説明

タッチセンシングプローブ

【課題】センシング精度の向上および利便性、コスト低減を図ったタッチセンシングプローブを提供する。
【解決手段】内部に通電用のコンタクトチップ1を有するノズル本体2と、ノズル本体2先端部にネジ式で着脱自在に取り付けられ、コンタクトチップ1と接触バネ5により電気的に接続される先端プローブ3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットなどに取り付けられて溶接位置をティーチングするためのタッチセンシングプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接ロボットなどで自動溶接を実施する場合、予め溶接位置をワイヤタッチセンシングでティーチングすることが行われている。例えば特許文献1では、溶接ロボットの溶接トーチにマスターチップを取り付けてティーチングを行うことによってセンシングの向上を図っている。このとき、マスターチップを溶接トーチの先端にあるコンタクトチップに取り替えることとしている。
特許文献2では、コンタクトチップと同一形状をなし、コンタクトチップの替わりにトーチに取り付けた溶接ロボットティーチング用ダミーチップを用いてティーチングを行うものである。このダミーチップには、電極ワイヤとほぼ同じ径寸法のばね状ワイヤが取り付けられており、これを用いてティーチングを行う。
特許文献3では、実際の溶接時の突き出し長さを有し直線状に形成されたダミーチップを用いてワイヤの曲がり癖を補正する方法に関するものである。ダミーチップと溶接ワイヤでそれぞれ基準ゲージをセンシングし、検出した位置データの差異を補正値として用いる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−261543号公報
【特許文献2】実開平7−26061号公報
【特許文献3】特開平7−51857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術には以下に示すような課題があった。
(1)特許文献3に開示されるように、通常の溶接ロボットでのタッチセンシング(ダミー用のコンタクトチップを用いない)方法では、トーチコンジットの処理方法や継手の状況によって、センシング動作中のエクステンション変動や、母材の接触検知中のワイヤ変形などでセンシング精度の確保が困難な場合がある。なお、エクステンション量の変動を抑制するためにワイヤクランプ装置を設けることがあるが、コストアップ要因になることに加え、母材表面の状況によってはワイヤの変形が避けられない。
(2)また、特許文献1、特許文献2に開示されるようなダミーチップを用いた従来技術では、コンタクトチップを交換する際にペンチなどの工具が必要となることに加え、現場での作業に時間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、センシング精度の向上および利便性、コスト低減を図ったタッチセンシングプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタッチセンシングプローブは、内部に通電用のコンタクトチップを有するノズル本体と、前記ノズル本体の先端部に着脱自在に取り付けられ、前記コンタクトチップと電気的に接続される先端プローブと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のタッチセンシングプローブにおいて、前記先端プローブは、前記ノズル本体に対してネジ式で着脱自在に結合されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のタッチセンシングプローブにおいて、前記ノズル本体は、前記コンタクトチップを挟んで弾性的に接触する接触バネを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のタッチセンシングプローブにおいて、前記先端プローブは、先端部に針状突起部を有し、該針状突起部の先端と前記コンタクトチップの先端間の間隔寸法がワイヤタッチセンシングの場合のエクステンション量と略同一に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、先端プローブが内部に通電用のコンタクトチップを有するノズル本体に着脱自在に取り付けられ、かつコンタクトチップと電気的に接続されているので、センシング時に曲がりなどの変形やエクステンション量の変動がないため、精度のよいセンシングを行うことができる。また、先端プローブが摩耗した場合は先端プローブのみを交換すればよいので、利便性がよい。また、コンタクトチップなど既存のものを利用できるので安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態におけるタッチセンシングプローブの断面図(a)と正面図(b)である。
【図2】本実施形態のタッチセンシングプローブの主要部品の分解図である。
【図3】本実施形態のタッチセンシングプローブの使用例を示す説明図である。
【図4】本実施形態のタッチセンシングプローブのエクステンション量を示す説明図である。
【図5】本実施形態のタッチセンシングプローブの断面正面図である。
【図6】従来のワイヤタッチセンシングと本実施形態のタッチセンシングプローブによるタッチセンシングとの相違を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1(a)は本発明の一実施形態におけるタッチセンシングプローブの断面図で、(b)はその正面図である。
本実施形態のタッチセンシングプローブ10は、溶接トーチの先端部に取り付けられる電極ノズルを用いてこれに変更を加えることで構成されており、内部に通電用のコンタクトチップ1を有するノズル本体2と、このノズル本体2の先端部にネジ結合され、先端部に針状突起部4を有する先端プローブ3と、ノズル本体2を介してコンタクトチップ1と先端プローブ3とを通電させる接触バネ5とを備えている。図中、8はロボットアームに把持される絶縁筒である。
【0013】
図2は、本実施形態のタッチセンシングプローブ10の主要部品の分解図であり、ノズル本体2と先端プローブ3を示している。
このノズル本体2は、電極ノズルのノズル部材20の先端部に先端プローブ3を取り付けるためのネジ部(雌ネジ部)21bを追加加工したものである。さらに、コの字状の接触バネ5を挿通するための長穴22と、固定ネジ6を結合するためのネジ穴23とがノズル部材20の外周面に加工されている。また、安全のためノズル本体2を絶縁体(例えば絶縁テープなど)でカバーすることで感電を防止することができる。
このようにして作られたノズル本体2に先端プローブ3がネジ式で着脱自在に取り付けられる。すなわち、先端プローブ3の形状はコンタクトチップ1と干渉しないようにコーン型に加工しており、先端部は針状突起部4を形成している。さらに、先端プローブ3にはノズル本体2の雌ネジ部21bと結合するための雄ネジ部21aと、ネジ締めを容易かつ確実にするための平行平面部3aが形成されている。また、先端プローブ3は電導性と耐久性を考慮し、ステンレス鋼(SUS420J2)としているが、電導性と耐久性があればステンレス鋼以外の材料でもよい。また、先端プローブ3の針状突起部4はワイヤに比べて剛性の高い(曲がりにくい)材質を用いている。
【0014】
また、接触バネ5はコの字状に折り曲げて形成されており、両側のバネ片5aがコンタクトチップ1を挟むように、ノズル部材20の外周面に設けられた長穴22にそれぞれ挿通されている。各長穴22はバネ片5aの両端部を支持するようにノズル部材20の外周面の両側に設けられている。そして、バネ片5aの連結部(架橋部)が固定ネジ6でノズル本体2の外周面に締め付け固定されている。
なお、コンタクトチップ1と先端プローブ3とは電気的に接続されていればよく、接触バネとしてコイルバネをコンタクトチップ1と先端プローブ3との間に介装させてもよい。
【0015】
上記のように構成された本実施形態のタッチセンシングプローブ10の作用、使用方法について説明する。
【0016】
(1)ノズルの交換
図3に示すように、ロボットなどの自動溶接装置に取り付けられた溶接トーチから電極ノズル20Aを外し、代わりに本タッチセンシングプローブ10(ノズル本体2、先端プローブ3、接触バネ5等から構成される)を取り付ける。このとき、コンタクトチップ1の交換は必要ないため、工具などは不要である。また、タッチセンシングプローブ10のコンタクトチップ1先端と針状突起部4先端間の間隔寸法は、図4に示すように、実際の溶接施工とタッチセンシングプローブ10でのセンシング時のエクステンション量が一致するように設計している。
また、図2に示すように、ノズル本体2と先端プローブ3を分解できるため、先端プローブ3が摩耗した場合は容易に交換することができる。
【0017】
(2)タッチセンシングプローブ10への給電
本タッチセンシングプローブ10を溶接トーチに取り付けたときの断面図を図5に示す。このとき、接触バネ5がコンタクトチップ1に弾性的に接触し給電が可能となる。すなわち、接触バネ5の両側のバネ片5aは両端部がノズル本体2の外周面に設けられた長穴22にて支持されているため、ノズル本体2を溶接トーチに取り付けたときには、バネ片5aがコンタクトチップ1を挟むように弾性的に接触する。したがって、コンタクトチップ1からノズル本体2を介して先端プローブ3へ給電することが可能となる。
【0018】
(3)タッチセンシング動作
従来のワイヤタッチセンシングの場合、図6に示すように、母材30表面の状況(塗料などの絶縁体の付着など)によって接触検知できず、ワイヤ31が変形することでセンシング精度が劣化する場合や状況によってはセンシングそのものができない場合がある。
一方、本タッチセンシングプローブ10の場合は、先端部の針状突起部4が剛性が高く変形し難い構成になっているため、センシング精度を確保することが可能である。
【0019】
以上説明したように、本実施形態のタッチセンシングプローブ10は、以下のような効果がある。
(1)溶接ロボットでタッチセンシングする際に、継手近傍に塗膜などの絶縁体が付着している場合でも安定して母材表面および開先を検知できる。
(2)コンタクトチップを取り外す必要がないため、センシング時のトーチ部の交換が容易であるとともにシンプルな構造となっている。よって、安価に製作することができる。
(3)従来のワイヤタッチセンシングで必要なエクステンション量の調整が不要であり、センシング時におけるエクステンション量の変動がないため、精度のよい安定したセンシングが可能である。
(4)先端プローブのみの交換が可能なため、コスト・メンテナンス性の面で有利である。
【0020】
なお、上記実施形態の説明では、エクステンションは固定としているが、ノズル本体に対する先端プローブのねじ込み量を調整できる構成を設けることにより、容易にエクステンション量を可変にすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 コンタクトチップ
2 ノズル本体
3 先端プローブ
4 針状突起部
5 接触バネ
6 固定ネジ
8 絶縁筒
10 タッチセンシングプローブ
20 ノズル部材
21a 雄ネジ部
21b 雌ネジ部
22 長穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通電用のコンタクトチップを有するノズル本体と、
前記ノズル本体の先端部に着脱自在に取り付けられ、前記コンタクトチップと電気的に接続される先端プローブと、
を少なくとも備えたタッチセンシングプローブ。
【請求項2】
前記先端プローブは、前記ノズル本体に対してネジ式で着脱自在に結合されていることを特徴とする請求項1記載のタッチセンシングプローブ。
【請求項3】
前記ノズル本体は、前記コンタクトチップを挟んで弾性的に接触する接触バネを有することを特徴とする請求項1または2記載のタッチセンシングプローブ。
【請求項4】
前記先端プローブは、先端部に針状突起部を有し、該針状突起部の先端と前記コンタクトチップの先端間の間隔寸法がワイヤタッチセンシングの場合のエクステンション量と略同一に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタッチセンシングプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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