説明

タイルカーペット

【課題】意匠性劣化という観点から従来不可能であった流し貼りした際のジョイント部の模様の違和感を軽減することにより、従来困難であったタイルカーペットの流し貼りを模様の違和感を惹起することなく可能にし、さらにはいわゆるデザイン貼りが可能となる等、タイルカーペットの施工時における意匠性を著しく向上させることができるタイルカーペットを提供する。
【解決手段】基布にパイルが形成され前記基布に熱可塑性樹脂からなるバッキング層を有する矩形のタイルカーペットであって、前記基布に一以上の色が着色されているスペースダイ糸を略直線状にタフトすることによりパイルが形成され、前記パイルによって現出している色のうち一以上の色のピッチ幅が250mm以上である複数のパイルが互いに略平行に形成されていること等を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布にパイルが形成され前記基布に熱可塑性樹脂からなるバッキング層を有する矩形のタイルカーペットであって、前記基布にスペースダイ糸からなるパイルが略直線状に一以上の色のピッチ幅が250mm以上である複数のパイルが互いに略平行に形成されていること等を特徴とし、意匠性劣化という観点から従来不可能であった流し貼りした際のジョイント部の模様の違和感を軽減することにより、従来困難であったタイルカーペットの流し貼りを模様の違和感を惹起することなく可能にし、さらにはいわゆるデザイン貼りが可能となる等、タイルカーペットの施工時における意匠性を著しく向上させることができるタイルカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルディング、一般家屋などのフロア用カーペットなどとして、所定形状に形成されたタイルカーペットが広く使用されている。タイルカーペットの需要の増大に伴い、市場からの意匠性の向上が強く望まれたため、プリントによる模様の付与、或いは予め色彩を付与した加工糸等によりパイルを形成することにより模様を付与したタイルカーペットが提供されている。特に2色以上の色彩を付与した加工糸により構成されるパイルにより、模様を付与したタイルカーペットは立体的な意匠が体現でき、独特な風合いを表現することができる。
【0003】
また、パイルを構成する糸についても、撚糸等を複数の色彩で着色したスペースダイ糸からなるパイルを植設することによって、微妙な色の変化を表現したり、或いは原着糸からなるパイルと前記スペースダイ糸からなるパイルとを併用することで、スペースダイ糸からなるパイルをより引き立たせるという手法も採られてきた。とりわけ直線状にパイルを植設するストレートタフトによって、スペースダイ糸からなるパイル、及びスペースダイ糸からなるパイルによって模様を付与されたタイルカーペットの模様・柄は高級感とシンプルさを兼ね備えているため需要が増え続けている。
【0004】
しかしながら、特にストレートタフトによりパイルを形成したタイルカーペットではパイルの植設方向と平行に敷設する、いわゆる流し貼りをした場合に、タイルカーペットの継ぎ目部分にスペースダイ糸の色彩のピッチやリピート間隔によって、当該スペースダイ糸に使用されている近似色の糸が重なることが多かった。その結果、当該近似色の糸が重なった部分のみが太い線状として視認されることとなり、模様に違和感が生じたり、或いはタイルカーペットの継ぎ目部分が目立ったりする問題が生じていた。また、スペースダイ糸からなるパイルと原着糸からなるパイルとが略直線状に設けられているタイルカーペットの場合、施工した際、当該タイルカーペットの継ぎ目部分に原着糸からなるパイル同士が付き合わせられる状態になると継ぎ目部分の原着糸からなるパイルの部分が他の部分より太く視認され違和感があり、美観上問題であった。
【0005】
そこで、上記問題点を解決することを目的として、タフテッドカーペットを裁断して成るタイルカーペットであって、タフト方向αのパイルPの打ち込み位置がタフト方向αに対して斜めに揺動しており、揺動距離Vが互いに隣接するパイル列間距離Kの1/4以上7/4以下の範囲であるタイルカーペット(特許文献1)やマルチフィラメント捲縮糸をループパイルとして用いたタイルカーペットであって、該カーペットに於けるステッチが12〜16個/インチ、パイルハイが2.0〜3.6mmであり、且つ該カーペットのゲージ方向に隣接するパイルの針穴中心の距離aが出来上がりカーペットの1インチあたりのパイル打ち込み本数をSTで示した場合に0mm≦a<2.54/ST×1/2mmの式を満足すことを特徴とするタイルカーペット(特許文献2)が提供されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−296545号公報
【特許文献2】特開2004−290571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る発明では、パイルの打ちこみがタフト方向に対し、斜め方向に揺動蛇行しているため、パイルを直線的に設けることが困難であり、パイルによる模様の表現が制限されることが多かった。
【0008】
また、特許文献2に係る発明では、パイルのステッチ、パイルハイのほかパイルの針穴中心の距離、及びインチあたりのパイル打ち込み本数が制限されるため、製造工程上、煩雑であることから更なる改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載の通りの基布にパイルが形成され前記基布に熱可塑性樹脂からなるバッキング層を有する矩形のタイルカーペットであって、前記基布に一以上の色が着色されているスペースダイ糸を略直線状にタフトすることによりパイルが形成され、前記パイルによって現出している色のうち一以上の色のピッチ幅が250mm以上である複数のパイルが互いに略平行に形成されていることを特徴とするタイルカーペットを提供するものである。ここで「前記パイルによって現出している色」とは、植設されたパイルを目視した場合に、目視可能な色をいい、パイル間に存在するために目視不可能な色は含まない。
【0010】
請求項2記載の発明は請求項1記載の特徴に加え、基布にスペースダイ糸からなるパイルの列が形成され、前記スペースダイ糸を着色した色彩と同系色の色彩を有する原着糸をタフトすることにより形成されたタフトの列が、前記スペースダイ糸からなるパイルの列の間に少なくとも一以上、かつ前記スペースダイ糸からなるパイルの列と略平行に形成されたことを特徴とするタイルカーペットを提供するものである。尚、本明細書において、同系色とは、色を構成する色相、彩度、明度のうち、色相が目視において近いものをいう。具体的にはタイルカーペットのパイルによって付された模様の場合、当該模様の全体において、違和感なく互いに一体の色として視認されるものをいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明タイルカーペットによれば、スペースダイ糸から構成されるパイルに現出している色のうち一以上の色のピッチ幅が250mm以上であるために、タイルカーペット1枚の中で同様な模様を有するパイルの部分がなくなり、多様性に富んだ模様を実現することができ、デザイン貼りに好適であることに加え、タイルカーペットを流し貼りした際に継ぎ目部分に同様な色のパイルの部分が重なることにより、当該継ぎ目部分の模様に違和感を生じせしめることを未然に防止することができる。
【0012】
また、本発明タイルカーペットによれば、パイルをスペースダイ糸からなるパイルと、原着糸からなるパイルとで構成することにより、意匠性を向上させることができると同時に、スペースダイ糸からなるパイルとともに、パイルを構成する原着糸に、前記スペースダイ糸を構成する色彩と同系色の色を使用することにより、単調かつ直線的に設けられたパイルであっても、模様は非直線的かつ多様性のある模様を体現させることができる。
【0013】
さらに、本発明タイルカーペットによれば、流し貼りによっても模様感を損なわないため、床面への意匠性付与の自由度が向上し、スペースダイ糸からなるパイル、又はスペースダイ糸からなるパイルと原着糸からなるパイルのコンビネーションにより、従来のタイルカーペットでは表現できなかった床面の意匠を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明タイルカーペットは、基布にパイルが形成され前記基布に熱可塑性樹脂からなるバッキング層を有する矩形のタイルカーペットであって、前記基布に一以上の色が着色されているスペースダイ糸を略直線状にタフトすることによりパイルが形成され、前記パイルによって現出している色のうち一以上の色のピッチ幅が250mm以上である複数のパイルが互いに略平行に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明タイルカーペットのパイルはタフト方向に略直線状にかつ各々の当該パイルが互いに略平行に設けられている。このように略直線状にパイルを設けることは、パイルのタフト方向を強調するシャープな模様を付与することができ、特に流し貼り、又は流し貼りと併用したデザイン貼りに好適である。
【0016】
ここで、デザイン貼りとは、タイルカーペットの有する模様の特徴を生かしながら、流し貼り、市松貼り、若しくはそれらを併用し、又は色調の異なるタイルカーペットを併設することにより、床面全体の意匠性を向上させることをいう。また、パイルをタフト方向に略直線状に設けることは製造工程上も簡易かつ生産効率が良いため、コスト面でも好ましいという利点がある。
【0017】
また、本発明タイルカーペットのパイルを構成するスペースダイ糸を染色している色数は特に限定はされず、少なくとも1色以上で染色していればよい。また、前記スペースダイ糸を染色している色数が2以上の場合には、各色のピッチは必ずしも同じである必要はない。
【0018】
例えば、本発明タイルカーペットのパイルを構成するスペースダイ糸が赤色と青色の2色で染色されているとすると、赤色の染色のピッチが500mm、青色の染色のピッチが300mmである場合が挙げられる。
【0019】
ここでピッチとは、スペースダイ糸からなるパイルに着色されている単色単位での繰り返しの間隔をいう。例えば、赤色の着色のピッチが500mmとはスペースダイ糸からなるパイルにおいて赤色に着色されている部分から、当該赤色に着色されている部分から他の赤色に着色されている箇所の最も近い部分までの長さが500mmということになる。
【0020】
また、本発明タイルカーペットを構成するパイルのスペースダイ糸を染色している色のピッチが250mm以上であることが必要である。スペースダイ糸の染色のピッチを250mm以上にすることにより、タイルカーペット1枚の中で同様な模様を有するパイルの部分がなくなり、多様性に富んだ模様を実現することができ、デザイン貼りに好適であることに加え、タイルカーペットを流し貼りした際に継ぎ目部分に同様な色のパイルの部分が重なることにより、当該継ぎ目部分の模様に違和感を生じせしめることを未然に防止することができる。
【0021】
また、本発明タイルカーペットの他の実施形態として、スペースダイ糸からなるパイルに加え、当該スペースダイ糸の染色に使用している色と同系色の原着糸からなるパイルを前記スペースダイ糸からなるパイルの列の間に少なくとも一以上設けてもよい。前記原着糸からなるパイルの列の数は一以上であれば特に限定はされない。また、タイルカーペットにスペースダイ糸からなるパイルの列の間に原着糸からなるパイルの列を有する部分があればよく、必ずしもスペースダイ糸からなるパイルの列がタイルカーペットの縁部に位置する必要はない。
【0022】
かかる原着糸からなるパイルを設けることにより、複数色からなるスペースダイ糸から構成されるパイルと、単色からなる原着糸から構成されるパイルとの併用により、スペースダイ糸からなるパイルの有するファジーな風合いと原着糸からなるパイルの有するステーブルな風合いとの相乗効果によって、意匠性を飛躍的に向上させることができる。
【0023】
また、本発明タイルカーペットにおいては、パイルを構成するスペースダイ糸に使用している色と同系色の原着糸からなるパイルを形成するため、スペースダイ糸からなるパイルで原着糸と同系色の部分が一体として視認されるため、従来の手法では表現できなかった直線的な模様の中に非直線的な模様部分を形成することができるため、意匠性が著しく向上する。また、スペースダイ糸を使用したパイルには当該スペースダイ糸に染色された色がランダムに現れる性質を有するため、上述のような原着糸から構成されているパイルを併設することにより、多様性に富んだ意匠を実現することができる。
【0024】
基布は公知の素材を用いることができ、例えばポリエステル不織布、及び織布、並びにポリポロヘッシャン織布等が挙げられる。また、当該基布1はSBR系、MBR系、PVC系ラテックス、及びEVA系のプレコート剤を塗布されたものでもよい。
【0025】
パイルを構成する加工糸の素材としては、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の公知の繊維を用いることができる。
【0026】
バッキング層は、公知のバッキング層を構成する素材から構成することができ、例えば、樹脂ペースト塩化ビニル系樹脂からなるPVCベース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体からなるEVAベース、APP樹脂からなるAPPベース、イソシアネート、及びポリオール等からなるPURベース等を用いることができる。また、寸法安定性等の物性安定性の見地より、慣用的に用いられているガラスマット、及びポリエステル織布、又は布織布をバッキング層の略中間の位置に設けてもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
基布(商品名:マリックス−ユニチカ株式会社製)に、スペースダイ糸(2620tex:1170tex/54f(ベージュ系色)×1450tex/68f(ベージュ系色)、ベージュ系色を4色使用し、各染色長は20インチ〜120インチ)、と原着糸(2640tex(ベージュ系色))をストレートタフトすることにより、パイルを形成した。前記パイルを形成した生機のバッキング層として約3mmのPVCのペースト樹脂からなる層を設け、かつ前記バッキング層の略中間の位置にポリエステル樹脂からなるネット(商品名:クレネット−倉敷紡績株式会社製)、及びガラス不織布を設けた後、打ち抜き機によってタフト方向に1000mm、タフト方向と直角方向に250mmに打ち抜くことにより本発明タイルカーペット(以下、本発明タイルカーペット1)を得た。当該本発明タイルカーペットの一例として図1に本発明タイルカーペット1の平面図を示す。図1に示すように、従来のタイルカーペットでは表現できなかった斬新な線状模様が得られた。
(実施例2)
実施例1より濃色のブラウン系染料で着色した原着糸、及びスペースダイ糸を使用したこと以外は実施例1と同様に本発明タイルカーペットを得た(本発明タイルカーペット2)。また、ライトグレー系染料で着色した原着糸、及びスペースダイ糸を使用したこと以外は実施例1と同様に本発明タイルカーペットを得た(本発明タイルカーペット3)。さらに、ダークグレー系染料で着色した原着糸、及びスペースダイ糸を使用したこと以外は実施例1と同様に本発明タイルカーペットを得た(本発明タイルカーペット4)。
さらに、前記本発明タイルカーペット1、2、3、及び4を床面にデザイン貼りを行い、その一例の平面図として図2に示した。
図2からも明らかなように、デザイン貼りをすることにより従来のタイルカーペットでは表現できなかった斬新な意匠を床面に付与できた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明タイルカーペットの一例の平面図を示す。
【図2】本発明タイルカーペット1乃至4を床面に一例のデザイン貼りを行った状態の平面図を示す。
【符号の説明】
【0029】
21:本発明タイルカーペット1
22:本発明タイルカーペット2
23:本発明タイルカーペット3
24:本発明タイルカーペット4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイルが形成され前記基布に熱可塑性樹脂からなるバッキング層を有する矩形のタイルカーペットであって、前記基布に一以上の色が着色されているスペースダイ糸を略直線状にタフトすることによりパイルが形成され、前記パイルによって現出している色のうち一以上の色のピッチ幅が250mm以上である複数のパイルが互いに略平行に形成されていることを特徴とするタイルカーペット。
【請求項2】
基布にスペースダイ糸からなるパイルの列が形成され、前記スペースダイ糸を着色した色彩と同系色の色彩を有する原着糸をタフトすることにより形成されたタフトの列が、前記スペースダイ糸からなるパイルの列の間に少なくとも一以上、かつ前記スペースダイ糸からなるパイルの列と略平行に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のタイルカーペット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−86482(P2008−86482A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269523(P2006−269523)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】