説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】加工性、低発熱性や破断強度の悪化を抑えながら、耐摩耗性を向上する。
【解決手段】ジエン系ゴムからなるゴム成分に対し、1分子中にマレイミド基を2個以上有するポリマレイミド化合物(例えば、ビスマレイミド)と、ロジン、ロジン誘導体及び糖類から選ばれた少なくとも1種の天然由来成分(例えば、アルキル−D−グルコピラノシド)を配合してなるタイヤ用ゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ用ゴム組成物の耐摩耗性を改良するための手法としては、カーボンブラックなどの充填剤の配合量を増加させることが最も簡単であることから、一般的に試みられている。しかしながら、充填剤を増量すると、耐摩耗性は改良されるものの、低発熱性が悪化したり、未加硫粘度が上昇して加工性が悪化するといった問題がある。
【0003】
下記特許文献1には、ジエン系ゴムに糖類を配合することで、低発熱性を損なうことなく、耐摩耗性を改良することが開示されているが、糖類の配合量が増加するにつれて破断強度が低下するという問題がある(段落0016の表1における実施例1〜6参照)。破断強度の低下を補うためには、硫黄や充填剤を増量することが考えられるが、そうすると低発熱性が悪化することから、低発熱性と破断強度を損なうことなく、耐摩耗性を向上させることは容易ではない。
【0004】
また、ゴム組成物に天然由来成分を配合する技術として、下記特許文献2には、ジエン系ゴムに、ロジン及び/又は変性ロジンなどのロジン系樹脂と、脂肪酸を配合することが開示されている。しかしながら、この文献において、ロジン系樹脂は、加硫速度を調節するために配合されているにすぎない。
【0005】
一方、タイヤ用ゴム組成物にポリマレイミド化合物を配合することが知られており、例えば、下記特許文献3には、ポリマレイミド化合物とともに、CTAB吸着比表面積が165〜230m/gである小粒径シリカとを配合することが開示されている。また、下記特許文献4には、ビスマレイミドとともにポリアニリンを配合することが開示されている。しかしながら、特許文献3では、ポリマレイミド化合物は小粒径シリカと併用することで、湿熱老化後のスチールコードとの接着性を改良しつつ、耐熱老化性を向上させるために配合されている。また、特許文献4では、ポリマレイミド化合物は動的貯蔵弾性率E’を高めるために配合されており、従って、これらの文献には、ポリマレイミド化合物を特定の天然由来成分と併用することにより、加工性、低発熱性や破断強度を損なうことなく、耐摩耗性を向上させる点については開示されていない。
【0006】
下記特許文献5には、トレッドゴムのウェット性能、破断特性及び低発熱性を損なうことなく、耐摩耗性を改良するため、アリル化合物とポリマレイミド化合物を配合することが開示されている。しかしながら、この文献では、耐摩耗性を改良するためにアリル化合物との併用を必須とするものであり、ポリマレイミド化合物と本発明特定の天然由来成分との併用については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−071481号公報
【特許文献2】特開2007−231085号公報
【特許文献3】特開2007−238728号公報
【特許文献4】特開2001−049033号公報
【特許文献5】特開平08−183882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、加工性、低発熱性や破断強度の悪化を抑えながら、耐摩耗性を向上することができるタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意検討していく中で、ジエン系ゴムに、ポリマレイミド化合物を配合し、更に特定の天然由来成分を配合することで、加工性、低発熱性や破断強度を損なうことなく、耐摩耗性を向上できることを見い出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0010】
すなわち、本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分に対し、1分子中にマレイミド基を2個以上有するポリマレイミド化合物と、ロジン、ロジン誘導体及び糖類から選ばれた少なくとも1種の天然由来成分を配合してなるものである。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、かかるゴム組成物を用いてなるトレッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工性、低発熱性や破断強度の悪化を抑えながら、耐摩耗性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0014】
本発明に係るゴム組成物において、ゴム成分となるジエン系ゴムとしては、特に限定はなく、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記の中でも、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、又はこれらの2種以上のブレンドであることが好ましい。
【0015】
本発明に係るゴム組成物に配合されるポリマレイミド化合物は、1分子中にマレイミド基を2個以上有するものである。ここで、マレイミド基とは、マレイミドからイミノ基の水素原子を取り去ってなる1価の基であり、環上の炭素に結合した水素が置換基で置換されたものであってもよい。
【0016】
詳細には、1分子中にマレイミド基を2個有するものとしては、種々のビスマレイミドを用いることができ、具体的には、下記一般式(4)で表されるビスマレイミドが挙げられる。
【化1】

【0017】
式中、Rは、芳香環を有する炭素数6〜30の2価の有機基を示し、より好ましくは炭素数が6〜24である。
【0018】
このようなビスマレイミドとしては、例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド(大和化成工業(株)製「BMI−3000」)、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−o−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド(大和化成工業(株)製「BMI−7000」)、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド(大和化成工業(株)製「BMI−1000」)、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業(株)製「BMI−5100」)、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド(即ち、2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、大和化成工業(株)製「BMI−4000」)、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミドなどが挙げられる。また、上記式(4)以外のビスマレイミドとして、例えば、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンなどが挙げられる。
【0019】
上記式(4)中のRは、より好ましくは、置換基としてアルキル基を有してもよいフェニレン基、又は、置換基としてアルキル基を有してもよいジフェニルアルカンから誘導させる2価の芳香族基(即ち、2つのフェニル基の水素原子がそれぞれ1個ずつ失われて生ずる2価の基)である。前者の例としては、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−o−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド等が挙げられ、後者の例としては、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド等のN,N’−ジフェニルメタンビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド等が挙げられる。
【0020】
また、1分子中にマレイミド基を3個以上有するものとしては、例えば、アニリン、ホルムアルデヒド及び無水マレイン酸を縮合して得られるポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工業(株)製「BMI−2000」)などが挙げられる。
【0021】
これらのポリマレイミド化合物は、それぞれ1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
ポリマレイミド化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜4質量部、更に好ましくは0.5〜3質量部である。ポリマレイミド化合物の配合量が0.1質量部未満では、その添加効果が不十分となるおそれがある。また、配合量が5質量部を超えると、耐摩耗性の改良効果が頭打ちとなり更なる改良効果が得られない。
【0023】
本発明に係るゴム組成物には、上記ポリマレイミド化合物とともに、ロジン、ロジン誘導体及び糖類から選ばれた少なくとも1種の天然由来成分が配合される。
【0024】
ロジンは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とする天然樹脂であり、ウッドロジン、ガムロジン、トールロジンなどが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、上記ロジンを不均化してなる不均化ロジン、二量化又はそれ以上に重合させてなる重合ロジン、水素添加してなる水添ロジン、更には、ロジンを部分的にマレイン化及び/又はフマル化することなどによって変性した変性ロジン(例えば、ロジン変性マレイン酸樹脂)等が挙げられる。
【0025】
これらの中でもロジン変性マレイン酸樹脂が特に好ましく用いられる。ロジン変性マレイン酸樹脂は、ロジン−マレイン酸付加物と多価アルコールから得られるポリエステル樹脂であり、より詳細には、ロジンとマレイン酸(一般には、無水マレイン酸)のディールス−アルダー反応による付加物に、多価アルコールを加え加熱縮合させることにより得られるものが挙げられる。なお、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0026】
糖類としては、例えば、D−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−キシロースなどの単糖類、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオースなどの二糖類、デンプン、デキストリンなどの三糖類以上の多糖類、また、これらの誘導体、例えば、糖アルコール、デオキシ糖、アミノ糖、配糖体、ウロン酸などが挙げられる。
【0027】
これらの中でも糖類としては、グルコースに第1級アルコールを反応させてなるアルキル基変性糖誘導体が好ましく用いられる。第1級アルコールとしては、炭素数が1〜25の飽和アルコールを用いることが好ましい。従って、アルキル基変性糖誘導体としては、アルキル基の炭素数が1〜25であるアルキル−D−グルコピラノシドを用いることが好ましい。該グルコピラノシドとしては、α型(すなわち、アルキル−α−D−グルコピラノシド)でも、β型(すなわち、アルキル−β−D−グルコピラノシド)でもよく、また両者の混合物でもよい。ここで、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基が挙げられる。
【0028】
アルキル基変性糖誘導体として、特に好ましくは、下記一般式(1)で表されるアルキル−D−グルコピラノシドを用いることであり、特に好ましくは下記一般式(2)で表されるアルキル−α−D−グルコピラノシドを用いることである。
【化2】

【化3】

【0029】
上記式(1)及び(2)中、nは0〜24の整数である。(n+1)で表されるアルキル基の炭素数は、これが大きすぎると、グルコース部分の寄与が小さくなって添加効果がパラフィンオイルに近づく傾向となるため、25以下であることが好ましい。nは、より好ましくは、0〜12の整数であり、更に好ましくは、4〜10の整数である。
【0030】
アルキル−D−グルコピラノシドは、下記式(3)のように、ブドウ糖に第1級アルコールを反応させることで得られるものである。この反応は、例えば、ブドウ糖と第1級アルコールとを塩酸及びカチオン交換樹脂の存在下に加熱反応させる方法(特公昭50−13770号公報参照)、触媒としてカチオン交換樹脂(スチレンとジビニルベンゼンを重縮合して製造した三次元高分子基体に交換基としてスルホン酸基を結合させたもの)を固定床として用いてブドウ糖と第1級アルコールを反応させる方法(特開平6−92984号公報参照)、触媒としてトランスグルコシダーゼ(α−グルコシダーゼ)を用いてブドウ糖と第1級アルコールを反応させる方法(特開平7−87992号公報参照)、ブドウ糖と第1級アルコールとを粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなど)の存在下で反応させる方法(特開平10−204095号公報参照)などにより行うことができる。
【化4】

【0031】
上記天然由来成分の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量部である。天然由来成分の配合量が0.5質量部未満では、その添加効果が不十分となるおそれがある。また、配合量が5質量部を超えると、低発熱性や破断強度が悪化するおそれがある。
【0032】
本発明に係るゴム組成物には、補強性充填剤を配合することができる。補強性充填剤としては、カーボンブラック、シリカなどが挙げられる。特に限定するものではないが、カーボンブラックを配合する場合、窒素吸着比表面積(NSA)が70〜150m/gであるもの、すなわち、ASTMグレードで、SAFクラス(N100番台)、ISAFクラス(N200番台)、HAFクラス(N300番台)のものが好ましく用いられる。ここで、窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準じて測定される値である。補強性充填剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、20〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは30〜150質量部である。
【0033】
本発明に係るゴム組成物には、上述した各成分の他に、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、軟化剤、ワックス、加硫促進剤、加硫剤、加硫助剤、樹脂類など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。上記加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、オイル処理硫黄などの硫黄が好ましく用いられる。
【0034】
本発明に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダなどのゴム用混合機を用いて、常法に従い混練することで調製され、常法に従い加硫成形することにより、トレッドゴムやサイドウォールゴムなどの空気入りタイヤの各ゴム部材として用いることができる。好ましくは、加工性、低発熱性や破断強度を損なうことなく、耐摩耗性を向上できることから、空気入りタイヤのトレッドに用いることであり、トレッドに用いることにより、低燃費性を維持しながら耐摩耗性を向上することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合に従って、常法に従い、ゴム組成物を調製した。詳細には、まず第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄及び加硫促進剤を添加し混練して、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分は以下の通りである。
【0037】
・NR:天然ゴム、RSS3号
・BR:宇部興産(株)製「BR150L」
・カーボンブラック:SAF、東海カーボン(株)製「シースト9」(NSA=142m/g)
・ポリマレイミド化合物1:N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、大和化成工業(株)製「BMI−1000」
・ポリマレイミド化合物2:N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、大和化成工業(株)製「BMI−3000」
・アルキル基変性糖誘導体1:デシル−α−D−グルコピラノシド、式(2)中のn=9、群栄化学工業(株)製「GS−AG10S」
・アルキル基変性糖誘導体2:オクチル−α−D−グルコピラノシド、式(2)中のn=7、群栄化学工業(株)製「GS−AG8S」
・アルキル基変性糖誘導体3:ヘキシル−α−D−グルコピラノシド、式(2)中のn=5、群栄化学工業(株)製「GS−AG6S」
・ブドウ糖:ナカライテスク(株)製「D−(+)−グルコース」
・ロジン誘導体:ロジン変性マレイン酸樹脂、ハリマ化成(株)製「ハリマックR100」(軟化点=100〜110℃)
【0038】
各ゴム組成物には、共通配合として、ゴム成分100質量部に対して、オイル((株)ジャパンエナジー製「JOMOプロセスP200」)3質量部、亜鉛華(三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」)3質量部、ステアリン酸(日油(株)製「ビーズステアリン酸」)2質量部、老化防止剤(住友化学工業(株)製「アンチゲン6C」)2質量部、硫黄(鶴見化学工業株式会社製「粉末硫黄」)1.6質量部、加硫促進剤CBS(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ−G」)1.3質量部を配合した。
【0039】
得られた各ゴム組成物について、加工性を評価するとともに、150℃×30分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、低発熱性、耐摩耗性、破断強度を測定・評価した。各測定・評価方法は次の通りである。
【0040】
・加工性:JIS K6300に準じて、100℃でのムーニー粘度ML(1+4)を測定し、比較例1を100とした指数で表示した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性に優れることを示す。
【0041】
・低発熱性:JIS K6394に準じて、東洋精機製スペクトロメータを用いて、温度60℃、周波数50Hz、初期歪み10%、動歪み2%の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほどtanδが小さく、発熱しにくいこと、即ち低発熱性に優れることを示す。
【0042】
・耐摩耗性:JIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機を用い、スリップ率30%、負荷荷重40N、落砂量20g/分の条件で摩耗試験を実施した。結果は、比較例1の摩耗量を100とした指数(「比較例1の摩耗量」×100/「各試験片の摩耗量」)で表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れる。
【0043】
・破断強度(MPa):JIS K6251に準拠して引張試験(ダンベル3号)を実施した。
【0044】
【表1】

【0045】
結果は表1に示す通りであり、コントロールである比較例1に対し、ポリマレイミド化合物を単独で添加した比較例2では、低発熱性は改良されたものの、耐摩耗性の改良効果は認められなかった。比較例2に対し、カーボンブラックの配合量を増量した比較例3では、耐摩耗性は改良されたが、加工性が悪化し、また低発熱性の改良効果も損なわれた。また、コントロールである比較例1に対して、ロジン誘導体を単独で添加した比較例4では、低発熱性が悪化した。一方、ブドウ糖を単独で添加した比較例5では、破断強度が低下していた。
【0046】
これに対し、ロジン誘導体や糖類とともにポリマレイミド化合物を組み合わせて添加した実施例1〜10では、加工性、低発熱性及び破断強度を実質的に悪化させることなく、耐摩耗性が大幅に改良されており、耐摩耗性と破壊特性のバランスを向上することができた。特に、実施例1〜6のようにポリマレイミド化合物とアルキル基変性糖誘導体を組み合わせて用いることにより、天然由来成分としてロジン誘導体や他の糖類を用いた場合に比べて、低発熱性と破断強度と耐摩耗性のバランスをより一層向上することができた。
【0047】
以上のように、ポリマレイミド化合物と上記天然由来成分とをそれぞれ単独で使用した場合には、本発明の効果は得られず、両者を組み合わせて配合することによりはじめて、加工性と低発熱性と破断強度を損なうことなく、耐摩耗性を向上するという優れた効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各種部材に用いることができ、特には乗用車用タイヤや、トラック・バス用などの大型タイヤなどの各種タイヤのトレッドゴムとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムからなるゴム成分に対し、1分子中にマレイミド基を2個以上有するポリマレイミド化合物と、ロジン、ロジン誘導体及び糖類から選ばれた少なくとも1種の天然由来成分を配合してなるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリマレイミド化合物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記天然由来成分の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜5質量部であることを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記糖類が、グルコースに第1級アルコールを反応させてなるアルキル基変性糖誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記アルキル基変性糖誘導体が下記一般式(1)で表されるアルキル−D−グルコピラノシドである請求項4記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、nは0〜24の整数である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなるトレッドを備えた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−184633(P2011−184633A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53464(P2010−53464)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】