説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】 イソプレン単位を含むゴムポリマーにシリカを配合したゴム組成物の加工性(スコーチ)を改良する。
【解決手段】 (A)1,3−ブタジエン単位30〜94.9重量%、イソプレン単位0.1〜10重量%及び芳香族ビニル単量体単位5〜60重量%からなる共役ジエン系ゴム、(B)数平均分子量が200〜15,000のポリサルファイド重合体とハロゲン化メチルベンゼンとの反応生成物を前記共役ジエン系ゴムに対して0.1〜20重量%並びに(C)シリカを、ゴム成分100重量部に対し、5〜100重量部含んでなるタイヤ用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用ゴム組成物に関し、更に詳しくは加工性及び耐熱老化性に優れたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車用タイヤ組成物において、タイヤのウェット性能と転動抵抗とを両立させるために、ゴム組成物にシリカを配合することが知られている。しかしながら、シリカはゴムポリマーとの反応性が乏しく、従来は、カップリング剤で反応させてシリカとゴムポリマーとを結合させることが行われており、この結合を更に促進させるために、ゴムポリマーの末端変性が行われてきた。近年、ゴムポリマーとシリカとの反応を更に促進させるために、ゴムポリマー中にイソプレン単位を組み入れた構造のゴムポリマーが有効であることが見出され(特許文献1参照)、しかし、このイソプレンを有する構造のゴムポリマーのみではシリカとの反応が不十分で、特に経時での、例えば熱老化後などの物性変化が大きいという問題があり、ゴム組成物に特定のポリサルファイド重合体を配合することが提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−101847号公報
【特許文献2】特開2000−309665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の如く、ゴム組成物にポリサルファイド重合体を配合することによってゴム物性の経時変化を抑制することが提案されていたが、ポリサルファイド重合体を配合すると、配合物のスコーチ時間が短く、ゴム組成物の加工性が悪化するという問題があることを認めた。
従って、本発明の目的はポリサルファイド重合体を配合したイソプレン単位を有する構造のゴムポリマーを配合したゴム組成物のスコーチ時間が短いという問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、(A)1,3−ブタジエン単位30〜94.9重量%、イソプレン単位0.1〜10重量%及び芳香族ビニル単量体単位5〜60重量%からなる共役ジエン系ゴム、(B)数平均分子量が200〜15,000のポリサルファイド重合体とハロゲン化メチルベンゼンとの反応生成物を前記共役ジエン系ゴムに対して0.1〜20重量%並びに(C)シリカを、ゴム成分100重量部に対し、5〜100重量部含んでなるタイヤ用ゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、イソプレン単位を含むブタジエン/芳香族ビニル単量体にポリサルファイド重合体を配合するにあたり、ポリサルファイド重合体の活性基(SH)を予じめハロゲン化メチルベンゼンと反応させることによって、ウェット性能及び転動抵抗性の改善とともに、加工性や耐熱老化性が改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らはイソプレン単位を特定の構造のゴムポリマーに導入したゴム組成物に、更に予じめハロゲン化メチルベンゼン、特にクロロ又はブロモメチルベンゼンで処理したポリサルファイド重合体を配合することにより、加工性に優れ、耐熱老化性に優れたタイヤ用ゴム組成物が得られることを見出した。
【0008】
本発明に係るゴム組成物に成分(A)として配合される共役ジエン系ゴムは、1,3−ブタジエン単位30〜94.9重量%(好ましくは55〜90重量%)、イソプレン単位0.1〜10重量%(好ましくは0.15〜7重量%)及び少なくとも一種の芳香族ビニル単量体単位5〜60重量%(好ましくは10〜45重量%)を含む共重合体で、これらのうちイソプレン単位の量が少な過ぎるとシリカの補強性が低いので好ましくなく、逆に多過ぎるとゴムが硬くなりすぎるので好ましくない。かかる共役ジエン系ゴムは、常法に従って、所定のモノマーと触媒とを溶液重合法によって製造することができる。
【0009】
本発明に係るゴム組成物には、成分(B)として、数平均分子量が200〜15,000(好ましくは500〜10,000)のポリスルフィド重合体と、クロロ又はブロモメチルベンゼンなどのハロゲン化アルキルベンゼンとの反応生成物を前記共役ジエン系ゴムに対して0.1〜20重量%(好ましくは2〜15重量%)を配合する。
【0010】
ポリサルファイドをゴム組成物に配合することは知られていたが、スコーチ対策で以下に示すように、ポリサルファイドをハロゲン化アルキルベンゼンと反応させた反応生成物(変性ポリサルファイド)を用いることは知られていない。この反応は、例えばポリスルフィド重合体とハロゲン化アルキルベンゼンとを直接室温又は加熱下に反応させることで実施することができる。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明に係るゴム組成物には、成分(C)としてシリカを、ゴム成分100重量部に対し、5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部配合する。シリカとしてはゴム組成物に配合することができる任意のシリカ、例えば湿式シリカ、乾式シリカ、その他を用いることができ、窒素比吸着面積(N2SA)が100〜300m2/gのシリカを使用するのが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、共役ジエン系ゴム(A)60〜95重量部及び他のジエン系ゴム(D)5〜40重量部からなるゴム成分100重量部並びにカーボンブラック0〜100重量部を含む請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物が提供される。ここで用いる他のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種変性ブチルゴムやEPDMなどをあげることができる。
【0014】
本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、その他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0016】
実施例1〜5及び比較例1〜3
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を3リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、165±5℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄の加硫系をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0017】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
【0018】
ゴム物性評価試験法
1)スコーチタイム(分):JIS K6300に準拠して測定した。
2)20℃硬度(老化前):JIS 6253に準拠して測定した。
3)20℃硬度(老化後):加硫ゴムを70℃で168時間老化処理した後、上記測定法に従って、硬度(20℃)を測定した。
4)tanδ(0℃及び60℃):粘弾性スペクトロメータ(東洋精機製作所)を用い0℃及び60℃でそれぞれ初期歪10%、動的歪:±2%、周波数20Hzの条件下で測定した。
【0019】
【表1】

【0020】
表I脚注
*1:日本ゼオン(株)製SBR(スチレン20重量%、ビニル60%、イソプレン0.9重量%、重量平均分子量49万、ML1+4=55、油展37.5phr)
*2:日本ゼオン(株)製SBR1712(スチレン23.5重量%、ML1+4=49、油展37.5phr)
*3:日本ゼオン(株)製BR(BR1220)
*4:天然ゴムTSR
*5:RHODIA社製シリカ(N2SA:165m2/g)
*6:DEGUSSA社製カップリング剤Si69
*7:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
*8:昭和キャボット(株)製N234(N2SA:119m2/g)
*9:昭和キャボット(株)製N339(N2SA:72m3/g)
*10:日本油脂(株)製工業用ステアリン酸
*11:フレキシス社製老化防止剤SANTOFLEX 6PPD
*12:フレキシス社製老化防止剤FLECTOL TMQ
*13:日本精蝋(株)製パラフィンワックス
*14:東レチオコール(株)製ポリサルファイド(チオコールLP−3)
*15:ポリサルファイド(チオコールLP−3)にクロロメチルベンゼンをSH比2倍モル量添加し、室温で24時間攪拌し、更に60℃で3時間反応させた重合体。
*16:昭和シェル石油(株)製アロマオイル
*17:鶴見化学工業(株)製5%油入り微粉硫黄
*18:フレキシス社製加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェナミド)
*19:フレキシス社製加硫促進剤(ジフェニレングアニジン)
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に従ったゴム組成物は、イソプレン単位を含むブタジエン/芳香族ビニルゴムに予じめハロゲン化メチルベンゼンで処理したポリサルファイドを配合することによって、加工性及び耐熱老化性に優れるので、タイヤ用ゴム組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,3−ブタジエン単位30〜94.9重量%、イソプレン単位0.1〜10重量%及び芳香族ビニル単量体単位5〜60重量%からなる共役ジエン系ゴム、(B)数平均分子量が200〜15,000のポリサルファイド重合体とハロゲン化メチルベンゼンとの反応生成物を前記共役ジエン系ゴムに対して0.1〜20重量%並びに(C)シリカを、ゴム成分100重量部に対し、5〜100重量部含んでなるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
共役ジエン系ゴム(A)60〜95重量部及び他のジエン系ゴム(D)5〜40重量部からなるゴム成分100重量部並びにカーボンブラック0〜100重量部を含む請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。

【公開番号】特開2006−176707(P2006−176707A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373191(P2004−373191)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】