説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分と、シリカとを混練する第一ベース練り工程と、前記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、米油とを混練する第二ベース練り工程とを含む製造方法により得られ、前記米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量が48質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤの転がり抵抗を低減して発熱を抑えることにより、車の低燃費化が行われてきたが、近年、車の低燃費化への要求はますます強くなってきており、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。また、優れた低燃費性だけではなく、優れた耐摩耗性、ウェットグリップ性能も要求されている。
【0003】
低燃費性を改善する方法として、カーボンブラックをシリカで置換する方法が知られている。しかし、シリカはカーボンブラックと比較して補強性が低いため、カーボンブラックをシリカに置換すると、耐摩耗性が低下する傾向があった。
【0004】
また近年では石油資源の枯渇問題やCO排出規制などの諸事情により、石油外資源を用いた材料開発が求められており、様々な試みが行われている。例えば、特許文献1には、石油外資源の含有比率を高め、石油資源由来の原材料を主成分とするタイヤトレッド用ゴム組成物と比較しても、さらに耐候性、低燃費性、耐摩耗性をバランスよく得ることができるタイヤトレッド用ゴム組成物として、シリカと、特定量の植物性油脂とを含むゴム組成物が記載されている。しかし、特許文献1では、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性をバランスよく改善する点については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−308623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分と、シリカとを混練する第一ベース練り工程と、上記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、米油とを混練する第二ベース練り工程とを含む製造方法により得られ、上記米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量が48質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
上記第一ベース練り工程が、ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤とを混練する工程であることが好ましい。
【0009】
上記米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量が17質量%未満であることが好ましい。
【0010】
上記米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量が30質量%未満であることが好ましい。
【0011】
上記第二ベース練り工程が、上記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、上記米油と、構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量が60質量%以上のひまわり油とを混練する工程であることが好ましい。
【0012】
上記米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量が14質量%以下であることが好ましい。
【0013】
上記米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量が15質量%以下であることが好ましい。
【0014】
上記タイヤ用ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゴム成分と、シリカとを混練する第一ベース練り工程と、前記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、オレイン酸の含有量が特定量以上の米油とを混練する第二ベース練り工程とを含む製造方法により得られるタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性(オゾン等による経年劣化に対する耐久性)をバランス良く向上できる。該ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に使用することにより、上記性能に優れた空気入りタイヤを提供することができる。また、石油外資源由来の可塑剤である上記米油を使用することにより、石油資源の枯渇問題やCO排出規制に対応できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、シリカとを混練する第一ベース練り工程と、前記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、オレイン酸の含有量が特定量以上の米油とを混練する第二ベース練り工程とを含む製造方法により得られる。具体的には、例えば、以下の製造方法により得られる。
【0018】
<第一ベース練り工程>
第一ベース練り工程では、例えば、混練機を用いて、ゴム成分と、シリカが混練される。混練機としては従来公知のものを使用でき、例えば、バンバリーミキサーやニーダーなどの密閉型設備が挙げられる。なお、以下に述べる練り工程でも同様の混練機を使用できる。
【0019】
第一ベース練り工程では、例えば、上記成分を120〜160℃(好ましくは140〜160℃)で3〜10分間(好ましくは4〜8分間)混練すればよい。
【0020】
本発明に使用されるゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く向上できるという理由から、イソプレン系ゴム(特にNR)、BR、SBRが好ましく、イソプレン系ゴム(特にNR)とBRとSBRを併用することが好ましい。
【0021】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0022】
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなどを使用できる。なかでも、シス含有量が95質量%以上のBRが好ましい。
【0023】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、低燃費性の改善効果が大きいという点から、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された変性SBRが好ましい。このような変性SBRとしては、旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレンE15等を使用することができる。
【0024】
SBRのビニル含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。ビニル含量が5質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。該ビニル含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。ビニル含量が90質量%を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、本発明において、SBRのビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0025】
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。スチレン含量が5質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。該スチレン含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。スチレン含量が90質量%を超えると、発熱性が著しく上昇し、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、SBRのスチレン含量は、H−NMR測定により算出される。
【0026】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0027】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。30m/g未満では、補強効果が小さく、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは400m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。400m/gを超えると、シリカの分散性が低下し、充分な低燃費性、耐摩耗性が得られないおそれがある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0028】
第一ベース練り工程において投入(混練)されるシリカの量は、本発明のゴム組成物に配合されるシリカ100質量%中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。50質量%未満であると、第二ベース練り工程でシリカを充分に分散させることが難しくなり、シリカ本来の性能を充分に発揮できないおそれがある。上記シリカ量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の向上効果が小さくなる傾向がある。
【0029】
第一ベース練り工程では、上記ゴム成分、シリカ以外にも、シランカップリング剤、カーボンブラック、プロセスオイル等を混練してもよい。
なかでも、シランカップリング剤を混練することが好ましい。第一ベース練り工程で、上記ゴム成分、シリカと共に、シランカップリング剤を混練することにより、シリカの分散性を向上でき、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をよりバランス良く向上できる。
【0030】
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0031】
カーボンブラックとしては、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなどを用いることができる。カーボンブラックを配合することにより、より耐摩耗性、耐候性を向上できる。
【0032】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は50m/g以上が好ましく、60m/g以上がより好ましい。NSAが50m/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、100m/g以下が更に好ましい。NSAが200m/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、加工性が悪化する傾向がある。また、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0033】
カーボンブラックの圧搾油吸着量(COAN、compressed oil adsorption number)は40ml/100g以上が好ましく、60ml/100g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのCOANは150ml/100g以下が好ましく、140ml/100g以下がより好ましい。COANが上記範囲内であると、補強性、耐摩耗性をよりバランスよく得られる。
なお、カーボンブラックのCOANは、JIS K6217−4の測定方法によって求められる。なお、使用したオイルはジブチルフタレート(フタル酸ジブチル)である。
【0034】
<第二ベース練り工程>
第二ベース練り工程では、例えば、混練機を用いて、第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、オレイン酸の含有量が特定量以上の米油が混練される。本発明では、第二ベース練り工程において、第一ベース練り工程により得られた混練物、シリカと共にオレイン酸の含有量が特定量以上の米油を混練することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性をバランス良く向上できる。
【0035】
なお、第二ベース練り工程において、新たにシリカを投入せずに、第一ベース練り工程により得られた混練物と、上記米油のみを混練した場合、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の向上効果が小さい。これは、第一ベース練り工程により得られた混練物に、上記米油と共にシリカを新たに投入して混練することにより、シリカの分散性を改善できるため、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上できるものと思われる。
【0036】
第二ベース練り工程では、例えば、上記成分を140〜160℃で2〜8分間混練すればよい。
【0037】
シリカとしては、第一ベース練り工程で使用したシリカと同様のものを好適に使用できる。
【0038】
第二ベース練り工程において新たに投入されて混練されるシリカの量は、本発明のゴム組成物に配合されるシリカ100質量%中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の向上効果が小さくなる傾向がある。上記シリカ量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。50質量%を超えると、シリカを充分に分散させることが難しくなり、シリカ本来の性能を充分に発揮できないおそれがある。
【0039】
上記米油としては、オレイン酸の含有量が特定量以上の米油であれば特に限定されない。
【0040】
米油は、イネ植物の種子、穀粒または米糠から抽出される植物油であり、米糠油、ライスオイルとも呼ばれる。米油は、脂質を主成分とし、脂質以外にも、例えば、γ−オリザノールやステロール等を含んでもよい。
【0041】
米油は、基本的には、常温(25℃)で液体である。米油の融点は、好ましくは20℃以下、より好ましくは17℃以下である。融点が20℃を超えると、常温で固体となり、米油を配合したことにより得られる効果が小さい傾向がある。
なお、米油の融点は二重管式温度計に試料を詰めた毛細管を取り付けて温浴で加温することにより測定できる。
【0042】
米油100質量%中の脂質の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。60質量%未満では、米油の純度が低く、米油を配合したことにより得られる効果が小さい傾向がある。なお、脂質の含有量は油の抽出とGC(ガスクロマトグラフィー)分析により測定できる。
【0043】
上記脂質としては、例えば、炭素数が6以上の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸は、遊離脂肪酸として存在してもよいが、通常、エステル化形態、例えばトリアシルグリセロール(TAG)、リン脂質として存在する。
【0044】
米油の構成脂肪酸100質量%中のTAGとして存在する脂肪酸の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。50質量%未満では、米油を配合したことにより得られる効果が小さい傾向がある。なお、TAGとして存在する脂肪酸の割合は、GC(ガスクロマトグラフィー)分析により測定できる。
【0045】
上記脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、リノレン酸等が挙げられる。なかでも、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸が好ましい。
【0046】
米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量は、48質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。オレイン酸の含有量の上限は特に限定されない。オレイン酸の含有量が上記量であると、米油を配合したことにより得られる効果がより好適に得られる。
【0047】
米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量は、好ましくは17質量%未満、より好ましくは14質量%以下である。また、上記パルミチン酸の含有量は、好ましくは6質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。パルミチン酸の含有量が上記範囲内であると、米油を配合したことにより得られる効果がより好適に得られる。
【0048】
米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量は、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。また、上記リノール酸の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上である。リノール酸の含有量が上記範囲内であると、米油を配合したことにより得られる効果がより好適に得られる。なお、上記脂肪酸組成(オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸の含有量)は、特表2009−543561号公報に記載の方法に従い、GLC(気−液クロマトグラフィー)により測定できる。
【0049】
米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸とリノール酸の含有量比(オレイン酸の含有量/リノール酸の含有量)は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましい。なお、上記含有量比の上限は特に限定されない。上記含有量比が上記比であると、米油を配合したことにより得られる効果がより好適に得られる。
【0050】
米油は、公知の方法によって、イネ植物の種子、穀粒または米糠から抽出できる。抽出方法としては、例えば、ジエチルエーテル、石油エーテル、クロロホルムとメタノール若しくはブタノールとの混合物等により抽出する方法が挙げられる。
【0051】
米油は、イネ植物の種子、穀粒または米糠から抽出された後に、更に精製されていることが好ましい。精製方法としては、従来公知の方法(例えば、特開2002−253118号公報に記載のアルカリ精製法、蒸留脱酸法等)により行うことができる。また、必要に応じて、多糖類を除去するために、「脱ガム化(de−gummed)」を行ってもよい。また、米油は、必要に応じて、水素化されてもよく、当分野で公知の方法で化学的または酵素的に処理されてもよい。
【0052】
なお、特表2009−543561号公報に記載の方法に従い、米油中の脂肪酸組成を変化させることにより、米油中のオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸の含有量を上記範囲内に調整することができる。
【0053】
第二ベース練り工程では、上記混練物、シリカ、上記米油以外にも、上記米油以外の可塑剤や従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル等の軟化剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛等を混練してもよい。なかでも、米油以外の可塑剤を混練することが好ましい。
【0054】
上記米油以外の可塑剤としては、特に限定されず、従来からタイヤ用ゴム組成物に使用されている石油由来のワックス等の石油資源由来の可塑剤を使用してもよいが、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ビーズワックス、ウールワックス等の石油外資源由来のワックスやひまわり油、トール油、ひまし油等の植物油等の石油外資源由来の可塑剤を使用することが好ましい。また、上記米油と共に第二ベース練り工程で混練することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性をバランス良く向上できることから、オレイン酸の含有量が所定量以上のひまわり油が好ましい。
【0055】
ひまわり油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。オレイン酸の含有量の上限は特に限定されない。オレイン酸の含有量が上記量のひまわり油を上記米油と共に第二ベース練り工程で混練することにより、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をより向上でき、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性をよりバランス良く向上できる。なお、オレイン酸の含有量は、特表2009−543561号公報に記載の方法に従い、GLC(気−液クロマトグラフィー)により測定できる。
【0056】
(仕上げ練り工程、加硫工程)
上記第二ベース練り工程の後、得られたゴム組成物に、例えば、混練機を用いて、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等の成分を混練する仕上げ練り工程を行い、さらに得られたゴム組成物(未加硫ゴム組成物)を130〜190℃で5〜30分間加硫反応を行うことにより、本発明のタイヤ用ゴム組成物が得られる。
【0057】
上記製法により得られるゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のNRの含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く向上できない傾向がある。該含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く向上できない傾向がある。
【0058】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く向上できない傾向がある。該含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く向上できない傾向がある。
【0059】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。40質量%未満であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く向上できない傾向がある。SBRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く向上できない傾向がある。
【0060】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。40質量部未満では、充分なウェットグリップ性能、低燃費性が得られない傾向がある。また、シリカの含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。100質量部を超えると、シリカの再凝集により加工性が悪化し、さらに耐摩耗性も低下する傾向がある。
【0061】
シランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。2質量部未満では、充分なシリカの分散性が得られず、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られない傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。15質量部を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0062】
カーボンブラックを配合する場合、シリカとカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは45質量部以上、より好ましくは55質量部以上である。45質量部未満では、充分なウェットグリップ性能、低燃費性が得られない傾向がある。また、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性が得られない傾向がある。また、上記合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。150質量部を超えると、低燃費性、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0063】
米油の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上である。0.5質量部未満であると、米油配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記米油の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。30質量部を超えると、米油がゴム表面にブルームするおそれがある。
【0064】
上記ひまわり油の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上である。0.5質量部未満であると、ひまわり油配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記ひまわり油の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。30質量部を超えると、ひまわり油がゴム表面にブルームするおそれがある。
【0065】
従来から、タイヤ用ゴム組成物には、空気入りタイヤの耐候性の向上のために通常、各種の老化防止剤が配合されているが、比較的多量(例えば、ゴム成分100質量部に対して、4質量部以上)に配合する必要があった。しかし、老化防止剤は、温度、歪み、オゾンなどの外的刺激を受けると、容易に表面に析出し、さらに紫外線などの光によって経時的に分解し、この分解物がタイヤを茶色あるいは茶褐色に変色させていくため、その外観が悪くなり、タイヤの商品価値が低下するという問題があった。
【0066】
一方、本発明のゴム組成物は上記製法により得られるゴム組成物であるので、老化防止剤の含有量を低減できる。これは、米油が、時間経過と共にタイヤ表面に移行し、タイヤ表面を保護することにより、老化防止剤を減量しても耐候性の低下を抑制できるものと思われる。本発明では、老化防止剤を減量できるため、タイヤの外観の悪化を防止できる。
【0067】
本発明のゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.5質量部未満では、充分な耐候性が得られないおそれがある。また、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。3.5質量部を超えると、タイヤの外観の悪化を招くおそれがある。
【0068】
本発明のゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、ウェットグリップ性能が低下するおそれがある。
【0069】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、トレッド)に好適に使用できる。
【0070】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0071】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0072】
(製造例1)(米油Bの製造)
米油Bは、特表2009−543561号公報の製法に基づいて製造した。
1個の発育中の種子または半分の種子をろ紙の間で押しつぶし、管に入れた。0.5Mナトリウムメトキシド2mlを添加し、管を固く密閉して、その後80℃で10分間インキュベートした。管を冷却した後、氷酢酸0.1mlを添加し、次いで蒸留水2mlおよび石油精油2mlを添加した。混合物を10秒間ボルテックスし、相が分離した後、上部石油層を小さな試験管に移した。重炭酸カリウム/硫酸ナトリウム混合物約1gを試験管に添加し、混合物をボルテックスした。試料溶液をオートサンプラーバイアルに写し、Soutjesdic et al.(2002)によって述べられているようにGC分析を実施するまで冷凍庫において−20℃で保存した。
本方法はBligh and Dyer(1959)から適合された。CHCl/MeOH(1:2)1.5mlを緩衝液0.4ml中の組織試料に添加し、試料を強くボルテックスした。さらなるCHCl 0.5mlを添加し、試料を再びボルテックスした。HO 0.5mlを添加し、試料を再びボルテックスした。相を分離するために管を3000rpmで手早く遠心した;白色沈殿物が界面に出現した。有機(下部)相を新たな管に移し、真空下で濃縮した。酸性脂質を抽出しようとする場合は、HO 0.5mlの代わりに1% HClO 0.5mlを添加した。
脂肪酸含量の定量のための脂肪酸メチルエステル(FAME)の調製
穀粒からFAMEを直接調製するため、10〜15の種子を正確に計量し、ガラス管に移した。1mg/ml 17:0−メチルエステル10μlの内部標準を各々の種子試料に添加した。1Nメタノール−HCl(Supelco)0.75mlを各管に添加し、しっかりと蓋をして、80℃で少なくとも2〜3時間または一晩還流した。試料を冷却し、NaCl(0.9%w/v)0.5ml、次いでヘキサン300μlを添加した。管に再び蓋をし、強くボルテックスした。上部ヘキサン相(200〜250μl)を注意深くエッペンドルフ管に移した。試料を窒素下で完全に乾燥した。乾燥したFAME試料をヘキサン20μlに溶解し、GC分析のためにバイアル中の円錐形ガラスインサートに移した。
ガスクロマトグラフィーによるFA分析
脂肪酸メチルエステルを、以下のようにアルカリメチル基転移によって調製した。単一種子試料をろ紙ディスクの間で押しつぶした。ろ紙ディスクに移した脂質中の脂肪酸を、次に、0.02Mナトリウムメトキシド2mL中80℃で10分間メチル化し、その後30分間冷却した。氷酢酸0.1mLを添加し、次いで蒸留水2mLおよびヘキサン2mLを順に添加した。ボルテックスし、相を分離した後、脂肪酸メチルエステルを含む上部ヘキサン層をマイクロバイアルに移した。脂肪酸メチルエステルを、先に述べられているように(Stoutjesdijk et al.,2002)気−液クロマトグラフィーによって分析した。
イネ(日本晴品種)(cv.Nipponbare)を以下のように形質転換した。
i)カルスの誘導と培養
成熟穀粒からもみ殻を取り除き、その後70% EtOHに30秒間浸漬してろうの外層を除去した。清浄にした穀粒を滅菌水で3回洗浄し、表面滅菌するために振とうしながら25%漂白剤の溶液(Tween20界面活性剤2滴を添加)に20分間浸漬した。無菌条件下で、穀粒を70% EtOHで手早くすすぎ、滅菌水で8〜10回十分に洗浄して、N6D培地に塗布した。プレートを微小孔テープで密閉し、自然光の下で(under fulllight)28℃でインキュベートした。6〜8週間後にカルスが生成され、それらをNB培地に移した。パラフィン紙で密閉し、4週間ごとに新鮮NBプレートに継代培養しながら28℃で放置した。5継代以降のカルスは形質転換に使用しなかった。
ii)形質転換
健康に見えるカルスを継代培養プレートから採取し、25〜30カルス/プレートの密度で新鮮NBプレートに移した。2日後、特表2009−543561号公報に記載のアグロバクテリウム株の新鮮培養物を樹立し、28℃でインキュベートした。培養培地は、アセトシリンゴン100μMを添加したNB培地であった。カルスを細胞の懸濁液に10分間液浸した。過剰の懸濁液を廃棄した後、アセトシリンゴン100μMを添加したNB培地にカルスを置き、暗所にて25℃で3日間インキュベートした(共培養)。共培養工程後、カルスを管の中で150mg/mlチメンチン(Timentin)を含む滅菌水で静かに3回洗浄した。カルスをろ紙に乾燥ブロットし、十分な間隔を置いてNBCTプレート(カナマイシン選択マーカ遺伝子を使用する場合は100μg/mlカナマイシンまたは適宜に他の選択薬剤、150μg/mlチメンチン及び200μg/mlクラフォラン(Claforan)を含有する)に塗布した。プレートを暗所にて26〜28℃で3〜4週間インキュベートした。耐性カルスが約10日後に認められ、NBCT+選択プレートに移して、さらに14〜21日間暗所でインキュベートした。健康なカルスをPRCT+選択プレートに移し、暗所で8〜12日間インキュベートして、その後RCT+選択プレートに移し、自然光の下、28℃で30日間インキュベートした。この期間後、発生した小植物体を組織培養鉢中の1/2MS培地に移し、さらなる成長のために光下で10〜14日間インキュベートした後、土壌に移した。
形質転換イネ植物の穀粒および葉試料から得られた米油の構成脂肪酸の割合は以下の通りである。
米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量:65質量%、米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量:13質量%、米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量:13質量%
【0073】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR:宇部興産(株)製のBR130B(シス含有量:97質量%)
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレン E15(分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)したS−SBR、スチレン含量:23質量%、ビニル含量:63質量%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN351(NSA:69m/g、COAN:90ml/100g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
合成ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
ワックスA:三精産業社製のキャンデリラワックス
植物油A:カネダ(株)製のひまわり油(構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量:85質量%)
植物油B:日清オイリオグループ(株)製のひまわり油(構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量:50質量%)
米油A:築野食品(株)製(融点:−5℃、米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量:41質量%、米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量:17質量%、米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量:37質量%)
米油B:上記製造例1で調製した(特表2009−543561号公報の製法に基づいて製造された)米油(米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量:65質量%、米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量:13質量%、米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量:13質量%)
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
【0074】
実施例1〜6及び比較例1〜7
表1,2に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、第一ベース練り工程に記載の各成分を、温度140℃になるまで5分間混練し、145℃になったところで排出し、混練物を得た(第一ベース練り工程)。次いで、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、第一ベース練り工程により得られた混練物と、第二ベース練り工程に記載の各成分を、温度150℃になるまで約3分間混合し、排出し、混練物を得た(第二ベース練り工程)。次に、第二ベース練り工程により得られた混練物に、仕上げ練り工程に記載の加硫促進剤と硫黄を加え、オープンロールで約2分間混練して、未加硫ゴム組成物を得た(仕上げ練り工程)。次に、得られた未加硫ゴム組成物を150℃で15分間加硫することにより加硫ゴム組成物を得た(加硫工程)。
次に、得られた未加硫ゴム組成物をタイヤ成型機上でトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせて未加硫タイヤを作製した。未加硫タイヤを150℃で30分間加硫することにより試験用タイヤを製造した。
【0075】
得られた加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表1,2に示す。
【0076】
(低燃費性)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0077】
(ウェットグリップ性能)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度0℃、初期歪み10%、動歪み5%の条件下で各加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した(ウェットグリップ性能指数)。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
【0078】
(耐摩耗性)
各加硫ゴム組成物について、ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。さらに、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1のランボーン摩耗指数を100とし、各配合の容積損失量を指数表示した(ランボーン摩耗指数)。ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0079】
(耐候性試験)
製造した試験用タイヤをJIS K 6259「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に準じて、温度40℃、オゾン濃度50ppmの管理室内で、3万km走行させた後、サイドウォール表面の亀裂数と亀裂深さを目視で観察し、5段階で評価した。
5:亀裂数と亀裂深さがなく、優良である
4:亀裂数と亀裂深さがほとんどなく、良い
3:亀裂数と亀裂深さの度合いが小である
2:亀裂数と亀裂深さの度合いが中である
1:亀裂数と亀裂深さの度合いが大である
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
ゴム成分と、シリカとを混練する第一ベース練り工程と、前記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、オレイン酸の含有量が特定量以上の米油とを混練する第二ベース練り工程とを含む製造方法により得られたタイヤ用ゴム組成物である実施例では、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、耐候性をバランス良く向上できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、シリカとを混練する第一ベース練り工程と、
前記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、米油とを混練する第二ベース練り工程とを含む製造方法により得られ、
前記米油の構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量が48質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記第一ベース練り工程が、ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤とを混練する工程である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量が17質量%未満である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量が30質量%未満である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記第二ベース練り工程が、前記第一ベース練り工程により得られた混練物と、シリカと、前記米油と、構成脂肪酸100質量%中のオレイン酸の含有量が60質量%以上のひまわり油とを混練する工程である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記米油の構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸の含有量が14質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記米油の構成脂肪酸100質量%中のリノール酸の含有量が15質量%以下である請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−149132(P2012−149132A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7355(P2011−7355)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】