説明

タッチ画面を備えた腕時計及びタッチ画面に時計を表示する方法

腕時計1は、デジタルマトリックス方式ディスプレイ4と、二次元シート状の接触感知ガラス3と、処理回路とを具備する。上記接触感知ガラス3は、複数の電極10,11,12を有しており、2つの異なる方向に沿った少なくとも1本の指の動きを検出する。上記処理回路は、上記複数の電極からの信号を解釈し、上記ディスプレイ4で複数のカード23,220〜225,210〜213をスクロールさせて、最初に表示されていたカード23を別のカードに持続的に置き換えるように構成される。スクロールの方向は、上記動きの方向に従う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計、特に、高い解像度の表示画面と触覚(haptic)表面とを備えた電子式腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタル表示の時計は、現在時刻などに対応する数字や記号を表示するために、選択的に制御されるいくつかの液晶セグメントを有する。表示可能な記号の数は、セグメントの配置による制限を受ける。
【0003】
また、マトリックス方式ディスプレイ、すなわち、マトリックス状に配置された画素からなる表示装置を備えた腕時計が知られている。このようなディスプレイは、セグメント方式ディスプレイに比べて融通が利き、任意の記号や画像を表示できる。特に、本発明は、そのようなマトリックス方式ディスプレイに関係している。
【0004】
さらに、シート状の接触感知(touch-sensitive)ガラスを備え、ガラスの明確に指定された部分でユーザの指に反応する機能を有した腕時計が知られている。そして、特許文献1は、ガラスの所定の触覚範囲に圧力を掛けることによって、時計のさまざまな機能をコントロールする方法について開示している。このような範囲は、特定の機能をトリガするためのボタンのように振る舞う。これは、触覚表面がガラスの特定範囲への接触だけに反応する、零次元ナビゲーションと称される。一般的に触覚範囲は透明であるので、文字盤やベゼル上にそれらの位置を示す必要があり、必然的に、接触範囲の数は、そのような指示子に必要となるスペースによる制限を受けていた。
【0005】
特許文献2は、ガラスの周辺に12個のセンサからなる触覚制御部を備えた別の時計について開示している。触覚制御部では、センサ感知が命令として認識される。このような時計は、先のものと同様の欠点を有するとともに、最大でも12個の別個のコマンドの入力しか行えない。
【0006】
特許文献3は、選択的に表示されて、接触を感知する機能を有した並置された範囲を提供するタッチ画面を備えた時計を開示している。この触覚範囲は、ディスプレイの表面として形成され、深刻な技術的制限を含んでいる。例えば、多くの場合、狭い表示範囲で解像度を高めること、広い触角表面を保ちつつエネルギー消費量を削減すること、触覚(tactile)ガラスと運動体との接触を円滑にすることが要求される。
【0007】
特許文献4は、液晶ディスプレイにより、時刻がデジタル及び/又はアナログ形式で表示される時計に関する。この時計は、ガラスの周辺部に、指によって別個に活性化可能な複数の電極を備えている。
【0008】
特許文献5は、タッチ画面のセンサを形成する不可視の電極を備えた時計ガラスの製造方法について開示している。
【0009】
特許文献6は、タッチ画面を備えたポータブルデバイスについて開示している。このデバイスでは、コンピュータ画面上と同様に、仮想デスクトップ上のアプリケーションアイコンを指で選択することによって、利用可能なさまざまなアプリケーションへのアクセスが可能となる。しかしながら、時計画面に表示可能なアイコンのサイズは極めて限られたものとなり、特に、視力にハンデを有する人々に対する人間工学的な問題を含む。
【0010】
また、直線軸に沿った指の動きや位置に反応する一次元タッチ画面が知られている。特許文献7は、例えば、三角形状の容量性電極を備えた時計について開示している。電子回路は、このような電極に沿って指の位置を検出する機能を有する。典型的に、そのような線型画面は、線型動作するボタンや調整要素の操作、例えば、デバイスのロック解除や音声レベルの調整に使用される。
【0011】
最後に、画面の表面上で2つの異なる方向に沿った指の動きを検出し、反応を返す機能を有した二次元タッチ画面もまた既知のものである。指の絶対位置に反応する零次元システムと比較すると、指の動き及び/又は軌跡を検出する触覚システムは、より人間工学的な使用法を提供できる。指は画面上のいかなる位置へも移動できるので、有効範囲を指し示す必要がない。
【0012】
二次元タッチ画面は、互いに非常に接近し、ほぼ隣接している複数の電極を使用する。通常、触覚表面に触れた指は、いくつかの隣接した電極の任意の部分を覆うこととなる。ソフトウェアは、個々の電極の出力した信号から指の重心を算出し、この重心の位置の時間的変化から指の動きを決定する。
【0013】
故に、二次元タッチ画面は、電極と、零又は一次元タッチ画面よりも明らかに高度な信号処理回路とを必要とする。通常、これらは、デバイス、例えば、ポータブルコンピュータ、PDA、及び最近の多くの携帯電話などに、十分な処理能力と電力供給とを備えることを強いる。これらのデバイスは、時計のガラスよりもはるかに広い画面を有しており、携帯電話ですら、考えうるもっとも大きい時計の表面よりもはるかに広い画面を有している。このような広い画面は、腕時計では表示することがほぼ不可能なグラフィカルインタフェース要素、例えば、いくつかのアイコン、メニューバー等の表示を可能とする。腕時計のグラフィカルインタフェースにおいて、多様なプログラムやドキュメント間のナビゲーションを行うことは、いくぶん広い画面において生じるものとは異なった、特殊な問題を伴うこととなる。
【0014】
通常、時計は、指の動きを検出可能とするため又は検出のために必要となるものとしては、あまりに小さすぎるとみなされている。さらに、必要となる電力消費量、更新時期、又は演算能力を考慮すれば、より精密なタッチ画面を作るには、時計製造業は問題がある。さらに、通常、時計画面は、コンピュータや携帯電話のグラフィカルユーザインタフェースとしてよく目にするアイコンやその他のウィジェットによる選択機能を実現するには小さすぎるとみなされている。
【0015】
これらの先入観のため、かつ、狭い表面しか有さない時計ガラス上の動きの有用な検出法が知られていないために、デジタルディスプレイを備えた時計には、二次元触覚表面や2方向に沿った指の動きを検出可能とするソフトウェアが提供されていなかった。
【0016】
さらにまた、シングルタッチ(mono-haptic)触覚画面と、マルチタッチ(multi-haptic)触覚表面とが区別される。本明細書中では、マルチタッチ表面は、いくつかの同時接触点、例えば、触覚表面上で数本の指が同時に動くこと検出する機能を有した触覚表面又はタッチ画面として定義されている。通常、これらのデバイスの電極は、これらの同時接触を解釈し、グラフィカルユーザインタフェースに対するコマンドへと変換する回路やソフトウェアに関連付けられている。
【0017】
そして、特許文献8は、指が1つ又は2つの隣接したキーを同時に選択するこを許容するように構成されたL字型静電容量触覚キーを備えた時計を開示している。この時計は、離れた位置にある電極上の2本の別個の指ではなく、2つの隣接した電極に1本の指が接触したことを検出でき、マルチタッチ画面ではない。
【0018】
また、従来技術においては、腕時計のマルチタッチ画面を使用することに対して、一般に、そのガラスは、数本の指で触れることや、さらには同時に動かすことを可能にするには小さすぎるとの先入観があった。
【0019】
しかしながら、ごく少数の文献は、触覚ガラス上で指を動かすことによりコマンドを入力可能とする腕時計について開示している。
【0020】
特許文献9は、指のさまざまな動きを用いて行列中の特定の文字を選択可能とする、小型電子機器のためのデータ入力システムを開示している。しかしながら、提案されたソリューションは、この目的のために用意された特殊なメニューでのナビゲーションによってのみ実現され、データの入力には、退屈な訓練が必要となる。
【0021】
特許文献10は、複数のセンサのうちの1つを選択することによって、又は、一連のセンサが特定の順序で活性化されることによって、さまざまなコマンドが入力可能な、各コーナーにセンサ備えた時計を開示している。複数のコマンドのうちの1つは、例えば、受信したメッセージのリスト、アラームのリスト等の補足的な情報を提供する「カード」を表示することができる。このカードは、限られた時間だけ表示され、しばらくすると自動的に姿を消す。しかしながら、この文献に開示された非隣接電極の配置は、直感的でないコマンド入力を実現し、二次元触覚表面ではない。ユーザは、自身の指を触覚表面上で正確に移動させる必要があり、ガラスの中心を通る指の動きは検出されない。提供されるさまざまな機能にアクセスするためには、複雑かつ覚えるのが困難な選択順序を使用しなければならない。表示可能な補足機能の数は、センサの数によって制限される。
【0022】
したがって、従来技術においては、ガラスの特定の範囲に圧力を加えることなく、コマンドの入力を可能とする触覚ガラスを備えた腕時計が必要とされている。
【0023】
特に、タッチ画面上の指の動きを検出可能な腕時計が必要とされている。
【0024】
具体的には、触覚表面と、該表面の電極からの信号を処理する信号処理回路と、プロセッサ及びグラフィカルインタフェースとを含む少なくともいくつかの要素が、腕時計の特定の制限、特に、狭い画面、電力消費の観点での非常に厳格な要求、及び利用可能な演算能力に適応するような腕時計が必要とされている。
【0025】
また、ディスプレイを乱雑にすることなく、さまざまな情報を表示可能な腕時計が必要とされている。さらに、この時計は、容易に学べ、触覚ガラスで容易に入力可能なコマンドにより、利用可能なさまざまな情報アイテムに容易かつ直感的にアクセスすることを提供する。
【0026】
また、表示される情報のタイプと、情報の表示方法とをカスタマイズ可能な腕時計が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第6967903号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1394640号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/111481号
【特許文献4】国際公開第03/056397号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1544178号明細書
【特許文献6】米国特許第6477117号明細書
【特許文献7】瑞国特許出願公開第627615号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1808751号明細書
【特許文献9】米国特許第7170496号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2006/092177号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明によれば、特に、デジタルマトリックス方式ディスプレイと、複数の電極を有したシート状の接触感知ガラスと、処理回路とを具備した腕時計により、その目的を達成する。上記処理回路は、上記電極からの信号を解釈して、それらの信号に基づいていくつかの利用可能なカードのうちから1つのカードを選択し、選択したカードをデジタルマトリックス方式ディスプレイの全体に表示するように構成される。上記接触感知ガラスは、少なくとも2つの異なる方向に沿った少なくとも1本の指の動きを検出する二次元触覚ガラスである。処理回路は、複数のカードをスクロールさせて、最初に表示されていたカードを別のカードに持続的に置き換えるように構成される。スクロールの方向は、上記動きの方向に従う。
【0029】
本明細書において、用語「カード」は、時計のグラフィカルユーザインタフェース上に表示され、現在時刻、ムーンフェイズ(月相)、クロノグラフ(ストップウォッチ)等を画面全体に表示するコントロール又はウィジェットを意味する。カードは、時計画面全体を占有するように設計された画面背景画像を含む。この画像は、例えば、写真を表示するために固定されたものでよく、又は、現在時刻を表示するために定期的に更新されるものでもよい。さらに、カードは、画面背景に表示される情報を決定する機能(コンピュータプログラム又はモジュール)に関連付けられてよい。例えば、カードは、ムーンフェイズを求め、テキスト又は絵で表示するプログラムに関連付けされてよい。さらに、カードは、触覚インタフェースの挙動と、画面上での指の動きに基づいて起動される機能又はモジュールの挙動とを定義できる。
【0030】
そして、時計のグラフィカルインタフェースでのナビゲーションは、仮想的に並置された複数のカードをスクロールさせて、例えば、あるカードの全体の画像を、例えば、あるカードに対応する別の画像に置き換えて、別の機能を表示することによって達成される。このことは、プログラム又は機能の起動が画面背景上のプログラムの小さなアイコンを選択することによって行なわれるという従来のグラフィカルインタフェースの欠点を回避できる。本発明では、アイコンは、通常は画面全体を占有して有用な情報を表示するカードに置き換えられる。
【0031】
これらのカードは、ユーザによりカスタマイズされてよい。また、ユーザは、時計に接続した外部コンピュータから新たなカードの追加を選択することで、新たな機能を追加すること、及び/又は、情報が表示される方法を修正することができる。
【0032】
また、本発明は、ユーザによる実行が可能であり、かつ時計を動作させるためにユーザが学ぶ必要のある異なる動きの数には限りがあるという知見に基づいている。この目的のために、有利には、時計のソフトウェアは、ガラスの上で指の水平又は垂直方向の動きによって、その一方を主として又は排他的に制御される。よって、時計の機能のほとんど又はそのすべては、これら2つの単純なコマンドを用いてアクセス可能となる。
【0033】
触覚ガラスは、所与のコマンドを入力するために、ユーザに特別な電極操作を行わせることなく、確実な手法で、水平又は垂直方向への指の動きを検出できる。
【0034】
また、一実施態様において、タップコマンド(ガラスへの短時間の指の接触)又はダブルタップコマンド(連続した2回の短い接触)は、コンピュータグラフィカルインタフェースにおけるマウスで実行されるクリック及びダブルクリックと同様に、例えば、コマンドを確認するためや機能を起動するための入力として利用されてよい。これらのコマンドは、場合に応じて、画面に明示された範囲、例えば、クロノグラフモードにおける「START」ボタン上入力されてよく、又は、画面上の任意の位置で入力されてもよい。
【0035】
また、本腕時計は、単純に、ガラス上で指を水平又は垂直方向に動かして、並置されたカードをスクロールさせることにより、あるカードから別のカードに極めて簡単にカードを切り替えできるという利点を有する。
【0036】
あるカードから別のカードにスクロールすることは、例えば、時計のモード切り替えに対応する。例えば、「現在時刻の表示」モードから「別のタイムゾーンの表示」モードへの切り替えは、カードをスクロールさせること、及び、時計画面に表示される全体画像を別のカードの画像に置き換えることによって行われる。
【0037】
また、本発明は、カードの配置方法と、可能な限り高速かつ直感的な動作の描写を行うようにカードをスクロールするために用いる方法とに関する。
【0038】
この明細書では、時計の「水平」方向は、伝統的な時計の文字盤上の「9時−3時」方向に対応し、「垂直」方向は、「6時−12時」方向に対応する。
【0039】
本発明の各実施形態は、添付の図面による例示的な説明によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1A】図2Bとは異なるカードを表示した、本発明による腕時計の一実施形態の全体像を示す図である。
【図1B】図1Aとは異なるカードを表示した、本発明による腕時計の一実施形態の全体像を示す図である。
【図2】時計のメニュー内のさまざまなカードの仮想的配置を示す図である。
【図3a】垂直方向スクロールコマンドが入力された後に、最初に表示されていたカードを別のカードに置き換えて表示する時計を示す図である。
【図3b】垂直方向スクロールコマンドが入力された後に、最初に表示されていたカードを別のカードに置き換えて表示する時計を示す図である。
【図3c】垂直方向スクロールコマンドが入力された後に、最初に表示されていたカードを別のカードに置き換えて表示する時計を示す図である。
【図3d】垂直方向スクロールコマンドが入力された後に、最初に表示されていたカードを別のカードに置き換えて表示する時計を示す図である。
【図4A】時計の一実施形態における、いくつかのナビゲーション階層へのカード配置を示す図である。
【図4B】時計の一実施形態における、いくつかのナビゲーション階層へのカード配置を示す図である。
【図4C】時計の一実施形態における、いくつかのナビゲーション階層へのカード配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1A及び図1Bは、本発明による腕時計1の2つの実施形態を示す。図示された時計は、特に、ブレスレット(時計バンド)2と、デジタルマトリックス方式ディスプレイ4を覆うガラス3を備えたケース5とを具備する。
【0042】
ケース5は、コントロール要素、例えば、プッシュボタン、リューズ(クラウン)等を有してよい。しかしながら、これらは動作に必要不可欠なものではなく、好適な実施形態においては、時計は、リューズを有さず、画面のオン/オフや明るさの調整のために使用するプッシュボタン(図示せず)だけを備える。また、画面の明るさを周囲の明るさに自動的に合わせる明るさセンサを選択的に使用してもよい。時計は、例えば、ガラスに触れられた直後、又は、タッチ画面でタップ又はダブルタップが行われると、ディスプレイを消灯した状態又は少なくともその明るさを減じた状態である待機モードから、「時刻読み取り(time reading)」及び/又はナビゲーションモードに切り換わってよい。
【0043】
また、ケース5は、時計を外部コンピュータに接続するためのコネクタを具備してよく、例えば、その背面又は時計の側面のいずれかの位置に、マイクロ又はナノUSBコネクタを備えていてよい。また、ZigBeeやBluetooth(登録商標)などのワイヤレス接続手段を備えていてもよい。
【0044】
有利には、時計は、マイクロ又はナノUSBコネクタを介して、若しくは、特殊な又は専用のコネクタを介して、又は、変形実施形態においては、無線周波数インタフェースを介して、充電可能な蓄電池への電力供給を受ける。
【0045】
ブレスレット2は、例えば、ゴムやその他の適切な材料で作られていてよい。一実施形態では、ブレスレット2の素材に埋め込まれたLEDやLCD画面などの追加的な指示器が存在し、マトリックス方式ディスプレイ4に対する補足的な情報表示を行ってよい。好ましくは、指示器は、時計の処理回路(図示せず)による電力供給及び制御を受け、時計の状態に関する表示(例えば、バッテリー充電レベル)や、現在の表示に対応する時刻表示(例えば、経過時間の表示)を行う。よって、ブレスレットの指示器と電子的な時計ムーブメントとの間には電気的な接続関係が存在する。
【0046】
ガラス3は、ケースの上面を閉じて、デジタルマトリックス方式ディスプレイ4を保護する。好ましくは、ガラスは、サファイアやその他の引っかき傷に強い素材からなり、反射防止コーティングで覆われている。好適な実施形態では、ガラスは、円筒状又は球面状に湾曲している。
【0047】
透明電極は、指又はスタイラスの存在を検出するために、ガラス3の中又は下に配置される。検出技術としては、静電容量方式などの従来技術において既知の方法を適宜使用してよい。
【0048】
高解像度のデジタルマトリクス方式ディスプレイ4は、ガラス3の下のほぼ全面を占め、故に、時計の文字盤と時刻表示との両方として機能する。好適な実施形態では、ディスプレイは、少なくとも150×150ピクセルのカラー液晶ディスプレイ(LCD又はTET−LCD)で構成される。また、例えば、OLED技術に基づいたディスプレイなど、その他タイプのディスプレイが用いられてもよい。さらにまた、時計は、複数のディスプレイを備えてもよい。例えば、複数のデジタル表示ディスプレイを備えてよく、又は、時計針やその他の機械式指示器と組み合わされたデジタルマトリックス方式ディスプレイを備えてよい。
【0049】
先に記載した処理回路は、各電極から入力される信号を解釈し、それらの信号に基づいてマトリックス方式ディスプレイ4上に表示を行う機能を有する。典型的に、処理回路は、マトリックス方式ディスプレイをコントロールするマイクロコントローラと、触覚インタフェースをコントロールする別のマイクロコントローラと、選択されたカードに基づいてその時々に表示する内容を決定する汎用マイクロコントローラとを含む。また、これらのマイクロコントローラは、上記とは異なるグループ化がなされていてもよい。
【0050】
また、入出力回路、例えば、USBデコーダ、又は、Bluetooth受信機若しくはZigBee受信機が備わっていてよい。
【0051】
特に、処理回路は、上記の電極からの各信号を解釈し、それらの信号に基づいて利用可能な複数のカードのうちの1つのカードを選択して、デジタルマトリックス方式ディスプレイ全体に表示するように構成される。好ましくは、このような構成は、特定の動作をコントロールする機能を有したコンピュータプログラム(ファームウェア)をマイクロコントローラのメモリに格納することによって実現される。ファームウェアは、メモリに格納されている画像とともに、ディスプレイ4にカードを表示させる。有利には、ソフトウェア及び/又は該ソフトウェアの使用するデータは、例えば、先に記載したUSB、Bluetooth、ZigBee、又はその他のインタフェースを介して、ユーザにより修正又は更新されてよい。このインタフェースにより、例えば、新たなカードやそれらのカードで使用される新たな画像を読み込み、カード自体やそれらのカードで表示するグラフィカル要素をカスタマイズすることが可能となる。
【0052】
ディスプレイ4は、同一のカードで複数の情報を同時に表示するために、例えば、図1Aに示したように現在時刻を表示するために、又は、図1Bに示したように現在時刻とムーンフェイズとを表示するために、十分なサイズ及び解像度を有する。時計の機能を拡張するために、ユーザは、表示モードをあるモードから別のモードに切り換えることができ、例えば、図1Aに表示されたカードを図1Bのカードに置き換えることができる。
【0053】
図2は、本発明の一実施形態による実施可能なカード配置を示している。各カードは、仮想的な画面に対応しており、カードに応じた情報及び/又は画像が表示される。カードのサイズは、ディスプレイのサイズに対応する。利用可能な総面積は、カードの面積の合計、すなわち、複数の表示面の合計面積に対応する。ユーザは、恒久的に、又は、次の置き換えを行うまで、現在表示中のカードを、利用可能なカードのリストから選択した別のカードで置き換えることができる。
【0054】
この場合、カードは、行22と仮想的な列21となすように仮想的に配置される。ユーザは、水平方向にカードをスクロールさせて、現在のカード23を行22の別のカード220〜225に置き換えることができる。同様に、ユーザは、垂直方向にカードをスクロールさせて、列21の複数のカード210〜213のうちの1つを選択することができる。
【0055】
カードを水平方向と垂直方向とのどちらにスクロールさせるかは、ガラス上で指を動かした方向によって決まる。そして、ユーザは、利用可能なカードを容易に参照しつつ、水平又は垂直方向への単純な指の動きで特定のカードを選択できる。列21中及び行22中のカードの数は、時計のメモリ容量によってのみ制限を受ける。
【0056】
有利には、ユーザは、時計の所定のメニューを介して、又は、時計に接続したパーソナルコンピュータを介して、カードの追加、カードの削除、行及び列中のカードの順序の修正等を行うことができる。各カードは、表示されるデータを求めるためのコンピュータプログラム又はモジュールと、例えば、時計に格納された画面の背景画像やユーザの選択した情報など、そのようなモジュールの使用するデータとに関連付けがなされる。また、ユーザは、自身が用意した画像を選択中のカードの背景画像や挿絵として追加したり、自身が用意した画像自体をカードとして追加したりできる。
【0057】
上記の通り、各カードは、別個の情報を表示するか、又は時計の特定の動作モードに対応してよい。例えば、3枚のカード220,221,222は、それぞれ、東京、ニューヨーク、及びロサンゼルスの3つのタイムゾーンの現在時刻を表示するために使用される。別の4枚のカード210,211,212,213により、所与の時点、例えば、出生日、結婚日、禁煙開始日などからの日数や時間を表示できる。さらに別のカードが、ムーンフェイズ、カレンダー、又は時刻などに関連したさらなる情報を表示するために使用されてよい。さらに、各カードは、背景画像のようなグラフィカルな特徴や表示されるデータの特定の表現だけに基づいて、別個のカードとして区別されてよい。例えば、あるカードでは、図1Aのように、英数字で時刻が表示され、別のカードでは、ディスプレイ上の画素によって時刻が描写され、さらに別のカードでは、その数が現在何時何分かに対応するカラフルなシンボル一式によって時刻がグラフィカルに表現される。
【0058】
カードを交差配置することで、カードをスクロールさせて検索を行うことが容易となる。有利には、ディスプレイ上で列21中のカードが連続的にスクロールされるとき、列22は変更されず、それにより、ユーザは、どのようなカードが1つの垂直方向列21内に表示されていたとしても、常に、単純に左にスクロールすることによって、カード223に切り替えることができる。同様に、ユーザは、どのようなカードが1つの行22に表示されていたとしても、垂直方向コマンドだけで、列21中のいかなるカードへもアクセスできる。
【0059】
カードのスクロール速度は極めて速いので、このような配置によれば、提示されるカードの数が多くても、どのようなカードも容易に発見できる。行列状に配置した場合と比較すると、ユーザが幾度もスクロール操作を行うことや特定のカードを再度誤って選択してしまうことを回避できる。
【0060】
しかしながら、例外的に、例えば、あるカードから別の関連するカードへ容易に切り替えるようにしてもよい。図2の例では、垂直方向スクロールコマンドを用いて、水平方向の行22からカード224を選択することにより、関連するカード2240に直接到達できる。このような例外は、例えば、カレンダーの特定のページからカレンダーの別の週や別の月を連続的に表示する際に有用である。
【0061】
その他のカード配置も可能であり、例えば、ある列中には誕生日に関連付けされたすべての機能を配置し、別の列中には月に関連付けられたすべての機能を配置するなどして、メインメニューとして、中央行上に水平方向のナビゲーションを有するカード行列が考えられる。
【0062】
別の実施形態では、カードの切り替え、(例えば、あるカード224から別のカード2240への切り替え)は、例えば、斜め方向への動き、タップ、ダブルタップ、長押し等をガラス上の任意の位置で行うことや、画像の特定の範囲を選択することなど、さまざまなタッチコマンドで実現されてよい。
【0063】
有利には、行22中及び/又は列21中の各カードは、閉ループ状に配置され、末尾のカードを越えてのスクロールは、先頭カードからのスクロールに戻る。その逆も同様である。したがって、ユーザは、回転する円柱又は球の表面に配置された複数のカードを循環して参照しているような印象を受ける。
【0064】
別の実施形態では、タッチ画面へのスクロールコマンドの入力は、常に、開始位置カードへのリターンと、コマンドにより与えられたスクロール方向への当該カードからのスクロールとをトリガする。この実施形態は、常に同じ地点からスクロールが開始され、かつ、常に同一の動作で目的のカードに到達するので、より簡易なナビゲーションを提供する。さらに、同一のカード23において、行22の水平方向スクロールと列21の垂直方向スクロールとのいずれかが行える場合の混乱を避けることができる。
【0065】
別の実施形態では、開始位置カード23へのリターンは手動となり、ユーザは、スクロール方向を変更して別の利用可能なカードにアクセスする前に、まず、開始位置カード23に手動で戻らなければならない。開始位置カード23に戻るための別のコマンドも想定でき、例えば、この目的のために用意されたコマンド範囲を用いてよい。
【0066】
図3aないし図3dは、一例として、図3aにおいて表示された開始位置カード23を図3dのカード213で置き換えるための水平方向スクロール手順を示す。図3aは、カード23による現在時刻の初期表示状態を示している。現在、ユーザは、このカードを、自身の出生日からの経過日数及び時間を示す別のカード213に置き換えたいと考えている。この目的のために、ユーザは、図3bに示すように、時計のガラスの上の任意の位置で自身の指を上下に動かすことによって、垂直方向スクロールコマンドを入力する。
【0067】
図3cでは、列21中の連続したカードが、ガラスの上の指の移動方向によって決定された進行方向へ自動的かつ連続的にスクロールする。
【0068】
図示された有利な実施形態では、プロセッサは、スクロール中に、サイズを縮小した複数のカードを同時に表示する。このような選択的なカウンターズームにより、ユーザは、スクロールをより良好に視覚化して、目的のカードの位置をより素早く見つけ出すことができる。
【0069】
ユーザが指を離してもスクロールは続く。有利には、図3cにおけるカードのスクロール速度は、触覚表面での指の動きの速さ及び/又は移動距離によって決まる。最高速度は、指をより速く、大きく動かすことで得られる。有利には、マイクロコントローラが、触覚ガラス上での指の軌跡に関連したエネルギーを決定する。このようなエネルギーは、指の動きの速さの二乗に応じて変化する。そして、マイクロコントローラは、カードを載せた仮想的な円筒又は球の回転をシミュレートして、対応するエネルギーの分だけ運動させる。
【0070】
よりリアルな挙動となるよう、カードのスクロール速度は、一定ではなく、摩擦によって円筒の回転が遅くなるかのように、徐々に減少するようにしてもよい。また、あるカードから次のカードに切り替わるようにスクロールする度に速度を緩め、切り替わった後に、再び加速させるようにしてもよい。すなわち、ホイールの外周の各爪にスプリングがかかる度にブレーキがかかるトンボラ(tombola)ホイールのように振る舞う。
【0071】
次いで、決定の瞬間、又は、スクロール速度がしきい値を下回ったとき、スクロールは停止する。そして、カードの表示は元の通りに拡大され、スクロールの停止時にディスプレイの中心付近にあったカード213が、ディスプレイの端に揃うように調整されて、ディスプレイ全体に表示される。
【0072】
また、有利には、ユーザは、目的のカードが表示されたときに、例えば、画面の中央部を指で短くタップすることにより、又は、画面に長く触れることにより、自分自身でスクロールを停止することができる。また、逆方向への動きを入力するコマンドにより、スクロールの方向を反転させることができる。
【0073】
また、選択的に、不連続モードでの(画像毎、水平又は垂直方向走査毎の)水平又は垂直方向表示が可能である。別のスクロールモードでは、カードは、水平方向のスクロール時の左から右へ(又はその逆方向へ)のフリックで、及び、垂直方向のスクロール時の上から下へ(又はその逆方向へ)のフリックで、仮想的な本のページめくりをシミュレートする。
【0074】
カードの交換とタッチ画面の簡単な操作とにより、さまざまなタイプの情報が時計に表示可能となるので、そのような情報を介したナビゲーションが極めて単純に行える。2つのコマンド、すなわち、水平方向のスクロールと垂直方向のスクロールとは、任意のカードを選択し、時計で表示可能なすべての情報を表示するために本質的に十分な役割を果たす。
【0075】
しかしながら、その他の操作によるその他のコマンド入力の可能性を排除しない。そして、有利には、図3cの縮小表示は、適切なコマンドを入力することにより、カードをスクロールさせることなく、いつでも行うことができる。このような縮小表示により、カードの内容がグラフィカルな表として表示され、ユーザは、所望のカードに到達するために最適な経路を決定できるようになる。
【0076】
また、その解釈が現在表示されているカードに依存するようなタッチコマンドを入力することもできる。例えば、現在時刻を修正すること、又は、アラーム時刻を入力することが、ガラスの中央部をダブルタップして、メニュー又は所望の修正内容を入力可能なウィジェットを表示することにより、所定のコマンドを介して対応するカードから開始できる。
【0077】
画面に表示されるカードの特に有利な配置が、図4Aないし図4Cに関連して例示される。この実施形態では、カードは、n個の階層、例えば、この例においては、3つの階層L1,L2,L3にグループ分けされる。各階層では、同一のタイプの情報を表示するカード同士がグループ化される。この例では、図4Aに示された階層L1は、例えば、時刻、日付、カレンダー等に関連する基本的な情報を表示する。この階層の配置は、図2に例示されたものに類似するが、ナビゲーション方法が部分的に異なっており、中央位置からこの階層を抜けることにより、他の階層L2〜Lnのうちのいずれかにアクセスできる。
【0078】
図4Bに例示された階層L2は、クロノグラフ、アラーム、タイマー等のさまざまな時計機能専用のカードをグループ化する。階層L3は、仮想的な機械式ムーブメントを表示するカードをグループ化する。好ましくは、ユーザは、これらの階層のいずれにも新たなカードを追加してよい。有利には、各カードに関連する属性やメタデータに従って、時計のプロセッサが、最適な階層とその階層内の正しい位置とに自動的に配置されように、新たなカードを時計内に読み込む。
【0079】
各階層では、カードは、主に、4つの主ブランチ(左、右、上、下)を備えた交差状に配置される。主ブランチからの分岐は、例外的に、特定のカードをより詳細な表示とすること、例えば、カレンダータイプのカードにおいて、月表示モードから週表示モードへに切り替えることができる。故に、階層内でのナビゲーションは、主に水平方向又は垂直方向スクロール操作を介してなされ、これは、ツリー構造内でカードを見失うリスクを減らす。タッチ画面上で指を動かすことにより、所与の方向へのスクロールがなされ、これにより、カードは、指によって選択された方向へ動き、かつ、その動く速さ及び移動量は、指の動きに対応したものとなる。ユーザは、スクロールを停止させて、スクロール中にタップしたカードを選択することができる。選択されたカードは、自動的に画面中央に表示される。
【0080】
ループ内でのある階層から別の階層への切り替えは、好ましくは、適切なコマンドを使用して、常に交差の中央に位置するカードから行われる。一実施例においては、ある階層から別の階層への切り替えは、中央位置カード上の1つの電極又は当該カードの専用アイコン上を十分な時間(例えば、少なくとも2秒間)触れることによって行われる。デフォルト設定として、表示内容は、例えば、ディスプレイが起動されたとき、又は、所定時間経過後、現在の階層の中央に位置するカードの表示に戻る。このようにして、狭い画面上でも快適なナビゲーションが実現され、ユーザは、複雑なツリー構造に翻弄されることがない。
【0081】
図4Aは、時計の基本機能に特化した階層1のカード配置の一例を示している。例えば、現在時刻をアナログ及び/又はデジタル形式で表示する中央位置カード227から、ユーザは、垂直方向に沿ってナビゲートされ、静止画や動画210,213を備えた他のカードに移動できる。図示した例では、垂直方向の上側のブランチに表示される2枚のカード212,213は、将来の出来事、例えば、休日の予定や重要なイベントに対応する。例えば、これらのカードは、これらの出来事までの残り時間を表示できる。垂直方向の下側のブランチに表示される2枚のカード211,210は、過去の出来事、例えば、出生や結婚に対応する。例えば、これらのカードは、これらの出来事からの経過時間を表示できる。ユーザは、独自の画像で各イベント用のカードをカスタマイズしたり、時計に一時的に接続されたコンピュータを介して別のイベントに対応する新たなカードを追加したりできる。
【0082】
垂直方向軸上で利用可能なカードの数は、時計の記憶容量による制限しか受けない。特定のカードの画面背景として表示される画像は、固定されたものであってよく、又は、特定のカードに関連付けられているカード群を表示するスライドショーモードにより、自動的に変更されてもよい。例えば、ユーザは、あるカードに自身の結婚式の画像のスライドショーを関連付けることができ、また、別のカードに自身の休日の画像を関連付けることができる。他のカードが動画に関連付けられてもよい。好ましくは、これらのデータは、時計に一時的に接続されたコンピュータからダウンロードする。
【0083】
図4Aの第1階層L1の水平方向軸は、(カード220からカード222に向かって左移動することによって、)タイムゾーンを切り替えたり、中央位置から右に移動することによってカレンダーを表示したりできる。好ましくは、左側の3枚のカード220〜222は、特定のタイムゾーンを表す画像、テキスト、又はグラフィカルな要素、例えば、そのタイムゾーン名やそのタイムゾーン内の都市を連想させる画像を含む。ユーザは、単純に水平方向にスクロールを行うことで、所与のタイムゾーンを選択する。選択は、画面の中央部に長く(例えば、少なくとも1秒間)触れることによって確定され、そうしない場合、時計は中央位置カード227の表示に戻る。
【0084】
また、この軸に沿ったあるカードから次のカードへのカードの置き換えにより、時刻表示タイプの変更と、例えば、変更可能なフォント、サイズ、色、及び表示方法の変更を含むアナログ形式の時刻表示からデジタル形式の時刻表示への切り替えとが可能となる。一実施形態では、ユーザは、カードの各々で時刻を表示するために用いるフォントや色、好ましくは、その表示位置、表示される情報のサイズ及びタイプを自身のコンピュータから選択できる。
【0085】
典型的に、カードに表示される画面背景は、時計にファイルとして予め格納された静止画像又は動画で構成される。好ましくは、時刻やその他の情報などの重ね合わせ(スーパーインポーズ)表示は、時計によりリアルタイムに生成されるコンピュータ生成画像として構成され、背景上に重ね合わせて表示される。
【0086】
時計に接続されたコンピュータから、ユーザは、水平方向軸(及び、任意の階層のツリー構造内で)さまざまなカードを追加したり、定義したりできる。例えば、有用なタイムゾーンに対応するカードを追加できる。また、有用でないタイムゾーンのカードを削除したり、中央位置カード227の近くに最も有用なカードが来るよう、タイムゾーンのカードの順序を修正したりできる。中央位置カードから、及び、特定のタイムゾーンカードから、例えば、カード221から、変更しようとする時間、分、秒の値を選択し、対応する値を回転又はスクロールさせて新しい値に置き換えることにより、時刻を設定できる。時刻を設定するために、タッチ画面上の指により、時計針やその他の指示子を動かしてもよい。
【0087】
ユーザは、例えば、画面中央部に長く(例えば、少なくとも1秒間)触れることによって、例えば、ライン219〜225の複数のカードのうちの1枚からの特定のコマンドを実行することにより、中央位置カード227としてデフォルト使用されるカードを変更できる。また、変更は、時計に一時的に接続しているコンピュータから実行してもよい。
【0088】
中央位置227から左に移動することで、ユーザは、別のカレンダーに対応する別のカードを表示できる。カレンダー223では、ユーザ選択可能な画像上に日付が表示される。カード224は、カレンダーモードでは現在の月を表示し、開始位置カード224に戻るループ内でこのカード224から、又は、別のカレンダーカードから、上向きにスクロールすることで、週モードや日モードに切り替えることができる。カード224では、右へスクロールすることにより、来月のカレンダーを表示できる。末尾のカード225は、例えば、ムーンフェイズを表示する。
【0089】
図4Bは、本発明の第2カード階層L2で実施可能な例示的なカード配置を示している。この階層は、時計で表示可能なさまざまな時計機能に対応する画面を互いにグループ化する。ユーザは、第1階層の中央位置カード227でなされた長押しにより、この階層のカード237に到達する。
【0090】
左に水平方向移動することで、ユーザは、さまざまなタイプのクロノグラフ、例えば、100分の1秒刻みのクロノグラフ(カード240)、ラップタイムの同時表示を備えたクロノグラフ239、時計針を有したアナログクロノグラフ238などを選択できる。その他のクロノグラフが、コンピュータから新たなカードを読み込むことにより、ユーザによって追加されてもよい。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、この階層でのスクロール中のデフォルトの挙動は、他の階層での挙動とは異なり、ユーザが自分自身で別のカードに戻さない限りは、選択されたカード、例えば、特定のクロノグラフカードが表示され続ける。したがって、表示は、デフォルトでは、中央位置カード237に戻ることはない。しかしながら、階層のデフォルトの挙動とは異なる特定の挙動を各階層の各カードに割り当ててもよい。また、タイムアップから所定時間後に、中央位置カードに自動的に戻るようにしてもよい。
【0092】
特定のクロノグラフでは、例えば、クロノグラフ239では、ユーザは、短くタップすることで、タイムカウントを開始し、新たに短くタップすることで、ラップタイムを記録し、中央部に長く触れることで、カウントを停止することができる。クロノグラフのリセットは、例えば、画面の中央部に1秒間以上触れることによって行える。また、その他の操作は、例えば、(コマンド又は有効範囲を表したロゴやグラフィカル要素を備えた)タッチ画面の四隅のうちの1つに指で触れることなどによって実行できる。
【0093】
また、ユーザは、中央位置カード237から右に水平方向移動することで、さまざまなカウントダウンタイプ(画面241,242,243)を選択できる。この例では、カード241でのカウントダウンは、デジタル表示であり、カード242に表示されたものは、砂時計によって示されている。さまざまなクロノグラフとして、ユーザは、3枚のカード241〜243のうちの1枚に対する特定の操作でカウントダウンを開始及び停止できる。
【0094】
その他の機能やツールが、中央位置カード237から垂直方向に移動して選択でき、例えば、ビデオフィルムに対応するカード、潮の満ち引き専用のカレンダー等を選択できる。ユーザは、時計に一時的に接続されたコンピュータから独自の新たなカードを読み込むことができる。
【0095】
図4Cは、本発明の第3カード階層L3で実施可能な例示的なカード配置を示している。この階層は、垂直方向軸255〜262上の中央位置カード248の周囲で、時計のプロセッサによってシミュレートされたさまざまな仮想的な機械式時計を表示する画面を互いにグループ化し、タッチ画面に表示する。よって、ユーザは、第3階層L3のこの水平方向軸での単純な選択により、シミュレートされた機械式時計をさまざまなタイプの別の時計に置き換えることができる。垂直方向軸210〜212は、この実施例では、第1階層のそれと同じである。
【0096】
シミュレートされた機械式ムーブメントの個々のカード255〜262は、例えば、さまざまなタイムゾーンの時刻、例えば、画面257でニューヨークの時刻、画面258で東京の時刻などを表示する同一のムーブメントに対応してよい。また、それらは、画面262でのように、完全に別個の時計で表示及びシミュレートされてもよい。好ましくは、特定のムーブメントのシミュレーションプログラムは、カードの一部分であり、関連するカードが選択されたとき、このカードでダウンロードされ、時計のプロセッサによって実行される。
【0097】
好ましくは、特定の動作の表示には、時計のメカニズムの三次元シミュレーションが伴う。演算時間を短縮するために、所定の表示要素、例えば、ブリッジ、ボトムプレートなどの静的要素は、好ましくは、固定画像又は動画として表現され、一方、ギア、シャフト、脱進機、時計針等の時刻に応じて移動する要素は、好ましくは、現在時刻に基づいて、時計のプロセッサによりリアルタイムに演算生成されて、読み込まれた画像上に重ね合わせて表示される。
【0098】
表現のリアルさを向上させるために、好ましくは、時計に加速度計が組み込まれる。加速度の測定値は、動きの衝撃や加速度の影響をシミュレートするために、画像生成プログラムによって使用される。例えば、調整用素子やトゥールビョンへの重力の影響をシミュレートできる。
【0099】
表現のリアルさをさらに向上させるために、好ましくは、タッチ画面は、表示された各部位に直接触れることによって、時計針やその他の動的要素を直接動かす機能を有する。
【0100】
好ましくは、画像生成プログラムは、さまざまな部分に対する影や反射を計算する。影や反射の表現を向上させるために、光センサが使用されてもよい。また、それらの要素を修正するために、現在の時刻が考慮されてもよい。
【0101】
シミュレートされた機械式ムーブメントによって表示される時刻は、有利には、シミュレーション演算の結果によるものであり、例えば、調整素子のサイズに起因する慢性的なずれが存在する場合には、時計のクオーツにより求められる時刻と異なっていてもよい。また、シミュレートされた動作によって表示される時刻は、加速計の検出した衝撃、ユーザによるタッチ画面操作等による影響を受けてもよい。時刻設定は、例えば、時計上のボタンやリューズによって、又は、画面を介したタッチ操作によって行われてよい。
【符号の説明】
【0102】
1 腕時計
2 ブレスレット
3 ガラス又はクリスタルガラス
4 マトリックス方式ディスプレイ
5 ケース
21 複数のカードからなる列
210,211,212,213 所与のイベントからの経過日数又は時間を表示するためのカード
219 日の出及び日の入時刻に関連したカード
22 複数のカードからなる行
220,221,222 さまざまなタイムゾーンの時刻を表示するためのカード
223 本日の日付を表示するためのカード
224 カレンダーを表示するためのカード
2240,2241,2242,2243 月内の週を別個に表示するカレンダーにアラームを追加するためのカード
225 ムーンフェイズを表示するためのカード
227 第1階層の中央位置カード
23 開始位置カード
237 第2階層の中央位置カード
238,239,240 第2階層中のクロノグラフカード
241,242,243 第2階層中のタイマーカード
244,245,246,247 追加的な機能又はガジェットのためのカード
248 第3階層の中央位置カード
255,256,257,258,260,262 仮想的な機械式ムーブメントに対応するカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)と、
シート状の接触感知ガラス(3)と、
前記接触感知ガラス(3)からの信号を解釈し、該信号に基づいて、利用可能な複数のカード(23,220〜225,210〜213)のうちから1つのカードを選択し、選択したカードを前記デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)の全体に表示するように構成された処理回路と
を具備した腕時計(1)であって、
前記接触感知ガラス(3)は、少なくとも2つの異なる方向に沿った少なくとも1本の指の動きを検出する二次元接触感知ガラスであり、
前記処理回路は、前記複数のカード(23,220〜225,210〜213)をスクロールさせて、最初に表示されていたカード(23)を別のカードに持続的に置き換えるようにさらに構成され、
前記スクロールの方向は、前記動きの方向に従うことを特徴とする腕時計。
【請求項2】
各カード(23,220〜225,210〜213)が、固定の又は定期的に更新される画像を有し、
前記画像のサイズは、表示されるカードが前記デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)の全体を占有するように、前記デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)のサイズに一致し、
各カードが、時計の所定機能を表現することを特徴とする請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
各カードが、前記接触感知ガラス(3)の挙動と、前記カード上での指の前記動きに基づいて呼び出される機能又はモジュールの挙動とを定義していることを特徴とする請求項2に記載の腕時計。
【請求項4】
前記処理回路が、前記接触感知ガラス(3)の複数の位置への同時接触を検出して、マルチタッチ接触感知画面を実現するように構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の腕時計。
【請求項5】
前記処理回路が、前記接触感知ガラス(3)への指の接触範囲(15)の重心の変位を求めるように構成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の腕時計。
【請求項6】
前記複数のカードが、複数の階層に分けて配置されており、
各階層内のカードの選択が、垂直方向へのスクロールと水平方向へのスクロールとのいずれか一方によってなされ、
所定のコマンドにより、一方の階層から他方の階層への切り替えがなされることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の腕時計。
【請求項7】
前記複数のカードのうちの少なくとも1つのカードが、演算により、時刻を表示する機械式時計を模擬表示する機能を有し、
カードをスクロールすることによって、表示される前記機械式時計を変更する機能を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の腕時計。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の腕時計によって表示されるカード(23,220〜225,210〜213)を修正するための方法であって、
二次元接触感知ガラス(3)上で、少なくとも2つの異なる方向に沿った少なくとも1本の指の動きを検出する検出段階と、
検出した前記動きに基づいて、デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)上で、利用可能な複数のカードをスクロールさせるスクロール段階と、
選択されたカードを前記デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)の全体に持続的に表示する表示段階と
を有し、
前記スクロールの方向は、前記動きの方向に従うことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記スクロールを確定及び/又は停止させるタッチコマンドを入力する入力段階をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記検出段階が、前記接触感知ガラス(3)の複数の位置への同時接触を検出する同時接触検出段階を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出段階が、前記接触感知ガラス(3)への指の接触範囲の重心の変位を求める重心変位決定段階を含むことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)上で前記複数のカードを連続的にスクロールさせる際、カードの端を前記デジタルマトリックス方式ディスプレイ(4)の端に揃えるように調整してスクロールさせることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
カードをスクロールさせる速さ及び/又は移動量が、前記接触感知ガラス(3)上での指の動きの速さ及び/又は移動量によって決まることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カードをスクロールさせる速さが可変であり、
スクロールが完全に停止する前に、スクロールの速さを低下させることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
カードをスクロールさせる速さが可変であり、
カードが別のカードに切り換えられる度に、スクロールの速さを低下させることを特徴とする請求項12ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
スクロール中は、表示されるカードのサイズを縮小して、複数のカードを同時に表示することを特徴とする請求項8ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
カードのスクロールが、前記接触感知ガラス(3)への短い接触によって停止され、
停止時に画面の中央に最も近かったカードが選択されて表示されることを特徴とする請求項8ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
カードを追加、削除、又は再配置する段階をさらに有することを特徴とする請求項8ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
腕時計の入出力インタフェースを介して、新たなカードを読み込む段階をさらに有することを特徴とする請求項8ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のカードが、複数の階層に分けて配置されており、
垂直方向スクロール又は水平方向スクロールを行う段階と、
所定のコマンドを入力して、一方の階層から他方の階層への切り替えを行う段階と
をさらに有することを特徴とする請求項8ないし19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記複数のカードが、仮想的な機械式ムーブメントを模擬表示することを特徴とする請求項8ないし20のいずれか1項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2012−531607(P2012−531607A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518090(P2012−518090)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059323
【国際公開番号】WO2011/000893
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(512002312)
【Fターム(参考)】