説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】 シリカ多量配合における分散性の問題を解消したタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】 ジエン系ゴム100重量部に対し、シリカを20〜90重量部およびポリカーボネートジオールを1〜5重量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、更に詳細には、シリカ多量配合における分散性の問題を解消したタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのキャップトレッドにシリカを配合することは、今や技術常識となっている。しかしながら、シリカを多量配合することにより、ゴム混合中での分散が問題となっている。この問題を解決する方法として、ジエチレングリコール等を分散剤として使用することはよく知られているが(例えば、ゴム工業便覧、第4版、517〜518頁、平成6年発行参照)、これは液体であるため、シリカ多量配合においては分散性が必ずしも十分でないという問題を抱えている。
【0003】
【非特許文献1】ゴム工業便覧、第4版、517〜518頁、平成6年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明では、シリカ多量配合に係るタイヤ用ゴム組成物におけるかかる分散性の問題を解消し得るような、ジエチレングリコールに代わる有効な特定の分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ジエン系ゴム100重量部に対し、シリカを20〜90重量部およびポリカーボネートジオールを1〜5重量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
シリカ多量配合のゴム組成物に対して、所定量のポリカーボネートジオールを分散剤として添加すると、ゴム中へのシリカの塊による分散不良が無く、得られるゴム組成物の粘度低下と破断伸びが改良される。一方、当該ゴム組成物のグリップ力および転がり抵抗に関係する粘弾性特性も、従来配合のものに比して遜色のないものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で分散剤として使用されるポリカーボネートジオールは、以下の一般式(1):
HO−[(CH2]6OCOO]−(CH2)6−OH (1)
で示される、常温で白色の固体である。よって、当該固体分散剤を多量のシリカと共にゴム中へ配合しても、シリカのまとまり等による分散不良の問題は生じない。本発明のタイヤ用ゴム組成物では、このポリカーボネートジオール固体分散剤は、ゴム100重量部に対し、1〜5重量部、好ましくは2〜5重量部の量で配合される。この配合量が1重量部未満では所期の効果が発揮されず、逆に5重量部を超えるとシリカとシランカップリング剤の反応を阻害するので、好ましくない。
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物に用いられるジエン系ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。当該ジエン系ゴムは、本発明のタイヤトレッドゴムとして使用する場合には、その低転動抵抗と耐摩耗性、低温性能を両立させて向上させるために、ガラス転移温度(Tg)が平均値で−55℃以下のものを使用することが好ましい。
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物に配合されるシリカとしては、特に制限はないが、例えば、乾燥法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、および特開昭62−62838号公報に開示される沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが特に好ましい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリカの比表面積は、特に制限はされないが、窒素吸着比表面積(BET法)で、通常50〜400m2/g、好ましくは100〜250m2/g、更に好ましくは120〜190m2/gの範囲であるときに、補強性、耐摩耗性および発熱性等の改善が十分に達成され、好適である。ここで、窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じBET法で測定される値である。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物における当該シリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、20〜90重量部、好ましくは40〜80重量部の量で用いられる。この配合量が20重量部未満では所期の効果が発揮できず、逆に90重量部を超えると耐摩耗性が悪化するので、好ましくない。
【0011】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、カーボンブラック、加硫または架橋剤、各種オイル、老化防止剤、充填材、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に配合使用されている各種配合剤を加えることができ、かかる配合物は、公知のゴム用混練機、例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練し、任意の条件で加硫してゴム組成物として使用することができる。これら配合剤の添加量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0012】
以下、実施例および比較例に従って本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0013】
試験サンプルの作製
以下の表1に示すゴム配合系における硫黄と加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、165±5℃に達した時に放出したマスターバッチに、硫黄と加硫促進剤を加えて8インチのオープンロールで混練してゴム組成物を得た。このゴム組成物の一部をムーニー粘度試験および加硫試験に供した。次いで、このゴム組成物の残部を15cm×15cm×0.2cmの金型中で、160℃、30分間プレス加硫して試験片(ゴムシート)を作製し、それぞれ引張試験および粘弾性試験に供した。
【0014】
試験法
1)ムーニー粘度: JIS 6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。
2)加硫速度: JIS 6300に準拠して、振動式ディスク加硫試験機にて、振幅1度、160℃で30%および95%の加硫度に達する時間(T30およびT95、分)を測定した。
3)引張特性: JIS 6251に準拠して、3号ダンベルにて2mmシートを打抜き、500mm/分の引張速度にて、300%モジュラス(M300)、引張強さ(TB)および切断時伸び(EB)を測定した。
4)粘弾性特性(tanδ、E′:0℃、60℃): (株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδおよびE′:0℃、60℃を測定した。
【0015】
実施例1〜3および比較例1〜3
結果を表1に示す。
【表1】

【0016】
表1によれば、本発明のタイヤ用ゴム組成物では、ポリカーボネートジオール固体分散剤の使用によって、粘度低下と破断伸びが改良され、粘弾性特性も低下してないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対し、シリカを20〜90重量部およびポリカーボネートジオールを1〜5重量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物。

【公開番号】特開2006−143840(P2006−143840A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334379(P2004−334379)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】