説明

タッチパネルコントローラ、タッチパネルの制御方法、それを用いた入力装置および電子機器

【課題】ノイズの影響を低減する。
【解決手段】容量検出回路10は、複数のセンサ電極SEi,jそれぞれの容量Ci,jを測定し、測定された容量Ci,jを示す容量データDi,jを含む第1データアレイARRAY1を生成する。タッチ検出部20は、第1データアレイARRAY1に応じたデータにもとづき、ユーザが接触している少なくともひとつのセンサ電極SEを判定する。第1平均データ算出部22は、第1データアレイARRAY1に含まれる容量データのうち、タッチ検出部20によりユーザが接触していると判定された少なくともひとつのセンサ電極に対応する容量データを除いた容量データの平均を示す第1平均データAVG1を生成する。第1減算器24は、第1データアレイARRAY1に含まれる複数の容量データそれぞれから第1平均データAVG1を減算し、第2データアレイARRAY2を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量の変化を利用したタッチ式の入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータや携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器は、指で接触することによって電子機器を操作するための入力装置を備えるものが主流となっている。
【0003】
こうした入力装置のひとつであるタッチ式入力装置(タッチセンサ、タッチパッドやトラックパッドとも称される)は、ユーザの指が接触することにより、電極とその周囲との間に形成される静電容量が変化することを利用した静電センサをしている。タッチ式入力装置は、X軸方向に配置された複数のセンサ電極と、Y軸方向に配置された複数のセンサ電極と、各センサ電極の静電容量を検出する検出回路を備える。検出回路は、静電容量の変化の大きい、すなわち、ユーザが接触したセンサ電極を判定することで、ユーザが接触した位置を判定する。
【0004】
近年のユーザインタフェースは、ユーザが複数の指で複数の位置を同時に触れたり、触れながら指を動かすことにより、多様な入力処理(ジェスチャともいう)を受け付けることが可能となっている。たとえばユーザが2本の指でタッチ式入力装置に触れると(以下、マルチタッチと称する)、X軸方向とY方向それぞれにおいて2箇所、容量値の変化が大きいポイントが発生する。検出回路は、容量値の変化が大きいポイントを特定し、ユーザが入力したジェスチャを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−325858号公報
【特許文献2】特表2003−511799号公報
【特許文献3】米国特許第5825352A1号明細書
【特許文献4】特開2007−013432号公報
【特許文献5】特開平11−232034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タッチ式入力装置は、ユーザの接触に応じた微少な容量変化を検出可能な反面、さまざまな外来ノイズの影響を受けやすい。したがって、ノイズによる誤検出を防止する必要がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ノイズの影響を低減したタッチパネルの制御技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルを制御するタッチパネルコントローラに関する。タッチパネルコントローラは、複数のセンサ電極それぞれの容量を測定し、複数のセンサ電極それぞれの容量を示す容量データを含む第1データアレイを生成する容量検出回路と、第1データアレイに応じたデータにもとづき、ユーザが接触している少なくともひとつのセンサ電極を判定するタッチ検出部と、第1データアレイに含まれる容量データのうち、タッチ検出部によりユーザが接触していると判定された少なくともひとつのセンサ電極に対応する容量データを除いた容量データの平均を示す第1平均データを生成する第1平均データ算出部と、第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから第1平均データを減算し、第2データアレイを生成する第1減算器と、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様も、タッチパネルコントローラに関する。このタッチパネルコントローラは、複数のセンサ電極それぞれの容量の基準値を示す基準データを生成する基準容量設定部と、複数のセンサ電極それぞれの容量を測定し、複数のセンサ電極それぞれの容量を示す容量データを含む第1データアレイを生成する容量検出回路と、第1データアレイに含まれる複数の容量データのうち、対応する基準データとの差分が最も小さい容量データを特定する基準要素判定部と、基準要素判定部により特定された容量データとそれと対応する基準データの差分を示す差分データを算出する差分算出部と、第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから差分データを減算し、第4データアレイを生成する第3減算器と、を備える。
【0010】
これらの態様によれば、感度の悪化を抑制しつつ、第1データアレイからノイズを除去したデータアレイにもとづき、ユーザの入力を処理することができる。
【0011】
本発明の別の態様は、入力装置に関する。入力装置は、ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルと、タッチパネルを制御する上述のいずれかのタッチパネルコントローラと、を備える。
【0012】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、ディスプレイと、ディスプレイにオーバーラップして設けられ、ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルと、タッチパネルを制御する上述のいずれかのタッチパネルコントローラと、を備える。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様によれば、感度の悪化を抑制しつつ、ノイズの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係るタッチ式の入力装置を備える電子機器の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、タッチパネルを示す図であり、図2(b)は、第1データアレイARRAY1を示す図である。
【図3】第1の実施の形態に係るタッチパネルコントローラの機能ブロック図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、比較技術の処理を示す図である。
【図5】図5(a)〜(e)は、図3のタッチパネルコントローラの動作を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係るタッチパネルコントローラの機能ブロック図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、図6のタッチパネルコントローラの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0018】
図1は、実施の形態に係るタッチ式の入力装置2を備える電子機器1の構成を示すブロック図である。入力装置(タッチ式入力装置)2は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)9とオーバーラップする位置、つまりLCD9の表層に配置され、タッチパネルとして機能する。あるいは、LCD9とは別の箇所に配置されたトラックパッドのような入力デバイスであってもよい。
【0019】
入力装置2は、タッチパネル(センサ部)4と、タッチパネルコントローラ5を備える。ユーザが指8でタッチパネル4の表面に触れると、タッチパネル4の内部に配置されたセンサ電極が形成する静電容量が変化する。
【0020】
図2(a)は、タッチパネル4を示す図である。タッチパネル4は、m×nのマトリクス状に配置された複数(m×n個)のセンサ電極SEのアレイを有する。ここでは、m=9、n=12の場合を示すが、アレイの個数は限定されない。以下、添え字のi、jは、i行j列目の要素を示す。X1〜X12、Y1〜Y9は、座標を示す。
【0021】
図1に示すように、タッチパネル4をLCD9の表層に設ける場合、タッチパネル4の内部のセンサ電極は、LCD9からのノイズ輻射Nの影響を受けやすく、静電容量の変化量にノイズが重畳されると、ユーザからの正確な操作情報を判別できなくなる。センサ部がLCD9の表層に設けられない場合であっても、電子機器1の内部のその他の回路ブロックからのノイズ輻射Nの影響を受けることが想定される。
【0022】
タッチパネルコントローラ5は、ノイズの影響を低減しつつ、タッチパネル4を制御する。タッチパネルコントローラ5は、容量検出回路10、DSP(Digital Signal Processor)6を備える。
【0023】
容量検出回路10は、複数のセンサ電極SEと接続されている。容量検出回路10は、各センサ電極SEi,jの静電容量Ci,jを測定し、測定された容量Ci,jを示す容量データDi,jを含む第1データアレイARRAY1[1:m×n]を生成する。第1データアレイARRAY1のk番目の要素ARRAY1[k]は、ひとつのセンサ電極SEi,jの容量値を示す容量データDi,jを含む。たとえばk=(i−1)×n+jとしてもよい。なお、k、i、jの関係はこれには限定されず、別の関係式で対応付けてもよい。
【0024】
図2(b)は、第1データアレイARRAY1を示す図である。図2(a)に示すように、ユーザが座標X2、X3、Y2、Y3付近を接触すると、その付近の容量データDijの値が大きくなる。
【0025】
DSP6は、第1データアレイARRAY1[1:m×n]を解析し、ユーザの入力動作の有無や種類を判定する。たとえばユーザの指8が、タッチパネル4に接触することにより、LCD9上に表示された項目、オブジェクトが選択され、あるいは文字入力が補助される。なお容量検出回路10とDSP6はひとつのIC(Integrated Circuit)に集積化されてもよい。
【0026】
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施の形態に係るタッチパネルコントローラ5の機能ブロック図である。
【0027】
容量検出回路10は、各センサ電極SEi,jの静電容量Ci,jを検出電圧Vi,jに変換するC/V変換回路12と、検出電圧Vi,jをデジタルの容量データDi,jに変換するA/Dコンバータ14と、を含む。
【0028】
DSP6は、メモリ16、タッチ検出部20、第1平均データ算出部22、第1減算器24、第2平均データ算出部26、第2減算器28、演算処理部40を備える。
【0029】
A/Dコンバータ14からのデジタルデータDi,jはメモリ16に格納され、第1データアレイARRAY1が生成される。タッチ検出部20は、第1データアレイARRAY1にもとづき、ユーザが接触している少なくともひとつのセンサ電極、すなわち座標(Xj,Yi)を仮判定する。タッチ検出部20により特定される座標は仮の値であり、最終的な座標や入力の種類は、後述する演算処理部40により決定される。座標判定のアルゴリズムは公知の技術を用いればよく、本発明において特に限定されない。タッチ検出部20は、判定した少なくともひとつの座標を示すデータ(仮座標データCORD)を出力する。
【0030】
第1平均データ算出部22は、第1データアレイARRAY1と、仮座標データCORDを受ける。第1平均データ算出部22は、第1データアレイARRAY1に含まれる容量データのうち、仮座標データCORDが示すセンサ電極SEに対応する容量データを除いた残りの容量データの平均値を算出し、当該平均値を示す第1平均データAVG1を生成する。
【0031】
第1減算器24は、第1データアレイARRAY1に含まれる複数の容量データそれぞれから第1平均データAVG1を減算し、第2データアレイARRAY2を生成する。
ARRAY2[k]=ARRAY1[k]−AVG1
【0032】
演算処理部40は、第2データアレイARRAY2にもとづき、ユーザの接触した座標を本判定したり、ユーザの入力したジェスチャを判定する。
【0033】
好ましくは、タッチ検出部20は、第1データアレイARRAY1に応じた第3データアレイARRAY3にもとづいて、ユーザが接触する座標を判定する。第3データアレイARRAY3は、第2平均データ算出部26および第2減算器28により生成される。第2平均データ算出部26は、第1データアレイARRAY1に含まれる複数の容量データの平均を示す第2平均データAVG2を生成する。第2減算器28は、第1データアレイARRAY1に含まれる複数の容量データそれぞれから第2平均データAVG2を減算し、第3データアレイARRAY3を生成する。
ARRAY3[k]=ARRAY1[k]−AVG2
第3データアレイARRAY3を生成することにより、タッチ検出部20がユーザが接触した座標を判定する際に、ノイズの影響を低減できるため、精度を高めることができる。
【0034】
以上がタッチパネルコントローラ5の構成である。続いてその動作を説明する。
タッチパネルコントローラ5の利点は、比較技術との対比によって明確となる。そこで、タッチパネルコントローラ5の動作の前に、比較技術について説明する。
【0035】
(比較技術)
図4(a)〜(c)は、比較技術の処理を示す図である。図4(a)は、第1データアレイARRAY1を示す。第1データアレイARRAY1に含まれる容量データDi,jは、対応する容量Ci,jに応じた成分と、ノイズ成分を含む。ノイズ成分にはハッチングが付される。図4(a)の第1データアレイARRAY1は、ユーザがタッチパネル4に接触していないときのデータを示す。
【0036】
比較技術では、第1データアレイARRAY1の平均値AVGが算出される。そして、第1データアレイARRAY1に含まれる各容量データから、平均値AVGが減算され、図4(b)のデータアレイが生成される。このデータアレイは、図3の第3データアレイARRAY3に相当する。演算処理部は、図4(b)のデータアレイにもとづき、ユーザが接触した座標を判定し、あるいはジェスチャを判定する。比較技術によれば、第1データアレイARRAY1のノイズ成分を除去することができる。
【0037】
ところが、この比較技術では、ユーザのパネルの接触の有無、あるいは接触点の大小に応じて、平均値が変化するという問題がある。図4(c)は、ユーザによるタッチパネル4の接触の有無に応じて平均値が変化する様子を示す。
【0038】
ユーザがタッチパネル4に多点(ここでは3点)で接触すると、平均値が大きくなる。したがって、第1データアレイから平均値を減ずると、ユーザの接触に起因する容量変化の成分の一部が喪失し、感度が悪化するという問題が生ずる。
【0039】
続いて、実施の形態に戻り、その動作を説明する。図5(a)〜(e)は、図3のタッチパネルコントローラ5の動作を示す図である。
【0040】
図5(a)は、第1データアレイARRAY1を示す。比較技術との差異を明確とするため、図4(c)と同様にユーザがタッチパネル4に3点に同時接触しているものとする。第2平均データ算出部26により、第1データアレイARRAY1の平均値を示す第2平均データAVG2が算出される。
【0041】
第2減算器28において、第1データアレイARRAY1から第2平均データAVG2を減ずることにより、図5(b)に示す第3データアレイARRAY3が生成される。そしてタッチ検出部20は、第3データアレイARRAY3にもとづき、図5(c)に示すユーザが接触したポイントの座標P1〜P3を判定する。なお、第3データアレイARRAY3は、比較技術において演算処理部が処理対象とするデータアレイに対応する。
【0042】
図5(d)に示すように、第1平均データ算出部22は、第1データアレイARRAY1のうち、ユーザが接触したポイントの座標P1〜P3に対応する容量センサの容量データを除外し、それ以外の容量データの平均値を示す第1平均データAVG1を算出する。第1減算器24において、第1データアレイARRAY1から第1平均データAVG1を減ずることにより、図5(e)の第2データアレイARRAY2が生成される。
【0043】
実施の形態に係るタッチパネルコントローラ5によれば、演算処理部40が第2データアレイARRAY2にもとづいて、座標判定やジェスチャ判定を行うことにより、ノイズの影響をキャンセルしつつ、多点接触時の感度の悪化を回避することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態に係るタッチパネルコントローラ5aの機能ブロック図である。
【0045】
DSP6aは、基準容量設定部30、基準要素判定部32、差分算出部34、第3減算器36を備える。
【0046】
基準容量設定部30は、複数のセンサ電極SEそれぞれの容量Ci,jの基準値を示す基準データREFi,jを生成する。基準容量設定部30は、基準データREFi,jを要素とする基準データアレイREFARRAY[1:m×n]を出力する。基準データREFi,jは、タッチパネルコントローラ5の起動時において、ユーザがタッチパネル4に接触しない状態で、各センサ電極SEi,jの容量Ci,jを測定することで取得される。
【0047】
基準要素判定部32は、第1データアレイARRAY1と、基準データアレイREFARRAYを受ける。基準要素判定部32は、第1データアレイARRAY1に含まれる複数の容量データDi,jのうち、対応する基準データREFi,jとの差分が最も小さい要素(基準要素という)を特定する。そして、基準要素判定部32は、特定された基準要素が、第1データアレイARRAY1の何番目の要素であるかを示すデータXを出力する。
【0048】
差分算出部34は、第1データアレイARRAY1と、基準データアレイREFARRAYと、データXと、を受ける。データXがk番目の要素を示すとき、差分算出部34は、第1データアレイのk番目の要素ARRAY1[k]と、基準データアレイREFARRAYのk番目の要素REFARRAY[k]の差分を示す差分データDIFFを算出する。つまり差分データDIFFは、基準要素の容量データDi,jと、それと対応する基準データREFi,jの差分を示す。
【0049】
第3減算器36は、第1データアレイARRAY1に含まれる複数の容量データDi,jそれぞれから差分データDIFFを減算し、第4データアレイARRAY4を生成する。
【0050】
演算処理部40は、第4データアレイARRAY4にもとづき、ユーザの接触した座標を判定したり、ユーザの入力したジェスチャを判定する。
【0051】
図7(a)〜(c)は、図6のタッチパネルコントローラ5aの動作を示す図である。タッチパネルコントローラ5aの起動時に、図7(a)に示す基準データアレイREFARRAYが生成される。
【0052】
通常動作時に、図7(b)に示すような第1データアレイARRAY1が生成される。第1データアレイARRAYは、容量に起因する成分と、同相ノイズ成分を含む。同相ノイズ成分にはハッチングが付される。
【0053】
基準要素判定部32は、第1データアレイARRAY1に含まれる容量データDi,jの中から、基準要素を決定する。基準要素は、同相ノイズ成分が最も小さい要素であり、図7(b)では容量データD1,9が基準要素となり、データXの値は9となる。
【0054】
差分算出部34は、基準要素の容量データD1,9と、それと対応する基準データREF1,9の差分DIFFを算出する。そして、図7(b)の第1データアレイARRAY1から差分DIFFを減算することにより、図7(c)に示す第4データアレイARRAY4が生成される。
【0055】
図5のタッチパネルコントローラ5によれば、第1データアレイARRAY1から同相ノイズを除去した第4データアレイARRAY4を生成することができる。そして、演算処理部40がデータアレイARRAY4にもとづいて、座標判定やジェスチャ判定を行うことにより、ノイズの影響をキャンセルしつつ、比較技術において問題となる多点接触時の感度の悪化を回避することができる。
【0056】
実施の形態にもとづき、特定の語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…電子機器、2…入力装置、4…タッチパネル、5…タッチパネルコントローラ、6…DSP、8…指、9…LCD、10…容量検出回路、12…C/V変換回路、14…A/Dコンバータ、20…タッチ検出部、22…第1平均データ算出部、24…第1減算器、26…第2平均データ算出部、28…第2減算器、30…基準容量設定部、32…基準要素判定部、34…差分算出部、36…第3減算器、40…演算処理部、SE…センサ電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルを制御するタッチパネルコントローラであって、
前記複数のセンサ電極それぞれの容量を測定し、複数のセンサ電極それぞれの容量を示す容量データを含む第1データアレイを生成する容量検出回路と、
前記第1データアレイに応じたデータにもとづき、前記ユーザが接触する少なくともひとつのセンサ電極を判定するタッチ検出部と、
前記第1データアレイに含まれる容量データのうち、前記タッチ検出部により前記ユーザが接触していると判定された少なくともひとつのセンサ電極に対応する容量データを除いた容量データの平均を示す第1平均データを生成する第1平均データ算出部と、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから前記第1平均データを減算し、第2データアレイを生成する第1減算器と、
を備えることを特徴とするタッチパネルコントローラ。
【請求項2】
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データの平均を示す第2平均データを生成する第2平均データ算出部と、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから前記第2平均データを減算し、第3データアレイを生成する第2減算器と、
をさらに備え、
前記タッチ検出部は、前記第3データアレイにもとづき、前記ユーザが接触する少なくともひとつのセンサ電極を判定することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネルコントローラ。
【請求項3】
ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルの制御方法であって、
前記複数のセンサ電極それぞれの容量を測定し、複数のセンサ電極それぞれの容量を示す容量データを含む第1データアレイを生成するステップと、
前記第1データアレイに応じたデータにもとづき、前記ユーザが接触する少なくともひとつのセンサ電極を判定するステップと、
前記第1データアレイに含まれる容量データのうち、前記ユーザが接触していると判定された少なくともひとつのセンサ電極に対応する容量データを除いた容量データの平均を示す第1平均データを生成するステップと、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから前記第1平均データを減算し、第2データアレイを生成するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データの平均を示す第2平均データを生成するステップと、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから前記第2平均データを減算し、第3データアレイを生成するステップと、
をさらに備え、
前記第3データアレイにもとづき、前記ユーザが接触する少なくともひとつのセンサ電極を判定することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルを制御するタッチパネルコントローラであって、
前記複数のセンサ電極それぞれの容量の基準値を示す基準データを生成する基準容量設定部と、
前記複数のセンサ電極それぞれの容量を測定し、複数のセンサ電極それぞれの容量を示す容量データを含む第1データアレイを生成する容量検出回路と、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データのうち、対応する基準データとの差分が最も小さい容量データを特定する基準要素判定部と、
前記基準要素判定部により特定された容量データとそれと対応する前記基準データの差分を示す差分データを算出する差分算出部と、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから前記差分データを減算し、第4データアレイを生成する第3減算器と、
を備えることを特徴とするタッチパネルコントローラ。
【請求項6】
ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルの制御方法であって、
前記複数のセンサ電極それぞれの容量の基準値を示す基準データを生成するステップと、
前記複数のセンサ電極それぞれの容量を測定し、複数のセンサ電極それぞれの容量を示す容量データを含む第1データアレイを生成するステップと、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データのうち、対応する基準データとの差分が最も小さい要素を特定するステップと、
特定された要素の容量データとそれと対応する前記基準データの差分を示す差分データを算出するステップと、
前記第1データアレイに含まれる複数の容量データそれぞれから前記差分データを減算し、第4データアレイを生成するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルと、
前記タッチパネルを制御する請求項1、2、5のいずれかに記載のタッチパネルコントローラと、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項8】
ディスプレイと、
前記ディスプレイにオーバーラップして設けられ、ユーザの接触状態に応じてそれぞれの容量が変化する複数のセンサ電極を含むタッチパネルと、
前記タッチパネルを制御する請求項1、2、5のいずれかに記載のタッチパネルコントローラと、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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