿って移動する可動台に搭載支持されてタイヤの搬送方向に沿って移動するので、タイヤの搬送経路上は空いた空間とすることができ、例えば、上述の上リムを昇降させる昇降装置や刻印ヘッドを昇降させるマーキング装置などの昇降動作を妨げることがない。
【0017】
(4)本発明のタイヤ搬送装置の他の実施態様では、前記タイヤ把持手段は、水平姿勢の前記タイヤを、その外周の両側から挟むように把持し、前記駆動手段は、前記搬送方向の上流側のタイヤ把持手段、及び、その下流側のタイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って同時に移動させる。
【0018】
この実施態様によると、タイヤ把持手段は、水平姿勢のタイヤを、その外周の両側から挟むように把持するので、タイヤのセンタリングを行うことができ、また、駆動手段は、搬送方向の上流側及びその下流側のタイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って同時に移動させるので、処理ステージ内のタイヤを下流側のタイヤ把持手段によって次の処理ステージに搬出すると同時に、上流側のタイヤ把持手段によって次のタイヤを当該処理ステージ内に搬入することができる。
【0019】
(5)本発明のタイヤ搬送装置の更に他の実施態様では、前記タイヤ把持手段は、水平姿勢の前記タイヤを、その内周側から拡げるように把持し、前記駆動手段は、前記搬送方向の上流側のタイヤ把持手段、及び、その下流側のタイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って同時に移動させる。
【0020】
この実施態様によると、タイヤ把持手段は、水平姿勢のタイヤを、その内周側から拡げるようにして把持するので、タイヤのセンタリングを行うことができ、また、駆動手段は、搬送方向の上流側及びその下流側のタイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って同時に移動させるので、処理ステージ内のタイヤを下流側のタイヤ把持手段によって次の処理ステージに搬出すると同時に、上流側のタイヤ把持手段によって次のタイヤを当該処理ステージ内に搬入することができる。
【0021】
(6)上記(4)の実施態様では、前記タイヤ把持手段は、対向するタイヤ把持部を有し、前記タイヤ把持部は、互いに近接または離間移動可能であると共に、昇降可能であって、互いに近接移動して前記タイヤを両側から挟むように把持可能としてもよい。
【0022】
この実施態様によると、対向するタイヤ把持部を、互いに近接する方向へ揺動させることによって、タイヤをその両側から挟み込んで把持するので、簡単かつ確実にタイヤ把持部の中心に位置合わせ、すなわち、センタリングすることができる。
【0023】
また、タイヤ把持部は、昇降可能であるので、タイヤを把持したタイヤ把持部を上昇させることで、タイヤが載置されていたローラコンベア等からタイヤを完全に持ち上げた状態で搬送することができ、高速な搬送が可能となる。
【0024】
(7)上記(4)の実施態様では、前記タイヤ把持手段は、互いに近接方向または離間方向へ水平揺動可能であるタイヤ把持部を有し、前記タイヤ把持部は、昇降可能であって、互いに近接する方向へ揺動して前記タイヤを両側から挟むように把持可能としてもよい。
【0025】
この実施態様によると、タイヤ把持部を、互いに近接する方向へ揺動させることによって、タイヤを両側から挟んでタイヤ把持部の中心に位置合わせ(センタリング)することができる。
【0026】
また、タイヤ把持部は、昇降可能であるので、タイヤを把持したタイヤ把持部を上昇させることで、タイヤが載置されていたローラコンベア等からタイヤを完全に持ち上げた状態で搬送することができ、高速な搬送が可能となる。
【0027】
(8)上記(5)の実施態様では、前記タイヤ把持手段は、前記タイヤの孔に上方より挿抜される昇降可能なタイヤ把持部を有し、該タイヤ把持部は、内外方向に移動可能な複数の支持体を有し、前記複数の支持体を、前記タイヤの孔に挿入して外方向に移動させて前記タイヤを内周側から拡げるように把持可能としてもよい。
【0028】
この実施態様によると、タイヤの孔に支持体を挿入して外方向に移動させることで、タイヤを内周側から支持してタイヤ把持部の中心に位置合わせ(センタリング)することができる。
【0029】
また、タイヤ把持部は、昇降可能であるので、タイヤを把持したタイヤ把持部を上昇させることで、タイヤが載置されていたローラコンベア等からタイヤを完全に持ち上げた状態で搬送することができ、高速な搬送が可能となる。
【0030】
(9)本発明のタイヤ搬送装置の他の実施態様では、前記タイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って2台備え、前記タイヤの搬送経路には、前記タイヤが搬入される搬入ステージ、タイヤのダイナミックバランスを測定する測定ステージおよびタイヤにマーキングするマーキングステージが、前記搬送方向に沿って等間隔で配置され、前記駆動手段は、前記2台の両タイヤ把持手段を、前記等間隔と同一のストロークで前記搬送方向に沿って移動させる。
【0031】
この実施態様によると、等間隔に配置された各ステージの前記等間隔と同一のストロークで2台のタイヤ把持装置を一体に搬送方向に移動できるので、例えば、一方のタイヤ把持装置によって、搬入ステージでの処理を終えたタイヤを、センタリングして測定ステージに搬送すると同時に、他方のタイヤ把持装置によって、測定ステージでの測定を終えたタイヤを、センタリングしてマーキングステージに搬送するといったことが可能となる。このようにタイヤのセンタリングを行いながら、各ステージ間のタイヤの搬送を高速に行えるので、各ステージを備えるタイヤ試験システムにおけるタイヤの試験処理に要する時間を短縮できることになる。
【発明の効果】
【0032】
このように、本発明によれば、タイヤを把持して搬送するので、スリップのない高速なタイヤ搬送が可能になると共に、搬送中におけるタイヤの回転ずれを防止することができる。また、タイヤを把持することでタイヤのセンタリングも同時に行うことができるので、複数の処理ステージにタイヤを順次搬送する場合に、各処理ステージでのセンタリング時間を節減でき、しかも、複数の各タイヤ把持手段を同時に移動させることによって、各処理ステージ間のタイヤの搬送を同時に行うことができ、全体として処理時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】タイヤダイナミックバランス測定システムの平面図である。
【図2】測定ステージの正面図である。
【図3】マーキングステージの後面図である。
【図4】タイヤ搬送装置の正面図である。
【図5】前後移動用の駆動構造を示す概略側面図である。
【図6】タイヤ支持機構の平面図である。
【図7】タイヤ支持機構の一部を縦断した側面図である。
【図8】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図9】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図10】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図11】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図12】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図13】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図14】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図15】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図16】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図17】タイヤ搬送作動を示す平面図である。
【図18】他の実施形態のタイヤ搬送装置を備えたタイヤダイナミックバランス測定システムの平面図である。
【図19】図18の実施形態におけるタイヤ搬送装置の正面図である。
【図20】図18の実施形態におけるタイヤ支持機構の平面図である。
【図21】図18の実施形態におけるタイヤ支持機構の正面図である。
【図22】タイヤ支持機構の更に別の実施形態を示す平面図である。
【図23】タイヤ支持機構の更に別の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ搬送装置を備えるタイヤ試験システムとしてのタイヤダイナミックバランス測定システムの平面図である。このタイヤダイナミックバランス測定システムは、タイヤのダイナミックバランスを測定するものであり、タイヤの搬送方向である前方から後方(図中右方から左方)に向けて、搬入ステージ1、測定ステージ2、および、マーキングステージ3がこの順に前後直列に配置されると共に、これらステージ1,2,3に順次タイヤWを搬送するタイヤ搬送装置4が配備されている。
【0036】
ここで、搬入ステージ1の中心位置aと測定ステージ2の中心位置bとの前後間隔と、測定ステージ2の中心位置bとマーキングステージ3の中心位置cとの前後間隔が同一に設定されている。
【0037】
搬入ステージ1には、左右一対のベルト式の搬入コンベア5が備えられ、水平姿勢で搬送されてきたタイヤWを載置してステージ中心まで搬送するように構成されている。また、左右の搬入コンベア5は、それぞれ正逆転可能なサーボモータ6によって独立して駆動されるものであり、左右の搬入コンベア5を正方向に同調駆動することで、載置したタイヤWを後方に搬送することができ、左右の搬入コンベア5を互いに逆方向に同調駆動することで、載置したタイヤWをコンベア5上で自転回動させることができるようになっている。
【0038】
また、この搬入ステージ1では、搬入されてきたタイヤWにおけるビード部の内周に塗布ローラ7を介して石鹸水などの剥離液を予め塗布する。この剥離液塗布は、後方の測定ステージ2において、リムにタイヤWを嵌合装着して動的釣合いの測定処理を行った後、リムからタイヤWを取り外す際に、リムにタイヤWのビード部が貼り付いてしまって分離し難くなるのを防止するために施される。
【0039】
図2に示すように、測定ステージ2は、タイヤWを回転させた際にアンバランスによって発生する水平方向の遠心力を計測して、動的釣合いや軽点などの演算を行うものであり、下リム8を連結して回動するスピンドル9を備えた計測装置10や、上リム11をスピンドル軸心上において昇降するリム昇降装置12が備えられている。
【0040】
計測装置10は、スピンドル9の上端に連結された下リム8と、下降されてスピンドル9に連結される上リム11との間にタイヤWを装填する。次に、上リム11と下リム8とで挟持したタイヤWに加圧空気を注入して所定の内圧まで膨張させる。この状態でスピンドル9を介してタイヤWを所定の速度で回転させ、アンバランスによって発生した水平方向での遠心力を、ロードセルを利用した荷重検出手段によって計測すると共に、同時にタイヤWの回転位置をロータリエンコーダなどで測定する。これらの測定データからタイヤWのアンバランス量と角度などの演算を行うよう構成されている。
【0041】
図3に示すように、マーキングステージ3は、測定ステージ2の測定結果に基づく軽点位置などを、タイヤWの側面に押捺するものである。このマーキングステージ3には、熱転写のテープに刻印ヘッドを押圧してタイヤ側面の所定位置に転写する押捺ヘッド13aを昇降可能に装備したマーキング装置13が配備されると共に、モータ駆動される幅広ベルト式の搬出コンベア14が備えられている。
【0042】
図4はタイヤ搬送装置の正面図、図5は前後移動用の駆動構造を示す概略側面図、図6はタイヤ支持機構の平面図、図7はタイヤ支持機構の一部を縦断した側面図である。これら図4〜図7及び上述の図1に基づいて、タイヤ搬送装置4の詳細な構造を説明する。
【0043】
タイヤ搬送装置4は、タイヤの搬送方向である前後方向の搬送径路の左右両脇に固定配備された前後に長いベース15と、ベース15に前後移動可能に装備された移動体としての前後可動台16と、この前後可動台16の前後2箇所に搭載装着された2台のタイヤ把持手段としてのタイヤ把持装置17A,17Bとで構成されている。
【0044】
左右の各ベース15の上面には、該ベース15と共に前後可動台16の移動経路を構成する前後に長い左右一対のレール18が搬送径路の両側に平行に設けられており、このレール18にスライダ19を介して前後移動可能に前後可動台16が搭載されている。また、前後可動台16の前後に装備されたタイヤ把持装置17A,17Bのそれぞれは、左右一対のタイヤ支持機構20を、搬送径路を挟んで互いに対向配備している。
【0045】
各前後可動台16の下面には、前後方向に沿ってラック21が歯部を下向きにして装備されると共に、このラック21に噛み合うピニオンギヤ22が、図4及び図5に示すように、ベース15の前後中央部位において左右水平に架設された左右に長い回転支軸23に連結されている。回転支軸23は、左右のベース15に亘って架設されると共に、一方のベース15に備えたサーボモータ24と回転支軸23とが歯付きベルト25を介して巻き掛け連動されている。
【0046】
このように、サーボモータ24を正転あるいは逆転させることで、左右のピニオンギヤ22を回動して前後可動台16を前後移動させて、前後2台のタイヤ把持装置17A,17Bを同調して一体に前後移動させる駆動手段が構成されている。
【0047】
このようにタイヤ把持装置17A,17Bを、タイヤWの搬送方向に沿って移動させる駆動手段を、タイヤWの搬送経路の両側およびその下方に配置したので、タイヤWの搬送経路の上方の空間は空いたスペースとなり、測定ステージ2におけるダイナミックバランスを測定する計測装置10の上リム11の昇降、あるいは、マーキングステージ3におけるマーキング装置13の押捺ヘッド13aの昇降を妨げることがなく、一連の処理を効率的に行なうことができる。
【0048】
各タイヤ把持装置17A,17Bのタイヤ支持機構20には、前後可動台16にスライド昇降可能に支持された昇降台26と、この昇降台26に対して左右移動可能に支持された左右可動台27と、左右可動台27の搬送径路側の端部に取り付けたタイヤ把持部28とが備えられている。
【0049】
昇降台26からは4本のガイド軸29が下方に向けて延出されると共に、このガイド軸29が、前後可動台16に備えたスライドボス30に上下スライド自在に挿通支持されている。また、昇降台26から下方にラック軸31が延出されると共に、このラック軸31に噛み合うピニオンギヤ32、および、ピニオンギヤ32を正逆に回転駆動するサーボモータ33が前後可動台16に備えられている。このようにサーボモータ33を正転あるいは逆転させることで、ピニオンギヤ32を回動させて昇降台26を昇降させる昇降駆動手段が構成されている。
【0050】
左右可動台27は、昇降台26の上面に備えたレール39にスライダ40を介して左右移動可能に搭載されると共に、左右可動台27の後部には、歯部を上向きにしたラック41が左右向きに取り付けられている。このラック41に噛み合うピニオンギヤ42、および、このピニオンギヤ42を正逆に回転駆動するサーボモータ43が昇降台26に備えられている。このようにサーボモータ43を正転あるいは逆転させることで、ピニオンギヤ42を回動させて左右可動台27を、搬送経路に直交する方向である左右に移動させる直交方向駆動手段が構成されている。
【0051】
タイヤ把持部28は、左右可動台27の搬送径路側の端部に水平片持ち状に連結された二股状の支持アーム44の各先端部に、図4及び図6に示すように、揺動部材としてのブラケット45の前後中間部を縦向き支点p周りに揺動自在に枢支連結すると共に、各ブラケット45の前後両端に縦向き姿勢の支持ローラ46を遊転自在に軸支装着して構成されている。左右可動台27の移動によって、ブラケット45に備えた4本の支持ローラ46を搬送径路に対して進出および後退させる、すなわち、搬送経路へ進入および搬送経路から退避させるよう構成されている。
【0052】
ブラケット45の中心部上面から横外方に向けて延出されたアーム45aの先端と、支持アーム44の基部上面に立設したバネ受けピン47に亘ってバネ48が張設されており、支持ローラ46に外力が作用しない通常時には、バネ48の張力によってブラケット45が前後方向に沿った姿勢、つまり、4本の支持ローラ46が前後一列状態となる姿勢に弾性保持されている。なお、ブラケット45の前後の二箇所と支持アーム44との間に、二つのバネをそれぞれ張設するようにしてもよい。
【0053】
この実施形態では、以上のように構成されており、次にタイヤWを各ステージに順次搬送して処理を施す場合の作動を図8〜図17を参照しながら説明する。なお、図面においては、タイヤWに搬送順番を示す番号を付す。
【0054】
(1)図8に示すように、成型されたタイヤW(1)が、図示されていない搬送手段によって前方から搬入ステージ1に水平姿勢で搬送されてくると、同調して正転回動する左右の搬入コンベア5に移載さて後方に搬送されてゆく。この時、塗布ローラ7は搬送面より下方に没入待機している。また、タイヤ搬送装置4の前後可動台16は前方移動位置にあって、前方、すなわち、タイヤWの搬送方向の上流側のタイヤ把持装置17Aが搬入ステージ1の中心位置aに位置すると共に、後方、すなわち、タイヤWの搬送方向の下流側のタイヤ把持装置17Bが測定ステージ2の中心位置bに位置する。また、両タイヤ把持装置17A,17Bにおける昇降台26は下降位置にあると共に、左右可動台27は退避位置にあって、左右のタイヤ把持部28がタイヤW(1)の移動を妨げない位置で待機している。
【0055】
(2)光電センサなどの検知出力に基づいて、タイヤW(1)の中心孔が塗布ローラ7の上方に到達すると、搬入コンベア5が停止されると共に、塗布ローラ7が上昇してタイヤW(1)の中心孔に下方から貫通される。
【0056】
(3)その後、前方のタイヤ把持装置17Aにおける左右のタイヤ支持機構20では、各サーボモータ43を同調駆動して、左右可動台27を搬送径路側に進出移動させて互いに近接させ、左右のタイヤ把持部28でタイヤW(1)を挟み込む。この場合、ブラケット45の前後両端に軸支された一対ずつの支持ローラ46がタイヤW(1)に押し付けられることで、相対的にブラケット45がバネ48を引き伸ばしながら揺動し、左右4本ずつのタイヤ支持ローラ46がタイヤW(1)に押し付けられる。
【0057】
この場合、タイヤW(1)がステージ中心からずれていると、8本の支持ローラ46のうちのいずれかがタイヤWに接触しないことになるが、8本の支持ローラ46の全てがタイヤW(1)に押し付けられる状態まで押し付けを行うことで、タイヤW(1)が押し動かされてステージ中心に位置合わせされる、すなわち、センタリングされる。
【0058】
このように左右のタイヤ支持機構20の各サーボモータ43を同調駆動して、左右のタイヤ把持部28でタイヤW(1)を挟み込んでセンタリングするので、高精度なセンタリングが可能となる。
【0059】
これに対して、例えば、先端に支持ローラを備えた複数本の揺動アームをそれぞれ左右に配置し、複数のエアシリンダによって各揺動アームを揺動させることによって、各支持ローラをタイヤに押圧してセンタリングする構成では、複数のエアシリンダを同調させるのが難しく、高精度なセンタリングが困難である。
【0060】
センタリングされたタイヤW(1)は、その内周(ビード部内周)が塗布ローラ7に接触した状態となる。
【0061】
(4)上記したタイヤW(1)のセンタリングが終了すると、図9に示すように、左右の搬入コンベア5が互いに逆向きに回転駆動され、これによってタイヤW(1)は支持ローラ46群で案内されながらコンベア上で所定の方向に自転回動され、遊転自在な塗布ローラ7によってタイヤW(1)のビード部内周に剥離液が塗布される。
【0062】
(5)タイヤW(1)を1回転以上自転回動させるに足る設定時間が経過すると、ビード部の内周全体の塗布が完了し、両搬入コンベア5が停止されると共に、塗布ローラ7が元の没入位置まで下降される。
【0063】
(6)剥離液塗布処理が完了すると、左右のタイヤ支持機構20においては、左右可動台27が再び搬送径路側に同調して進出駆動制御され、タイヤ把持部28の8本の支持ローラ46がタイヤW(1)に更に強く押し付けられる。これによってタイヤW(1)は滑落することなく左右のタイヤ支持機構20で挟持された状態となり、タイヤ把持装置17Aを、高速移動させ、あるいは、急停止させることが可能となる。
【0064】
(7)次に、左右のタイヤ支持機構20における各昇降台26が設定量だけ同調して上昇制御され、剥離液塗布処理が済んだタイヤW(1)を左右から挟持したまま、左右のタイヤ把持部28が同調上昇してタイヤW(1)を搬入コンベア5から持ち上げる。
【0065】
(8)次に、図10に示すように、左右の前後可動台16が同調して後方に移動され、持ち上げられたタイヤW(1)が後方に送られる。
【0066】
このように左右のタイヤ把持部28によってタイヤW(1)を両側から挟持して搬入コンベア5から持ち上げて後方に搬送するので、ローラコンベアによってタイヤを搬送する従来例のようにタイヤとローラとの間でスリップが発生するといったことがなく、タイヤW(1)の高速な搬送が可能となる。更に、ローラコンベアによってタイヤを搬送する従来例に比べて、振動及び騒音を低減することができる。またタイヤが回転しない。
【0067】
(9)前後可動台16の後方移動量は、各処理ステージ1,2,3における中心位置の前後間隔と同一に設定されており、従って、図11に示すように、前後可動台16の後方移動が停止した状態では、タイヤW(1)を把持した前方のタイヤ把持装置17Aが測定ステージ2の中心位置bに位置することになる。
【0068】
次に、左右のタイヤ支持機構20における各昇降台26が設定量だけ同調して下降制御される。これによってタイヤW(1)が下リム8に載置される。この場合、タイヤ把持装置17Aに把持されたタイヤWは、既にセンタリングされた状態にあるので、そのまま下降するだけで下リム8に正しく位置合わせされた状態で装填することができる。なお、上記のように後方所定位置まで前後可動台16が移動した状態では、後方のタイヤ把持装置17Bがマーキングステージ3の中心位置cに位置する。
【0069】
(10)タイヤW(1)の装填が完了すると、直ちに左右のタイヤ支持機構20における左右の左右可動台27が同調して後退移動されて互いに離間し、タイヤ把持部28における全ての支持ローラ46が、タイヤWから離れた元の待機状態に復帰されると共に、図12に示すように、前後可動台16が前方に移動される。前後可動台16が元の前方位置まで復帰すると、図13に示すように、再び前方のタイヤ把持装置17Aが搬入ステージ1の中心位置aに位置すると共に、後方のタイヤ把持装置17Bが、測定ステージ2の中心位置bに位置することになる。
【0070】
(11)測定ステージ2においては、上述の図2に示されるように、下リム8に嵌合装填されたタイヤW(1)の上に上リム11が降ろされ、上リム11の中心から下方に延出された連結軸11aがタイヤW(1)の中心孔を通してスピンドル9に挿入連結される。その後、上リム8と下リム11とで挟持したタイヤW(1)に加圧空気を注入して所定の内圧まで膨張させ、この状態でスピンドル9を介してタイヤW(1)を所定の速度で回転させ、アンバランスによって発生した水平方向の遠心力を計測すると共に、タイヤW(1)の回転位置を測定し、これらの測定データから動的釣合いや軽点位置などの演算が行われる。
【0071】
この測定処理の間に、搬入ステージ1では、図13,図14に示すように、上記(1)〜(5)の作動が実行され、次のタイヤW(2)がタイヤ把持装置17Aによってセンタリングされると共に、剥離液の塗布処理が行われる。
【0072】
(12)測定処理の完了した測定ステージ2においては、タイヤ内の抜気と上リム11の上昇退避が行われた後、左右のタイヤ把持機構20における左右可動台27が再び搬送径路側に同調して進出駆動制御され、計測処理の済んだタイヤW(1)が左右のタイヤ把持部28で強く挟持される。また、搬入ステージ1においては、上記(6)、(7)の作動が実行され、剥離液塗布処理の済んだタイヤW(2)が左右のタイヤ支持機構20によって強く挟持される。
【0073】
(13)次に、後方のタイヤ把持装置17Bにおいて、左右の昇降台26が設定量だけ同調して上昇制御され、測定処理の済んだタイヤW(1)を左右から挟持したまま左右のタイヤ把持部28が同調上昇され、タイヤWが下リム8から上方に抜き外される。他方、前方のタイヤ把持装置17Aにおいても上記(7)の動作が実行され、剥離液塗布処理の済んだタイヤW(2)が搬入コンベア5から持ち上げられる。
【0074】
(14)次に、図15に示すように、左右の前後可動台16が同調して後方に移動され、後方のタイヤ把持装置17Bで把持された測定処理済みのタイヤW(1)と、前方のタイヤ把持装置17Aで把持された剥離液塗布処理済みのタイヤW(2)とが同時に後方に送られる。
【0075】
(15)図16に示すように、前後可動台16の後方移動が停止した状態では、測定処理済みのタイヤW(1)を把持した後方のタイヤ把持装置17Bがマーキングステージ3の中心位置cに位置し、左右のタイヤ支持機構20における各昇降台26が設定量だけ同調して下降制御され、タイヤW(1)がセンタリングされた状態で搬出コンベア14に載置される。その後、マーキング装置13の押捺ヘッド13aが下降され、タイヤW(1)の上面(側面)の所定位置に所定の色および形状のマーク等が押捺される。他方、測定ステージ2においては、次のタイヤW(2)に対する上記(9),(10)の作動が実行される。
【0076】
なお、マーキングステージ3に搬入されるタイヤW(1)は、測定ステージ2から搬出される前に、計測によって求められ軽点などのマーキングポイントが、マーキング装置13における押捺ヘッド13aの直下位置になるように、スピンドル9を回動制御してその回転姿勢が予め修正されている。
【0077】
そして、搬出コンベア14へのタイヤW(1)の搬入載置が済むと、後方のタイヤ把持装置17Bにおける左右のタイヤ把持部28は退避移動してタイヤW(1)から離れ、直ちに前後可動台16が前方に復帰移動する。これによって、図17に示すように、前方のタイヤ把持装置17Aは搬入ステージ1に、また、後方のタイヤ把持装置17Bが測定ステージ2にそれぞれ移動される。
【0078】
(16)マーキングステージ3でのマーキング処理が終了すると、押捺ヘッド13aが上方待機位置まで上昇復帰されると共に、搬出コンベア14が起動されて、マーキング処理の済んだタイヤW(1)が後方に搬出されてゆく。
【0079】
このように、前後2台のタイヤ把持装置17A,17Bを同調して所定のストロークで2回往復前後移動させることで、搬入ステージ1,測定ステージ2、および、マーキングステージ3への搬送によってタイヤWを高速で順送りすることができる。
【0080】
〔第2実施形態〕
図18に他の実施形態のタイヤ搬送装置を備えたタイヤダイナミックバランス測定システムの平面図が示されており、図19はタイヤ搬送装置の正面図、図20はタイヤ支持機構の平面図、図21はタイヤ支持機構の要部の正面図である。
【0081】
この実施形態において、タイヤ搬送装置4は、タイヤの搬送方向である前後方向の搬送径路の一側脇に固定配備された前後に長いベース15と、ベース15に前後移動可能に装備された前後可動台16と、この前後可動台16の前後2箇所に搭載装着された2台のタイヤ把持装置17A,17Bとで構成されている。
【0082】
上記第1実施形態と同様に、ベース15の上面には、前後に長い左右一対のレール18が搬送径路と平行に設けられ、このレール18にスライダ19を介して前後移動可能に前後可動台16が搭載されている。前後可動台16の駆動構造は第1実施形態と同様であり、図19に示すように、前後可動台16の下面に前後方向に沿ってラック21が歯部を下向きにして装備されると共に、このラック21に噛み合うピニオンギヤ22が、ベース15の前後中央部位において軸支され、ベース15に備えたサーボモータ24に歯付きベルト25を介して巻き掛け連動されている。
【0083】
このように、サーボモータ24を正転あるいは逆転させ、ピニオンギヤ22を回動することで、前後可動台16を前後移動させて、前後2台のタイヤ把持装置17A,17Bを同調して一体に前後移動させる駆動手段が構成されている。
【0084】
各タイヤ把持装置17A,17Bのタイヤ支持機構20には、上記実施形態と同様に、前後可動台16にレール39およびスライダ40を介して左右に駆動移動可能に装備した左右可動台27と、この左右可動台27のタイヤ搬送経路側の端部に縦レール50およびスライダ51を介して上下移動可能に支持された昇降枠52と、昇降枠52の遊端側に取り付けたタイヤ把持部28とを備えている。また、昇降枠52は、サーボモータ53によって正逆回転される送りネジ54によってネジ送り駆動されるようになっている。
【0085】
前記タイヤ把持部28は、縦向き姿勢の3本の支持ローラ46で構成されており、各支持ローラ46は、昇降枠52の下側に、図20及び図21に示す支点q回りに水平揺動可能に軸支した揺動アーム55の遊端に遊転自在に軸支されている。
【0086】
また、各揺動アーム55の支軸56が昇降枠52を貫通して上方に突出され、各支軸56の上方突出部に、支軸56を介して各揺動アーム55と一体に揺動する操作アーム57が連結されると共に、一つの操作アーム57がシリンダ58によって駆動揺動されるようになっている。さらに、この駆動される操作アーム57と他の操作アーム57とが連係リンク59によって順次連結され、3つの操作アーム57を同時に揺動することで、3本の支持ローラ46を内外に同期して揺動移動するように構成されている。
【0087】
なお、一つの操作アーム57の揺動が、図20及び図21に示すようにギヤ機構60を介してロータリエンコーダ61に伝達され、操作アーム57の揺動位置から支持ローラ46の揺動位置が検出されるようになっており、ロータリエンコーダ61の検出情報に基づいてシリンダ58を制御することで、支持ローラ46群の位置制御を行うよう構成されている。
【0088】
ここで、支持ローラ46が内方に移動されてタイヤ把持部28の中心近くにまとめられた状態では、昇降枠52を昇降して支持ローラ46群をタイヤWの中央孔に上方から挿抜することができ、また、タイヤWの中央孔に挿入した支持ローラ46群を外方に同期移動させることで、支持ローラ46群でタイヤWのビード部内周を押し拡げるように支持して、タイヤWをタイヤ把持部28の中心に位置合わせ(センタリング)することができる。また、支持ローラ46群でタイヤWを内周側から押圧支持した状態で昇降枠52を昇降することで、タイヤWを昇降することができる。
【0089】
このように構成されたタイヤ搬送装置4によると、第1実施形態と同様に、前後可動台16をステージ間隔に対応したピッチで前後移動することで、前後のタイヤ把持装置17A,17Bで把持したタイヤWを各ステージ1,2,3の中心位置(a),(b),(c)に順送りすることができる。
【0090】
〔第3実施形態〕
図22に、更に別の実施形態のタイヤ搬送装置4を備えたタイヤダイナミックバランス測定システムが示されている。
【0091】
この実施形態では、タイヤ把持装置17A,17Bにおけるタイヤ支持機構20は、昇降枠52と、昇降枠52の遊端側に取り付けたタイヤ把持部28とを備えている。なお、図示されていないが、昇降枠52は、サーボモータによって正逆回転される送りネジによってネジ送り駆動されるようになっている。
【0092】
昇降枠52には、水平揺動可能な前後一対の作動アーム65が備えられ、両作動アーム65が、反転ギヤ機構66を介してシリンダ67に連動連結され、両作動アーム65が互いに逆方向に同期して駆動揺動されるようになっている。そして、各作動アーム65の遊端にタイヤ把持部28が装備されている。
【0093】
タイヤ把持部28は、作動アーム65の遊端に水平揺動可能に装着された揺動部材68と、その揺動部材68の両端に遊転自在に軸支した一対ずつの支持ローラ46とで構成されている。
【0094】
従って、両作動アーム65を互いに接近するよう駆動揺動させることで、前後のタイヤ把持部28における支持ローラ46がタイヤWを外周から押圧支持してセンタリングしながら把持することができ、この状態で昇降枠52を上昇することで、把持したタイヤWを持上げることができる。
【0095】
このように構成されたタイヤ搬送装置4によると、第1実施形態と同様に、前後可動台16をステージ間隔に対応したピッチで前後移動することで、前後のタイヤ把持機構17a,17Bで把持したタイヤWを各ステージ1,2,3の中心位置(a),(b),(c)に順送りする。
【0096】
〔第4実施形態〕
図23に、更に別の実施形態のタイヤ搬送装置4を備えたタイヤダイナミックバランス測定システムが示されている。
【0097】
この実施形態では、タイヤ把持装置17A,17Bにおけるタイヤ支持機構20は、昇降枠52と、昇降枠52の遊端側に取り付けたタイヤ把持部28とを備えている。なお、図示されていないが、昇降枠52は、ネジ送り駆動手段やシリンダによって駆動昇降されるようになっている。
【0098】
昇降枠52には前後に長い支持部52aが備えられ、この支持部52aの下側に前後一対のタイヤ把持部28が備えられている。タイヤ把持部28は、前後に長い案内レール69を介して平行に前後移動可能な前後一対の支持部材70と、各支持部材70の左右両端部に遊転自在に軸支した一対の支持ローラ46とで構成されている。
【0099】
支持部52aの前後中央には、サーボモータ71にギヤ連動された作動アーム72が備えられ、この作動アーム72の両端と各支持部材70とが連係ロッド73を介して連動連結され、作動アーム72の正逆揺動によって、各支持部材70が互いに接近あるいは離反するよう前後移動するようになっている。
【0100】
従って、両支持部材70を互いに接近するよう平行移動させることで、対向する前後のタイヤ把持部28における支持ローラ46がタイヤWを外周から押圧支持してセンタリングしながら把持することができ、この状態で昇降枠52を上昇することで、把持したタイヤWを持上げることができる。
【0101】
このように構成されたタイヤ搬送装置4によると、第1実施形態と同様に、前後可動台16をステージ間隔に対応したピッチで前後移動することで、前後のタイヤ把持装置17A,17Bで把持したタイヤWを各ステージ1,2,3の中心位置(a),(b),(c)に順送りすることができる。
【0102】
(他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0103】
(1)上記第1実施形態において、各タイヤ把持部28における二股状の支持アーム44の各先端部にそれぞれ支持ローラ46を備えて、4本の支持ローラ46でタイヤWを把持する簡易な形態で実施することもできる。
【0104】
(2)タイヤWを挟持して把持する支持ロー46の表面を滑り止め面に形成して、挟持して持ち上げたタイヤWの滑落を阻止するようにしておくことが好ましい。滑り止め面としては、梨地面などの粗面、小さい凹凸を多数備えたもの、環状の溝や突条を多数形成したもの、などが有効となる。
【0105】
(3)前後のタイヤ把持装置17A,17Bを同調して前後に移動させる駆動手段として、例えば、レール18に沿って移動可能な前後可動台16を、正逆に回動されるチェーンあるいはベルト等の無端帯に連結すると共に、前後可動台16の前後端に対向するストッパをベース15に設けて、両タイヤ把持装置17A,17Bの停止位置を当接規制する構造を利用することもできる。
【0106】
(4)左右可動台27を左右移動させる駆動手段として、送りネジをサーボモータで正逆駆動して、ネジ送り移動させる構造を利用することもできる。
【0107】
(5)上述の実施形態では、タイヤのダイナミックバランスを試験するタイヤダイミックバランス測定システムに適用して説明したけれども、タイヤのユニフォミティの測定システムに適用してもよく、更に、測定システムに限らず、タイヤ製造ライン等のタイヤの搬送に適用できるものである。また、タイヤ把持装置の数も2台に限らず、3台以上としてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 搬入ステージ
2 測定ステージ
3 マーキングステージ
16 前後可動台
17A,17B タイヤ把持装置(タイヤ把持手段)
20 タイヤ支持機構
28 タイヤ把持部
45 ブラケット
46 支持ローラ
68 揺動部材
70 支持部材
W タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを外周側又は内周側から把持するタイヤ把持手段を前記タイヤの搬送方向に沿って複数備えると共に、前記複数のタイヤ把持手段を前記搬送方向に沿って移動させる駆動手段を備え、
前記駆動手段は、前記搬送方向の上流側のタイヤ把持手段、及び、その下流側のタイヤ把持手段を、タイヤをそれぞれ把持した状態で前記搬送方向の下流側へ共に移動させる、
ことを特徴とするタイヤ搬送装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記タイヤ把持手段を前記搬送方向に沿って移動させる移動体を備え、該移動体が、前記タイヤの搬送経路を挟む両側又は一方側に配置された移動経路に沿って移動する、
請求項1に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項3】
前記移動経路が、前記タイヤの搬送経路に沿って延びるレールであり、
前記移動体が、前記タイヤ把持手段を搭載支持して前記レールに沿って移動する可動台である、
請求項2に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項4】
前記タイヤ把持手段は、水平姿勢の前記タイヤを、その外周の両側から挟むように把持し、
前記駆動手段は、前記搬送方向の上流側のタイヤ把持手段、及び、その下流側のタイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って同時に移動させる、
請求項1ないし3のいずれか記載のタイヤ搬送装置。
【請求項5】
前記タイヤ把持手段は、水平姿勢の前記タイヤを、その内周側から拡げるように把持し、
前記駆動手段は、前記搬送方向の上流側のタイヤ把持手段、及び、その下流側のタイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って同時に移動させる、
請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ搬送装置。
【請求項6】
前記タイヤ把持手段は、対向するタイヤ把持部を有し、前記タイヤ把持部は、互いに近接または離間移動可能であると共に、昇降可能であって、互いに近接移動して前記タイヤを両側から挟むように把持可能である、
請求項4に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項7】
前記タイヤ把持手段は、互いに近接方向または離間方向へ水平揺動可能であるタイヤ把持部を有し、前記タイヤ把持部は、昇降可能であって、互いに近接する方向へ揺動して前記タイヤを両側から挟むように把持可能である、
請求項4に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項8】
前記タイヤ把持手段は、前記タイヤの孔に上方より挿抜される昇降可能なタイヤ把持部を有し、該タイヤ把持部は、内外方向に移動可能な複数の支持体を有し、前記複数の支持体を、前記タイヤの孔に挿入して外方向に移動させて前記タイヤを内周側から拡げるように把持可能である、
請求項5に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項9】
前記タイヤ把持手段を、前記搬送方向に沿って2台備え、
前記タイヤの搬送経路には、前記タイヤが搬入される搬入ステージ、タイヤのダイナミックバランスを測定する測定ステージおよびタイヤにマーキングするマーキングステージが、前記搬送方向に沿って等間隔で配置され、
前記駆動手段は、前記2台の両タイヤ把持手段を、前記等間隔と同一のストロークで前記搬送方向に沿って移動させる、
請求項1ないし8のいずれかに記載のタイヤ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−61318(P2013−61318A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94022(P2012−94022)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)