説明

タイヤ用ゴム組成物および空気入りタイヤ

【課題】 タイヤの製造コストを大幅に低減するとともに、得られたタイヤのゴム硬度、動的弾性率、耐摩耗性等の基本特性を損なうことなく操縦安定性を改善したタイヤ用ゴム組成物、さらに該タイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 ゴム成分の100質量部に対して、クラフト紙粉砕物を0.1〜35質量部の範囲内、および炭酸カルシウムを20〜180質量部の範囲内で配合してなるタイヤ用ゴム組成物、および該タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。該タイヤ用ゴム組成物の硬度は、65〜75の範囲内とされることが好ましい。また、該クラフト紙粉砕物の平均直径は1〜30μmの範囲内、平均長さは50〜500μmの範囲内とされることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに対して適用された場合に該タイヤの製造コストを大幅に低減することが可能であるとともに、ゴム硬度、動的弾性率、破壊強度等の物理的特性に優れるタイヤ用ゴム組成物、およびこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤメーカーにおいては激しいコスト低減競争が行なわれ、タイヤ用ゴム組成物の製造コストの削減が要請されている。タイヤの製造コストを低減する方法としては、たとえば、炭酸カルシウム、マイカ、クレー等の比較的安価な無機補強材をタイヤトレッド用ゴム組成物に配合する方法、有機繊維や無機繊維を短く切断したものをゴムに混合する方法等が知られている。
【0003】
しかしながら、たとえば上記の無機補強材を配合したゴム組成物に対する該無機補強材の補強効果は十分とは言えず、ゴム組成物中に含有させる配合量によっては、たとえばカーボンを配合した場合と比べてゴム硬度が低くなる傾向があるため、タイヤトレッドの耐摩耗性が低下する場合がある。さらに、該無機補強材の配合量によってはゴム組成物の比重が大きくなり、容積あたりのコストダウンは期待できない場合がある。
【0004】
一方、有機繊維や無機繊維を配合したゴム組成物においては、弾性率や引き裂き性などが向上するとともに、タイヤ製品におけるゴム使用量が削減できるため省資源や軽量化が効果的に達成できる。しかしながら、繊維材料としては、短繊維強化用として新たに紡糸した繊維を繊維メーカーで切断されたものが通常用いられているため、経済的に高いものとなる傾向があった。
【0005】
ゴム硬度の維持とコストの低減とを両立させるために、たとえば特許文献1には古紙を再利用して配合したタイヤ用ゴム組成物が提案されている。また、特許文献2には、古紙とシリカとを配合したタイヤ用ゴム組成物が提案されている。しかし、ゴム組成物中に古紙を特に多量に含有させた場合、ゴム硬度が大きくなるとともに剛性も高くなり、所望のタイヤ物性からは外れてしまう傾向があるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−37929号公報
【特許文献2】特開2002−226634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題を解決し、タイヤの製造コストを大幅に低減するとともに、得られたタイヤのゴム硬度、動的弾性率、耐摩耗性等の基本特性を損なうことなく操縦安定性を改善したタイヤ用ゴム組成物、さらに該タイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分の100質量部に対して、クラフト紙粉砕物を0.1〜35質量部の範囲内、および炭酸カルシウムを20〜180質量部の範囲内で配合してなるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の硬度は、65〜75の範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物に配合されるクラフト紙粉砕物の平均直径が1〜30μmの範囲内、平均長さが50〜500μmの範囲内とされることが好ましい。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤに対して好ましく適用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クラフト紙粉砕物と炭酸カルシウムとを所定量配合したタイヤ用ゴム組成物を用いることにより、タイヤの製造コストを大幅に低減するとともに、得られたタイヤのゴム硬度、動的弾性率、耐摩耗性等の基本特性を損なうことなく、操縦安定性を改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、ゴム成分の100質量部に対して、クラフト紙粉砕物が0.1〜35質量部の範囲内、および炭酸カルシウムが20〜180質量部の範囲内で配合される。
【0013】
本発明においては、ゴム組成物に対する補強材としてクラフト紙粉砕物が配合される。本発明におけるクラフト紙とは、クラフトパルプ(KP)を抄紙して得られる紙の全般を指し、未晒クラフト紙および晒クラフト紙を含む。クラフトパルプは、化学パルプに分類されるものの主流であり、一般に比較的長い繊維長を有することから、クラフト紙は強度に優れる紙として包装用途等に広く使用される。
【0014】
クラフトパルプは、一般に以下のような方法で製造される。まず原料となるチップの不純物を除去するとともに、厚みや長さ等を一定範囲内に均一化する。次にチップを苛性ソーダ、硫化ソーダ等の薬品で、たとえば150〜160℃程度の高温で蒸煮し、チップ中の主にリグニンを溶出させ、パルプ化する。溶出リグニンおよび薬品をパルプと分離するための洗浄工程を経た後、該パルプをたとえば酸素およびアルカリで処理すること等により、パルプ中の残存リグニンをさらに溶出させる。最後に異物除去、洗浄を行ない、未晒クラフトパルプを得ることができる。未晒クラフトパルプはさらに漂白工程を経ることによって晒クラフトパルプとされることができる。
【0015】
未晒クラフトパルプを抄紙することにより未晒クラフト紙、晒クラフトパルプを抄紙することにより晒クラフト紙をそれぞれ製造することができる。
【0016】
本発明においては、クラフト紙粉砕物を、ゴム成分100質量部に対して0.1〜35質量部の範囲内で配合する。クラフト紙粉砕物の配合量が0.1質量部以上であれば、タイヤ用ゴム組成物の硬度を一定以上に確保することができるとともにタイヤの製造コストが低減できる点で好ましい。また35質量部以下であれば、タイヤ用ゴム組成物の硬度が高くなり過ぎることによる乗り心地の悪化を防止できる点で好ましい。クラフト紙粉砕物の配合量は、さらに5質量部以上、さらに8質量部以上とされることが好ましく、また30質量部以下、さらに20質量部以下とされることが好ましい。
【0017】
本発明においては、炭酸カルシウムを、ゴム成分100質量部に対して20〜180質量部の範囲内で配合する。炭酸カルシウムはたとえばカーボン等の無機充填材と同様にゴム組成物に対する補強材として使用され得るものであるが、カーボンよりも安価で製造コストの大幅な削減が可能である一方で、カーボンと比較するとタイヤ用ゴム組成物に対する補強効果が低い傾向がある。本発明においては、炭酸カルシウムをクラフト紙粉砕物と組み合わせて用いることにより、クラフト紙粉砕物の寄与によるゴム硬度の向上効果と、炭酸カルシウムの寄与による製造コストの低減効果とをともに得ることができ、所望の物性を有するタイヤ用ゴム組成物を安価に製造することが可能となる。
【0018】
本発明における炭酸カルシウムの配合量は、ゴム成分100質量部に対して20〜180質量部とされる。炭酸カルシウムの配合量が20質量部以上であれば、タイヤの製造コストの低減効果が十分得られる点で好ましく、180質量部以下であれば、ゴム硬度が過度に高くなることによる乗り心地の悪化や、走行時におけるタイヤ用ゴム組成物の過度の発熱が防止される点で好ましい。炭酸カルシウムの配合量は、さらに30質量部以上、さらに40質量部以上とされることが好ましく、また、さらに150質量部以下、さらに100質量部以下とされることが好ましい。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の硬度は、65〜75の範囲内であることが好ましい。硬度が65以上であればタイヤの操縦安定性が所望の程度確保でき、75以下であれば乗り心地が良好である。なお硬度は、ISO−7619に準拠して測定することができる。
【0020】
本発明のタイヤ用ゴム組成物に配合されるクラフト紙粉砕物の平均直径は1〜30μmの範囲内、平均長さは50〜500μmの範囲内であることが好ましい。この場合タイヤ用ゴム組成物に対する補強効果が十分得られるとともにタイヤ用ゴム組成物中におけるクラフト紙粉砕物の分散不良が防止される。
【0021】
本発明のタイヤ用ゴム組成物に配合されるクラフト紙粉砕物の原料となるクラフトパルプとしては針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプのいずれも使用できる。また、該クラフト紙粉砕物の原料のすべてがバージンクラフトパルプであっても良いが、セミケミカルパルプ、機械パルプ等他のパルプ化法で得られるパルプ、ケナフ、バガス、竹、コットン、海藻等を由来とする非木材パルプ、使用済コピー用紙、古新聞紙、古段ボール紙等の古紙を脱墨して得られる古紙パルプ、等が、所望の性状を損なわない限度で混合されていても良い。
【0022】
本発明のゴム成分としては、天然ゴム(NR)および/またはジエン系合成ゴムが好ましく使用される。ジエン系合成ゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上を含むゴム成分が好適である。なお、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とは、エチレン−プロピレンゴム(EPM)に第三ジエン成分を含むものである。ここで第三ジエン成分としては、たとえば炭素数5〜20の非共役ジエンが挙げられ、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンおよび1,4−オクタジエンや、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンなどの環状ジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネンおよび2−イソプロペニル−5−ノルボルネンなどのアルケニルノルボルネン等が好ましく例示できる。特に、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等は好ましく使用され得る。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、ゴム成分100質量部に対してシリカをたとえば5質量部以上100質量部以下で配合することができる。シリカとしては汎用ゴム一般に用いられるものを使用でき、たとえば補強材として使用される乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ等が挙げられる。中でも含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。シリカの配合量が5質量部以上であればタイヤ用ゴム組成物に対する補強効果が十分得られることによりタイヤの耐摩耗性が良好に向上し、100質量部以下であれば、タイヤ用ゴム組成物の製造時における未加硫ゴム組成物の粘度上昇による加工性の低下やコストの過度な上昇を防止できる。
【0024】
上記で使用されるシリカの窒素吸着比表面積(BET法)は、50〜350m2/g、さらに100〜280m2/g、さらに110〜250m2/gの範囲内であることが好ましい。シリカの窒素吸着比表面積が50m2/g以上である場合、タイヤ用ゴム組成物に対する補強効果が十分得られることによりタイヤの耐摩耗性が良好に向上する。一方該窒素吸着比表面積が350m2/g以下である場合、タイヤ用ゴム組成物の加工性が良好であり、操縦安定性も十分確保される。ここで窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0025】
窒素吸着比表面積が50〜350m2/gの範囲内であるシリカの市販品としては、たとえば日本シリカ(株)製のニプシルVN3、ニプシルAQ、ローヌプーラン社製のZ1165MP、Z1652Gr、デグッサ社のウルトラジルVN3等が例示できる。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物にシリカを配合する場合には、シランカップリング剤、好ましくは含硫黄シランカップリング剤を0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.5質量部以上5質量部以下で配合することが好ましい。シランカップリング剤の配合によってタイヤの耐摩耗性および操縦安定性を向上させることができ、シランカップリング剤の配合量が0.1質量部以上の場合、耐摩耗性および操縦安定性の向上効果が良好に得られる。またシランカップリング剤の配合量が10質量部以下の場合、ゴムの混練、押出工程での焼け(スコーチ)が生じる危険性が少ない。含硫黄シランカップリング剤としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0027】
その他のシラン系カップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を使用することができる。
【0028】
本発明では、用途に応じてその他のカップリング剤、例えばアルミネート系カップリング剤、チタン系カップリング剤を単独またはシラン系カップリング剤と併用して使用することも可能である。
【0029】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、炭酸カルシウム、シリカの他、さらに別の白色充填剤を含有させることができる。白色充填剤の含有量が多くなるとタイヤ用ゴム組成物の物性が低下する傾向にあるが、本発明ではクラフト紙粉砕物を充填することにより、白色充填剤の配合による物性低下が抑制される。具体的には、たとえばクレー、アルミナ、タルク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0030】
なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物にはカーボンブラックを併用しても良い。ここでカーボンブラックはゴム成分100質量部に対して10質量部以上で100質量部以下、シリカ配合量に対して0.1〜10.0倍の範囲内で配合されることが好ましい。ここでカーボンブラックの物性は窒素吸着比表面積(BET法)が40〜160m2/gの範囲内、DBP吸油量が70〜130ml/100gの範囲内、ヨウ素吸着量が70〜130mg/gの範囲内のものが、タイヤ用ゴム組成物に対する補強効果の点で好適である。
【0031】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記の他に、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、発泡剤およびスコーチ防止剤等を添加することが可能である。
【0032】
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用できる。有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。これらの中では硫黄が好ましい。
【0033】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。
【0034】
スルフェンアミド系としては、たとえばCBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物などが挙げられる。
【0035】
チアゾール系としては、たとえばMBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0036】
チウラム系としては、たとえばTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられる。
【0037】
チオウレア系としては、たとえばチアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物などが挙げられる。
【0038】
グアニジン系としては、たとえばジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系化合物が挙げられる。
【0039】
ジチオカルバミン酸系としては、たとえばエチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛とピペリジンの錯塩、ヘキサデシル(またはオクタデシル)イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウムなどのジチオカルバミン酸系化合物などが挙げられる。
【0040】
アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系としては、たとえばアセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物などが挙げられる。
【0041】
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを適宜選択して使用することが可能である。
【0042】
本発明では練り加工性を一層向上させるために軟化剤を併用しても良い。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、等が挙げられる。
【0043】
さらに、本発明のタイヤ用ゴム組成物には必要に応じて可塑剤を配合することができる。具体的には、DMP(フタル酸ジメチル)、DEP(フタル酸ジエチル)、DBP(フタル酸ジブチル)、DHP(フタル酸ジヘプチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、DINP(フタル酸ジイソノニル)、DIDP(フタル酸ジイソデシル)、BBP(フタル酸ブチルベンジル)、DLP(フタル酸ジラウリル)、DCHP(フタル酸ジシクロヘキシル)、無水ヒドロフタル酸エステル、DOZ(アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル)、DBS(セバシン酸ジブチル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、DBM(マレイン酸ジブチル)、DOM(マレイン酸−2−エチルヘキシル)、DBF(フマル酸ジブチル)等が挙げられる。
【0044】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、スコーチを防止または遅延させるためのスコーチ防止剤として、たとえば無水フタル酸、サリチル酸、安息香酸などの有機酸、N−ニトロソジフェニルアミンなどのニトロソ化合物、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等を使用することができる。
【0045】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は空気入りタイヤに対して好適に用いられ、特にトレッド部に対して好ましく使用される。以下、図面にしたがって説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤの断面図の左半分を例示した図である。タイヤ1は、トレッド部2と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを具える。またビード部4、4間にはカーカス6が架け渡されるとともに、このカーカス6のラジアル方向外側にタガ効果を有するベルト層7が配される。
【0046】
該カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して例えば70〜90°の角度で配列する1枚以上のカーカスプライ6aから形成され、このカーカスプライ6aは、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5の廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されて係止される。
【0047】
ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば45°以下の角度で配列した2枚以上のベルトプライ7a、7bからなり、各ベルトコードがプライ間で交差するよう向きを違えて重置している。さらにベルト層7の外側にバンド層(図示せず)を設けても良く、このときバンド層は低モジュラスの有機繊維コードを、タイヤ赤道Cとほぼ平行に螺旋巻きした連続プライで形成する。
【0048】
またビード部4には、該ビードコア5から半径方向外方にのびるビードエーペックスゴム8が配されるとともに、カーカス6の内側には、タイヤ内腔面をなすインナーライナゴム9が隣設され、カーカス6の外側は、チェーファーゴム4Gおよびサイドウォールゴム3Gで保護される。
【0049】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤの特にトレッド部2に使用されることにより、コーナリング性能、制動性能等における良好な操縦安定性、および優れた耐摩耗性を発揮する。なお本発明のタイヤ用ゴム組成物が使用される空気入りタイヤの構造は上述のものに限定されない。
【0050】
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
(1)タイヤ用ゴム組成物および空気入りタイヤの調製
表1に示す配合材料(単位:質量部)のうち硫黄および加硫促進剤を除く配合材料をバンバリーミキサーによって混練し、硫黄および加硫促進剤を加えて2軸オープンロールによってさらに混練し、ゴム組成物を得た。該ゴム組成物をタイヤのベーストレッド部に用いて成型、加硫し、サイズ225/50R16の空気入りタイヤを製造した。なお加硫は170℃で12分間行なった。
【0052】
(2)ゴム硬度の評価
上記で得たゴム組成物を用いてゲージが約2mmのシートを作製し、約175℃で14分間、25kgf(約2.45×102N)の条件下にて加硫を行ない、試験片を調製した。該試験片につき、ISO−7619に準拠し、硬度計を用いて25℃にて硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(3)損失正接の評価
上記で得たゴム組成物を170℃で12分間加硫し、幅4mm×厚さ2mmの試験片を作製した。該試験片につき、岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、周波数10kHz、動歪み5%の条件で、70℃における損失正接(tanδ)を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(4)引張強度の評価
上記で得たゴム組成物を170℃で12分間加硫し、JIS引張試験法K6251に基づき、加硫シートをダンベル3号サンプルに切り抜いて引張試験を行ない、100%モジュラス(M100)(Pa)、200%モジュラス(M200)(Pa)、300%モジュラス(M300)(Pa)をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(5)操縦安定性の評価
上記で作製した空気入りタイヤを、リム7J×16、内圧250kPaの下で、車両(2500ccのFR乗用車)の前輪に装着し、タイヤテストコースのドライアスファルト路面上にて、ハンドル応答性、剛性感、グリップ等に関する特性を評価した。ドライバーの官能評価により従来例を3点とする5点法で評価した。評価基準は以下の通りであり、数値が大きい程操縦安定性が良好である。結果を表1に示す。
(評価基準)
5点:非常に良好である。
4点:良好である。
3点:従来例と同等である。
2点:やや劣る。
1点:劣る。
【0056】
(6)乗り心地の評価
上記で作製した空気入りタイヤを、リム7J×16、内圧250kPaの下で、車両(2500ccのFR乗用車)の前輪に装着し、ドライアスファルト路面の段差路、ベルジャソ路、ビッツマン路等において、ごつごつ感、突き上げ、ダンピングに関してドライバーの官能評価を行い、従来例を3点とする5点法で評価した。評価基準は以下の通りであり、数値が大きい程乗り心地が良好である。結果を表1に示す。
5点:非常に良好である。
4点:良好である。
3点:従来例と同等である。
2点:やや劣る。
1点:劣る。
【0057】
(7)転がり抵抗の評価
上記で作製した空気入りタイヤを正規リムに装着し、転がり抵抗試験機を用い、内圧700kPa、時速80km/h、荷重24.52KNで転がり抵抗を測定し、従来例を100とした相対値で表わした。数値が小さいほど転がり抵抗が小さく良好である。結果を表1に示す。
【0058】
(8)コストの評価
配合コストの評価を行ない、従来例を100とする相対値で表わした。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
注1:SBRは、住友化学工業(株)製のSBR1502である。
注2:カーボンは、昭和キャボネット製のN351である。
注3:炭酸カルシウムは、白石工業(株)製の白艶華CCである。
注4:クラフト紙粉砕品は、三共精粉製のクラフト紙ミルファイブである。
注5:ワックスは、日本精蝋(株)製のオゾエース0355である。
注6:老化防止剤は、住友化学工業(株)製のアンチゲン6Cである。
注7:ステアリン酸は、日本油脂(株)製のステアリン酸椿である。
注8:酸化亜鉛は、三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛である。
注9:オイルは、ジャパンエナジー(株)製のプロセスX−140である。
注10:硫黄は、鶴見化学(株)製の粉末硫黄である。
注11:加硫促進剤は、大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZである。
【0061】
実施例1〜5においては、従来例と比べて操縦安定性および乗り心地において遜色なく、転がり抵抗を良好に保ちつつ、コストが大幅に低減できることが分かる。一方炭酸カルシウムを200質量部配合し、クラフト紙粉砕品を配合していない比較例1においては、従来例と比べてtanδが大幅に上昇し、M100が低下している。また従来例と比べて転がり抵抗が悪化している。炭酸カルシウムを配合せず、クラフト紙粉砕品を40質量部配合した比較例2においては、従来例と比べてゴム硬度、tanδが高く、従来例と比べて乗り心地および転がり抵抗が悪化している。
【0062】
これらの結果より、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いた実施例1〜5においては、炭酸カルシウムとクラフト紙粉砕品とを所定量組み合わせて用いることにより、操縦安定性、乗り心地、転がり抵抗というタイヤ性能を良好に維持しつつ、コストの大幅な低減が可能であることが分かる。
【0063】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いることにより、操縦安定性、乗り心地、転がり抵抗が総合的に良好であるタイヤ、特に空気入りタイヤを、従来と比べて大幅に低いコストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤの断面図の左半分を例示した図である。
【符号の説明】
【0066】
1 タイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカス、7 ベルト層、8 ビードエーペックスゴム、9 インナーライナゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分の100質量部に対して、クラフト紙粉砕物を0.1〜35質量部の範囲内、および炭酸カルシウムを20〜180質量部の範囲内で配合してなるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
硬度が65〜75の範囲内である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記クラフト紙粉砕物の平均直径が1〜30μmの範囲内、平均長さが50〜500μmの範囲内である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−111715(P2006−111715A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299920(P2004−299920)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】