説明

タワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置

【課題】加圧ロールによる加工に際して当該加圧ロールに生ずるタワミを抑制し、品質の良好な加工品が得られるようにする。
【解決手段】本装置1は、上下フレーム4,5に回動自在にそれぞれ取り付けられた一対の加圧ロール2,3で、且つ、このうちの加圧ロール2が上フレーム4の上下動に従って上下方向に移動可能にされてこれら加圧ロール2,3の間に被加圧部材Fを通して当該被加圧部材Fを挟圧加工するもので、タワミ防止用ロール受11,12は、上下フレーム4,5に対し移動可能に取り付けられた半円形状の溝をなす内周面を有するロール受で、この内周面の最底部には当該ロール受11,12の長手方向に沿って略等間隔に空気噴出孔(流体噴出手段)が複数個設けられ、これら空気噴出孔を通して加圧ロール2,3との隙間に高圧空気を噴出し、かかる隙間に噴出された高圧空気は、この隙間の開口口から外部に排気される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料の金属や、ゴム、樹脂等を圧延加工したり、曲げ加工したり、更には、紙や布などの艶出しのためなどにも用いることができるロール加圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、原材料の金属を延ばしてフィルム状の金属箔などを製造したり、紙や布などの艶出し加圧したり、或いは鋼材を曲げ加工などしたりするのに適したロール加圧装置(例えば、特許文献1)は存在する。
【0003】
この装置100は、図6に示すように、その回転軸101aが軸受103で支持された上加圧ロール101とその回転軸102aが軸受104で支持された下加圧ロール102とから構成され、この例では上加圧ロール101が油圧シリンダ105によって上下方向(当該上加圧ロール101の回転軸101aに対し垂直な方向)に移動可能なように、換言すれば、上加圧ロール101と下加圧ロール102との間で生ずる圧力の調整が可能なように構成され、被加圧部材106を加圧ロール101,102の間に通して当該被加圧部材106を加圧することにより、金属箔などを製造したり、或いは、紙や布などの艶出しをしたりすることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−216294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の装置では、油圧シリンダからの圧力が加圧ロールの両端を介して当該加圧ロールに加わる構造のために、例えば図6にも示すような、加圧ロールの軸方向に垂直な方向にタワミが生じ易いという問題がある。このようなタワミが生じたまま加工を続けた場合、当然のことながら加工品に厚みのバラツキ、例えば中央部が厚く両端部が薄くなるバラツキが生じて所望の品質を得ることが困難となってしまう。
【0006】
また、タワミを抑制する手法としては、例えば加圧ロールにクラウニングを施すとか、加圧ロールを交叉するとかという方法があるが、加圧ロールの軸方向における任意の位置での加圧力を適宜にすることが困難であり、被加圧部材の横幅が種々に異なる場合などにフレキシブルに対応することが困難であるという問題がある。更に、特許文献1に開示の磁気利用のロール加圧装置も考えられるが、装置のコストが高く、また、磁気利用のために磁気効果が生じて(例えば発熱とか磁気抵抗など)意図する加圧制御が得られないという問題がある。
【0007】
解決しようとする課題は、上述した問題を解決して、加圧ロールによる加工に際して当該加圧ロールに生ずるタワミを抑制し、品質の良好な加工品が得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るタワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置は、上下フレームの軸受に、回転軸によって回動自在にそれぞれ取り付けられた一対の加圧ロールで、且つ、このうちの少なくとも一方が前記上下フレームの上下動に従って上下方向に移動可能なこれら加圧ロールの間に被加圧部材を通して当該被加圧部材を挟圧加工するロール加圧装置であって、その内周面が、前記加圧ロールが前記被加圧部材を挟圧しているときの当該挟圧部位とはこの加圧ロールに対し反対側に位置する外周部位に半円形状又は円弧形状をなし、且つ、この外周部位に適宜な隙間を隔てて対峙してなる一対のタワミ防止用ロール受を前記上下フレームにそれぞれ移動可能に取り付け、このタワミ防止用ロール受には前記内周面の多数の孔から前記隙間に面状に、例えば空気や水などの流体を噴出する流体噴出手段が設けられているものであり、本装置によれば、加圧ロールの軸方向に沿う適宜な位置、例えば中央位置で当該加圧ロールに適宜な隙間を隔てて対峙する態様でタワミ防止用ロール受を配する一方、このタワミ防止用ロール受に設けられた流体噴出手段から流体圧を作用させて当該隙間に生ずる圧力、即ち、加圧ロールに作用する圧力(ひいては被加圧部材に作用する圧力)が適宜な圧力になるようにする構成を採っており、従来のように加圧ロールに作用する圧力が当該加圧ロールの両端を介して加わる構造を採っておらず、加圧ロールの軸方向における任意の位置での圧力を適宜にすることが可能になるために、加圧ロールによる圧延などの挟圧加工に際してむらの無い均一な挟圧力を得ることができ、品質の良好な加工品が得られる。
【0009】
ところで、タワミ防止用ロール受は、上フレームや下フレームに対して移動せず、固定して取り付けられたものであってもよい。
【0010】
また、流体噴出手段は、タワミ防止用ロール受を金属製、とりわけ軟質の金属製、若しくはゴムやウレタン製などのものとして、その内周面に多数の噴出孔を設けたものが考えられ(その内周面にゴムやウレタンなどを薄く積層したようなロール受として、当該ロール受の内周面に多数の噴出孔を設けたものであってもよい)、或いは、タワミ防止用ロール受を、通気性のある多孔質材、例えば多孔質金属やセラミックス、樹脂などで構成するもの、更には、例えば多数の薄板などを積層して薄板間に形成される隙間を噴出孔とするものなどが考えられる。ここで、タワミ防止用ロール受を軟質の金属製、若しくはゴムやウレタン製などにしたり、タワミ防止用ロール受の内周面にゴムやウレタンなどを薄く積層したりする理由は、何らかの原因で加圧ロールと接触して当該加圧ロールを損傷してしまうことがあるので、この損傷を防止できるようにするためである。
【0011】
尚、本装置は、主としてフィルム状の製品を作るために最適な装置であるが、例えば流体噴出手段からの流体圧を油圧などとした場合には、一般的な金属の圧延機にも流用することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係るタワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置において、前記流体噴出手段は、多孔質部材から構成されるものである。
【0013】
なお、前記タワミ防止用ロール受が、複数個が前記各フレームに前記加圧ロールの軸方向に沿ってそれぞれ独立に移動可能に取り付けられるものであれば、加圧ロールの軸方向における任意の位置での上記隙間の圧力を適宜にすることができることはもちろん、被加圧部材の横幅が種々に異なる場合に、一台の本装置で対応することができるので、極めて利便性がある。
【0014】
あるいは、前記タワミ防止用ロール受が、その軸方向の長さが前記加圧ロールの軸方向の全長と略等しくなるようにしたものであれば、とりわけ、被加圧部材の横幅が当該ロール受の軸方向の長さと略等しい場合に、上記隙間の圧力を加圧ロールの軸方向に渡って適宜なものにし易くできる。
【0015】
あるいは、前記タワミ防止用ロール受が、前記流体を外部に吸引するための流体吸引溝が第1流体吸引溝と第2流体吸引溝とで構成され、前記第1流体吸引溝が、当該タワミ防止用ロール受の軸方向に沿って、且つ、この軸方向に沿う前記隙間の開口口に臨む近傍の前記内周面に通ずる態様で設けられ、また、前記第2流体吸引溝が、前記軸方向に断面視略凹形状をなし、当該タワミ防止用ロール受の軸方向の両端部に臨む近傍の内周面に沿って、且つ、前記第1流体吸引溝が前記内周面に通ずるところで交わる態様で設けられるものであれば、これにより、本装置の周辺に流体噴出手段からの噴出流体が隙間の開口口から漏出するのを防止することができ、また、被加圧部材などの振動を防止できる効果もある。
【0016】
あるいは、前記タワミ防止用ロール受が、前記第1流体吸引溝が設けられた位置から前記開口口とは反対側のごく狭い範囲に渡る前記内周面にラビリンス溝が設けられ、このラビリンス溝に通ずる前記隙間の部分が前記流体の一時溜置き可能な空間として形成されるものであれば、本装置は、とりわけ、流体が水や油などの液体の場合に有用で、例えば本装置を高圧油仕様の圧延機などとして用いても、かかる油の外部への漏れを効果的に抑制することができる。
【0017】
あるいは、前記タワミ防止用ロール受が、前記加圧ロールの前記被加圧部材への圧力を調整すべく前記隙間の圧力を測定可能にするもので、被加圧部材の挟圧加工に際して、予め圧力調整されてタワミが抑制されている状態の下で挟圧加工が継続されるときに、上記隙間の測定圧力が一定に維持されるように流体噴出手段からの噴出圧を調整するようにして、むらの無い均一な挟圧力で品質の良好な加工品を得ることができるようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置は、加圧ロールの軸方向に沿う適宜な位置で当該加圧ロールに適宜な隙間を隔てて対峙する態様でタワミ防止用ロール受を配する一方、このタワミ防止用ロール受に設けられた流体噴出手段から流体圧を作用させて当該隙間に生ずる圧力、即ち、加圧ロールに作用する圧力(ひいては被加圧部材に作用する圧力)を適宜な圧力にするので、加圧ロールによる圧延などの挟圧加工や曲げ加工などに際してむらの無い均一な挟圧力を得ることができ、品質の良好な加工品が得られる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るロール加圧装置の構成図である。
【図2】図1の装置のタワミ防止用ロール受の斜視構成図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係るロール加圧装置の構成図である。
【図4】図1等の装置の、流体漏出の防止が図られたタワミ防止用ロール受の構成図である。
【図5】図4の装置の、流体漏出の防止が図られたタワミ防止用ロール受の断面構成図である。
【図6】従来のロール加圧装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施の形態に係るタワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置を図1,2を参照して説明する。
【0021】
本装置1は、図1に示すように、外形が同一の上加圧ロール2と下加圧ロール3の間に被加圧部材Fを通して挟圧加工し、本実施の形態ではフィルム状物の金属箔を製造するロール加圧装置であり、これらのうち上加圧ロール2は、略U字状をなす上フレーム4の両端に軸受6を介して回動自在に取り付けられ、また、下加圧ロール3は、下フレーム5の両端に軸受7を介して回動自在に取り付けられている。そして、本実施の形態では、下フレーム5が基盤8に固定される一方、上フレーム4は、当該上フレーム4の中央部において加圧シリンダ9のシリンダロッド9aに取り付けられ、この加圧シリンダ9は、基盤8に立設された本体フレーム10に固定されている。したがって、本実施の形態では、上加圧ロール2が、加圧シリンダ9の作動による上フレーム4の上下動(基盤8面に対し垂直な方向への動き)に従って上下方向に移動可能に取り付けられることになる。尚、この上フレーム4の上下動は、図示しないガイドレール又はガイドポール等によって精度良く案内される。
【0022】
但し、図1(A)は、本装置1の正面図であり、同図(B),(C)は本装置1の側面図で、このうち同図(B)はフィルム状物Fが挟圧されているときの状態図、同図(C)は上フレーム4が上方向に移動したときの状態図である。
【0023】
そして、本装置1では、後に詳述する一対のタワミ防止用ロール受11,12のうちタワミ防止用ロール受11が、図1では上フレーム4の中央部にて上加圧ロール2に対峙する態様をなし、具体的には、タワミ防止用ロール受11の内周面(図示せず)を、本実施の形態では、半円形状に形成し、この内周面が、加圧ロール2,3が被加圧部材Fを挟圧しているときの当該挟圧部位とは加圧ロール2の回転軸に対し反対側に位置する外周部位に適宜な隙間を隔てて対峙する態様をなしているところを示し、また、タワミ防止用ロール受12が、図1では下フレーム5の中央部にて下加圧ロール3に対峙する態様をなし、具体的には、タワミ防止用ロール受12の内周面15(図2(A)参照)を、本実施の形態では、半円形状に形成し、この内周面15が、加圧ロール2,3が被加圧部材Fを挟圧しているときの当該挟圧部位とは加圧ロール3の回転軸に対し反対側に位置する外周部位に適宜な隙間を隔てて対峙する態様をなしているところを示している。ところで、本実施の形態では、タワミ防止用ロール受11が上フレーム4の上下動に従って上下方向に移動可能に取り付けられるとともに、タワミ防止用ロール受11,12は、その軸方向の長さが、加圧ロール2,3の軸方向の全長の略1/4ほどの寸長を有し、フレーム4,5のそれぞれのガイドレール(図示せず)に移動可能に取り付けられて上加圧ロール2(及び下加圧ロール3)の軸方向に移動することができるように取り付けられるが、場合によっては、加圧ロール2,3の軸方向の全長と略等しくして対峙させるようにしたものであってもよいことはもちろんである(この場合には、タワミ防止用ロール受11,12を移動可能に取り付ける必要はない)。
【0024】
尚、タワミ防止用ロール受11と12との上記軸方向への移動は、必ずしも同時にすることを要せず、それぞれ独立にするようにしてもよい。
【0025】
このタワミ防止用ロール受11,12の構造について図2を参照して説明するが、両者は同一であるので、タワミ防止用ロール受12についてのみ説明する。但し、図2(A)は金属製材のタワミ防止用ロール受12の構造図であり、図2(B)は流体噴出手段を多孔質材としたときのタワミ防止用ロール受20の構造図である。
【0026】
まず、図2(A)のタワミ防止用ロール受12について説明する。
【0027】
タワミ防止用ロール受12は、上述した半円形状の溝をなす内周面15を有する矩形状ロール受で、かかる内周面15の最底部に当該ロール受12の長手方向(下加圧ロール3に対峙したときの当該下加圧ロール3の軸方向)に沿って略等間隔に空気噴出孔(流体噴出手段)15aが3つ設けられ、また、この最底部から図2(A)では右方側の円弧部の略中央位置に上記噴出孔15aに並列して空気噴出孔(流体噴出手段)15bが3つ設けられ、これら空気噴出孔15a,15bは、このロール受12の一方端面右側下方に設けられた高圧空気給気口16に連通しており、更に、この最底部から図2(A)では左方側の円弧部の略中央位置に上記噴出孔15aや15bに並列して空気噴出孔(流体噴出手段)15cが3つ設けられ、これら空気噴出孔15cは、このロール受12の一方端面左側中央に設けられた高圧空気給気口17に連通しており、外部から高圧空気給気口16,17を介して供給される高圧空気がこれら空気噴出孔15a,15b,15cを通して上述した加圧ロール3との隙間に噴出し、かかる隙間に噴出された高圧空気は、この隙間の開口口(例えば図4(B)の61cなどを参照)から外部に排気されるようになっている。更にまた、この内周面15の最底部には上記隙間の圧力測定孔15dが1つ設けられ、この圧力測定孔15dはこのロール受12の一方端面下側中央に設けられた圧力測定口18に連通しており、上記隙間の圧力が測定可能になっている。これにより、測定した圧力に応じて空気噴出孔15a,15b,15cから噴出する空気圧を調整することができる。
【0028】
次に、図2(B)のタワミ防止用ロール受20について説明する。
【0029】
タワミ防止用ロール受20は、半円形状の溝をなす内周面21aを有する矩形状ロール受であることはタワミ防止用ロール受12と同一であるが、内周面21aを含む中央部が多孔質の部材21(この部材自体が流体噴出手段)で構成され、この多孔質部材21が当該多孔質部材21の前後面、左右面及び下面を、前後面保持板22a,22b、左右面保持板23a,23b及び下面保持板24で保持された矩形状ロール受であり、前後面保持板22a,22bには上記内周面21aに沿うように半円形状の溝が形成されている。尚、タワミ防止用ロール受20の、内周面21aが上方に開口するところの上面21bは、通気性の不要なところであり、したがって、例えば接着剤等で目潰し処理が施されている。
【0030】
また、前面保持板22aには、その半円形状溝の最底部の下方で、図2(B)ではいくらか右方寄りに高圧空気給気口25が設けられており、外部から高圧空気給気口25を介して供給される高圧空気が部材21の多数の微細小孔を通して上述した加圧ロール3との隙間に噴出するようになっている。そして、このようにして隙間に噴出された高圧空気は、この隙間の開口口(図示せず)から外部に排気されるようになる。更に、前面保持板22aの、高圧空気給気口25から左方にいくらか離隔したところに圧力測定口26が設けられ、この圧力測定口26は、この内周面21aの略最底部中央に設けられた1つの圧力測定口26は、この内周面21aの略最底部中央に設けられた1つの圧力測定孔21a1にパイプ等で連通しており、上記隙間の圧力が測定可能になっている。
【0031】
尚、符号27は、部材21を保持すべく前面保持板22aに取り付けられた固定ボルトである。
【0032】
次に、タワミ防止用ロール受11,12を備えたロール加圧装置1による挟圧加工動作について図1,2を参照して説明する。
【0033】
本装置1において、挟圧加工動作に際しては、図1(C)のように上方に移動していた上フレーム4を下方に移動させ、この上フレーム4の上加圧ロール2を下フレーム5の下加圧ロール3に近接、又は接近させて両ロール2,3が所定方向にそれぞれ回転する状態の下で、両ロール2,3の間に被加圧部材Fを通すとともに、タワミ防止用ロール受11,12の空気噴出孔15a,15b,15cから高圧空気を噴出させる(尚、高圧空気の噴出時期は、例えば下方に移動中に噴出させるようにしてもよい)。このとき、タワミ防止用ロール受11と上加圧ロール2との間及びタワミ防止用ロール受12と下加圧ロール3との間の隙間には、空気噴出孔15a,15b,15cからの噴出圧(噴出速度)に応じた加圧ロール2,3による背圧が生じ、噴出圧を大きくすると背圧が大きくなり、また、上フレーム4、換言すれば上加圧ロール2を僅かに下方に移動させると隙間が狭くなって背圧が大きくなる。そこで、適宜な状態のところで、圧力測定孔15dを通じて隙間の圧力、換言すれば、加圧ロール2,3の被加圧部材Fへの圧力を測定するとともに、このときの両ロール2,3のタワミ度合いを、例えば感圧紙などで確認してむらの無い均一な挟圧力が得られているか否かを判定する。タワミが抑制されて均一な挟圧力が得られている状態にあれば、この状態の下での上記隙間の測定圧力が一定に維持されるように空気噴出孔15a,15b,15cからの噴出圧を調整するような制御を行う。
【0034】
しかし、タワミが抑制されていなければ、圧力測定孔15dを通じて隙間の圧力を測定しつつ、タワミ度合いに応じて空気噴出孔15a,15b,15cの噴出圧を調整したり、或いは加圧ロール2を上下方向に微妙に移動させたりすることにより(この移動範囲は、隙間が最小となる数ミクロンから最大となる数十ミクロンほどであり、この範囲でタワミを抑制する圧力が加減される。)、タワミが抑制されて均一な挟圧力が得られる状態にする。また、場合によっては、タワミ防止用ロール受11,12を上加圧ロール2(及び下加圧ロール3)の軸方向に移動させることにより均一な挟圧力が得られる状態にする。その結果、均一な挟圧力が得られれば、上述したように、この状態の下で上記隙間の測定圧力が一定に維持されるように空気噴出孔15a,15b,15cからの噴出圧を調整するような制御を行う。
【0035】
ところで、本装置1において、軸受6,7については専ら加圧ロール2,3を支持する機能のみを持たせるようにしており、被加圧部材Fへの圧力はタワミ防止用ロール受11,12によって加わるようにされている。しかし、例えば上フレーム4、即ち、加圧ロール2を下方に移動させ過ぎたときになどに、加圧ロール2の両軸端に荷重が掛りかえって当該加圧ロール2にタワミが生じて、タワミ防止用ロール受11の、被加圧部材Fへの圧力が減少してしまうことがあるため、本装置1では、加圧ロール2を上記範囲を越えて下方に移動させることができないように制限が設けられ、加圧ロール2の両軸端に荷重が過度に掛らないようにしている。
【0036】
尚、上述した挟圧加工動作は、タワミ防止用ロール受11,12を備えたロール加圧装置1についてのものであったが、タワミ防止用ロール受20を備えたロール加圧装置についても装置1に準じた動作を行う。但し、タワミ防止用ロール受20が、その内周面21aを含む中央部が多孔質の部材21で構成されているため、高圧空気が部材21の多数の微細小孔を通して上記隙間に噴出される態様となる。したがって、高圧空気は、微細小孔を通る間に抵抗を受けて噴出速度が弱められ静圧状態になって隙間に充満する態様となるので、隙間の圧力分布が、タワミ防止用ロール受11,12を備えたロール加圧装置1と比較して、より均一になるという利点がある。
【0037】
本発明の第2実施の形態に係るタワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置を図3を参照して説明する。尚、図3中において、図1,2の構成要素と同一のものについては、同一番号を付しその説明を割愛する。
【0038】
本装置30は、外形が同一の2個(複数個)のタワミ防止用ロール受、即ち、一対のタワミ防止用ロール受31a,31b、及びもう一対のタワミ防止用ロール受32a,32bが備えられ、このうちのロール受31a,32aが上フレーム4のガイドレール(図示せず)に、また、ロール受31b,32bが下フレーム5のガイドレール(図示せず)にそれぞれ移動可能に取り付けられ、これらロール受31a,31b及び32a,32bが上加圧ロール2(及び下加圧ロール3)の軸方向にそれぞれ独立に移動することができるものであるが、タワミ防止用ロール受31a,31bやタワミ防止用ロール受32a,32bに設けられる流体噴出手段等は、本装置1のタワミ防止用ロール受11,12のそれと同一である(流体噴出手段が多孔質材で構成される場合には、タワミ防止用ロール受20のそれと同一である)ので、その構造や動作説明は割愛する。かかる本装置30によれば、上加圧ロール2(及び下加圧ロール3)の軸方向における任意の位置で上記隙間の圧力を適宜にすることができ、しかも、被加圧部材Fの横幅が種々に異なる場合にも、一台の本装置30で対応することができるので、極めて利便性が良い。
【0039】
尚、本装置30においては、例えばタワミ防止用ロール受31aと31bとの上記軸方向への移動をそれぞれ独立にするようにしてもよいが、同時にする方が煩雑でなく制御し易いことは言うまでもない。また、本装置30のように二対のタワミ防止用ロール受を備えたものに限らず、場合によっては、三対以上のタワミ防止用ロール受を備えた装置にしてもよい。
【0040】
上述した装置1〜2においては、タワミ防止用ロール受の内周面と加圧ロールの外周面との間に形成される隙間に空気や油などの流体が噴出される構成を採っているので、この噴出流体が隙間の開口口から装置周辺に漏出するなどする。そこで、この対策としてタワミ防止用ロール受には図4,5に示すような流体吸引溝を設けることが好ましい。尚、図4(A)は流体吸引溝の斜視図、同図(B)は図4(A)の横断面図であり、図4,5中において、図1等に示す構成要素と同一のものについては、同一番号を付しその説明を割愛する。
【0041】
まず、図4のタワミ防止用ロール受61について説明する。
【0042】
タワミ防止用ロール受61は、半円形状の溝をなす内周面63を有する矩形状ロール受であることは上記タワミ防止用ロール受20と同様であるが、本実施の形態では、この内周面63のうちの内周面63a(タワミ防止用ロール受61の軸方向に沿う隙間の開口口61c近傍のごく狭い範囲に渡る内周面63bを除き、且つ、当該タワミ防止用ロール受61の軸方向の両端部61a,61b近傍のごく狭い範囲に渡る内周面63cを除くところの内周面)を形成する当該タワミ防止用ロール受61の中央部が多孔質の部材62(上記部材21と同様な部材で、これ自体が流体噴出手段)で構成され、この部材62をケーシング64で保持した矩形状の外観形態をなしている。そして、このタワミ防止用ロール受61における、流体(この場合、空気のような気体、又は水や油のような液体)を外部に吸引するための流体吸引溝65は、第1流体吸引溝66と第2流体吸引溝67とで構成され、第1流体吸引溝66については、本実施の形態では、当該タワミ防止用ロール受61の軸方向に沿う隙間の開口口61cに臨む近傍の内周面63bに通じる細短い通路66aと、この通路66aに連通する断面視円形状の円溝孔66bとで構成されるものを当該タワミ防止用ロール受61の軸方向に沿う態様で設け、また、第2流体吸引溝67については、上記軸方向の断面視略凹形状をなし、当該タワミ防止用ロール受61の両端部61a,61bに臨む近傍の内周面63cに沿う態様で、且つ、第1流体吸引溝が内周面に通ずるところ、本実施の形態では、第1流体吸引溝66の通路66aが内周面63bに通ずるところで交わる態様で設けている。尚、第1流体吸引溝66の円溝孔66bは、タワミ防止用ロール受61の端部61aにおいて開口しているが、端部61bにおいては開口していない。
【0043】
このようなタワミ防止用ロール受61によれば、上記隙間を流れる流体がこの隙間の開口口61c(両端部61a,61bのところに形成される開口口も含む)から漏出する前に捕集できるので、装置周辺への漏出を防止でき、また、被加圧部材Fなどの振動を防止できる。
【0044】
次に、図5のタワミ防止用ロール受71は、タワミ防止用ロール受61の第1流体吸引溝66に後述のラビリンス溝74及び空間75を連ねたような構造とし、流体が、特に水や油などの液体を高圧で用いる場合に効果的になるようにしたものである。即ち、タワミ防止用ロール受71においては、流体吸引溝72の第1流体吸引溝73及び第2流体吸引溝(特に図示しないが、第2流体吸引溝67と同一構造をなす)のうちの第1流体吸引溝73について、タワミ防止用ロール受71の軸方向に沿う隙間の開口口76に臨む近傍の内周面71aに通じる細短い通路73aと、この通路73aに連通する断面視円形状の円溝孔73bとで構成されるものを当該タワミ防止用ロール受71の軸方向に沿う態様で設け、更に、この第1流体吸引溝73が設けられた位置から開口口76とは反対側のごく狭い範囲に渡る内周面71aに凹凸状の所謂ラビリンス溝74を設け、このラビリンス溝74に通ずる隙間、換言すれば、両側のラビリンス溝74によって挟まれた隙間の部分を液体の一時溜置き可能な、本実施の形態では略V字状の空間75として形成してなるものである。尚、第1流体吸引溝73の円溝孔73bは、タワミ防止用ロール受71の両端部のうちの一方の端部において開口している。
【0045】
このような構成を採れば、隙間を流れる水や油のような液体が空間75に溜め置かれ隙間の開口口76から漏出し難くなるので、装置周辺への漏出をほぼ確実に防止でき、加えて、空間75内の圧力を高めることができるので、性能向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本タワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置は、加圧ロールによる圧延などの挟圧加工や曲げ加工などに際して生ずる加圧ロールのタワミを、タワミ防止用ロール受に設けられた流体噴出手段より噴出される気体及び液体の作動流体によって抑制することができるようにした点で利用価値が極めて高い。
【符号の説明】
【0047】
1,30,40 ロール加圧装置
2 上加圧ロール
3 下加圧ロール
4 上フレーム
5 下フレーム
11,12,20 タワミ防止用ロール受
15,21a 内周面
15a,15b 空気噴出孔(流体噴出手段)
21 部材(流体噴出手段)
31a,31b,32a,32b タワミ防止用ロール受
61,71 タワミ防止用ロール受
65,72 流体吸引溝
66,73 第1流体吸引溝
67 第2流体吸引溝
74 ラビリンス溝空間
75 空間
F 被加圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下フレームの軸受に、回転軸によって回転自在にそれぞれ取り付けられた一対の加圧ロールで、且つ、このうちの少なくとも一方が前記上下フレームの上下動に従って上下方向に移動可能にされてなるこれら加圧ロールの間に被加圧部材を通して当該被加圧部材を挟圧加工するロール加圧装置であって、その内周面が、前記加圧ロールが前記被加圧部材を挟圧しているときの当該挟圧部材とはこの加圧ロールに対し反対側に位置する外周部位に半円形状又は円弧形状をなし、且つ、この外周部位に適宜な隙間を隔てて対峙してなる一対のタワミ防止用ロール受を前記上下フレームにそれぞれ移動可能に取り付け、このタワミ防止用ロール受には前記内周面の多数の孔から前記隙間に面状に流体を噴出する流体噴出手段が設けられてなることを特徴とするタワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置。
【請求項2】
前記流体噴出手段は、多孔質部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載のタワミ防止用ロール受を備えたロール加圧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−49093(P2013−49093A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259487(P2012−259487)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2009−34672(P2009−34672)の分割
【原出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(508318395)
【Fターム(参考)】