タカン空中線方位監視装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタカン装置空中線の方位を監視する方位監視装置に関し、特に、電子走査式空中線の方位監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】タカン装置は、磁北を基準として航空機からみたタカン局の方位及び距離を提供する装置であり、タカンの方位信号(タカン信号)は、数1で表すことができる。
【0003】
【数1】
ここで、ω=2πf、f;15Hz、A;15Hzの変調度、B;135Hzの変調度である。
【0004】タカン装置の方位情報は、基準バースト(北方位、40度方位)と可変方位信号(15Hz、135Hz)から得られ、図9に示すように、タカン方位の基準ではt=0(0度)の際可変方位信号の最大値が東を向いたとき北方位基準バーストを送信する。この際、南にいる航空機(磁北を示す;タカン方位は、航空機からみた方位になるため反対方位を示す)はで、15Hz可変方位信号の上昇方向のゼロクロス点に北方位基準バーストが受信される。測角は北方位基準バーストから反時計方向に回り、15Hz可変方位信号の上昇方向のゼロクロス点までの電気角で表す。従って、方位角は、0度を示す。
【0005】タカン北方位基準バーストと40度方位基準バーストとの関係は、北方位基準バーストが15Hz可変方位信号の電気角0度において送信され、40度方位基準信号が15Hz可変方位信号の電気角40度(135Hz)毎に送信される。15Hz可変方位信号と135Hz可変方位信号との関係は、t=0において同位相でスタートし、15Hzの測角精度に対して9倍の精度が得られる。このため、15Hz可変方位信号に対して135Hz可変方位信号はバーニアの機能を有する。これによって、タカン局の北側に位置する航空機は方位180度を示し、東側に位置する航空機は270度を示す。同様に西側は90度をそれぞれ示す。
【0006】以上がタカン装置の原理であり、次に、タカン装置の方位監視について説明する。
【0007】図6及び図7は、従来の方位監視装置を説明するため図である。図6を参照して、図6(a)に示す電子走査式タカン空中線41は、円筒型空中線でその円周に沿って36個のアレー型空中線41aが配置されており、アレー型空中線41aはモニタピックアップ1を介して信号処理部42に接続されている。そして、信号処理部42は監視回路26に接続されている。
【0008】電子走査式タカン空中線41の方位監視を行う際には、従来インテグラルモニタ方式が採用されており、これによって、36方位の監視を行っている。このインテグラルモニタ方式は、図8に示すように、アレー型空中線41aのパターン特性と等位相面に対する行路差との位相補正を行って合成し、これによって、遠方界モニタ空中線で受信する電界と等価な信号を生成して、方位監視を行う方式である。
【0009】図6(b)を参照して、具体的には、36個のアレー型空中線41に結合されたモニタピックアップ1でそれぞれ信号をピックアップして、ピックアップ信号として切替器21に与える。切替器21ではカードモジュール22からの制御信号に応じて監視したい方位を中心としてピックアップ信号のうち10個を選択して選択信号として出力する。位相器23ではカードモジュール22からの制御信号に応じて位相制御を行い、この結果、選択信号は等位相面に対する行路差の位相補正が行われた後、合成器24で信号加算されて合成信号として出力される。そして、合成信号は検波器25で検波され検波信号として監視回路26に与えられる。
【0010】図7を参照して、図7(a)には監視回路の構成が示されており、検波信号aは可変方位信号(15Hz及び135Hz)を生成するための第1の生成回路(15Hzフィルタ31及び135Hzフィルタ35)と基準信号(北方位及び40度方位)を生成する第2の生成回路回路(北方位基準バースト検出33及び40度方位基準バースト検出37)に与えられる。基準信号(北方位基準信号及び40度方位基準信号)はそれぞれ相対位相差検出回路34及び38に与えられ、可変方位信号(15Hz、135Hz)は基準信号との位相差をゼロにするためそれぞれ位相シフタ32及び36で位相シフトされた後相対位相差検出34回路及び38に入力される。
【0011】図6(b)も参照して、タカン装置に故障がない場合には、相対位相差検出回路34及び38の方位エラーは、最小値(0.2度以下)に調整されている。一方、タカン装置に故障が発生すると、相対位相差検出回路34及び38の出力は、方位角の変移に応じた方位エラーを発生し、方位エラーが1.0度以上になるとタカン装置の異常を検出して、タカン装置の停波を行う。
【0012】相対位相差検出回路34及び38の出力は基準信号と可変方位信号の上昇におけるゼロクロス点の時間差とのパルスであり、このパルス幅と方位エラーとの関係はパルス幅185μs=1度である。
【0013】相対位相差検出回路34及び38の出力パルス(方位エラー)は、方位エラー計数回路39に与えられ、方位エラー計数回路39で方位エラーの度数が1秒間計数平均される。そして、計数平均結果が1度以上か又は1度以下かを判定回路40で判定して、1度以上であると、制御・表示回路41はタカン装置の停波及びアラーム表示を行う。
【0014】この方法を用いて、1周の監視が36方位で順次行われる。この所要時間は、36秒である。しかしながら、アラーム検出時間は、4秒の制限があるため、50度置きに監視することによって速く1周させるようにしているが、最終的には、36方位のすべてを監視している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のタカン空中線の方位監視装置では、信号処理部が36個のピックアップの信号を切替る切替器、10個の位相器、切替器と位相器とを制御するカードモジュール、及び10個の位相器出力を合成する合成器を備える関係上、使用周波数が1GHz帯であることを考慮すると、高周波モジュールの数量も多く、回路構成が複雑で大がかりになるという問題点がある。
【0016】さらに、従来のタカン空中線監視装置では、監視回路が可変方位信号(15Hzと135Hz)及び基準方位信号(北方位と40度方位)を生成するための生成回路、相対位相差検出回路、及び方位エラー計数回路を備えており、アナログ信号を処理する回路が多く、この結果、回路構成が複雑で大がかりになるという問題点がある。
【0017】本発明の目的は小型・軽量の方位監視装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明によるタカン空中線方位監視装置は、可変方位信号(15Hz、135Hz)の位相変化と搬送波の位相変化の監視する。
【0019】可変方位信号の位相変化を監視する際には、36個のモニタピックアップ信号(ピックアップ信号)を検波してピークホールド回路でアレー型空中線から送信される送信レベルを検出して、デジタル信号処理器で離散的フーリエ変換(DFT)又は高速フーリエ変換(FFT)処理で波形解析(15Hz及び135Hzの変調度、位相)を行って、ベクトル合成するための位相補正を行いつつ0〜360度の等分割(等しい角度)について合成し、0〜360度のデータ値から合成波について離散的フーリエ変換(DFT)又は高速フーリエ変換(FFT)処理による波形解析(15Hz及び135Hzの変調度、位相)を行い、位相の変化を監視する。
【0020】離散的フーリエ変換(DFT)又は高速フーリエ変換(FFT)のサンプリングのタイミングは、北方位基準バーストを発生させるための15Hz基準トリガをスタートとして、等間隔に、例えば、2度毎にサンプリングを15Hzの1周期分行う。これによって、可変方位信号のゼロに北基準方位バーストを合わせることができる。
【0021】搬送波の位相変化を監視する際には、36個のモニタピックアップ信号をローカル信号でミキシングした後、位相検波器で位相の変化を監視する。
【0022】なお、ケーブル等の機械的な物の故障によって生じる搬送波の位相変化は、極めて少なく一般的には搬送波の位相変化は監視しない(つまり、搬送波の位相変化はおこなわなくてもよい)。また、変調等に用いられる能動素子の故障は、可変方位信号にも現れるので可変方位信号の監視で行うのが一般的である。
【0023】上述のように、アレー型空中線の送信レベルをサンプリングしてアナログ/デジタル変換した後の処理は、信号処理器によるプログラム処理・計算になるため、高周波モジュール(切換器、複数の位相器及び合成器)の必要がない。
【0024】信号処理器のプログラムには、セルフ機能が盛り込むことができ、このため、整備員は、容易に信号処理器の動作確認ができる。
【0025】前述のように、搬送波の位相変化の監視は、故障が極めて少ないことから省略することも可能であるが、ローカル発振器周波数を搬送波周波数の付近としてミキシングすると、10MHz以下の周波数で位相検波回路が構成できる。周波数が低いため、特別の技術は必要なく回路構成も容易で小型化できる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下本発明について図面を参照して説明する。
【0027】図1を参照して、本発明によるタカン空中線の方位監視装置は、可変方位信号の監視を行う第1の監視部(図1(a))と搬送波の監視を行う第2の監視部(図1(b))とを備えており、第1の監視部は可変方位信号の位相変化を監視し、第2の監視部は搬送波の位相変化を監視する。
【0028】第1の監視部は、36個の検波器2、36個のピークホールド回路3、36個のサンプリング回路4、36個のデータラッチ回路5、チップセレクト回路6、信号処理器7、及び制御・表示回路8を備えており、検波器2では各モニタピックアップ1からのピックアップ信号を検波してそれぞれ検波信号を生成する。ピークホールド回路3ではそれぞれ検波信号をピークホールドしてピークホールド信号を出力する。サンプリング回路4ではそれぞれピークホールド信号を所定のサンプル周期でサンプリングしてアナログ/デジタル変換してデジタル信号として出力する。データラッチ回路5はチップイネーブル信号に応じてデジタル信号をデータラッチしてラッチ信号を出力する。チップセレクト回路6ではデータラッチ回路にチップイネーブル信号を送出する。信号処理器7は後述するようにしてラッチ信号を信号処理して信号処理結果を出力する。そして、制御・表示回路8では信号処理結果を表示するとともに信号処理結果に応じてサンプリング回路4及びチップセレクト回路6を制御する。
【0029】一方、第2の監視部は、36個のミキサ11、ローカル発振器12、位相検出器13、判定回路16、及び制御・表示回路17を備えており、ミキサ11はローカル発振器12からのローカル信号に応じてピックアップ信号をミキシングしてそれぞれミキシング信号を発生する。位相検出器13は位相基準回路14及び36個の位相検波器15を備えており、位相基準回路14は複数のミキシング信号のうち一つを受けこのミキシング信号を基準位相信号とする。位相検波回路15では基準位相信号に応じてそれぞれミキシング信号から位相検出を行い位相検出信号を出力する。判定回路16では位相検出信号で示す位相検出結果がが予め定められた規定値以下であるか否かを判定して判定信号を出力する。そして、制御・表示回路17では判定信号に応じて判定結果を表示する。
【0030】ここで、図2も参照して、本発明によるタカン空中線の監視装置の動作について説明する。
【0031】一般に、アレー型空中線の放射電界は、数2に示される。
【0032】
【数2】
ここで、ω=2πf、f;15Hz、ai ;15Hzの変調度、bi ;135Hzの変調度、φi ;磁北からアレー型空中線の置かれた角度である。
【0033】アレー型空中線からモニタピックアップ1によって結合された送信出力は、前述のように、検波器(直線検波器)3で検波され、ピークホールド回路3へ入力される。ピークホールド回路3は、送信パルス(検波信号)が入力された際瞬時(1μs以下)に放電し入力パルスのピークをホールドする。これによって、常に入力パルスのピークに対応したピークホールド信号が得られる。
【0034】サンプリング回路4では信号処理器16からの所定周期のサンプリングパルスに応じてピークホールド信号をサンプリングしてアナログ/デジタル変換し、デジタル信号を出力する。データラッチ回路5ではチップイネーブル信号によってデジタル信号の更新及び信号処理器17へのデジタル信号の送出を行い、デジタル信号はデータとして信号処理器17に取り込まれる。つまり、信号処理器7は、36個のデータを第1乃至第36のデータとして順次取り込むことになる。
【0035】図1(a)に示すように、信号処理器17には北方位基準バーストを発生させるための15Hz基準トリガが与えられており、これによって、信号処理器17は15Hz基準トリガを用いてサンプリングのタイミングを決定する。つまり、北方位基準バーストの位置がサンプリングのスタート即ち電気角ゼロに設定され、サンプリングの終わりは、次の15Hz基準トリガの1つ前までとされる。即ち、15Hzの電気角360度を等間隔に一定周期(一定の度数;例えば、2度、基本的には、135Hzの2倍以上の周波数360/(9*2)=20度からタカンの送信パルスの平均周期1/2700/185 E−6=2度、即ち20〜2度の間の一定周期)でサンプリングを行う。
【0036】信号処理器17は、第1乃至第36のデータの波形解析(直流分、15Hz及び135Hzの変調度、位相)を行い送信波形(数3)を算出する(ステップ1)。
【0037】
【数3】
ここにj;モニタピックアップの番号、Dj ;直流分(標準;1.0)である。
【0038】次に、信号処理器17では、K個の波形合成を行う(ステップ2)。
【0039】図3(a)も参照して、空中線の半径R、k;合成する左右の数、Pk ;k番の半波長空中線のパターンファクタ、λ;波長、合成数を例えば11(基本的には、3〜17)とすると、合成式E0 は、数4になる(例えば、図3(b)において、n=−2の場合、角度は−2×10°=−20°である。−20°=−20×π/180(rad)であり、E0 は−5〜0〜5のベクトル合成から求まる。なお、ysinψの信号は左右が打ち消し合い、基本的にはゼロとなる)。これをtの関数(0〜360度)として1度又は2度ステップで計算する。
【0040】
【数4】
この合成を36方位について計算する。そして、E0 ,E1 ,…,E35を求める。
【0041】E0 〜E35について0〜360度の等周期データーが得られたので、これを波形解析(直流分、15Hz変調度、135Hz変調度、位相)し、解析(数5)を求める(ステップ3)。
【0042】
【数5】
ここにl;36方位に対応する番号、Dl ;直流分(標準;1.0)である。
【0043】これによって、正常時の可変方位信号の位相が求まり、これを一旦格納するとともに(ステップ4)位相基準値格納エリア(図示せず)に格納する(ステップ5)。運用の際、時々刻々変化する方位エラーデータ(位相)は、位相基準値と比較され(ステップ6)、その比較結果が1度以上であると判定されると(ステップ7)、アラームを制御・表示回路へ比較結果を出力する。
【0044】次に、図1(a)を参照して、第2の監視部について説明する。
【0045】ピックアップ信号(搬送波信号)は、本来、等位相(±5度以下)で送信されており、故障等で機械的な長さが変わると、位相差が生じる。ピックアップ信号(搬送波信号:1GHz帯)は、ミキサ11で10MHz以下の中間周波数信号とされた後、前述のように1つの中間周波数信号の位相の基準として位相検波される。つまり、位相基準回路14から基準位相信号と中間周波数信号とを受けて位相検波回路15はそれぞれ入力信号(中間周波数信号)の位相差に応じた直流出力を出力する。
【0046】例えば、位相検波回路は、位相差が0度の場合DCOV、位相差が90度の場合DC5V、位相差が−90度の場合DC−5V等のS字カーブ特性を有しており、判定回路16では各直流出力が規格値(例えば、±20度)以下であるか否かを判定して、直流出力が規格値以上であると、制御・表示回路17にアラームを出力する。
【0047】図1を参照して、上述の信号処理器7として、例えば、マイクロコンピュータが用いられており、このマイクロコンピュータは、CPU,ROM,RAM,シリアル・インタフェース、タイマ、割り込みコントローラ等を備えている。そして、処理速度に応じてマイクロコンピュータの数は増加する。
【0048】データラッチ回路5からのデータは、信号処理器7の入出力ポートを通して取り込まれる。サンプリング用パルスは、例えば、タイマにプログラムさせ、プログラムは、リードオンリーメモリ(ROM)に書き込まれている。そして、演算及び処理には、ランダムアクセスメモリ(RAM)が使用する。
【0049】ここで、離散的フーリエ変換(DFT)による波形解析の条件と計算式を数6〜数12に示す。ここで、条件:m;分割数、n;n次の高調波(タカン装置の場合には、基本波15Hzと9次高調波135Hz)、A0 ;直流分、an ;n次高調波のsin分、bn ;n次高調波のcos分、x;m分割したデータの番号1〜mである。
【0050】
【数6】
【0051】
【数7】
【0052】
【数8】
【0053】
【数9】
【0054】
【数10】
【0055】
【数11】
【0056】
【数12】
なお、計算された結果は、1秒間の平均化を計る。
【0057】上述のような条件において、第1の監視部では検波器2として直線検波で1GHz帯の検波が可能な検波器が用いられる。ピークホールド回路3はガウス波形のパルス幅1〜10μs、パルス振幅2〜10Vに対応してピークをコンデンサに充電させる。ホールド時間は10ms以上である。パルス入力による放電はパルスの立上り50%点以下で行いパルス幅1μs以下とする。
【0058】サンプリング回路4はサンプリングパルスの入力毎にアナログ/デジタル変換を行う。なお、入力0〜5Vで出力8bit以上である。データラッチ回路5としては3ステートのD−タイプが用いられ、チップセレクト回路6としてシフトレジスタが用いられる。
【0059】信号処理器7は16/8bitのマイクロコンピュータであり、クロック周波数5MHzであり、セルフテスト用外部入力パルスを検知してプログラムのセルフテストを行い、結果を外部に表示する信号を発生する。
【0060】一方、第2の監視部では、位相検波器15として10MHz以下の位相検波器が用いられ、この位相検波器では入力2〜5Vで出力S字カーブ位相差が0度でDCOV、90度でDC5V、−90度でDC−5Vとなる位相弁別方法が使用される。
【0061】次に、方位0度のアレー型空中線が故障して信号が無くなった場合の信号処理器7によるシュミュレーション結果を図4に示す。この場合、0度方向以外は、15Hz変調度21.0%、135Hz変調度23.7%として計算する。
【0062】図4に示す135Hz・方位エラーの特性は、0度に対して点対象であり、0度に故障があることがわかる。また、方位エラーも規格値1°以上になっていることがわかる。
【0063】図5を参照して、第2の監視部の他の例について説明する。図示の例では図1(b)に示す例に対して、ミキサ11、ローカル発振器12、及び位相基準回路13が除かれている。図示の例では、位相検波器18は1GHz帯のピックアップ信号を入力として、他のピックアップ信号(図示の例では第36番目のピックアップ信号)を基準信号として位相検波を行う。
【0064】図5に示す例では、高周波技術を要するが構成の簡素化を図ることができる。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、高度技術及び調整テクニックを必要とする1GHz帯の高周波モジュールを使用することなく、信号波の解析に(離散的)フーリエ変換を用いて信号波の合成にベクトル計算を導入するようにしたから、容易に方位エラーの算出ができるようになるという効果がある。つまり、高周波モジュールを大幅に削減できるばかりでなく、デジタル信号処理によって回路構成が簡素化できるという効果がある。
【0066】さらに、本発明では、従来アナログ回路で行っていた調整等の保守をなくすことができ、しかも、デジタル信号処理(信号処理器)にプログラムのセルフテスト機能を装備させているから、保守性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるタカン空中線方位監視装置の一例を示すブロック図であり、(a)は第1の監視部を示す図、(b)は第2の監視部を示す図である。
【図2】図1に示す信号処理器の動作を説明するための図である。
【図3】信号合成を説明するための図である。
【図4】図1に示す信号処理器による故障時のシュミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明による第2の監視部の他の例を示すブロック図である。
【図6】従来のタカン空中線方位監視装置を説明するための図である。
【図7】図6に示す監視装置を説明するための図である。
【図8】インテグラルモニタ方式を説明するための図である。
【図9】タカンの基準バーストと可変方位信号との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
1 モニタピックアップ
2 検波器
3 ピークホールド回路
4 サンプリング回路
5 データラッチ回路
6 チップセレクト回路
7 信号処理器
8 制御・表示回路
11 ミキサ
12 ローカル発振器
13 位相検出器
14 位相基準回路
15 位相検波回路
16 判定回路
17 制御・表示回路
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタカン装置空中線の方位を監視する方位監視装置に関し、特に、電子走査式空中線の方位監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】タカン装置は、磁北を基準として航空機からみたタカン局の方位及び距離を提供する装置であり、タカンの方位信号(タカン信号)は、数1で表すことができる。
【0003】
【数1】
ここで、ω=2πf、f;15Hz、A;15Hzの変調度、B;135Hzの変調度である。
【0004】タカン装置の方位情報は、基準バースト(北方位、40度方位)と可変方位信号(15Hz、135Hz)から得られ、図9に示すように、タカン方位の基準ではt=0(0度)の際可変方位信号の最大値が東を向いたとき北方位基準バーストを送信する。この際、南にいる航空機(磁北を示す;タカン方位は、航空機からみた方位になるため反対方位を示す)はで、15Hz可変方位信号の上昇方向のゼロクロス点に北方位基準バーストが受信される。測角は北方位基準バーストから反時計方向に回り、15Hz可変方位信号の上昇方向のゼロクロス点までの電気角で表す。従って、方位角は、0度を示す。
【0005】タカン北方位基準バーストと40度方位基準バーストとの関係は、北方位基準バーストが15Hz可変方位信号の電気角0度において送信され、40度方位基準信号が15Hz可変方位信号の電気角40度(135Hz)毎に送信される。15Hz可変方位信号と135Hz可変方位信号との関係は、t=0において同位相でスタートし、15Hzの測角精度に対して9倍の精度が得られる。このため、15Hz可変方位信号に対して135Hz可変方位信号はバーニアの機能を有する。これによって、タカン局の北側に位置する航空機は方位180度を示し、東側に位置する航空機は270度を示す。同様に西側は90度をそれぞれ示す。
【0006】以上がタカン装置の原理であり、次に、タカン装置の方位監視について説明する。
【0007】図6及び図7は、従来の方位監視装置を説明するため図である。図6を参照して、図6(a)に示す電子走査式タカン空中線41は、円筒型空中線でその円周に沿って36個のアレー型空中線41aが配置されており、アレー型空中線41aはモニタピックアップ1を介して信号処理部42に接続されている。そして、信号処理部42は監視回路26に接続されている。
【0008】電子走査式タカン空中線41の方位監視を行う際には、従来インテグラルモニタ方式が採用されており、これによって、36方位の監視を行っている。このインテグラルモニタ方式は、図8に示すように、アレー型空中線41aのパターン特性と等位相面に対する行路差との位相補正を行って合成し、これによって、遠方界モニタ空中線で受信する電界と等価な信号を生成して、方位監視を行う方式である。
【0009】図6(b)を参照して、具体的には、36個のアレー型空中線41に結合されたモニタピックアップ1でそれぞれ信号をピックアップして、ピックアップ信号として切替器21に与える。切替器21ではカードモジュール22からの制御信号に応じて監視したい方位を中心としてピックアップ信号のうち10個を選択して選択信号として出力する。位相器23ではカードモジュール22からの制御信号に応じて位相制御を行い、この結果、選択信号は等位相面に対する行路差の位相補正が行われた後、合成器24で信号加算されて合成信号として出力される。そして、合成信号は検波器25で検波され検波信号として監視回路26に与えられる。
【0010】図7を参照して、図7(a)には監視回路の構成が示されており、検波信号aは可変方位信号(15Hz及び135Hz)を生成するための第1の生成回路(15Hzフィルタ31及び135Hzフィルタ35)と基準信号(北方位及び40度方位)を生成する第2の生成回路回路(北方位基準バースト検出33及び40度方位基準バースト検出37)に与えられる。基準信号(北方位基準信号及び40度方位基準信号)はそれぞれ相対位相差検出回路34及び38に与えられ、可変方位信号(15Hz、135Hz)は基準信号との位相差をゼロにするためそれぞれ位相シフタ32及び36で位相シフトされた後相対位相差検出34回路及び38に入力される。
【0011】図6(b)も参照して、タカン装置に故障がない場合には、相対位相差検出回路34及び38の方位エラーは、最小値(0.2度以下)に調整されている。一方、タカン装置に故障が発生すると、相対位相差検出回路34及び38の出力は、方位角の変移に応じた方位エラーを発生し、方位エラーが1.0度以上になるとタカン装置の異常を検出して、タカン装置の停波を行う。
【0012】相対位相差検出回路34及び38の出力は基準信号と可変方位信号の上昇におけるゼロクロス点の時間差とのパルスであり、このパルス幅と方位エラーとの関係はパルス幅185μs=1度である。
【0013】相対位相差検出回路34及び38の出力パルス(方位エラー)は、方位エラー計数回路39に与えられ、方位エラー計数回路39で方位エラーの度数が1秒間計数平均される。そして、計数平均結果が1度以上か又は1度以下かを判定回路40で判定して、1度以上であると、制御・表示回路41はタカン装置の停波及びアラーム表示を行う。
【0014】この方法を用いて、1周の監視が36方位で順次行われる。この所要時間は、36秒である。しかしながら、アラーム検出時間は、4秒の制限があるため、50度置きに監視することによって速く1周させるようにしているが、最終的には、36方位のすべてを監視している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のタカン空中線の方位監視装置では、信号処理部が36個のピックアップの信号を切替る切替器、10個の位相器、切替器と位相器とを制御するカードモジュール、及び10個の位相器出力を合成する合成器を備える関係上、使用周波数が1GHz帯であることを考慮すると、高周波モジュールの数量も多く、回路構成が複雑で大がかりになるという問題点がある。
【0016】さらに、従来のタカン空中線監視装置では、監視回路が可変方位信号(15Hzと135Hz)及び基準方位信号(北方位と40度方位)を生成するための生成回路、相対位相差検出回路、及び方位エラー計数回路を備えており、アナログ信号を処理する回路が多く、この結果、回路構成が複雑で大がかりになるという問題点がある。
【0017】本発明の目的は小型・軽量の方位監視装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明によるタカン空中線方位監視装置は、可変方位信号(15Hz、135Hz)の位相変化と搬送波の位相変化の監視する。
【0019】可変方位信号の位相変化を監視する際には、36個のモニタピックアップ信号(ピックアップ信号)を検波してピークホールド回路でアレー型空中線から送信される送信レベルを検出して、デジタル信号処理器で離散的フーリエ変換(DFT)又は高速フーリエ変換(FFT)処理で波形解析(15Hz及び135Hzの変調度、位相)を行って、ベクトル合成するための位相補正を行いつつ0〜360度の等分割(等しい角度)について合成し、0〜360度のデータ値から合成波について離散的フーリエ変換(DFT)又は高速フーリエ変換(FFT)処理による波形解析(15Hz及び135Hzの変調度、位相)を行い、位相の変化を監視する。
【0020】離散的フーリエ変換(DFT)又は高速フーリエ変換(FFT)のサンプリングのタイミングは、北方位基準バーストを発生させるための15Hz基準トリガをスタートとして、等間隔に、例えば、2度毎にサンプリングを15Hzの1周期分行う。これによって、可変方位信号のゼロに北基準方位バーストを合わせることができる。
【0021】搬送波の位相変化を監視する際には、36個のモニタピックアップ信号をローカル信号でミキシングした後、位相検波器で位相の変化を監視する。
【0022】なお、ケーブル等の機械的な物の故障によって生じる搬送波の位相変化は、極めて少なく一般的には搬送波の位相変化は監視しない(つまり、搬送波の位相変化はおこなわなくてもよい)。また、変調等に用いられる能動素子の故障は、可変方位信号にも現れるので可変方位信号の監視で行うのが一般的である。
【0023】上述のように、アレー型空中線の送信レベルをサンプリングしてアナログ/デジタル変換した後の処理は、信号処理器によるプログラム処理・計算になるため、高周波モジュール(切換器、複数の位相器及び合成器)の必要がない。
【0024】信号処理器のプログラムには、セルフ機能が盛り込むことができ、このため、整備員は、容易に信号処理器の動作確認ができる。
【0025】前述のように、搬送波の位相変化の監視は、故障が極めて少ないことから省略することも可能であるが、ローカル発振器周波数を搬送波周波数の付近としてミキシングすると、10MHz以下の周波数で位相検波回路が構成できる。周波数が低いため、特別の技術は必要なく回路構成も容易で小型化できる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下本発明について図面を参照して説明する。
【0027】図1を参照して、本発明によるタカン空中線の方位監視装置は、可変方位信号の監視を行う第1の監視部(図1(a))と搬送波の監視を行う第2の監視部(図1(b))とを備えており、第1の監視部は可変方位信号の位相変化を監視し、第2の監視部は搬送波の位相変化を監視する。
【0028】第1の監視部は、36個の検波器2、36個のピークホールド回路3、36個のサンプリング回路4、36個のデータラッチ回路5、チップセレクト回路6、信号処理器7、及び制御・表示回路8を備えており、検波器2では各モニタピックアップ1からのピックアップ信号を検波してそれぞれ検波信号を生成する。ピークホールド回路3ではそれぞれ検波信号をピークホールドしてピークホールド信号を出力する。サンプリング回路4ではそれぞれピークホールド信号を所定のサンプル周期でサンプリングしてアナログ/デジタル変換してデジタル信号として出力する。データラッチ回路5はチップイネーブル信号に応じてデジタル信号をデータラッチしてラッチ信号を出力する。チップセレクト回路6ではデータラッチ回路にチップイネーブル信号を送出する。信号処理器7は後述するようにしてラッチ信号を信号処理して信号処理結果を出力する。そして、制御・表示回路8では信号処理結果を表示するとともに信号処理結果に応じてサンプリング回路4及びチップセレクト回路6を制御する。
【0029】一方、第2の監視部は、36個のミキサ11、ローカル発振器12、位相検出器13、判定回路16、及び制御・表示回路17を備えており、ミキサ11はローカル発振器12からのローカル信号に応じてピックアップ信号をミキシングしてそれぞれミキシング信号を発生する。位相検出器13は位相基準回路14及び36個の位相検波器15を備えており、位相基準回路14は複数のミキシング信号のうち一つを受けこのミキシング信号を基準位相信号とする。位相検波回路15では基準位相信号に応じてそれぞれミキシング信号から位相検出を行い位相検出信号を出力する。判定回路16では位相検出信号で示す位相検出結果がが予め定められた規定値以下であるか否かを判定して判定信号を出力する。そして、制御・表示回路17では判定信号に応じて判定結果を表示する。
【0030】ここで、図2も参照して、本発明によるタカン空中線の監視装置の動作について説明する。
【0031】一般に、アレー型空中線の放射電界は、数2に示される。
【0032】
【数2】
ここで、ω=2πf、f;15Hz、ai ;15Hzの変調度、bi ;135Hzの変調度、φi ;磁北からアレー型空中線の置かれた角度である。
【0033】アレー型空中線からモニタピックアップ1によって結合された送信出力は、前述のように、検波器(直線検波器)3で検波され、ピークホールド回路3へ入力される。ピークホールド回路3は、送信パルス(検波信号)が入力された際瞬時(1μs以下)に放電し入力パルスのピークをホールドする。これによって、常に入力パルスのピークに対応したピークホールド信号が得られる。
【0034】サンプリング回路4では信号処理器16からの所定周期のサンプリングパルスに応じてピークホールド信号をサンプリングしてアナログ/デジタル変換し、デジタル信号を出力する。データラッチ回路5ではチップイネーブル信号によってデジタル信号の更新及び信号処理器17へのデジタル信号の送出を行い、デジタル信号はデータとして信号処理器17に取り込まれる。つまり、信号処理器7は、36個のデータを第1乃至第36のデータとして順次取り込むことになる。
【0035】図1(a)に示すように、信号処理器17には北方位基準バーストを発生させるための15Hz基準トリガが与えられており、これによって、信号処理器17は15Hz基準トリガを用いてサンプリングのタイミングを決定する。つまり、北方位基準バーストの位置がサンプリングのスタート即ち電気角ゼロに設定され、サンプリングの終わりは、次の15Hz基準トリガの1つ前までとされる。即ち、15Hzの電気角360度を等間隔に一定周期(一定の度数;例えば、2度、基本的には、135Hzの2倍以上の周波数360/(9*2)=20度からタカンの送信パルスの平均周期1/2700/185 E−6=2度、即ち20〜2度の間の一定周期)でサンプリングを行う。
【0036】信号処理器17は、第1乃至第36のデータの波形解析(直流分、15Hz及び135Hzの変調度、位相)を行い送信波形(数3)を算出する(ステップ1)。
【0037】
【数3】
ここにj;モニタピックアップの番号、Dj ;直流分(標準;1.0)である。
【0038】次に、信号処理器17では、K個の波形合成を行う(ステップ2)。
【0039】図3(a)も参照して、空中線の半径R、k;合成する左右の数、Pk ;k番の半波長空中線のパターンファクタ、λ;波長、合成数を例えば11(基本的には、3〜17)とすると、合成式E0 は、数4になる(例えば、図3(b)において、n=−2の場合、角度は−2×10°=−20°である。−20°=−20×π/180(rad)であり、E0 は−5〜0〜5のベクトル合成から求まる。なお、ysinψの信号は左右が打ち消し合い、基本的にはゼロとなる)。これをtの関数(0〜360度)として1度又は2度ステップで計算する。
【0040】
【数4】
この合成を36方位について計算する。そして、E0 ,E1 ,…,E35を求める。
【0041】E0 〜E35について0〜360度の等周期データーが得られたので、これを波形解析(直流分、15Hz変調度、135Hz変調度、位相)し、解析(数5)を求める(ステップ3)。
【0042】
【数5】
ここにl;36方位に対応する番号、Dl ;直流分(標準;1.0)である。
【0043】これによって、正常時の可変方位信号の位相が求まり、これを一旦格納するとともに(ステップ4)位相基準値格納エリア(図示せず)に格納する(ステップ5)。運用の際、時々刻々変化する方位エラーデータ(位相)は、位相基準値と比較され(ステップ6)、その比較結果が1度以上であると判定されると(ステップ7)、アラームを制御・表示回路へ比較結果を出力する。
【0044】次に、図1(a)を参照して、第2の監視部について説明する。
【0045】ピックアップ信号(搬送波信号)は、本来、等位相(±5度以下)で送信されており、故障等で機械的な長さが変わると、位相差が生じる。ピックアップ信号(搬送波信号:1GHz帯)は、ミキサ11で10MHz以下の中間周波数信号とされた後、前述のように1つの中間周波数信号の位相の基準として位相検波される。つまり、位相基準回路14から基準位相信号と中間周波数信号とを受けて位相検波回路15はそれぞれ入力信号(中間周波数信号)の位相差に応じた直流出力を出力する。
【0046】例えば、位相検波回路は、位相差が0度の場合DCOV、位相差が90度の場合DC5V、位相差が−90度の場合DC−5V等のS字カーブ特性を有しており、判定回路16では各直流出力が規格値(例えば、±20度)以下であるか否かを判定して、直流出力が規格値以上であると、制御・表示回路17にアラームを出力する。
【0047】図1を参照して、上述の信号処理器7として、例えば、マイクロコンピュータが用いられており、このマイクロコンピュータは、CPU,ROM,RAM,シリアル・インタフェース、タイマ、割り込みコントローラ等を備えている。そして、処理速度に応じてマイクロコンピュータの数は増加する。
【0048】データラッチ回路5からのデータは、信号処理器7の入出力ポートを通して取り込まれる。サンプリング用パルスは、例えば、タイマにプログラムさせ、プログラムは、リードオンリーメモリ(ROM)に書き込まれている。そして、演算及び処理には、ランダムアクセスメモリ(RAM)が使用する。
【0049】ここで、離散的フーリエ変換(DFT)による波形解析の条件と計算式を数6〜数12に示す。ここで、条件:m;分割数、n;n次の高調波(タカン装置の場合には、基本波15Hzと9次高調波135Hz)、A0 ;直流分、an ;n次高調波のsin分、bn ;n次高調波のcos分、x;m分割したデータの番号1〜mである。
【0050】
【数6】
【0051】
【数7】
【0052】
【数8】
【0053】
【数9】
【0054】
【数10】
【0055】
【数11】
【0056】
【数12】
なお、計算された結果は、1秒間の平均化を計る。
【0057】上述のような条件において、第1の監視部では検波器2として直線検波で1GHz帯の検波が可能な検波器が用いられる。ピークホールド回路3はガウス波形のパルス幅1〜10μs、パルス振幅2〜10Vに対応してピークをコンデンサに充電させる。ホールド時間は10ms以上である。パルス入力による放電はパルスの立上り50%点以下で行いパルス幅1μs以下とする。
【0058】サンプリング回路4はサンプリングパルスの入力毎にアナログ/デジタル変換を行う。なお、入力0〜5Vで出力8bit以上である。データラッチ回路5としては3ステートのD−タイプが用いられ、チップセレクト回路6としてシフトレジスタが用いられる。
【0059】信号処理器7は16/8bitのマイクロコンピュータであり、クロック周波数5MHzであり、セルフテスト用外部入力パルスを検知してプログラムのセルフテストを行い、結果を外部に表示する信号を発生する。
【0060】一方、第2の監視部では、位相検波器15として10MHz以下の位相検波器が用いられ、この位相検波器では入力2〜5Vで出力S字カーブ位相差が0度でDCOV、90度でDC5V、−90度でDC−5Vとなる位相弁別方法が使用される。
【0061】次に、方位0度のアレー型空中線が故障して信号が無くなった場合の信号処理器7によるシュミュレーション結果を図4に示す。この場合、0度方向以外は、15Hz変調度21.0%、135Hz変調度23.7%として計算する。
【0062】図4に示す135Hz・方位エラーの特性は、0度に対して点対象であり、0度に故障があることがわかる。また、方位エラーも規格値1°以上になっていることがわかる。
【0063】図5を参照して、第2の監視部の他の例について説明する。図示の例では図1(b)に示す例に対して、ミキサ11、ローカル発振器12、及び位相基準回路13が除かれている。図示の例では、位相検波器18は1GHz帯のピックアップ信号を入力として、他のピックアップ信号(図示の例では第36番目のピックアップ信号)を基準信号として位相検波を行う。
【0064】図5に示す例では、高周波技術を要するが構成の簡素化を図ることができる。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、高度技術及び調整テクニックを必要とする1GHz帯の高周波モジュールを使用することなく、信号波の解析に(離散的)フーリエ変換を用いて信号波の合成にベクトル計算を導入するようにしたから、容易に方位エラーの算出ができるようになるという効果がある。つまり、高周波モジュールを大幅に削減できるばかりでなく、デジタル信号処理によって回路構成が簡素化できるという効果がある。
【0066】さらに、本発明では、従来アナログ回路で行っていた調整等の保守をなくすことができ、しかも、デジタル信号処理(信号処理器)にプログラムのセルフテスト機能を装備させているから、保守性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるタカン空中線方位監視装置の一例を示すブロック図であり、(a)は第1の監視部を示す図、(b)は第2の監視部を示す図である。
【図2】図1に示す信号処理器の動作を説明するための図である。
【図3】信号合成を説明するための図である。
【図4】図1に示す信号処理器による故障時のシュミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明による第2の監視部の他の例を示すブロック図である。
【図6】従来のタカン空中線方位監視装置を説明するための図である。
【図7】図6に示す監視装置を説明するための図である。
【図8】インテグラルモニタ方式を説明するための図である。
【図9】タカンの基準バーストと可変方位信号との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
1 モニタピックアップ
2 検波器
3 ピークホールド回路
4 サンプリング回路
5 データラッチ回路
6 チップセレクト回路
7 信号処理器
8 制御・表示回路
11 ミキサ
12 ローカル発振器
13 位相検出器
14 位相基準回路
15 位相検波回路
16 判定回路
17 制御・表示回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】 タカン装置の空中線の方位を監視するため方位監視装置であって、所定の円周に沿って予め定められた間隔で配置された複数の空中線素子に結合された複数のピックアップ素子からのピックアップ信号をそれぞれ検波しピークホールドして複数のピークホールド信号を得る第1の手段と、所定のサンプル周期で1サイクルを等間隔で前記複数のピークホールド信号をサンプリングして複数のデジタル信号を得る第2の手段と、該複数のデジタル信号に応じて方位の変移を計算して計算結果を得る第3の手段と、該計算結果を表示するとともに該計算結果に基づいて前記タカン装置の制御を行う第4の手段とを有することを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項2】 請求項1に記載されたタカン空中線方位監視装置において、前記所定のサンプル周期は基準バーストをスタートとして次の基準バーストまでを1サイクルとする特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項3】 請求項2に記載されたタカン空中線方位監視装置において、前記サンプリングは前記1サイクルにおいて等間隔に行われることを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項4】 請求項1に記載されたタカン空中線方位監視装置において、前記第3の手段は前記複数のデジタル信号に基づいて前記複数のピックアップ信号に係る式を算出式として算出し、該算出式を用いて監視する方向に対して左右対称に角度0〜360度について等角度で複数個の前記算出式のベクトル合成を行い、該ベクトル合成したデータ値から合成信号の式を合成信号式として求めて、方位の変移を計算することを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項5】 請求項1に記載されたタカン空中線方位監視装置において、さらに、前記複数のピックアップ信号をそれぞれ所定のローカル信号としてミキシングして複数の中間周波数信号を得るミキシング手段と、前記複数の中間周波数信号の一つを位相基準とし前記中間周波数信号をそれぞれ位相検波して複数の位相検波信号を得る位相検出手段と、前記位相検波信号に応じて位相の変移を判定して判定結果を得る判定手段と、該判定結果を表示するとともに前記判定結果に応じて前記タカン装置を制御する制御表示手段とを有することを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項1】 タカン装置の空中線の方位を監視するため方位監視装置であって、所定の円周に沿って予め定められた間隔で配置された複数の空中線素子に結合された複数のピックアップ素子からのピックアップ信号をそれぞれ検波しピークホールドして複数のピークホールド信号を得る第1の手段と、所定のサンプル周期で1サイクルを等間隔で前記複数のピークホールド信号をサンプリングして複数のデジタル信号を得る第2の手段と、該複数のデジタル信号に応じて方位の変移を計算して計算結果を得る第3の手段と、該計算結果を表示するとともに該計算結果に基づいて前記タカン装置の制御を行う第4の手段とを有することを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項2】 請求項1に記載されたタカン空中線方位監視装置において、前記所定のサンプル周期は基準バーストをスタートとして次の基準バーストまでを1サイクルとする特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項3】 請求項2に記載されたタカン空中線方位監視装置において、前記サンプリングは前記1サイクルにおいて等間隔に行われることを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項4】 請求項1に記載されたタカン空中線方位監視装置において、前記第3の手段は前記複数のデジタル信号に基づいて前記複数のピックアップ信号に係る式を算出式として算出し、該算出式を用いて監視する方向に対して左右対称に角度0〜360度について等角度で複数個の前記算出式のベクトル合成を行い、該ベクトル合成したデータ値から合成信号の式を合成信号式として求めて、方位の変移を計算することを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【請求項5】 請求項1に記載されたタカン空中線方位監視装置において、さらに、前記複数のピックアップ信号をそれぞれ所定のローカル信号としてミキシングして複数の中間周波数信号を得るミキシング手段と、前記複数の中間周波数信号の一つを位相基準とし前記中間周波数信号をそれぞれ位相検波して複数の位相検波信号を得る位相検出手段と、前記位相検波信号に応じて位相の変移を判定して判定結果を得る判定手段と、該判定結果を表示するとともに前記判定結果に応じて前記タカン装置を制御する制御表示手段とを有することを特徴とするタカン空中線方位監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【特許番号】第2888290号
【登録日】平成11年(1999)2月19日
【発行日】平成11年(1999)5月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−323095
【出願日】平成8年(1996)12月3日
【公開番号】特開平10−160813
【公開日】平成10年(1998)6月19日
【審査請求日】平成8年(1996)12月3日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平7−104060(JP,A)
【文献】特開 昭61−180169(JP,A)
【文献】特開 昭59−94089(JP,A)
【文献】特開 昭50−137095(JP,A)
【文献】実開 平1−122630(JP,U)
【文献】岡田 實 編、「航空電子装置[改訂版]」、昭和53年1月30日改訂版発行、日刊工業新聞社、p.33〜p.43:「2・3 TACAN地上装置」
【登録日】平成11年(1999)2月19日
【発行日】平成11年(1999)5月10日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)12月3日
【公開番号】特開平10−160813
【公開日】平成10年(1998)6月19日
【審査請求日】平成8年(1996)12月3日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平7−104060(JP,A)
【文献】特開 昭61−180169(JP,A)
【文献】特開 昭59−94089(JP,A)
【文献】特開 昭50−137095(JP,A)
【文献】実開 平1−122630(JP,U)
【文献】岡田 實 編、「航空電子装置[改訂版]」、昭和53年1月30日改訂版発行、日刊工業新聞社、p.33〜p.43:「2・3 TACAN地上装置」
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