説明

タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】優れた氷上摩擦力を有するとともに、経時劣化を抑制できるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴムを10質量部以上90質量部未満含む平均ガラス転移温度が−50℃以下のジエン系ゴム100質量部に対して、(A)シリカを5〜80質量部、(B)オイルを10〜50質量部、および(C)(c−1)樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物、または、(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩のいずれか、を前記オイルに対して0.05〜30質量%配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物と、該タイヤ用ゴム組成物をトレッド(3)に使用した空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、優れた氷上摩擦力を有するとともに、経時劣化を抑制できるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車用スタッドレスタイヤにおいては、その氷上摩擦性能を高めることが課題となっている。そこで、ゴムに硬質異物、発泡剤、中空微粒子を配合し、表面にミクロな凹凸をつくることによって、氷の表面に発生する水膜を除去し、氷上摩擦力を向上させる手法が数多く検討されている。しかしながら、これらの方法には添加剤の材質がもろいため、混合後に添加剤の一部が微細化または破壊されて所定の効果を発揮できない場合があるという問題がある。
【0003】
一方、空気入りタイヤのトレッドには、そのタイヤの目的・用途や使用環境に合わせて、ゴム硬度が最適になるように設計されたタイヤ用ゴム組成物が使用されている。しかしながら、タイヤの使用開始時にゴム硬度が最適であったとしても、長期間使用するとゴムの表面にオイルが移行し、あるいは揮発し、ゴム硬度が上昇し、氷上摩擦力が低下してしまうという問題がある。このような経時劣化対策としては、タイヤ用ゴム組成物に配合する老化防止剤を増量することが考えられる。しかしながら、老化防止剤は、配合量を増量するほど、タイヤ表面へ移行して析出するようになるため、タイヤ表面が茶色に変色して外観が損なわれるという問題があった。
【0004】
なお、下記特許文献1には、樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物をゲル化対象物に添加してゲル化させる有機溶媒または油脂類のゲル化方法が開示されている。しかしながら、得られたゲル化物をタイヤ用ゴム組成物に配合し、所望の氷上摩擦力と、経時劣化の抑制とを両立しようとする技術思想は何ら開示または示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4038764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた氷上摩擦力を有するとともに、経時劣化を抑制できるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに、(A)シリカ、(B)オイルおよび(C)(c−1)樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物、または、(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩のいずれか、を特定量を配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
【0008】
1.天然ゴムを10質量部以上90質量部未満含む平均ガラス転移温度が−50℃以下のジエン系ゴム100質量部に対して、
(A)シリカを5〜80質量部、
(B)オイルを5〜50質量部、および
(C)(c−1)樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物、または、(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩のいずれか、を前記オイルに対して0.05〜30質量%
配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
2.前記(C)成分における樹脂酸類が、アビエチン酸、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸類およびテトラヒドロアビエチン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
3.前記(C)成分におけるアルカリ土類金属化合物が、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムよりなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
4.前記(A)〜(C)成分を予め混合し固化させ、これを前記ジエン系ゴムに配合してなることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
5.前記1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに、(A)シリカ、(B)オイルおよび(C)(c−1)樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物、または、(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩のいずれか、を特定量を配合したので、該組成物を空気入りタイヤのトレッドに採用したときに、表面にミクロな凹凸が生じ、氷の表面に発生する水膜が除去され、氷上摩擦力が向上するとともに、タイヤを長期間使用してもゴムの表面にオイルが移行または揮発しにくく、経時劣化によるゴム硬度の上昇を抑制することができ、氷上摩擦力を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
図1は、乗用車用の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール2と、両サイドウォール2に連なるトレッド3からなり、ビード部1、1間に繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。トレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。また、ビード部1においてはリムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
以下に説明する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、とくにトレッド3に有用であり、また本発明のタイヤ用ゴム組成物をトレッド3に使用した空気入りタイヤは、スタッドレスタイヤとしてとくに好適である。
【0013】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、全体を100質量部としたときに、天然ゴム(NR)を10質量部以上90質量部未満含む。NRの配合量が10質量部未満では、耐摩耗性が悪化するという問題があり、逆に90質量部以上であると 所定のTgを確保することができず氷上性能が低下するため、好ましくない。さらに好ましいNRの配合量は、20〜70質量部である。
また本発明で使用されるジエン系ゴムは、前記NR以外にも、タイヤ用ゴム組成物に配合することができる任意のゴムを用いることができ、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等を使用することもできる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また本発明で使用されるジエン系ゴムは、平均ガラス転移温度が−50℃以下である必要がある。平均ガラス転移温度が−50℃を超えると、氷上摩擦力が悪化する。なお、本発明でいう平均ガラス転移温度(Tg)は、ゴムの種類をn、各ゴムのガラス転移温度Ti(℃)、各ゴムの配合量(全ゴムポリマー100重量部に対する重量部)をQiとすると、下記式によって算出すればよい。
【0014】
【数1】

【0015】
(A)成分
本発明で使用される(A)成分はシリカである。シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカおよび沈降シリカなど、従来からタイヤ用ゴム組成物において使用することが知られている任意のシリカを単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式シリカを使用することが好ましい。
【0016】
(B)成分
本発明で使用される(B)成分はオイルである。オイルとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用される任意のオイル、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマオイルなどの鉱物油等が挙げられ、これらは単独又は任意の混合物として使用することができる。
【0017】
(C)成分
本発明で使用される(C)成分は、(c−1)樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物、または、(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩のいずれか、である。
【0018】
樹脂酸類としては、例えば、アビエチン酸、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸類、テトラヒドロアビエチン酸類を挙げることができる。また前記樹脂酸の混合物であるガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジンなどが挙げられる。さらにはロジン類のアルカリ土類金属や、亜鉛、アルミニウムの部分中和金属塩なども好適に使用できる。これらの樹脂酸類は、いずれかを単独で使用したり、2種以上を適宜に併用することができる。
【0019】
また、本発明で用いるアルカリ土類金属化合物としては、上記樹脂酸類と反応して塩を形成するアルカリ土類金属化合物であれば特に限定なく使用できるが、反応性を考慮すれば、アルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物が好ましい。当該金属化合物の具体例としては、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酸化バリウムなどを挙げることができる。これらのアルカリ土類金属化合物は、いずれかを単独で使用したり、2種以上を適宜に併用することができる。
【0020】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記(A)〜(C)成分が相互作用し、(B)成分のオイルがゲル化する。ゲル化(固化)したオイルは、ゴムマトリックス中に分散し、ミクロな硬度分散を生じさせ、タイヤの表面粗さを向上させ、タイヤ表面にミクロな凹凸が生じる。これにより、タイヤトレッドが氷の表面に発生する水膜を除去し、氷上摩擦力が向上する。また、ゲル化したオイルはゴムマトリックス中で流動しにくくなり、タイヤを長期間使用してもオイルがその表面に移行あるいは揮発しにくくなる。これにより、ゴム硬度の上昇が抑制され、氷上摩擦力の向上に寄与する。すなわち、経時劣化を抑制できる。
【0021】
(B)成分のオイルのゲル化は、(A)成分であるシリカの存在下、(C)成分である(c−1)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とが反応し、樹脂酸類のアルカリ土類金属塩が生成し、当該金属塩が(B)オイルをゲル化することにより達成されるか、あるいは、(A)成分であるシリカの存在下、(C)成分である(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩が(B)オイルをゲル化することにより達成される。
【0022】
具体的には、(B)成分のオイルをゲル化させて本発明のゴム組成物を調製する方法としては、例えば下記の方法が挙げられる。
(1)前記(A)〜(C)成分を予め混合し、(B)成分のオイルをゲル化させ、これをジエン系ゴムに配合し、混合する。なおこの場合、(A)成分のシリカの使用量は、(B)成分のオイルのゲル化を達成するに十分な量であればよく、配合処方の一部または全部を使用することができる。また、(B)オイルをゲル化させる割合は、(B)オイル全体の使用量に対し、0.05〜100質量%が好ましい。また、(A)〜(C)成分の添加の順番は任意である。
(2)ジエン系ゴムに(A)シリカ、(B)オイル、(C)成分、さらにその他の配合原料を一括して添加し混合する。
(3)ジエン系ゴムに(A)シリカ、(B)オイル、樹脂酸類、さらにその他の配合原料を添加し混合した後、そこにアルカリ土類金属化合物を添加し、混合する。
(4)ジエン系ゴムに(A)シリカ、(B)オイル、アルカリ土類金属化合物、さらにその他の配合原料を添加し混合した後、そこに樹脂酸類を添加し、混合する。
本発明では、経時劣化の抑制の観点から、上記(1)の方法が好ましい。なお、加硫促進剤および硫黄を含む加硫系は、ゴム組成物の調製の最終段階(例えば加硫直前)に添加するのがよい。
【0023】
なお、(C)成分において、樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物の使用割合は、(B)成分のオイルをゲル化できればよく、とくに制限されないが、例えば樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物のモル比(樹脂酸(モル数)/アルカリ土類金属化合物(モル数))が、1/0.1−1/10であるのが望ましい。当該モル比が1/0.1に満たない場合、十分なゲル化が生じない場合がある。また当該モル比が1/10を超える場合、所望のゲル化を実現できるものの、未反応のアルカリ土類金属が多量に残存したり、高コストとなるだけであり、特に有利な点はない。
また、上記ゲル化を達成するための温度については特に制限はなく、通常は室温からゴム組成物の混練温度の範囲内で適宜に設定できる。
【0024】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対して、
(A)シリカを5〜80質量部、
(B)オイルを10〜50質量部、および
(C)(c−1)樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物、または、(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩のいずれか、を前記オイルに対して0.05〜30質量%
配合してなることを特徴とする。
前記(A)シリカが5質量部未満であると、オイルのゲル化を妨げるため経時劣化が悪化する。逆に80質量部を超えると、硬度が高くなり氷上性能が悪化する。
前記(B)オイルが10質量部未満であると、十分な硬度を確保することができず氷上性能が悪化する。逆に50質量部を超えると、硬度が低くなりすぎるため耐摩耗性や操縦安定性が悪化する。
前記(C)成分が(B)オイルに対して0.05質量%未満であると、添加量が少な過ぎてゲル化が生じにくく、逆に30質量%を超えるとゴムマトリックス中でゲル化したオイルが偏在してしまい、氷上摩擦力が悪化し、経時劣化の抑制の効果も生じない。
【0025】
前記(A)シリカのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、10〜50質量部である。
前記(B)オイルのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、20〜40質量部である。
前記(C)成分のさらに好ましい配合量は、(B)オイルに対し、1〜20質量%である。
【0026】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、充填剤、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。また本発明のタイヤ用ゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0028】
実施例1〜6、標準例および比較例1〜4
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、約150℃でミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えて混練し、タイヤ用ゴム組成物を得た。次に得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で170℃で15分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で物性を測定した。なお、各例で使用したジエン系ゴム成分の平均ガラス転移温度は、−50℃であった。
【0029】
氷上摩擦係数:上記加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムにはりつけ、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて氷上摩擦係数を測定した。測定温度は−1.5℃、荷重5.5kg/cm3、ドラム回転速度は25km/hである。結果は標準例1の値を100として指数表示し、この数字が大きいほどゴムと氷の摩擦力が良好であることを示す。
経時劣化指数:JIS K6253に準拠して測定した。上記加硫ゴム試験片を70℃の恒温槽に7日間保管し、室温に戻したときの硬度を再測定し、初期と7日後の硬度変化率にて評価した。結果は標準例1の値を100として指数表示し、この数字が大きいほど経時劣化の抑制効果が高いことを示す。
結果を表1に併せて示す。
【0030】
【表1】

【0031】
*1:NR(TSR20)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR X5000)
*3:カーボンブラック(東海カーボン(株)製シーストKHP)
*4:シリカ(エボニックデグッサジャパン(株)製ULTRASIL VN3GR)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*6:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*7:老化防止剤(FLEXSYS製SANTOFLEX 6PPD)
*8:ワックス(大内新興化学工業(株)製パラフィンワックス)
*9:シランカップリング剤(エボニックデグッサジャパン(株)製Si69)
*10:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*11:不均化ロジン(荒川化学工業社製 ロンヂスR)
*12:金属塩(前記ロンヂスRと水酸化カルシウムの1:1(質量比)からなる金属塩)
*13:固化オイル(前記プロセスオイルと前記金属塩と前記シリカとを表1に記載の割合(質量比)で混合しゲル化したオイル)
*14:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*15:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
【0032】
上記の表から明らかなように、実施例1〜6で調製されたタイヤ用ゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに、(A)シリカ、(B)オイルおよび(C)成分を特定量で配合したので、従来の代表的な標準例1に比べて、氷上摩擦力に優れ、経時劣化の抑制効果も良好である。とくに、固化オイルを使用した実施例3〜6については、当該効果が一層高まる結果となった。
これに対し、比較例1および2は、(C)成分の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、ゴムマトリックス中でゲル化したオイルが偏在してしまい、氷上摩擦力が悪化し、経時劣化の抑制の効果も生じないことが判明した。
比較例3は、(C)成分においてアルカリ土類金属化合物を使用していないので、(B)オイルがゲル化せず、ゴムの表面にオイルが移行および揮発し、経時劣化の抑制の効果が得られなかった。
比較例4は、(C)成分において樹脂酸類を使用していないので、(B)オイルがゲル化せず、ゴムの表面にオイルが移行および揮発し、経時劣化の抑制の効果が得られなかった。
【符号の説明】
【0033】
1 ビード部
2 サイドウォール
3 トレッド
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムを10質量部以上90質量部未満含む平均ガラス転移温度が−50℃以下のジエン系ゴム100質量部に対して、
(A)シリカを5〜80量部、
(B)オイルを10〜50質量部、および
(C)(c−1)樹脂酸類およびアルカリ土類金属化合物、または、(c−2)樹脂酸類とアルカリ土類金属化合物とからなる金属塩のいずれか、を前記オイルに対して0.05〜30質量%
配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記(C)成分における樹脂酸類が、アビエチン酸、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸類およびテトラヒドロアビエチン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記(C)成分におけるアルカリ土類金属化合物が、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムよりなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記(A)〜(C)成分を予め混合し固化させ、これを前記ジエン系ゴムに配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−35912(P2013−35912A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171545(P2011−171545)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】