説明

タイヤ用移載装置及びタイヤ試験機

【課題】タイヤ用の移載装置において、タイヤの迅速な移動ができてロスタイムの発生を抑制乃至解消でき、またタイヤの停止位置精度を高めることができ、更にはタイヤ側面への発傷防止、構造簡潔で破損も防止できる等、従来の各種問題を解決できるようにする。
【解決手段】タイヤ中心軸が縦向きになるように横倒姿勢にされたタイヤに対しその外周面の複数箇所を押圧部材35で押圧してタイヤを把持する把持手段31と、この把持手段31を横送りさせるスライド手段32とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用移載装置及びタイヤ試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤのユニフォミテイを試験し測定するタイヤ試験機において、タイヤ中心軸が縦向きになるようにタイヤを横倒姿勢に保持して実施するタイプのものでは、試験位置(タイヤ保持位置)に対して試験の対象となるタイヤを搬入したり試験位置から試験済みタイヤを搬出したりするのに、ローラコロコンベア等の搬送装置が接続されている(例えば、特許文献1等参照)。
搬出用の搬送装置に対しては、試験結果をタイヤの側面へマーキングするためのマーキング装置が併設されているのが一般的である。このマーキング装置は、停止させたタイヤ側面に対してその上方からマーキングヘッドを下降させて、加熱押印等の表示を行わせる構造である。
【0003】
従ってこの搬出用の搬送装置は、タイヤの搬送とマーキング位置でのタイヤの停止とを頻繁に繰り返すように動作する。なお、タイヤの停止位置精度を高めるために、タイヤの搬送タイミングに合わせて搬送面下方から上方へ向けストッパを突出させて、このストッパでタイヤを当て止めさせる構造が採用されることもあった。
一方、搬入用の搬送装置に対しては、タイヤのビード部へ離ケイ剤を塗布させるためのビードルブリケータ(特許文献2等参照)が併設されることがあった。このビードルブリケータは、停止させたタイヤの中央開口内で離ケイ剤塗布ローラを上昇させ、この離ケイ剤塗布ローラをタイヤビード部へ押しつけた状態にしたままタイヤを回転させる構造である。
【0004】
従ってこの搬入用の搬送装置も、タイヤの搬送と離ケイ剤塗布位置でのタイヤの停止とを頻繁に繰り返すように動作する。同様に、タイヤの停止位置精度を高めるために、タイヤの搬送タイミングに合わせて搬送面下方から上方へ向けストッパを突出させて、このストッパでタイヤを当て止めさせる構造が採用されることもあった。
【特許文献1】特公平5−31096号公報
【特許文献2】特開平8−257460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬入用の搬送装置や搬出用の搬送装置としてローラコロコンベアが用いられていた場合、停止しているタイヤを搬送開始させたり、搬送中のタイヤを停止させたりするときに、加減速のために大きなロスタイムが生じるという不都合があった。また、この加減速時にはタイヤ側面とローラとの間でスリップが生じやすく、このことが益々ロスタイムに繋がるといったこともあった。
これらのロスタイムは、タイヤ試験機の稼働効率(タイムサイクル)、ひいてはタイヤ製造能率全体にまで悪影響を及ぼすおそれがあった。また上記スリップは、タイヤ側面に傷をつけたり、停止位置精度を悪化させるなどの不都合も伴うものであった。
【0006】
なお、停止位置精度の悪化を改善するために、搬送装置に対し、その搬送面下方から上方へ突出するストッパを設けた場合であれば、搬送方向に沿ってタイヤが停止位置を通り過ぎるような欠点は防止できるものの、このストッパだけでは搬送方向の直交方向、即ち、幅方向での位置ズレには対処できないということがあった。
そのうえ、上記のストッパは、タイヤが持つ搬送の慣性をタイヤとの衝突でくい止める構造になっているために、破損や故障などが起こりやすいという問題もあった。言うまでもなく、この問題はタイヤのタイヤサイズが大きくなればなるほど深刻なものとなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、タイヤの迅速な移動ができてロスタイムの発生を抑制乃至解消でき、もって稼働効率の向上が図れ、またタイヤの停止位置精度を高めることができ、更にはタイヤ側面への発傷防止ができ、構造簡潔となり、破損も防止できる等、従来の各種問題を解決できるようにしたタイヤ用移載装置と、このタイヤ用移載装置を具備して成るタイヤ試験機とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るタイヤ用移載装置は、タイヤ中心軸が縦向きになるように横倒姿勢にされたタイヤに対し、その外周面の複数箇所を押圧部材で押圧してタイヤを把持する把持手段と、この把持手段を横送りさせるスライド手段とを有している。
このように、本発明では把持手段によってタイヤをその外周面で把持させる構造を採用し、そのうえでこの把持手段をスライド手段によって横送りさせる構成であるので、移動時のスリップを無くすことができ、迅速な移動が可能であり、また停止時の高精度位置決めが可能となる。
【0009】
把持手段の押圧部材は、タイヤの外周面を取り囲む少なくとも3カ所の等配位置に設けるのが好適である。そして、これらの押圧部材は、同時に同速度でタイヤ径方向へ移動可能なものとするのが好適である。
このようにすることで、タイヤを把持した状態として、タイヤ中心軸をいつも同位置へ位置付けることができる。即ち、タイヤを所定位置(移動前及び移動後を含む)において、その搬送方向で高精度位置決めできるだけでなく、幅方向でのセンタリングもできることになる。
【0010】
把持手段の押圧部材は、タイヤ中心軸と平行する回転軸まわりで回転自在なローラにより形成することができる。この場合、このローラを所定回転角だけ回転駆動可能とするタイヤ回転手段を具備させることができる。
このように押圧部材をローラとすれば、タイヤを把持させたままの状態でタイヤを回転させることができる。特に、タイヤ回転手段を具備させると、このローラを介してタイヤへ回転駆動を伝え、タイヤを回転させることができるので、ビードルブリケータやマーキング装置でタイヤの回転が必要とされる場合に、わざわざ特別な回転駆動機構等を設けなくて済むことになる。それだけ、タイヤ試験機としての構造簡潔化及びコンパクト化が図れる。
【0011】
把持手段において、押圧部材をタイヤ外周面へ向けて押圧駆動する伝動部分の適所に対し、押圧部材がタイヤ外周面を押圧したときの反力を受けて軸圧縮動作するダンパー部を設けておき、このダンパー部に、軸圧縮動作時の反発抵抗値から判断してタイヤ外径を求める外径検出手段を設けるようにするとよい。
このようなダンパー部及び外径検出手段を設けると、タイヤサイズの自動計測が可能になると共に、タイヤサイズの変更に応じて常に適度な押圧力(把持圧)を付与できるようになる。また、複数の押圧部材相互間において、それぞれがタイヤ外周面を押圧する押圧力を均一化できるので、タイヤのセンタリングがそれだけ高精度に行える利点がある。
把持手段は、タイヤ外周面に未当接の待機位置にある押圧部材をタイヤ外周面へ近接させる動作ストロークの初段駆動部と、タイヤ外周面に近接した押圧部材をタイヤ外周面へ押圧させる動作ストロークの二次駆動部とを有したものとするのが好適である。
【0012】
このようにすると、タイヤサイズが同じタイヤを連続して処理するような場合にあって、いちいち押圧部材を待機位置まで待避させる必要がなくなり、二次駆動部により押圧動作と押圧解除動作とを繰り返させるだけでよくなる。そのため、サイクルタイムの飛躍的な短縮化が図れる利点がある。
しかも、把持状態としたうえで二次駆動部による押圧動作だけを解除させた場合、押圧部材とタイヤ外周面との間にクリアランスを生じさせつつも、タイヤがその場から大きく位置ズレしないように、位置的な拘束ができるため、タイヤをその場回転させるのに好都合な状態が得られる。
【0013】
なお、初段駆動部と二次駆動部との両方を動作させる場合、これらを各別のタイミングで動作させてもよいが、同時に動作させてもよい。
把持手段を昇降可能とさせることで、その上昇時にこの把持手段が把持したタイヤを宙に浮かせることのできる昇降手段を設けることもできる。
このような昇降手段を設けることで、タイヤの移動中、下向きとなるタイヤ側面が他物と接触する(擦れる)ことがないので、発傷を防止できることになる。勿論、タイヤに対して移動中の接触抵抗が生じないため、その移動が円滑且つ軽快に行われるものとなる。
【0014】
この昇降手段は、スライド手段を基礎としてその上で把持手段を昇降させるように設けるものでもよいし、スライド手段本体を昇降させるように設けるものでもよい。
なお、場合によってはこれらスライド手段や把持手段は昇降させず、把持手段で把持される前のタイヤを支持する部分(例えばタイヤ用のコンベア等)の方を、支持レベルの下方域で昇降させるようにしてもよい。
スライド手段は、固定側の基礎フレームとこの基礎フレームにガイドレールを介してスライド自在に保持された状態で前記把持手段を搭載したスライドフレームと、基礎フレームに対してスライドフレームを移動させる走行駆動機構とを有したものとすることができる。
【0015】
ここにおいて上記走行駆動機構は、基礎フレームに設けられた固定側ラックレールと、この固定側ラックレールに対向し且つ平行する状態でスライドフレームに設けられた移動側ラックレールと、これら固定側ラックレール及び移動側ラックレールの間に挟まれた状態で両ラックに噛合するピニオンギヤと、このピニオンギヤを回転自在に保持しつつ固定ラックレールに沿って転動させるギヤ移動装置とを有したものを採用することができる。
このような固定側ラックレールと移動側ラックレールとの間に挟んだピニオンギヤをギヤ移動装置で移動させる構造では、ピニオンギヤの移動量に対して移動側ラックレールの移動量や移動速度を倍化できることから、装置の小型化及び移動側ラックレールの移動時間短縮化が図れる利点がある。
【0016】
なお、このようなタイプの走行駆動機構とは異なり、スライドフレームにリニア駆動装置で直接に移動駆動力を伝える構造の走行駆動機構を採用することもできる。この場合は、部品点数の少数化が図れる利点がある。
スライド手段の基礎フレームには、タイヤを横倒姿勢のまま支持して搬送可能とする駆動コンベアを設けておけばよい。
一方、本発明に係るタイヤ試験機は、タイヤのユニフォミテイを試験し測定するタイヤ試験位置と、このタイヤ試験位置へ搬入するタイヤを前もって保持しておく試験前位置との二位置を有し、試験前位置からタイヤ試験位置へと試験前タイヤを宙に浮かせた状態のまま送り渡し可能にすべく、上記した本発明のタイヤ用移載装置を設けたものとして構成される。
【0017】
試験前位置からタイヤ試験位置までの間、又は試験前位置に対して、タイヤのビード部に離ケイ剤を塗布するビードルブリケータを設けておけばよい。
また本発明に係るタイヤ試験機は、タイヤのユニフォミテイを試験し測定するタイヤ試験位置と、このタイヤ試験位置から搬出したタイヤを保持する試験後位置との二位置を有し、タイヤ試験位置から試験後位置へと試験済みタイヤを宙に浮かせた状態のまま送り渡し可能にすべく、上記した本発明のタイヤ用移載装置を設けたものとして構成することもできる。
【0018】
タイヤ試験位置から試験後位置までの間、又は試験後位置に対して、タイヤの側面適所に試験結果をマーキングするマーキング装置を設けておけばよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るタイヤ用移載装置及びタイヤ試験機では、タイヤの迅速な移動ができてロスタイムの発生を抑制乃至解消できる。そのため、稼働効率の飛躍的な向上が図れる。またタイヤの停止位置精度を高めることができる。更にはタイヤ側面への発傷の防止、構造の簡潔化、構造破損の防止等、従来の各種問題を解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1及び図2は本発明に係るタイヤ試験機1の一実施形態を示している。これらの図から明らかなように、このタイヤ試験機1はその略中央部に設けられたタイヤ試験位置3を核として構成されたものである。
このタイヤ試験位置3の入側(図1右方)には搬入ステーション4が設けられており、この搬入ステーション4の上流側に、試験対象となるタイヤ(以下「試験前タイヤ」と言う)T1を上流工程から搬入するためのタイヤ搬入装置5が接続されている。また試験位置3の出側(図1左方)には搬出ステーション6が設けられており、この搬出ステーション6の下流側に、試験の終わったタイヤ(以下「試験済みタイヤ」と言う)T3を下流工程へ搬出するためのタイヤ搬出装置7が接続されている。
【0021】
これらタイヤ搬入装置5から搬入ステーション4、搬出ステーション6及びタイヤ搬出装置7にわたるタイヤ搬送レベルは同一レベルとされており、いずれでもタイヤはそのタイヤ中心軸が縦向きになるように横倒姿勢にされている。
タイヤ試験位置3には、下リムを有した下プランジャ10と、上リムを有した上プランジャ11とが上下対向して設けられており、これらのうち少なくとも一方が上下動してそれらの中間に保持されたタイヤ(以下「被験タイヤ」と言う)T2を上下リム間で挟み、この状態で被験タイヤT2を回転させつつそのユニフォミテイを試験し、測定するようになっている。
【0022】
図例のタイヤ試験位置3では、タイヤ搬送レベルに対し、その下方側に下プランジャ10が上下不動の状態で設けられ、タイヤ搬送レベルの上方で待機する上プランジャ11がリフト装置12及び上リム昇降駆動具13を具備して、これらにより下プランジャ10上で被験タイヤT2を挟持可能なレベルまで下降したり元の待機位置まで上昇したりできるようになっている。
また、このタイヤ試験位置3にはセンターリフト14が設けられており、これによりタイヤ搬送レベルで被験タイヤT2を一旦保持して、その後、下プランジャ10との間で被験タイヤT2を昇降できるようになっている。
【0023】
搬入ステーション4において、その上面はローラコロコンベアなどのコンベアとして形成されている。そのため、この搬入ステーション4の上流端側へタイヤ搬入装置5から試験前タイヤT1が乗り移ったとき、この試験前タイヤT1を、タイヤ試験位置3の近傍として位置付けられた試験前位置15まで横送りできるようになっている。
この試験前位置15には、試験前タイヤT1のビード部に離ケイ剤を塗布するためのビードルブリケータ16が設けられている。このビードルブリケータ16は、試験前位置15で試験前タイヤT1が停止された後、図2に示すように試験前タイヤT1の中央開口内へ向けて離ケイ剤塗布ローラ17を上昇させると共に、この離ケイ剤塗布ローラ17をタイヤビード部へ押しつける。そのうえで試験前タイヤT1が回転されるようになっている。
【0024】
また搬出ステーション6において、その上面はローラコロコンベアなどのコンベアとして形成されている。そのため、タイヤ試験位置3の近傍として位置付けられた試験後位置18へタイヤ試験位置3から試験済みタイヤT3が載せられたとき、この試験済みタイヤT3を、この搬出ステーション6の下流端側(タイヤ搬出装置7へ乗り移らせる位置)まで横送りできるようになっている。
この試験後位置18には、試験済みタイヤT3の側面適所に試験結果をマーキングするためのマーキング装置19が設けられている。このマーキング装置19は、試験後位置18で試験済みタイヤT3が停止された後、図2に示すように試験済みタイヤT3のタイヤ側面へ向けてその上方からマーキングヘッド20を下降させ、所定の情報を表示(加熱押印や刻印、塗料塗布、シール付着等)させるようになっている。
【0025】
このようなタイヤ試験機1において、搬入ステーション4上に設けられた試験前位置15からタイヤ試験位置3へ試験前タイヤT1を送り渡すために、本発明に係るタイヤ用移載装置30が設けられている。
また、タイヤ試験位置3から搬出ステーション6上に設けられた試験後位置18へ試験済みタイヤT3を送り渡すために、本発明に係るタイヤ用移載装置30が設けられている。
これら搬入ステーション4に対して設けられたタイヤ用移載装置30と、搬出ステーション6に対して設けられたタイヤ用移載装置30とは、互いにそれらの前後方向が逆向きに設けられている点を除いては、同じ構成を有したものである。
【0026】
そこで以下では、搬入ステーション4上に設けられたタイヤ用移載装置30についてその詳細を説明する。また、タイヤについては単に「タイヤT」として説明するが、これを必要に応じて「試験前タイヤT1」又は「試験済みタイヤT3」と読み替えることも可能とする。
図3及び図4はタイヤ用移載装置30の全体図であり、また図5乃至図10はこのタイヤ用移載装置30の各部を抽出して判りやすく示したものである。
このタイヤ移載装置30は、タイヤTを把持する把持手段31と、この把持手段31を横送りさせるスライド手段32とを有している。またこのタイヤ移載装置30は、把持手段31を昇降させるための昇降手段33を有している。
【0027】
図例のものでは、スライド手段32が最も下部に設けられ、これがタイヤ移載装置30としてのベースになっている。そして、このスライド手段32においてスライドする部分(後述するスライドフレーム71)の上に昇降手段33が設けられ、この昇降手段33の中で昇降する部材(後述する昇降フレーム105)を介して把持手段31の主要部(タイヤTを把持する部分であって後述の押圧部材35など)が保持された構造になっている。
まず、把持手段31について説明する。
図5乃至図7は把持手段31を示している。この把持手段31はタイヤTの外周面を押圧部材35で押圧して把持させる構造とされている。押圧部材35は、タイヤTの外周面を取り囲む少なくとも3カ所の等配位置(図例では4カ所)に設けられており、これら押圧部材35により、タイヤ外周面の複数箇所を同時に押圧できるようになっている。
【0028】
各押圧部材35は、コ字状に形成されたローラブラケット36により、ローラ37が縦姿勢で保持された構造である。ローラ37は、タイヤ中心軸と平行させた縦方向の回転軸まわりで回転自在となっている。ローラ37の材質は特に限定されるものではなく、鉄などを用いればよい。なお、相手タイヤ外周面が弾性体(合成ゴム等)であるため、スリップ抑制用にローラ表面の粗度を得るうえでローレットを施したり、アンチスリップシートを貼り付けたりすればよい。
上記したように押圧部材35は4つある。これら4つの押圧部材35は、当初、タイヤTの搬送経路を挟んだ左右両脇位置へ2個ずつが振り分けられた状態で待機するようになされ、タイヤTを把持するときに、タイヤTの径方向に沿いつつ左右の各脇位置(待機位置)から中央(把持位置)へ向けて進出するように動作する(図7参照)。またタイヤTの把持を終了するときに元の脇位置へ戻るように動作する。
【0029】
押圧部材35を上記のように動作させる機構は、揺動機構40とリンク機構41とこれらを繋ぐラック・アンド・ピニオン機構42、そしてリンク機構41を駆動する原動部43とを有して構成されている。
図5及び図7から明らかなように、揺動機構40は、左方の脇位置で前後に並ぶ二つの押圧部材35を一組として採用されると共に、右方の脇位置で前後に並ぶ二つの押圧部材35を一組として採用されている。即ち、揺動機構40は左右二組ある。
各組の揺動機構50において、前後に並ぶ押圧部材35からは、互いに対向する方向へ支持アーム45が延設されており、これら揺動アーム45の各先端部には、回転胴46が連結されている。
【0030】
これら回転胴46は支持ボックス47の下面で互いに近接して隣り合い、それぞれタイヤ中心軸と平行する回転軸まわりで回転自在に保持されている。また各回転胴46の上部には平ギヤ48が設けられ、これら平ギヤ48同士が噛合して一対の連動ギヤ対49を形成している。
この連動ギヤ対49が2枚の平ギヤ48で形成されていることから、各回転胴46の回転は同期し、且つ相対逆回転をする関係に保持される。従って、前後の支持アーム45も相対逆方向へ揺動し、前後の押圧部材35が同時に脇位置から中央へ向けて進出したり、元の脇位置へ戻ったりする。
【0031】
図6から明らかなように、リンク機構41は、軸受けブロック50によって回転自在に保持された連結シャフト51に対し、その両端部に揺動リンク52を介して押し引きシャフト53が連結されたものである。連結シャフト51には、その中途部に径方向へ突出する入力アーム54が固定されている。
押し引きシャフト53の各先端部にはラックレール55が連結されている。このラックレール55は、上記揺動機構40の支持ボックス47に設けられたピニオンギヤ56と噛合されている。このピニオンギヤ56は、支持ボックス47内を貫通する連結軸57によって連動ギヤ対49の一方の平ギヤ48と一体回転するようになっている。すなわち、このラックレール55とピニオンギヤ56との噛合により、揺動機構40とリンク機構41とを連動させるラック・アンド・ピニオン機構42が形成されている。
【0032】
原動部43は、リンク機構41の入力アーム54に対して回動自在に連結された駆動フォーク60を有しており、この駆動フォーク60によって入力アーム54に押し引き動作を伝達し、連結シャフト51を回動させる(リンク機構41を動作させる)ようになっている。
この原動部43は、初段駆動部62と二次駆動部64とを有している。初段駆動部62には例えばモータ61を駆動源とする電動ジャッキが採用されている。また二次駆動部64には例えば空気圧又は油圧などの流体圧シリンダが採用されている。
【0033】
この原動部43では、初段駆動部62及び二次駆動部64を同時に作動させることで、駆動フォーク60に所定ストロークの押し引きをさせるようになっている。このうち、初段駆動部62は、各押圧部材35を上記の脇位置(タイヤ外周面に未当接の待機位置)からタイヤ外周面へ近接させるに必要な押し引きストロークを有し、二次駆動部64は、このタイヤ外周面の近接位置からタイヤ外周面を押圧状態とさせるに必要な押し引きストロークを有したものとなっている。
すなわち、この原動部43において、初段駆動部62及び二次駆動部64を同時に作動させて駆動フォーク60を押し出すことで、上記したリンク機構41、ラック・アンド・ピニオン機構42、そして左右の揺動機構40を作動させ、全ての押圧部材35でタイヤTの外周面を一斉に押圧させ、把持状態にさせることができる。
【0034】
また、このタイヤTの把持後に二次駆動部64だけを引き動作させると、全ての押圧部材35がタイヤ外周面に対する押圧解除の状態となり、押圧部材35とタイヤTとの間にはクリアランスが生じるものとなる。このクリアランスが生じた状態になれば、タイヤTをその場で回転させることができる。なお、クリアランス自体、小さなものであるので、タイヤTがその回転中に大きく位置ズレしてしまうといったことはない。
そして、この状態から再び二次駆動部64だけを押し動作させると、全ての押圧部材35により再度、タイヤ外周面を押圧させてタイヤTの把持状態に戻せるものとなる。この場合の把持動作は、押圧部材35をいちいち、脇位置(待機位置)まで往復させる時間が省かれるので、迅速に行える。
【0035】
二次駆動部64は、上記のように流体圧シリンダを採用しているので、これをダンパー部63として作用させることができる。すなわち、原動部43において、初段駆動部62及び二次駆動部64を同時に作動させ、押圧部材35をタイヤTへ向けて進出させてゆく中で、全押圧部材35がタイヤ外周面を押圧することに伴い所定の反力が生じたときに、駆動フォーク60の延長軸線上で軸圧縮動作が生じることになる。
そこで、この軸圧縮動作が生じた時点をもって、タイヤTを適度な押圧力(把持圧)で把持できたものと判断できる。このような作用はまた、タイヤサイズの違いだけでなく、タイヤTの構造面、材質面からくる剛性の違いなどにも自動的に対応できる利点がある。
【0036】
なお、二次駆動部64の流体圧シリンダが空気圧シリンダーであれば、内部空気の圧縮作用を利用して上記軸圧縮動作を得ることができるが、油圧シリンダ等を採用した場合では、そのアウトプット側に、所定押圧力で圧力媒体を漏れさせるための減圧弁等を設けておく必要がある。
このダンパー部63に対し、軸圧縮動作時の反発抵抗値から判断してタイヤ外径を求める外径検出手段(図示略)を設けておけば、タイヤサイズの自動計測も可能になる。外径検出手段としては、例えば反発力を検出する圧力センサや圧縮移動量を検出するポテンショメータ等を採用可能である。その他、各種のセンサ類を採用可能であることは言うまでもない。
【0037】
次にスライド手段32について説明する。
図8、図9及び図5に示すように、このスライド手段32は、固定側の基礎フレーム70と、この基礎フレーム70上に設けられたスライドフレーム71とを有している。また、基礎フレーム70に対してスライドフレーム71を移動させるための走行駆動機構72を有している。
上記した把持手段31は、基本的にこのスライドフレーム71に設けられたかたちとなっており、スライドフレーム71が基礎フレーム70上をスライドするときに一緒にスライド動作を行うようになっている。
【0038】
図8から明らかなように、基礎フレーム70は、搬入ステーション4や搬出ステーション6(図1参照)の上面部を形成するものである。従って、搬入ステーション4や搬出ステーション6に関して既に説明したように、この基礎フレーム70は、タイヤTを横倒姿勢のまま横送り可能にするローラコロコンベアなどのコンベアとして形成されている。
本実施形態の基礎フレーム70では、左右一対の幅決め条材73に対し、それらの間に、搬送方向の約半分領域では幅一杯にわたる長ローラ74を用いた広幅コンベア75が形成され、他方の約半分領域では、幅方向中央に切欠状のセンター空間76を挟むかたちでその左右両側に短ローラ77を用いた幅狭コンベア78,79が形成されている。
【0039】
短ローラ77で形成された左右の幅狭コンベア78,79は、いずれも駆動コンベアとされている。図例の駆動方式は、短ローラ77の下部にVベルト等による巻掛け駆動装置80,81が設けられており、これら巻掛け駆動装置80,81において上部張り側となるVベルト背面が短ローラ77の下部面へ押しつけられることによる摩擦伝動方式としてある。
左側の幅狭コンベア78に設けられた巻掛け駆動装置80と、右側の幅狭コンベア79に設けられた巻掛け駆動装置81とは、それぞれ各別に駆動制御ができるようになっている。
【0040】
また、左側の幅狭コンベア78に設けられた巻掛け駆動装置80は、当該左側幅狭コンベア78だけに駆動を伝達可能とされているが、右側の幅狭コンベア79に設けられた巻掛け駆動装置81は、当該右側幅狭コンベア79だけでなく、長ローラ76で形成された広幅コンベア75にも及ぶように設けられており、この広幅コンベア75にも右側幅狭コンベア79と一緒に駆動を伝達可能とされている。
上記幅決め条材73には、その長手方向の複数箇所(図例では4カ所)から幅方向外方へ張り出すレール基礎台82が設けられており、図9に示すように、このレール基礎台82には支柱83を介して水平方向へ延びるレール支持板84が設けられている。そして、このシール支持板84の内面側に、水平方向へ延びるガイドレール85が設けられている。図例ではガイドレール85が上下2本、互いに平行して設けられたものとしてある。
【0041】
図9から明らかなように、スライドフレーム71(図3〜図6等も併せて参照)は、基礎フレーム70における左右の幅決め条材73に対し、それらの各上部に設けられる左右一対の幅決め条材86を有している。これら左右の幅決め条材86は、長手方向一端部同士が、それらの上部をわたるように設けられた連結台87によって連結されている。
この連結台87の上部に、上記した把持手段31の原動部43が搭載されている。また左右の幅決め条材86の上部に、把持手段31の軸受けブロック50が設けられている。
図5から明らかなように、スライドフレーム71における左右の幅決め条材86には、その外向きの側面に対して長手方向の複数箇所(図例では2カ所)に、スライドガイド88が設けられている。
【0042】
これらスライドガイド88が、上記した基礎フレーム70のレール基礎台82を介して設けられたガイドレール85に対し、摺動自在に嵌め合わされるようになっている(図9参照)。なお、上記したようにガイドレール85は上下2本あるので、スライドガイド88も上下に2個並んで設けられている。
これにより、基礎フレーム70に対してスライドフレーム71がスライド自在に保持されているものである。
走行駆動機構72は、基礎フレーム70に設けられた固定側ラックレール90と、スライドフレーム71に設けられた移動側ラックレール91と、これら両ラックレール90,91間に挟まれたピニオンギヤ92と、このピニオンギヤ92を固定ラックレール90に沿って転動させるギヤ移動装置93とを有している。
【0043】
固定側ラックレール90は、基礎フレーム70の幅決め条材73に対し、その上面に下部レールホルダー95を介した状態で、且つラック面を上に向けて設けられている。
移動側ラックレール91は、スライドフレーム71の幅決め条材86に対し、その下面に上部レールホルダー96を介した状態で、且つラック面を下に向けて設けられている。そのためこの移動側ラックレール91は、上記した固定側ラックレール90に対向し且つ平行する位置関係にある。
なお、固定側ラックレール90を保持している下部レールホルダー95には、固定側ラックレール90と平行するように下ガイドレール97が設けられている。これに対し、移動側ラックレール91を保持している上部レールホルダー96には、移動側ラックレール91と平行するように上ガイドレール98が設けられている。そして、これら下ガイドレール97と上ガイドレール98との位置関係も、互いに対向し且つ平行したものとなっている。
【0044】
ピニオンギヤ92は、固定側ラックレール90と移動側ラックレール91との両方に噛合するようになっている。このピニオンギヤ92の中心部には、これと一体回転する回転軸99が串刺し状に設けられ、この回転軸99の両端部がギヤブラケット100によって回転自在に保持されるようになっている。
またこの回転軸99には、上下のガイドレール98,97間に挟まれる位置付けでフリーホイル101が設けられている。従って、このフリーホイル101がメインとなって荷重的負担や直進ガイド性などの作用を担うものとなり、ピニオンギヤ92には推進力伝達以外に、無用な力が作用しないようになっている。
【0045】
ギヤ移動装置93は、例えば流体圧シリンダ等によって形成されたもので、ピニオンギヤ92のギヤブラケット100を押し引きできるようになっている。
このような走行駆動機構72では、ピニオンギヤ92をギヤ移動装置93により固定側ラックレール90に沿わせるように移動させることで、この移動量にピニオンギヤ92の自転が加わるかたちとなり、結果、このピニオンギヤ92の移動量に比べて移動側ラックレール91の移動量や移動速度が倍化することになる。
次に昇降手段33について説明する。
【0046】
図5に示すように、この昇降手段33は、スライド手段32のスライドフレーム71に対し、把持手段31の支持ボックス47を昇降させる構造である。
スライドフレーム71における左右の幅決め条材86は中空の角パイプとして形成されており、それらの内部には、それぞれ昇降フレーム105が収納されている(図9参照)。幅決め条材86の中空部内高さに比べ、昇降フレーム105の高さは小さく形成され、もって各幅決め条材86内において昇降フレーム105は昇降自在となっている。そして、左右の昇降フレーム105の各先端部に対し、支持ボックス47が連結されている。
【0047】
なお、図示は省略したが、幅決め条材86の先端部(連結台87が設けられた方とは反対側)と支持ボックス47との間は、上下動自在な係合ガイド構造が採用され、昇降フレーム105や支持ボックス47の昇降にガタツキが生じないようになっている。
左右の昇降フレーム105には、その長手方向の複数箇所(図例では2カ所)に昇降リンク106が揺動自在に連結されている。これら昇降リンク106は、幅決め条材86の上面を貫通して上方へ突出されている。
左側の昇降フレーム105に連結された2本の昇降リンク106、及び右側の昇降フレーム105に連結された2本の昇降リンク106は、それぞれL型アーム107及び連結ロッド108によって平行リンク状に接続されており、それぞれ連動して上下動するようになっている。各L型アーム107は、幅決め条材86の上面や連結台87の起立面に設けられたリンクブラケット109により、揺動自在に保持されている。
【0048】
連結台87の起立面に設けられた左右のL型アーム107は、リンクブラケット109に対する保持が一本の連結シャフト111を介して行われ、且つ、この連結シャフト111と左右のL型アーム107とは一体揺動可能に連結されている。そしてこの連結シャフト111には、その中途部に径方向へ突出する入力アーム112が固定され、この入力アーム112に対して原動部113が連結されている。
この原動部113は、スライドフレーム71における連結台87の上部に、上記した把持手段31の原動部43と並んで搭載されている(図4参照)。この原動部110には例えば空気圧又は油圧などの流体圧シリンダが採用されている。
【0049】
このようなことから、原動部113を押し出し方向へ駆動させれば、全ての昇降リンク106が下降し、昇降フレーム105が下降するのに伴って把持手段31は下降することになり、反対に、原動部113を引き込み方向へ駆動させれば、把持手段31は上昇することになる。
把持手段31がタイヤTを把持している状態でこの把持手段31が上昇すれば、当然に、タイヤTは宙に浮かされる状態になる。
次に、上記タイヤ用移載装置30を具備したタイヤ試験機1全体(図1参照)の作動を、タイヤ移載装置30の作動(以下、図3及び図4をメインとして説明するが必要に応じて図5乃至図10の細部図も適宜参照のこと)と共に、以下に説明する。
【0050】
タイヤ搬入装置5から搬入ステーション4の上流端側へと試験前タイヤT1が搬入されると、この搬入ステーション4上に設けられたタイヤ用移載装置30の一連の作動が開始される。
まず、スライド手段32の基礎フレーム70において、左右の巻掛け駆動装置80,81が同一方向へ駆動することによって、広幅コンベア75側から左右の幅狭コンベア78,79へ向けて試験前タイヤT1が搬入される。
左右の巻掛け駆動装置80,81は試験前タイヤT1が左右の幅狭コンベア78,79上へ達した時点で停止する。試験前タイヤT1は、その中央開口部(ホイルへ嵌める部分)が左右の幅狭コンベア78,79の間のセンター空間76上へ位置付けられるようになる。この位置が試験前位置15に相当する。
【0051】
このとき、把持手段31は待機状態(押圧部材35が脇位置)にあり、昇降手段33は昇降フレーム105を下降状態にし、またスライド手段33はタイヤTの外周面に対し、その左右両側に把持手段31における左右の揺動機構40が位置付けられるようにスライドフレーム71を位置付けた状態にある。
ここでまず把持手段31が作動する。把持手段31の作動は、原動部43の初段駆動部62及び二次駆動部64を同時に押し出し駆動させて駆動フォーク60を押し出させ、リンク機構41、ラック・アンド・ピニオン機構42、そして左右の揺動機構40へと動力を伝達させ、もって全ての押圧部材35をタイヤTへ向けて接近させ、そしてタイヤ外周面を一斉に押圧した把持状態にするものである。
【0052】
これにより試験前タイヤT1は、試験前位置15での正確な位置決め(当然に幅方向のセンタリングを含む)がなされる。
この試験前位置15では、試験前タイヤT1のビード部に離ケイ剤を塗布するため、ビードルブリケータ16(図2参照)が、センター空間76を介して試験前タイヤT1の中央開口内へ離ケイ剤塗布ローラ17を上昇させ、この離ケイ剤塗布ローラ17をタイヤビード部へ押しつけるようになる。
ここでタイヤ用移載装置30は、把持手段31の原動部43(図6参照)において初段駆動部62の押し出し状態は維持させたまま、二次駆動部64だけを引き動作させる。
【0053】
すると、全ての押圧部材35がタイヤ外周面に対する押圧解除の状態となり、押圧部材35と試験前タイヤT1との間にはクリアランスが生じるものとなる。
そこでスライド手段30は、基礎フレーム70において左右の巻掛け駆動装置80,81を相対逆方向へ駆動させる。これにより左右の幅狭コンベア78,79が相対逆方向へ搬送動作を生じ、試験前タイヤT1は回転する。
なお、クリアランス自体、小さなものであるので、試験前タイヤT1が回転中に大きく位置ズレしてしまうようなことはない。このようにしてビード部に離ケイ剤が塗布されると、ビードルブリケータ16が離ケイ剤塗布ローラ17をセンター空間76の下方へと収納させる。
【0054】
次に把持手段31が原動部43の二次駆動部64を元の押し出し状態に戻し、全ての押圧部材35を試験前タイヤT1のタイヤ外周面に一斉に押圧させて把持状態にする。
次に昇降手段33が作動する。昇降手段33の作動は、原動部113を引き込み駆動させてL型アーム107及び連結ロッド108を平行リンク状に動作させ、全ての昇降リンク106を上昇させ、もって把持手段31の主要部(支持ボックス47をはじめとする押圧部材35など)を上昇させるものである。
この把持手段31の主要部の上昇に伴い、この把持手段31で把持状態とされているタイヤTは、左右の幅狭コンベア78,79の上で宙に浮かされることになる。
【0055】
次にスライド手段32が作動する。スライド手段32の作動は、走行駆動機構72のギヤ移動装置93を押し出し駆動させてピニオンギヤ92を固定側ラックレール90に沿わせつつ移動させ、ピニオンギヤ92が固定側ラックレール90との噛合により自転するのを利用して移動側ラックレール91を2倍量で移動させ、もってスライドフレーム71をスライドさせるものである。
スライドフレーム71のスライドにより、昇降手段33及び把持手段31も一緒にスライド動作する。そのため、上記のようにして宙に浮いて把持状態とされたタイヤTが左右の幅狭コンベア78,79の上方位置から広幅コンベア75とは反対方向へ向けて水平移動することになる。
【0056】
このようにして試験前タイヤT1は、タイヤ試験位置3で待機するセンターリフト14上へと移動される。ここで昇降手段33が上記とは逆の下降動作を行い、また把持手段31が把持を解除する動作を行って試験前タイヤT1はセンターリフト14へ移載される。
この時点で試験前タイヤT1は被験タイヤT2となり、搬入ステーション4上のタイヤ用移載装置30は一連の動作を終了したことになる。そこで、上記と略逆順で復帰動作をする。
タイヤ試験位置3では、センターリフト14の下降動作で被験タイヤT2が下プランジャ10へ載せられ、下降する上プランジャ11によって被験タイヤT2が挟持されると、回転され、ユニフォミテイの試験測定が行われる。またこの試験測定が終了すると、センターリフト14の上昇動作で被験タイヤT2は元位置へ上昇復帰され、試験済みタイヤT3となる。
【0057】
このようにタイヤ試験位置3において試験済みタイヤT3が位置付けられると、今度は搬出ステーション6上に設けられたタイヤ用移載装置30の一連の作動が開始される。
このタイヤ用移載装置30の動作は、搬入ステーション4上に設けられたタイヤ用移載装置30の動作と動作順及び動作方向が略逆になる。
すなわち、スライド手段32により把持手段31がタイヤ試験位置3へ試験済みタイヤT3を受け取りに向かい、昇降手段33の昇降動作を伴いながら把持手段31により試験済みタイヤT3が把持される。
【0058】
そして昇降手段33が上昇動作をし、スライド手段32が引き取り方向へのスライド動作をし、また昇降手段33が下降動作をして、試験済みタイヤT3を基礎フレーム70の左右の幅狭コンベア78,79上へ載せる。この位置が試験後位置18である。
この試験後位置18では、マーキング装置19がタイヤ側面へ向けてマーキングヘッド20を下降させ、タイヤ側面の所定位置へ所定内容の情報を表示(加熱押印や刻印、塗料塗布、シール付着等)させるが、このときマーキングベッド20をタイヤ側面の円周方向に沿って必要量旋回させ、そのうえでタイヤ側面へ向けて下降させるようにする。
【0059】
このようにしてマーキング装置19による表示動作が終了すると、把持手段31は原動部43の初段駆動部62にも引き動作を行わせ、全ての押圧部材35を待機位置へ待避させる。その後、スライド手段32の基礎フレーム70において、左右の巻掛け駆動装置80,81が同一方向へ駆動することによって、左右の幅狭コンベア78,79側から広幅コンベア75へ向けて試験後タイヤT3が搬出され、搬出ステーション6の下流端側からタイヤ搬出装置7へと送り出される。
図2は、このようなタイヤ試験機1としての全体的な動作を概説したものである。すなわち、搬入ステーション4上に設けられたタイヤ用移載装置30では、試験前タイヤT1を試験前位置15まで横送り(A)し、この試験前位置15でビードルブリケータ16によるビード部への離ケイ剤塗布を待ち(B)、その後、試験前タイヤT1を上昇(C)、スライド(D)させてタイヤ試験位置3にて下降(E)させ、タイヤ試験位置3へと送り渡す。
【0060】
タイヤ試験位置3でユニフォミテイの試験測定が行われ後、今度は搬出ステーション6上のタイヤ用移載装置30が作動を開始し、タイヤ試験位置3の試験済みタイヤT3を受け取って上昇(F)、スライド(G)させ、試験後位置18で下降(H)させ、この試験後位置18でマーキング装置19によるマーキングを待つ(I)。
このように、搬入ステーション4上に設けられたタイヤ用移載装置30では、試験前位置15とタイヤ試験位置3との二位置間で試験前タイヤT1を立体箱形動作によって受け渡しし、また搬出ステーション6上のタイヤ用移載装置30では、タイヤ試験位置3と試験後位置18との二位置間で試験後タイヤT3を立体箱形動作によって受け渡しするというものである。
【0061】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、図11に示すように、把持手段31の押圧部材35としてローラ37を採用する場合にあって、このローラ37を回転駆動させるための駆動具120を設け、これによってタイヤ回転手段121を構成させるようにしてもよい。
このようにすると、押圧部材35によりタイヤTを把持させたままの状態で、このタイヤ回転手段121を作動させてタイヤTを回転させることができることになる。そのためスライド手段31の基礎フレーム70において、タイヤTを回転させるためのものとしては、左右の幅狭コンベア78,79に各別制御可能な巻掛け駆動装置80,81を設ける必要がなくなり、構造の簡潔化が図れる。
【0062】
なお、ローラ37に対する駆動具120の伝動方式は、図例ではローラ37の回転軸124に設けた従動プーリ125と駆動具120に設けた駆動プーリ126との間でベルト127を掛け渡したベルト伝動方式を示しているが、これは特に限定されるものではない。
また、駆動具120にはステッピングモータを採用して回転角度の高精度制御をできるようにしたり、或いは流体圧モータを採用して大型タイヤの回転を可能にしたりすることもできる。
【0063】
このように構成したタイヤ回転手段121は、マーキング装置19によるタイヤ側面への所定情報表示(加熱押印や刻印、塗料塗布、シール付着等)時にも当然に有効に使用可能である。
スライド手段32の走行駆動機構72では、スライドフレームにリニア駆動装置で直接に移動駆動力を伝える構造とすることもできる。この場合は、部品点数の少数化が図れる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るタイヤ試験機の一実施形態を示した側面図である。
【図2】タイヤ試験機の動作を理解しやすいように示した模式図である。
【図3】図1のタイヤ試験機で採用した本発明に係るタイヤ用移載装置を示した側面図である。
【図4】図3に対応させた平面図である。
【図5】主に把持手段を理解しやすいように示した斜視図である。
【図6】主に把持手段の駆動機構を理解しやすいように示した斜視図である。
【図7】把持手段の動作状況を示した平面図である。
【図8】主にスライド手段の基礎フレームを理解しやすいように示した斜視図である。
【図9】図3のY−Y線矢視に相当させてスライド手段の走行駆動機構の一部を示した拡大断面図である。
【図10】主に昇降手段の駆動機構を理解しやすいように示した斜視図である。
【図11】把持手段の押圧部材に対してタイヤ回転手段を設ける場合の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 タイヤ試験機
3 タイヤ試験位置
30 タイヤ用移載装置
15 試験前位置
16 ビードルブリケータ
18 試験後位置
19 マーキング装置
31 把持手段
32 スライド手段
33 昇降手段
35 押圧部材
37 ローラ
62 二次駆動部
63 ダンパー部
70 基礎フレーム
71 スライドフレーム
72 走行駆動機構
85 ガイドレール
90 固定側ラックレール
91 移動側ラックレール
92 ピニオンギヤ
93 ギヤ移動装置
121 タイヤ回転手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ中心軸が縦向きになるように横倒姿勢にされたタイヤに対しその外周面の複数箇所を押圧部材(35)で押圧してタイヤを把持する把持手段(31)と、この把持手段(31)を横送りさせるスライド手段(32)とを有していることを特徴とするタイヤ用移載装置。
【請求項2】
前記把持手段(31)の押圧部材(35)は、タイヤの外周面を取り囲む少なくとも3カ所の等配位置に設けられており、これら押圧部材(35)が同時に同速度でタイヤ径方向へ移動可能とされていることを特徴とする請求項1記載のタイヤ用移載装置。
【請求項3】
前記把持手段(31)の押圧部材(35)は、タイヤ中心軸と平行する回転軸まわりで回転自在なローラ(37)により形成されていると共に、このローラ(37)を所定回転角だけ回転駆動可能とするタイヤ回転手段(121)が具備されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタイヤ用移載装置。
【請求項4】
前記把持手段(31)には、押圧部材(35)をタイヤ外周面へ向けて押圧駆動する伝動部分の適所に対し、押圧部材(35)がタイヤ外周面を押圧したときの反力を受けて軸圧縮動作するダンパー部(63)が設けられており、このダンパー部(63)には、軸圧縮動作時の反発抵抗値から判断してタイヤ外径を求める外径検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタイヤ用移載装置。
【請求項5】
前記把持手段(31)は、タイヤ外周面に未当接の待機位置にある押圧部材(35)をタイヤ外周面へ近接させる動作ストロークの初段駆動部(62)と、タイヤ外周面に近接した押圧部材(35)をタイヤ外周面へ押圧させる動作ストロークの二次駆動部(64)とを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のタイヤ用移載装置。
【請求項6】
前記把持手段(31)を昇降可能とさせることでその上昇時にこの把持手段(31)が把持したタイヤを宙に浮かせることのできる昇降手段(33)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のタイヤ用移載装置。
【請求項7】
前記スライド手段(32)は、固定側の基礎フレーム(70)と、この基礎フレーム(70)にガイドレール(85)を介してスライド自在に保持された状態で前記把持手段(31)を搭載したスライドフレーム(71)と、基礎フレーム(70)に対してスライドフレーム(71)を移動させる走行駆動機構(72)とを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のタイヤ用移載装置。
【請求項8】
前記走行駆動機構(72)は、基礎フレーム(70)に設けられた固定側ラックレール(90)と、この固定側ラックレール(90)に対向し且つ平行する状態でスライドフレーム(71)に設けられた移動側ラックレール(91)と、これら固定側ラックレール(90)及び移動側ラックレール(91)の間に挟まれた状態で両ラックに噛合するピニオンギヤ(92)と、このピニオンギヤ(92)を回転自在に保持しつつ固定側ラックレール(90)に沿って転動させるギヤ移動装置(93)とを有していることを特徴とする請求項7記載のタイヤ用移載装置。
【請求項9】
前記走行駆動機構(72)には、スライドフレーム(71)に直接に移動駆動力を伝えるリニア駆動装置が用いられていることを特徴とする請求項7記載のタイヤ用移載装置。
【請求項10】
前記スライド手段(32)の基礎フレーム(70)には、タイヤを横倒姿勢のまま支持して搬送可能とする駆動コンベアが設けられていることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のタイヤ用移載装置。
【請求項11】
タイヤのユニフォミテイを試験し測定するタイヤ試験位置(3)と、このタイヤ試験位置(3)へ搬入するタイヤを前もって保持しておく試験前位置(15)との二位置を有し、試験前位置(15)からタイヤ試験位置(3)へと試験前タイヤを宙に浮かせた状態のまま送り渡し可能にすべく請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のタイヤ用移載装置(30)が設けられていることを特徴とするタイヤ試験機。
【請求項12】
前記試験前位置(15)からタイヤ試験位置(3)までの間、又は試験前位置(3)に対して、タイヤのビード部に離ケイ剤を塗布するビードルブリケータ(16)が設けられていることを特徴とする請求項11記載のタイヤ試験機。
【請求項13】
タイヤのユニフォミテイを試験し測定するタイヤ試験位置(3)と、このタイヤ試験位置(3)から搬出したタイヤを保持する試験後位置(18)との二位置を有し、タイヤ試験位置(3)から試験後位置(18)へと試験済みタイヤを宙に浮かせた状態のまま送り渡し可能にすべく請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のタイヤ用移載装置(30)が設けられていることを特徴とするタイヤ試験機。
【請求項14】
前記タイヤ試験位置(3)から試験後位置(18)までの間、又は試験後位置(18)に対して、タイヤの側面適所に試験結果をマーキングするマーキング装置(19)が設けられていることを特徴とする請求項13記載のタイヤ試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−145502(P2006−145502A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339645(P2004−339645)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】