説明

タッチ式センサ

【課題】電極の接触感度を高く保持したまま、照明構造を簡単に構成することができるとともに、製造コストを低く抑えることができるタッチ式センサを提供すること。
【解決手段】複数の電極20〜22が接触されたことを検知して電極20〜22毎に検知信号を出力する検知手段と、前記検知信号に応じてどの電極20〜22が接触されているか接触されていないかを判定する判定手段を備えたタッチ式センサ1において、前記検知手段を構成する素子を回路基板19上に配置するとともに、前記電極20〜22に前記回路基板19の一部を露出させる開口部20a〜22aを設け、前記回路基板19上に配置されたLED(発光素子)13〜15を前記電極20〜22の前記開口部20a〜22a内に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の静電容量の変化によって人が電極に接触したことを検出するタッチ式センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のエアコンやオーディオ等の各種機器を静電容量式のタッチ式センサによって制御することが行われている。これによれば、操作者の指の移動軌跡をタッチ式センサによって読み取り、その移動軌跡がどの操作パターンにマッチングするかを判定し、操作パターンにマッチングする操作内容に基づいて各種機器を制御することが行われる。
【0003】
ところで、特許文献2には、操作表示に対応する機能の制御をタッチ式センサの検出信号に基づいて変更するようにした車室内スイッチ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−120487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の静電容量式のタッチ式センサにおいては、電極用のフィルムと回路基板との接続が必要であったため、部品点数が多く、又、各部品の製造工程も異なるために製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
又、電極を前面に配置する構成を採用すると、照明用の光源を背後に配置することとなるため、十分な照明構造が必要な場合には構造が複雑化するという問題もあった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、電極の接触感度を高く保持したまま、照明構造を簡単に構成することができるとともに、製造コストを低く抑えることができるタッチ式センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
複数の電極が接触されたことを検知して電極毎に検知信号を出力する検知手段と、
前記検知信号に応じてどの電極が接触されているか接触されていないかを判定する判定手段を備えたタッチ式センサにおいて、
前記検知手段を構成する素子を回路基板上に配置するとともに、前記電極に前記回路基板の一部を露出させる開口部を設け、前記回路基板上に配置された発光素子を前記電極の前記開口部内に配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記素子を接続する回路パターンを前記回路基板に形成するとともに、前記電極を回路パターンとして形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記回路基板の前記電極が配置された面とは反対の面に前記回路パターンを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、回路基板上に電極を配置したため、該電極と回路との接続が容易となり、回路基板製作と同じ工程で電極を製造することができる。又、電極に回路基板の一部を露出させる開口部を設け、回路基板上に配置された発光素子を電極の前記開口部内に配置したため、回路基板上の電極と同じ面に発光素子を配置することができ、電極の接触感度を高く保持したまま、照明構造を簡単に構成することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、素子を接続する回路パターンを回路基板に形成するとともに、電極を回路パターンとして形成したため、回路パターンと同じ工程で電極を製造することができ、電極の材質も回路パターンの材質と同じにすることができ、回路パターンと電極との接続が容易化して製造コストを大幅に削減することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、電極の接触感度の低下の要因となる回路パターンを回路基板の電極が配置された面とは反対の面に形成したため、電極に高い接触感度を確保することができるとともに、電極の感度調整を容易に行うことができる。又、電極を配置するスペースを十分確保することができるため、複数の電極を回路基板上に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るタッチ式センサの回路構成図である。
【図2】(a),(b)は本発明に係るタッチ式センサの電極への非接触時と接触時の出力変化を示す図である。
【図3】本発明に係るタッチ式センサの分解斜視図である。
【図4】本発明に係るタッチ式センサの部分側断面図である。
【図5】本発明に係るタッチ式センサのケースと操作パネルを取り外した状態の部分平面図である。
【図6】本発明に係るタッチ式センサの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係るタッチ式センサの回路構成図であり、本発明に係るタッチ式センサ1は、互いに異なる静電容量を有する4つの電極A,B,C,Dと、周期的な方形波から成る作動信号を出力してこれを抵抗R3,R5,R7,R9を介して電極A,B,C,Dにそれぞれ入力する発振器としての機能を有するマイコン(マイクロコンピュータ)2と、直流電源電圧Vccを分割するように直列に接続された抵抗R1,R2と、各電極A,B,C,Dの出力電圧と抵抗R1とR2との間のa点の電位(基準電圧)Vaとを比較して電極の出力電圧の方が基準電圧Vaよりもが高ければOFFして所定の電圧を出力し、電極の出力電圧の方が基準電圧Vaよりも低ければONして所定の電圧を出力しないコンパレータ3,4,5,6と、これらのコンパレータ3〜6の出力をそれぞれ積分する積分回路7,8,9,10等を備えている。
【0017】
上記マイコン2は制御部を構成するものであって、このマイコン2は、電極A,B,C,Dが接触されたことを検知して電極A,B,C,D毎に異なる検知信号を出力する。そして、このマイコン2には、前記検知信号に応じてどの電極A〜Dが接触されているか接触されていないかを判定する判定手段2aと、該判定手段2aによって決定された被制御装置(オーディオ、エアコン、ナビゲーションシステム等)の制御モードが記憶された記憶部2bが内蔵されている。尚、マイコン2には、電源部11から抵抗R12,R13,R14,R15を経て供給される電流の供給を受けて発光するLED(発光ダイオード)13,14,15,16が接続されている。又、各コンパレータ3〜6の出力部は、抵抗R4,R6,,R8,R10を介してマイコン2と抵抗R3,R5,R7,R9の間の接続点b,c,d,eとそれぞれ接続されている。即ち、各コンパレータ3〜6の出力は、マイコン2と接続され、マイコン2の方形波出力をプルアップ電源としている。
【0018】
次に、本発明に係るタッチ式センサ1の検出原理を図2(a),(b)に基づいて以下に説明する。
【0019】
図2(a),(b)はは本発明に係るタッチ式センサ1の電極A,B,C,Dへの非接触時と接触時の出力変化を示す図であり、電極A〜Dは、その静電容量によって作動電圧を歪ませる。このため、各電極A〜Dからの出力信号は、マイコン2から入力される方形波を歪ませた鋸刃状に近い波形(図2には完全な三角波として図示)の電圧信号となる。
【0020】
コンパレータ3〜6は、電極A〜Dの出力(出力信号)がa点の電圧(基準電圧)Vaよりも高いときだけ電圧を出力する。積分回路7〜10は、コンパレータ3〜6の出力を積分するため、その出力は時間の経過と共に略直線的に上昇し、その勾配はコンパレータ3〜6の出力のデューティ比(ONしている時間の割合)に比例する。
【0021】
而して、マイコン2は、積分回路7〜10が積分を開始してから1msec後の積分回路7〜10の出力電圧をデジタル変換して検出値Vmとして記憶部2bに記憶する。従って、コンパレータ3〜6と積分回路7〜10及びマイコン2は、電極A〜Dの出力信号とa点の基準電圧Vaとの差に応じた検出値Vmを生成する検出回路として機能する。
【0022】
電極A〜Dに操作者の指が接触していないときには、図2(a)に示すように電極A〜Dの出力信号の振幅が比較的大きいため、電極A〜Dの出力信号(出力電圧)が基準電圧Va以上となる時間が比較的長くなる。このため、コンパレータ3〜6の出力電圧のデューティ比が比較的大きく、積分回路7〜10の出力電圧の上昇勾配が比較的大きく、1msecの後の電圧が比較的高くなるため、マイコン2が取得する検出値Vmが比較的大きくなる。
【0023】
すると、マイコン2の判定手段2aは、検出値Vmをマイコン2内の記憶部2bに記憶されている閾値Soと比較し、検出値Vmが閾値So以上となっていれば電極A〜Dに操作者の指が接触していないものと判定し、OFF信号を外部出力する。
【0024】
他方、電極A〜Dに操作者の指が接触すると、電極A〜Dの静電容量が増加するため、電極A〜Dに操作者の指が接触していない図2(a)に示す場合と比べて、図2(b)に示すように電極A〜Dの出力信号の振幅が小さくなる。このため、電極A〜Dの出力信号が基準電圧Va以上となる時間が短くなり、コンパレータ3〜6の出力電圧のデューティ比が低下し、積分回路7〜10の出力電圧の上昇勾配が小さくなり、1msec後の電圧が低くなるため、マイコン2が取得する検知値Vmが小さくなる。
【0025】
すると、マイコン2の判定手段2aは、検出値Vmをマイコン2内の記憶部2bに記憶されている閾値Soと比較し、検出値Vmが閾値So以下となったときに電極A〜Dに操作者の指が接触子したものと判定し、ON信号を外部出力する。
【0026】
次に、本発明に係るタッチ式センサ1の具体的な構成を図3〜図5に基づいて以下に説明する。
【0027】
図3はタッチ式センサの分解斜視図、図4は同タッチ式センサの部分側断面図、図5は同タッチ式センサのケースと操作パネルを取り外した状態の部分平面図であり、本実施の形態に係るタッチ式センサ1は、車両のインストルメントパネルに設置されたヒータコントロール操作装置として使用されるものであって、3つの空間に仕切られた矩形枠状のケース17の上下面を矩形プレート状の操作パネル18と回路基板19で覆って構成されている。
【0028】
上記操作パネル18の表面には、エアコンスイッチ、リヤデフォッガスイッチ、デフォッガスイッチ(フロント)をそれぞれ示す「A/C」、「R/DEF」及び「DEF」が表示されている。又、回路基板19上には検知手段を構成する不図示の素子と3つの回路パターンとして形成された電極20,21,22が配置されている。そして、図5に示すように、各電極20〜22(図5には電極20,21のみ図示)には、回路基板19の一部を露出させる矩形切欠き状の開口部20a,21a,22aがそれぞれ形成されており、各開口部20a〜22a内にはLED13,14,15が配置されている。尚、本実施の形態では、電極20,21,22を回路パターンとして形成したが、回路基板19上に設置される薄いフィルム状のものとしても良い。
【0029】
又、回路基板19の電極20〜22が配置された面(上面)とは反対の面(下面)には、図4に示すように回路パターン23が設けられている。この回路パターン23には、回路基板19上に配置された不図示の素子が電気的に接続されるとともに、電極20〜22が回路パターン23の一部として構成されている。
【0030】
次に、本発明に係るタッチ式センサ1の動作の流れを図6に基づいて以下に説明する。
【0031】
図6はタッチ式センサの動作の流れを示すフローチャートであり、タッチ式センサ1の動作がスタートすると(ステップS1)、初期化が実行され(ステップS2)、タイマーが開始される(ステップS3)。そして、マイコン2から1msec毎に出力信号を発振され(ステップS4),マイコン2にて測定電圧が取得される(ステップS5)。
【0032】
上述のようにマイコン2にて測定電圧が取得されると、周波数変更の必要性があるか否かが判定される(ステップS6)。この判定において測定電圧が所定の周波数変更閾値(上限値)未満であれば(ステップS6での判定結果がNoであれば)、ON(接触)判定がなされる(ステップS7)。このON判定においては、測定電圧がON判定基準電圧よりも低い場合にはONと判定し(ステップS7での判定結果がYes)、フィルタリング処理がなされる(ステップS8)。このフィルタリング処理においては、データバッファから過去3回分の測定電圧が取得され、この測定電圧とON判定基準電圧とが比較される。尚、ステップS6での判定において、測定電圧が周波数変更閾値(上限値)以上であれば周波数変更の必要があると判定された場合(ステップS6での判定結果がYesである場合)には、発振器の周波数を上げて測定電圧を下げる周波数変更がなされ(ステップS16)、データバッファが初期化される(ステップS12)。又、ステップS7での判定において、ONと判定されない場合(ステップS7での判定結果がNoである場合)には、測定電圧がデータバッファに保存され(ステップS15)、マイコン2が休止される(ステップS23)。
【0033】
而して、ステップS8でのフィルタリング処理において、データバッファから過去3回分の測定電圧が取得され、この測定電圧とON判定基準電圧とが比較されてON確定か否かが判定される(ステップS9)。この判定においては、過去3回の測定電圧がON判定基準電圧よりも低い場合にはON確定と判断され(ステップS9での判定結果がYesとされ)、ON出力がなされてON(接触)された電極(A〜D)に対応するLED(13〜16)が起動されて発光するとともに、通信がなされる(ステップS10)。そして、その後に周波数変更処理がなされ(ステップS11)、データバッファが初期化され(ステップS12)、マイコン2が休止される(ステップS13)。その後はタイマーによって計測される時間が10msecを経過したか否かが判定され(ステップS14)、10msecが経過すると(ステップS14での判定結果がYseであると)、以上の処理が繰り返される。即ち、以上説明した一連の処理が10msec毎に繰り返される。
【0034】
以上において、本発明に係るタッチ式センサ1においては、図3〜図5に示すように、回路基板19上に電極20〜22を配置したため、該電極20〜22と回路との接続が容易となり、回路基板19の製作と同じ工程で電極20〜22を製造することができる。そして、電極20〜22に回路基板19の一部を露出させる開口部20a〜22aを設け、回路基板19上に配置されたLED13〜15を電極20〜22の前記開口部20a〜22a内に配置したため、回路基板19上の電極20〜22と同じ面(上面)にLED13〜15を配置することができ、電極20〜22の接触感度を高く保持したまま、照明構造を簡単に構成することができる。
【0035】
又、本発明に係るタッチ式センサ1によれば、素子を接続する回路パターン23を回路基板19に形成するとともに、電極20〜22を回路パターン23として形成したため、回路パターン23と同じ工程で電極20〜22を製造することができ、電極20〜22の材質も回路パターン23の材質と同じにすることができ、回路パターン23と電極20〜22との接続が容易化して製造コストを大幅に削減することができる。
【0036】
更に、本発明に係るタッチ式センサ1によれば、電極20〜22の接触感度の低下の要因となる回路パターン23を回路基板19の電極20〜22が配置された面とは反対の面に形成したため、電極20〜22に高い接触感度を確保することができるとともに、電極20〜22の感度調整を容易に行うことができる。又、電極20〜22を配置するスペースを十分確保することができるため、複数の電極20〜22を回路基板19上に配置することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 タッチ式センサ
2 マイコン
2a マイコンの判定手段
2b マイコンの記憶部
3〜6 コンパレータ
7〜10 積分回路
11 電源部
13〜16 LED(発光素子)
17 ケース
18 操作パネル
19 回路基板
20〜22 電極
20a〜22a 電極の開口部
23 回路パターン
A〜D 電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が接触されたことを検知して電極毎に検知信号を出力する検知手段と、
前記検知信号に応じてどの電極が接触されているか接触されていないかを判定する判定手段を備えたタッチ式センサにおいて、
前記検知手段を構成する素子を回路基板上に配置するとともに、前記電極に前記回路基板の一部を露出させる開口部を設け、前記回路基板上に配置された発光素子を前記電極の前記開口部内に配置したことを特徴とするタッチ式センサ。
【請求項2】
前記素子を接続する回路パターンを前記回路基板に形成するとともに、前記電極を回路パターンとして形成したことを特徴とする請求項1記載のタッチ式センサ。
【請求項3】
前記回路基板の前記電極が配置された面とは反対の面に前記回路パターンを形成したことを特徴とする請求項2記載のタッチ式センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114906(P2013−114906A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260117(P2011−260117)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】