説明

タッチ式入力パネル装置

【課題】 複数視点からの視差を補正することができるタッチ式入力パネル装置を提供すること。
【解決手段】 タッチ式入力パネル装置を、表示装置5と、表示装置5の表示面に重ね合わされた入力検出装置2と、入力検出装置2の入力情報に基づいて利用者の視点位置を推定する視差位置推定装置3と、推定した視点位置に応じて表示装置5と視点位置との視差を補正する視差補正装置4とを含んだものから構成する。また、入力情報として圧力分布や形状変化を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチ式入力パネル装置に関し、例えば、パーソナルコンピュータ、複写機、ファクシミリ装置、ナビゲーション装置等のように様々な環境で用いられるタッチ式入力パネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、操作性の向上を目的として表示装置の表示面に透明なタッチ式入力パネルを重ね合わせたタッチ式入力パネル装置が広く用いられている。このようなタッチ式入力パネル装置にあっては、利用者に選択を行わせるために複数のアイコンや文字列等の選択項目を表示装置の表示面に表示し、透明パネルを通して目視される選択項目を利用者の指等で押下したときに、押下位置を検知することによって利用者の選択を取得している。
【0003】
このようなタッチ式入力パネル装置では、表示面とタッチ式入力パネルの距離が原因で、選択項目と押下位置の間に視差が生じることが知られている。このような不具合を解消するタッチ式入力パネル装置としては、特許文献1に示すようなものがあり、図7のように示される。
【0004】
図7において、タッチ式入力パネル装置は、タッチ式入力パネル51と表示装置52とによって構成されており、表示装置52の表示面に対するタッチ式入力パネル51の重ね合わせ位置に移動可能にしたり、表示装置52のコントラストを変化させることにより、傾斜角度の変化に伴って視角が変化したときに、視角変化による入力位置のずれを補正するように表示面上のタッチ式入力パネル51の重ね合わせ位置を移動させたり、表示面の傾斜角度変化に伴いコントラストを調整したときに傾斜角度の変化に伴う入力位置のずれを自動的に補正することにより、タッチ式入力パネル51を使用した位置入力における入力位置ずれによる誤入力を防止するようにしている。
【特許文献1】特開平7−210317号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すタッチ式入力パネルにあっては、補正できる視差は1方向のみに限定されており、タッチ式入力パネルに対する入力情報に基づいて利用者の視点を推定する手段がないので、利用者が複数存在するといった状況下にあっては、複数視点からの視差を補正することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、複数視点からの視差を補正することができるタッチ式入力パネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタッチ式入力パネル装置は、表示装置と、前記表示装置の表示面に重ね合わされたタッチ式入力パネルと、前記タッチ式入力パネルの入力情報に基づいて利用者の視点位置を推定する推定手段と、推定した視点位置に応じて前記表示装置と前記視点位置との視差を補正する視差補正手段とを備えたものから構成される。
【0008】
この構成により、タッチ式入力パネルの入力情報に基づいて利用者の視点を推定するようにしたので、複数の視点位置に応じて表示装置と視点位置との視差を補正することができる。
【0009】
また、本発明のタッチ式入力パネル装置は、前記入力情報は、タッチ式入力パネルを押下したときの圧力分布および形状の少なくとも一方の情報からなり、前記推定手段は、タッチ式入力パネル上の複数の視点位置に対応するデータと前記圧力分布および前記形状の少なくとも一方の入力情報との相関を計算し、相関の最も高い位置を視点位置として推定するものから構成される。
【0010】
この構成により、新たに視点位置を検出する装置を追加することなしに視点位置を推定することができ、低コストなタッチ式入力パネル装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明のタッチ式入力パネル装置は、前記表示装置および前記タッチ式入力パネルが装着される装置本体の角度を調整する角度調整手段と、前記角度調整手段によって調整される前記装置本体の角度を検出する角度検出手段とを備え、前記視差補正手段は、前記装置本体の取り付け角度に応じて視差を補正するものから構成される。
【0012】
この構成により、装置本体の取り付けの角度が変化した場合であっても、視差の補正精度が低下することを防止することができるとともに、装置本体の設置の自由度を確保することができる。
【0013】
また、本発明のタッチ式入力パネル装置は、視点位置調整手段を有し、前記視点位置調整手段は、前記タッチ式入力パネルの入力座標と表示装置のずれに基づいて視差を設定するとともに、前記推定手段により推定された視点位置に対応する視差を前記設定された視差で補正するものから構成される。
【0014】
この構成により、使用者の視点位置の誤差や個人差等を簡単に補正することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明は、複数視点からの視差を補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1、図2は本発明に係るタッチ式入力パネル装置の第1の実施の形態を示す図であり、パーソナルコンピュータ、複写機、ファクシミリ装置、ナビゲーション装置等のように様々な環境で用いられるものである。
【0018】
図1において、タッチ式入力パネル装置1は、入力検出装置2、視点位置推定装置(推定手段)3、視差補正装置(視差補正手段)4、表示装置5および制御部6を含んで構成される。
【0019】
入力検出装置2は、透明なタッチ式入力パネルから構成されており、この入力検出装置2は、ドットマトリクス状に配置された電極の各交点(座標)を操作者が押下すると、入力に対応する圧力を電圧に変換して出力するようになっている。
【0020】
視点位置推定装置3は、入力検出装置2から得られる情報を基に利用者の視点位置を推定するものであり、予め用意された複数の視点位置に対応するデータと入力検出装置2の出力情報との相関をそれぞれ計算して相関の最も高い視点位置を推定結果として出力するようになっている。
【0021】
視差補正装置4は、視点位置推定装置3が推定した視点位置から生じる視差を補正するようになっている。
【0022】
表示装置5は、使用者により各種操作を行うための文字例、テンキー、アイコン等の各種操作情報を表示する液晶表示パネル等から構成されており、この表示装置5の表示面に入力検出装置2が重ね合わされている。
【0023】
制御部6は、タッチ式入力パネル装置1の全体を制御するものであり、CPU、RAM、ROM等を備えている。
【0024】
次に、図2に基づいて視差の補正方法を説明する。
【0025】
図2(a)において、表示装置5に表示される任意の選択項目(例えば、任意のアイコン)21を選択するために、利用者が入力検出装置2に対して入力を行うと、この入力に対して、入力検出装置2が各座標上の入力に対応する圧力を電圧に変換して出力する。
【0026】
入力検出装置2の出力情報が図2(b)で表される形状であったとき、すなわち、入力検出装置2に対して右側から入力検査装置2を押下した場合には、その中心である入力位置22は利用者と入力検出装置2の角度から生じる視差であるため、選択項目から外れている。
【0027】
視点位置推定装置3は入力検出装置2の出力情報である形状の情報に基づいて、予め用意された複数の視点位置に対応するデータと入力検出装置2の出力情報との相関をそれぞれ計算し、相関の最も高い視点位置を推定結果として出力する。この出力信号を受けて視差補正装置4は視点位置推定装置3が推定した視点位置から生じる視差を補正する。
【0028】
具体的には、図2(a)において、視点位置23と視点位置24からの視差はそれぞれ異なっており、視差補正装置4は、予め用意されている各視点位置に対応した視差量25を、入力検出装置2から出力される形状情報の出力から推定される入力位置22に加算することによって視差を補正し、視差補正後の入力点26を装置の出力とする。
【0029】
このため、視差位置によって入力位置22によって押下されたときにその入力位置の下方に対応する表示装置5の選択項目が選択されることなく、視差補正後の入力点26の下方に位置する選択項目21が選択されることになる。
【0030】
このように本実施の形態では、表示装置5と、表示装置5の表示面に重ね合わされた入力検出装置2と、入力検出装置2の入力情報に基づいて利用者の視点位置を推定する視点位置推定装置3と、推定した視点位置に応じて表示装置5と視点位置との視差を補正する視差補正装置4とを設けたので、複数の視点位置に応じて表示装置5と視点位置23あるいは視点位置24との視差を補正することができる。
【0031】
なお、表示装置5は液晶表示パネル以外に、CRTあるいは利用者の入力を促す内容が描画された紙等のように入力検出装置2との視差を生じるものであれば同様に適用可能である。
【0032】
また、本実施の形態では、視点位置推定装置3が視点位置を推定する手段として、各視点位置に対応するデータと入力検出装置2の出力情報との相関を計算し、その比較を行う手法を採用しているが、各着座位置にクラスタリングされたデータを基に入力検出装置2の出力情報がどのクラスタに属するかを判定する等のように他のパターン認識の手法を用いても同様に実施可能である。
【0033】
なお、以上の説明では視差補正装置4の補正方法として、予め用意されている各視点位置に対応した視差量を入力位置に加算する方法を採用しているが、推定された視点位置との相対距離から視差量を計算する手法を用いても良く、あるいは、視点位置からの視差が場所によって異なることを考慮し、場所によって異なる補正量を用いても良い。
【0034】
また、入力検出装置2は入力情報として形状を検出して視点位置推定装置3に出力しているが、入力情報として圧力分布を検出して視点位置推定装置3に出力しても良い。
【0035】
図3、図4は本発明に係るタッチ式入力パネル装置の第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0036】
本実施の形態では、図3、図4(a)に示すようにタッチ式入力パネル装置1が装着される装置本体30の支持部30aに装置本体30の角度を調整する角度調整手段31を設けるとともに、角度調整手段31によって調整される装置本体30の角度を検出する角度検出装置(角度検出手段)32を設け、視差補正装置4が装置本体30の取り付け角度に応じて視差を補正するようにしたものである。
【0037】
なお、角度検出装置32は角度調整手段31の角度が可変されると、可変抵抗による電圧値の変化を検出することにより、装置本体30の角度が可変されたことを検出する。
【0038】
具体的には、図4(b)に示すように、装置本体30の設置角度が変化するとタッチ式入力パネル装置1に対する視差が変化する。視差補正装置4は、角度検出装置32からの角度検出情報に基づいて装置本体30の取り付け角度に応じて視差を補正する。
【0039】
本実施の形態では、装置本体30の支持部30aに角度検出装置32を設け、装置本体30の取り付け角度に応じて視差を補正するようにしたので、装置本体30の取り付けの角度が変化した場合であっても、視差の補正精度が低下することを防止することができるとともに、装置本体30の設置の自由度を確保することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、装置本体30の角度の変化の自由度を1としたが、自由度を2以上にしても良く、このようにしても同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では角度検出装置32を可変抵抗で実装する例を示したが、ジャイロなど他の角度検出装置を用いても良い。
【0041】
図5、図6は本発明に係るタッチ式入力パネル装置の第3の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施の形態では、図5に示すように、調整装置(視点位置調整手段)41を設けたものであり、この調整装置41は、入力検出装置2の入力座標と表示装置5のずれに基づいて設定された視差をフラッシュメモリに記憶するとともに、視点位置推定装置3により推定された視点位置に対応する視差をフラッシュメモリに記憶された視差で補正するようになっている。
【0043】
すなわち、図6で示すように、視点位置には使用者42、43の身体に応じて個人差があるとともに、同じ視点位置であっても入力検出装置2の出力結果には個人差が生じる。
【0044】
このような視点位置や入力検出装置2の出力結果の個人差を補正するために、調整装置41はランプを点灯させたり、音声出力等によって利用者に入力を促す。このとき、利用者が入力検出装置2を押下すると、調整装置41は入力検出装置2の入力座標と表示装置5のずれから利用者の正しい視差を計算してフラッシュメモリに記憶する。視差補正装置4は視点位置推定装置3の出力とともに、推定された視点位置に対応する視差を調整装置41から取得して視差の補正を行う。
【0045】
このように本実施の形態では、入力検出装置2の入力座標と表示装置のずれに基づいて視差を設定するとともに、視点位置推定装置3により推定された視点位置に対応する視差を前記設定された視差で補正するようにしたので、使用者の視点位置の誤差や個人差等を簡単に補正することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、調整された視差の保存場所としてフラッシュメモリを用いているが、これに限らず、揮発性メモリや磁気メディア等のように情報を一時的に保存するための装置であれば、どのような装置にでも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係るタッチ式入力パネル装置は、複数視点からの視差を補正することができるという効果を有し、パーソナルコンピュータ、複写機、ファクシミリ装置、ナビゲーション装置等のように様々な環境で用いられるタッチ式入力パネル装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるタッチ式入力パネル装置のブロック図
【図2】(a)は第1の実施の形態の動作説明図、(b)は入力検出装置の出力情報を示す図
【図3】本発明の第2の実施の形態におけるタッチ式入力パネル装置のブロック図
【図4】(a)は第2の実施の形態の装置本体および角度調整装置の概略構成図、(b)は装置角度と視差の関係を示す図
【図5】本発明の第3の実施の形態におけるタッチ式入力パネル装置のブロック図
【図6】第3の実施の形態における使用者とタッチ式入力パネル装置の個人差による位置関係を説明するための図
【図7】従来のタッチ式入力パネル装置の構成図
【符号の説明】
【0049】
1 タッチ式入力パネル装置
2 入力検出装置(タッチ式入力パネル)
3 視点位置推定装置(推定手段)
4 視差補正装置(視差補正手段)
5 表示装置
30 装置本体
31 角度調整装置(角度検出手段)
32 角度検出装置
41 調整装置(視点位置調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、前記表示装置の表示面に重ね合わされたタッチ式入力パネルと、前記タッチ式入力パネルの入力情報に基づいて利用者の視点位置を推定する推定手段と、推定した視点位置に応じて前記表示装置と前記視点位置との視差を補正する視差補正手段とを備えたことを特徴とするタッチ式入力パネル装置。
【請求項2】
前記入力情報は、タッチ式入力パネルを押下したときの圧力分布および形状の少なくとも一方の情報からなり、前記推定手段は、前記圧力分布および前記形状の少なくとも一方の入力情報に基づいて前記視点位置を推定することを特徴とする請求項1に記載のタッチ式入力パネル装置。
【請求項3】
前記表示装置および前記タッチ式入力パネルが装着される装置本体の角度を調整する角度調整手段と、前記角度調整手段によって調整される前記装置本体の角度を検出する角度検出手段とを備え、前記視差補正手段は、前記装置本体の取り付け角度に応じて視差を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチ式入力パネル装置。
【請求項4】
視点位置調整手段を有し、前記視点位置調整手段は、前記タッチ式入力パネルの入力座標と表示装置のずれに基づいて視差を設定するとともに、前記推定手段により推定された視点位置に対応する視差を前記設定された視差で補正することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のタッチ式入力パネル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate