説明

タンクノズル付バルブ交換方法及び装置

【課題】 装置構成をシンプルにし、手順を簡便にする。
【解決手段】 ノズル1に分岐管11より窒素ガス20を供給しながら、ノズル1のフランジ1bと元弁2のフランジ2aとを連結している6本のボルト17のうち、180度対向位置の2本のボルト17を取り外す。次に、残る4本のボルト17を徐々に緩めながら、ノズル1のフランジ1bと元弁2のフランジ2aの間に形成される隙間に、平板部13と楔部14からなるノズル閉止治具12を、楔部14の尖端側より押し込む。先に2本のボルト17を取り外したボルト孔16を利用して、ノズル1のフランジ1bにノズル閉止治具12の平板部13を取付ボルト15により取り付けて、ノズル1の開口1aを閉止させた後、残る4本のボルト17を取り外してノズル1より元弁2を分離させる。又、元弁2の復旧は逆の手順で行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGタンク等の圧力流体の貯蔵タンクに装着されたノズルの元弁を、貯蔵タンクの稼動状態の下で回収した後、復旧するために用いるタンクノズル付バルブ交換方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地上式のLNGタンクには、定期的な開放点検が義務付けられていないため、LNGタンクの本体に装着されているノズルの元弁を交換する際には、稼働中のLNGタンクについて、ノズル元弁の回収と復旧工事を行うことが求められることがある。
【0003】
この種の稼動タンクのノズル元弁の回収及び復旧を行うための手法としては、従来、図13(イ)(ロ)に概要を示す如きものが提案されている。
【0004】
かかる稼動タンクのノズル元弁の回収・復旧工法は、先ず、ノズル1の元弁2を閉じた後、ノズル1と元弁2とを連結している図示しない連結ボルトを仮締治具3と交換して仮締結しておく。
【0005】
次に、図13(イ)に示すように、ノズルチャンバー4を上記ノズル1と元弁2を包囲するように装着し、この際、該ノズルチャンバー4に貫通させた元弁保持治具5により元弁2を保持させると共に、ノズルチャンバー4に貫通させた密封栓誘導治具6に拡径可能な密封栓7を装着させておくようにする。
【0006】
次いで、給気弁8より上記ノズルチャンバー4内に不活性ガスを注入すると共に、排気弁9より内部ガスを抜き出して、ノズルチャンバー4内を不活性ガスで置換する。
【0007】
その後、上記仮締治具3をノズルチャンバー4に気密に貫通された解離治具10によって解離し、更に、給気弁8からノズルチャンバー4内に不活性ガスを給気しながら元弁保持治具5により元弁2をノズル1から離脱させる。
【0008】
上記のようにしてノズル1より元弁2を取り外した後は、図13(ロ)に示す如く、上記密封栓7を密封栓誘導治具6により誘導してノズル1の開口へ嵌合させた後、拡径させてノズル1の開口を密閉する。
【0009】
しかる後、上記給気弁8よりノズルチャンバー4内へ空気を供給しつつ、内部ガスを排気弁9より排出して、該ノズルチャンバー4内を空気で置換してから、上記ノズルチャンバー4を取り外して元弁2を回収するようにしてある。
【0010】
上記既設の元弁2を回収した後、修理又は新たに交換された元弁2をノズル1へ装着する場合は、上記した手順の逆の手順を実施することで、元弁2を復旧できるとされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2004−11678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記特許文献1に記載された稼動タンクのノズル元弁の回収・復旧工法は、タンクのノズル1に装着されている元弁2を、該タンクが稼動状態の下で取り外すことができて、非常に有用であるが、装置が大掛かりとなり、又、手順が複雑になっているというのが実状である。
【0013】
そこで、本発明は、装置構成をシンプルなものとすることができると共に、簡便な手順によって稼動タンクのノズルに装着されている元弁の回収と復旧を行うことで該元弁の交換を行うことができるようにするためのタンクノズル付バルブ交換方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、稼動タンクのノズルに装着された元弁を閉じた後、不活性ガスの存在下で上記ノズルのフランジに上記元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外し、次に、残る2本のボルトを緩めることにより上記ノズルのフランジと元弁のフランジとの間に形成される隙間に、長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし且つ上記ノズルの開口の直径よりも広い幅寸法を有して裏面側にガスケットを取り付けてなるノズル閉止治具を、ガスケットがノズルのフランジに接するようにして楔部の尖端側より上記2本のボルトの間を通すように押し込んで、平板部で上記ノズルの開口を閉止させ、次いで、該ノズル閉止治具をノズルのフランジに固定した後、上記ノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトをすべて取り外して、上記元弁をノズルより分離して回収し、しかる後、上記と逆の手順でノズルに元弁を復旧するようにするタンクノズル付バルブ交換方法とする。
【0015】
又、請求項2に対応して、稼動タンクのノズルに装着された元弁の配管取付側フランジに装着した不活性ガス供給治具より元弁を通してノズルへ不活性ガスを供給した状態にて、ノズルのフランジに上記元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外し、次に、残る2本のボルトを緩めることにより上記ノズルのフランジと元弁のフランジとの間に形成される隙間に、長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし該楔部の長手方向にノズルの開口の直径よりも狭い間隔で配した貫通孔を備え且つ上記ノズルの開口の直径よりも広い幅寸法を有して裏面側にガスケットを取り付けてなるノズル閉止治具を、ガスケットがノズルのフランジに接するようにして楔部の尖端側より上記2本のボルトの間を通すように押し込んで、平板部で上記ノズルの開口を閉止させ、次いで、該ノズル閉止治具をノズルのフランジに固定した後、上記ノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトをすべて取り外して、上記元弁をノズルより分離して回収し、しかる後、上記と逆の手順でノズルに元弁を復旧するようにするタンクノズル付バルブ交換方法とする。
【0016】
更に、請求項3に対応して、ノズルのフランジに元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外したときに残った2本のボルトを緩めることにより上記両フランジ間に形成される隙間に挿入して上記2本のボルトの間を通すことができるように、細長い矩形状として長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし、且つ元弁の回収及び復旧工事対象となるノズルの開口の直径よりも広い所要の幅寸法とし、更に、平板部の所要個所にねじ穴を備えて、裏面側にガスケットが取り付けてあるノズル閉止治具と、上記ノズルのフランジに設けてあるボルト孔に通して上記ノズル閉止治具の平板部のねじ穴に着脱可能にねじ止めすることにより、上記ノズル閉止治具の平板部をノズルのフランジに固定するための取付ボルトとを備えてなる構成を有するタンクノズル付バルブ交換装置とする。
【0017】
更に又、請求項4に対応して、ノズルのフランジに元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外したときに残った2本のボルトを緩めることにより上記両フランジ間に形成される隙間に挿入して上記2本のボルトの間を通すことができるように、細長い矩形状として長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし、該楔部の長手方向にノズルの開口の直径よりも狭い間隔で配した貫通孔を備え、且つ元弁の回収及び復旧工事対象となるノズルの開口の直径よりも広い所要の幅寸法とし、更に、平板部の所要個所にねじ穴を備えて、裏面側にガスケットが取り付けてあるノズル閉止治具と、上記ノズルのフランジに設けてあるボルト孔に通して上記ノズル閉止治具の平板部のねじ穴に着脱可能にねじ止めすることにより、上記ノズル閉止治具の平板部をノズルのフランジに固定するための取付ボルトと、元弁の配管取付側フランジに装着して元弁を通してノズルへ不活性ガスを供給するための不活性ガス供給治具とを備えてなる構成を有するタンクノズル付バルブ交換装置とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)稼動タンクのノズルに装着された元弁を閉じた後、不活性ガスの存在下で上記ノズルのフランジに上記元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外し、次に、残る2本のボルトを緩めることにより上記ノズルのフランジと元弁のフランジとの間に形成される隙間に、長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし且つ上記ノズルの開口の直径よりも広い幅寸法を有して裏面側にガスケットを取り付けてなるノズル閉止治具を、ガスケットがノズルのフランジに接するようにして楔部の尖端側より上記2本のボルトの間を通すように押し込んで、平板部で上記ノズルの開口を閉止させ、次いで、該ノズル閉止治具をノズルのフランジに固定した後、上記ノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトをすべて取り外して、上記元弁をノズルより分離して回収し、しかる後、上記と逆の手順でノズルに元弁を復旧するようにするタンクノズル付バルブ交換方法及び装置としてあるので、稼動タンクの内部の圧力流体が漏れ出ることを抑制しながらノズルの元弁を回収、復旧する工事を実施できる。更に、該ノズル元弁の回収、復旧工事に用いる装置の構成を非常にシンプルなものとすることができると共に、ノズルの元弁の回収工事及び復旧工事の手順を簡便なものとすることができて、元弁の交換工事に要するコスト、手間、時間の削減化を図ることが可能になる。
(2)稼動タンクのノズルに装着された元弁の配管取付側フランジに装着した不活性ガス供給治具より元弁を通してノズルへ不活性ガスを供給した状態にて、ノズルのフランジに上記元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外し、次に、残る2本のボルトを緩めることにより上記ノズルのフランジと元弁のフランジとの間に形成される隙間に、長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし該楔部の長手方向にノズルの開口の直径よりも狭い間隔で配した貫通孔を備え且つ上記ノズルの開口の直径よりも広い幅寸法を有して裏面側にガスケットを取り付けてなるノズル閉止治具を、ガスケットがノズルのフランジに接するようにして楔部の尖端側より上記2本のボルトの間を通すように押し込んで、平板部で上記ノズルの開口を閉止させ、次いで、該ノズル閉止治具をノズルのフランジに固定した後、上記ノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトをすべて取り外して、上記元弁をノズルより分離して回収し、しかる後、上記と逆の手順でノズルに元弁を復旧するようにするタンクノズル付バルブ交換方法及び装置とすることによっても、稼動タンクの内部の圧力流体が漏れ出ることを抑制しながらノズルの元弁を回収、復旧する工事を実施できて、上記(1)と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1(イ)(ロ)乃至図6(イ)(ロ)(ハ)は本発明のタンクノズル付バルブ交換方法及び装置の実施の一形態を示すもので、交換、すなわち、回収及び復旧工事の対象となるタンクノズル付バルブである元弁が、図1(イ)に示す如き分岐管11を具備したノズル1に取り付けられている元弁2である場合の適用例を示すものである。
【0021】
ここで、先ず、本発明のタンクノズル付バルブ交換方法の実施に用いる装置について説明すると、該装置は、図6(イ)(ロ)(ハ)に示す如く、ノズル1の開口1aを閉止させるためのノズル閉止治具12と、該ノズル閉止治具12をノズル1のフランジ1bに取り付けるための取付ボルト15とを備えてなる構成とする。
【0022】
具体的には、上記ノズル閉止治具12は、所要の長さ寸法、たとえば、1〜1.5m程度の長さ寸法を有する細長い矩形板状として、長手方向の一端からノズル1のフランジ1bの外径に対応した長さ寸法までの領域に、所要の板厚、たとえば、20〜30mm程度の板厚を有し且つ表裏面が平行な平板部13が形成してある。更に、該ノズル閉止治具12における上記平板部13よりも長手方向他端側の領域(残部)には、厚み寸法を1mm程度と薄く設定してあるノズル閉止治具12の長手方向の他端に向けて表面側のみを傾斜面として厚さ寸法が漸次減少する楔部14が形成してある。
【0023】
又、上記ノズル閉止治具12は、長手方向に直角な方向の幅寸法が、ノズル1の開口1aの直径よりも幅広で且つノズル1のフランジ1bに周方向所要間隔で複数設けてあるボルト孔16のうち、少なくとも180度対向する位置の2つのボルト孔16同士の間隔よりもやや狭くなるように設定してある。これにより、ノズル1のフランジ1bに周方向に設けてある各ボルト孔16のうち、少なくとも180度対向する位置の2つのボルト孔16に各々挿通させる2本のボルト17同士の間に、上記ノズル閉止治具12を挿入することができるようにしてある。
【0024】
なお、図6(ハ)では、上記ノズル閉止治具12の幅寸法を、ノズル1のフランジ1bに周方向60度間隔で配された6個のボルト孔16のうち、120度間隔位置にある2つのボルト孔16同士の間隔よりもやや幅狭に設定したものが示してある。これにより、ノズル1のフランジ1bに周方向に設けてある6つのボルト孔16のうち、180度対向する位置の2つのボルト孔16を除く残る4つのボルト孔16にそれぞれ挿通させる4本のボルト17の間に、上記ノズル閉止治具12を挿入することができるようにしてある。
【0025】
更に、上記ノズル閉止治具12の平板部13の裏面側には、上記したようにノズル1のフランジ1bにおける所定のボルト孔16に挿通させるボルト17の間に該ノズル閉止治具12の平板部13を挿入して配置する状態にて上記所定のボルト孔16を除く残りのボルト孔16と対応する位置に、上記取付ボルト15を螺着させるためのねじ穴18が設けてある。
【0026】
更に又、上記ノズル閉止治具12の裏面は、上記ねじ穴18の位置を除く全面に、ガスケット19を貼り付けた構成としてある。
【0027】
以上の構成としてあるノズル閉止治具12と取付ボルト15を用いて稼動タンクのノズル1に装着された元弁2の回収工事を行う場合は、予め、図1(イ)(ロ)に示す如く、ノズル1に装着されている元弁2を閉じた状態で、該元弁2の配管取付側フランジ2bより図示しない配管を取り外しておく。
【0028】
次に、図2(イ)(ロ)に示す如く、ノズル1の分岐管11よりノズル1内へ、不活性ガスとしての窒素ガス20の所要圧力での供給を開始した後、ノズル1のフランジ1bに周方向に60度間隔で配置されている各ボルト孔16と、元弁2のノズル取付側フランジ2aの対応するボルト孔(図示せず)に挿通させて、該ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとを連結している6本のボルト17のうち、180度対向する位置(図では左右両側位置)の2本のボルト17を取り外す。
【0029】
次いで、図3(イ)(ロ)に示す如く、上記ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとを連結している残る4本のボルト17を、上記ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとの間にわずかな隙間が開くように緩めると共に、該フランジ1bと2a同士の間に形成される隙間にて、上記4本のボルト17の間となる空間部に、ノズル閉止治具12を、裏面側に設けたガスケット19がノズル1側に臨むように配した状態で、楔部14の尖端側となる長手方向の他端側より押し込む。これにより、上記ノズル1と元弁2のフランジ1bと2a同士の間に形成される隙間に押し込まれる上記ノズル閉止治具12の楔部14の裏面側に設けてあるガスケット19が、上記ノズル1のフランジ1bの表面に押し付けられるようになるため、該ノズル1の開口1aが上記ノズル閉止治具12により覆われて、該ノズル開口1aからのガスの漏れが抑えられる。
【0030】
その後、上記4本のボルト17を徐々に緩めながら、上記ノズル1と元弁2のフランジ1bと2a同士の間の隙間へのノズル閉止部材12の押し込みを徐々に行って、このボルト17を緩めつつノズル閉止治具12を押し込む作業を、図4(イ)(ロ)に示す如く、上記ノズル1と元弁2のフランジ1bと2aとの間の隙間に、該ノズル閉止部材12の平板部13が位置するようになるまで継続して行う。
【0031】
なお、上記ノズル1と元弁2のフランジ1bと2a同士の間に形成される隙間へ上記ノズル閉止治具12を押し込む際には、ノズル1の開口1aより多少のガスが漏れるようになる。したがって、この漏れるガスがほぼすべて窒素ガス20となるように、上記分岐管11からノズル1内へ供給する窒素ガス20の供給量を調整するようにする。これにより、上記稼動タンク(図示せず)内の圧力流体が上記ノズル1より外部へ漏れ出ることを抑制できる。
【0032】
又、上記ノズル1と元弁2のフランジ1bと2a同士の間の隙間へ上記ノズル閉止治具12の楔部14を押し込む間は、上記ノズル1のフランジ1bに残っている4本のボルト17のうち、ノズル閉止治具12の押し込み側に近い2本のボルト(図3(イ)(ロ)における左寄りの2本のボルト)17を緩める量が、治具押し込み側から遠い2本のボルト(図3(イ)(ロ)における右寄りの2本のボルト)17を緩める量に比してやや多くなるようにすれば、上記ノズル閉止治具12の楔部14における裏面側と表面側の、上記ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aに対する密着性を高めることができて、ノズル1の開口1aからのガスの漏れをより抑制できるようになる。
【0033】
上記のようにして、ノズル1と元弁2のフランジ1bと2aとの間の隙間に、該ノズル閉止治具12が平板部13まで押し込まれた後は、該平板部13の裏面側に設けてあるねじ穴18を、上記図2(イ)(ロ)の手順でボルト17を取り外したノズル1のフランジ1bの2つのボルト孔17と一致させた状態で、該ノズル1のフランジ1bの2つのボルト孔17を挿通させた取付ボルト15を、上記ノズル閉止治具12の対応するねじ穴18にそれぞれねじ込んで締め付ける。これにより、上記ノズル1の開口1aが上記ノズル閉止治具12により覆われると共に、該ノズル閉止治具12の裏面側に設けてあるガスケット19が上記ノズル1のフランジ1bの表面に密着するため、該ノズル1の開口1aが確実に閉止される。
【0034】
しかる後、上記ノズル1と元弁2のフランジ1bと2a同士を連結していた残る4本のボルトを取り外すことにより、図5に示す如く、上記元弁2を上記ノズル1より分離して回収するようにする。
【0035】
その後、上記既設の元弁2を回収した後、上記ノズル1へ修理又は新たな元弁2を交換に装着する場合は、上記図1(イ)(ロ)乃至図5に示した手順の逆の手順により、稼動タンクのノズル1に対する元弁2の復旧工事を行うようにすればよい。
【0036】
このように、本発明のタンクノズル付バルブ交換方法及び装置によれば、稼動タンクの内部の圧力流体が漏れ出ることを抑制しながらノズル1の元弁2を回収、復旧して交換する工事に用いる装置の構成を非常にシンプルなものとすることができると共に、ノズル1の元弁2の回収工事及び復旧工事の手順を簡便なものとすることができて、交換工事に要するコスト、手間、時間の削減化を図ることが可能になる。
【0037】
次に、図7乃至図12(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の他の形態を示すもので、分岐管を具備しないノズルに取り付けられている元弁を回収及び復旧工事(交換工事)の対象とする場合の適用例を示すもので、以下のようにしてある。
【0038】
ここで、先ず、本実施の形態のタンクノズル付バルブ交換方法の実施に用いる装置について説明すると、該装置は、図12(イ)(ロ)(ハ)に示す如きノズル閉止治具12A、及び、該ノズル閉止治具12Aをノズル1のフランジ1bに取り付けるための取付ボルト15と、図7に示す如く、回収及び復旧工事対象となる元弁2の配管取付側フランジ2bに取り付けて不活性ガスとしての窒素ガス20を供給できるようにするための不活性ガス供給治具21を備えてなる構成とする。
【0039】
詳述すると、上記ノズル閉止治具12Aは、図6(イ)(ロ)(ハ)に示したノズル閉止治具12と同様の構成において、楔部14における幅方向の中央部に、表裏面方向に貫通する所要径の複数個の貫通孔22を、隣接する各貫通孔22同士の間の寸法が、上記ノズル1の開口1aの直径よりも所要寸法狭くなるように長手方向に配列して設けてある。これにより、上記実施の形態におけるノズル閉止治具12と同様に、ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとを連結している所要のボルト17を徐々に緩めながら該ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとの間に形成される隙間にノズル閉止治具12Aの押し込むときに、各フランジ1bと2a同士の間を該ノズル閉止治具12Aの楔部14が通過する間は、図12(ハ)に示す如く、該楔部14に設けてある複数の貫通孔22のいずれかを介して上記ノズル1と元弁2とを常に連通させることができるようにしてある。
【0040】
上記不活性ガス供給治具21は、図7に示す如く、上記元弁2の配管取付側フランジ2bに対応する径の円盤状として、外周部を上記元弁2の配管取付側フランジ2bにボルト17aを介して取り付けることができるようにしてある取付部材23と、該取付部材23の中央部に貫通させて接続した不活性ガス供給管24とからなる構成としてある。これにより、上記取付部材23の外周部を上記元弁2の配管取付側フランジ2bにボルト17aを介して取り付けることで、上記不活性ガス供給管24を通して導かれる不活性ガスとしての窒素ガス20を、上記元弁2へ供給することができるようにしてある。
【0041】
その他の構成は図6(イ)(ロ)(ハ)に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0042】
以上の構成としてあるノズル閉止治具12Aと取付ボルト15と不活性ガス供給治具21を用いて稼動タンクのノズル1に装着された元弁2の回収工事を行う場合は、予め、図7に示す如く、ノズル1に装着されている元弁2を閉じた状態で、図示しない配管を取り外した後、該元弁2の配管取付側フランジ2bに、上記不活性ガス供給治具21を取り付けておく。
【0043】
次に、上記不活性ガス供給治具21の不活性ガス供給管24を通して窒素ガス20を所要圧力で供給しながら、上記元弁2を開くことにより、上記窒素ガス20を元弁2を経て上記ノズル1内へ供給を開始する。
【0044】
次いで、図8に示す如く、図2(イ)(ロ)に示したと同様に、ノズル1のフランジ1bに周方向に60度間隔で配置されている各ボルト孔16を通して該ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとを連結している6本のボルト17のうち、180度対向する位置(図では左右両側位置)の2本のボルト17を取り外す。
【0045】
次いで、図9(イ)(ロ)に示す如く、上記ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとを連結している残る4本のボルト17を緩めると共に、該フランジ1bと2a同士の間に形成される隙間にて、上記4本のボルト17の間となる空間部に、上記ノズル閉止治具12Aを、図3(イ)(ロ)に示したノズル閉止治具12と同様に、ガスケット19がノズル1側に臨むように配した状態で、楔部14の尖端側となる長手方向の他端側より押し込む。更に、上記4本のボルト17を徐々に緩めながら、上記ノズル1のフランジ1bと元弁2のフランジ1bの間の隙間へ、ノズル閉止部材12Aの押し込みを徐々に行い、このノズル閉止治具12Aの押し込み作業を、図10に示す如く、図4(イ)(ロ)に示したと同様に、上記ノズル1のフランジ1bと元弁2のフランジ2aの間の隙間に、該ノズル閉止部材12Aの平板部13が位置するようになるまで継続して行う。なお、上記ノズル1のフランジ1bと元弁2のフランジ2aの間に形成される隙間へ上記ノズル閉止治具12Aの平板部13が押し込まれる以前に楔部14が上記フランジ1bと2a同士の間に位置しているときは、該楔部14に設けてある貫通孔22を介して上記元弁2とノズル1が連通するようにしてあるため、この貫通孔22を介した連通個所を経て、上記元弁2より上記ノズル1内へ窒素ガス20を常に吹き込むようにすることで、上記稼動タンク(図示せず)内の圧力流体が漏れ出ることを抑制できるようになる。
【0046】
上記のようにして、ノズル1と元弁2のフランジ1bと2aとの間の隙間に、該ノズル閉止治具12Aが平板部13まで押し込まれた後は、該平板部13の裏面側に設けてある2つのねじ穴18に、上記図8の手順でボルト17を取り外したノズル1のフランジ1bの2つのボルト孔17を挿通させた取付ボルト15を、それぞれねじ込んで締め付ける。これにより、上記ノズル1の開口1aが上記ノズル閉止治具12により覆われると共に、該ノズル閉止治具12Aの平板部13裏面側に設けてあるガスケット19が上記ノズル1のフランジ1bの表面に密着するため、該ノズル1の開口1aが確実に閉止される。
【0047】
しかる後、上記ノズル1と元弁2のフランジ1bと2a同士を連結していた残る4本のボルトを取り外すことにより、図11に示す如く、上記元弁2を上記ノズル1より分離して回収するようにする。
【0048】
その後、上記既設の元弁2を回収した後、上記ノズル1へ修理又は新たな元弁2を交換に装着する場合は、上記図7乃至図11に示した手順の逆の手順により、稼動タンクのノズル1に対する元弁2の復旧工事を行うようにすればよい。
【0049】
このように、本実施の形態によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、本発明は上記各実施の形態のみに限定されるものではなく、ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとの連結に用いられている6本のボルト17のうち、180度対向する位置の2本のボルト17以外の4本のボルト17を取り外した後、残る2本のボルト17を徐々に緩めながら、ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとの間にノズル閉止治具12,12Aを楔部14の尖端側から押し込むようにしてもよい。この場合は、上記ノズル閉止治具12,12Aの幅寸法を、上記180度対向する2本のボルト17が挿通させてあるノズル1のフランジ1bにて180度対向する位置の2つのボルト孔16の間隔に応じて設定すればよい。
【0051】
更に、ノズル1のフランジ1bに、元弁2のノズル取付側フランジ2aとの連結に用いるボルト17を挿通させるためのボルト孔16が周方向に4つ又は、6よりも多い数設けられている場合は、ノズル閉止治具12,12Aの幅寸法は、ノズル1の開口1aの直径よりも幅広で、且つ上記ノズル1のフランジ1bにおける少なくとも180度対向する位置の2つのボルト孔16の間隔よりも幅狭となるように設定してあればよく、又、ノズル1のフランジ1bと元弁2のノズル取付側フランジ2aとの間にノズル閉止治具12,12Aを挿入するために予め取り外すボルト16の数は、上記ノズル治具12,12Aの幅寸法に応じて適宜変更してもよい。
【0052】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のタンクノズル付バルブ交換方法の実施の一形態として、分岐管を備えたノズルに適用する場合の手順の一部を示すもので、(イ)は元弁より配管を取り外した状態を示す概要図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図2】図1の方法の手順の一部を示すもので、(イ)はノズルと元弁のフランジ同士を連結している6本のボルトのうちの2本を取り外した状態を示す概要図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図である。
【図3】図1の方法の手順の一部を示すもので、(イ)はノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトを緩めながら、該各フランジ同士の間にノズル閉止治具の楔部の押し込みを開始した状態を示す概要図、(ロ)は(イ)のC−C方向矢視図である。
【図4】図1の方法の手順の一部を示すもので、(イ)はノズルと元弁のフランジ同士の間へノズル閉止治具を平板部まで押し込んだ状態を示す概要図、(ロ)は(イ)のD−D方向矢視図である。
【図5】図1の方法の手順の一部を示すもので、ノズル閉止治具が取り付けられたノズルより元弁を分離した状態を示す概要図である。
【図6】図1の方法の実施に用いる装置を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)は(イ)のE−E方向矢視図、(ハ)は平板部を拡大して示す図である。
【図7】本発明の実施の他の形態として、分岐管のないノズルに適用する場合の手順の一部を示すもので、元弁の配管取付側フランジに不活性ガス供給具を取り付けた状態を示す概要図である。
【図8】図7の方法における手順の一部として、ノズルと元弁のフランジ同士を連結している6本のボルトのうちの2本を取り外した状態を示す概要図である。
【図9】図7の方法の手順の一部を示すもので、(イ)はノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトを緩めながら、該各フランジ同士の間にノズル閉止治具の楔部の押し込みを開始した状態を示す概要図、(ロ)は(イ)のF−F方向矢視図である。
【図10】図7の方法の手順の一部として、ノズルと元弁のフランジ同士の間へノズル閉止治具を平板部まで押し込んだ状態を示す概要図である。
【図11】図7の方法の手順の一部として、ノズル閉止治具が取り付けられたノズルより元弁を分離した状態を示す概要図である。
【図12】図7の方法の実施に用いる装置の一部を示すもので、(イ)はノズル閉止治具と取付ボルトの概略側面図、(ロ)は(イ)のG−G方向矢視図、(ハ)は楔部を拡大して示す図である。
【図13】従来提案されている稼動タンクにおけるノズル元弁の回収・復旧工法を示すもので、(イ)は該工法に用いる装置をノズルと元弁に装着した状態を、(ロ)は元弁を分離したノズルに密封栓を取り付けた状態をそれぞれ示す一部切断概要図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ノズル
1a 開口
1b フランジ
2 元弁
2a ノズル取付側フランジ
2b 配管取付側フランジ
12,12A ノズル閉止治具
13 平板部
14 楔部
15 取付ボルト
16 ボルト孔
17 ボルト
18 ねじ穴
19 ガスケット
20 窒素ガス(不活性ガス)
21 不活性ガス供給治具
22 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼動タンクのノズルに装着された元弁を閉じた後、不活性ガスの存在下で上記ノズルのフランジに上記元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外し、次に、残る2本のボルトを緩めることにより上記ノズルのフランジと元弁のフランジとの間に形成される隙間に、長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし且つ上記ノズルの開口の直径よりも広い幅寸法を有して裏面側にガスケットを取り付けてなるノズル閉止治具を、ガスケットがノズルのフランジに接するようにして楔部の尖端側より上記2本のボルトの間を通すように押し込んで、平板部で上記ノズルの開口を閉止させ、次いで、該ノズル閉止治具をノズルのフランジに固定した後、上記ノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトをすべて取り外して、上記元弁をノズルより分離して回収し、しかる後、上記と逆の手順でノズルに元弁を復旧して該元弁の交換を行うようにすることを特徴とするタンクノズル付バルブ交換方法。
【請求項2】
稼動タンクのノズルに装着された元弁の配管取付側フランジに装着した不活性ガス供給治具より元弁を通してノズルへ不活性ガスを供給した状態にて、ノズルのフランジに上記元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外し、次に、残る2本のボルトを緩めることにより上記ノズルのフランジと元弁のフランジとの間に形成される隙間に、長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし該楔部の長手方向にノズルの開口の直径よりも狭い間隔で配した貫通孔を備え且つ上記ノズルの開口の直径よりも広い幅寸法を有して裏面側にガスケットを取り付けてなるノズル閉止治具を、ガスケットがノズルのフランジに接するようにして楔部の尖端側より上記2本のボルトの間を通すように押し込んで、平板部で上記ノズルの開口を閉止させ、次いで、該ノズル閉止治具をノズルのフランジに固定した後、上記ノズルと元弁のフランジ同士を連結しているボルトをすべて取り外して、上記元弁をノズルより分離して回収し、しかる後、上記と逆の手順でノズルに元弁を復旧して該元弁の交換を行うようにすることを特徴とするタンクノズル付バルブ交換方法。
【請求項3】
ノズルのフランジに元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外したときに残った2本のボルトを緩めることにより上記両フランジ間に形成される隙間に挿入して上記2本のボルトの間を通すことができるように、細長い矩形状として長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし、且つ元弁の回収及び復旧工事対象となるノズルの開口の直径よりも広い所要の幅寸法とし、更に、平板部の所要個所にねじ穴を備えて、裏面側にガスケットが取り付けてあるノズル閉止治具と、上記ノズルのフランジに設けてあるボルト孔に通して上記ノズル閉止治具の平板部のねじ穴に着脱可能にねじ止めすることにより、上記ノズル閉止治具の平板部をノズルのフランジに固定するための取付ボルトとを備えてなる構成を有することを特徴とするタンクノズル付バルブ交換装置。
【請求項4】
ノズルのフランジに元弁のノズル取付側フランジを連結している複数本のボルトのうち、少なくとも2本のボルトが残るように所要本数のボルトを取り外したときに残った2本のボルトを緩めることにより上記両フランジ間に形成される隙間に挿入して上記2本のボルトの間を通すことができるように、細長い矩形状として長手方向一端部を平板部とすると共に他端側を楔部とし、該楔部の長手方向にノズルの開口の直径よりも狭い間隔で配した貫通孔を備え、且つ元弁の回収及び復旧工事対象となるノズルの開口の直径よりも広い所要の幅寸法とし、更に、平板部の所要個所にねじ穴を備えて、裏面側にガスケットが取り付けてあるノズル閉止治具と、上記ノズルのフランジに設けてあるボルト孔に通して上記ノズル閉止治具の平板部のねじ穴に着脱可能にねじ止めすることにより、上記ノズル閉止治具の平板部をノズルのフランジに固定するための取付ボルトと、元弁の配管取付側フランジに装着して元弁を通してノズルへ不活性ガスを供給するための不活性ガス供給治具とを備えてなる構成を有することを特徴とするタンクノズル付バルブ交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−190762(P2009−190762A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33739(P2008−33739)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】