説明

タフテッドカーペット

【課題】重厚で風合いや外観に優れた機能を発揮することができる一方、簡素で軽量な機能を発揮することができるタフテッドカーペットを提供する。
【解決手段】タフテッドカーペット10は、基布11にパイル糸12が植え込まれて形成され、パイル糸12が高密度に植え込まれた高密度部13と、パイル糸12が低密度に植え込まれた低密度部14とを有している。高密度部13は目付量が280〜700g/mであり、低密度部14は目付量が200〜500g/mであるとともに、高密度部13の目付量が低密度部14の目付量より多くなるように設定されている。さらに、高密度部13の目付量と低密度部14の目付量との差は、30〜250g/mに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のフロアカーペット等として使用され、タフティングマシーンにより基布にパイル糸が植え込まれて構成されているタフテッドカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タフテッドカーペットは、タフティングマシーンを用い、基布に対して該基布のステッチ方向に向かって延びるパイル糸の列が基布のゲージ方向に沿って複数配列されることにより形成されている。
【0003】
この種のタフテッドカーペットとして、本願出願人は特許文献1に記載されているタフテッドカーペットを提案した。すなわち、かかるタフテッドカーペットは、基布に対して同基布のステッチ方向に向かって延びるパイル糸の列が同基布のゲージ方向に沿って複数形成されるとともに、前記基布に対して原糸がジグザグ状にタフトされてパイル糸の列が形成されている。このタフテッドカーペットによれば、ステッチ方向におけるパイル糸の糸スジが弱められて外観を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−239959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タフテッドカーペットは使用状態において外面が見える部分と、隠れて見えない部分とが存在する場合がある。例えば、自動車のフロアカーペットでは、乗車時に乗員から見える部分と見え難い部分とが存在する。このような場合、見える部分では外観を良好に保ち、パイル糸が十分に植え込まれて良好な風合いを発揮できるように構成する一方、見え難い部分ではパイル糸の植え込みを少なくし、軽量化を図るように構成したい。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているタフテッドカーペットでは、ステッチ方向における糸スジが弱められて外観を向上させることができるが、カーペット全体が一様に構成されていることから、使用状態での見える部分と見え難い部分でパイル糸の密度変化はない。このため、タフテッドカーペットは、パイル糸の密度構成に基づく前記新たな効果を得ることはできなかった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、重厚で風合いや外観に優れた機能を発揮することができる一方、簡素で軽量な機能を発揮することができるタフテッドカーペットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のタフテッドカーペットは、基布にパイル糸が植え込まれて形成されるとともに、前記パイル糸が高密度に植え込まれた高密度部と、パイル糸が低密度に植え込まれた低密度部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のタフテッドカーペットは、請求項1に係る発明において、前記高密度部は目付量が280〜700g/mの範囲であり、低密度部は目付量が200〜500g/mの範囲であるとともに、高密度部の目付量が低密度部の目付量より多くなるように設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のタフテッドカーペットは、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記高密度部はステッチが8.0〜17.0の範囲であり、低密度部はステッチが6.0〜12.0の範囲であるとともに、高密度部のステッチが低密度部のステッチより大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のタフテッドカーペットは、請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記高密度部の目付量と低密度部の目付量との差は、30〜250g/mの範囲であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のタフテッドカーペットは、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記高密度部は、タフティングマシーンにおける基布の速度が低密度部を形成する場合よりも遅くすることにより形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に係る発明のタフテッドカーペットでは、基布にパイル糸が植え込まれて形成されるとともに、前記パイル糸が高密度に植え込まれた高密度部と、パイル糸が低密度に植え込まれた低密度部とを備えている。このため、高密度部においては、植え込まれた高密度のパイル糸により、優れた風合いや良好な外観を発現することができる。その一方、低密度部においては、植え込まれた低密度のパイル糸により、軽量化を図ることができる。
【0014】
従って、本発明のタフテッドカーペットによれば、重厚で風合いや外観に優れた機能を発揮することができる一方、簡素で軽量な機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における高密度部と低密度部とを有するタフテッドカーペットを示す斜視図。
【図2】(a)は高密度部と低密度部とを有するタフテッドカーペットのパイル糸の構成を示す説明図、(b)はパイル糸が一様に植え込まれたタフテッドカーペットを示す説明図。
【図3】タフティングマシーンを用いたタフテッドカーペットの製造装置を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のタフテッドカーペットの実施形態を図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、タフテッドカーペット10は平面矩形状をなすシート状に形成され、基布11にパイル糸12が高密度に植え込まれた高密度部13と、パイル糸12が低密度に植え込まれた低密度部14に区画形成されている。図2(a)、(b)に示すように、このタフテッドカーペット10は、タフティングマシーンにより基布11にパイル糸12が植え込まれて形成されている。基布11はポリエステル等により形成されている。パイル糸12はナイロン(ポリアミド)、ポリエステル、ポリプロピレン等により、太さ900〜1500dtexに形成されている。
【0017】
このタフテッドカーペット10の前記高密度部13は目付量(パイル糸12の質量)が280〜700g/mの範囲に設定され、低密度部14は目付量が200〜500g/mの範囲に設定されることが好ましい。そして、高密度部13の目付量は低密度部14の目付量より多くなるように設定されている。
【0018】
高密度部13の目付量が280g/mを下回る場合には、得られるタフテッドカーペット10の風合いが悪くなるとともに、外観が低下し、カーペットとしての品質が低下する。その一方、高密度部13の目付量が700g/mを上回る場合には、植え込まれるパイル糸12にむらが生じたり、タフテッドカーペット10の生産性が低下したりして好ましくない。低密度部14の目付量が200g/mを下回る場合には、パイル糸12の植え込み量が不足し、タフテッドカーペット10としての品位を保てなくなって好ましくない。一方、低密度部14の目付量が500g/mを上回る場合には、目付量が多くなり過ぎて低密度部14としての意義が薄れてしまう。
【0019】
また、図2(a)に示すように、1インチ間のパイル糸12の打ち込み本数を表すステッチ(ST)は、高密度部13におけるステッチ(ST1)が低密度部14におけるステッチ(ST2)よりも大きくなるように設定される。すなわち、高密度部13はステッチが8.0〜17.0の範囲に設定され、低密度部14はステッチが6.0〜12.0の範囲に設定されることが好ましい。そして、高密度部13のステッチは低密度部14のステッチより大きくなるように設定されている。
【0020】
高密度部13のステッチが8.0より小さい場合、高密度部13としての効果が得られず、タフテッドカーペット10の風合いの低下や外観の低下を招く。その一方、高密度部13はステッチが17.0より大きい場合、パイル糸12の植え込みにむらが生じたり、タフテッドカーペット10の生産性が低下したりして好ましくない。低密度部14のステッチが6.0より小さい場合、ステッチが小さくなり過ぎて、タフテッドカーペット10の品位が維持できなくなって好ましくない。一方、低密度部14のステッチが12.0より大きい場合、ステッチが大きくなり過ぎて低密度部14としての意義が失われる結果を招く。
【0021】
前記パイル糸12の長さ(PH)は、タフテッドカーペット10の用途や目的に応じて適宜設定される。また、タフテッドカーペット10の横方向におけるパイル糸12の密度を表すゲージ(G)は、タフティングマシーンの機台により固定であり、通常は変更しない。なお、タフテッドカーペット10の裏面側には、図示しない第2基布、フェルト、フィルムなどが必要に応じて接合される。
【0022】
前記高密度部13の目付量と低密度部14の目付量との差は、30〜250g/mの範囲に設定されることが好ましい。この目付量の差が30g/m未満のときには、目付量の差が小さく、タフテッドカーペット10に高密度部13と低密度部14とを設ける意味が薄れるとともに、十分な軽量化を図ることもできなくなる。その一方、目付量の差が250g/mを超えるときには、目付量の差が大きくなり過ぎて、高密度部13ではパイル糸12が過剰になり、低密度部14ではパイル糸12が不足してタフテッドカーペット10の品質低下を来たすおそれがある。
【0023】
上記のように構成されたタフテッドカーペット10の製造装置及び製造方法について説明する。
図3に示すように、タフテッドカーペット10の製造装置は、基布11にパイル糸12を植え込むタフティングマシーン15と、基布11が巻回された基布用ローラ16と、パイル糸(原糸)を供給するパイル糸供給部(クリール)17と、複数のガイドローラ18と、タフテッドカーペット10を巻き取る巻取ローラ19とより構成されている。そして、タフティングマシーン15には、基布用ローラ16から基布11が供給されるとともに、パイル糸供給部17からパイル糸12が供給される。タフティングマシーン15では、ニードルで基布11に対してパイル糸12がステッチ方向及びゲージ方向に打ち込まれる。
【0024】
タフテッドカーペット10の高密度部13は、タフティングマシーン15における基布11の速度が低密度部14を形成する場合の基布11の速度よりも遅くすることにより形成される。すなわち、ニードルによるパイル糸12の打ち込み速度が一定で、基布11の供給速度が遅くなることにより、パイル糸12の打ち込み量が増え、高密度部13が形成される。
【0025】
次に、上記のように構成されたタフテッドカーペット10の作用について説明する。
さて、図3に示すように、高密度部13と低密度部14を有するタフテッドカーペット10を製造する場合には、タフティングマシーン15において、基布用ローラ16から供給される基布11の供給速度が、低密度部14を形成する場合に比べて高密度部13を形成する場合に遅くなるように途中で変更されて稼動される。すなわち、タフティングマシーン15で低密度部14を形成し、その途中から基布11の供給速度を遅くなるように変更し、パイル糸12の打ち込みを継続することにより、低密度部14に続いて高密度部13が形成されたタフテッドカーペット10が製造される。
【0026】
このようにして得られたタフテッドカーペット10では、基布11にパイル糸12が高密度に植え込まれた高密度部13と、パイル糸12が低密度に植え込まれた低密度部14とが区画形成されている。そのため、高密度部13においては、高密度に植え込まれたパイル糸12により、重厚で風合いが良く、良好な外観が発現される。その一方、低密度部14においては、低密度に植え込まれたパイル糸12により、軽量で簡素な機能が発現される。従って、このタフテッドカーペット10を自動車のフロアカーペット等として用いることができ、その場合見える部分に高密度部13を配置し、隠れた部分に低密度部14を配置して使用することができる。
【0027】
具体的には、下記の表1に示すように、実施形態1〜3として、ゲージ(G)を1/10(1インチの間に10本のパイル糸12が存在する)とし、高密度部13のステッチ(ST1)と低密度部14のステッチ(ST2)、パイル糸12の高さ(PH)、目付量を変化させ、高密度部13と低密度部14とを有するタフテッドカーペット10を製造した。その結果、高密度部13ではパイル糸12の高密度化によって優れた風合いや良好な外観を発現することができ、低密度部14ではパイル糸12の低密度化によって簡素で軽量化を図ることができた。
【0028】
【表1】

以上の実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)本実施形態のタフテッドカーペット10では、高密度部13と低密度部14とを備えている。このため、高密度部13においては、植え込まれた高密度のパイル糸12により優れた風合いや良好な外観を発現することができる。その一方、低密度部14においては、植え込まれた低密度のパイル糸12により軽量化を図ることができる。
【0029】
従って、本実施形態のタフテッドカーペット10によれば、重厚で風合いや外観に優れ、高級感を与える機能を発揮することができる一方、簡素で軽量な機能を発揮することができる。
(2)高密度部13は目付量が280〜700g/mの範囲であり、低密度部14は目付量が200〜500g/mの範囲であるとともに、高密度部13の目付量が低密度部14の目付量より多くなるように設定されている。このため、高密度部13と低密度部14における目付量の差を十分に設けることができ、高密度部13と低密度部14に基づく前記効果を良好に発揮することができる。
(3)高密度部13はステッチが8.0〜17.0の範囲であり、低密度部14はステッチが6.0〜12.0の範囲であるとともに、高密度部13のステッチが低密度部14のステッチより大きくなるように設定されている。従って、高密度部13及び低密度部14におけるステッチがそれぞれ適切であり、高密度部13及び低密度部14の効果を発揮できるとともに、基布11に対するパイル糸12の植え込みを円滑に行うことができる。
(4)高密度部13の目付量と低密度部14の目付量との差は、30〜250g/mの範囲に設定される。そのため、高密度部13と低密度部14との目付量の差が明瞭となり、高密度部13と低密度部14の効果を有効に発揮することができる。
(5)高密度部13は、タフティングマシーン15における基布11の速度が低密度部14を形成する場合よりも遅くすることにより形成されている。従って、基布11の供給速度を変更するだけで簡単に高密度部13を形成することができる。
【0030】
なお、前記各実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 1枚のタフテッドカーペット10において、高密度部13と低密度部14を複数部位に形成することができ、その場合高密度部13と低密度部14の大きさを目的に応じて適宜変更することができる。
【0031】
・ 前記高密度部13及び低密度部14の目付量やステッチは、パイル糸12の太さや長さに応じて適宜設定することができる。
・ 前記高密度部13と低密度部14との間に、高密度部13のパイル糸12の密度と低密度部14のパイル糸12の密度との間の密度を有する中間密度部を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10…タフテッドカーペット、11…基布、12…パイル糸、13…高密度部、14…低密度部、15…タフティングマシーン、ST1…高密度部のステッチ、ST2…低密度部のステッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイル糸が植え込まれて形成されるとともに、前記パイル糸が高密度に植え込まれた高密度部と、パイル糸が低密度に植え込まれた低密度部とを備えていることを特徴とするタフテッドカーペット。
【請求項2】
前記高密度部は目付量が280〜700g/mの範囲であり、低密度部は目付量が200〜500g/mの範囲であるとともに、高密度部の目付量が低密度部の目付量より多くなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のタフテッドカーペット。
【請求項3】
前記高密度部はステッチが8.0〜17.0の範囲であり、低密度部はステッチが6.0〜12.0の範囲であるとともに、高密度部のステッチが低密度部のステッチより大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタフテッドカーペット。
【請求項4】
前記高密度部の目付量と低密度部の目付量との差は、30〜250g/mの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタフテッドカーペット。
【請求項5】
前記高密度部は、タフティングマシーンにおける基布の速度が低密度部を形成する場合よりも遅くすることにより形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のタフテッドカーペット。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−24457(P2012−24457A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168086(P2010−168086)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(390008394)長谷虎紡績株式会社 (3)
【Fターム(参考)】