説明

タップ加工装置

【課題】タップ本体に付着した切粉除去と同時にタップ本体に潤滑性を与え、かつ潤滑剤
の消費を最小限に抑えることを可能にしたタップ加工装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、回転駆動源の駆動を受けて回転可能なタップ本体18を有するツ
ールユニットと、このツールユニットを所望位置に移動可能に支持した操作ユニットと、
前記ツールユニットの可動領域内に設けられ、タップ本体18が進入可能に開口部を有す
るとともに潤滑剤41を貯留した容器40と、この容器40の潤滑剤41内に磁界を構成
するように配置した磁石42とを有して成る構成である。これにより、タップ本体18に
付着した切粉30の除去と同時にタップ本体18に潤滑性を与え、かつ潤滑剤41の消費
を最小限に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップ本体に付着した切粉を除去する手段を備え、タップ加工時にタップ本
体の破損およびタップ形成不良を防ぐタップ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタップ加工装置は、モータの回転動力が伝達されるチャックにタップ本体を保持
させ、当該タップ本体を回転駆動しつつ、下穴加工の施された加工物の下穴加工面に対し
垂直に下降させ、タップを形成する装置構成であった。
【0003】
上記下穴の内径寸法はタップ本体外径よりも小径に設定されているため、タップ加工の
際に下穴から切粉が発生し、タップ本体に付着する。切粉の付着したタップ本体により、
次の下穴にタップ加工を行うと、下穴内径面とタップ本体に切粉が噛み込み、タップ加工
中に発生する切削抵抗は、切粉の付着していない正常なタップ加工時に比べて高くなる。
このようなタップ加工の際には、タップ本体の破損やタップの形成不良を生じる可能性が
高くなる。
【0004】
上記加工中の切削抵抗を低減するための一般的な方法として、タップ加工前に潤滑剤等
を塗布した刷毛等を用い、タップ本体に付着した切粉を取り除くと同時に、タップ本体に
潤滑性を与えるものがあった。またはタップ加工前および加工中において、潤滑剤をタッ
プ本体に常時あるいは適時供給して、タップ本体に付着した切粉を取り除くと同時に、タ
ップ本体に潤滑性を与えるものもあった。
【0005】
上述の切粉除去方法の他に、特許文献1に示される、タップ加工時において加工物に触
れ得るタップ本体の領域に常時接触する切粉除去部材を配し、タップ加工時のタップ本体
の回転を利用し、かつタップ本体に潤滑剤を供給せず、タップ本体に付着した切粉を強制
的に除去するものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−285716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1に示す従来のタップ加工装置において、切粉除去部材によりタ
ップ本体に付着した切粉は強制的に除去されるが、同時にタップ本体の潤滑性も失われ、
タップ加工時に発生する切削抵抗が高くなり、タップ本体を破損する問題や加工後のタッ
プの形成不良およびタップ本体の寿命が短くなる等の問題も発生している。また、上記従
来の切粉除去方法と上述従来の切削抵抗を低減させる一般的な方法を組み合わせ、次の2
通りのタップ加工方法が考えられる。第1は上記切粉除去部材を設け、タップ加工中にタ
ップ本体に常時潤滑剤を供給する方法と、第2は適時潤滑剤を供給する方法である。常時
潤滑剤を供給する方法においては、潤滑剤を大量に消費する問題があり、適時潤滑剤を供
給する方法においては、前述同様やはり、切粉除去部材によりタップ本体に付着している
潤滑剤が強制的に除去されるため、タップ加工中の切削抵抗が高くなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、タップ本体に付着した切粉除去と
同時にタップ本体に潤滑性を与え、かつ潤滑剤の消費を最小限に抑えることを可能にした
タップ加工装置の提供を目的とする。この目的を達成するため、本発明は、回転駆動源の
駆動を受けて回転可能なタップ本体を有するツールユニットと、このツールユニットを所
望位置に移動可能に支持した操作ユニットと、前記ツールユニットの可動領域内に設けら
れ、タップ本体が進入可能に開口部を有するとともに潤滑剤を貯留した容器と、この容器
の潤滑剤内に磁界を構成するように配置した磁石とを有して成る構成である。なお、前記
潤滑剤は潤滑性能を持つ切削油としてもよく、また前記磁石は永久磁石あるいは電磁石と
するのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタップ加工装置は、タップ本体に付着した切粉除去とタップ本体に潤滑性を与
えることとが同時に可能となる。この結果、タップ本体の破損やタップの形成不良を低減
できる他、タップ本体の寿命を向上させる利点がある。さらに潤滑剤は容器内に貯留され
ているため、繰り返し利用可能であり、潤滑剤の消費を最小限に抑える利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わるタップ加工装置の一部切欠断面図である。
【図2】本発明に係わる効果を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1において、90はタップ加工
装置であり、このタップ加工装置90は、ツールユニット60と、操作ユニット50と、
潤滑ユニット70と、クランプユニット80とから構成される。
【0012】
ツールユニット60は、回転駆動源となるモータ15の下方にグリップ16を配置し、
グリップ16の直下には、モータ15の回転を伝達可能に構成したチャック17を配置し
ている。また、チャック17はタップ本体18を保持し、タップ本体18の脱着を可能と
した構成である。なお、前記グリップ16はチャック17の回転を伝達しない構造であり
、下方に押さえてモータ15に起動を与える働きを有する。
【0013】
操作ユニット50は、支柱ベース2に垂直に立設された支柱1の上部にベアリング3を
介して第1アーム4が旋回自在に配置される。また、支柱1の第1アーム4下部に落下防
止ストッパ20を配置し、第1アーム4が支柱1に沿って落下しない構造となっている。
前記第1アーム4の先端には、ベアリング13aを介して、シャフト5が回転自在に立設
されおり、このシャフト5にはベアリング13bを介して、アーム連結金具19が回転自
在に配置されている。このアーム連結金具19には、ピン10a,10bにより、リンク
9a,9bがそれぞれ垂直面内を旋回可能に連結されている。また、リンク9a,9bの
先端には、ピン10c,10dにより、ツールブラケット14が連結されている。これら
アーム連結金具19、リンク9a,9b、ツールブラケット14は平行リンクを構成して
おり、ツールブラケット14に保持された前記ツールユニット60を軸線鉛直な姿勢のま
ま、回動可能に構成されている。また、リンク9aの中央付近にはスプリングフック7が
、シャフト5の上部にはスプリングフック6がそれぞれ配置されており、これらには引っ
張りばねであるスプリング8が懸張されている。このスプリング8の張力により、リンク
9a,9bおよび、ツールブラケット14が常時上方へ引っ張られ、ツールユニット60
の自重を支えることができるように構成されている。
【0014】
潤滑ユニット70は、上面の開口した容器40に潤滑剤41を貯留し、容器40の開口
部を除く外側に磁石42を配置した構成である。この磁石42によって、容器40内の潤
滑剤41中に磁界が構成される。
【0015】
クランプユニット80は、下穴35が施された加工物34を保持するクランプ38をベ
ース面に配置した構成である。
【0016】
また、前述のツールユニット60において、モータ15に起動を与える手段は、前述実
施例に限らず、別途起動スイッチ(図示せず)を操作ユニット50等に設けてもよい。ま
た、前述操作ユニット50のツールブラケット14は垂直方向にのみ昇降する構成あるい
は、上下左右、旋回等タップ加工時のタップ本体18の進行方向に併せて自在に姿勢を可
変し得るロボットおよびエアシリンダ等のアクチュエータから成る構造としてもよい。一
方、上述の潤滑ユニット70における潤滑剤41は、潤滑性能を有する切削油にしてもよ
く、同じく潤滑ユニット70における磁石42は、永久磁石または電磁石とするのがよい

【0017】
上記構成のタップ加工装置90において、タップ本体18に付着した切粉30を取り除
くため、図2に示すように、容器40に貯留した潤滑剤41内にタップ本体18を浸し、
グリップ16を下方に押さえ、モータ15を駆動する。このモータ15の駆動に伴って、
チャック17およびチャック17に保持されたタップ本体18が回転する。これにより、
タップ本体18に付着した切粉30が潤滑剤41によって洗い落とされる。同時にタップ
本体18には、潤滑剤41を塗布し、続くタップ加工における潤滑性能を与える。潤滑剤
41内に浮遊する切粉30は、磁石42の磁力によって、容器40の壁面や底面に吸着保
持され、タップ本体18への再付着を阻止される。ゆえに、タップ本体18に付着する潤
滑剤41を清浄なものとして、充分な潤滑性能を持たせることが可能である。さらに、潤
滑剤41は容器40内に貯留しているため、繰り返し利用可能となり、その消費を最小限
に抑える利点もある。
【符号の説明】
【0018】
1 支柱
2 支柱ベース
3 ベアリング
4 第1アーム
5 シャフト
6 スプリングフック
7 スプリングフック
8 スプリング
9a リンク
9b リンク
10a ピン
10b ピン
10c ピン
10d ピン
13a ベアリング
13b ベアリング
14 ツールブラケット
15 モータ
16 グリップ
17 チャック
18 タップ本体
19 アーム連結金具
20 落下防止ストッパ
30 切粉
34 加工物
35 下穴
38 クランプ
40 容器
41 潤滑剤
42 磁石
50 操作ユニット
60 ツールユニット
70 潤滑ユニット
80 クランプユニット
90 タップ加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の駆動を受けて回転可能なタップ本体を有するツールユニットと、このツー
ルユニットを所望位置に移動可能に支持した操作ユニットと、前記ツールユニットの可動
領域内に設けられ、タップ本体が進入可能に開口部を有するとともに潤滑剤を貯留した容
器と、この容器の潤滑剤内に磁界を構成するように配置した磁石とを有して成ることを特
徴とするタップ加工装置。
【請求項2】
潤滑剤を潤滑性能を有する切削油としたことを特徴とする請求項1に記載のタップ加工
装置。
【請求項3】
磁石を永久磁石としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタップ加工装
置。
【請求項4】
磁石を電磁石としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタップ加工装置


【図1】
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【図2】
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