説明

タイヤ試験装置

【課題】タイヤ試験装置において、タイヤとローラの予熱を効率的に行う。
【解決手段】カバー300と内壁301と調温室壁板311によって、ローラ2とタイヤ50を収容する調温室3100と、他の各部を収容する機械室320とが構成され、調温室3100の前方側の下部には、空調機400の吹出ダクト410が連結され、調温室3100の前方側の上部には、空調機400の吸込ダクト420が連結されている。そして、調温室3100の形状によって、ローラ2とタイヤ50との回転に伴って、空調機400から供給された空気がローラ2の周面とタイヤ50の周面とを巡回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの各種特性の試験に用いられるタイヤ試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ試験装置としては、モータによって回転するローラと、回転可能に軸受されたスピンドルと、スピンドルに加わるトルクを検出するロードセルとを備え、スピンドルに固定したタイヤをローラの周面に圧接させてローラと共に回転させながらロードセルで検出したトルクに基づいて、タイヤの転がり抵抗を計測する装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-004598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、タイヤの試験を行う場合、当該試験開始に先立って、タイヤの温度を試験条件に従った温度に予熱する必要がある。また、タイヤと接触しタイヤと熱交換を行うことになるローラも、タイヤと同様に予熱しておく必要が生じる。
そこで、本発明は、このようなタイヤとローラの予熱を、タイヤ試験装置において効率的に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、タイヤの試験に用いられるタイヤ試験装置に、前記タイヤに連結したタイヤモータと、周面に前記タイヤが圧接されるローラと、前記ローラに連結したローラモータと、調温室と、前記調温室に調温した空気を吹き出すと共に、前記調温室から空気を吸い出す空調機とを設け、前記ローラモータと前記タイヤモータとを前記調温室の外部に配置し、前記ローラと前記タイヤモータに連結したタイヤとを前記調温室の内部に配置すると共に、前記調温室の形状を、前記空調機から前記調温室に吹き出された調温した空気が、前記ローラと前記タイヤモータに連結したタイヤとの回転に伴い、前記ローラの周面まわりと前記タイヤモータに連結したタイヤの周面まわりとを巡回する形状としたものである。
【0006】
このようなタイヤ試験装置によれば、ローラとタイヤとの回転を利用して、前記空調機から前記調温室に吹き出された調温した空気を、前記ローラの周面まわりと前記タイヤモータに連結したタイヤの周面まわりとを巡回させることにより、むら無く効率的にタイヤとローラとを予熱することができる。
【0007】
ここで、より具体的には、前記調温室の形状は、前記調温室の内側壁と前記ローラの周面との間の隙間が、前記タイヤモータに連結したタイヤと面する側の反対側において絞り込まれた形状となり、前記調温室の内側壁と前記タイヤモータに連結したタイヤの周面との間の隙間が、前記ローラと面する側の反対側において絞り込まれた形状となるように設定することができる。
【0008】
また、このようなタイヤ試験装置は、前記タイヤモータに連結されていないタイヤを保管するタイヤ保管ケースを設け、前記空調機は、前記調温室から吸い出した空気を、前記タイヤ保管ケース内に供給するようにすることも、保管中のタイヤの予備的な調温を効率的に行う上で好ましい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、タイヤ試験装置において、タイヤとローラの予熱を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るタイヤ試験装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るタイヤ試験装置の予熱機構の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1a1-a4に、本実施形態に係るタイヤ試験装置の構成を示す。
ここで、図1a4はタイヤ試験装置の斜視図であり、図1a4中に示すように上下前後左右を定義するものとして、図1a1はタイヤ試験装置を左方より見たようすを、図1a2はタイヤ試験装置を上方より見たようすを、図1a3はタイヤ試験装置を右方より見たようすを表している。
【0012】
図示するように、タイヤ試験装置は、ベース1、ローラ2、ローラ2に連結されたローラシャフト3、ローラシャフト3を回動可能に支持する、ベース1に固定されたローラシャフト軸受4、ローラシャフト3に加わる軸回り(捻れ方向)のトルクを検出するローラ軸トルク計5、ローラシャフト3の回転速度を検出するローラ回転計6、ローラシャフト3に固定されたローラ用プーリ7、ベース1に固定されたローラモータ8、ローラモータ8の回転軸に固定されたローラモータプーリ9とローラ用プーリ7とに巻回されたローラ用ベルト10とを備えている。そして、このような構成によって、ローラモータ8の発生トルクがローラ2に伝達され、ローラモータ8の回転に伴いローラ2が回転するようになっている。
【0013】
また、タイヤ試験装置は、ベース1に対して前後に移動可能に、二本のガイドシャフト11により支持されたステージ12を備えている。
そして、ステージ12上には、被試験体であるタイヤ50が一端に固定されるタイヤシャフト13、タイヤシャフト13を回動可能に支持する、ステージ12に固定されたタイヤシャフト軸受14、タイヤシャフト13に加わる軸回り(捻れ方向)のトルクを検出するタイヤ軸トルク計15、タイヤシャフト13の回転速度を検出するタイヤ回転計16、タイヤシャフト13に固定されたタイヤ用プーリ17、ステージ12に固定されたタイヤモータ18、タイヤモータ18の回転軸に固定されたタイヤモータプーリ19とタイヤ用プーリ17とに巻回されたタイヤ用ベルト20とを備えている。そして、このような構成によって、タイヤモータ18の発生トルクがタイヤ50に伝達され、タイヤモータ18の回転に伴いタイヤ50が回転するようになっている。
【0014】
また、タイヤ試験装置は、図1bに示すように、ベース1の内部にアクチュエータ21を備えており、アクチュエータ21で、ステージ12の下部を押し引きすることにより、ステージ12をベース1に対して前後方向に移動したり、タイヤ50の周面をローラ2の周面に任意の力で押しつけて圧接することができるようになっている。
【0015】
ここで、このような構成によれば、タイヤ50の周面をローラ2の周面に任意の力で圧接した状態で、ローラ回転計6が出力するローラ2の回転速度や、タイヤ回転計16が出力するタイヤ50の回転速度や、ローラ軸トルク計5が出力するローラ2の軸トルクや、タイヤ軸トルク計15の検出値などを必要に応じて参照しつつ、タイヤモータ18とローラモータ8との発生トルクを制御することにより、タイヤ50を所望の回転速度で、所望の負荷を与えながら回転する試験を行うことができる。また、この試験において、ローラ回転計6が出力するローラ2の回転速度や、タイヤ回転計16が出力するタイヤ50の回転速度や、ローラ軸トルク計5が出力するローラ2の軸トルクや、タイヤ軸トルク計15の検出値を用いて、タイヤ50の各種特性を測定することができる。
【0016】
さて、このような構成において、以上の各部は、図1a1-a4に示すように、カバー300によって覆われた形態で、カバー300内に収容されている。
ここで、図2aに、カバー300の上面部分と後述する調温室壁板311を透視して、上方から見たカバー300によって構成される空間の構成を模式的に示す。
【0017】
図示するように、カバー300内部の空間は、内壁301によって、ローラ2とタイヤ50を収容する試験室310と、他の各部を収容する機械室320とに区切られている。ここで、試験室310と機械室320とは、ローラシャフト3とタイヤシャフト13とを通す孔を除きカバー300によって遮蔽されている。
次に、図2bに、カバー300の左側面部分を透視して、左方から見た試験室310内の構成を模式的に示す。
【0018】
図示するように、試験室310内には試験室310を区切って、ローラ2とタイヤ50を収容した調温室3100を形成するための調温室壁板311が設けられている。ここで、この調温室壁板311は、後述するように、ローラ2とタイヤ50との回転に伴って、空気をローラ2の周面まわりとタイヤ50の周面まわりを巡回させるための役割も担っている。
【0019】
そして、図2a、bに示すように、調温室3100の前方側の下部には、空調機400の吹出ダクト410が連結され、調温室3100の前方側の上部には、空調機400の吸込ダクト420が連結されている。また、空調機400の排気ダクト430は、複数のタイヤを収容するタイヤ保管箱500に連結されている。
【0020】
また、図示は省略しているが、調温室3100内には、ローラ2やタイヤ50の温度を非接触で測定する温度センサも設けられている。
このような構成において、空調機400から、試験条件に従った所望温度に温度調整後の空気が、吹出ダクト410を通り、調温室3100内に供給され、当該温度調整後の空気によって、温度センサによって測定されるローラ2とタイヤ50の温度が、試験条件に応じた温度になるまで温度調整される。この温度調整後の空気によるローラ2とタイヤ50の温度調整動作の詳細については後述する。
【0021】
また、調温室3100の上部から、調温室3100内の空気が吸込ダクト420を介して空調機400によって吸い出される。
そして、空調器400は、調温室3100内から吸い出した空気を排気ダクト430を介してタイヤ保管箱500に排気する。タイヤ保管箱500は半密閉されており、各所にタイヤ保管箱500内外の空気口となる孔やスリットを備えている。そして、当該空気口を通って、タイヤ保管箱500に空調器400より排気された空気は、タイヤ保管箱500の各所より外部に放出される。
【0022】
ここで、このタイヤ保管箱500に空調器400より排気された空気は、周囲温度より、試験条件に従った所望温度に近い。したがって、タイヤ保管箱500に保管されている各タイヤは、空調器400よりタイヤ保管箱500に排気された空気によって、周囲温度よりも試験条件に従った所望温度に近い温度に予備的に加熱された状態で保管されることになる。この結果、タイヤ保管箱500に保管していたタイヤ50をタイヤ試験装置に装着して試験を行う際に、当該タイヤ50の試験条件に従った所望温度への温度調整を速やかに行えるようになる。
【0023】
次に、前述した、空調機400からの温度調整後の空気によるローラ2とタイヤ50の温度調整動作の詳細について説明する。
まず、上述した試験の開始に先立って、空調機400を起動し、タイヤ試験装置の暖気運転を行う。
当該暖気運転においては、まず、アクチュエータ21を駆動してステージ12を前方向に移動して、ローラ2とタイヤ50を離間させる。
次に、空調機400からの、温度調整後の空気の調温室3100への供給を開始すると共に、ローラモータ8とタイヤモータ18とを駆動し、図2bに点線矢印で示したように、ローラ2とタイヤ50を、同回転方向に、左方から見て反時計回りに回転する。
ここで、調温室壁板311は、ローラ2と調温室壁板311との間の隙間が、ローラ2の後方に向かうほど狭くなり、かつ、ローラ2の後方端において、当該隙間が、空気の流体としての運動に対して無視できないほどに充分に狭くなる(たとえば、隙間が数cmとなるようにする)ように絞り込まれた形状を有している。また、調温室壁板311は、タイヤ50と調温室壁板311との間の隙間が、タイヤ50の前方に向かうほど狭くなり、かつ、タイヤ50の前方端において、当該隙間が、空気の流体としての運動に対して無視できないほどに充分に狭くなる(たとえば、隙間が数cmとなるようにする)ように絞り込まれた形状を有している。
【0024】
このため、空調機400から吹出ダクト410を通って調温室3100内の前方下部に供給された温度調整後の空気の、調温室3100前方上部に連結された吸込ダクト420に至るまでの流れは、図2bに実線矢印で示した流れを含むものとなる。
すなわち、空調機400から吹出ダクト410を通って、調温室3100内に前方下部から後方に向けて吹き出された温度調整後の空気の一部は、調温室壁板311とローラ2との隙間をローラ2の後部において絞り込んだこととローラ2の回転とにより生じる吸い込み効果によって、ローラ2の下面をまわってローラ2の後方に導かれ、ローラ2の後面に回り込んだ後に、ローラ2の上面をまわってローラ2の前方に進む。
【0025】
そして、ローラ2の前方に進んだ空気の一部は、そのまま吸込ダクト420に進んで調温室3100から排出され、他の一部は、調温室壁板311とタイヤ50との隙間をタイヤ50の前部において絞り込んだこととタイヤ50の回転とにより生じる吸い込み効果によって、タイヤ50の上面をまわって、タイヤ50の前方に導かれる。
【0026】
そして、このようにして、タイヤ50の前方に導かれた空気は、調温室壁板311に沿ってタイヤ50の後方に導かれ、タイヤ50の後方に導かれた空気は、ローラ2の前面とタイヤ50の後面との間を通って上方に向かい、その一部は、吸込ダクト420に進んで調温室3100から排出される。ここで、タイヤ50の後方に導かれた空気が、ローラ2の前面とタイヤ50の後面との間を通って上方に向かうように、ローラモータ8とタイヤモータ18の回転速度は、タイヤ50の周速度がローラ2の周速度より大きくなるように制御する。ただし、タイヤ50とローラ2とでは、通常、表面荒さはタイヤ50の方が大きいため、同じ周速度で回転した場合には、タイヤ50の方がローラ2よりも空気に働く力は大きくなる。よって、タイヤ50の周速度は、ローラ2の周速度よりも必ずしも大きくする必要はなく、回転するタイヤ50の後面による空気を上方へ移動させる力が、回転するローラ2の前面による空気を下方へ移動させる力に勝るように、ローラ2の周速度に対して、タイヤ50の周速度は設定すれば足りる。
結果、空調機400から供給された温度調整後の空気を、ローラ2の周面とタイヤ50の周面を巡回させることができ、効率的にローラ2とタイヤ50の予熱を行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
このように本実施形態によれば、ローラ2とタイヤ50との回転を利用して、空調機400から調温室3100に吹き出された調温した空気を、ローラ2の周面まわりとタイヤ50の周面まわりとを巡回させることにより、むら無く効率的にタイヤ50とローラ2との予熱を行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
1…ベース、2…ローラ、3…ローラシャフト、4…ローラシャフト軸受、5…ローラ軸トルク計、6…ローラ回転計、7…ローラ用プーリ、8…ローラモータ、9…ローラモータプーリ、10…ローラ用ベルト、11…ガイドシャフト、12…ステージ、13…タイヤシャフト、14…タイヤシャフト軸受、15…タイヤ軸トルク計、16…タイヤ回転計、17…タイヤ用プーリ、18…タイヤモータ、19…タイヤモータプーリ、20…タイヤ用ベルト、21…アクチュエータ、50…タイヤ、300…カバー、301…内壁、310…試験室、311…調温室壁板、320…機械室、400…空調機、410…吹出ダクト、420…吸込ダクト、430…排気ダクト、500…タイヤ保管箱、3100…調温室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの試験に用いられるタイヤ試験装置であって、
前記タイヤに連結したタイヤモータと、
周面に前記タイヤが圧接されるローラと、
前記ローラに連結したローラモータと、
調温室と、
前記調温室に調温した空気を吹き出すと共に、前記調温室から空気を吸い出す空調機とを備え、
前記ローラモータと前記タイヤモータとは前記調温室の外部に配置され、前記ローラと前記タイヤモータに連結したタイヤとは前記調温室の内部に配置され、
前記空調機から前記調温室に吹き出された調温した空気が、前記ローラと前記タイヤモータに連結したタイヤとの回転に伴い、前記ローラの周面まわりと前記タイヤモータに連結したタイヤの周面まわりとを巡回する形状を、前記調温室は有していることを特徴とするタイヤ試験装置。
【請求項2】
請求項1記載のタイヤ試験装置であって、
前記調温室の内側壁と前記ローラの周面との間の隙間が、前記タイヤモータに連結したタイヤと面する側の反対側において絞り込まれた形状となり、前記調温室の内側壁と前記タイヤモータに連結したタイヤの周面との間の隙間が、前記ローラと面する側の反対側において絞り込まれた形状となるように、前記調温室の形状は設定されていることを特徴とするタイヤ試験装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のタイヤ試験装置であって、
前記タイヤモータに連結されていないタイヤを保管するタイヤ保管ケースを備え、
前記空調機は、前記調温室から吸い出した空気を、前記タイヤ保管ケース内に供給することを特徴とするタイヤ試験装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−257172(P2011−257172A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129826(P2010−129826)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)