説明

タイヤ空気圧調整バルブ、およびこれを用いたタイヤ空気圧調整システム

【課題】 弁駆動機構が簡単で、部品点数が少なく、故障が少なくて安価なタイヤ空気圧調整用エアバルブを提供する。
【解決手段】 車輪2のリム3に取り付けられタイヤ4内の空気圧を調整するものであって、タイヤ4内に連通する中空形状のバルブステム11を有し、このバルブステム11内にタイヤ空気圧を減圧する減圧手段19が設けられ、この減圧手段19は、バルブステム11に形成されたリーク孔14aを開閉する弁体15と、この弁体15を強制的に吸引して開放する電磁石52と、この電磁石52を駆動制御するバルブ制御部56とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧調整バルブ、およびこれを用いたタイヤ空気圧調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のタイヤの空気圧は、車両の操縦性に影響するとともに、安全性にも直結している。このため、従来より、タイヤの種類に応じて適性なタイヤ空気圧が指定されている。しかし、適性なタイヤ空気圧になるように予め調整しておいても、夏場の炎天下の走行や、長距離走行、あるいは自動車レースなどの苛酷な運転を行う場合には、走行中にタイヤ空気圧が過剰に増加することがある。そして、走行中にタイヤ空気圧が増加すると、路面に対するグリップ力が低下したり、タイヤのバーストを引き起こすなどして危険が増大する。
【0003】
そこで、このような危険を回避するために、従来技術では、各車輪に圧力センサおよび送信機を設け、また、車体にはモニタ装置を配設し、圧力センサで検出したタイヤ空気圧を送信機によって無線で車体側に送信する一方、車体側のモニタ装置では、この受信した圧力センサの検出出力を予め設定した基準となる指定圧と比較し、検出したタイヤ空気圧が指定圧を越えている場合には、タイヤ空気圧が異常である旨を警告表示するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、他の従来技術として、各車輪に対して、タイヤ空気圧を検出する圧力センサ、減圧弁、これを駆動するモータ、モータ駆動用の電源、およびモータ制御用の制御部を備えたタイヤ空気圧調整バルブを取り付け、タイヤ空気圧が予め設定した指定圧を越えている場合には、モータを起動して減圧弁を開放してタイヤ空気圧を減圧することで、タイヤ空気圧を自動的に適正値に維持できるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−227492号公報
【特許文献2】特開2006−159961号公報
【特許文献3】特開2006−175973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1〜3に記載されている従来技術では、未だ次のような課題が残されている。
【0006】
すなわち、特許文献1,2に記載されている従来技術のものは、車輪のタイヤ空気圧が異常であるときに、車体側のモニタに警告表示が行われるだけであって、タイヤ空気圧が適性値になるように調整するためには、各車輪に設けられているエアバルブを個々に手動操作せねばならず、タイヤ空気圧の調整が面倒である。
【0007】
また、特許文献3に記載されている従来技術は、各車輪のホイールに取り付けた空気圧調整バルブによって、個々の車輪のタイヤ空気圧が常に適性値になるように自動的に調整されるので、各車輪のタイヤ空気圧の調整の手間を省くことができるものの、各車輪ごとに設けられている空気圧調整バルブに対して、基準となる指定圧を個々に設定せねばならず、指定圧の設定操作が面倒である。
【0008】
すなわち、タイヤには、サイズや構造等が異なる多くの種類があり、各タイヤの種類ごとに適性なタイヤ空気圧も異なる。したがって、各車輪のタイヤの種類に応じて、各車輪ごとに設けられている空気圧調整バルブの制御部に対して基準となる指定圧を個々に設定する必要があり、指定圧の設定操作が極めて面倒となる。
【0009】
しかも、特許文献3に記載されているものは、モータで減圧弁を開閉する機構であるため、弁駆動機構が複雑で、かつ部品点数も多く、このため、故障が生じ易いだけでなく、高価になるという不具合がある。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、弁駆動機構が簡単で、部品点数が少なく、故障が少なくて比較的安価なタイヤ空気圧調整用エアバルブを提供することを第1の目的とし、さらに、上記のタイヤ空気圧調整用エアバルブを利用して、極めて簡単な操作によって個々の車輪のタイヤ空気圧が適性値になるように調整することが可能なタイヤ空気圧調整システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明に係るタイヤ空気圧調整用エアバルブは、車輪のリムに取り付けられタイヤ内の空気圧を調整するものであって、タイヤ内に連通する中空形状のバルブステムを有し、このバルブステム内にタイヤ空気圧を減圧する減圧手段が設けられ、この減圧手段は、前記バルブステムに形成されたリーク孔を開閉する弁体と、この弁体を強制的に吸引して開放する電磁石と、この電磁石を駆動制御するバルブ制御部と、を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明に係るタイヤ空気圧調整システムは、請求項1記載の発明の構成において、前記弁体は、環状(リング状)に形成されたものからなることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明に係るタイヤ空気圧調整用エアバルブは、請求項1又は2記載の発明の構成において、前記バルブステムは、前記リムに固定されるステム基部から2つの部分に分岐され、一方の分岐部分に前記減圧手段が、他方の分岐部分に空気補充用バルブ手段がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明に係るタイヤ空気圧調整システムは、請求項1〜請求項3のいずれかの構成を備えた前記タイヤ空気圧調整用エアバルブには、さらに、タイヤ空気圧を検出する圧力センサと、この圧力センサの検出信号を外部に無線送信するとともに、外部から与えられる弁体開放の制御信号を受信して前記制御部に与える送受信部とが設けられる一方、車体側には各車輪のタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視装置が配設され、このタイヤ空気圧監視装置は、各タイヤ空気圧の基準となる指定圧を予め設定する設定器と、前記タイヤ空気圧調整用エアバルブから送られてくるタイヤ空気圧の検出信号が前記設定器で設定された指定圧を越えているか否かを判定し、タイヤ空気圧が指定圧を越えている場合には前記弁体開放の制御信号を出力するシステム制御部と、前記タイヤ空気圧調整用エアバルブから送られてくるタイヤ空気圧の検出信号を受信するとともに、前記システム制御部から出力される弁体開放の制御信号を各タイヤ空気圧調整用エアバルブに向けて無線送信する送受信部と、を備えることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明に係るタイヤ空気圧調整システムは、請求項4記載の発明の構成において、前記タイヤ空気圧監視装置は、前記システム制御部からタイヤ空気圧が指定圧を越えている場合に出力される弁体開放の制御信号に基づいて警報を発する警報手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、減圧手段を構成するバルブ制御部により電磁石を駆動制御することで、電磁石が弁体を強制的に吸引してバルブステムに形成されたリーク孔を開放されてタイヤ空気圧が減圧される。したがって、従来のような減圧弁駆動用のモータは不要なために弁駆動機構が簡単となり、故障が少なくて安価なタイヤ空気圧調整用エアバルブを提供することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、減圧手段を構成する弁体は、環状に形成されたものからなるため、弁体を収容する弁本体内のタイヤ空気圧の影響を受けることが殆どなく、したがってばね力の弱い弁ばねによって弁体を閉塞位置(非リーク位置)に保持することが可能となり、これがために弁体のばね力に打ち勝って弁体を開放位置(リーク位置)に変位させるための電磁石も吸引力の弱い消費電力の少ない小形の電磁石を採用することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、車輪のリムに単一のタイヤ空気圧調整用エアバルブを取り付けるだけで、タイヤ空気の補充とタイヤ空気圧が増加したときの減圧とを行うことができる。したがって、リムに対して、タイヤ空気圧減圧用バルブと空気補充用バルブとを別々に取り付ける必要がなく、バルブ取り付けの手間を省くことができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、タイヤ空気圧監視装置のシステム制御部は、各車輪に取り付けたタイヤ空気圧調整用エアバルブの圧力センサで検出されるタイヤ空気圧が指定圧を越えているか否かを判定し、タイヤ空気圧が指定圧を越えている場合には弁体開放の制御信号を各タイヤ空気圧調整用エアバルブに送信し、これに応じてバルブ制御部が電磁石を駆動して弁体を強制的に吸引してタイヤ空気圧を減圧する。したがって、タイヤ空気圧監視装置の設定器によってタイヤの種類に応じた適性なタイヤ空気圧を指定圧として予め一括して設定しておけば、従来のように、各車輪ごとにタイヤ空気圧を個別に設定しなくても、個々の車輪のタイヤ空気圧が適性値になるように調整される。したがって、個々の車輪のタイヤ空気圧の設定や調整操作が極めて容易となり、運転者の負担が軽減される。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、タイヤ空気圧が指定圧を越えている場合には車体側に設けたタイヤ空気圧監視装置の警報手段によって警報が発せられるので、運転者は、タイヤ空気圧の異常を直ちに認識することができ、タイヤ空気圧が適性値になるように迅速な対応をとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の実施の形態におけるタイヤ空気圧調整システムが適用された車両を示す全体構成図、図2は車両のリムにタイヤ空気圧調整用エアバルブを取り付けた状態を拡大して示す正面図、図3は同タイヤ空気圧調整用エアバルブの減圧手段の具体的な構成を示す断面図、図4は同タイヤ空気圧調整用エアバルブの電気的な構成を示すブロック図、図5はタイヤ空気圧調整システムにおけるタイヤ空気圧監視装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
この実施の形態のタイヤ空気圧調整システムは、図1に示すように、車両1の4つの車輪2の各リム3にタイヤ4内の空気圧を調整するタイヤ空気圧調整用バルブ5が個別に取り付けられている。また、車体6側にはタイヤ空気圧調整用バルブ5に個別に対応してアンテナ7が配置されるとともに、各車輪2のタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視装置8が配設されている。
【0023】
上記のタイヤ空気圧調整用バルブ5は、図2および図3に示すように、タイヤ4内に連通する中空形状のバルブステム11を有し、このバルブステム11は、リム3に固定されたステム基部12から2つの部分13,14に分岐してタイヤ4外部に突出している。そして、一方の分岐部分13には空気補充用バルブ手段が設けられている。この場合の空気補充用バルブ手段は、コイルばねの力に抗して心棒を押すことで弁が開放されて空気の注入ができるもので、その構造自体は周知のものである。
【0024】
また、バルブステム11の他方の分岐部分14には、その内部にタイヤ空気圧を検出する例えば半導体ピエゾ素子等からなる圧力センサ51が取り付けられ(図3、図4)、また、分岐部分14の周壁に複数のリーク孔14aが形成されるともに、これらのリーク孔14aを開閉する鉄等の磁性体からなる円環状の弁体15が内嵌されている。そして、この弁体15の周側部にはリーク孔14aに対応した数の穴15aが形成されている。また、このバルブステム11の分岐部分14の端部内側には外周部にねじ溝16aが形成されたブッシュ16が螺合され、さらに、ブッシュ16のねじ溝16aに合成樹脂等の非磁性体からなるシールキャップ17が螺合されている。そして、ブッシュ16の径方向内方に突出して形成された内フランジ16bと弁体15との間に圧縮ばね18が介在され、また、ブッシュ16内のシールキャップ17側には、弁体15を強制的に吸引する電磁石52、電源部53、およびICチップ54が順次設けられている。
【0025】
電源部53は、ICチップ54や圧力センサ51への電力供給を行うもので、本例では電池が使用されているが、通常の電池に限らず、外部からチャージ可能な充電池や、電波エネルギを蓄積するコンデンサ等で構成することも可能である。
【0026】
ICチップ54には、図4に示すように、電源部53からの電力を電磁石52に通電して励磁させるスイッチ等からなる電磁石起動部55、電磁石52を駆動制御するバルブ制御部56、圧力センサ51の検出信号をタイヤ空気圧監視装置8(図5)のアンテナ7に向けて無線送信するとともに、タイヤ空気圧監視装置8から与えられる弁体開放の制御信号を受信してバルブ制御部56に与える送受信部57が設けられている。なお、圧力センサ51、電源部53、およびICチップ54は、図示しない配線パターンやリード線によって互いに電気的に接続されている。そして、上記のリーク孔14a、弁体15、電磁石52によって特許請求の範囲における減圧手段19が構成されている。
【0027】
タイヤ空気圧監視装置8は、例えば運転席近傍のダッシュボードに配設されており、設定器81、メモリ82、減圧ボタン83、システム制御部84、送受信部85、およびモニタ装置86を備えている。
【0028】
設定器81は、各車輪2に装備されるタイヤ4の種類に応じた適性なタイヤ空気圧である指定圧を予め設定するものである。
【0029】
メモリ82は、当システム全体を制御する制御プログラムが記憶されるとともに、設定器81で設定された指定圧を記憶するもので、RAM、EEPROM、フラッシュメモリ等の各種の記憶素子が適用される。
【0030】
減圧ボタン83は、システム制御部84に対してタイヤ空気圧を減圧させる指令を入力するために操作されるもので、各車輪2に対応して設けられている。
【0031】
システム制御部84は、タイヤ空気圧調整用エアバルブ5(図1、図2)から送られてくるタイヤ空気圧の検出信号がメモリ82に設定登録されている指定圧を越えているか否かを判定し、タイヤ空気圧が指定圧を越えている場合には減圧ボタン83からの入力指令に応じて弁体開放の制御信号を出力するものである。
【0032】
送受信部85は、タイヤ空気圧調整用エアバルブ5から送られてくるタイヤ空気圧の検出信号を受信するとともに、システム制御部84から出力される弁体開放の制御信号を各タイヤ空気圧調整用エアバルブ5に向けて無線送信するものである。
【0033】
モニタ装置86は、例えば液晶ディスプレイなどで構成され、システム制御部84によりタイヤ空気圧が指定圧を越えていると判断された場合に画面上に各車輪ごとに異常発生等のマークを例えば点滅表示するもので、特許請求の範囲の警報手段に対応している。なお、モニタ装置86に代えて、LED等の警報ランプを設けることも可能である。
【0034】
次に、上記構成のタイヤ空気圧調整システムにおけるタイヤ空気圧調整動作について説明する。
【0035】
設定器81により、予め各車輪2に装備されている各タイヤ4の適性なタイヤ空気圧を指定圧として登録しておく。
【0036】
ここで、各車輪2のタイヤ空気圧は、タイヤ空気圧調整用バルブ5に設けられている圧力センサ51で検出され、その検出出力が送受信部57を介してアンテナ7に向けて無線送信される。タイヤ空気圧監視装置8の送受信部85は、アンテナ7で得られる受信信号をシステム制御部84に取り込む。システム制御部84は、このタイヤ空気圧の検出信号がメモリ82に予め設定登録されている指定圧を越えているか否かを判定する。
【0037】
ここで、各車輪2のタイヤ空気圧が適性な値に保たれていて指定圧未満であるときには、システム制御部84は、弁体開放の制御信号を出力しない。したがって、タイヤ空気圧調整用バルブ5の電磁石52への通電は行われないので、圧縮ばね18により弁体15は図3に示す状態にあって、リーク孔14aが弁体15の周壁により閉鎖されている。このため、タイヤ4内は密閉状態に保たれている。
【0038】
特に本実施形態の特徴とする点は、弁体15を環状(リング状)に形成している点である。即ち、弁本体(分岐部分14)内には常にタイヤ空気圧が負担しており、もし弁体が円盤状のものからなれば、該弁体はタイヤ空気圧によって強力に押圧され、これに打ち勝って弁体を閉塞位置(非リーク位置)に保持するためには、弁ばね(圧縮ばね)に強力なばねを採用しなければならない。
【0039】
これに対し、本実施形態の弁体15は環状(リング状)に形成されているため、図3に示すように、タイヤ空気圧は弁体15の上下両端面15b,15cに略均等に負圧し、弁体15は強力なタイヤ空気圧を受けても変位することはない。なお、このように弁体15の両端面15b,15cに、互いに反対方向に可能な限り均等なタイヤ空気圧を受けるためには両端面15b,15cの受圧面積を可能な限り均等にすることが好ましく、このためには、図示の状態から推測できるように、弁体15の下端面15bを受ける係合段面14aの係合面積を可能な限り小面積に形成することが好ましい。
【0040】
このように、環状の弁体15にあっては、タイヤ空気圧の影響を殆ど受けることがないから、弁ばね(圧縮ばね18)の付勢力だけで、図示のように弁体15を閉塞位置(非リーク位置)に保持することができ、弁ばね18は付勢力の弱いばねを採用することが可能となり、それだけ電磁石52も吸引力の弱い且つ消費電力の少ない小形の電磁石を採用することが可能となる。
【0041】
圧力センサ51で検出されるある車輪2についてのタイヤ空気圧が指定圧を越えている場合、システム制御部84は、モニタ装置86の画面上にその該当する車輪2について異常発生等のマークを表示する。
【0042】
そこで、運転者がタイヤ空気圧が指定圧を越えている車輪2に対応した減圧ボタン83を操作して減圧指令信号を入力すると、この信号入力に応じてシステム制御部84は弁体開放の制御信号を出力する。この制御信号は、送受信部85からアンテナ7を介して該当するタイヤ空気圧調整用バルブ5に向けて無線送信される。
【0043】
タイヤ空気圧調整用バルブ5の送受信部57が、この弁体開放の制御信号を受信すると、この受信信号をバルブ制御部56に送出するので、これに応じてバルブ制御部56は、電磁石起動部55を起動して電磁石52を励磁する。これにより、電磁石52が圧縮ばね18のばね力に抗して弁体15を強制的に吸引するため、弁体15の穴15aとバルブステム14のリーク孔14aとが連通し、タイヤ空気圧が減圧される。
【0044】
その結果、圧力センサ51で検出されるタイヤ空気圧が指定圧未満となったときには、タイヤ空気圧監視装置8のシステム制御部84は、弁体開放の制御信号の出力を停止する。これに応じて、タイヤ空気圧調整用バルブ5のバルブ制御部56は、電磁石起動部55による電磁石52の通電を停止するので、圧縮ばね18により弁体15が移動してリーク孔14aが弁体15の周壁により閉鎖される。このため、タイヤ4内は密閉状態に保たれる。
【0045】
以上のように、この実施の形態では、タイヤ空気圧監視装置8の設定器81によってタイヤ4の種類に応じた適性なタイヤ空気圧を指定圧として予め一括して設定しておけば、従来のように、車輪2ごとにタイヤ空気圧を個別に設定しなくても、個々の車輪2のタイヤ空気圧が適性値になるように調整される。したがって、各車輪2のタイヤ空気圧の設定や調整操作が極めて容易となり、運転者の負担が軽減される。そして、タイヤ空気圧が指定圧を越えた場合には車体6側に設けたタイヤ空気圧監視装置8のモニタ装置86に異常発生が表示されるので、運転者は、タイヤ空気圧の異常を直ちに認識することができ、タイヤ空気圧が適性値になるように迅速な対応をとることができる。
【0046】
また、各車輪2に設けられるタイヤ空気圧調整用バルブ5は、減圧手段19を構成する電磁石52によって弁体15を強制的に吸引することでタイヤ空気圧が減圧される機構となっているため、従来のような減圧弁駆動用のモータは不要で弁駆動機構が簡単となり、故障が少なくて安価なタイヤ空気圧調整用エアバルブ5が得られる。
【0047】
さらに、各車輪2の一カ所にのみタイヤ空気圧調整用エアバルブ5を取り付けるだけで、タイヤ空気の補充とタイヤ空気圧の減圧調整とを共に行うことができる。このため、タイヤ空気圧減圧用バルブとタイヤ空気補充用バルブとを別々に取り付ける必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0048】
なお、上記の実施の形態では、タイヤ空気圧監視装置8において、減圧ボタン83を操作すると、これに応じてシステム制御部84が弁体開放の制御信号を出力するように構成したが、これに限らず、例えば減圧ボタン83を省略し、圧力センサ51で検出されるタイヤ空気圧が予めメモリ82に登録されている指定圧を越えた場合にはシステム制御部84が直ちに弁体開放の制御信号を出力する構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態におけるタイヤ空気圧調整システムが適用された車両を示す全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態において、車両のリムにタイヤ空気圧調整用エアバルブを取り付けた状態を拡大して示す正面図である。
【図3】同タイヤ空気圧調整用エアバルブの減圧手段の具体的な構成を示す断面図である。
【図4】同タイヤ空気圧調整用エアバルブの電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるタイヤ空気圧調整システムにおけるタイヤ空気圧監視装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
2 車輪
3 リム
4 タイヤ
5 タイヤ空気圧調整用バルブ
6 車体
8 タイヤ空気圧監視装置
11 バルブステム
12 ステム基部
13,14 分岐部分
14a リーク孔
15 弁体
18 圧縮ばね
19 減圧手段
51 圧力センサ
52 電磁石
53 電源部
54 ICチップ
56 バルブ制御部
57 送受信部
81 設定器
84 システム制御部
85 送受信部
86 モニタ装置(警報手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪のリムに取り付けられタイヤ内の空気圧を調整するものであって、タイヤ内に連通する中空形状のバルブステムを有し、このバルブステム内にタイヤ空気圧を減圧する減圧手段が設けられ、この減圧手段は、前記バルブステムに形成されたリーク孔を開閉する弁体と、この弁体を強制的に吸引して開放する電磁石と、この電磁石を駆動制御するバルブ制御部と、を備えることを特徴とするタイヤ空気圧調整用エアバルブ。
【請求項2】
前記弁体は、環状に形成されたものからなる請求項1記載のタイヤ空気圧調整用エアバルブ。
【請求項3】
前記バルブステムは、前記リムに固定されるステム基部から2つの部分に分岐され、一方の分岐部分に前記減圧手段が、他方の分岐部分に空気補充用バルブ手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤ空気圧調整用エアバルブ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかの構成を備えた前記タイヤ空気圧調整用エアバルブには、さらに、タイヤ空気圧を検出する圧力センサと、この圧力センサの検出信号を外部に無線送信するとともに、外部から与えられる弁体開放の制御信号を受信して前記制御部に与える送受信部とが設けられる一方、車体側には各車輪のタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視装置が配設され、このタイヤ空気圧監視装置は、各タイヤ空気圧の基準となる指定圧を予め設定する設定器と、前記タイヤ空気圧調整用エアバルブから送られてくるタイヤ空気圧の検出信号が前記設定器で設定された指定圧を越えているか否かを判定し、タイヤ空気圧が指定圧を越えている場合には前記弁体開放の制御信号を出力するシステム制御部と、前記タイヤ空気圧調整用エアバルブから送られてくるタイヤ空気圧の検出信号を受信するとともに、前記システム制御部から出力される弁体開放の制御信号を各タイヤ空気圧調整用エアバルブに向けて無線送信する送受信部と、を備えることを特徴とするタイヤ空気圧調整システム。
【請求項5】
前記タイヤ空気圧監視装置は、前記システム制御部からタイヤ空気圧が指定圧を越えている場合に出力される弁体開放の制御信号に基づいて警報を発する警報手段を備えることを特徴とする請求項4記載のタイヤ空気圧調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−37397(P2008−37397A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218259(P2006−218259)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506274992)