説明

タイヤ種別判別方法、並びにこれを用いた車両検査方法及び装置

【課題】カメラ台数を削減でき、カメラを移動させずに多様な車種に対応できるタイヤ種別判別方法、車両検査装置を提供する。
【解決手段】車両5に装着されたタイヤ6のトレッド部表面画像を撮影してタイヤ種別を特定する画像情報を抽出し、これを登録情報と照合してタイヤ種別を判別する方法において、車両5を後傾姿勢で吊り上げて搬送する後傾車両吊上げ搬送路7aにて、車両5のタイヤ6が接地面から斜め上方への移動を開始する位置以降にカメラ1aを固定配置してタイヤトレッド部表面の画像を撮影する。車両検査装置は、タイヤ種別判別手段1及び車両5の車種情報読取手段2を設ける。車種情報から上記車両に装着すべきタイヤ種別を検索し、これとタイヤ種別判別手段1で判別したタイヤ種別とを照合し、両タイヤ種別の合否を合否判定手段3で判定する。タイヤ6の移動軌跡を、カメラ1a前方から近づいて浮き上がり、後方へ移動する形態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されたタイヤの種別を判定するタイヤ種別判別方法、並びにこれを用いて車両に装着されたタイヤの合否を判定する車両検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に装着されたタイヤの種別を判定するタイヤ種別判別方法としては特許文献1に記載のものがあった。
これは、タイヤをドラムの円周面に接触させた状態で周方向に回転させ、回転しているタイヤのトレッド部表面のカラー画像を撮影する。そして、このカラー画像からカラートレッド識別線に関する画像情報を抽出し、この画像情報をカラートレッド識別線に関する登録情報と照合してタイヤ種別を判別するというものである。
【0003】
【特許文献1】特開平9−277806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では、車両のタイヤ数と同数のカメラ、例えば4輪車両であれば4台のカメラが必要になるという問題があった。また、インライン(搬送工程)での検査が不可能であり、更に、多様な車種(トレッドやホイールベース長等が異なる車種)に対応させるためにはカメラの位置移動用の可動部が必要になる等の問題もあった。
【0005】
本発明の課題は、カメラの台数を削減できると共に、インラインでの検査が可能で、かつ、カメラの位置移動用の可動部を用いることなく多様な車種に対応できるタイヤ種別判別方法、並びにこれを用いた車両検査方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、タイヤ種別判別方法、並びにこれを用いた車両検査方法及び装置を下記各態様の構成とすることによって解決される。
各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴及びそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
【0007】
以下の各項のうち、(1)項が請求項1に、(2)項が請求項2に、(4)項が請求項3に、(5)項が請求項4に、各々対応する。(3)項及び(6)項は請求項に係る発明ではない。
【0008】
(1) 車両に装着されたタイヤのトレッド部表面の画像を撮影してそのタイヤの種別を特定する画像情報を抽出し、この画像情報をタイヤの種別を特定する登録情報と照合して前記タイヤの種別を判別するタイヤ種別判別方法において、前記車両を後傾姿勢で吊り上げて搬送する後傾車両吊上げ搬送路にて、その車両のタイヤが接地面から浮き上がって斜め上方への移動を開始する位置以降の予め定めた位置に固定配置されたカメラにより、前記タイヤのトレッド部表面の画像を撮影することを特徴とするタイヤ種別判別方法。
後傾車両吊上げ搬送路を利用して車両のタイヤのトレッド部表面画像を撮影する構成としたのは、後傾車両吊上げ搬送路の下方に、車両の搬送を妨害せずに画像を撮影できる空間を確保できるからである。またこの空間は、カメラの大きさに比べて十分広く、したがってカメラの固定位置を自由に設定できる。特に、レンズを水平方向に向けた姿勢でのカメラ設置が容易で、カメラのレンズ表面への塵埃を避け得る。
(2) 前記後傾車両吊上げ搬送路を含む搬送路を搬送中の車両を検知する車両検知手段を備え、前記カメラは、前記車両検知手段による車両の検知時点、車両検知位置から搬送方向側のタイヤ中心までの距離、前記搬送路の搬送速度、ホイールベース長及びカメラとタイヤのトレッド部表面との対向距離から演算した時点で撮影動作することを特徴とする(1)項に記載のタイヤ種別判別方法。
「演算した時点」とは、基本的にはタイヤのトレッド部表面の最良の画像を撮影できる時点を指す。また「時点」とは、カメラとタイヤトレッド部表面との距離をも意味する。
(3) 前記カメラは、前記車両の左右タイヤの各トレッド部表面の画像撮影用に左右一対配置されることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載のタイヤ種別判別方法。
本項の発明によれば、4輪車両の場合に2台のカメラで4つのタイヤの種別を判別可能となる。
(4) (1)項又は(2)項に記載のタイヤ種別判別方法によって判別したタイヤ種別と、前記後傾車両吊上げ搬送路を含む搬送路を搬送中の車両から読み取った車種情報に基づいて得られた、その車両に装着すべきものとして定められたタイヤ種別とを照合し、両タイヤ種別の合否を判定することを特徴とする車両検査方法。
(5) (1)項又は(2)項に記載のタイヤ種別判別方法によってタイヤ種別を判別するタイヤ種別判別手段と、前記後傾車両吊上げ搬送路を含む搬送路を搬送中の車両からその車種情報を読み取る車種情報読取手段と、この車種情報読取手段で読み取った車種情報に基づき、前記車両に装着すべきものとして定められたタイヤ種別を記憶装置に格納された登録情報から検索して前記タイヤ種別判別手段で判別されたタイヤ種別と照合し、両タイヤ種別の合否を判定する合否判定手段とを具備することを特徴とする車両検査装置。
(6) タイヤのトレッド部表面を照明する照明装置が設けられたことを特徴とする(5)項に記載の車両検査装置。
本項の発明によれば、撮影時に外部の明るさに左右されることなく、鮮明なタイヤのトレッド部表面画像を撮影できる。
【発明の効果】
【0009】
(1)項に記載の発明によれば、従来技術におけるような、タイヤ種別の判別に際して車両をラインからドラム上へ移動させたり、トレッドやホイールベースが車種により異なることによるカメラ移動は無用である(車両の搬送によってタイヤの方がカメラ側に移動する)。つまり、インラインでの検査が可能であり、また、カメラの位置移動用の可動部を用いることなく多様な車種に対応できる。
また、後傾車両吊上げ搬送路の下方に、車両の搬送を妨害せずに画像を撮影できる空間を確保でき、この空間にカメラを自由に固定配置できる。特に、レンズを水平方向に向けた姿勢でのカメラ設置が容易になり、カメラのレンズ表面への塵埃の付着を防止できる等の効果も発揮できる。
(2)項に記載の発明によれば、カメラの位置移動用の可動部を設けずに多様な車種への対応を可能とするタイヤ種別判別方法を容易に実現できる。
(4)項に記載の発明によれば、(1)項、(2)項に記載のタイヤ種別判別方法を、タイヤ種別の合否を判定する車両検査方法に適用したので、同車両検査方法において、上記タイヤ種別判別方法による効果をそのまま発揮させることができる。
(5)項に記載の発明によれば、(4)項の発明を具現化した車両検査装置を提供できる。
なお、(3)項、(6)項に記載の発明は、本発明(特許請求の範囲に記載した発明)ではないので、上記課題を解決するための手段の欄に、その効果を述べた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、各図間において、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1は、本発明によるタイヤ種別判別方法が適用された車両検査装置の一実施形態を示す構成図である。
図1に示す車両検査装置は、タイヤ種別判別手段1(1a,1b,1c)、車種情報読取手段2、合否判定手段3及び演算制御装置4とを備えてなる。
【0011】
この場合、上記タイヤ種別判別手段1は、車両5に装着されたタイヤ6のトレッド部表面の画像を撮影してそのタイヤ6の種別を特定する画像情報を抽出し、この画像情報をタイヤ6の種別を特定する登録情報と照合して上記車両5に装着されたタイヤ6の種別を判別する手段である。本実施形態では、タイヤ6の種別を特定する画像情報、登録情報として、タイヤ6のカラートレッド識別線に関する画像情報、登録情報が用いられる。
ここで、タイヤ6の種別(タイヤ種別)とは、タイヤ6の製造会社、商品名、タイヤ呼び(サイズ)等、様々な種類のタイヤ6を特定するための類分けであり、カラートレッド識別線はこの類分けを可能にする。
カラートレッド識別線に関する画像情報とは、タイヤ6のトレッド部表面のカラー画像からタイヤ種別を判別するために処理されて得られる画像情報であり、画像自体の情報であってもよく、あるいはそれを符号化した情報であってもよい。
カラートレッド識別線に関する登録情報とは、様々な種類のタイヤ6を特定するための多種のカラートレッド識別線に関する個々の登録情報であって、後述する記憶装置に予め登録してある。この登録情報についても、画像自体の情報であってもよく、あるいはそれを符号化した情報であってもよい。なお、タイヤ種別判別手段1の詳細は後述する。
【0012】
本実施形態では、タイヤ種別判別手段1は更に次のように構成されている。
一般に、車両5の生産ラインにおける車両搬送路は、作業員等の通行路との交差は立体交差化されている。このような立体交差には、車両5を吊り上げて搬送する車両搬送路、通常、ハンガコンベア7が用いられており、このハンガコンベア7の少なくとも上り勾配部分は、車両5を後傾姿勢(車両5の搬送方向側を上昇させた姿勢)で吊り上げて搬送する後傾車両吊上げ搬送路7aとなっている。
本実施形態では、このような後傾車両吊上げ搬送路7aをタイヤ種別の判別に活用するものである。すなわち、後傾車両吊上げ搬送路7aにて、車両5のタイヤ6が接地面から浮き上がって斜め上方への移動を開始する位置以降の予め定めた位置にカラーカメラ1aを固定配置し、これによりタイヤ6のトレッド部表面のカラー画像を撮影するように構成されている。
本実施形態において、カラーカメラ(以下、カメラと略記する。)1aは、車両5を後傾姿勢で吊り上げて斜め上方へ移動を開始する位置の近傍であって、そのレンズをほぼ水平方向(水平方向を含む。)に向けてタイヤ6のトレッド部表面のカラー画像(以下、トレッド部表面画像と略記する。)を撮影するように設置されている。カメラ1aのレンズがほぼ水平方向に向いていれば、このレンズの表面に塵埃が付着しにくい。
また本実施形態では、撮影時に外部の明るさに左右されることなく、また鮮明な画像を得るために、撮影するタイヤ6のトレッド部表面を照明する照明装置1bを備えている。
【0013】
本実施形態において、後傾車両吊上げ搬送路7aを利用して車両5のタイヤ6のトレッド部表面画像を撮影する構成としたのは、後傾車両吊上げ搬送路7aの下方には、車両5の搬送を妨害せずに画像を撮影できる空間を確保できるからである。またこの空間は、カメラ1aの大きさに比べて十分広く、したがってカメラ1aの固定位置を自由に設定でき、特に上述したようにレンズをほぼ水平方向に向けた姿勢でカメラ1aを設置できて、レンズ表面への塵埃付着を防止できるからである。
【0014】
カメラ1aで撮影されたタイヤ6のトレッド部表面画像は、画像処理によりタイヤ6のカラートレッド識別線(以下、トレッド識別線と略記する。)に関する画像情報として抽出され、この画像情報が、タイヤ6のトレッド識別線に関する登録情報と照合されて車両5に装着されたタイヤ6の種別を判別することは上述した通りである。
タイヤ種別の判別は、具体的には上記照合により上記トレッド識別線に関する画像情報が同登録情報と一致するトレッド識別線を探索し、そのトレッド識別線を有するタイヤ種別を出力することにより行われる。
以上の画像処理、抽出処理、照合・探索処理は、図示例では演算制御装置4中のタイヤ種別判別処理手段1cが行う。
【0015】
いま、カメラ1aとタイヤ6のトレッド部表面との対向距離がLになったときが同トレッド部表面につき、焦点の合った最良の画像を撮影でき、また、ハンガコンベア7は矢印ア方向に走行し、したがって車両5も矢印ア方向に搬送されているものとする。車両5はその前側がハンガコンベア7の搬送方向側に向けられているものとする。
この場合、始めに、前タイヤ6aのトレッド部表面がカメラ1aと距離Lを置いて対向する第1時点で、次に、図1に示すように後タイヤ6bのトレッド部表面がカメラ1aと距離Lを置いて対向する第2時点で、各々撮影を行う(カメラ1aのシャッタを切る)。これによれば、前後のタイヤ6a,6bについて1台のカメラ1aで同タイヤ6a,6bの各トレッド部表面の最良の画像を撮影できる。前後のタイヤ6a,6bは、左右各側にあるので、2台のカメラ1a(図中奥側、つまり車両左側のカメラ1aは図示を省略。)で前後、左右、合計4つのタイヤ6のトレッド部表面の最良の画像を撮影できる。
【0016】
上記2台のカメラ1aは、搬送時の左右のタイヤ6のトレッド部表面の各搬送軌跡に対応した位置に配置される。また、各カメラ1aの撮影領域(視野)は、左右のタイヤ6のトレッド部表面に対して適正に、つまり上記画像処理、抽出処理等が正常に行えるように予め設定されている。撮影領域は距離Lの調整、換言すればカメラ1aのシャッタを切る時点(シャッタチャンス)の調整で可能であり、ズーム機能をもたないカメラ1aを用いる場合は上記シャッタチャンスの調整により撮影領域が調整可能である。カメラ1aのシヤツタ速度や露出は、本実施形態では予め定めた値に固定されているが、自動調整可能としてもよい。カメラ1a自体の移動は、カメラ位置移動用の可動部が必要になるので本実施形態では行わない。
【0017】
上記第1,第2時点は、演算制御装置4内の演算制御装置本体4aが、車両検知手段、ここでは車両5の前端を検知する車両前後端検知手段10からの車両前端検知信号(車両検知時点)、車両前端から前タイヤ中心までの距離Lf、後傾車両吊上げ搬送路7aの搬送速度V、ホイールベース長Wb及びカメラ1aとタイヤ6のトレッド部表面との対向距離等を用いて演算する。この演算制御装置本体4aは、第1,第2時点を求めると、この第1,第2時点で各カメラ1aのシャッタ駆動部にシャッタ作動信号を与え、左右のタイヤ6のトレッド部表面画像を撮影させる。なお、車両前後端検知手段10としては光電スイッチ等が用いられる。
【0018】
上記車種情報読取手段2は、車両5を後傾姿勢で吊り上げて搬送する後傾車両吊上げ搬送路7aを含む搬送路(ハンガコンベア7)を搬送中の車両5からその車種情報を読み取る手段である。本実施形態では、車種情報読取手段2は車両5が後傾姿勢に入って車両前後端検知手段10が車両前端検知信号を出力した時点で非接触でその車種情報を読み取り、演算制御装置本体4aに与えられるように、ICタグ等から構成されている。
なお、車種情報とは車種を特定する情報をいう。車種とは、通常、生産会社、製品名等で分けられた車両5の種別を指すが、車種情報読取手段2で読み取られた車種の車両5に本来装着されるべきタイヤ種別を最終的に特定できる情報であればどのように定義してもよい。本実施形態では、車種情報から車種別の車両情報が読み出され、車両情報からタイヤ種別が特定できるようになされており、上記車両情報は、外部の車両情報記憶装置11に格納されている。
【0019】
上記車両情報には、タイヤ種別の他、車両前端から前タイヤ中心までの距離Lf、ホイールベース長Wb、カメラ1aとタイヤ6のトレッド部の寸法等、種々の情報が車種(車両)別に検索可能に纏められている。最良の画像を撮影するためのカメラ1aとタイヤ6のトレッド部表面との対向距離L、撮影領域、撮影回数は車種によって異なる場合があるので、これらの情報もこの車両情報に含ませてもよい。最良の画像を撮影するためには、照明装置1bの照明強度も関係するので、車種別の照明強度を上記車両情報に含ませてもよい。
【0020】
合否判定手段3は、タイヤ種別判別手段1によって判別したタイヤ種別と、車種情報読取手段2で読み取った車種情報に基づいて得られた、車両5に装着すべきものとして定められたタイヤ種別とを照合し、両タイヤ種別の合否(両タイヤ種別が一致するか否か)を判定する手段である。
車両5に装着すべきものとして定められたタイヤ種別とは、その車両5、つまり車種の仕様通りのタイヤ種別を指すが、このタイヤ種別は、車種情報読取手段2で読み取った車種情報をキーワードとして車両情報記憶装置11に格納された車両情報(登録情報)から検索して求める。
この合否判定手段3は、本実施形態では演算制御装置4内に設けられ、合否判定結果をディスプレイ12に表示させると共に、車両検査結果情報として外部の検査情報記憶装置13に記憶させ、車両検査結果の分析、統計等に利用可能とされている。
【0021】
以下、本実施形態による車両検査の手順について図2のフローチャートを参照して説明する。
図示するように、ステップ101では車両5の後傾車両吊上げ搬送路7aヘの進入を検知する。この車両進入検知は、車両前後端検知手段10が車両5の前端を検知して行われ、車両前後端検知手段10は車両前端検知信号を演算制御装置本体4aに送る。
【0022】
ステップ102では、ステップ101で検知された車両5の車種検知を行い、検知された車種に応じた種々の車両情報、例えばタイヤ6のトレッド識別線に関する登録情報、車両前端から前タイヤ中心までの距離Lf及びホイールベース長Wb、あるいは撮影領域、撮影回数、照明装置1bの照明強度等を車両情報記憶装置11から読み出して演算制御装置4内に保持する。この車種検知は、車種情報読取手段2によって読み取られた車種情報を受けて演算制御装置本体4aが行う。
また演算制御装置本体4aは、車両情報記憶装置11から読み出した車両情報、例えば上記距離Lf及びホイールベース長Wbと、予め入力され保持している後傾車両吊上げ搬送路7aの搬送速度V及び上記対向距離L等を用いて、撮影を行う第1時点、第2時点を求める。
第1時点は前タイヤ6aのトレッド部表面がカメラ1aに距離Lまで近づく時点であり、第2時点は後タイヤ6bのトレッド部表面がカメラ1aに距離Lまで近づく時点である。第1,第2時点は、タイヤ6a,6bのトレッド部表面の最良の画像を撮影できる時点である。
【0023】
演算制御装置本体4aは、車両5が搬送され時間が経過して第1時点に達すると、カメラ1aを作動させる。これにより前タイヤ6aのトレッド部表面が撮影され、撮影画像は演算制御装置4内に保存される(ステップ103)。
【0024】
演算制御装置本体4aは、更に時間が経過して第2時点に達すると、再びカメラ1aを作動させる。これにより後タイヤ6bのトレッド部表面が撮影され、この撮影画像も演算制御装置4内に保存される(ステップ104)。
【0025】
ステップ105では、ステップ103,104で撮影、保存された前後、左右の各タイヤ6のトレッド部表面画像がタイヤ種別判別処理手段1cによって画像処理され、各タイヤ6のトレッド識別線に関する画像情報として抽出される。この画像処理においては、撮影画像の明るさやコントラストの調整、画像の切り出し等による画像の解析、加工が可能で、上記トレッド部表面画像からのトレッド識別線に関する画像情報の抽出を適切に行える。
【0026】
ステップ106では、タイヤ種別判別処理手段1cが、ステップ105で抽出された各タイヤ6のトレッド識別線に関する画像情報をステップ102で車両情報記憶装置11から読み出し、演算制御装置4内に保持しておいた車両情報中のタイヤ6のトレッド識別線に関する登録情報と照合し、一致するトレッド識別線を抽出、つまり車両5に装着されたタイヤ種別を判別する。
【0027】
ステップ107では、合否判定手段3が、ステップ106で判別された車両5の各タイヤ6のタイヤ種別が、各タイヤ装着位置(前右、前左、後右、後左)別に、その車両5(車種)の仕様通りの正しいタイヤ種別であるか否かを判定(合否判定)する。演算制御装置本体4aは、合否判定手段3による判定結果をディスプレイ12に表示させると共に、車両検査結果情報として外部の検査情報記憶装置13に記憶させる。
なお、上述した実施形態では、4つ全てのタイヤ6の撮影を終えてから纏めてそれらのタイヤ種別の判別、仕様通りの正しいタイヤ種別であるか否かの判定(合否判定)を行っているが、これらの判別、判定をタイヤ6の撮影順に逐次行うようにしてもよい。
【0028】
以上述べたように本実施形態によれば、タイヤ種別の判別に際して車両5をラインからドラム上へ移動させたり、トレッドやホイールベースが車種により異なることによるカメラ移動は無用である。車両5の搬送によってタイヤ6の方がカメラ1a側に移動するからである。これらによれば、インライン(搬送工程)での検査が可能で、カメラ1aの位置移動用の可動部を用いることなく多様な車種(トレッドやホイールベース長等が異なる車種)に対応できる。
また、後傾車両吊上げ搬送路7aの下方に、車両5の搬送を妨害せずに画像を撮影できる空間を確保でき、この空間にカメラ1aを自由に固定配置できる。特に、レンズを水平方向に向けた姿勢でのカメラ設置が容易になり、カメラ1aのレンズ表面への塵埃の付着を防止できる。
またカメラ1aを、車両5の左右タイヤ6の各トレッド部表面の画像撮影用に左右一対配置するだけで、4輪車両の場合に4つのタイヤ6全ての種別を判別可能となる。
更に、タイヤ6のトレッド部表面を照明する照明装置1bを設けたので、撮影時に外部の明るさに左右されることなく、鮮明なタイヤのトレッド部表面画像を撮影できる、等の効果を発揮できる。
【0029】
なお上述実施形態では、撮影時点を、車両前端から前タイヤ中心までの距離Lf及びホイールベース長Wb等の車両情報や、後傾車両吊上げ搬送路7aの搬送速度V等から演算により求めたが、タイヤのトレッド部表面とカメラとの対向距離Lを検知する非接触形の距離計、例えばレーザ距離計を左右各側に設け、直接、上記対向距離Lを検知した時点で撮影するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるタイヤ種別判別方法が適用された車両検査装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】同上車両検査装置による車両検査の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1:タイヤ種別判別手段、1a:カラーカメラ(カメラ)、1b:照明装置、1c:タイヤ種別判別処理手段、2:車種情報読取手段、3:合否判定手段、4:演算制御装置、4a:演算制御装置本体、5:車両、6:タイヤ、6a:前タイヤ、6b:後タイヤ、7:ハンガコンベア、7a:後傾車両吊上げ搬送路、10:車両前後端検知手段、11:車両情報記憶装置、13:検査情報記憶装置、L:カメラとタイヤのトレッド部表面との対向距離、Lf:車両前端から前タイヤ中心までの距離、Wb:ホイールベース長。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤのトレッド部表面の画像を撮影してそのタイヤの種別を特定する画像情報を抽出し、この画像情報をタイヤの種別を特定する登録情報と照合して前記タイヤの種別を判別するタイヤ種別判別方法において、
前記車両を後傾姿勢で吊り上げて搬送する後傾車両吊上げ搬送路にて、
その車両のタイヤが接地面から浮き上がって斜め上方への移動を開始する位置以降の予め定めた位置に固定配置されたカメラにより、前記タイヤのトレッド部表面の画像を撮影することを特徴とするタイヤ種別判別方法。
【請求項2】
前記後傾車両吊上げ搬送路を含む搬送路を搬送中の車両を検知する車両検知手段を備え、
前記カメラは、
前記車両検知手段による車両の検知時点、車両検知位置から搬送方向側のタイヤ中心までの距離、前記搬送路の搬送速度、ホイールベース長及びカメラとタイヤのトレッド部表面との対向距離から演算した時点で撮影動作することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ種別判別方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ種別判別方法によって判別したタイヤ種別と、前記後傾車両吊上げ搬送路を含む搬送路を搬送中の車両から読み取った車種情報に基づいて得られた、その車両に装着すべきものとして定められたタイヤ種別とを照合し、両タイヤ種別の合否を判定することを特徴とする車両検査方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のタイヤ種別判別方法によってタイヤ種別を判別するタイヤ種別判別手段と、
前記後傾車両吊上げ搬送路を含む搬送路を搬送中の車両からその車種情報を読み取る車種情報読取手段と、
この車種情報読取手段で読み取った車種情報に基づき、前記車両に装着すべきものとして定められたタイヤ種別を記憶装置に格納された登録情報から検索して前記タイヤ種別判別手段で判別されたタイヤ種別と照合し、両タイヤ種別の合否を判定する合否判定手段とを具備することを特徴とする車両検査装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−250617(P2009−250617A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94867(P2008−94867)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000177058)三友工業株式会社 (27)