説明

タッチパネル装置

【課題】視認性の低下および検知精度の低下を生じることなく、継続使用によるタッチパネル装置の不良を容易に解消することができるタッチパネル装置を提供する。
【解決手段】タッチパネル装置1を、絶縁性基板4と、第1透明導電膜10と、第1透明導電膜10に電圧分布を生じさせる4つの電極5a〜5dと、絶縁性を有し、一部が絶縁性基板4上に配置される帯状の可動シート体6と、可動シート体6の一表面に形成される第2透明導電膜と、送出しローラ30および巻取りローラ31を有し、各ローラ30,31によって可動シート体6を絶縁性基板4上で張架し、送出しローラ30に巻回される可動シート体6の一部を移動方向に送出すとともに下流側の可動シート体を巻き取ることにより絶縁性基板4上に可動シート体6の新たな部分を露出させるシート体移動手段を含んで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式のタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報を入力する入力装置として、タッチパネル装置が広く用いられている。タッチパネル装置は、表示装置の画面に設置されて使用され、ユーザがタッチパネル装置に直接触れることにより情報を入力することができる入力装置である。
【0003】
タッチパネル装置として、抵抗膜方式のタッチパネル装置が広く知られている。抵抗膜方式のタッチパネル装置は、透明導電膜が形成された上部電極基板と透明導電膜が形成された下部電極基板とを含んで構成され、各電極基板は、透明導電膜同士が対向するように配置される。
【0004】
ユーザが上部電極基板の一点を押圧すると、該点において各電極基板の透明導電膜同士が接触する。抵抗膜方式のタッチパネル装置は、各電極基板同士が接触した点の位置を検知することによって、ユーザが押圧した位置を検出する。
【0005】
抵抗膜方式のタッチパネル装置は、4線式と5線式とに大別することができる。4線式では、上部電極基板および下部電極基板のいずれか一方にX軸用の電極が設けられ、他方にY軸用の電極が設けられる。
【0006】
これに対して、5線式では、下部電極基板にX軸用およびY軸用の電極が設けられ、上部電極基板は、電圧を検出するためのプローブとしてのみ機能する。
【0007】
このようなタッチパネル装置は、駅舎に設置される券売機や銀行のATMなど、不特定多数のユーザが利用する装置にも使用されている。タッチパネル装置には、継続して使用されることにより上部電極基板の表面部が損傷したり、汚染されたりし、これによって動作不良が生じたり、タッチパネル装置の視認性が低下するという問題がある。
【0008】
しかしながら、タッチパネル装置は、上部電極基板と下部電極基板とが一体に構成されているため、前述した問題が生じた場合には、タッチパネル装置ごと交換しなければならず、メンテナンスに多額の費用と時間が必要であった。
【0009】
この問題を解決するための従来技術として特許文献1記載の技術が挙げられる。この従来技術では、タッチパネル装置を備える表示装置の枠体とタッチパネル装置との間に、上部電極基板を保護する保護シートを支持するシート貼付け部が形成されるフレームを設け、保護シートによって上部電極基板の損傷および汚染を防止するとともに、保護シートを着脱可能とすることで、保護シートが損傷および汚染された場合に、保護シートの交換を行ってタッチパネル装置の視認性の低下を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−74554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、上部電極基板上に保護シートが設けられる構成であるので、タッチパネル装置の透過率が低下してしまい、タッチパネル装置の視認性が低下してしまう。また、保護シートは上部電極基板上に設けられるので、厚み寸法が大きくなってしまい、タッチパネル装置の検知精度が低下してしまうという問題がある。
【0012】
また特許文献1記載の発明では、保護シートが損傷および汚染された場合に、保護シートを交換する必要があるが、保護シートの交換には、高い位置決め精度が求められるばかりか、気泡の発生防止および埃の付着防止などが求められるので、継続使用によるタッチパネル装置の不良を容易に解消することができないという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、視認性の低下および検知精度の低下を生じることなく、継続使用によるタッチパネル装置の不良を容易に解消することができるタッチパネル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、平板状の絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の一表面に形成される矩形状の第1透明導電膜と、
前記第1透明導電膜に対して電圧を印加するために、前記第1透明導電膜に接続され、前記絶縁性基板の一表面側に、前記第1透明導電膜の各側部に沿って形成される4つの電極と、
絶縁性を有する帯状の可動シート体と、
前記可動シート体の一表面に形成され、前記第1透明導電膜と接触することにより、前記第1透明導電膜との接触位置の電圧を検出するための第2透明導電膜と、
送出しローラおよび巻取りローラを有するシート体移動手段であって、
前記送出しローラと前記巻取りローラとにより前記可動シート体の一部を前記絶縁性基板の上方に張架し、
送出しローラおよび巻取りローラを回転させて可動シート体を移動させるシート体移動手段とを含むことを特徴とするタッチパネル装置である。
【0015】
また本発明は、前記シート体移動手段は、送出しローラおよび巻取りローラのうち少なくとも一方の回転を規制するロック手段を有することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記シート体移動手段は、送出しローラおよび巻取りローラのうち少なくとも一方に回転トルクを付与するためのつまみ部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可動シート体は帯状に形成され、一部が送出しローラに巻回され、送出しローラと巻取りローラとによって、移動方向に移動可能に設けられる。これによって、送出しローラおよび巻取りローラを、それぞれ送出し方向および巻取り方向に回転させて、絶縁性基板上の可動シート体の一部を移動方向に移動させることができる。
【0018】
したがって、絶縁性基板上の可動シート体を移動させることにより、絶縁性基板上の可動シート体のユーザに臨む表面部の損傷を、移動方向下流側へと移動させて解消することができるので、従来技術のように、可動シート体上に保護シートを設けることによる、タッチパネル装置の視認性の低下および検知精度の低下を生じさせることはない。
【0019】
また送出しローラ30および巻取りローラを、それぞれ送出し方向および巻取り方向に回転させて、絶縁性基板上の可動シート体を移動方向に移動することができるので、絶縁性基板上の可動シート体のユーザに臨む表面部の損傷を移動方向下流側へ移動させて、絶縁性基板上に可動シート体の新たな一部を配置することができ、絶縁性基板上の可動シート体の不良を容易かつ確実に解消することができる。
【0020】
また本発明によれば、シート体移動手段は、ロック手段を有する。ロック手段は、送出しローラおよび巻取りローラの回転を規制する。これによって、送出しローラおよび巻取りローラが不所望に回転することを防ぐことができる。
【0021】
また本発明によれば、シート体移動手段には、送出しローラおよび巻取りローラのうち少なくとも一方に回転トルクを付与するためのつまみ部が形成される。これによって、送出しローラおよび巻取りローラに容易に回転トルクを付与することができるので、可動シート体を容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタッチパネル装置1を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るタッチパネル装置1を示す平面図である。
【図3】図2の切断面線III−IIIにおいてタッチパネル装置1を見たときを示す拡大断面図である。
【図4】図2の切断面線IV−IVにおいてタッチパネル装置1を見たときを示す拡大断面図である。
【図5】図2の切断面線V−Vにおいてタッチパネル装置1を見たときの断面図である。
【図6】ロック手段40,41を示す図であり、図6(a)は、送出し側ロック手段40を示し、図6(b)は、巻取り側ロック手段41を示す。
【図7】タッチパネル装置1の電気的構成を示す模式図である。
【図8】タッチパネル装置1の位置検出メカニズムを説明する図であり、図8(a)は、タッチパネル装置1がユーザに押下された状態を示し、図8(b)は、X座標測定時の回路状態を示し、図8(c)は、Y座標測定時の回路状態を示す。
【図9】可動シート体6の移動を説明するための図である。図9(a)は、移動前の可動シート体6を示し、図9(b)は、移動後の可動シート体6を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るタッチパネル装置100を模式的に示す斜視図である。
【図11】タッチパネル装置100の電極プレート75部分を示す拡大断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るタッチパネル装置200を模式的に示す斜視図である。
【図13】タッチパネル装置200の軸部81を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係るタッチパネル装置1を模式的に示す斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係るタッチパネル装置1を示す平面図であり、図3は、図2の切断面線III−IIIにおいてタッチパネル装置1を見たときを示す拡大断面図であり、図4は、図2の切断面線IV−IVにおいてタッチパネル装置1を見たときを示す拡大断面図である。図1、図3および図4においては、理解を容易にするためハウジング3を省略して示す。また図3および図4は、理解を容易にするため厚み方向に拡大して示されている。
【0024】
タッチパネル装置1は、ハウジング3と、絶縁性基板4と、4つの電極5a,5b,5c,5dと、可動シート体6と、シート体移動手段7とを含んで構成される。絶縁性基板4は、矩形平板状に形成され、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラス基板によって実現される。絶縁性基板4の一表面部には、第1透明導電膜10が形成される。
【0025】
第1透明導電膜10は、ITO(Indium Tin Oxide)膜によって矩形状に形成され、膜厚は15nm〜45nm、抵抗値は400Ω〜1200Ωにそれぞれ設定される。
【0026】
図2に示すように、絶縁性基板4の第1透明導電膜10が形成される表面部には、第1透明導電膜10に接続され、第1透明導電膜10に電圧を印加し、第1透明導電膜10に電圧分布を生じさせるための4つの電極5a〜5dが設けられる。電極5a〜5dは、第1透明導電膜10の互いに平行に対を成す2組の側部のうち、一方の組を成すX軸用電極5a,5bと、他方の組を成すY軸用電極5c,5dとによって構成される。各電極5a〜5dは、絶縁性基板4の各側部に沿って延びて形成される。
【0027】
以下の説明においては、X軸用電極5a,5bが延びる方向(図2における左右方向)を「X方向」と称し、Y軸用電極5c,5dが延びる方向(図2において上下方向)を「Y方向」と称する。また、X方向およびY方向に垂直な方向(図2における紙面に垂直な方向)をZ方向と称する。
【0028】
各電極5a〜5dは、ペースト状の銀、銅、または銀およびカーボンの混合物などをスクリーン印刷することによって形成することができる。電極5a〜5dの材料は、前述のものに限られるものではなく、体積抵抗を一定に保ち、安定な材料であれば、他の材料を用いてもよい。
【0029】
シート体移動手段7は、可動シート体6の絶縁性基板4上に配置される部分よりも予め定める移動方向上流側の部分が巻回される送出しローラ30と、可動シート体6の絶縁性基板4上に配置される部分よりも前記移動方向下流側の部分を巻き取る巻取りローラ31とを含んで構成され、送出しローラ30および巻取りローラ31によって、可動シート体6を絶縁性基板4上で張架し、可動シート体6を水平方向に移動可能に支持する。
【0030】
図3に示すように、第1透明導電膜10の一表面部には、スペーサである突出部11が所定の間隔を空けて複数形成される。各突出部11は、透光性および電気絶縁性を有する合成樹脂によって形成される。このようにして、絶縁性基板4に、X−Y平面座標を成す配線パターンが構築される。
【0031】
また図2に示すように、第1透明導電膜10の各X軸用電極5a,5bよりも周縁部側には、一対のガスケット12がそれぞれ設けられる。ガスケット12は、X軸用電極5a,5bに沿って延びて設けられる。また図4に示すように、ガスケット12の絶縁性基板4に臨む表面部には、可動シート体6側の電極25が設けられる。本実施形態では、電極25は、銀ペーストを絶縁性基板4の一表面に、たとえばスクリーン印刷して電極パターンを形成し、その電極パターンを光照射して硬化させることによって形成されてもよい。
【0032】
可動シート体6は、たとえばポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルサルフォンなどの合成樹脂フィルム、あるいはその積層体によって形成される。可動シート体6は、絶縁性および透光性を有し、帯状に形成される。可動シート体6は、一部が絶縁性基板4上に設けられ、残余の部分は、後述する送出しローラ30および巻取りローラ31に巻回される。
【0033】
可動シート体6の絶縁性基板4に臨む表面部には、第2透明導電膜20が形成される。第2透明導電膜20は、前記第1透明導電膜10と同様に形成され、その膜厚は15nm〜45nm、抵抗値は400Ω〜1200Ωにそれぞれ設定される。可動シート体6は、第2透明導電膜20が第1透明導電膜10と接触することにより、絶縁性基板4が構成するX−Y平面座標回路の電圧を検出する機能を有する。すなわち、可動シート体6は検出回路を構成する。
【0034】
図5は、図2の切断面線V−Vにおいてタッチパネル装置1を見たときの断面図である。
【0035】
送出しローラ30は、断面円柱状の軸部33と、軸部33を支持する一対の支持部34と、送出し側ロック手段40とを有する。送出しローラ30の軸部33は、可動シート体6の長手方向一端部を係止する。また送出しローラ30の軸部33には、可動シート体6の一部が巻回される。送出しローラ30は、軸部33の軸線まわりに、前記可動シート体6の巻回方向である送出し方向C1に回転されることによって、軸部33に巻回される前記長手方向一端部側の一部の可動シート体6を、絶縁性基板4上で移動方向(本実施形態では、X方向)に送り出す。
【0036】
支持部34は、円筒状の軸受け部35と押上げ部36とを有する。軸受け部35には、軸部33が挿通される軸孔が形成される。各軸受け部35は、軸部33が軸孔に挿通されることによって、軸部33の両端部をその軸線まわりに回転自在にそれぞれ支持する。
【0037】
押上げ部36は、各軸受け部35の下方に設けられる。圧縮コイルばねなどの弾性部材によって実現される。押上げ部36は、軸受け部35を下方から上方へ、言い換えればZ方向一方Z1からZ方向他方Z2へ弾発的に押圧する。前記ハウジング3の裏面には、一対の帯状のスペーサ50がX方向と平行に設けられる。各スペーサ50は、たとえばポリテトラフルオロエチレンなどの滑り性の良好な合成樹脂から成る。押上げ部36によって、軸受け部35が弾発的に押圧されるので、送出しローラ30の軸部33に巻回される可動シート体6の巻回部における張架開始点近傍の部位、すなわち可動シート体6のスペーサ50に対向する部分は、常にスペーサ50に当接する。
【0038】
図6は、ロック手段40,41を示す図である。図6(a)は、送出し側ロック手段40を示し、図6(b)は、巻取り側ロック手段41を示す。
【0039】
図2をも参照して、前記送出し側ロック手段40は、軸部33の軸線方向一端部に設けられ、支持部34よりも軸線方向中央部寄りに設けられる。送出し側ロック手段40は、円板状の本体部42と、本体部42の外表面部から半径方向外方に放射状に突出する複数の係合部43とを有する。本体部42は、軸部33が挿通する挿通孔44を有し、軸部33が挿通孔44に挿通されることによって、軸部33に固定される。
【0040】
係合部43は周方向に等しい間隔をあけて形成される。またハウジング3の送出し側ロック手段40に対向する裏面部には、前記係合部43と係合する2つの突出部51が形成される。突出部51は、ハウジング3の裏面部からZ方向一方Z1に突出して形成される。
【0041】
係合部43は、断面が略扇形に形成され、円弧面45が移動方向、すなわち回転方向下流側に臨んで向くように形成される。これに対して突出部51は、断面が略扇形に形成され、円弧面52が移動方向とは反対の方向すなわち、回転方向上流側に臨んで形成される。突出部51は、ゴムなどの弾性部材によって形成され、弾性変形可能に設けられる。突出部51は、円弧面52において係合部43の送出し方向C1への移動を阻止するが、送出しローラ30の送出し方向C1への回転トルクが所定の大きさを超えると、弾性変形して係合部43の送出し方向C1への移動を許容する。
【0042】
図1をも参照して、巻取りローラ31は、断面円柱状の軸部63と、軸部63を支持する一対の支持部64(図示しない)と、つまみ部65と、巻取り側ロック手段41(図示しない)とを有する。軸部63および支持部64は、送出しローラ30と同一の構成であるので説明は省略する。
【0043】
巻取りローラ31の軸部63には、可動シート体6の長手方向他端部が係止される。巻取りローラ31は、巻取り方向C2に回転されることによって、軸部63に可動シート体6の長手方向他端部側の一部を巻回させて巻き取ることができる。
【0044】
つまみ部65は、軸部63の軸線方向一端部に連なって形成される。つまみ部65を巻取り方向C2に回転させることによって、巻取りローラ31の軸部63は巻取り方向C2に回転する。
【0045】
巻取り側ロック手段41は、軸部63の軸線方向一端部側であって、つまみ部65よりも中央部よりの位置に設けられる。図6(b)に示すように、巻取り側ロック手段41は、送出し側ロック手段40と同一の構成であるので説明は省略する。ハウジング3の巻取りローラ31に対向する表面部には、前述した突出部51と同一の構成の突出部51が形成される。
【0046】
図6(a)および図6(b)に示すように、ロック状態において、送出し側ロック手段40は、係合部43の円弧面45と突出部51の円弧面52とが当接し、巻取り側ロック手段41は、係合部43の平坦部46と突出部51の平坦部53が当接する。各ロック手段40,41は、このようにして可動シート体6の移動方向への移動を規制する。
【0047】
このような構成を採用することによって、送出しローラ30から巻取りローラ31へ、送出しローラ30に巻回される可動シート体6の一部が移動して、送出しローラ30に巻回される可動シート体6の巻回量が減少し、絶縁性基板4上にあった可動シート体6の一部が移動方向下流側に移動して、巻取りローラ31に巻回される可動シート体6の巻回量が増加しても、送出しローラ30および巻取りローラ31は、可動シート体6のZ方向における位置を変化させずに、可動シート体6を係止することができる。これによって、可動シート体6を、絶縁性基板4と平行に、移動方向へ移動させることができる。
【0048】
図7は、タッチパネル装置1の電気的構成を示す模式図であり、図8は、タッチパネル装置1の位置検出メカニズムを説明する図である。図8(a)は、タッチパネル装置1がユーザに押下された状態を示し、図8(b)は、X座標測定時の回路状態を示し、図8(c)は、Y座標測定時の回路状態を示す。
【0049】
タッチパネル装置1は、制御部70と、図示しない電源部とをさらに含む。制御部70は、信号処理部71と入出力部72とを含んで構成される。信号処理部71は、電源部に対して、絶縁性基板4側の電極5a〜5dへの電圧の供給を指示する供給信号を送信するとともに、可動シート体6側の電極25が検出した電圧に関するアナログ信号をデジタル信号に変換し、入出力部72へ送信する。
【0050】
入出力部72は、信号処理部71から送信された前記デジタル信号をPC(Personal
Computer)に出力する。PCは、入出力部72から送信されたデジタル信号に基いて、予め定められる処理を実行する。
【0051】
図8(b)に示すように、X座標測定時、タッチパネル装置1は、絶縁性基板4上に設けられた4つの電極5a〜5dの内、X方向に延びる電極5aとY方向に延びる電極5dとをVccとし、X方向に延びる電極5bとY方向に延びる電極5cをグランドとして電源部から電圧を供給する。この状態で、図8(a)に示すように、ユーザがタッチパネル装置1に入力(押下)を行うと、絶縁性基板4上(X−Y平面座標回路)の第1透明導電膜10と可動シート体6(検出回路)の第2透明導電膜20とが接触し、入力された点(xl)のX平面座標回路の電圧が可動シート体6側の電極25で検出される(Ain)。
【0052】
この電圧値は、Vcc側の電極5d(図7においてAで示す点)では高くなり、Ain=Vccとなる。またグランド側の電極5c(図7においてEで示す点)では、Ain=0Vとなる。タッチパネル装置1は、検出されたAinの電圧値からA/D変換を行い、X座標データを算出する。
【0053】
同様にして、Y座標測定時、タッチパネル装置1は、X方向に延びる電極5bとY方向に延びる電極5cとをVccとし、X方向に延びる電極5aとY方向に延びる電極5dとをグランドとして電源部から電圧を供給する。そして入力された点(x1)のY平面座標回路の電圧を電極25で検出し、検出されたAinの電圧値からA/D変換を行い、Y座標データを算出する。タッチパネル装置1は、前述した処理を交互に繰り返すことによって、ユーザが入力した点の座標値を決定する。
【0054】
図9は、可動シート体6の移動を説明するための図である。図9(a)は、移動前の可動シート体6を示し、図9(b)は、移動後の可動シート体6を示す。
【0055】
図9(a)に示すように、絶縁性基板4上の可動シート体6の外表面部に損傷部分80が存在する場合を想定する。可動シート体6の外表面部に損傷部分80が存在し、タッチパネル装置1の視認性が低下すると、巻取りローラ31のつまみ部65を巻取り方向C2に回転させ、巻取りローラ31を巻取り方向C2に回転させて、可動シート体6の損傷部分を含む部分を巻き取る。
【0056】
このとき、送出しローラ30には、可動シート体6が巻回されているので、巻取りローラ31の回転に伴って、送出しローラ30が送出し方向C1に回転し、巻回している可動シート体6の新たな部分を絶縁性基板4上へ送出す。これを、損傷部分80が巻取りローラ31に巻き取られるまで行うと、図9(b)に示すように、可動シート体6の損傷部分80が絶縁性基板4上から移動方向下流側へ移動して巻取りローラ31に巻回され、絶縁性基板4上におけるタッチパネル装置1の視認性の低下は解消される。
【0057】
本実施形態によれば、可動シート体6は帯状に形成され、一部が送出しローラ30に巻回され、送出しローラ30と巻取りローラ31とによって絶縁性基板4上で張架され、移動方向に移動可能に設けられる。これによって、送出しローラ30および巻取りローラ31を、それぞれ送出し方向C1および巻取り方向C2に回転させて、絶縁性基板4上の可動シート体6の一部を移動方向に移動させることができる。
【0058】
したがって、絶縁性基板4上の可動シート体6を移動方向に移動させることにより、絶縁性基板4上の可動シート体6のユーザに臨む表面部の損傷を、移動方向下流側へと移動させて解消することができるので、従来技術のように、可動シート体6上に保護シートを設けることによる、タッチパネル装置1の視認性の低下および検知精度の低下を生じさせることはない。
【0059】
また送出しローラ30および巻取りローラ31を、それぞれ送出し方向C1および巻取り方向C2に回転させて、絶縁性基板4上の可動シート体6を移動方向に移動することができるので、絶縁性基板4上の可動シート体6のユーザに臨む表面部の損傷を、移動方向下流側へ移動させて絶縁性基板4上に可動シート体6の新たな一部を配置することができ、絶縁性基板4上の可動シート体6の不良を容易かつ確実に解消することができる。
【0060】
また本実施形態によれば、シート体移動手段7は、ロック手段40,41を有する。ロック手段40,41は、送出しローラ30および巻取りローラ31の回転を規制する。これによって、送出しローラ30および巻取りローラ31が不所望に回転することを防ぐことができる。
【0061】
また本実施形態によれば、シート体移動手段7には、巻取りローラ31に回転トルクを付与するためのつまみ部65が形成される。これによって、送出しローラ30および巻取りローラ31に容易に回転トルクを付与することができるので、可動シート体6を容易に移動させることができる。
【0062】
図10は、本発明の第2の実施形態に係るタッチパネル装置100を模式的に示す斜視図であり、図11は、タッチパネル装置100の電極プレート75部分を示す拡大断面図である。タッチパネル装置100は、可動シート体6側の電極25の構成が異なる以外は、第1の実施形態と同一であるので、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0063】
タッチパネル装置100では、絶縁性基板4上にガスケット12を設けることなく、送出しローラ30と絶縁性基板4との間に、ガスケット12が設けられる。ガスケット12は、可動シート体6の幅方向に平行に延びるように配置され、第2透明導電膜20と接続される。ガスケットの長手方向一端部には、電極として電極プレート75が設けられる。図11に示すように、電極プレート75は、ガスケット12の第2透明導電膜20に臨む面とは反対側の表面部に取り付けられる。
【0064】
図12は、本発明の第3の実施形態に係るタッチパネル装置200を模式的に示す斜視図であり、図13は、タッチパネル装置200の軸部81を拡大して示す拡大断面図である。タッチパネル装置200は、可動シート体6側の電極25の構成が異なる以外は、第1の実施形態と同一であるので、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0065】
タッチパネル装置200では、送出しローラ30の軸部81を軸電極とし、可動シート体6側の電極とする。図12に示すように、本実施形態では、軸部81の軸線方向一端部に、電極プレート82を設け、軸部81と電極プレート82の間にブラシ83を設ける。
【0066】
図13に示すように、軸部81には、半径方向内方に切りかかれたスリット84が形成され、軸部は、このスリット84によって可動シート体6の長手方向一端部を係止する。軸部81は、銅、鋼などの金属部材によって構成する。
【0067】
本実施形態では、軸部81が可動シート体6側の電極を兼ねるので、前述したタッチパネル装置1およびタッチパネル装置100のように、可動シート体6と絶縁性基板4との間にガスケット12を設ける必要がない。これによって、タッチパネル装置200の厚み方向寸法を小さくすることができる。
【0068】
これに対して、タッチパネル装置1およびタッチパネル装置100は、可動シート体6側の電極25からユーザの入力点までの距離を短くすることができるので、抵抗値を低く抑えることができる、という有利な効果を奏する。
【符号の説明】
【0069】
1 タッチパネル装置
3 ハウジング
4 絶縁性基板
5a,5b,5c,5d 電極
6 可動シート体
7 シート体移動手段
10 第1透明導電膜
11 突出部
12 ガスケット
20 第2透明導電膜
25 電極
30 送出しローラ
31 巻取りローラ
33 軸部
34 支持部
35 軸受け部
36 押上げ部
40 送出し側ロック手段
41 巻取り側ロック手段
42 本体部
43 係合部
44 挿通孔
45 円弧面
46 平坦部
50 スペーサ
51 突出部
52 円弧面
53 平坦部
63 軸部
64 支持部
65 つまみ部
70 制御部
71 信号処理部
72 入出力部
75 電極プレート
80 損傷部分
81 軸部
82 電極プレート
83 ブラシ
84 スリット
100 タッチパネル装置
200 タッチパネル装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の一表面に形成される矩形状の第1透明導電膜と、
前記第1透明導電膜に対して電圧を印加するために、前記第1透明導電膜に接続され、前記絶縁性基板の一表面側に、前記第1透明導電膜の各側部に沿って形成される4つの電極と、
絶縁性を有する帯状の可動シート体と、
前記可動シート体の一表面に形成され、前記第1透明導電膜と接触することにより、前記第1透明導電膜との接触位置の電圧を検出するための第2透明導電膜と、
送出しローラおよび巻取りローラを有するシート体移動手段であって、
前記送出しローラと前記巻取りローラとにより前記可動シート体の一部を前記絶縁性基板の上方に張架し、
送出しローラおよび巻取りローラを回転させて可動シート体を移動させるシート体移動手段とを含むことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記シート体移動手段は、送出しローラおよび巻取りローラのうち少なくとも一方の回転を規制するロック手段を有することを特徴とする請求項1記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記シート体移動手段は、送出しローラおよび巻取りローラのうち少なくとも一方に回転トルクを付与するためのつまみ部が形成されることを特徴とする請求項1または2記載のタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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