説明

タッチスイッチ

【課題】使用者の意識的な操作を妨げることなく、意図しない接触による入力を防止することができる、新規な構造のタッチスイッチを提供する。
【解決手段】導電部材18に対して複数箇所から電圧が印加されており、導電部材18における通電状態に基づいて被検出導電体56の導電部材18への接触の有無と接触位置を検出するタッチスイッチ10において、導電性の接触確認部材20を設けて、導電部材18に電圧を印加する電源28,34の接地側電極36を接触確認部材20に接続し、接触確認部材20に対する導電部材18の導通状態下で被検出導電体56の導電部材18への接触の有無と接触位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の指先等でのタッチを検出するためのタッチスイッチに係り、特に、誤動作を防止することができるタッチスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両や建築物等には、室内灯の点灯/消灯の切り替えや電動パワーウインドウの開閉等といった所定の動作(機能)に対応付けられるスイッチが設けられており、必要に応じてスイッチを選択的に操作することで、目的とする動作が実行されるようになっている。
【0003】
ところで、近年では、使用者の操作を機械的に検出するメカニカルスイッチに変えて、使用者の画面への接触を電気的に検出するタッチスイッチ(タッチパネル)が急速に普及してきており、例えば、自動車におけるエアーコンディショナの操作等への適用が検討されている。このタッチスイッチは、導電体である使用者の指が、フラットな画面上に表示されたボタンに接触する際の電気的な変化を検出するものであって、例えば、特開2009−75656号公報(特許文献1)等に示されている。
【0004】
ところが、特許文献1では、指の大きさに対して充分に大きな画面上にタッチスイッチのボタンが表示されることから、使用者が他の作業をしている際に不用意に触れてしまう等して、意図しない操作をしてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−75656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、使用者の意識的な操作を妨げることなく、不用意な接触による誤操作を防止することができる、新規な構造のタッチスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様は、導電部材に対して複数箇所から電圧が印加されており、該導電部材における通電状態に基づいて被検出導電体の該導電部材への接触の有無と接触位置を検出するタッチスイッチにおいて、導電性の接触確認部材を設けて、前記導電部材に電圧を印加する電源の接地側電極を該接触確認部材に接続し、該接触確認部材に対する該導電部材の導通状態下において前記被検出導電体の該導電部材への接触の有無と接触位置を検出することを特徴とする。
【0008】
このような第1の態様に従う構造とされたタッチスイッチによれば、導電部材と接触確認部材を導通させながら被検出導電体が導電部材に接触した場合に、接触の有無や接触位置が検出されて、タッチスイッチに対する入力に応じて予め定められた動作が実行される。一方、導電部材と接触確認部材が導通されていない状態では、電源と接地側電極が導通されないことから、被検出導電体が導電部材に接触しても接触の有無や接触位置が検出されない。それ故、導電部材に意図せず不用意に触れてしまっても、タッチスイッチが受け付けられることはなく、誤作動が防止されている。
【0009】
要するに、本発明に係るタッチスイッチによれば、使用者がタッチスイッチを意図的に操作した場合と、使用者がタッチスイッチに誤って触れた場合とが、導電部材と接触確認部材の導通の有無によって判定されて、使用者の意図する操作だけが選択的に実行されるのである。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材と前記接触確認部材が電気絶縁性を有する絶縁体層の各一方の面に設けられているものである。
【0011】
第2の態様によれば、絶縁体層の両面に導電部材と接触確認部材が設けられていることから、導電部材と接触確認部材が絶縁体層によって導通を防がれた状態で近接して配置される。このように、導電部材と接触確認部材が近い位置に配置されることにより、導電部材と接触確認部材を導通させる際に、それら導電部材と接触確認部材の間の導通部分において電気抵抗を小さく抑えることができる。その結果、検出信号(電流)のレベルを高くすることができて、検出精度や検出結果の信頼性等の向上が図られる。
【0012】
さらに、導電部材と接触確認部材が近い位置に配置されており、それらを手で握る等して容易に導通させることができることから、それら導電部材と接触確認部材を導通させながらの操作が行い易くなる。しかも、導電部材と接触確認部材が絶縁層を挟んで両側に配置されることから、それら導電部材と接触確認部材の導通と、導電部材と被検出導電体の接触は、意図しなければ同時には起こり難く、操作のし易さと誤操作の効果的な防止が両立して実現される。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載されたタッチスイッチにおいて、壁部から突出して該壁部と対向して延びるドアハンドル形状の前記絶縁体層が形成されており、該絶縁体層の該壁部との対向面に前記導電部材と前記接触確認部材の何れか一方が設けられると共に、該絶縁体層部の該壁部と反対側の面に該導電部材と該接触確認部材の何れか他方が設けられて把手部とされているものである。
【0014】
第3の態様によれば、ドアハンドル形状とされた絶縁体層の両面に導電部材と接触確認部材が設けられて把手部とされていることにより、把手部を掴むことによって導電部材と接触確認部材が導通されると共に、手指の導電部材への接触部分が被検出導電体とされて、手指での接触によってスイッチへの入力が行われる。このように、把手部を握るという意図せずには起こり難い状態での操作を選択的に受け付けることにより、誤って触れた場合の誤動作を防止することができる。
【0015】
しかも、導電部材と接触確認部材の何れかが壁部に対向して配置されており、タッチスイッチを操作するためには壁部と把手部の間に手指等の導電体を差し入れる必要があることから、不用意な接触がより効果的に防止される。
【0016】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記把手部が、自動車のドアアームレストとインサイドドアハンドルとアシストグリップの少なくとも1つの自動車用把手部とされているものである。
【0017】
第4の態様によれば、自動車において、ウインドウの開閉操作やドアロックの開閉、エアーコンディショナのON/OFFや風量の調節、ヘッドライト等の点灯/消灯等を、不用意に触れて誤動作させることなく、制御することができる。しかも、手で握られる自動車用把手部にタッチスイッチを設けることで、自動車用把手部を片手で握りながら簡単に操作することができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記電源によって交流電圧が前記導電部材に印加されていると共に、該導電部材の表面に誘電体層が設けられており、前記被検出導電体の該導電部材に対する該誘電体層を介した接触の有無と接触位置が検出されるものである。
【0019】
第5の態様によれば、被検出導電体が導電部材に対して誘電体層を介して間接的に接触することから、導電部材の磨耗や劣化が防止されて、耐久性の向上が図られる。また、交流電圧が印加されることによって、誘電体層が導電部材と被検出導電体の間に介在しても、静電容量に基づいて導電部材と被検出導電体の間で実質的に電流が流れて、接触の有無と接触位置が有効に検出される。
【0020】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記電源によって直流電圧が前記導電部材に印加されており、前記被検出導電体の該導電部材に対する直接的な接触の有無と接触位置が検出されるものである。
【0021】
第6の態様によれば、被検出導電体が導電部材に対して直接的に接触することにより、直流電圧を用いることができて、電源の構造を簡易なものとすることができる。
【0022】
本発明の第7の態様は、第1〜第6の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材および前記接触確認部材の少なくとも一方が導電性樹脂で形成されているものである。
【0023】
第7の態様に示されているように、導電部材や接触確認部材を導電性樹脂で形成すれば、型成形によって形状の自由度を高めることができる。従って、例えばドアハンドル形状等の立体的な形状が要求される場合にも、導電部材や接触確認部材を所定の形状に容易に成形することが可能となる。
【0024】
本発明の第8の態様は、第1〜第7の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材および前記接触確認部材の少なくとも一方が導電性塗料で形成されているものである。
【0025】
第8の態様によれば、成形性に優れた樹脂製部材等の表面に導電性塗料を塗布することで、立体形状の導電部材や接触確認部材を容易に形成することができる。
【0026】
本発明の第9の態様は、第1〜第8の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記被検出導電体の前記導電部材上での接触位置の移動量と移動方向が、接触位置を連続的に検出することで特定されるものである。
【0027】
第9の態様によれば、被検出導電体の導電部材上での移動が検出されることから、接触の有無と接触した位置だけでなく、接触位置の変化に動作を対応付けることにより、1つのタッチスイッチにおいてより多くの操作を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、導電部材と接触確認部材の導通状態下においてのみ被検出導電体の導電部材への接触が検出されることから、使用者が意図的にタッチスイッチを操作する場合には、入力が受け付けられて、操作に応じた動作が実行される一方で、使用者が意図せずにタッチスイッチに触れてしまった場合には、入力が受け付けられずに、誤った動作が実行されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態としてのタッチスイッチを示す縦断面図であって、図2のI−I断面図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】図1に示されたタッチスイッチにおける接触位置の特定方法を説明するための図。
【図4】図1に示されたタッチスイッチの操作時に構成される電気回路を示す回路図。
【図5】図1に示されたタッチスイッチのスイッチ部を示す要部拡大図であって、図1のA方向矢視図。
【図6】本発明の第2の実施形態としてのタッチスイッチを備えたアシストグリップを示す縦断面図であって、図7のVI−VI断面図。
【図7】図6のVII−VII断面図。
【図8】図6に示されたタッチスイッチにおける接触位置の特定方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1,図2には、本発明の第1の実施形態としてのタッチスイッチ10が示されている。このタッチスイッチ10は、自動車用把手部としてのアシストグリップ12に設けられている。アシストグリップ12は、自動車の走行中に、乗員が体を支えて姿勢を保つためにつかまる握りであって、自動車のルーフ側部14に取り付けられている。なお、以下の説明では、原則として、上下方向とは鉛直上下方向となる図1中の上下方向を、前後方向とは車両前後方向となる図1中の右左方向を、それぞれいうものとする。
【0032】
より詳細には、アシストグリップ12は、絶縁体層16の一方の面に導電部材18が設けられると共に、他方の面に接触確認部材20が設けられた構造を有している。絶縁体層16は、ゴム材料や合成樹脂材料等で形成されて、電気絶縁性を有しており、両端部がルーフ側部14に対して略直交して下方に突出すると共に、屈曲して中間部分がルーフ側部14に対して所定の距離を隔てて前後方向に延びたドアハンドル形状を有している。このように、本実施形態では、ルーフ側部14がアシストグリップ12を支持する壁部とされている。
【0033】
絶縁体層16の一方の面には、導電部材18が設けられている。導電部材18は、合成樹脂材料にカーボンブラック等の導電性フィラーを混合した導電性樹脂材料で形成されており、絶縁体層16の前後外側の面および下面の全体を覆うように重ね合わされて、絶縁体層16に固着されている。要するに、導電部材18は、絶縁体層16を挟んでルーフ側部14と反対側に設けられており、車室空間側に配置されている。
【0034】
また、絶縁体層16の他方の面には、接触確認部材20が設けられている。接触確認部材20は、導電部材18と同様に、合成樹脂材料にカーボンブラック等の導電性フィラーを混合した導電性樹脂材料で形成されており、絶縁体層16の前後方向内側の面および上面の全体を覆うように重ね合わされて、絶縁体層16に固着されている。要するに、接触確認部材20は、絶縁体層16のルーフ側部14に対する対向面側に設けられている。なお、接触確認部材20の抵抗値は、合成樹脂材料に混合する導電性フィラーの量を調節する等して、導電部材18の抵抗値に比して無視できる程度に充分に小さくされていることが望ましい。
【0035】
また、本実施形態では、絶縁体層16と導電部材18と接触確認部材20が、誘電体層22で覆われている。誘電体層22は、誘電性を有するエラストマー材料や合成樹脂材料等で形成されており、薄肉とされて、絶縁体層16と導電部材18と接触確認部材20の表面(ルーフ側部14への固着面を除く)の略全面を被覆するように設けられている。
【0036】
そして、アシストグリップ12は、両端部が自動車のルーフ側部14に取り付けられて支持されている。なお、ルーフ側部14への取付け構造は特に限定されるものではないが、接着や融着等の手段で固着されていても良いし、ルーフ側部14に対して揺動可能に軸支されていても良い。
【0037】
また、図1に示されているように、導電部材18の前側の端部には、第1の検出用抵抗体24が電気的に接続されていると共に、第1の検出用抵抗体24の電圧値:Vm1 を計測するための第1の電圧計26が設けられている。更に、第1の検出用抵抗体24および導電部材18には第1の交流電源28が接続されており、それら第1の検出用抵抗体24および導電部材18に対して第1の交流電源28から交流電圧が印加されている。
【0038】
一方、導電部材18の後側の端部には、第2の検出用抵抗体30が電気的に接続されていると共に、第2の検出用抵抗体30の電圧値:Vm2 を計測するための第2の電圧計32が設けられている。更に、第2の検出用抵抗体30および導電部材18には第2の交流電源34が接続されており、それら第2の検出用抵抗体30および導電部材18に対して第2の交流電源34から交流電圧が印加されている。なお、第1の検出用抵抗体24と第2の検出用抵抗体30は、互いに同じ抵抗値:rを有しており、第1の電圧計26の計測値:Vm1 と第2の電圧計32の計測値:Vm2 を計測することで、第1,第2の検出用抵抗体24,30に流れる電流の大きさが計測されるようになっている。更に、第1の交流電源28と第2の交流電源34が互いに同相且つ同電位の交流電圧を印加することから、導電部材18と接触確認部材20が絶縁された状態では、導電部材18および第1,第2の検出用抵抗体24,30に定常電流が流れない。従って、導電部材18と接触確認部材20が絶縁された状態において、第1,第2の電圧計26,32の計測値は、何れも0になる(Vm1 =Vm2 =0)。
【0039】
また、接触確認部材20の前側の端部には、第1,第2の交流電源34の接地側電極36が電気的に接続されており、接地側電極36の電位が接地によって0とされている。
【0040】
さらに、第1の電圧計26の計測値と第2の電圧計32の計測値は、何れも電気信号として処理装置38に送信される。処理装置38は、例えば、計測値に基づいて接触の有無を判定する導通確認手段40と、導通確認手段40が接触を検知した場合に接触位置を特定する操作特定手段42と、操作特定手段42によって特定された操作の種類に応じて車両の装置に所定の動作を実行させる制御信号出力手段44とを、有している。
【0041】
このような構造を有するタッチスイッチ10では、導電部材18における通電状態に基づいて、被検出導体の導電部材18への接触の有無と接触位置が検出される。即ち、図1,図2に2点鎖線で示されているように、乗員が手46でアシストグリップ12を掴んで、人差指(第2指)48,中指(第3指)50,薬指(第4指)52,小指(第5指)54の少なくとも1つを接触確認部材20に接触させながら、被検出導電体としての親指(第1指)56を導電部材18に接触させることにより、導電部材18における通電状態が変化して、親指56の導電部材18に対する接触の有無と接触位置が特定されるようになっている。
【0042】
より詳細には、人間の手46は導電体であることから、図1に示されているように、乗員が手46でアシストグリップ12を掴むと、導電部材18と接触確認部材20が手46を通じて電気的に接続される。これにより、導電部材18および第1,第2の検出用抵抗体24,30に電流:I1 ,I2 が流れて、第1,第2の電圧計26,32が第1,第2の検出用抵抗体24,30に流れる電流に応じた電圧値:Vm1 ,Vm2 を計測する。そして、処理装置38の導通確認手段40は、第1,第2の電圧計26,32の各計測値:Vm1 ,Vm2 が所定の数値以上である場合に、導電部材18に対する親指56(被検出導電体)の接触を検出する。なお、図1では、アシストグリップ12および手46を通じて電流の流れる経路が矢印で示されている。
【0043】
なお、導通確認手段40は、導電部材18と接触確認部材20の導通状態下において、親指56の導電部材18への接触を検知する。この導通確認手段40は、例えば第1,第2の電圧計26,32の計測値が予め設定された閾値以上であるか否かを判定するものであって、計測値が閾値以上であると判定された場合に導電部材18と接触確認部材20の導通が確認される。即ち、導電部材18だけに手46が触れて導電部材18と接触確認部材20が導通されていない場合にも、導電部材18が使用者の体を通じて接地されて第1,第2の検出用抵抗体24,30に電流が流れ得る。しかし、このような接地態様では、導電部材18から接地点までの経路が長く且つ該経路が抵抗体である人体であることから電気抵抗値が大きくなって、第1,第2の検出用抵抗体24,30を流れる電流が小さくなる。その結果、計測値が上記の閾値を下回って、導電部材18への接触は検出されない。一方、導電部材18と接触確認部材20が手46によって導通されると、導電部材18が人体に比して充分に抵抗値の小さい接触確認部材20および電線を通じて接地される。これにより、第1,第2の検出用抵抗体24,30に流れる電流が閾値以上となって、導通確認手段40によって導電部材18と接触確認部材20の導通が確認されることから、親指56の導電部材18への接触が検出される。
【0044】
導通確認手段40によって導電部材18と接触確認部材20の導通が確認されると、処理装置38の操作特定手段42が、第1,第2の電圧計26,32の計測値に基づいて親指56の導電部材18に対する接触位置を特定する。即ち、図3に示されているように、全体の抵抗値をRとされた導電部材18の中間部分に親指56が接触すると、抵抗体としての導電部材18は、一方の端(図3中、左端)から親指56の接触位置までの第1の抵抗体58(抵抗値はR1 )と、他方の端(図3中、右端)から親指56の接触位置までの第2の抵抗体60(抵抗値はR2 )とに実質的に分割される。これら第1の抵抗体58の抵抗値:R1 と、第2の抵抗体60の抵抗値:R2 の比は、導電部材18の一方の端から親指56の接触位置までの距離と、導電部材18の他方の端から親指56の接触位置までの距離との比と略同じになることから、R1 とR2 の比を求めることによって、親指56の導電部材18に対する接触位置が特定される。なお、導電部材18と接触確認部材20が手46によって導通された状態を電気回路図として示したのが、図4である。
【0045】
本実施形態では、導電部材18および接触確認部材20の表面が誘電体層22で覆われており、手46が誘電体層22を介してそれら導電部材18および接触確認部材20に間接的に接触する。このようにして手46が導電部材18および接触確認部材20と対向することにより、手46(第1指56)と導電部材18を電極とするコンデンサと、手46(第2〜第5指48,50,52,54)と接触確認部材20を電極とするコンデンサが構成される。第1,第2の交流電源28,34から導電部材18には交流電圧が印加されることから、手46と導電部材18および手46と接触確認部材20の間で電流が流れる。要するに、本実施形態のタッチスイッチ10は静電容量結合型とされており、親指56の導電部材18に対する誘電体層22を介した間接的な接触が検出されるようになっている。
【0046】
また、第1,第2の電圧計26,32による電圧値の計測は所定の時間間隔で繰り返されており、操作特定手段42が親指56の導電部材18に対する接触位置の変化を連続的に検出している。これにより、親指56を導電部材18の表面に接触させながら移動させた場合に、親指56の変位方向と変位量,変位の速さが特定されるようになっている。
【0047】
操作特定手段42によって親指56の導電部材18への接触位置が特定されて操作の種類が判別されると、処理装置38の制御信号出力手段44が、自動車の装置に対して制御信号を出力して、該装置に対して操作に応じた動作を行わせる。タッチスイッチ10の操作によって制御される装置は、特に限定されるものではないが、例えば、自動車のエアーコンディショナがタッチスイッチ10の操作によって制御される。具体的には、例えば、アシストグリップ12を握って導電部材18と接触確認部材20を手46によって導通させながら、親指56で図5に示された導電部材18の第1のスイッチ部62をタッチする操作を行うことによって、制御信号出力手段44からエアーコンディショナに対してON/OFFの切替え信号が出力される。更に、導電部材18と接触確認部材20を導通させながら、親指56で図5に示された導電部材18の第2のスイッチ部64をタッチする操作を行うことによって、制御信号出力手段44からエアーコンディショナに対して運転モード(暖房/冷房や風の吹出口)の切替え信号が出力される。更にまた、導電部材18と接触確認部材20を導通させながら、親指56で導電部材18の第3のスイッチ部66を前後方向(図5中、右左方向)に撫でる操作を行うことによって、制御信号出力手段44からエアーコンディショナに対して風量調節信号が出力される。この風量の調節に際しては、親指56の導電部材18上での変位方向によって風量の増加操作と減少操作が判定されると共に、親指56の導電部材18上での変位量によって風量の変化量が設定され、更に、親指56の導電部材18上での変位スピードによって単位時間当たりの風量の変化量(変化の早さ)が設定される。なお、図5に示されているように、第1〜第3のスイッチ部62,64,66は、凹溝68によって区切られる等して、第1〜第3のスイッチ部62,64,66の位置が触感によって特定されるようになっていても良い。
【0048】
もっとも、上記の如きタッチスイッチ10の操作とエアーコンディショナ等の動作との対応付けは、あくまでも例示であって、限定されるものではなく、例えば、車窓の開閉やオーディオ機器の操作、車室灯の操作等にも用いられ得る。
【0049】
本実施形態に従う構造とされたタッチスイッチ10において、タッチ操作を行う場合には、アシストグリップ12を手46で握って親指56で導電部材18に接触するという極めて簡単な方法で、親指56の導電部材18に対する接触位置やその変化量および変化方向等に応じた動作を実行させることができる。
【0050】
一方、タッチスイッチ10によれば、ハンドル形のアシストグリップ12を握って、導電部材18と接触確認部材20を導通させながらタッチ操作を行う必要があることから、導電部材18に意図せずに誤って触れた場合にも、タッチ操作が受け付けられることはなく、意図しない接触による誤動作が防止される。特に、接触確認部材20がアシストグリップ12の内側に設けられており、手46で握る部分がルーフ側部14と対向していることから、導電部材18と接触確認部材20の両方に意図せずに触れることは起こり難く、誤動作が効果的に防がれている。
【0051】
しかも、タッチスイッチ10では、導通確認手段40が設けられて、導電部材18と接触確認部材20の導通状態下でのみ被検出導電体(親指56)の導電部材18への接触が検知されるようになっている。それ故、意図的な操作と意図しない接触が、導通確認手段40によって精度良く判別されて、誤動作が防止される。
【0052】
また、導電部材18と接触確認部材20が絶縁体層16の両面に設けられて、近い位置に配置されていることから、導電部材18と接触確認部材20を導通させることにより、導電部材18だけに手46が触れた場合に比して、電気抵抗が抑えられて第1,第2の検出用抵抗体24,30に大きな電流が流れる。それ故、意図的な接触と、意図しない接触を、高精度に判別することができて、不用意な接触による誤動作を防ぐことができる。
【0053】
また、導電部材18および接触確認部材20が導電性樹脂で形成されていることにより、導電部材18および接触確認部材20の形状の自由度を大きくすることができて、アシストグリップ12のような立体形状にも容易に対応することができる。
【0054】
また、導電部材18に対する親指56の接触位置だけでなく、接触位置の変化(移動)も検出できることから、接触位置の移動量や接触位置の移動方向等に対応して所定の動作を実行させることもできる。これにより、1つのタッチスイッチ10によってより多くの動作を実行させることが可能となると共に、ON/OFFの制御だけでなく、音量や風量等の制御を理解し易い簡単な操作によって行うこともでき得る。
【0055】
また、本実施形態のタッチスイッチ10は、静電容量結合型とされており、導電部材18および接触確認部材20の表面に誘電体層22が設けられている。それ故、手46が導電部材18および接触確認部材20に直接接触することがなく、耐久性の向上が図られる。
【0056】
図6,図7には、本発明の第2の実施形態としてのタッチスイッチ70が示されている。タッチスイッチ70は、自動車用把手部としてのアシストグリップ72に設けられている。なお、以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0057】
アシストグリップ72は、絶縁体層としての絶縁部材74と、絶縁部材74の一方の面に固着された導電部材76と、絶縁部材74の他方の面に固着された接触確認部材78とを有している。絶縁部材74は、ハンドル形状を呈する部材であって、合成樹脂材料等で形成された絶縁体とされている。
【0058】
また、絶縁部材74の一方の面には、導電部材76が固着されている。導電部材76は、調製されたゴムコンパウンドに有機溶剤を添加したものに導電性フィラーとしてのカーボンブラックを混合し、更に印刷用溶剤を添加したゴム系の導電性塗料が、スクリーン印刷やインクジェット印刷,フレキソ印刷,グラビア印刷,パッド印刷,リソグラフィー等の方法で、絶縁部材74の一方の面上に所定の形状で印刷されることによって形成されている。
【0059】
この導電部材76には、ルーフ側部14に取り付けられる一方の端部に第1の直流電源80が取り付けられており、所定の直流電圧が印加されている。更に、導電部材76のルーフ側部14に取り付けられる他方の端部には、第2の直流電源82が取り付けられており、第1の直流電源80と同電位の直流電圧が印加されている。これにより、導電部材76には、手46の非接触状態において、電流が流れない。なお、第1,第2の直流電源80,82と導電部材76の間に設けられた第1,第2の検出用抵抗体24,30および第1,第2の電圧計26,32については、第1の実施形態と同様であることから、説明を省略する。
【0060】
また、絶縁部材74の他方の面には、接触確認部材78が固着されている。接触確認部材78は、導電部材76と同様に、導電性塗料が絶縁部材74の他方の面上に所定の形状で印刷されることによって形成されており、導電部材76から離隔して設けられることで、導電部材76に対して電気的に絶縁されている。なお、導電部材76および接触確認部材78の形成材料は、特に限定されるものではなく、導電性を有する塗料であれば各種公知のものが採用され得る。
【0061】
このような構造とされたタッチスイッチ70においても、第1の実施形態のタッチスイッチ10と同様に、アシストグリップ72を手46で握って、導電部材76と接触確認部材78を導通させると同時に、親指56で導電部材76の所定の部位に触れることで、親指56の導電部材76への接触位置に対応する動作が実行されるようになっている。これにより、意図しない接触による誤動作が回避される。
【0062】
また、本実施形態のタッチスイッチ70では、導電部材76および接触確認部材78が外部に露出しており、図7に示されているように、手46が導電部材76および接触確認部材78に対して直接接触するようになっている。そして、親指56の導電部材76への直接的な接触の有無と接触位置が検出される。それ故、直流電圧を印加する第1,第2の直流電源80,82を採用することができて、電源の簡略化が図られる。なお、このことからも明らかなように、本実施形態のタッチスイッチ70は、抵抗結合型とされている。
【0063】
なお、第1の実施形態の構造において誘電体層22を省略すると共に、第1,第2の交流電源28,34を第1,第2の直流電源80,82に代えて導電部材18に直流電圧を印加することで、抵抗結合型のタッチスイッチとすることもできる。同様に、第2の実施形態の構造において、導電部材76および接触確認部材78の表面を誘電体層22で覆うと共に、第1,第2の直流電源80,82を第1,第2の交流電源28,34に代えて導電部材76に交流電圧を印加することで、静電容量結合型のタッチスイッチとすることも可能である。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、絶縁体層16を挟んで導電部材18と接触確認部材20が近い位置に配置されていたが、導電部材と接触確認部材は、電気的に相互に絶縁されていれば、離隔して別々の位置に配置されていても良い。より具体的には、導電部材と接触確認部材が何れも平板形状とされており、導電部材が自動車のドアに配設されていると共に、接触確認部材が自動車のルーフに配設されて、一方の手で接触確認部材に触れながら他方の手で導電部材に触れることで、タッチスイッチが操作を受け付けるようになっていても良い。
【0065】
また、導電部材と接触確認部材の導通は、手の接触による人体を通じた導通に限定されるものではなく、例えば、人体よりも電気抵抗の小さい導通用部材を介して導電部材と接触確認部材が導通されるようになっていても良い。更に、接触位置を特定される被検出導電体も、人の親指に限定されるものではなく、人差指等といった人体の別の部位であっても良いし、ペン状のタッチ用部材等といった別部材であっても良い。
【0066】
また、導電部材には、複数箇所から電圧が印加されていれば良く、必ずしも2箇所に限定されない。即ち、前記実施形態では、親指56の導電部材18に対する接触位置が車両前後方向で1次元的に特定されるようになっていたが、例えば、導電部材に対して4箇所から電圧を印加して、導電部材上で車両前後方向だけでなく、車両左右方向又は車両上下方向でも接触位置が特定されるようにもできる。要するに、4箇所に電圧を印加することで、導電部材上において2次元的に接触位置およびその変化を検出することも可能である。
【0067】
また、導電部材および接触確認部材の形成材料は、前記実施形態に示されている導電性の合成樹脂や導電性塗料に限定されるものではなく、電気伝導率が充分に大きいものであれば良いことから、例えば、銅等の金属材料等を採用することもできる。更に、第1の実施形態に示された導電性樹脂を導電部材と接触確認部材の一方に用いると共に、第2の実施形態に示された導電性塗料を導電部材と接触確認部材の他方に用いることも可能であり、導電部材と接触確認部材が同じ材料で形成されている必要はない。
【0068】
また、絶縁体層は、導電部材と接触確認部材の間に介在して、電気的な絶縁機能を有していれば、形状は特に限定されるものではなく、例えば、異形状の絶縁部材も絶縁体層として採用され得る。
【0069】
また、前記実施形態では、タッチスイッチ10が自動車のアシストグリップ12に設けられていたが、タッチスイッチは、例えば、自動車のドアアームレストに設けられてドアの施錠状態と開錠状態を切り替える操作装置とされていても良いし、インサイドドアハンドルに設けられて車窓開閉用の操作装置とされていても良い。また、本発明のタッチスイッチは、必ずしも自動車にのみ用いられるものではなく、家屋のドアハンドルや照明用スイッチ等にも適用され得る。
【符号の説明】
【0070】
10,70:タッチスイッチ、12,72:アシストグリップ(把手部)、14:ルーフ側部(壁部)、16:絶縁体層、18,76:導電部材、22:誘電体層、28:第1の交流電源(電源)、34:第2の交流電源(電源)、36:接地側電極、56:親指(被検出導電体)、74:絶縁部材(絶縁体層)、80:第1の直流電源(電源)、82:第2の直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材に対して複数箇所から電圧が印加されており、該導電部材における通電状態に基づいて被検出導電体の該導電部材への接触の有無と接触位置を検出するタッチスイッチにおいて、
導電性の接触確認部材を設けて、前記導電部材に電圧を印加する電源の接地側電極を該接触確認部材に接続し、該接触確認部材に対する該導電部材の導通状態下において前記被検出導電体の該導電部材への接触の有無と接触位置を検出することを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項2】
前記導電部材と前記接触確認部材が電気絶縁性を有する絶縁体層の各一方の面に設けられている請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
壁部から突出して該壁部と対向して延びるドアハンドル形状の前記絶縁体層が形成されており、該絶縁体層の該壁部との対向面に前記導電部材と前記接触確認部材の何れか一方が設けられると共に、該絶縁体層部の該壁部と反対側の面に該導電部材と該接触確認部材の何れか他方が設けられて把手部とされている請求項2に記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記把手部が、自動車のドアアームレストとインサイドドアハンドルとアシストグリップの少なくとも1つの自動車用把手部である請求項3に記載のタッチスイッチ。
【請求項5】
前記電源によって交流電圧が前記導電部材に印加されていると共に、該導電部材の表面に誘電体層が設けられており、前記被検出導電体の該導電部材に対する該誘電体層を介した接触の有無と接触位置が検出される請求項1〜4の何れか1項に記載のタッチスイッチ。
【請求項6】
前記電源によって直流電圧が前記導電部材に印加されており、前記被検出導電体の該導電部材に対する直接的な接触の有無と接触位置が検出される請求項1〜5の何れか1項に記載のタッチスイッチ。
【請求項7】
前記導電部材および前記接触確認部材の少なくとも一方が導電性樹脂で形成されている請求項1〜6の何れか1項に記載のタッチスイッチ。
【請求項8】
前記導電部材および前記接触確認部材の少なくとも一方が導電性塗料で形成されている請求項1〜7の何れか1項に記載のタッチスイッチ。
【請求項9】
前記被検出導電体の前記導電部材上での接触位置の移動量と移動方向が、接触位置を連続的に検出することで特定される請求項1〜8の何れか1項に記載のタッチスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−174629(P2012−174629A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37908(P2011−37908)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】