説明

タッチパネル入力装置及び画像形成装置

【課題】A/D変換器の変換特性に起因する誤判定を是正する。
【解決手段】所定の画像データに基づいて操作面に1あるいは複数の操作ボタンを表示する表示部と、操作面における押圧位置をアナログ信号である検出信号として検出する押圧センサ部と、該押圧センサ部から入力された検出信号をデジタル信号である検出データに変換するA/D変換器と、画像データを表示部に供給すると共にA/D変換器から入力された検出データに基づいて操作ボタンが操作されたか否かを判定する制御部とを備え、制御部はA/D変換器の変換特性を操作面上の位置に応じて可変設定する変換制御信号を出力し、A/D変換器は変換制御信号に基づいて検出信号を検出データに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル入力装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、抵抗膜アナログ検出方式(4線式あるいは7線式)のタッチパネルは、操作ボタンが画像として表示される液晶表パネルの表示面(操作面)に微細な空隙を設けて対向すると共に所定の基準電圧が印加された1対の抵抗膜を押圧センサとして貼り合わせたものであり、ユーザが押圧した操作面上の位置(操作位置)を抵抗膜から出力される基準電圧の抵抗分圧(検出電圧)として検出するものである。このようなタッチパネルは、液晶表パネルに操作ボタン等の画像を表示すると共に上記検出電圧から操作位置を判定する制御装置と対をなすことにより、操作位置と操作ボタンの位置とを照合することによりユーザが何れの操作ボタンを操作しかを判定するタッチパネル入力装置を構成する。
例えば下記特許文献1には、このようなタッチパネルを用いたタッチパネル入力装置が開示されている。
【0003】
また、上記制御装置は、予め記憶した画像データに基づいて液晶表パネルに操作ボタン等の画像を表示すると共に、A/D変換器を用いることにより上記検出電圧を所定のサンプリング間隔で量子化し、量子化電圧を所定の変換特性に従って検出データ(デジタル信号)に変換することにより、操作位置として操作面上のX座標とY座標とを判定する。
【特許文献1】特開2004−094394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のタッチパネル入力装置に用いられるA/D変換器は、検出電圧と検出データとの変換特性が線形(直線的)、つまり検出電圧の大小に依らず一定値である。図1は、8ビットA/D変換器による検出電圧の検出データへの変換(特にY軸方向の変換)を示す模式図である。このY軸方向の変換における変換分解能Δdは、検出電圧の大小に依らず一定値である。
すなわち、タッチパネルの操作面上には図示するような操作ボタンが画像表示されるが、従来のタッチパネル入力装置では、操作ボタンの位置に係りなく、液晶表パネルの操作面の全域において操作位置の判定分解能が一定である。
【0005】
しかしながら、矢印で示すような例えば操作ボタンの下端を含む検出電圧の電圧範囲aは、操作ボタンの下縁に該当しない検出データbに変換されるため、従来のタッチパネル入力装置は、ユーザが上記操作ボタンの下縁を押下しても、当該ボタンが操作されたと判定しない、つまり誤判定するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであり、A/D変換器の変換特性に起因する誤判定を是正することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、タッチパネル入力装置に係る第1の解決手段として、所定の画像信号に基づいて操作面に1あるいは複数の操作ボタンを表示する表示部と、操作面における押圧位置をアナログ信号である検出信号として検出する押圧センサ部と、該押圧センサ部から入力された検出信号をデジタル信号である検出データに変換するA/D変換器と、上記画像信号を表示部に供給すると共にA/D変換器から入力された検出データに基づいて操作ボタンが操作されたか否かを判定する制御部とを備え、制御部はA/D変換器の変換分解能を操作面上の位置に応じて異なる値に設定する変換制御信号を出力し、A/D変換器は変換制御信号に基づいて検出信号を検出データに変換する、という手段を採用する。
また、タッチパネル入力装置に係る第2の解決手段として、制御部は操作ボタンの縁近傍における変換分解能を密にする変換制御信号をA/D変換器に出力する、という手段を採用する。
さらに、本願発明では、画像形成装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2のタッチパネル入力装置を操作装置として備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御部はA/D変換器の変換特性を操作面上の位置に応じて可変設定する変換制御信号を出力し、A/D変換器は、変換制御信号に基づいて検出信号を検出データに変換するので、操作面上の操作ボタンの位置に応じて発生する制御部の誤判定を是正することが可能である。
特に、操作ボタンの縁近傍における変換分解能を密にする変換制御信号の場合、操作ボタンの縁近傍が押下された場合の誤判定を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図2は、本実施形態に係るタッチパネル入力装置の機能構成を示すブロック図である。この図に示すように、本タッチパネル入力装置は、タッチパネルAと制御部Bとから構成されている。タッチパネルAは、抵抗膜アナログ検出方式(4線式あるいは7線式)のものであり、制御部Bによる制御の下に所定の操作画面を表示すると共に当該操作画面に対するユーザの押圧位置を操作位置として制御部Bに出力する。
【0010】
タッチパネルAは、液晶表示部a1、押圧センサ部a2、一対のA/D変換器a3,a4を備えている。液晶表示部a1は、所定寸法の表示面を備え、制御部Bから入力される画像信号に基づいて操作画像を画像表示する。この操作画像は、例えば図3の模式図に示すように1あるいは複数の操作ボタンM1〜M6を含むものであり、X軸方向及びY軸方向に所定長さを有する長方形状のものである。操作ボタンM1〜M6は、このような表示面上に所定間隔を隔てて配置されている。
【0011】
押圧センサ部a2は、上述した抵抗膜アナログ検出方式に基づいて操作位置を検出するものであり、当該操作位置を示すX軸検出電圧及びY軸検出電圧をA/D変換器a3に出力する。すなわち、押圧センサ部a2は、表示面(操作面)に貼り合わされると共に微細な空隙を設けて対向配置された1対の抵抗膜と、当該抵抗膜に所定の基準電圧を印加する直流電源、またユーザが抵抗膜の表面を押下することによって抵抗膜同士が接触して得られる上記基準電圧の抵抗分圧を外部に出力する回路等から構成されている。
【0012】
X軸検出電圧は、所定の基準電圧を操作位置に応じて抵抗分圧したものであり、操作面上においてユーザーが押圧した押圧位置のX座標を示す電圧信号である。また、Y軸検出電圧は、上記基準電圧を操作位置に応じて抵抗分圧したものであり、操作面上においてユーザーが押圧した押圧位置のY座標を示す電圧信号である。これらX軸検出電圧及びY軸検出電圧は、例えば原点(0,0)に近い程小さな値(つまり、原点(0,0)から遠い程大きな値)となる。すなわち、X軸検出電圧及びY軸検出電圧は、電圧値によって操作位置のX軸座標及びY軸座標を示す検出信号(アナログ信号)である。
【0013】
A/D変換器a3は、アナログ信号である上記X軸検出電圧をデジタル信号であるX軸検出データに変換する電子回路であり、制御部Bから入力される変換制御信号に基づいてX軸検出電圧からX軸検出データへの変換特性が可変設定されるものである。また、A/D変換器a4は、アナログ信号である上記Y軸検出電圧をデジタル信号であるY軸検出データに変換する電子回路であり、制御部Bから入力される変換制御信号に基づいてY軸検出電圧からY軸検出データへの変換特性が異なる値に設定されるものである。
【0014】
制御部Bは、上記操作画像を示す画像信号を液晶表示部a1に出力すると共に、上記X軸検出データ及びY軸検出データに基づいて操作面上に表示された操作ボタンM1〜M6の何れが操作指示されたかを判定し、操作情報として外部に出力する。また、この制御部Bは、上記A/D変換器a3,a4の変換特性を操作面上の位置(X-Y座標)に応じて異なる値に設定する変換制御信号を上記A/D変換器a3,a4に出力する。
【0015】
次に、このように構成された本タッチパネル入力装置の動作について、図3及び図4をも参照して詳しく説明する。
【0016】
本タッチパネル入力装置では、制御部Bから液晶表示部a1に出力される画像信号に基づいて表示面(操作面)に所定の操作画像が表示される。この操作画像は、図3に示すように複数の操作ボタンが離間して配置されたものであり、操作面に対してユーザが例えば操作ボタンM2を押下した場合、つまり操作面(表示面)において操作ボタンM2の表示領域内の何れかを押下した場合、当該押下位置(操作位置)のX座標を示すX軸検出電圧が押圧センサ部a2からA/D変換器a3に、また当該押下位置(操作位置)のY座標を示すY軸検出電圧が押圧センサ部a2からA/D変換器a4にそれぞれ出力される。
【0017】
そして、上記X軸検出電圧は、A/D変換器a3によってX軸検出データに変換されて制御部Bに入力され、Y軸検出電圧は、A/D変換器a4によってY軸検出データに変換されて制御部Bに入力される。そして、制御部Bは、このようにしてA/D変換器a3,a4から入力されたX軸検出データ及びY軸検出データに基づいて操作ボタンM2がユーザによって操作されたことを判定し、この判定結果を操作情報として外部に出力する。
【0018】
以上が本タッチパネル入力装置の基本動作であるが、制御部Bは、A/D変換器a3,a4に予め変換制御信号を出力することによって、X軸検出電圧からX軸検出データへの変換及びY軸検出電圧からY軸検出データへの変換における変換分解能を操作面上の位置に応じて異なる値に設定する。
【0019】
すなわち、図4に示すように、検出電圧(X軸検出電圧及びY軸検出電圧)の値は、操作面(X−Y平面)上の位置(X−Y座標)を示すものなので、制御部Bは、操作ボタンの縁近傍領域に該当する検出電圧の変換分解能Δd2は、他の領域の変換分解能Δd1よりも密に(狭く)なるように変換特性を設定する。図4ではY軸方向のみを示しているが、制御部Bは、X軸方向についても同様に操作ボタンの縁近傍領域に該当する検出電圧については、他の領域よりも変換分解能が密に(狭く)なるように変換特性を設定する。
【0020】
このような本タッチパネル入力装置によれば、従来の問題点が解消されて誤判定が解消する。すなわち、操作ボタンの縁近傍領域に該当する検出電圧の変換分解能Δd2が他の領域の変換分解能Δd1よりも密に(狭く)なっているので、ユーザが操作ボタンの縁を押下した場合に、操作ボタンが押下されていないと判定することを解消することができる。したがって、本タッチパネル入力装置は、従来のタッチパネル入力装置よりもマンマシンインタフェースとしての操作性が良好である。
【0021】
このような本タッチパネル入力装置は、コピー機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれら装置の機能を全て備える複合機等の画像形成装置に操作装置として適用することが考えられる。このような画像形成装置では、従来からタッチパネル入力装置を操作装置として用いているが、本タッチパネル入力装置を採用することにより快適な操作性を実現することができる。
【0022】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0023】
(1)上記実施形態の押圧センサ部a2は抵抗膜アナログ検出方式に基づいて操作位置を検出するものであるが、本発明は抗膜アナログ検出方式の押圧センサに限定されるものではない。本発明は、A/D変換器の変換分解能を検出電圧の領域に応じて異なるものとすることを特徴とするものであり、よって押圧センサの方式に依らずアナログの検出電圧をデジタルの検出データに変換する装置であれば如何なるものにも適用可能である。
【0024】
(2)上記実施形態では、操作ボタンの縁近傍領域に該当する検出電圧の変換分解能Δd2を他の領域の変換分解能Δd1よりも密に(狭く)、つまり異なる2つの変換分解能Δd1,Δd2となるようにしたが、本願発明はこれに限定されるものではない。異なる変換分解能の個数は必要に応じて3つ以上でも良い。
【0025】
(3)さらに、本タッチパネル入力装置は、上述した画像形成装置の操作装置の他に、種々の電子機器の入力装置に適用することができる。特に、操作面上に密集して多くの操作ボタンを配置するような場合に本願発明は好適である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の技術課題を説明するための模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるタッチパネル入力装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わるタッチパネル入力装置の操作面(表示面)を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わるタッチパネル入力装置の作用を示す模式図である。
【符号の説明】
【0027】
A…タッチパネル、a1…液晶表示部、a2…押圧センサ部、a3,a4…A/D変換器、B…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画像信号に基づいて操作面に1あるいは複数の操作ボタンを表示する表示部と、
前記操作面における押圧位置をアナログ信号である検出信号として検出する押圧センサ部と、
該押圧センサ部から入力された検出信号をデジタル信号である検出データに変換するA/D変換器と、
前記画像信号を前記表示部に供給すると共に、前記A/D変換器から入力された検出データに基づいて前記操作ボタンが操作されたか否かを判定する制御部とを備え、
前記制御部は、前記A/D変換器の変換分解能を操作面上の位置に応じて異なる値に設定する変換制御信号を出力し、
前記A/D変換器は、前記変換制御信号に基づいて検出信号を検出データに変換することを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、操作ボタンの縁近傍における変換分解能を密にする変換制御信号をA/D変換器に出力することを特徴とする請求項1記載のタッチパネル入力装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のタッチパネル入力装置を操作装置として備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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