タグ付き物品を識別するシステムおよび方法
自動データ収集システムは、物品が格納されるエンクロージャ内に堅固な電磁(EM)界を提供することにより物品を追跡する。RFIDタグのような、各物品に添付されたそれぞれのデータ・キャリアは、各物品と同一であると見なされる一意のデータを送信することによって電磁界に応答する。エンクロージャに結合されたEM界の周波数がエンクロージャの固有共振周波数と異なる場合、エネルギーをエンクロージャに結合するためのプローブの配置は、壁からのEMエネルギーの反射位相がプローブ位置において等しくなるように選択され、それによりデータ・キャリアをアクティブ化および/または検出するための堅固なEM界を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、追跡対象の物品からデータを自動的に収集する分野に関し、より具体的には、タグ付き物品の識別に使用するためにエンクロージャ内に堅固な電磁界を確立するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を識別および追跡する方法には、視覚的、光学的(たとえば、バーコードを付ける)、磁気的、RFID、計量などを含む多数の方法がある。追跡のための自動システムが望ましい場合、識別データが無線で取得されうるので、RFIDは候補である。RFIDタグはコストを削減させてきたが、そのことでRFIDは、そのようなアプリケーションにとってさらに一層魅力的なものになった。
【0003】
電波方式認識(「RFID(radio−frequency identification)」)とは、応答デバイス(RFID「タグ」または応答機(transponder)として知られる)を誘導して自身を識別するために、および場合によっては、追加的に格納されたデータを提供するために、電磁エネルギー(「EMエネルギー」)を使用することである。RFIDタグは通常、メモリ、回路、およびアンテナを形成する1つまたは複数の導電性トレースを有する半導体デバイスを含む。通常、RFIDタグは、呼掛機(interrogator)とも呼ばれるリーダーから受信したRF呼掛け信号に応答して、半導体デバイスに格納されている情報を提供する応答機として機能する。一部のRFIDタグは、パスワードおよび/または暗号のような、セキュリティ手段を含む。多くのRFIDタグはまた、情報が、RF信号を介して半導体メモリに書き込まれるかまたは格納されるようにする。
【0004】
RFIDタグは、追跡されるべき物品に組み入れられるかまたは添付されてもよい。場合によっては、タグは、接着剤、テープ、またはその他の手段により物品の外側に添付されてもよく、別の場合には、タグはパッケージングに含まれるか、物品の容器内に配置されるか、または衣類に縫い込まれるなど、物品内に挿入されてもよい。RFIDタグは、通常はチェックディジットが添付された数バイトの単純な通し番号である一意の識別番号で製造される。この識別番号は、製造中にタグに組み入れられる。ユーザは、この通し/識別番号を変更することはできず、製造業者は、各通し番号が1回しか使用されないことを保証する。この構成は、RFIDタグが読み取り専用であり、各自の識別番号を持つ呼掛け信号にのみ応答するという点で、技術の低コストエンドを表す。通常、タグは、その識別番号で継続的に応答する。タグへのデータ送信は、可能ではない。それらのタグは、極めて低コストであり、大量に生成される。
【0005】
そのような読み取り専用RFIDタグは通常、追跡されるべき物品に永続的に添付され、いったん添付されると、タグの通し番号がコンピュータ・データベース内のそのホスト物品に関連付けられる。たとえば、特定のタイプの薬が、数百または数千の小型の薬瓶に入れられているとする。製造の時点、または医療施設での薬瓶の受領時点において、RFIDタグは各薬瓶に添付されている。RFIDタグを永続的に添付された薬瓶は各々、受領時に医療施設のデータベースにチェックインされる。RFID識別番号は、データベース内で、薬の種類、薬瓶の投与量、およびおそらくは薬の有効期限のようなその他の情報に関連付けられてもよい。その後、薬瓶のRFIDタグが呼掛けられ、その識別番号が読み取られると、医療施設のデータベースは、その識別番号を、薬瓶に関するその格納済みデータと照合することができる。次いで、薬瓶の内容、およびデータベース内に格納されている任意の他の特徴が決定されてもよい。このシステムは、施設が、そのようなデータをRFIDタグに組み入れるのではなく、インベントリに物品に関する包括的なデータベースを保持することを要求する。
【0006】
タグの目的は、物品が移動されるときに、位置確認され、識別され、追跡されうるように、製造設備、輸送機関、医療施設、保管地域などのような特定の施設において物品の存続期間を通じて物品にタグを関連付けることである。たとえば、特定の医療品がどこにあるかを医療施設で常時認識していることで、緊急事態が発生したときに必要な医薬品を見つけることを大幅に容易にすることができる。同様に、施設内で物品を追跡することは、さらに効率的な調剤および在庫管理システムの生成、および施設内の作業フローの向上を補助することができる。加えて、有効期限が監視されてもよく、より古く有効期限間近の物品は、直ちに調剤されるように列の前方に移動されてもよい。その結果、より優れた在庫管理およびコスト低減がもたらされる。
【0007】
その他のRFIDタグは、書き込み可能であり、RFIDタグが添付される物品に関する情報が個々のタグにプログラムされてもよい。そうすることで、施設のコンピュータ・サーバが使用不可能な場合に顕著な利点をもたらすことができるが、そのようなタグは、タグ内のメモリのサイズに応じてさらにコストがかさむ。タグが添付される物品に含まれる情報で個々のタグをプログラミングすることは、さらなる費用を伴う。
【0008】
RFIDタグは、製造業者、受け入れ側、その他によって追跡されるべき容器または物品に適用されてもよい。製造業者がタグを製品に適用する一部の場合において、製造業者はまた、各タグの識別番号をそれぞれの物品ごとの内容にリンクするそれぞれのデータベース・ファイルを供給する。その製造業者が供給するデータベースは、顧客のデータベース全体に容易にインポートされて、それにより顧客がデータベースを作成する費用を節約できるファイルの形式で、顧客に配布されてもよい。
【0009】
現在使用されている多くのRFIDタグは、バッテリまたはその他の自律型電源装置を備えてはおらず、その代わりに、タグをアクティブ化する電力を提供するためにRFIDリーダーにより提供される呼掛けエネルギーに依存する必要があるという点において、受動的である。受動的RFIDタグは、タグのアクティブ化およびその格納済みデータの伝送を達成するために、特定の周波数帯域および特定の最小強度のエネルギーの電磁界を必要とする。もう1つの選択肢は、能動的なRFIDタグであるが、そのようなタグは、タグをアクティブ化する電力を供給するために付随のバッテリを必要とするので、タグのコストを増大させて、多数のアプリケーションで使用するには望ましくないものにしてしまう。
【0010】
識別されるべき物品の物理的サイズ、それらの位置、および容易に到達できることのような、RFIDタグアプリケーションの要件に応じて、タグはRFIDリーダーにより短距離または長距離から読み取られる必要がある。そのような距離は、数センチメートルから、10メートル以上までさまざまであってもよい。加えて、米国およびその他の国では、そのようなタグが動作を許可される周波数帯域は制限されている。一例として、125KHzおよび13.56MHzのような、より低い周波数帯域は、一部のアプリケーションでRFIDタグに使用されてもよい。この周波数帯域において、電磁エネルギーは、液体およびその他の誘電体による影響をより受けにくいが、短い呼掛け距離の制限を受ける。915MHzおよび2.4GHZのような、RFID使用が許可されるより高い周波数帯域において、RFIDタグは、より長い距離で呼掛けされてもよいが、タグが添付される素材が異なるので、より急速に離調する。それらのより高い周波数において、接近して配置されたRFIDタグは、タグの間隔が短くなっているので、相互に離調することも判明している。
【0011】
RFIDタグがエンクロージャの内部に配置されうる多数の一般的な状況がある。それらのエンクロージャの一部は、全体的または部分的に金属または金属被覆の表面を有することができる。エンクロージャの例は、金属エンクロージャ(たとえば、輸送用コンテナ)、部分金属エンクロージャ(たとえば、金属と他の素材の組み合わせで作られる筐体を有する航空機、バス、列車、および船舶のような車両)、および非金属エンクロージャ(たとえば、木製の倉庫および建物)を含む。それらのエンクロージャに配置されうるRFIDタグを持つ物体の例は、ばらの品物、包装された品物、倉庫内の小包、建物内の在庫品目、小売店内のさまざまな商品、および車両内のさまざまな携帯用品目(たとえば、乗客識別カードおよびチケット、手荷物、貨物、ライフジャケットおよびマスクのような個々の救命備品)を含む。
【0012】
RFIDタグの読み取り範囲(すなわち、呼掛けおよび/または応答信号の範囲)は制限されている。たとえば、一部のタイプの受動RFIDタグは、約12メートルの最大範囲を有するが、これは好ましいアンテナ方位で理想的なフリースペース条件においてのみ達成されうる。現実の状況において、観測されるタグ範囲は、多くの場合、6メートルまたはそれ未満である。したがって、上記で説明される一部のエンクロージャは、個々のRFIDタグの読み取り範囲をはるかに超える大きさを有することがある。RFIDリーダーが、そのようなエンクロージャ内で対象のRFIDタグに極めて接近して配置されうるのでない限り、タグはアクティブ化されて読み込まれることはない。加えて、エンクロージャの金属表面は、RFIDリーダーとRFIDタグとの間で交換される必要があるRF信号の深刻な障害をもたらし、それらの金属表面の裏側にあるRFIDタグの検出を困難または不可能にする。
【0013】
上記のことに加えて、RFIDシステムの検出範囲は通常、短距離への信号強度より制限され、13.56MHzシステムの約30センチメートル未満であることも多い。したがって、ポータブル・リーダー・ユニットは、特にタグ付き品目が静止または固定の単一リーダー・アンテナの検出範囲よりも著しく大きいスペースに格納されている場合、すべてのタグ付き品目を検出するためにタグ付き品目のグループを通過される必要がある。あるいは、より多くのタグ付き品目を検出するのに十分な出力および範囲を備える大型のリーダー・アンテナが使用されてもよい。しかし、そのようなアンテナは扱いにくいこともあり、許容限界を超えて放射出力の範囲を増大させる場合がある。さらに、それらのリーダー・アンテナは、スペースが貴重であり、そのような大型のリーダー・アンテナを使用することが高価で不便になるような店舗または他の場所に配置される。もう1つの可能な解決策において、複数の小型アンテナが使用されてもよいが、そのような構成は、スペースが貴重であり、配線を隠すことが好ましいかまたは必要とされる場合にはセットアップすると見栄えもよくなくなることがある。
【0014】
医薬品および医療デバイスの場合、必要が生じたらRFIDタグ付きデバイスおよび物品が迅速に見つけられるよう、また有効期限のような他の目的のために識別されうるように、正確な追跡、在庫管理システム、調剤システムを開発することが望ましい。医療施設で使用される医薬品または調剤保管庫の場合、多数の医療デバイスおよび物品が、複数の引き出し内のように、密接して配置されている。それらのような保管庫は通常、金属製であり、保管されている物品の識別のために外部RFIDシステムを利用することが困難になる可能性もある。場合によっては、そのような保管庫は、高い盗難率にさらされる麻酔薬またはその他の医薬品が庫内にあるためロックされている。したがって、保管庫の内容物の手作業による識別は、アクセスを制御する必要があるので困難である。
【0015】
そのような保管庫に内部RFIDシステムを提供することは、難題をもたらす可能性がある。内部物品が収納庫内で無作為な配置を有することができる場合、RFIDシステムは、RFIDシステムが到達不可能な「デッドゾーン」を生じないものである必要がある。一般に、デッドゾーンは、RFIDリーダー・アンテナとRFIDタグとの結合のレベルが、タグの正常な読み取りをシステムが行なうのに十分ではない領域である。そのようなデッドゾーンの存在は、タグとリーダー・アンテナが直交面にある方位付けにより生じることがある。したがって、デッドゾーンに配置された物品は検出されないこともあり、その結果タグ付き物品の追跡が不正確になる場合がある。
【0016】
医療分野において多くの場合、そのようなエンクロージャにおいて物品に添付された膨大数のタグを読み取る必要があり、前述のように、そのようなエンクロージャには、セキュリティ上の理由によりアクセスが制限されている。エンクロージャの物理的寸法は、膨大数の物品またはさまざまなサイズおよび形状の物品を収容するように変更する必要がある。そのような密接して配置されている医薬品または医療デバイスの正確な識別およびカウントを得るために、堅固な電磁エネルギー界がエンクロージャ内に適切な周波数で提供されて、そのような格納されている物品およびデバイスのすべてを、それらのタグがすべて確実にアクティブ化されて読み取られるように取り囲む必要がある。そのような医療デバイスは、それらの容器の外側にRFIDタグを添付されてもよく、RFIDタグ(および関連するアンテナ)を上方、横、下方、または無作為なパターンでその他の角度で示して、さまざまな向きで格納されてもよい。
【0017】
そのような堅固なEMエネルギー界を生成することは、容易な作業ではない。エンクロージャが、動作の周波数で共振するサイズを有する場合、共振定常波がエンクロージャ内で生成されうるので、堅固なEM界を生成することがより容易となりうる。しかし、RFID界において、動作の使用可能な周波数は厳重に制御され、制限される。許容可能RFID周波数のうちの1つと一致する共振周波数を有していない特定の物品の格納に、エンクロージャが望ましいことが判明した。したがって、堅固なEM界は、別の方法で確立される必要がある。
【0018】
加えて、EMエネルギーが、内部のRFIDタグを読み取るためにそのようなエンクロージャに導入される場合、効率的なエネルギー伝達が重要である。静的条件下において、エンクロージャへのEMエネルギーの入力または注入は、エネルギーを伝搬する伝導体とエンクロージャの間に位置する単純なインピーダンス整合回路により最大化されうる。当業者にはよく知られているように、そのようなインピーダンス整合回路またはデバイスは、エンクロージャへの電力伝達を最大化し、しかもエンクロージャからの電力の反射を最小化する。エンクロージャのインピーダンスが、エンクロージャへの物品の導入またはエンクロージャからの物品の取り出しにより変化する場合、静的インピーダンス整合回路は、エンクロージャに最適なエネルギー伝達を提供しないこともある。エネルギー伝達およびその結果得られるエンクロージャ内のRF電界強度がしきい値レベルを下回った場合、エンクロージャ内の物品上の一部または多くのタグは自身を識別するためにアクティブ化されることはなく、効果的ではない在庫システムのままになってしまう。
【0019】
EMエネルギーの使用を最小に、または少なくとも控えめに保持することが、多くの医療施設の目標である。RFIDタグを見つけてデータを抽出するために高出力リーダーを使用することは、一般に、医療施設においては望ましいことではないが、わずかな作業者しかいない倉庫または航空貨物室においては許容可能であってもよい。広い領域においてEMエネルギーの幅広ビームを放射することは、EMエネルギーが近隣の感度の高い領域に迷い込むこともあり、望ましくない。必要な識別情報をタグから取得するためにリーダーを操作する際の効率は、目標である。RFIDタグが読み取られる多くの場合において、ハンドヘルド・リーダーが使用される。そのようなリーダーは、特定の場所においてすべてのRFIDタグに到達するためにエネルギーの比較的幅広のビームを伝送する。各タグをアクティブ化してそれを読み取る最終結果は達成されうるが、エネルギーの伝送は、ユーザの目的によらない限り制御されない。加えて、これは、1つまたは複数の個人のサービスを必要とする手動システムであり、これもまた、スタッフが限られている施設において望ましいことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、当業者は、囲まれた領域のすべてのRFIDタグをアクティブ化して読み取るためにエネルギーの有効利用が行なわれるRFIDタグ・リーダー・システムの必要性を認識してきた。無作為な向きで配置されたタグをアクティブ化して読み取るためにエンクロージャ内に堅固なEM界を確立するさらなる必要性もまた、認識されてきた。金属製保管庫に格納されている物品を保管庫にアクセスする必要なく識別するための自動化システムのさらなる必要性が認識されてきた。エンクロージャのインピーダンスの変化に基づいて整合回路操作を自動的に調整する動的整合回路のさらなる必要性が認識されてきた。本発明は、これらの必要性およびその他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0021】
簡潔に、および概括的な表現で、本発明は、物品に添付されるデータ・キャリアを読み取るシステムであって、データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギー(EM)に応答し、それに応じてデータ・キャリアは一意の識別データを提供するシステムを対象とし、システムは、導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、エンクロージャの壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーをエンクロージャに注入するように構成され、エンクロージャの壁に関するプローブの位置はエンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成されたエンクロージャ内に位置する格納デバイスと、エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備える。
【0022】
本発明によるさらなる態様において、周波数f1は、エンクロージャの共振の固有周波数f2とは異なり、プローブの位置は、壁からのEMの反射位相がプローブ位置において等しい、すなわちプローブ位置において同相であるように選択される。
【0023】
さらにより詳細な態様において、システムは、プローブのインピーダンスをエンクロージャのインピーダンスにさらに密接に整合するように構成されたインピーダンス整合回路をさらに備える。インピーダンス整合回路は、能動インピーダンス整合回路である。
【0024】
本発明によるその他の態様において、格納デバイスは、エンクロージャに入る、およびエンクロージャから出るように適応された引き出しを備える。引き出しの一部は、引き出しがエンクロージャに関して所定の位置にあるとき、導電性エンクロージャの一部を形成する。引き出しは、導電性エンクロージャの一部を形成する引き出しの一部を除いて、非導電性である。さらに、引き出しは、エンクロージャの開口部を通じてエンクロージャの中に、およびエンクロージャから外にスライド可能であり、引き出しは、導電性であって、引き出しがエンクロージャ内の所定の位置までスライドされると導電性エンクロージャに接触する前面パネルを有する。
【0025】
もう1つのさらに詳細な態様において、受信アンテナは、プローブから格納デバイスの対向側に位置する。
【0026】
またさらなる態様において、システムは、複数のプローブをさらに備え、各プローブはエンクロージャの壁を通じて取り付けられ、各々のプローブは電磁(EM)エネルギーを各自のそれぞれの位置においてエンクロージャに注入するように構成され、エンクロージャの壁に関する各プローブの位置は、エンクロージャの一部のカバレッジに電磁界を提供するためにエンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択され、プローブの位置は、プローブが各自のそれぞれのEMエネルギーをエンクロージャに注入して複合EM界をもたらすために順次アクティブ化されうるようにさらに選択される。
【0027】
さらにその他の詳細な態様において、データ・キャリアが接続された物品を追跡するためのシステムであって、データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギー(EM)に応答し、それに応じてデータ・キャリアは一意の識別データをブロードキャストするシステムが提供され、システムは、導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有し、f2はf1とは異なるエンクロージャと、エンクロージャの壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーをエンクロージャに注入するように構成され、エンクロージャの壁に関するプローブの位置はエンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、エンクロージャ内に移動可能に配置された引き出しであって、それぞれのデータ・キャリアを有する物品を格納するように構成された引き出しと、エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備える。
【0028】
本発明によるさらにもう1つの態様において、エンクロージャ内に堅固な電磁界を確立するためのシステムが提供され、システムは、導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、エンクロージャの壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギー(EM)をエンクロージャに注入するように構成され、EMはf1の周波数を有し、f1とf2は異なり、エンクロージャの壁に関してプローブの位置は、エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成されたエンクロージャ内に位置する格納デバイスと、エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備える。
【0029】
本発明の特徴および利点は、添付の図と合わせて読まれるべき以下の詳細な説明からさらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】医療調剤保管庫内に配置されうる引き出しを示す概略図であり、引き出しに無作為に配置された複数の医薬品の格納を示し、それらの医薬品は各々無作為に方向付けられた一体型RFIDタグを有する。
【図2】5つの引き出しを有し、そのうちの1つが図1の概略図と類似する、医薬品調剤保管庫を示す斜視図であり、保管庫はまた、保管庫内に格納された物品に添付された任意のRFIDタグを定期的に読み取ることにより保管庫へのアクセスを制御して在庫追跡を実行するため、および識別された物品をリモート・コンピュータにレポートするための内蔵コンピュータを有する。
【図3】RFIDリーダーがアクティブ化EMエネルギーを単一の送信アンテナでRFIDタグを含む引き出しに送信し、単一の受信アンテナでアクティブ化RFIDタグから出力されたデータを受信し、コンピュータが処理のためにアクティブ化エネルギーの送信およびアクティブ化RFIDタグからのデータの受信を制御する実施形態を示すブロックおよび流れ図である。
【図4】RFIDリーダーがアクティブ化EMエネルギーを2つの送信アンテナでRFIDタグを含む引き出しに送信し、3つの受信アンテナでアクティブ化RFIDタグから出力されたデータを受信し、図3と同様に、コンピュータが処理のためにアクティブ化エネルギーの送信およびアクティブ化RFIDタグからのデータの受信を制御する実施形態を示す、図3と類似するブロックおよび流れ図である。
【図5】単一のプローブおよびコネクタを持つエンクロージャを示す図であり、プローブはEMエネルギーをエンクロージャに注入して、TEモードを励磁するように構成される。
【図6】単一のプローブおよびコネクタを持つエンクロージャを示す図であり、プローブはEMエネルギーをエンクロージャに注入して、TMモードを励磁するように構成される。
【図7】共振エンクロージャの周波数の関数としてエンクロージャ内の結合電力を示すグラフであり、Fnはエンクロージャの固有共振周波数である。
【図8】周波数(横軸)の関数としてエンクロージャ内の結合電力(縦軸)を示すグラフであり、ffは強制共振周波数、またはエンクロージャの共振周波数と等しくはない周波数と称され、fnはエンクロージャの固有共振周波数であり、ff周波数におけるエンクロージャ内の結合電力の堅固な電界の確立を示す。
【図9】各々エンクロージャにEMエネルギーを注入するためのコネクタを持つ2つのプローブを備え、1つのプローブはTMプローブであり、もう1つのプローブがTEプローブであるエンクロージャを示す図である。
【図10】プローブ、コネクタ、およびプローブとエンクロージャのインピーダンス整合を向上させるために使用される減衰器を示す図である。
【図11】プローブ、コネクタ、およびプローブとエンクロージャのインピーダンス整合を向上させるために使用される受動整合回路を示す図である。
【図12】エンクロージャ内に位置するプローブと送受信機との間に接続された能動整合回路を示す図であり、能動整合回路は、同調可能キャパシタ、双方向カプラ、多重電力センサ、閉ループを提供するために使用される比較器、プローブとエンクロージャとのインピーダンス整合を向上させるための可変整合回路を備える。
【図13】明確にするために引き出しを除いた、引き出しの位置における図2の保管庫を示す垂直断面図であり、閉位置の保管庫の適所にあるときの引き出し内に堅固なEM界を確立するための「天井取り付け」構成における2つのプローブ・アンテナの配置を示す。
【図14】挿入されるべき引き出しに堅固なEM界を確立するための2つのプローブ・アンテナを同様に示す、図13のプローブ構成を示す金属製エンクロージャを示す斜視図である。
【図15】明確にするために引き出しを除いた、図13および図14の二重プローブ・アンテナが取り付けられる金属製エンクロージャまたはフレームを示す切開側面斜視図である。
【図16】切開プラスチック製引き出しが金属製エンクロージャ内の適所にある図14を示す前面斜視図であり、電磁的に不活性の保護カバーにより保護された二重天井取り付けプローブ・アンテナをさらに示し、引き出しの背後付近の保管庫の背面に取り付けられた冷却システム・コンポーネントをさらに示す図であって、図はまた、保管庫の開位置と閉位置間で引き出しのスライドを容易にする引き出しスライド機構の部分図も示し、この図で引き出しの前面および背面パネルは除かれている。
【図17】プラスチック製引き出しが完全に除かれた、図16の対角における前面斜視図であり、金属製エンクロージャに取り付けられたEM内部保護カバーにより保護された二重天井取り付けプローブ・アンテナを示し、引き出しのラッチが解放されると引き出しを開位置に自動的に押し出すバネ装荷機能として保管庫の背面に取り付けられた図16の冷却システム・コンポーネントをさらに示す図であって、図はまた、引き出しのスライドを受けるための取り付けレールも示す。
【図18】図13〜図15に示されるエンクロージャの上面における2つのTE01モードのプローブのインチ単位の寸法を加えた概略図である。
【図19】2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナ、および他のコンポーネントとの相互接続のために、1つの実施形態において、それぞれのアンテナとアンテナがSMAコネクタに接続される引き出し背面との間に配置されたアンテナのマイクロストリップ伝導体の、図16の引き出し内のサイズおよび配置を示す概略図である。
【図20】図19の図による位置にエンクロージャ内でプローブが配置されたエンクロージャの実施形態における電界の強さを示す図である。
【図21】エンクロージャの前壁および後壁により近い電界強度のより明確な表示を示す、図20の電界強度図よりも下目盛の図である。
【図22】個々のマルチプレクサ・スイッチ、単一のRFIDスキャナ、および電力コントロールを示す、図2に示されるような多段引き出しの医薬品保管庫のブロック電気および信号図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
これ以降、類似する参照番号がいくつかの図面の中で対応または類似する要素を指定する、本発明の実施形態を説明するための例示的な図面をさらに詳細に参照すると、図1において、一意の識別番号を有するそれぞれのRFIDタグ24を各々備える複数の医薬品22が格納される部分エンクロージャ20の概略図が示される。部分エンクロージャは、正面26、左側面28、右側面30、背面32、および底面34を有する引き出しを備えることができる。これらの物品は、RFIDタグがさまざまな無作為の方向に面した状態で引き出し内に無作為に分散されている。
【0032】
本明細書において実施形態に関して使用されるように、「リーダー」および「呼掛機」は、読み取りまたは読み取り/書き込みすることができるデバイスを示す。データ取り込みデバイスは常に、それが読み取りしかできないか、または書き込むこともできるかどうかにかかわらずリーダーまたは呼掛機と呼ばれる。リーダーは通常、無線周波数モジュール(送信機および受信機、「送受信機」と呼ばれることもある)、制御ユニットおよびRFIDタグへの(アンテナ(複数可)のような)結合要素を含む。加えて、多くのリーダーは、RS−232インターフェイスのような、データを他の場所へ転送するためのインターフェイスを含む。リーダーは、送信時に、RFIDタグがアクティブ化される呼掛けゾーンを有する。呼掛けゾーン内にあるとき、RFIDタグはその電力を、リーダーにより呼掛けゾーンで作成された電界/磁界から得る。順次RFIDシステム(SEQ)において、呼掛け電界は、一定の間隔をおいてオフに切り替えられる。RFIDタグは、それらの「オフ」ギャップを認識するようにプログラムされ、それらはタグの一意の識別番号のようなデータを送信するためにタグによって使用される。一部のシステムにおいて、タグのデータ・レコードは、タグが製造される時点で組み入れられて、変更不可能である一意の通し番号を含む。この番号は、タグが特定の物品に添付されるときに、その物品にデータベース内で関連付けられてもよい。したがって、タグの場所を決定することは結果として、タグが添付されている物品の場所を決定することになる。その他のシステムにおいて、RFIDタグは、物品の名前または識別、その有効期限、その投与量、患者の名前、およびその他の情報のような、タグが添付されている物品に関するさらに多くの情報を含むことができる。RFIDタグはまた、更新されうるように、書き込み可能であってもよい。
【0033】
本明細書において実施形態に関して使用されるように、「タグ」は、RFID応答機を示すことが意図される。そのようなタグは通常、アンテナ、および電子マイクロチップのような、結合要素を有する。マイクロチップは、メモリとも呼ばれるデータストレージを含む。
【0034】
図2は、複数の可動式引き出し42を備える代表的な医薬品調剤保管庫40を示す。この実施形態において、引き出しの内容物へのアクセスがもたらされるように、保管庫から外側にスライドする5つの引き出しがある。図1は、引き出しの内容物へのアクセスをもたらすために外側にスライドし、引き出しの内容物を保護するために保管庫の内側にスライドする、図2の保管庫内に配置されうる代表的な引き出しを示す概略図である。保管庫はまた、引き出しへのアクセスを制御するため、アクセスおよび内容物に関するデータを生成するため、およびその他のシステムと通信するために使用されてもよい内蔵コンピュータ44も備える。この実施形態において、コンピュータは、引き出し内の物品の数および種類、物品が処方された患者の名前、処方された薬剤およびそれらの投与の日時、ならびにその他の情報に関するデータを生成する。より簡単なシステムにおいて、コンピュータは単に、格納された物品から一意の識別番号を受信して、それらの識別番号を、識別番号を物品記述と照合するためにデータベースにアクセスできる在庫管理コンピュータに渡すことができる。
【0035】
そのような保管庫は、医療施設の特定のフロアの看護ステーションに配置されてもよく、そのフロアの患者の処方箋を含むこともできる。処方箋がそのフロアの患者に用意されると、処方箋は配信されて保管庫40に入れられる。それらは内蔵コンピュータ44にログインされ、内蔵コンピュータはそれらの受信を薬局に通知することができる。引き出しはまた、看護スタッフにより決められたように患者に調剤するために処方箋なしの医薬品または物品を含むこともできる。適切な時間に、看護師は、コンピュータ44の使用を通じて医薬品が格納されている引き出しにアクセスして、特定の患者の処方箋および任意の必要な処方箋なしの物品を取り出してから、保護されるように引き出しを閉める。保管庫にアクセスするため、看護師はさまざまな情報を提供する必要があってもよく、保護アクセスコードが必要であってもよい。引き出し42は、必要に応じてロックされても、ロックされなくてもよい。
【0036】
コンピュータ44は、場合によっては、施設のその他の設備と通信してもよい。たとえば、コンピュータ44は、患者の処方箋が特定の日時に投与のために保管庫から取り出されたことを医療施設の薬局に通知することができる。コンピュータはまた、特定の患者への投与のために処方箋およびその他の医薬品が取り出されたことを医療施設の財務部に通知することもできる。次いで、この投薬は患者の明細書に適用されてもよい。さらに、コンピュータ44は、患者の医薬品投与レコード(MAR:Medication Administration Record)、すなわちe−MARを更新する目的で投与を通信することができる。医薬品保管庫40コンピュータ44は、医療施設のその他のコンピュータに無線で接続されてもよいか、または有線接続を有してもよい。保管庫はキャスターに取り付けられてもよく、必要に応じて移動されてもよいか、または固定されて移動不可能であってもよい。
【0037】
RFIDタグを使用するシステムは、多くの場合、RFIDリーダーによって収集されたデータを格納、処理、および共有するための保管場所として機能する1つまたは複数のホスト・コンピューティング・システムと通信するRFIDリーダーを採用する。ここで図3および図4を参照すると、物品を追跡するためのシステムおよび方法50が示され、ここで図2の保管庫40の引き出し20が、その引き出し内の物品と共に配置されたRFIDタグからデータを取得するために監視される。前述のように、さまざまな格納済みの物品に取り付けられたRFIDタグが、それらの向きとは関係なくアクティブ化されるように、EMエネルギーの堅固な電界が確立される必要がある。
【0038】
図3および図4において、エンクロージャ内の物品を識別するための追跡システム50が示され、RFIDリーダーの一部としてEMエネルギーの送信機52を備える。送信機52は、送信アンテナ54を用いてEMエネルギーを引き出し20に送信するための、915MHzのような特定の周波数を有する。送信機52は、必要なRFID EMエネルギーならびに任意の必要なタイミング・パルスおよびデータを、RFIDタグが配置されるエンクロージャ20に送信するように構成される。この場合、エンクロージャは引き出し20である。RFIDリーダー51のコンピュータ44は、送信期間と非送信、つまりオフ期間との間を循環するようにEM送信機52を制御する。送信期間中、しきい値強度レベル以上で送信されたEMエネルギーは、RFIDタグを取り囲み、それによりタグをアクティブ化する。次いで、送信機52はオフ期間に切り替えられ、その間にRFIDタグはそれぞれの格納されたデータで応答する。
【0039】
図3の実施形態は、引き出し20の内部に位置するアクティブ化されたRFIDタグにより送信されたデータを最適に読み取れるような方式で方向付けられた、単一の送信プローブ・アンテナ54および単一の受信アンテナを備える。単一の受信アンテナ56は、引き出し20の外側または引き出しの内底部に位置するリーダー50のコンピュータ44に通信可能に結合される。その他の取り付け場所も可能である。同軸ケーブル58またはその他の適切な信号リンクが、受信アンテナ56をコンピュータ44に結合するために使用されてもよい。無線リンクは、異なる実施形態において使用されてもよい。図面には示されていないが、コンピュータにより使用するように、デジタルデータをRFエネルギーから分離するために、さまざまな追加の回路およびデバイスが使用されることを、当業者は理解するであろう。そのような回路およびデバイスは、図面において不必要な複雑さを避けるために、図3および図4には示されていない。
【0040】
図4の実施形態は、図3の実施形態と類似するが、代わりに2つの送信プローブ・アンテナ60および62、ならびに3つの受信アンテナ64、66、および68を使用する。システムに使用されるべき送信プローブ・アンテナおよび受信アンテナの構成および数は、エンクロージャ内部のすべてのRFIDタグが確実にアクティブ化されて読み取られうるように、エンクロージャ20のサイズ、動作の周波数、動作周波数とエンクロージャの固定共振周波数との関係、および中に配置されるべきRFIDタグの予想数に少なくとも部分的に基づいて変化してもよい。RFIDリーダー・コンポーネントの場所および数は、特定のアプリケーションに応じて異なってもよい。たとえば、少数のコンポーネントは、比較的小さいサイズを有するエンクロージャに必要とされうるが、図4に示されるような追加のコンポーネントは、より大きいエンクロージャに必要とされうる。図3および図3においてブロックの形態で示されているが、システム50の受信アンテナ56、64、66、および68は、異なる実施形態においてサブアレイを備えることができる。
【0041】
送信アンテナ(54、60、および62)ならびに受信アンテナ(56、64、66、および68)は、異なる形態をとることができる。後段でさらに詳細に説明される1つの実施形態において、複数の「パッチ」つまりマイクロストリップ・アンテナが、リーダー受信アンテナとして使用され、引き出しの底部のさまざまな部分に隣接する位置に配置されたが、送信アンテナは引き出しの上部の部分に隣接する位置にある有線プローブであった。図3および図4の実施形態において、RFIDリーダー50が、引き出し20に関して戦略上重要な位置で同じ保管庫内に永続的に取り付けられてもよいことに留意されたい。
【0042】
エンクロージャ内の密集して詰められたかまたは無作為に方向付けられたRFIDタグを確実に呼掛けするための1つの解決策は、エンクロージャを共振空洞として扱うことである。空洞エンクロージャ内に共振を確立することは結果として、エンクロージャ内のすべてのRFIDタグをアクティブ化することができる堅固な電磁界をもたらすことができる。これは、導電性壁からエンクロージャを構築し、空洞の共振の固定周波数で空洞内の横電(TE)界または横磁(TM)界を励磁するためにプローブ(複数可)を使用して、金属製エンクロージャ、または空洞を励磁することによって、行なわれてもよい。この技法は、空洞の大きさが、動作の周波数で共振をセットアップするように特に選択されうる場合、または動作の周波数が固有のエンクロージャサイズのために選択されうる場合、良好に機能する。RFIDアプリケーションに使用することができる周波数帯域は制限されているので、RFID周波数を変更することは、多くのアプリケーションにとってオプションではない。逆に、エンクロージャの固有共振周波数が、使用可能なRFIDタグのアクティブ化周波数と等しくなるように、エンクロージャの物理的寸法の固有セットを要求することは、エンクロージャが固有サイズである必要があるアプリケーションへのこの技法の使用を限定することになる。この後者の手法は、格納される必要のある医薬品の多種多様なサイズ、形状、および数量を考慮すれば、実際的ではない。
【0043】
ここで図5を参照すると、図2に示される保管庫のような、医薬品保管庫の一部として形成されうる長方形のエンクロージャ80が提供される。これは、そのような保管庫の非金属製引き出しの周囲に配置されるフレームとして具現されてもよい。エンクロージャ80は、金属製または金属被覆の壁82、床83、および天井84表面で形成され、そのすべてが導電性である。壁82、床83、および天井84のすべても、本明細書において、エンクロージャの「壁」と称されてもよい。図5はまた、エンクロージャ80の上面84に位置するエネルギー結合またはプローブ86の使用を示す。この実施形態において、プローブ88がエンクロージャの天井84の穴90を経由して軸方向に進む第1の部分94を有するという点で、プローブはキャパシタ・プローブ88の形態をとる。結合の目的は、源52(図3および図4を参照)からエンクロージャ80の内側96にエネルギーを効率的に伝達することである。プローブのサイズおよび位置は、効果的な結合のために選択され、プローブは最大電界強度の領域に配置される。図5において、TE01モードは、容量結合の使用を通じて確立される。プローブ88の屈曲部分94の長さおよび距離は、プローブとエンクロージャ80との電位差に影響を及ぼす。
【0044】
同様に、図6は、エンクロージャ112への外部エネルギーの誘導結合110を表す。結合は、エンクロージャの側壁116を通じて取り付けられたループ・プローブ114の形態をとる。このプローブの目的は、エンクロージャ内にTE01モードを確立することである。
【0045】
図5および図6に示される長方形エンクロージャ80および112は各々、図7に示され、fnによりグラフの横軸118に指示される固有共振周波数fnを有する。これは、グラフの縦軸119に示されるように、エンクロージャの結合電力が最も高い周波数である。エンクロージャに注入されたエネルギーがfn周波数と適合しない場合、結合電力は、エンクロージャの共振現象の恩恵を受けることはない。動作の周波数が変更不可能であり、fn以外であって、動作周波数と等しいfnを得るためにエンクロージャのサイズを変更できない場合、別の電力結合装置および方法が使用される必要がある。本発明の態様によれば、建設的干渉によりエンクロージャ内に定常波を得るために、エンクロージャ内に強制共振ffを結果としてもたらすように、装置および方法が提供される。そのような定常波は、内部に存在するすべてのRFIDタグをアクティブ化するのに十分に強いエンクロージャ内の堅固なエネルギー電界を確立する。
【0046】
エンクロージャと共振関係にあるEM波が入ると、EM波は、低損失でエンクロージャ内を行ったり来たり反射する。さらに多くの波エネルギーがエンクロージャに入ると、波エネルギーは定常波と結合して補強し、その強度を増大させる(建設的干渉)。空洞の大きさが共振周波数における波長の整数倍であるため、共振は特定の周波数において発生する。注入されたエネルギーがエンクロージャの固有共振周波数fnではない現在の場合、本発明の態様による解決策は、エンクロージャに「強制共振」をセットアップすることである。この強制共振は、共振空洞の場合のように、エンクロージャの物理的寸法が励磁エネルギーの波長の整数倍と等しくはないという点において、エンクロージャの固有共振とは異なる。強制共振は、建設的干渉の結果および定常波が確立されるように、空洞に注入されるエネルギーを考慮に入れるプローブ長さに沿って、プローブ位置を決定することにより達成されてもよい。この場合にエンクロージャに注入されるエネルギーは、空洞内の振動電界領域をセットアップするが、共振空洞の固有共振周波数fnにおいて存在するであろう定常波とは異なる。この強制共振から励磁されたEM界は、共振空洞の固有共振で見出された磁場構造とは異なるが、それでも、プローブの適正なプローブ配置により、RFIDタグ呼掛けのためにエンクロージャに確立されてもよい。そのようなものは図8に示され、強制共振ff結合電力の曲線が、固定共振fnの場合の曲線に近いことに留意されたい。
【0047】
ここで図9を参照すると、2つのエネルギー注入プローブを有するエンクロージャ120が提供される。第1のプローブ86は、TE01モードを確立するために図5によりエンクロージャ120に容量結合される。第2のプローブ114は、TE01モードを確立するために図6によりエンクロージャ120に容量結合される。これらの2つのプローブはいずれも、エンクロージャの固有共振周波数fn以外の周波数ffでエネルギーを注入するためにエンクロージャに結合される。エンクロージャの天井126および壁128に関連するそれらのプローブの配置は、エネルギーをエンクロージャに最適に結合して、内部に配置されうるRFIDタグを読み取るためにエンクロージャ内に堅固なEM界を確立するエンクロージャ120内の強制共振を結果としてもたらす。本発明の態様による、エンクロージャの壁に関連するそれらのプローブの配置は、図8に示される強制共振曲線ffを結果としてもたらす。
【0048】
図10を簡単に参照すると、エンクロージャ120に対するエネルギー源122のインピーダンスを整合するように機能するインピーダンス整合回路121が示される。インピーダンス整合回路は、アクティブ化エネルギーをエンクロージャ120に供給する同軸ケーブル122と、エンクロージャの金属製天井126の穴を経由する容量結合プローブ88との間に位置する。穴は図10の図面に示されていないが、プローブを金属製天井から電気的に絶縁する絶縁体123が示されている。この場合、整合回路121は、エンクロージャ120によるエネルギーの反射を低減するために使用される抵抗減衰器124のみから成る。しかし、当業者には理解されるように、容量分および誘導分は、エンクロージャ内および結合88内に存在する可能性が高い。一方、図11は、同軸ケーブル/エネルギー源122とエンクロージャ120のインピーダンスを整合する際に使用する受動無効分を有するインピーダンス整合回路124を表す。この例示的なインピーダンス整合回路124において、誘導分125および容量分127は連続して接続されるが、抵抗分の追加およびその他の接続構成を含むその他の構成も可能である。
【0049】
図10および図11に示される抵抗器、誘導器、およびキャパシタのような受動コンポーネントは、エネルギー源とエンクロージャのインピーダンスを整合する整合回路を形成するために使用されてもよい。これは、電力をエンクロージャに結合する際に役立つ。しかし、受動整合回路は、空のエンクロージャ、部分的に装荷された、または完全に装荷されたエンクロージャのような、特定のエンクロージャ装荷のインピーダンス整合を向上させる。しかし、エンクロージャの内容物はさまざまであるので、インピーダンス整合は、エンクロージャのインピーダンス特性を変化させるようなエンクロージャ内の内容物の変動性により、最適化されないこともある。
【0050】
エンクロージャ積載の変動により生じたこの非最適インピーダンス整合は、閉ループ検知回路を使用して前方および反射電力を監視する能動インピーダンス整合回路の使用により克服されてもよい。ここで図12を参照すると、誘導器132、キャパシタ134、または抵抗器(図示せず)のような1つまたは複数の固定値受動コンポーネントを備える能動整合回路130が提供される。加えて、同調可能キャパシタ134のような、1つまたは複数の可変リアクタンス・デバイスが回路に組み入れられ、それらの同調可能デバイスがこれを能動インピーダンス整合回路にする。同調可能キャパシタ134は、バラクタ・ダイオード、スイッチド・キャパシタ・アセンブリ、MEMSキャパシタ、またはBST(チタン酸バリウムストロンチウム)キャパシタの形態をとることができる。制御電圧は、同調可能キャパシタ134に印加され、デバイスによる容量提供を変えるように変更される。同調可能キャパシタ134は、プローブ140とエンクロージャ142の間のインピーダンス整合を能動的に変更する能力を提供する。
【0051】
能動整合回路を完成するため、2つの電力センサ146と共に双方向カプラ144が組み入れられてもよい。双方向カプラ144および電力センサ146は、RFID送受信機148と能動整合回路130とエンクロージャ142の間の前方および反射電力を感知する機能を提供する。比較器150による前方および反射電力の比率の連続監視は、プローブ140インピーダンスのエンクロージャ142への整合を維持するように同調可能キャパシタ134を調整するために使用するメトリックを提供する。エンクロージャの内容物が変化する際にインピーダンス整合を連続的に監視して向上させる機能は、能動整合回路130により提供される。
【0052】
ここで図13の垂直断面図を参照すると、2つの天井取り付け160プローブ・アンテナ162および164が、エンクロージャ内に取り付けられているのが示されるが、これは本明細書において、この実施態様ではファラデー箱として動作する空洞166と称されてもよい。示されるように、ファラデー箱166は、複数の壁(うち1つが示される)168、背面170、底面172、天井160、および前面161(前壁の位置のみが示される)を備える。空洞を形成するすべての表面は、導電性であり、相互に電気的に接続され、2つのプローブ162および164により注入されたエネルギーの周波数ffを伝導することができるように構造的に形成される。この実施形態において、空洞166は、図2に示される医薬品保管庫と類似する医薬品保管庫の一部を形成しうる金属製フレーム167として構築される。その金属製フレームにはスライド可能な引き出しが取り付けられてもよい。この実施形態におけるスライド可能引き出しは、電気的に不活性な材質で形成される、すなわち、前面を除いては導電性ではない。引き出しが保管庫内にスライドされて閉鎖構成になると、引き出しの導電性前面パネルは、金属製フレーム167の別の部分(複数可)と電気的に接触し、それによりファラデー箱167の前壁161を形成する。
【0053】
各プローブの中央伝導体180による空洞への貫通または保持の量は、最適な結合を達成するように選択される。プローブの屈曲部分94の長さは、より良好なインピーダンス整合をもたらすように選択される。空洞の壁に関連するプローブの位置は、空洞内の定常波を作成するように選択される。この実施形態において、プローブ・アンテナ162および164は、それぞれ前壁161および後壁170から特定の距離D1およびD3を隔てて配置される。本発明の1つの態様によれば、それらのプローブ・アンテナは、他のプローブが非アクティブ化された後に順次にアクティブ化されるだけである。この構成が、建設的干渉が生じるように注入されたエネルギー波が同相である定常波を結果としてもたらすことが判明した。
【0054】
図14は、挿入されるべき物品格納引き出しに堅固なEM電界を確立するためのファラデー・タイプのエンクロージャ166に位置する2つのプローブ・アンテナ162および164を同様に示す、図13のプローブ構成を示す前面斜視図である。ここでも同様に、ファラデー空洞166が金属製フレーム167として構築されることに留意されたい。この図において、空洞は、「箱」の前面がないという点において不完全である。1つの実施形態において、この前面は、スライド可能引き出しの導電性前面パネルにより提供される。引き出しが保管庫内にスライドされると、前面パネルは、金属製フレーム167の別の部分と電気的に接触し、それによりファラデー箱166を完成するが、引き出しの他の部分はプラスチックであるか、または非導電性である。本明細書において説明され示される実施形態において、2つのプローブ・アンテナ162および164はいずれも、フレーム166の側壁166および168の間の中心線に沿って位置する。1つの実施態様におけるエンクロージャは幅19.2インチ(47.8cm)であり、プローブ・アンテナは各側壁から9.6インチ(24.4cm)の間隔があけられていた。この2つの側壁の中心の位置は、1つの実施形態の場合における便宜を図ったものであった。プローブは、別の実施形態において他の場所に配置されてもよい。この実施形態において、プローブ162および164の相互の間隔は、それらが順次にアクティブ化されるので、あまり重要ではない。示されていないが、2つの受信アンテナはまた、空洞166内にあるアクティブ化RFIDタグから応答信号を受信するためにファラデー箱166に配置される。
【0055】
プローブが各々、図13に示されるように、空洞の天井160との容量結合のために使用される屈曲部分を有することもまた、図面の参照から留意されるであろう。前方プローブ162は前方に屈曲しているが、後方プローブ164は後方に屈曲している。この構成の目的は、さらに空間的な多様性を得ること、および引き出しに確立されたEM界によるより良好なカバレッジを得ることであった。空洞166内に堅固な電界を達成するために、その他の配列が可能であってもよい。加えて、2つのプローブは、エンクロージャ166のより良好なEM界カバレッジがもたらされるように、特定のエンクロージャ166に使用された。
【0056】
図15は、図13および図14の二重プローブ・アンテナ162および164を示し、明確にするために引き出しを除いた、切開側面斜視図である。前方プローブ162は、示されるように、動作周波数Ffの1/2λだけ左側壁から間隔をあけて配置されている。プローブが各々、図13に示されるように、エンクロージャ166の天井160との容量結合のために使用される屈曲部分を有することが留意されるであろう。前方プローブ162は、エンクロージャのさらに前方部分との結合のために前方に屈曲しているが、後方プローブ164は、さらに空間的な多様性を得るように、および引き出しのEM界によるより良好なカバレッジを得るように、エンクロージャ166のより後方の部分との結合のために後方に屈曲している。エンクロージャ内に堅固な電界およびさらに空間的な多様性を達成するために、その他の配列が可能であってもよい。
【0057】
図16は、フレーム167内にスライド可能に取り付けられた引き出し180の一部を示す、ファラデー箱166を形成するフレーム167を示す前面上向斜視図である。引き出しの前面金属製パネルは、そのスライド動作がさらに明確に見えるように除かれている。二重天井取り付けプローブ・アンテナ162および164が、電磁的に不活性の保護カバー182により覆われて保護されていることも留意されるであろう。引き出しは、プラスチックまたは低いRF定数を有するその他の電磁気的に不活性な素材のような、非金属素材で形成される。引き出しの背面184もまた、フレーム167にあるコイル186およびファン188を備える冷却システムが見えるように除かれている。この場合、引き出し180は、金属製スライディング金具により、ファラデー箱にスライド可能に取り付けられる。引き出しのスライディング金具はエンクロージャ166のフレーム167の端に非常に接近しており、エンクロージャの側壁168の金属製スライド金具と電気的に接触することもあるので、それらの金属製レールがエンクロージャ内に確立されたEM界に及ぼす影響はほんのわずかであろう。
【0058】
図17は、図16の対角における上向の前面斜視図であるが、引き出しは除かれている。この実施形態においてフレーム167は、引き出し180のスライドを受けるための取り付けレール192を含む。この実施形態において、取り付けレールは金属素材で形成されるが、これはファラデー箱の側面168にしっかりと取り付けられているので、箱と電気的に導通している。図はまた、引き出しに格納されている物品へのアクセスが得られるように、引き出しの外側へのスライドを補助するために使用されるバネ機構194を示す。バネは、引き出しのラッチが解放されると、引き出しを外側に自動的に押し出すように構成される。
【0059】
図18は、図13〜図15に示されるフレーム167の天井160における2つのTE01モードの容量結合プローブ162および164の配置の寸法を示す概略図である。この実施形態において、RFIDタグでの動作周波数は915MHzであり、したがって0.32764メートルすなわち1.07494フィートの波長を有する。したがって、2分の1の波長は、0.16382すなわち6.4495インチである。各々のプローブの容量結合屈曲部分200の長さは、5.08cmすなわち2.00インチである。エンクロージャへのプローブの軸方向延長202は、エンクロージャ166への絶縁体204から測定されるように、3.81cmすなわち1.50インチである。実施形態におけるプローブの構成および配置は、915MHzの動作周波数を基にした。1つの実施形態において、エンクロージャ166は、16.1インチ(40.89cm)の奥行き、19.2インチ(48.77cm)の幅、および3インチ(7.62cm)の高さを有する。このサイズおよび形状(長方形)のエンクロージャならびに915MHzの動作周波数に最適なプローブ配置は、前方プローブが前壁から5.0インチ(12.7cm)間隔をあけ、後方プローブが後ろ壁から5.0インチ(12.7cm)間隔をあけることであったことが判明した。前述のように、この実施形態においてプローブは、順次にしかアクティブ化されない。
【0060】
図19は、2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナ210および212、1つの実施形態において、それぞれのアンテナとアンテナがSMAコネクタ(図示せず)に接続されるエンクロージャ背面との間に配置されたアンテナのマイクロストリップ伝導体214および216の、図16のエンクロージャ166内のサイズおよび配置を示す概略図である。給電ライン58(図3)は、それらのSMAコネクタに接続されて、さらなる処理のためにRFID信号の通信に使用するコンピュータ44にルーティングされてもよい。一部のマイクロストリップ・コンポーネントの間隔の寸法は、インチ単位で提供される。9.7インチの間隔は、24.64cmに相当する。0.67インチのマイクロストリップ・ラインの幅は、17.0mmに相当する。1.4インチの間隔は、3.56cmに相当する。受信アンテナのその他の構成および種類、ならびに異なる数のそのようなアンテナが使用されてもよい。本発明の実施形態において、受信パッチアンテナがファラデー箱の金属表面に接触しないように、受信アンテナは、金属製エンクロージャフレーム167の底部内側表面で絶縁材に取り付けられる。
【0061】
ここで図20を参照すると、上記で説明されるエンクロージャの電界強度または電界の強さは、ボルト/メートル単位で示される横軸およびメートル単位で示される縦軸により示される。最大電界強度は、前壁から5.0インチ(12.7cm)に配置されたプローブによる約5.0インチ(.127m)において、および915MHzの動作周波数で生じることが分かる。ここで図21を参照すると、スケールは縮小されているが、電界強度の大幅な上昇が5.0インチにおいて認められる。また、電界強度が右壁で減少するが、左壁に非常に接近して強い状態を維持することがより明確に認められる。したがって、実施形態において、右壁から5.0インチ(12.7cm)に配置されて、図21に示される電界強度とミラーイメージの電界強度をもたらす第2のプローブが使用された。2つのプローブ162および164は、順次にアクティブ化され、同時にアクティブ化されることはない。エンクロージャ166のより良好なEM界カバレッジが2つのプローブにより得られること、および前壁161に接近して配置された物品のRFIDタグが前方プローブ162によりアクティブ化されること、および後壁170に接近して配置された物品のRFIDタグが後方プローブ164によりアクティブ化されること(図13)が留意されよう。
【0062】
論理に制約されることを意図してはいないが、正方形または長方形の非共振空洞においてTEモードのプローブ位置を導き出す際に、以下の式が有用であってもよい。
【数1】
ここで、
N=正のゼロ以外の整数、たとえば1、2、3など
L1=プローブと後壁との距離
L2=プローブと前壁との距離
λg=空洞の波長
L1はTEモードに対してゼロにはなり得ない、つまりTEモード励磁のプローブは前壁または後壁にあってはならないことを意味する。TMモードの場合、式は同じであるが、Nはゼロおよびその他の正の整数と等しくてもよい。プローブ位置は、前壁または後壁からλg/2にはなり得ない。L1およびL2は、Nが式を満足する正の整数となりうるように選択される。たとえば、前述のエンクロージャ166の場合、以下のようになる。
L1=4.785インチ
L2=11.225インチ
λg=12.83インチ
ゆえに、
【数2】
【0063】
実際のエンクロージャは、式により指示される位置(4.785インチ)とはわずかに異なる場所(5.0インチ)に位置するプローブを有していたが、これは反射信号からの位相の変化を生じるプラスチックの引き出しの空洞への挿入によるものであったと考えられる。上記の式は、前壁および後壁からの反射位相が等しい、すなわちプローブ位置において「同相」であるように立てられる。
【0064】
エンクロージャの波長λgは、導波管の式を使用して計算されてもよい。長方形空洞の式は以下に示される。この計算には遮断周波数が必要とされる。式は、円筒形空洞またはその他の形状に対して変化する。
【0065】
遮断周波数は、gがゼロになる時点である。したがって、ヘルツ単位の遮断周波数は次のとおりである。
【数3】
【0066】
メートル単位の遮断周波数は次のとおりである。
【数4】
ここで、
a=内側の幅
b=内側の高さ
m=「a」方向の電界の1/2波長変動の数
n=「b」方向の電界の1/2波長変動の数
ε=誘電率
μ=透磁率
【0067】
最低の遮断周波数を持つモードは、主モードと呼ばれる。TE10モードは、長方形導波管の非ゼロ電界式を与える最小可能モードであるので、これはa>bとする長方形導波管の主モードであり、ゆえに主周波数は次のとおりである。
【数5】
【0068】
電波インピーダンスは、横の電界と磁界の比率として定義されるゆえに、インピーダンスは次のとおりである。
【数6】
【0069】
管内波長は、導波管に沿った2つの等しい位相面の間の距離として定義され、次の式と同じである。
【数7】
ここで、
【数8】
および
【数9】
【0070】
図22は、図2に示されるような多段引き出しの医薬品保管庫のブロック電気および信号図を示す。この場合、保管庫は8段の引き出し220である。各引き出しは、2つの上部アンテナ、2つの底部アンテナ、および引き出しを保護するためのロック・センサ222を含む。各引き出しのアンテナへの信号およびアンテナからの信号は、RFマルチプレクサ・スイッチ224を通じて供給される。この実施形態において、各RFマルチプレクサ・スイッチ224は、2つの引き出しのRF信号のルーティングを処理する。RFIDアクティブ化電界およびRFID受信信号は、それぞれのRFマルチプレクサ・スイッチ224を経由して、主RFIDスキャナ230に供給される。スキャナ230出力は、この場合は有線接続234および無線接続236により、関連情報のリモート・ロケーションへの通信に使用するためにマイクロプロセッサ232に方向付けられる。電力接続、配電、バックアップ・バッテリ、相互接続PCBA、USBサポート、冷却などのような、さまざまなサポート・システムもまた図20に示される。
【0071】
1つの実施形態によれば、引き出しは、連続的に監視される。各引き出し内で、アンテナは、関連するマルチプレクサ224により順次アクティブ化される。信号および電気制御システムのその他の実施形態も可能である。
【0072】
RFIDタグは本明細書において実施形態のように使用されるが、電磁エネルギーを通じて通信するその他のデータ・キャリアもまた、使用可能であってもよい。
【0073】
コンテキストに特に要求のない限り、明細書および後続の特許請求の範囲全体を通じて、「備える(comprise)」、ならびにその「備える(三人称:comprises)および「備えている(comprising)」のような変化形は、制限のない包括的な意味で、「含むが、それに限定されない(including、but not limited to)」と解釈されるものとする。
【0074】
本発明は、現在最も実践的かつ好ましい実施形態であると見なされる事項に関連して説明されてきたが、本発明が、開示される実施形態および要素に限定されないこと、しかし、逆に、さまざまな変更、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる特徴、等価の配列、および等価の要素の組み合わせを網羅することが意図されていることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、追跡対象の物品からデータを自動的に収集する分野に関し、より具体的には、タグ付き物品の識別に使用するためにエンクロージャ内に堅固な電磁界を確立するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を識別および追跡する方法には、視覚的、光学的(たとえば、バーコードを付ける)、磁気的、RFID、計量などを含む多数の方法がある。追跡のための自動システムが望ましい場合、識別データが無線で取得されうるので、RFIDは候補である。RFIDタグはコストを削減させてきたが、そのことでRFIDは、そのようなアプリケーションにとってさらに一層魅力的なものになった。
【0003】
電波方式認識(「RFID(radio−frequency identification)」)とは、応答デバイス(RFID「タグ」または応答機(transponder)として知られる)を誘導して自身を識別するために、および場合によっては、追加的に格納されたデータを提供するために、電磁エネルギー(「EMエネルギー」)を使用することである。RFIDタグは通常、メモリ、回路、およびアンテナを形成する1つまたは複数の導電性トレースを有する半導体デバイスを含む。通常、RFIDタグは、呼掛機(interrogator)とも呼ばれるリーダーから受信したRF呼掛け信号に応答して、半導体デバイスに格納されている情報を提供する応答機として機能する。一部のRFIDタグは、パスワードおよび/または暗号のような、セキュリティ手段を含む。多くのRFIDタグはまた、情報が、RF信号を介して半導体メモリに書き込まれるかまたは格納されるようにする。
【0004】
RFIDタグは、追跡されるべき物品に組み入れられるかまたは添付されてもよい。場合によっては、タグは、接着剤、テープ、またはその他の手段により物品の外側に添付されてもよく、別の場合には、タグはパッケージングに含まれるか、物品の容器内に配置されるか、または衣類に縫い込まれるなど、物品内に挿入されてもよい。RFIDタグは、通常はチェックディジットが添付された数バイトの単純な通し番号である一意の識別番号で製造される。この識別番号は、製造中にタグに組み入れられる。ユーザは、この通し/識別番号を変更することはできず、製造業者は、各通し番号が1回しか使用されないことを保証する。この構成は、RFIDタグが読み取り専用であり、各自の識別番号を持つ呼掛け信号にのみ応答するという点で、技術の低コストエンドを表す。通常、タグは、その識別番号で継続的に応答する。タグへのデータ送信は、可能ではない。それらのタグは、極めて低コストであり、大量に生成される。
【0005】
そのような読み取り専用RFIDタグは通常、追跡されるべき物品に永続的に添付され、いったん添付されると、タグの通し番号がコンピュータ・データベース内のそのホスト物品に関連付けられる。たとえば、特定のタイプの薬が、数百または数千の小型の薬瓶に入れられているとする。製造の時点、または医療施設での薬瓶の受領時点において、RFIDタグは各薬瓶に添付されている。RFIDタグを永続的に添付された薬瓶は各々、受領時に医療施設のデータベースにチェックインされる。RFID識別番号は、データベース内で、薬の種類、薬瓶の投与量、およびおそらくは薬の有効期限のようなその他の情報に関連付けられてもよい。その後、薬瓶のRFIDタグが呼掛けられ、その識別番号が読み取られると、医療施設のデータベースは、その識別番号を、薬瓶に関するその格納済みデータと照合することができる。次いで、薬瓶の内容、およびデータベース内に格納されている任意の他の特徴が決定されてもよい。このシステムは、施設が、そのようなデータをRFIDタグに組み入れるのではなく、インベントリに物品に関する包括的なデータベースを保持することを要求する。
【0006】
タグの目的は、物品が移動されるときに、位置確認され、識別され、追跡されうるように、製造設備、輸送機関、医療施設、保管地域などのような特定の施設において物品の存続期間を通じて物品にタグを関連付けることである。たとえば、特定の医療品がどこにあるかを医療施設で常時認識していることで、緊急事態が発生したときに必要な医薬品を見つけることを大幅に容易にすることができる。同様に、施設内で物品を追跡することは、さらに効率的な調剤および在庫管理システムの生成、および施設内の作業フローの向上を補助することができる。加えて、有効期限が監視されてもよく、より古く有効期限間近の物品は、直ちに調剤されるように列の前方に移動されてもよい。その結果、より優れた在庫管理およびコスト低減がもたらされる。
【0007】
その他のRFIDタグは、書き込み可能であり、RFIDタグが添付される物品に関する情報が個々のタグにプログラムされてもよい。そうすることで、施設のコンピュータ・サーバが使用不可能な場合に顕著な利点をもたらすことができるが、そのようなタグは、タグ内のメモリのサイズに応じてさらにコストがかさむ。タグが添付される物品に含まれる情報で個々のタグをプログラミングすることは、さらなる費用を伴う。
【0008】
RFIDタグは、製造業者、受け入れ側、その他によって追跡されるべき容器または物品に適用されてもよい。製造業者がタグを製品に適用する一部の場合において、製造業者はまた、各タグの識別番号をそれぞれの物品ごとの内容にリンクするそれぞれのデータベース・ファイルを供給する。その製造業者が供給するデータベースは、顧客のデータベース全体に容易にインポートされて、それにより顧客がデータベースを作成する費用を節約できるファイルの形式で、顧客に配布されてもよい。
【0009】
現在使用されている多くのRFIDタグは、バッテリまたはその他の自律型電源装置を備えてはおらず、その代わりに、タグをアクティブ化する電力を提供するためにRFIDリーダーにより提供される呼掛けエネルギーに依存する必要があるという点において、受動的である。受動的RFIDタグは、タグのアクティブ化およびその格納済みデータの伝送を達成するために、特定の周波数帯域および特定の最小強度のエネルギーの電磁界を必要とする。もう1つの選択肢は、能動的なRFIDタグであるが、そのようなタグは、タグをアクティブ化する電力を供給するために付随のバッテリを必要とするので、タグのコストを増大させて、多数のアプリケーションで使用するには望ましくないものにしてしまう。
【0010】
識別されるべき物品の物理的サイズ、それらの位置、および容易に到達できることのような、RFIDタグアプリケーションの要件に応じて、タグはRFIDリーダーにより短距離または長距離から読み取られる必要がある。そのような距離は、数センチメートルから、10メートル以上までさまざまであってもよい。加えて、米国およびその他の国では、そのようなタグが動作を許可される周波数帯域は制限されている。一例として、125KHzおよび13.56MHzのような、より低い周波数帯域は、一部のアプリケーションでRFIDタグに使用されてもよい。この周波数帯域において、電磁エネルギーは、液体およびその他の誘電体による影響をより受けにくいが、短い呼掛け距離の制限を受ける。915MHzおよび2.4GHZのような、RFID使用が許可されるより高い周波数帯域において、RFIDタグは、より長い距離で呼掛けされてもよいが、タグが添付される素材が異なるので、より急速に離調する。それらのより高い周波数において、接近して配置されたRFIDタグは、タグの間隔が短くなっているので、相互に離調することも判明している。
【0011】
RFIDタグがエンクロージャの内部に配置されうる多数の一般的な状況がある。それらのエンクロージャの一部は、全体的または部分的に金属または金属被覆の表面を有することができる。エンクロージャの例は、金属エンクロージャ(たとえば、輸送用コンテナ)、部分金属エンクロージャ(たとえば、金属と他の素材の組み合わせで作られる筐体を有する航空機、バス、列車、および船舶のような車両)、および非金属エンクロージャ(たとえば、木製の倉庫および建物)を含む。それらのエンクロージャに配置されうるRFIDタグを持つ物体の例は、ばらの品物、包装された品物、倉庫内の小包、建物内の在庫品目、小売店内のさまざまな商品、および車両内のさまざまな携帯用品目(たとえば、乗客識別カードおよびチケット、手荷物、貨物、ライフジャケットおよびマスクのような個々の救命備品)を含む。
【0012】
RFIDタグの読み取り範囲(すなわち、呼掛けおよび/または応答信号の範囲)は制限されている。たとえば、一部のタイプの受動RFIDタグは、約12メートルの最大範囲を有するが、これは好ましいアンテナ方位で理想的なフリースペース条件においてのみ達成されうる。現実の状況において、観測されるタグ範囲は、多くの場合、6メートルまたはそれ未満である。したがって、上記で説明される一部のエンクロージャは、個々のRFIDタグの読み取り範囲をはるかに超える大きさを有することがある。RFIDリーダーが、そのようなエンクロージャ内で対象のRFIDタグに極めて接近して配置されうるのでない限り、タグはアクティブ化されて読み込まれることはない。加えて、エンクロージャの金属表面は、RFIDリーダーとRFIDタグとの間で交換される必要があるRF信号の深刻な障害をもたらし、それらの金属表面の裏側にあるRFIDタグの検出を困難または不可能にする。
【0013】
上記のことに加えて、RFIDシステムの検出範囲は通常、短距離への信号強度より制限され、13.56MHzシステムの約30センチメートル未満であることも多い。したがって、ポータブル・リーダー・ユニットは、特にタグ付き品目が静止または固定の単一リーダー・アンテナの検出範囲よりも著しく大きいスペースに格納されている場合、すべてのタグ付き品目を検出するためにタグ付き品目のグループを通過される必要がある。あるいは、より多くのタグ付き品目を検出するのに十分な出力および範囲を備える大型のリーダー・アンテナが使用されてもよい。しかし、そのようなアンテナは扱いにくいこともあり、許容限界を超えて放射出力の範囲を増大させる場合がある。さらに、それらのリーダー・アンテナは、スペースが貴重であり、そのような大型のリーダー・アンテナを使用することが高価で不便になるような店舗または他の場所に配置される。もう1つの可能な解決策において、複数の小型アンテナが使用されてもよいが、そのような構成は、スペースが貴重であり、配線を隠すことが好ましいかまたは必要とされる場合にはセットアップすると見栄えもよくなくなることがある。
【0014】
医薬品および医療デバイスの場合、必要が生じたらRFIDタグ付きデバイスおよび物品が迅速に見つけられるよう、また有効期限のような他の目的のために識別されうるように、正確な追跡、在庫管理システム、調剤システムを開発することが望ましい。医療施設で使用される医薬品または調剤保管庫の場合、多数の医療デバイスおよび物品が、複数の引き出し内のように、密接して配置されている。それらのような保管庫は通常、金属製であり、保管されている物品の識別のために外部RFIDシステムを利用することが困難になる可能性もある。場合によっては、そのような保管庫は、高い盗難率にさらされる麻酔薬またはその他の医薬品が庫内にあるためロックされている。したがって、保管庫の内容物の手作業による識別は、アクセスを制御する必要があるので困難である。
【0015】
そのような保管庫に内部RFIDシステムを提供することは、難題をもたらす可能性がある。内部物品が収納庫内で無作為な配置を有することができる場合、RFIDシステムは、RFIDシステムが到達不可能な「デッドゾーン」を生じないものである必要がある。一般に、デッドゾーンは、RFIDリーダー・アンテナとRFIDタグとの結合のレベルが、タグの正常な読み取りをシステムが行なうのに十分ではない領域である。そのようなデッドゾーンの存在は、タグとリーダー・アンテナが直交面にある方位付けにより生じることがある。したがって、デッドゾーンに配置された物品は検出されないこともあり、その結果タグ付き物品の追跡が不正確になる場合がある。
【0016】
医療分野において多くの場合、そのようなエンクロージャにおいて物品に添付された膨大数のタグを読み取る必要があり、前述のように、そのようなエンクロージャには、セキュリティ上の理由によりアクセスが制限されている。エンクロージャの物理的寸法は、膨大数の物品またはさまざまなサイズおよび形状の物品を収容するように変更する必要がある。そのような密接して配置されている医薬品または医療デバイスの正確な識別およびカウントを得るために、堅固な電磁エネルギー界がエンクロージャ内に適切な周波数で提供されて、そのような格納されている物品およびデバイスのすべてを、それらのタグがすべて確実にアクティブ化されて読み取られるように取り囲む必要がある。そのような医療デバイスは、それらの容器の外側にRFIDタグを添付されてもよく、RFIDタグ(および関連するアンテナ)を上方、横、下方、または無作為なパターンでその他の角度で示して、さまざまな向きで格納されてもよい。
【0017】
そのような堅固なEMエネルギー界を生成することは、容易な作業ではない。エンクロージャが、動作の周波数で共振するサイズを有する場合、共振定常波がエンクロージャ内で生成されうるので、堅固なEM界を生成することがより容易となりうる。しかし、RFID界において、動作の使用可能な周波数は厳重に制御され、制限される。許容可能RFID周波数のうちの1つと一致する共振周波数を有していない特定の物品の格納に、エンクロージャが望ましいことが判明した。したがって、堅固なEM界は、別の方法で確立される必要がある。
【0018】
加えて、EMエネルギーが、内部のRFIDタグを読み取るためにそのようなエンクロージャに導入される場合、効率的なエネルギー伝達が重要である。静的条件下において、エンクロージャへのEMエネルギーの入力または注入は、エネルギーを伝搬する伝導体とエンクロージャの間に位置する単純なインピーダンス整合回路により最大化されうる。当業者にはよく知られているように、そのようなインピーダンス整合回路またはデバイスは、エンクロージャへの電力伝達を最大化し、しかもエンクロージャからの電力の反射を最小化する。エンクロージャのインピーダンスが、エンクロージャへの物品の導入またはエンクロージャからの物品の取り出しにより変化する場合、静的インピーダンス整合回路は、エンクロージャに最適なエネルギー伝達を提供しないこともある。エネルギー伝達およびその結果得られるエンクロージャ内のRF電界強度がしきい値レベルを下回った場合、エンクロージャ内の物品上の一部または多くのタグは自身を識別するためにアクティブ化されることはなく、効果的ではない在庫システムのままになってしまう。
【0019】
EMエネルギーの使用を最小に、または少なくとも控えめに保持することが、多くの医療施設の目標である。RFIDタグを見つけてデータを抽出するために高出力リーダーを使用することは、一般に、医療施設においては望ましいことではないが、わずかな作業者しかいない倉庫または航空貨物室においては許容可能であってもよい。広い領域においてEMエネルギーの幅広ビームを放射することは、EMエネルギーが近隣の感度の高い領域に迷い込むこともあり、望ましくない。必要な識別情報をタグから取得するためにリーダーを操作する際の効率は、目標である。RFIDタグが読み取られる多くの場合において、ハンドヘルド・リーダーが使用される。そのようなリーダーは、特定の場所においてすべてのRFIDタグに到達するためにエネルギーの比較的幅広のビームを伝送する。各タグをアクティブ化してそれを読み取る最終結果は達成されうるが、エネルギーの伝送は、ユーザの目的によらない限り制御されない。加えて、これは、1つまたは複数の個人のサービスを必要とする手動システムであり、これもまた、スタッフが限られている施設において望ましいことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、当業者は、囲まれた領域のすべてのRFIDタグをアクティブ化して読み取るためにエネルギーの有効利用が行なわれるRFIDタグ・リーダー・システムの必要性を認識してきた。無作為な向きで配置されたタグをアクティブ化して読み取るためにエンクロージャ内に堅固なEM界を確立するさらなる必要性もまた、認識されてきた。金属製保管庫に格納されている物品を保管庫にアクセスする必要なく識別するための自動化システムのさらなる必要性が認識されてきた。エンクロージャのインピーダンスの変化に基づいて整合回路操作を自動的に調整する動的整合回路のさらなる必要性が認識されてきた。本発明は、これらの必要性およびその他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0021】
簡潔に、および概括的な表現で、本発明は、物品に添付されるデータ・キャリアを読み取るシステムであって、データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギー(EM)に応答し、それに応じてデータ・キャリアは一意の識別データを提供するシステムを対象とし、システムは、導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、エンクロージャの壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーをエンクロージャに注入するように構成され、エンクロージャの壁に関するプローブの位置はエンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成されたエンクロージャ内に位置する格納デバイスと、エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備える。
【0022】
本発明によるさらなる態様において、周波数f1は、エンクロージャの共振の固有周波数f2とは異なり、プローブの位置は、壁からのEMの反射位相がプローブ位置において等しい、すなわちプローブ位置において同相であるように選択される。
【0023】
さらにより詳細な態様において、システムは、プローブのインピーダンスをエンクロージャのインピーダンスにさらに密接に整合するように構成されたインピーダンス整合回路をさらに備える。インピーダンス整合回路は、能動インピーダンス整合回路である。
【0024】
本発明によるその他の態様において、格納デバイスは、エンクロージャに入る、およびエンクロージャから出るように適応された引き出しを備える。引き出しの一部は、引き出しがエンクロージャに関して所定の位置にあるとき、導電性エンクロージャの一部を形成する。引き出しは、導電性エンクロージャの一部を形成する引き出しの一部を除いて、非導電性である。さらに、引き出しは、エンクロージャの開口部を通じてエンクロージャの中に、およびエンクロージャから外にスライド可能であり、引き出しは、導電性であって、引き出しがエンクロージャ内の所定の位置までスライドされると導電性エンクロージャに接触する前面パネルを有する。
【0025】
もう1つのさらに詳細な態様において、受信アンテナは、プローブから格納デバイスの対向側に位置する。
【0026】
またさらなる態様において、システムは、複数のプローブをさらに備え、各プローブはエンクロージャの壁を通じて取り付けられ、各々のプローブは電磁(EM)エネルギーを各自のそれぞれの位置においてエンクロージャに注入するように構成され、エンクロージャの壁に関する各プローブの位置は、エンクロージャの一部のカバレッジに電磁界を提供するためにエンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択され、プローブの位置は、プローブが各自のそれぞれのEMエネルギーをエンクロージャに注入して複合EM界をもたらすために順次アクティブ化されうるようにさらに選択される。
【0027】
さらにその他の詳細な態様において、データ・キャリアが接続された物品を追跡するためのシステムであって、データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギー(EM)に応答し、それに応じてデータ・キャリアは一意の識別データをブロードキャストするシステムが提供され、システムは、導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有し、f2はf1とは異なるエンクロージャと、エンクロージャの壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーをエンクロージャに注入するように構成され、エンクロージャの壁に関するプローブの位置はエンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、エンクロージャ内に移動可能に配置された引き出しであって、それぞれのデータ・キャリアを有する物品を格納するように構成された引き出しと、エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備える。
【0028】
本発明によるさらにもう1つの態様において、エンクロージャ内に堅固な電磁界を確立するためのシステムが提供され、システムは、導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、エンクロージャの壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギー(EM)をエンクロージャに注入するように構成され、EMはf1の周波数を有し、f1とf2は異なり、エンクロージャの壁に関してプローブの位置は、エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成されたエンクロージャ内に位置する格納デバイスと、エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備える。
【0029】
本発明の特徴および利点は、添付の図と合わせて読まれるべき以下の詳細な説明からさらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】医療調剤保管庫内に配置されうる引き出しを示す概略図であり、引き出しに無作為に配置された複数の医薬品の格納を示し、それらの医薬品は各々無作為に方向付けられた一体型RFIDタグを有する。
【図2】5つの引き出しを有し、そのうちの1つが図1の概略図と類似する、医薬品調剤保管庫を示す斜視図であり、保管庫はまた、保管庫内に格納された物品に添付された任意のRFIDタグを定期的に読み取ることにより保管庫へのアクセスを制御して在庫追跡を実行するため、および識別された物品をリモート・コンピュータにレポートするための内蔵コンピュータを有する。
【図3】RFIDリーダーがアクティブ化EMエネルギーを単一の送信アンテナでRFIDタグを含む引き出しに送信し、単一の受信アンテナでアクティブ化RFIDタグから出力されたデータを受信し、コンピュータが処理のためにアクティブ化エネルギーの送信およびアクティブ化RFIDタグからのデータの受信を制御する実施形態を示すブロックおよび流れ図である。
【図4】RFIDリーダーがアクティブ化EMエネルギーを2つの送信アンテナでRFIDタグを含む引き出しに送信し、3つの受信アンテナでアクティブ化RFIDタグから出力されたデータを受信し、図3と同様に、コンピュータが処理のためにアクティブ化エネルギーの送信およびアクティブ化RFIDタグからのデータの受信を制御する実施形態を示す、図3と類似するブロックおよび流れ図である。
【図5】単一のプローブおよびコネクタを持つエンクロージャを示す図であり、プローブはEMエネルギーをエンクロージャに注入して、TEモードを励磁するように構成される。
【図6】単一のプローブおよびコネクタを持つエンクロージャを示す図であり、プローブはEMエネルギーをエンクロージャに注入して、TMモードを励磁するように構成される。
【図7】共振エンクロージャの周波数の関数としてエンクロージャ内の結合電力を示すグラフであり、Fnはエンクロージャの固有共振周波数である。
【図8】周波数(横軸)の関数としてエンクロージャ内の結合電力(縦軸)を示すグラフであり、ffは強制共振周波数、またはエンクロージャの共振周波数と等しくはない周波数と称され、fnはエンクロージャの固有共振周波数であり、ff周波数におけるエンクロージャ内の結合電力の堅固な電界の確立を示す。
【図9】各々エンクロージャにEMエネルギーを注入するためのコネクタを持つ2つのプローブを備え、1つのプローブはTMプローブであり、もう1つのプローブがTEプローブであるエンクロージャを示す図である。
【図10】プローブ、コネクタ、およびプローブとエンクロージャのインピーダンス整合を向上させるために使用される減衰器を示す図である。
【図11】プローブ、コネクタ、およびプローブとエンクロージャのインピーダンス整合を向上させるために使用される受動整合回路を示す図である。
【図12】エンクロージャ内に位置するプローブと送受信機との間に接続された能動整合回路を示す図であり、能動整合回路は、同調可能キャパシタ、双方向カプラ、多重電力センサ、閉ループを提供するために使用される比較器、プローブとエンクロージャとのインピーダンス整合を向上させるための可変整合回路を備える。
【図13】明確にするために引き出しを除いた、引き出しの位置における図2の保管庫を示す垂直断面図であり、閉位置の保管庫の適所にあるときの引き出し内に堅固なEM界を確立するための「天井取り付け」構成における2つのプローブ・アンテナの配置を示す。
【図14】挿入されるべき引き出しに堅固なEM界を確立するための2つのプローブ・アンテナを同様に示す、図13のプローブ構成を示す金属製エンクロージャを示す斜視図である。
【図15】明確にするために引き出しを除いた、図13および図14の二重プローブ・アンテナが取り付けられる金属製エンクロージャまたはフレームを示す切開側面斜視図である。
【図16】切開プラスチック製引き出しが金属製エンクロージャ内の適所にある図14を示す前面斜視図であり、電磁的に不活性の保護カバーにより保護された二重天井取り付けプローブ・アンテナをさらに示し、引き出しの背後付近の保管庫の背面に取り付けられた冷却システム・コンポーネントをさらに示す図であって、図はまた、保管庫の開位置と閉位置間で引き出しのスライドを容易にする引き出しスライド機構の部分図も示し、この図で引き出しの前面および背面パネルは除かれている。
【図17】プラスチック製引き出しが完全に除かれた、図16の対角における前面斜視図であり、金属製エンクロージャに取り付けられたEM内部保護カバーにより保護された二重天井取り付けプローブ・アンテナを示し、引き出しのラッチが解放されると引き出しを開位置に自動的に押し出すバネ装荷機能として保管庫の背面に取り付けられた図16の冷却システム・コンポーネントをさらに示す図であって、図はまた、引き出しのスライドを受けるための取り付けレールも示す。
【図18】図13〜図15に示されるエンクロージャの上面における2つのTE01モードのプローブのインチ単位の寸法を加えた概略図である。
【図19】2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナ、および他のコンポーネントとの相互接続のために、1つの実施形態において、それぞれのアンテナとアンテナがSMAコネクタに接続される引き出し背面との間に配置されたアンテナのマイクロストリップ伝導体の、図16の引き出し内のサイズおよび配置を示す概略図である。
【図20】図19の図による位置にエンクロージャ内でプローブが配置されたエンクロージャの実施形態における電界の強さを示す図である。
【図21】エンクロージャの前壁および後壁により近い電界強度のより明確な表示を示す、図20の電界強度図よりも下目盛の図である。
【図22】個々のマルチプレクサ・スイッチ、単一のRFIDスキャナ、および電力コントロールを示す、図2に示されるような多段引き出しの医薬品保管庫のブロック電気および信号図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
これ以降、類似する参照番号がいくつかの図面の中で対応または類似する要素を指定する、本発明の実施形態を説明するための例示的な図面をさらに詳細に参照すると、図1において、一意の識別番号を有するそれぞれのRFIDタグ24を各々備える複数の医薬品22が格納される部分エンクロージャ20の概略図が示される。部分エンクロージャは、正面26、左側面28、右側面30、背面32、および底面34を有する引き出しを備えることができる。これらの物品は、RFIDタグがさまざまな無作為の方向に面した状態で引き出し内に無作為に分散されている。
【0032】
本明細書において実施形態に関して使用されるように、「リーダー」および「呼掛機」は、読み取りまたは読み取り/書き込みすることができるデバイスを示す。データ取り込みデバイスは常に、それが読み取りしかできないか、または書き込むこともできるかどうかにかかわらずリーダーまたは呼掛機と呼ばれる。リーダーは通常、無線周波数モジュール(送信機および受信機、「送受信機」と呼ばれることもある)、制御ユニットおよびRFIDタグへの(アンテナ(複数可)のような)結合要素を含む。加えて、多くのリーダーは、RS−232インターフェイスのような、データを他の場所へ転送するためのインターフェイスを含む。リーダーは、送信時に、RFIDタグがアクティブ化される呼掛けゾーンを有する。呼掛けゾーン内にあるとき、RFIDタグはその電力を、リーダーにより呼掛けゾーンで作成された電界/磁界から得る。順次RFIDシステム(SEQ)において、呼掛け電界は、一定の間隔をおいてオフに切り替えられる。RFIDタグは、それらの「オフ」ギャップを認識するようにプログラムされ、それらはタグの一意の識別番号のようなデータを送信するためにタグによって使用される。一部のシステムにおいて、タグのデータ・レコードは、タグが製造される時点で組み入れられて、変更不可能である一意の通し番号を含む。この番号は、タグが特定の物品に添付されるときに、その物品にデータベース内で関連付けられてもよい。したがって、タグの場所を決定することは結果として、タグが添付されている物品の場所を決定することになる。その他のシステムにおいて、RFIDタグは、物品の名前または識別、その有効期限、その投与量、患者の名前、およびその他の情報のような、タグが添付されている物品に関するさらに多くの情報を含むことができる。RFIDタグはまた、更新されうるように、書き込み可能であってもよい。
【0033】
本明細書において実施形態に関して使用されるように、「タグ」は、RFID応答機を示すことが意図される。そのようなタグは通常、アンテナ、および電子マイクロチップのような、結合要素を有する。マイクロチップは、メモリとも呼ばれるデータストレージを含む。
【0034】
図2は、複数の可動式引き出し42を備える代表的な医薬品調剤保管庫40を示す。この実施形態において、引き出しの内容物へのアクセスがもたらされるように、保管庫から外側にスライドする5つの引き出しがある。図1は、引き出しの内容物へのアクセスをもたらすために外側にスライドし、引き出しの内容物を保護するために保管庫の内側にスライドする、図2の保管庫内に配置されうる代表的な引き出しを示す概略図である。保管庫はまた、引き出しへのアクセスを制御するため、アクセスおよび内容物に関するデータを生成するため、およびその他のシステムと通信するために使用されてもよい内蔵コンピュータ44も備える。この実施形態において、コンピュータは、引き出し内の物品の数および種類、物品が処方された患者の名前、処方された薬剤およびそれらの投与の日時、ならびにその他の情報に関するデータを生成する。より簡単なシステムにおいて、コンピュータは単に、格納された物品から一意の識別番号を受信して、それらの識別番号を、識別番号を物品記述と照合するためにデータベースにアクセスできる在庫管理コンピュータに渡すことができる。
【0035】
そのような保管庫は、医療施設の特定のフロアの看護ステーションに配置されてもよく、そのフロアの患者の処方箋を含むこともできる。処方箋がそのフロアの患者に用意されると、処方箋は配信されて保管庫40に入れられる。それらは内蔵コンピュータ44にログインされ、内蔵コンピュータはそれらの受信を薬局に通知することができる。引き出しはまた、看護スタッフにより決められたように患者に調剤するために処方箋なしの医薬品または物品を含むこともできる。適切な時間に、看護師は、コンピュータ44の使用を通じて医薬品が格納されている引き出しにアクセスして、特定の患者の処方箋および任意の必要な処方箋なしの物品を取り出してから、保護されるように引き出しを閉める。保管庫にアクセスするため、看護師はさまざまな情報を提供する必要があってもよく、保護アクセスコードが必要であってもよい。引き出し42は、必要に応じてロックされても、ロックされなくてもよい。
【0036】
コンピュータ44は、場合によっては、施設のその他の設備と通信してもよい。たとえば、コンピュータ44は、患者の処方箋が特定の日時に投与のために保管庫から取り出されたことを医療施設の薬局に通知することができる。コンピュータはまた、特定の患者への投与のために処方箋およびその他の医薬品が取り出されたことを医療施設の財務部に通知することもできる。次いで、この投薬は患者の明細書に適用されてもよい。さらに、コンピュータ44は、患者の医薬品投与レコード(MAR:Medication Administration Record)、すなわちe−MARを更新する目的で投与を通信することができる。医薬品保管庫40コンピュータ44は、医療施設のその他のコンピュータに無線で接続されてもよいか、または有線接続を有してもよい。保管庫はキャスターに取り付けられてもよく、必要に応じて移動されてもよいか、または固定されて移動不可能であってもよい。
【0037】
RFIDタグを使用するシステムは、多くの場合、RFIDリーダーによって収集されたデータを格納、処理、および共有するための保管場所として機能する1つまたは複数のホスト・コンピューティング・システムと通信するRFIDリーダーを採用する。ここで図3および図4を参照すると、物品を追跡するためのシステムおよび方法50が示され、ここで図2の保管庫40の引き出し20が、その引き出し内の物品と共に配置されたRFIDタグからデータを取得するために監視される。前述のように、さまざまな格納済みの物品に取り付けられたRFIDタグが、それらの向きとは関係なくアクティブ化されるように、EMエネルギーの堅固な電界が確立される必要がある。
【0038】
図3および図4において、エンクロージャ内の物品を識別するための追跡システム50が示され、RFIDリーダーの一部としてEMエネルギーの送信機52を備える。送信機52は、送信アンテナ54を用いてEMエネルギーを引き出し20に送信するための、915MHzのような特定の周波数を有する。送信機52は、必要なRFID EMエネルギーならびに任意の必要なタイミング・パルスおよびデータを、RFIDタグが配置されるエンクロージャ20に送信するように構成される。この場合、エンクロージャは引き出し20である。RFIDリーダー51のコンピュータ44は、送信期間と非送信、つまりオフ期間との間を循環するようにEM送信機52を制御する。送信期間中、しきい値強度レベル以上で送信されたEMエネルギーは、RFIDタグを取り囲み、それによりタグをアクティブ化する。次いで、送信機52はオフ期間に切り替えられ、その間にRFIDタグはそれぞれの格納されたデータで応答する。
【0039】
図3の実施形態は、引き出し20の内部に位置するアクティブ化されたRFIDタグにより送信されたデータを最適に読み取れるような方式で方向付けられた、単一の送信プローブ・アンテナ54および単一の受信アンテナを備える。単一の受信アンテナ56は、引き出し20の外側または引き出しの内底部に位置するリーダー50のコンピュータ44に通信可能に結合される。その他の取り付け場所も可能である。同軸ケーブル58またはその他の適切な信号リンクが、受信アンテナ56をコンピュータ44に結合するために使用されてもよい。無線リンクは、異なる実施形態において使用されてもよい。図面には示されていないが、コンピュータにより使用するように、デジタルデータをRFエネルギーから分離するために、さまざまな追加の回路およびデバイスが使用されることを、当業者は理解するであろう。そのような回路およびデバイスは、図面において不必要な複雑さを避けるために、図3および図4には示されていない。
【0040】
図4の実施形態は、図3の実施形態と類似するが、代わりに2つの送信プローブ・アンテナ60および62、ならびに3つの受信アンテナ64、66、および68を使用する。システムに使用されるべき送信プローブ・アンテナおよび受信アンテナの構成および数は、エンクロージャ内部のすべてのRFIDタグが確実にアクティブ化されて読み取られうるように、エンクロージャ20のサイズ、動作の周波数、動作周波数とエンクロージャの固定共振周波数との関係、および中に配置されるべきRFIDタグの予想数に少なくとも部分的に基づいて変化してもよい。RFIDリーダー・コンポーネントの場所および数は、特定のアプリケーションに応じて異なってもよい。たとえば、少数のコンポーネントは、比較的小さいサイズを有するエンクロージャに必要とされうるが、図4に示されるような追加のコンポーネントは、より大きいエンクロージャに必要とされうる。図3および図3においてブロックの形態で示されているが、システム50の受信アンテナ56、64、66、および68は、異なる実施形態においてサブアレイを備えることができる。
【0041】
送信アンテナ(54、60、および62)ならびに受信アンテナ(56、64、66、および68)は、異なる形態をとることができる。後段でさらに詳細に説明される1つの実施形態において、複数の「パッチ」つまりマイクロストリップ・アンテナが、リーダー受信アンテナとして使用され、引き出しの底部のさまざまな部分に隣接する位置に配置されたが、送信アンテナは引き出しの上部の部分に隣接する位置にある有線プローブであった。図3および図4の実施形態において、RFIDリーダー50が、引き出し20に関して戦略上重要な位置で同じ保管庫内に永続的に取り付けられてもよいことに留意されたい。
【0042】
エンクロージャ内の密集して詰められたかまたは無作為に方向付けられたRFIDタグを確実に呼掛けするための1つの解決策は、エンクロージャを共振空洞として扱うことである。空洞エンクロージャ内に共振を確立することは結果として、エンクロージャ内のすべてのRFIDタグをアクティブ化することができる堅固な電磁界をもたらすことができる。これは、導電性壁からエンクロージャを構築し、空洞の共振の固定周波数で空洞内の横電(TE)界または横磁(TM)界を励磁するためにプローブ(複数可)を使用して、金属製エンクロージャ、または空洞を励磁することによって、行なわれてもよい。この技法は、空洞の大きさが、動作の周波数で共振をセットアップするように特に選択されうる場合、または動作の周波数が固有のエンクロージャサイズのために選択されうる場合、良好に機能する。RFIDアプリケーションに使用することができる周波数帯域は制限されているので、RFID周波数を変更することは、多くのアプリケーションにとってオプションではない。逆に、エンクロージャの固有共振周波数が、使用可能なRFIDタグのアクティブ化周波数と等しくなるように、エンクロージャの物理的寸法の固有セットを要求することは、エンクロージャが固有サイズである必要があるアプリケーションへのこの技法の使用を限定することになる。この後者の手法は、格納される必要のある医薬品の多種多様なサイズ、形状、および数量を考慮すれば、実際的ではない。
【0043】
ここで図5を参照すると、図2に示される保管庫のような、医薬品保管庫の一部として形成されうる長方形のエンクロージャ80が提供される。これは、そのような保管庫の非金属製引き出しの周囲に配置されるフレームとして具現されてもよい。エンクロージャ80は、金属製または金属被覆の壁82、床83、および天井84表面で形成され、そのすべてが導電性である。壁82、床83、および天井84のすべても、本明細書において、エンクロージャの「壁」と称されてもよい。図5はまた、エンクロージャ80の上面84に位置するエネルギー結合またはプローブ86の使用を示す。この実施形態において、プローブ88がエンクロージャの天井84の穴90を経由して軸方向に進む第1の部分94を有するという点で、プローブはキャパシタ・プローブ88の形態をとる。結合の目的は、源52(図3および図4を参照)からエンクロージャ80の内側96にエネルギーを効率的に伝達することである。プローブのサイズおよび位置は、効果的な結合のために選択され、プローブは最大電界強度の領域に配置される。図5において、TE01モードは、容量結合の使用を通じて確立される。プローブ88の屈曲部分94の長さおよび距離は、プローブとエンクロージャ80との電位差に影響を及ぼす。
【0044】
同様に、図6は、エンクロージャ112への外部エネルギーの誘導結合110を表す。結合は、エンクロージャの側壁116を通じて取り付けられたループ・プローブ114の形態をとる。このプローブの目的は、エンクロージャ内にTE01モードを確立することである。
【0045】
図5および図6に示される長方形エンクロージャ80および112は各々、図7に示され、fnによりグラフの横軸118に指示される固有共振周波数fnを有する。これは、グラフの縦軸119に示されるように、エンクロージャの結合電力が最も高い周波数である。エンクロージャに注入されたエネルギーがfn周波数と適合しない場合、結合電力は、エンクロージャの共振現象の恩恵を受けることはない。動作の周波数が変更不可能であり、fn以外であって、動作周波数と等しいfnを得るためにエンクロージャのサイズを変更できない場合、別の電力結合装置および方法が使用される必要がある。本発明の態様によれば、建設的干渉によりエンクロージャ内に定常波を得るために、エンクロージャ内に強制共振ffを結果としてもたらすように、装置および方法が提供される。そのような定常波は、内部に存在するすべてのRFIDタグをアクティブ化するのに十分に強いエンクロージャ内の堅固なエネルギー電界を確立する。
【0046】
エンクロージャと共振関係にあるEM波が入ると、EM波は、低損失でエンクロージャ内を行ったり来たり反射する。さらに多くの波エネルギーがエンクロージャに入ると、波エネルギーは定常波と結合して補強し、その強度を増大させる(建設的干渉)。空洞の大きさが共振周波数における波長の整数倍であるため、共振は特定の周波数において発生する。注入されたエネルギーがエンクロージャの固有共振周波数fnではない現在の場合、本発明の態様による解決策は、エンクロージャに「強制共振」をセットアップすることである。この強制共振は、共振空洞の場合のように、エンクロージャの物理的寸法が励磁エネルギーの波長の整数倍と等しくはないという点において、エンクロージャの固有共振とは異なる。強制共振は、建設的干渉の結果および定常波が確立されるように、空洞に注入されるエネルギーを考慮に入れるプローブ長さに沿って、プローブ位置を決定することにより達成されてもよい。この場合にエンクロージャに注入されるエネルギーは、空洞内の振動電界領域をセットアップするが、共振空洞の固有共振周波数fnにおいて存在するであろう定常波とは異なる。この強制共振から励磁されたEM界は、共振空洞の固有共振で見出された磁場構造とは異なるが、それでも、プローブの適正なプローブ配置により、RFIDタグ呼掛けのためにエンクロージャに確立されてもよい。そのようなものは図8に示され、強制共振ff結合電力の曲線が、固定共振fnの場合の曲線に近いことに留意されたい。
【0047】
ここで図9を参照すると、2つのエネルギー注入プローブを有するエンクロージャ120が提供される。第1のプローブ86は、TE01モードを確立するために図5によりエンクロージャ120に容量結合される。第2のプローブ114は、TE01モードを確立するために図6によりエンクロージャ120に容量結合される。これらの2つのプローブはいずれも、エンクロージャの固有共振周波数fn以外の周波数ffでエネルギーを注入するためにエンクロージャに結合される。エンクロージャの天井126および壁128に関連するそれらのプローブの配置は、エネルギーをエンクロージャに最適に結合して、内部に配置されうるRFIDタグを読み取るためにエンクロージャ内に堅固なEM界を確立するエンクロージャ120内の強制共振を結果としてもたらす。本発明の態様による、エンクロージャの壁に関連するそれらのプローブの配置は、図8に示される強制共振曲線ffを結果としてもたらす。
【0048】
図10を簡単に参照すると、エンクロージャ120に対するエネルギー源122のインピーダンスを整合するように機能するインピーダンス整合回路121が示される。インピーダンス整合回路は、アクティブ化エネルギーをエンクロージャ120に供給する同軸ケーブル122と、エンクロージャの金属製天井126の穴を経由する容量結合プローブ88との間に位置する。穴は図10の図面に示されていないが、プローブを金属製天井から電気的に絶縁する絶縁体123が示されている。この場合、整合回路121は、エンクロージャ120によるエネルギーの反射を低減するために使用される抵抗減衰器124のみから成る。しかし、当業者には理解されるように、容量分および誘導分は、エンクロージャ内および結合88内に存在する可能性が高い。一方、図11は、同軸ケーブル/エネルギー源122とエンクロージャ120のインピーダンスを整合する際に使用する受動無効分を有するインピーダンス整合回路124を表す。この例示的なインピーダンス整合回路124において、誘導分125および容量分127は連続して接続されるが、抵抗分の追加およびその他の接続構成を含むその他の構成も可能である。
【0049】
図10および図11に示される抵抗器、誘導器、およびキャパシタのような受動コンポーネントは、エネルギー源とエンクロージャのインピーダンスを整合する整合回路を形成するために使用されてもよい。これは、電力をエンクロージャに結合する際に役立つ。しかし、受動整合回路は、空のエンクロージャ、部分的に装荷された、または完全に装荷されたエンクロージャのような、特定のエンクロージャ装荷のインピーダンス整合を向上させる。しかし、エンクロージャの内容物はさまざまであるので、インピーダンス整合は、エンクロージャのインピーダンス特性を変化させるようなエンクロージャ内の内容物の変動性により、最適化されないこともある。
【0050】
エンクロージャ積載の変動により生じたこの非最適インピーダンス整合は、閉ループ検知回路を使用して前方および反射電力を監視する能動インピーダンス整合回路の使用により克服されてもよい。ここで図12を参照すると、誘導器132、キャパシタ134、または抵抗器(図示せず)のような1つまたは複数の固定値受動コンポーネントを備える能動整合回路130が提供される。加えて、同調可能キャパシタ134のような、1つまたは複数の可変リアクタンス・デバイスが回路に組み入れられ、それらの同調可能デバイスがこれを能動インピーダンス整合回路にする。同調可能キャパシタ134は、バラクタ・ダイオード、スイッチド・キャパシタ・アセンブリ、MEMSキャパシタ、またはBST(チタン酸バリウムストロンチウム)キャパシタの形態をとることができる。制御電圧は、同調可能キャパシタ134に印加され、デバイスによる容量提供を変えるように変更される。同調可能キャパシタ134は、プローブ140とエンクロージャ142の間のインピーダンス整合を能動的に変更する能力を提供する。
【0051】
能動整合回路を完成するため、2つの電力センサ146と共に双方向カプラ144が組み入れられてもよい。双方向カプラ144および電力センサ146は、RFID送受信機148と能動整合回路130とエンクロージャ142の間の前方および反射電力を感知する機能を提供する。比較器150による前方および反射電力の比率の連続監視は、プローブ140インピーダンスのエンクロージャ142への整合を維持するように同調可能キャパシタ134を調整するために使用するメトリックを提供する。エンクロージャの内容物が変化する際にインピーダンス整合を連続的に監視して向上させる機能は、能動整合回路130により提供される。
【0052】
ここで図13の垂直断面図を参照すると、2つの天井取り付け160プローブ・アンテナ162および164が、エンクロージャ内に取り付けられているのが示されるが、これは本明細書において、この実施態様ではファラデー箱として動作する空洞166と称されてもよい。示されるように、ファラデー箱166は、複数の壁(うち1つが示される)168、背面170、底面172、天井160、および前面161(前壁の位置のみが示される)を備える。空洞を形成するすべての表面は、導電性であり、相互に電気的に接続され、2つのプローブ162および164により注入されたエネルギーの周波数ffを伝導することができるように構造的に形成される。この実施形態において、空洞166は、図2に示される医薬品保管庫と類似する医薬品保管庫の一部を形成しうる金属製フレーム167として構築される。その金属製フレームにはスライド可能な引き出しが取り付けられてもよい。この実施形態におけるスライド可能引き出しは、電気的に不活性な材質で形成される、すなわち、前面を除いては導電性ではない。引き出しが保管庫内にスライドされて閉鎖構成になると、引き出しの導電性前面パネルは、金属製フレーム167の別の部分(複数可)と電気的に接触し、それによりファラデー箱167の前壁161を形成する。
【0053】
各プローブの中央伝導体180による空洞への貫通または保持の量は、最適な結合を達成するように選択される。プローブの屈曲部分94の長さは、より良好なインピーダンス整合をもたらすように選択される。空洞の壁に関連するプローブの位置は、空洞内の定常波を作成するように選択される。この実施形態において、プローブ・アンテナ162および164は、それぞれ前壁161および後壁170から特定の距離D1およびD3を隔てて配置される。本発明の1つの態様によれば、それらのプローブ・アンテナは、他のプローブが非アクティブ化された後に順次にアクティブ化されるだけである。この構成が、建設的干渉が生じるように注入されたエネルギー波が同相である定常波を結果としてもたらすことが判明した。
【0054】
図14は、挿入されるべき物品格納引き出しに堅固なEM電界を確立するためのファラデー・タイプのエンクロージャ166に位置する2つのプローブ・アンテナ162および164を同様に示す、図13のプローブ構成を示す前面斜視図である。ここでも同様に、ファラデー空洞166が金属製フレーム167として構築されることに留意されたい。この図において、空洞は、「箱」の前面がないという点において不完全である。1つの実施形態において、この前面は、スライド可能引き出しの導電性前面パネルにより提供される。引き出しが保管庫内にスライドされると、前面パネルは、金属製フレーム167の別の部分と電気的に接触し、それによりファラデー箱166を完成するが、引き出しの他の部分はプラスチックであるか、または非導電性である。本明細書において説明され示される実施形態において、2つのプローブ・アンテナ162および164はいずれも、フレーム166の側壁166および168の間の中心線に沿って位置する。1つの実施態様におけるエンクロージャは幅19.2インチ(47.8cm)であり、プローブ・アンテナは各側壁から9.6インチ(24.4cm)の間隔があけられていた。この2つの側壁の中心の位置は、1つの実施形態の場合における便宜を図ったものであった。プローブは、別の実施形態において他の場所に配置されてもよい。この実施形態において、プローブ162および164の相互の間隔は、それらが順次にアクティブ化されるので、あまり重要ではない。示されていないが、2つの受信アンテナはまた、空洞166内にあるアクティブ化RFIDタグから応答信号を受信するためにファラデー箱166に配置される。
【0055】
プローブが各々、図13に示されるように、空洞の天井160との容量結合のために使用される屈曲部分を有することもまた、図面の参照から留意されるであろう。前方プローブ162は前方に屈曲しているが、後方プローブ164は後方に屈曲している。この構成の目的は、さらに空間的な多様性を得ること、および引き出しに確立されたEM界によるより良好なカバレッジを得ることであった。空洞166内に堅固な電界を達成するために、その他の配列が可能であってもよい。加えて、2つのプローブは、エンクロージャ166のより良好なEM界カバレッジがもたらされるように、特定のエンクロージャ166に使用された。
【0056】
図15は、図13および図14の二重プローブ・アンテナ162および164を示し、明確にするために引き出しを除いた、切開側面斜視図である。前方プローブ162は、示されるように、動作周波数Ffの1/2λだけ左側壁から間隔をあけて配置されている。プローブが各々、図13に示されるように、エンクロージャ166の天井160との容量結合のために使用される屈曲部分を有することが留意されるであろう。前方プローブ162は、エンクロージャのさらに前方部分との結合のために前方に屈曲しているが、後方プローブ164は、さらに空間的な多様性を得るように、および引き出しのEM界によるより良好なカバレッジを得るように、エンクロージャ166のより後方の部分との結合のために後方に屈曲している。エンクロージャ内に堅固な電界およびさらに空間的な多様性を達成するために、その他の配列が可能であってもよい。
【0057】
図16は、フレーム167内にスライド可能に取り付けられた引き出し180の一部を示す、ファラデー箱166を形成するフレーム167を示す前面上向斜視図である。引き出しの前面金属製パネルは、そのスライド動作がさらに明確に見えるように除かれている。二重天井取り付けプローブ・アンテナ162および164が、電磁的に不活性の保護カバー182により覆われて保護されていることも留意されるであろう。引き出しは、プラスチックまたは低いRF定数を有するその他の電磁気的に不活性な素材のような、非金属素材で形成される。引き出しの背面184もまた、フレーム167にあるコイル186およびファン188を備える冷却システムが見えるように除かれている。この場合、引き出し180は、金属製スライディング金具により、ファラデー箱にスライド可能に取り付けられる。引き出しのスライディング金具はエンクロージャ166のフレーム167の端に非常に接近しており、エンクロージャの側壁168の金属製スライド金具と電気的に接触することもあるので、それらの金属製レールがエンクロージャ内に確立されたEM界に及ぼす影響はほんのわずかであろう。
【0058】
図17は、図16の対角における上向の前面斜視図であるが、引き出しは除かれている。この実施形態においてフレーム167は、引き出し180のスライドを受けるための取り付けレール192を含む。この実施形態において、取り付けレールは金属素材で形成されるが、これはファラデー箱の側面168にしっかりと取り付けられているので、箱と電気的に導通している。図はまた、引き出しに格納されている物品へのアクセスが得られるように、引き出しの外側へのスライドを補助するために使用されるバネ機構194を示す。バネは、引き出しのラッチが解放されると、引き出しを外側に自動的に押し出すように構成される。
【0059】
図18は、図13〜図15に示されるフレーム167の天井160における2つのTE01モードの容量結合プローブ162および164の配置の寸法を示す概略図である。この実施形態において、RFIDタグでの動作周波数は915MHzであり、したがって0.32764メートルすなわち1.07494フィートの波長を有する。したがって、2分の1の波長は、0.16382すなわち6.4495インチである。各々のプローブの容量結合屈曲部分200の長さは、5.08cmすなわち2.00インチである。エンクロージャへのプローブの軸方向延長202は、エンクロージャ166への絶縁体204から測定されるように、3.81cmすなわち1.50インチである。実施形態におけるプローブの構成および配置は、915MHzの動作周波数を基にした。1つの実施形態において、エンクロージャ166は、16.1インチ(40.89cm)の奥行き、19.2インチ(48.77cm)の幅、および3インチ(7.62cm)の高さを有する。このサイズおよび形状(長方形)のエンクロージャならびに915MHzの動作周波数に最適なプローブ配置は、前方プローブが前壁から5.0インチ(12.7cm)間隔をあけ、後方プローブが後ろ壁から5.0インチ(12.7cm)間隔をあけることであったことが判明した。前述のように、この実施形態においてプローブは、順次にしかアクティブ化されない。
【0060】
図19は、2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナ210および212、1つの実施形態において、それぞれのアンテナとアンテナがSMAコネクタ(図示せず)に接続されるエンクロージャ背面との間に配置されたアンテナのマイクロストリップ伝導体214および216の、図16のエンクロージャ166内のサイズおよび配置を示す概略図である。給電ライン58(図3)は、それらのSMAコネクタに接続されて、さらなる処理のためにRFID信号の通信に使用するコンピュータ44にルーティングされてもよい。一部のマイクロストリップ・コンポーネントの間隔の寸法は、インチ単位で提供される。9.7インチの間隔は、24.64cmに相当する。0.67インチのマイクロストリップ・ラインの幅は、17.0mmに相当する。1.4インチの間隔は、3.56cmに相当する。受信アンテナのその他の構成および種類、ならびに異なる数のそのようなアンテナが使用されてもよい。本発明の実施形態において、受信パッチアンテナがファラデー箱の金属表面に接触しないように、受信アンテナは、金属製エンクロージャフレーム167の底部内側表面で絶縁材に取り付けられる。
【0061】
ここで図20を参照すると、上記で説明されるエンクロージャの電界強度または電界の強さは、ボルト/メートル単位で示される横軸およびメートル単位で示される縦軸により示される。最大電界強度は、前壁から5.0インチ(12.7cm)に配置されたプローブによる約5.0インチ(.127m)において、および915MHzの動作周波数で生じることが分かる。ここで図21を参照すると、スケールは縮小されているが、電界強度の大幅な上昇が5.0インチにおいて認められる。また、電界強度が右壁で減少するが、左壁に非常に接近して強い状態を維持することがより明確に認められる。したがって、実施形態において、右壁から5.0インチ(12.7cm)に配置されて、図21に示される電界強度とミラーイメージの電界強度をもたらす第2のプローブが使用された。2つのプローブ162および164は、順次にアクティブ化され、同時にアクティブ化されることはない。エンクロージャ166のより良好なEM界カバレッジが2つのプローブにより得られること、および前壁161に接近して配置された物品のRFIDタグが前方プローブ162によりアクティブ化されること、および後壁170に接近して配置された物品のRFIDタグが後方プローブ164によりアクティブ化されること(図13)が留意されよう。
【0062】
論理に制約されることを意図してはいないが、正方形または長方形の非共振空洞においてTEモードのプローブ位置を導き出す際に、以下の式が有用であってもよい。
【数1】
ここで、
N=正のゼロ以外の整数、たとえば1、2、3など
L1=プローブと後壁との距離
L2=プローブと前壁との距離
λg=空洞の波長
L1はTEモードに対してゼロにはなり得ない、つまりTEモード励磁のプローブは前壁または後壁にあってはならないことを意味する。TMモードの場合、式は同じであるが、Nはゼロおよびその他の正の整数と等しくてもよい。プローブ位置は、前壁または後壁からλg/2にはなり得ない。L1およびL2は、Nが式を満足する正の整数となりうるように選択される。たとえば、前述のエンクロージャ166の場合、以下のようになる。
L1=4.785インチ
L2=11.225インチ
λg=12.83インチ
ゆえに、
【数2】
【0063】
実際のエンクロージャは、式により指示される位置(4.785インチ)とはわずかに異なる場所(5.0インチ)に位置するプローブを有していたが、これは反射信号からの位相の変化を生じるプラスチックの引き出しの空洞への挿入によるものであったと考えられる。上記の式は、前壁および後壁からの反射位相が等しい、すなわちプローブ位置において「同相」であるように立てられる。
【0064】
エンクロージャの波長λgは、導波管の式を使用して計算されてもよい。長方形空洞の式は以下に示される。この計算には遮断周波数が必要とされる。式は、円筒形空洞またはその他の形状に対して変化する。
【0065】
遮断周波数は、gがゼロになる時点である。したがって、ヘルツ単位の遮断周波数は次のとおりである。
【数3】
【0066】
メートル単位の遮断周波数は次のとおりである。
【数4】
ここで、
a=内側の幅
b=内側の高さ
m=「a」方向の電界の1/2波長変動の数
n=「b」方向の電界の1/2波長変動の数
ε=誘電率
μ=透磁率
【0067】
最低の遮断周波数を持つモードは、主モードと呼ばれる。TE10モードは、長方形導波管の非ゼロ電界式を与える最小可能モードであるので、これはa>bとする長方形導波管の主モードであり、ゆえに主周波数は次のとおりである。
【数5】
【0068】
電波インピーダンスは、横の電界と磁界の比率として定義されるゆえに、インピーダンスは次のとおりである。
【数6】
【0069】
管内波長は、導波管に沿った2つの等しい位相面の間の距離として定義され、次の式と同じである。
【数7】
ここで、
【数8】
および
【数9】
【0070】
図22は、図2に示されるような多段引き出しの医薬品保管庫のブロック電気および信号図を示す。この場合、保管庫は8段の引き出し220である。各引き出しは、2つの上部アンテナ、2つの底部アンテナ、および引き出しを保護するためのロック・センサ222を含む。各引き出しのアンテナへの信号およびアンテナからの信号は、RFマルチプレクサ・スイッチ224を通じて供給される。この実施形態において、各RFマルチプレクサ・スイッチ224は、2つの引き出しのRF信号のルーティングを処理する。RFIDアクティブ化電界およびRFID受信信号は、それぞれのRFマルチプレクサ・スイッチ224を経由して、主RFIDスキャナ230に供給される。スキャナ230出力は、この場合は有線接続234および無線接続236により、関連情報のリモート・ロケーションへの通信に使用するためにマイクロプロセッサ232に方向付けられる。電力接続、配電、バックアップ・バッテリ、相互接続PCBA、USBサポート、冷却などのような、さまざまなサポート・システムもまた図20に示される。
【0071】
1つの実施形態によれば、引き出しは、連続的に監視される。各引き出し内で、アンテナは、関連するマルチプレクサ224により順次アクティブ化される。信号および電気制御システムのその他の実施形態も可能である。
【0072】
RFIDタグは本明細書において実施形態のように使用されるが、電磁エネルギーを通じて通信するその他のデータ・キャリアもまた、使用可能であってもよい。
【0073】
コンテキストに特に要求のない限り、明細書および後続の特許請求の範囲全体を通じて、「備える(comprise)」、ならびにその「備える(三人称:comprises)および「備えている(comprising)」のような変化形は、制限のない包括的な意味で、「含むが、それに限定されない(including、but not limited to)」と解釈されるものとする。
【0074】
本発明は、現在最も実践的かつ好ましい実施形態であると見なされる事項に関連して説明されてきたが、本発明が、開示される実施形態および要素に限定されないこと、しかし、逆に、さまざまな変更、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる特徴、等価の配列、および等価の要素の組み合わせを網羅することが意図されていることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に添付されるデータ・キャリアを読み取るシステムであって、前記データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギー(EM)に応答し、それに応じて前記データ・キャリアは一意の識別データを提供するシステムにおいて、
導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーを前記エンクロージャに注入するように構成され、前記エンクロージャの前記壁に関する前記プローブの位置は前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、
格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成された前記エンクロージャ内に位置する格納デバイスと、
前記エンクロージャ内に配置され、前記データ・キャリアによって提供された前記一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記周波数f1は、前記エンクロージャの共振の前記固有周波数f2とは異なり、
前記プローブの位置は、前記壁からのEMの反射位相がプローブ位置において等しい、すなわちプローブ位置において同相であるように選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プローブのインピーダンスを前記エンクロージャのインピーダンスにさらに密接に整合するように構成されたインピーダンス整合回路をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記インピーダンス整合回路は、能動インピーダンス整合回路を備える請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記格納デバイスは、前記エンクロージャに入る、および前記エンクロージャから出るように適応された引き出しを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記引き出しの一部は、前記引き出しが前記エンクロージャに関して所定の位置にあるとき、前記導電性エンクロージャの一部を形成する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記引き出しは、前記導電性エンクロージャの一部を形成する前記引き出しの一部を除いて、非導電性である請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記引き出しは、前記エンクロージャの開口部を通じて前記エンクロージャの中に、および前記エンクロージャから外にスライド可能であり、前記引き出しは、導電性であって、前記引き出しが前記エンクロージャ内の所定の位置までスライドされると前記導電性エンクロージャに接触する前面パネルを有する請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記受信アンテナは、前記プローブから前記格納デバイスの対向側に位置する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
複数のプローブをさらに備え、各プローブは前記エンクロージャの壁を通じて取り付けられ、各々の前記プローブは電磁(EM)エネルギーを各自のそれぞれの位置において前記エンクロージャに注入するように構成され、前記エンクロージャの前記壁に関する各プローブの位置は、前記エンクロージャの一部のカバレッジに電磁界を提供するために前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択され、前記プローブの前記位置は、前記プローブが各自のそれぞれのEMエネルギーを前記エンクロージャに注入して複合EM界をもたらすために順次アクティブ化されうるようにさらに選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
データ・キャリアが添付された物品を追跡するためのシステムであって、前記データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギーに応答し、それに応じて前記データ・キャリアは一意の識別データをブロードキャストするシステムにおいて、
導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有し、f2はf1とは異なるエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーを前記エンクロージャに注入するように構成され、前記エンクロージャの前記壁に関する前記プローブの位置は前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、
前記エンクロージャ内に移動可能に配置された引き出しであって、それぞれのデータ・キャリアを有する物品を格納するように構成された引き出しと、
前記エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された前記一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備えるシステム。
【請求項12】
エンクロージャ内に堅固な電磁界を確立するためのシステムであって、
導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギー(EM)を前記エンクロージャに注入するように構成され、前記EMはf1の周波数を有し、f1とf2は異なり、
前記エンクロージャの前記壁に関して前記プローブの位置は、前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、
格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成された前記エンクロージャ内に位置する格納デバイスと、
前記エンクロージャ内に配置され、前記データ・キャリアによって提供された前記一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備えるシステム。
【請求項1】
物品に添付されるデータ・キャリアを読み取るシステムであって、前記データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギー(EM)に応答し、それに応じて前記データ・キャリアは一意の識別データを提供するシステムにおいて、
導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーを前記エンクロージャに注入するように構成され、前記エンクロージャの前記壁に関する前記プローブの位置は前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、
格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成された前記エンクロージャ内に位置する格納デバイスと、
前記エンクロージャ内に配置され、前記データ・キャリアによって提供された前記一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記周波数f1は、前記エンクロージャの共振の前記固有周波数f2とは異なり、
前記プローブの位置は、前記壁からのEMの反射位相がプローブ位置において等しい、すなわちプローブ位置において同相であるように選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プローブのインピーダンスを前記エンクロージャのインピーダンスにさらに密接に整合するように構成されたインピーダンス整合回路をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記インピーダンス整合回路は、能動インピーダンス整合回路を備える請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記格納デバイスは、前記エンクロージャに入る、および前記エンクロージャから出るように適応された引き出しを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記引き出しの一部は、前記引き出しが前記エンクロージャに関して所定の位置にあるとき、前記導電性エンクロージャの一部を形成する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記引き出しは、前記導電性エンクロージャの一部を形成する前記引き出しの一部を除いて、非導電性である請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記引き出しは、前記エンクロージャの開口部を通じて前記エンクロージャの中に、および前記エンクロージャから外にスライド可能であり、前記引き出しは、導電性であって、前記引き出しが前記エンクロージャ内の所定の位置までスライドされると前記導電性エンクロージャに接触する前面パネルを有する請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記受信アンテナは、前記プローブから前記格納デバイスの対向側に位置する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
複数のプローブをさらに備え、各プローブは前記エンクロージャの壁を通じて取り付けられ、各々の前記プローブは電磁(EM)エネルギーを各自のそれぞれの位置において前記エンクロージャに注入するように構成され、前記エンクロージャの前記壁に関する各プローブの位置は、前記エンクロージャの一部のカバレッジに電磁界を提供するために前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択され、前記プローブの前記位置は、前記プローブが各自のそれぞれのEMエネルギーを前記エンクロージャに注入して複合EM界をもたらすために順次アクティブ化されうるようにさらに選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
データ・キャリアが添付された物品を追跡するためのシステムであって、前記データ・キャリアは周波数f1の電磁エネルギーに応答し、それに応じて前記データ・キャリアは一意の識別データをブロードキャストするシステムにおいて、
導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有し、f2はf1とは異なるエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギーを前記エンクロージャに注入するように構成され、前記エンクロージャの前記壁に関する前記プローブの位置は前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、
前記エンクロージャ内に移動可能に配置された引き出しであって、それぞれのデータ・キャリアを有する物品を格納するように構成された引き出しと、
前記エンクロージャ内に配置され、データ・キャリアによって提供された前記一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備えるシステム。
【請求項12】
エンクロージャ内に堅固な電磁界を確立するためのシステムであって、
導電性壁を有する金属製エンクロージャであって、共振の固有周波数f2を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記壁の1つを通して取り付けられたプローブであって、電磁エネルギー(EM)を前記エンクロージャに注入するように構成され、前記EMはf1の周波数を有し、f1とf2は異なり、
前記エンクロージャの前記壁に関して前記プローブの位置は、前記エンクロージャへの電力伝達を最適化するように選択されるプローブと、
格納されるべきそれぞれの物品と共にデータ・キャリアを受容するように構成された前記エンクロージャ内に位置する格納デバイスと、
前記エンクロージャ内に配置され、前記データ・キャリアによって提供された前記一意の識別データを受信するように構成された受信アンテナとを備えるシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【公表番号】特表2013−513187(P2013−513187A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543184(P2012−543184)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059134
【国際公開番号】WO2011/071835
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512148573)エムイーピーエス、リアル‐タイム、インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MEPS REAL−TIME, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059134
【国際公開番号】WO2011/071835
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512148573)エムイーピーエス、リアル‐タイム、インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MEPS REAL−TIME, INC.
【Fターム(参考)】
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