説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】シリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、下記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物。


(式(1)中、Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基などを示す。nは、0〜8の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の低燃費化の要請に対応して、タイヤの転がり抵抗を低減して、発熱を抑えたタイヤの開発が進められている。特に、タイヤの部材のなかでもタイヤにおける占有比率の高いトレッドに対して、優れた低発熱性(転がり抵抗特性)が要求されている。このような問題を解決するために、タイヤのトレッドにおいて、補強用充填剤として使用されているカーボンブラックを、一部シリカに置き換えることがなされてきた。
【0003】
さらに低発熱性を満足させる方法として、補強用充填剤であるシリカの配合量を減量する方法や、補強性の小さい充填剤を用いる方法が試みられているが、耐摩耗性やグリップ性能が大きく低下するという問題があった。
【0004】
一方、ゴム成分とシリカの結合をより強固にすることにより、転がり抵抗特性、耐摩耗性、及びグリップ性能のバランスが優れたゴム組成物が得られることが期待される。そこで、シランカップリング剤を用いて、ゴム成分とシリカを化学的に結合することでシリカの補強性を増大させ、シリカの補強性をカーボンブラックと同程度にする試みが行われている。
【0005】
しかし、ゴム成分とシリカがシランカップリング剤を介して化学的に結合することにより上記性能は向上するが、カップリング反応が加硫前に起こると加工性、作業性が非常に悪くなるという問題がある。特に、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いた場合、このような傾向が見られる。また、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、シリカと相互作用を持つ官能基を有するジエン系ゴム(シリカ用変性ポリマー)とを併用した場合には、加工性、作業性がさらに悪化する。そのため、通常は、混練中に反応が起こりにくいスルフィド系シランカップリング剤が用いられているが、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いた場合よりも転がり抵抗特性等の性能の向上効果が小さいという問題がある。
【0006】
このように、加工性、作業性が良く、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できるゴム組成物は、現在まで知られていなかった。
【0007】
特許文献1には、脂肪酸及び/又はその誘導体と、層状ケイ酸塩を配合することにより、硬度やモジュラスを向上できることが開示されている。しかし、良好な加工性、作業性を維持しつつ、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上する点については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−112847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記課題を解決し、良好な加工性、作業性を維持しつつ、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、下記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(2)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。RとR、RとR、又はRとRとで環構造を形成してもよい。nは、0〜8の整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【0011】
上記タイヤ用ゴム組成物は、シリカ100質量部に対して、上記式(1)で表される化合物を0.1〜20質量部含むことが好ましい。
【0012】
上記メルカプト基を有するシランカップリング剤が下記式(3)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(4)で示される結合単位Aと下記式(5)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤であることが好ましい。
【化3】

(式(3)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基又は分岐若しくは非分岐の炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化4】

【化5】

(式(4)、(5)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R12は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R13は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R12とR13とで環構造を形成してもよい。)
【0013】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、シリカと相互作用を持つ官能基を有するジエン系ゴムの含有量が10〜90質量%であることが好ましい。
【0014】
上記シリカのチッ素吸着比表面積が30〜500m/gであることが好ましい。
【0015】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカを5〜150質量部、シリカ100質量部に対して、メルカプト基を有するシランカップリング剤を0.5〜20質量部含むことが好ましい。
【0016】
上記タイヤ用ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、上記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、良好な加工性、作業性を維持しつつ、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く(特に、グリップ性能(ウェットグリップ性能)を)向上できる。該ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に使用することにより、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能のバランス(特に、グリップ性能(ウェットグリップ性能))に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、上記式(1)で表される化合物とを含む。
【0020】
一般的に、メルカプト基を有するシランカップリング剤を使用すると、加工性、作業性が悪化する。しかし、本発明では、シリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、上記式(1)で表される化合物とを併用することにより、メルカプト基を有するシランカップリング剤を使用した場合であっても良好な加工性、作業性が得られ、更に、優れた転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能(特に、グリップ性能)が得られる。
【0021】
本発明に使用されるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能がバランスよく得られるという理由から、NR、BR、SBRが好ましい。
【0022】
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなどを使用できる。なかでも、シス含有量が95質量%以上のBRが好ましい。
【0023】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐摩耗性や破壊性能が得られないおそれがある。該BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。70質量%を超えると、充分なグリップ性能(ウェットグリップ性能)が得られないおそれがある。
【0024】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、S−SBRが好ましい。
【0025】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、充分なグリップ性能(ウェットグリップ性能)が得られないおそれがある。該SBRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、充分な耐摩耗性や破壊性能が得られないおそれがある。
【0026】
また、本発明の効果(特に、加工性、作業性の改善効果)がより好適に得られることから、上記ジエン系ゴムがシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムであることが好ましい。
【0027】
変性ジエン系ゴムとしては、例えば、上記ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を窒素、酸素、およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴムや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。なお、上記変性剤としては、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0028】
上記官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能の向上効果が高いという理由から、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0029】
上記官能基が導入されるジエン系ゴム(変性ジエン系ゴムの骨格を構成するポリマー)としては、IR、BR、SBRが好ましく、BR、SBRがより好ましい。
【0030】
変性剤による重合体の変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、重合体と変性剤とを接触させればよく、調製した重合体溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0031】
また、主鎖変性ジエン系ゴムは、従来公知の手法を用いて重合できる。例えば、重合に使用するモノマーの一部として、上記官能基を有するモノマー(例えば、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン等)を使用して重合することにより得られる。また、主鎖末端変性ジエン系ゴムは、例えば、主鎖変性ジエン系ゴムと変性剤とを接触させることにより得られる。
【0032】
ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、充分な転がり抵抗特性が得られないおそれがある。該変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、加工性、作業性が悪化する傾向がある。
【0033】
本発明では、シリカが使用される。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0034】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。30m/g未満では、破壊強度、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、500m/g以下が好ましく、250m/g以下がより好ましい。500m/gを超えると、転がり抵抗特性、加工性、作業性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0035】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、加工性、作業性が悪化する傾向がある。
【0036】
本発明では、下記式(1)で表される化合物が使用される。
【化6】

(式(1)中、Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基(−OH)を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(2)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基(−OH)又はカルボキシル基(−COOH)で置換されていてもよい。RとR、RとR、又はRとRとで環構造を形成してもよい。nは、0〜8の整数を表す。)
【化7】

(式(2)中、Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基(−OH)を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【0037】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20、更に好ましくは炭素数15〜20)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0038】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20、更に好ましくは炭素数15〜20)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0039】
の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0040】
としては、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基(−OH)が好ましく、上記アルキル基がより好ましい。
【0041】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜25、より好ましくは炭素数1〜20、更に好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0042】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜25、より好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜5)のアルケニル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0043】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜25、より好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜5)のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。
【0044】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0045】
及びRとしては、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、上記式(2)で表される基が好ましく、上記アルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された上記アルキル基がより好ましい。
【0046】
nは、0〜8の整数を表すが、より好適に加工性、作業性、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できるという理由から、nは0〜3であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0047】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。
【0048】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20)のアルキル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0049】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20)のアルケニル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0050】
の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0051】
としては、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0052】
pは、0〜10の整数を表すが、より好適に加工性、作業性、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できるという理由から、pは0〜3であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0053】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、オクタデカンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカンアミド、ε−カプロラクタム、サルコシン、N−ラウロイルサルコシン、N−オクタデシルサルコシン、N,N’−エチレンビスオクタデカンアミド、N−(1−オキソオクタデシル)サルコシンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記式(1)で表される化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。0.1質量部未満であると、上記式(1)で表される化合物を配合したことにより得られる効果を充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下である。20質量部を超えると、加硫後の硬度が低下し、操縦安定性が悪化するおそれがある。
【0055】
本発明では、上記式(1)で表される化合物に加えて、更にアミノ酸誘導体を配合することが好ましい。これにより、より好適にシリカの分散性を向上でき、良好な加工性、作業性を維持しつつ、より好適に転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できる。
【0056】
上記式(1)で表される化合物に加えて、更にアミノ酸誘導体を配合する場合には、上記式(1)で表される化合物とアミノ酸誘導体との混合物として市販されているSchill+Seilacher社製のHT254等を使用してもよい。
【0057】
上記式(1)で表される化合物とアミノ酸誘導体の合計含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.2質量部未満であると、上記式(1)で表される化合物を配合したことにより得られる効果を充分に得られないおそれがある。また、該合計含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは11質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。15質量部を超えると、加硫後の硬度が低下し、操縦安定性が悪化するおそれがある。
【0058】
本発明では、メルカプト基を有するシランカップリング剤が使用される。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、特に限定されないが、下記式(3)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(4)で示される結合単位Aと下記式(5)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤(結合単位Bは必須単位で、結合単位Aは任意単位)であることが好ましく、下記式(3)で表されるシランカップリング剤であることがより好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、メルカプト基を有するとは、SH基を有することを意味する。また、メルカプト基を有するシランカップリング剤と共に、メルカプト基を有さないシランカップリング剤(例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等)を使用してもよい。
【0059】
【化8】

(式(3)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基又は分岐若しくは非分岐の炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【0060】
、R及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基のうち炭素数が1〜12のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0061】
、R及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜3)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、へプトキシ基、デソキシ基等が挙げられる。
【0062】
−O−(R10−O)−R11で表される基のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。
該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、上記アルキレン基が好ましい。
【0063】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0064】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。
【0065】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。
【0066】
10の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0067】
上記mは1〜30(好ましくは2〜20、より好ましくは3〜7、更に好ましくは5〜6)の整数を表す。
【0068】
11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基又は分岐若しくは非分岐の炭素数7〜30のアラルキル基を表す。なかでも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0069】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0070】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0071】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアリール基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0072】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数7〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0073】
−O−(R10−O)−R11で表される基の具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327等が挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327が好ましい。
【0074】
、R及びRとしては、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、−O−(R10−O)−R11で表される基が好ましく、R、R及びRのうち1つが上記アルコキシ基で、R、R及びRのうち2つが−O−(R10−O)−R11で表される基である組合せがより好ましい。
【0075】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキレン基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基のうち炭素数が1〜6のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0076】
上記式(3)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、エボニックデグッサ社製のSi363、信越化学工業(株)製のKBM803等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
下記式(5)で示される結合単位Bと、必要に応じて下記式(4)で示される結合単位Aからなるシランカップリング剤(下記式(4)で示される結合単位Aと下記式(5)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤)は、結合単位Aと結合単位Bとの合計量に対して、結合単位Bを1〜70モル%の割合で共重合したものが好ましい。
【0078】
結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0079】
また、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C15部分が結合単位Bの−SH基を覆うためポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0080】
【化9】

【化10】

(式(4)、(5)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R12は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R13は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R12とR13とで環構造を形成してもよい。)
【0081】
12のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
【0082】
12、R13の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜12)のアルキル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0083】
12、R13の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜12)のアルキレン基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0084】
12、R13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルケニル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0085】
12、R13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルケニレン基としては、例えば、上記R10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基と同様の基を挙げることができる。
【0086】
12、R13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルキニル基としては、例えば、上記R及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基と同様の基を挙げることができる。
【0087】
12、R13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルキニレン基としては、例えば、上記R10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基と同様の基を挙げることができる。
【0088】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内、かつ、xが1以上であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0089】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60、NXT−Z100等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
メルカプト基を有するシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満であると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。また、該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、添加量増量による効果は無く、コストアップとなる傾向がある。
2種以上のメルカプト基を有するシランカップリング剤を併用する場合、上記含有量は合計含有量を意味する。
【0091】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0092】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又は、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0093】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。なかでも、TBBSが好ましく、TBBSとN,N’−ジフェニルグアニジンを併用することがより好ましい。
【0094】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0095】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、トレッド、サイドウォール)に好適に使用できる。
【0096】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド、サイドウォール)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0097】
また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、バス用タイヤ、トラック用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例】
【0098】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0099】
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
p−メトキシスチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
変性剤:アヅマックス社製の3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
【0100】
(製造例)(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの調製)
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500ml、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、p−メトキシスチレン5mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間撹拌した。その後、変性剤を0.15mmol加えて、0℃で1時間撹拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により変性共重合体(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム)を得た。得られた変性共重合体の重量平均分子量は500000、アルコキシスチレン成分含有量は1.2質量%、スチレン成分含有量は19質量%であった。
【0101】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含有量:97質量%)
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol NS116(S−SBR、ビニル含有量:60質量%、スチレン含有量:20質量%)
変性SBR:上記製造例で調製した主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
シランカップリング剤A:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤B:信越化学工業(株)製のKBM803(下記式で表されるシランカップリング剤(上記式(3)のR=−OCH、R=−OCH、R=−OCH、R=−C−))
【化11】

シランカップリング剤C:エボニックデグッサ社製のSi363(下記式で表されるシランカップリング剤(上記式(3)のR=−O−(C−O)−C1327、R=−O−C、R=−O−(C−O)−C1327、R=−C−))
【化12】

シランカップリング剤D:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
化合物A:東京化成工業(株)製のN,N’−エチレンビスオクタデカンアミド(上記式(1)で表される化合物)
化合物B:東京化成工業(株)製のN−オクタデシルサルコシン(上記式(1)で表される化合物)
化合物C:東京化成工業(株)製のN−ラウロイルサルコシン(上記式(1)で表される化合物)
化合物D:Schill+Seilacher社製のHT254(脂肪酸アミド系加工助剤(脂肪酸アミド(上記式(1)で表される化合物(N−(1−オキソオクタデシル)サルコシン))とアミノ酸誘導体の混合物)(脂肪酸アミドの含有率:25〜50質量%))
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤A:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤B:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0102】
実施例1〜16及び比較例1〜7
表1,2に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材とはりあわせ、170℃で10分間プレス加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を作製した。
【0103】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1,2に示す。
【0104】
(ムーニー粘度の測定)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定した。比較例1または比較例5のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムー二粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(実施例1〜9、比較例2〜4配合のML1+4)×100
(ムー二粘度指数)=(比較例5のML1+4)/(実施例10〜16、比較例6〜7のML1+4)×100
【0105】
(ゴム肌)
得られた未加硫ゴム組成物を押出し成形し、得られたゴムシートのシート性状を目視により以下の基準で評価した。シート性状が良好なほど、作業性に優れることを示す。
◎:シート形状が非常に良好
○:シート形状が良好
×:シート形状がボロボロ
【0106】
(転がり抵抗)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(各加硫ゴム組成物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1または比較例5の損失正接tanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど、転がり抵抗特性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(実施例1〜9、比較例2〜4のtanδ)×100
(転がり抵抗指数)=(比較例5のtanδ)/(実施例10〜16、比較例6〜7のtanδ)×100
【0107】
(摩耗試験)
得られた加硫ゴム組成物について、ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1または比較例5のランボーン摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合(加硫物)の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)/(実施例1〜9、比較例2〜4の容積損失量)×100
(ランボーン摩耗指数)=(比較例5の容積損失量)/(実施例10〜16、比較例6〜7の容積損失量)×100
【0108】
(ウェットグリップ性能(1))
得られた加硫ゴム組成物について、(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてグリップ性能を評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片(加硫ゴム組成物)を用い、速度20km/h、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜50%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。結果は比較例1、5を100として指数表示した。指数が大きいほど、グリップ性能(ウェットグリップ性能)に優れることを示す。
【0109】
(ウェットグリップ性能(2))
水を撒いて湿潤路面としたテストコースにて、試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定し、その距離の逆数の値を比較例1、5を100として、それぞれ指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
表1の結果より、メルカプト基を有するシランカップリング剤を配合した比較例2〜4は、比較例1と比べて加工性、ゴム肌(作業性)が大幅に悪化した。一方、メルカプト基を有するシランカップリング剤(シランカップリング剤B)に上記式(1)で表される化合物を配合した実施例1,2は、比較例2に比べて、加工性、ゴム肌(作業性)が改善し、転がり抵抗特性、ウェットグリップ性能が向上した。同様に、メルカプト基を有するシランカップリング剤(シランカップリング剤D)に上記式(1)で表される化合物を配合した実施例3,4は、比較例4に比べて、加工性、ゴム肌(作業性)が改善し、転がり抵抗特性、ウェットグリップ性能が向上した。また、メルカプト基を有するシランカップリング剤(シランカップリング剤C)に上記式(1)で表される化合物を配合した実施例5〜9は、比較例3に比べて、加工性、ゴム肌(作業性)が改善し、ウェットグリップ性能が向上した。特に、シランカップリング剤Cと、化合物Dとを併用した実施例8,9では、転がり抵抗特性も向上した。
【0113】
表2の結果より、ゴム成分として、変性ジエン系ゴム(変性SBR)を使用した場合においても、メルカプト基を有するシランカップリング剤を配合した比較例6,7は、比較例5と比べて加工性、ゴム肌(作業性)が大幅に悪化した。一方、メルカプト基を有するシランカップリング剤(シランカップリング剤C)に上記式(1)で表される化合物を配合した実施例10〜13は、比較例6に比べて、加工性、ゴム肌(作業性)が改善し、ウェットグリップ性能が向上し、耐摩耗性は同等以上であった。特に、シランカップリング剤Cと、化合物C又は化合物Dとを併用した実施例11〜13の性能が優れていた。また、メルカプト基を有するシランカップリング剤(シランカップリング剤D)に上記式(1)で表される化合物を配合した実施例14〜16は、比較例7に比べて、加工性、ゴム肌(作業性)が改善し、ウェットグリップ性能が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカと、
メルカプト基を有するシランカップリング剤と、
下記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(2)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。RとR、RとR、又はRとRとで環構造を形成してもよい。nは、0〜8の整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【請求項2】
シリカ100質量部に対して、前記式(1)で表される化合物を0.1〜20質量部含む請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤が下記式(3)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(4)で示される結合単位Aと下記式(5)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化3】

(式(3)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基又は分岐若しくは非分岐の炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化4】

【化5】

(式(4)、(5)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R12は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R13は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R12とR13とで環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
ゴム成分100質量%中、シリカと相互作用を持つ官能基を有するジエン系ゴムの含有量が10〜90質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカのチッ素吸着比表面積が30〜500m/gである請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100質量部に対して、シリカを5〜150質量部、シリカ100質量部に対して、メルカプト基を有するシランカップリング剤を0.5〜20質量部含む請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−122015(P2012−122015A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274736(P2010−274736)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】