説明

タンパク質のリフォールディング添加剤及びそれを用いたタンパク質の再生方法

【課題】タンパク質可溶化剤によって可溶化させた変性又は還元タンパク質を高収率でタンパク質天然構造へとリフォールディングさせる。封入体を形成しやすいタンパク質からのリフォールディング収率を向上させ、これまで入手の難しかったタンパク質を効率的に生産する。
【解決手段】リフォールディング緩衝液に、式(1)
NC(:NH)NH(CHCH(NR)CONR (1)
(式中、Rは水素原子、C1−6のアルキル基、C1−6のハロアルキル基又はC3−6のシクロアルキル基を示す。各Rはそれぞれ独立しており、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるアルギニンアミドまたはその誘導体、あるいはそれらの酸付加塩又は溶媒和物を共存させることを特徴とするタンパク質の再生法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質のリフォールディングに関するものであり、特にアルギニンアミド類を用いたタンパク質のリフォールディングに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の遺伝子工学技術の発展により大腸菌のような異種発現系において有用なタンパク質を大量に調製することが望まれている。例えば医薬品製造の分野において、炎症反応、抗腫瘍作用などの免疫系の調整を担うサイトカインや、疾患に特異的にはたらく抗体医薬品としての一本鎖抗体(scFV)が組換え体として調製されている。また、食品加工の分野では、リパーゼ(脂質の分解や脱脂による香味付け)やアミラーゼ(糖の分解による水あめやウイスキーの製造)の様に組換え体タンパク質が応用されている。臨床診断の分野では、感染症の診断に抗体が用いられている。
【0003】
これらの有用なタンパク質は一般には大腸菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の発現系を用いて合成される。昆虫細胞や哺乳動物細胞による合成では、得られるタンパク質は可溶性で固有の立体構造を持つ場合が多い。しかし、これらの方法は分離精製の操作が煩雑であり、目的のタンパク質を得るまでに時間やコストがかかるほか、得られるタンパク質の量もきわめて少ないという欠点がある。これに対して、大腸菌を発現系とするタンパク質合成では、大量に調製でき、操作が簡単で時間やコストもかからない。このような理由から、大腸菌を宿主として組換えタンパク質を合成する方法はタンパク質合成の主流であり、生産プロセスも確立されている。
【0004】
ところが、ヒトなどの高等生物の組換えタンパク質を大腸菌等の異種発現系を用いて生産する場合、これらのタンパク質はしばしば不溶性で不活性の凝集体、いわゆる封入体として得られる。このため、大腸菌による生産プロセスでは、封入体を可溶化した後、固有の立体構造をもつ可溶性タンパク質へと再生(リフォールディング)する必要がある。
【0005】
古くから用いられているリフォールディングの手順は以下の通りである。まず、高濃度の変性剤(例えばグアニジン塩酸や尿素)もしくは界面活性剤(SDSやTween)にタンパク質を溶解させ、同時に封入体中に存在する分子内及び分子間ジスルフィド結合をジチオスレイトール又はβメルカプトエタノール等により化学的に還元する。その後、このタンパク質溶液を変性剤の含まない、またジスルフィド交換試薬(例えば、GSH/GSSG)を含む緩衝液(リフォールディング緩衝液)で希釈または透析し変性剤を希釈して自発的な機能のある立体構造へとリフォールディングさせる。なかでも、希釈法はタンパク質を機能のある立体構造へとリフォールディングさせる最も簡便・低コストな方法で、収率も透析法に比べて高いことが幾つかのタンパク質について報告されているが、それでもタンパク質によっては逆の結果をもたらすこともあり、収率の改善には試行錯誤が必要である。
【0006】
リフォールディング収率が低下する主な原因はしばしば副反応として起こる不溶性凝集体の形成である。リフォールディング中間体が蓄積して凝集体を形成することから、収率を改善するにはこの中間体の凝集を抑制すればよい。これを解決する手段として、これまで様々なリフォールディング法が開発されている。例えば、界面活性剤と包接化合物(例えばシクロデキストリンおよびシクロアミロース)を組み合わせた方法(特許文献1および非特許文献1)やゼオライトを利用した方法(特許文献2)、高温を利用した方法(特許文献3)がある。さらに、低分子量化合物をリフォールディング緩衝液に共存させる方法も数多く開発されている。リフォールディングに伴う凝集を抑制する化合物に関する最初の報告は、グアニジン塩酸塩や尿素などの変性剤をタンパク質が変性しない程度の低濃度で加える方法である(非特許文献2)。その後、グリセロールなどの短鎖アルコールや糖および糖アルコール(特許文献4)、界面活性剤(非特許文献3)、アミン化合物(特許文献5)などが効果的に収率を向上させることが報告された。特に低分子量化合物を用いる方法は操作が簡便で、透析により化合物を容易に除去できることから一般性、普遍性に優れている手法である。
【0007】
リフォールディング添加剤の中でも、L−アルギニンは最もよく用いられるタンパク質リフォールディング添加剤であり、500mM程度のアルギニン存在下において複数のタンパク質(例えばt−PAやFabフラグメント、リゾチーム及び他の酵素)のリフォールディングに効果的であることがわかっている(特許文献6及び特許文献7、非特許文献4)。
【0008】
このような背景から、アルギニンの各官能基の役割を明らかにすることで、アルギニンよりもさらに効果的な凝集抑制剤が開発できる可能性があった。さらに、アルギニン誘導体から成る凝集抑制剤はアルギニンと同様に広範囲の異なるタンパク質に有効である可能性が高く、多くのタンパク質に適用可能な、一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング収率の高い効率的な方法の開発が期待される。
【0009】
【特許文献1】特開2003−128699,町田 幸子,林 清
【特許文献2】特開2005−192452,水上 富士夫,清住 嘉道,川合 章子,長瀬 泰加子,坂口 謙吾,知久 浩之
【特許文献3】特開2005−132771,坂本 龍佑,白木 賢太郎,高木 昌宏
【特許文献4】米国特許第5,434,067号明細書(1995)U. Michaelis, R. Rudolph, M. Jarscj, E. Kopetzki, H. Burtscher, G. Schumacher
【特許文献5】オーストラリア公開特許AU2002340510,Jorg Peters, Torsten Minuth
【特許文献6】米国特許第5,593,865号明細書(1997)Rudolph R, Fischer S, Mattes R
【特許文献7】米国特許第5,453,363号明細書(1995)Rudolph R, Fischer S, Mattes R
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. Vol. 117 (1995) 2373-2374
【非特許文献2】J. Biol. Chem. Vol. 253 (1978) 3453-3458
【非特許文献3】Protein Science Vol. 4 (1995) 1536-1543
【非特許文献4】Curr. Opinion Biotechnol. Vol. 9 (1998) 497-501
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在までのところ、リフォールディング収率を向上させる小分子ではアルギニンが最適である。このような状況下にあって、本発明の目的はアルギニンよりも効果的にリフォールディング収率を向上させる小分子を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、リフォールディング緩衝液にアルギニン誘導体の一つであるアルギニンアミドを添加することにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、以下の構成から成る。
〔1〕式(1)
NC(:NH)NH(CHCH(NR)CONR (1)
(式中、Rは水素原子、C1−6のアルキル基、C1−6のハロアルキル基又はC3−6のシクロアルキル基を示す。各Rはそれぞれ独立しており、同一であっても異なっていてもよい)で示されるアルギニンアミド又はその誘導体、あるいはそれらの酸付加塩又は溶媒和物を含有することを特徴とする、変性又は還元されたタンパク質のリフォールディング添加剤。
〔2〕上記リフォールディング添加剤をリフォールディング緩衝液に共存させることにより変性又は還元されたタンパク質をリフォールディングすることを特徴とする、タンパク質の再生方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルギニンアミドをリフォールディング緩衝液に添加してリフォールディングすることにより、凝集抑制剤を無添加の場合及び他の凝集抑制剤を添加した場合に比べて高い収率が得られた。本発明により、これまでアルギニンで十分な収率が望めなかったタンパク質についても十分なリフォールディング収率を得られる可能性がある。また、アルギニンアミドの化学構造に基づいて新規凝集抑制剤をデザインすることも可能であり、今後多くの凝集抑制剤を効率的に開発することができる。
本発明のアルギニンアミドはアルギニン誘導体であり、同様の一般性、普遍性を持つことが予想される。したがって、従来よりも高収率なリフォールディングキットなどへの利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の対象となるタンパク質は、リゾチーム、エステラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、グリコシターゼ、ペクチダーゼ、リパーゼなどの酵素タンパク質、t−PA、抗体、一本鎖抗体、サイトカイン、アルブミン、ヘモグロビン等の非酵素タンパク質を生体から調製したものや大腸菌等の異種発現系を用いて遺伝子工学的に生産された組換え体等が対象となるが、これらに限定されるものではない。
これらのタンパク質、特に、大腸菌等の異種発現系を用いて遺伝子工学的に生産された組換え体の場合にはしばしば不溶性で不活性の凝集体、いわゆる封入体として得られるため、リフォールディングが必要となる。
【0015】
タンパク質の再生の手順は、通常、まず、変性剤(例えばグアニジン塩酸や尿素)及び/又は界面活性剤(SDSやTween)にタンパク質を溶解させ、同時に、封入体中に存在する分子内及び分子間ジスルフィド結合をジチオスレイトール又はβメルカプトエタノール等により化学的に還元する。これをアンフォールディングという。その後、このタンパク質溶液を、リフォールディング緩衝液で希釈または透析し変性剤を希釈して自発的な機能のある立体構造へと再生させる。これをリフォールディングという。本発明においては、このリフォールディング緩衝液に、凝集抑制剤として式(1)で示されるアルギニンアミド類を共存させる。
本発明において、式(1)で示されるアルギニンアミド類でリフォールディングする対象となる「変性されたタンパク質」とは、グアニジンや尿素あるいは界面活性剤によって本来の天然構造を有さない状態へとタンパク質を解きほぐした状態のタンパク質を意味し、又、「還元されたタンパク質」とは、分子内または分子間ジスルフィッド結合をジチオスレイトール、βメルカプトエタノール等により開裂させ、チオールへと化学的に変換させたタンパク質を意味する。
リフォールディングされるタンパク質の濃度は、特に制限はないが、例えば1〜2mg/mlの高濃度でリフォールディングが可能である。
以下、タンパク質の再生において用いられるリフォールディング添加剤、リフォールディング緩衝液、変性剤、界面活性剤及び還元剤について説明する。
【0016】
(リフォールディング添加剤)
本発明のリフォールディング添加剤は、上記式(1)で表されるアルギニンアミド、又はその誘導体、あるいはそれらの酸付加塩又は溶媒和物であり、タンパク質の凝集抑制剤として作用する。
ここで、Rは、水素原子、C1−6のアルキル基、C1−6のハロアルキル基又はC3−6のシクロアルキル基を示し、各Rはそれぞれ独立しており、同一であっても異なっていてもよい。
「C1−6のアルキル基」としては、直鎖及び分岐状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
「C1−6のハロアルキル基」としては、直鎖及び分岐状のいずれでもよく、例えば、クロロメチル、フルオロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、ジブロモメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、トリブロモメチル、トリクロロエチル、トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル等が挙げられる。ここで、「ハロ」はハロゲン原子を意味し、Cl、Br、F、Iが含まれる。
「C3−6のシクロアルキル基」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルがある。
【0017】
「酸付加塩」としては、特に限定はないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等を挙げることができる。
「溶媒和物」 としての溶媒としては、たとえば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。
上記アルギニンアミド類には光学異性体が存在するが、これらは単独で、あるいは混合物として、いずれでも用いることができる。
また、これらのアルギニンアミド類は、通常、リフォールディング緩衝液中で、20mMから2Mの範囲で使用され、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、他の凝集抑制剤との併用も可能である。
【0018】
式(1)表されるアルギニンアミド誘導体の製造法は、特に限定されないが、例えば、アルギニンアミドとハロゲン化アルキルとを反応させる方法、アルギニンアミドとアルデヒドと反応させてシッフ塩基を得、次いでこのシッフ塩基を還元する方法などがある。
【0019】
(リフォールディング緩衝液)
リフォールディング用の緩衝液としては、タンパク質の機能を失わせるような濃度及び組成でなければ特に限定されないが、アミン系緩衝液が好ましく、例えばトリス緩衝液、MES緩衝液、トリシン緩衝液等を挙げることができる。アミン系緩衝液は、pH2〜12の溶液であることが好ましく、特にpH5〜9の範囲が好ましい。また、同緩衝液には、酸化型グルタチオン(GSSG)、還元型グルタチオン(GSH)を添加することができるほか、種々の添加物を添加することも可能である。添加物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の塩類、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩等の緩衝液、水酸化ナトリウム、塩酸、酢酸等の酸塩基類、メタノール、エタノール、プロパノール等の有機溶媒等がある。
【0020】
(変性剤、界面活性剤および還元剤)
本発明において使用される変性剤としては、通常用いられるものであれば特に制限はないが、例えば塩酸グアニジン、尿素等がある。また、界面活性剤としては、通常用いられるものであれば特に制限はないが、SDS(Sodium Dodecyl Sulfate:ドデシル硫酸ナトリウム)、Tween(Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、Tween85等)、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸)等がある。これらは、1種単独でも又は2種以上を混合して用いてもよい。また、変性剤と界面活性剤は、いずれか一方でもよいし、両方を用いてもよい。
また、還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、βメルカプトエタノールなどを用いることができる。
【0021】
以下、本実施例では、タンパク質の機能再生を例に説明するが、本発明の適用は実施例に示されたタンパク質に限定・制限されるものではない。
【実施例】
【0022】
(1)試料等の調製
(a)変性タンパク質溶液
タンパク質はニワトリ卵白リゾチーム(Sigma社)を用いた。6M塩酸グアニジン及び40mMDTT,1mMエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA)を含有する100mMTris−HCl(pH8.0)緩衝液にタンパク質を可溶化し、40〜80g/Lの還元変性リゾチーム溶液を調製した。
【0023】
(b)リフォールディング緩衝液
リフォールディング緩衝液は以下の組成から成った。
・100mMTris−HCl(pH8.0)
・1mMエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA)
・5mMGSH/5mMGSSG
・20〜2000mMのリフォールディング添加剤
【0024】
(2)リフォールディング操作
マイクロPCRチューブ(Takara社製)を用い、タンパク質溶液の合計の最終体積を200μLとした。195μLのリフォールディング緩衝液に5μLの還元変性タンパク質溶液を希釈し、リフォールディングさせた。希釈後、ボルテックスミキサーで2〜3秒撹拌した。撹拌後、25℃で12時間以上静置してジスルフィド形成反応を完了させた。ジスルフィド結合を形成させた後、14,000×gで20分間遠心して不溶性凝集体を沈殿分離し、24時間以内に後述の活性測定法により分析した。「リフォールディング収率」は巻き戻り率やRefolding Yield、Renaturation Yieldとも呼ばれ、実験を通してリフォールディングさせたサンプルの活性を天然型の活性で除した割合を百分率で表示したものである。
【0025】
(3)リゾチームの活性測定
基質として細菌ミクロコッカス・リゾデイクティカスを用い、50mMリン酸緩衝液で懸濁し、基質溶液を調整した。基質溶液は600nmの吸光度が1.0になるように調製した。この基質溶液1490μLに10μLのタンパク質溶液を加え、600nmにおける濁度の経時変化からリフォールディング収率を算出した。
【0026】
実験1 200mM リフォールディング添加剤存在下でのリフォールディング収率
40g/Lの還元変性リゾチーム溶液を40倍希釈してリフォールディングさせた結果を表1に示す。代表的なリフォールディング添加剤であるアルギニンを添加した場合のリフォールディング収率は28.0%であるのに対し、アルギニンアミドを添加した場合は39.8%と収率が向上した。アルギニンアミドの凝集抑制効果はアルギニンの1.4倍であった。
【0027】
【表1】

【0028】
実験2 500mM リフォールディング添加剤存在下でのリフォールディング収率
リフォールディング添加剤を500mM添加して実験1と同様の実験をおこなった結果を表2に示す。アルギニンを添加した場合のリフォールディング収率は41.3%で、添加剤なしの場合に比べると4倍程度収率が向上した。アルギニンアミドを添加した場合の収率は68.5%で、添加剤なしの場合に比べて7倍程度収率が向上した。
【0029】
【表2】

【0030】
実験3 高濃度のタンパク質からのリフォールディング収率
最終タンパク質濃度を2mg/mLとし、他を実験2と同様にリフォールディングさせた結果を表3に示す。アルギニンを添加した場合の収率は18.7%であった。アルギニンアミドを添加した場合の収率は33.9%でアルギニンに比べ1.8倍収率が向上した。また、何も添加しない場合に比べて10倍程度収率が向上した。タンパク質濃度に関わらずアルギニン以上の効果が確認された。
【0031】
【表3】

【0032】
実験4 20〜2000mMの凝集抑制剤存在下でのリフォールディング収率
アルギニン塩酸塩およびグアニジン塩酸塩、アルギニンアミド二塩酸塩を20〜2000mM添加してリフォールディング収率を調べた結果を図1に示す。グアニジンは1000mM添加時に最大の収率を示し、85%ほどであった。アルギニンは最大の収率を得るまでに1300mMを要し、その最大収率は80%であった。アルギニンアミドの場合は、750mMで90%以上の収率を示した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】1mg/mLの最終タンパク質濃度でリフォールディングした場合の再生収率のアルギニン類似化合物濃度依存性を示したグラフである。図中、「GdnHCl」はグアニジン塩酸塩、「ArgHCl」はアルギニン塩酸塩、「ArgAm2HCl」はアルギニンアミド二塩酸塩を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
NC(:NH)NH(CHCH(NR)CONR (1)
(式中、Rは水素原子、C1−6のアルキル基、C1−6のハロアルキル基又はC3−6のシクロアルキル基を示す。各Rはそれぞれ独立しており、同一であっても異なっていてもよい)で示されるアルギニンアミド又はその誘導体、あるいはそれらの酸付加塩又は溶媒和物を含有することを特徴とする、変性又は還元されたタンパク質のリフォールディング添加剤。
【請求項2】
タンパク質がリゾチームであることを特徴とする請求項1記載のリフォールディング添加剤。
【請求項3】
請求項1に記載されたリフォールディング添加剤をリフォールディング緩衝液に共存させることにより変性又は還元されたタンパク質をリフォールディングすることを特徴とする、タンパク質の再生方法。
【請求項4】
タンパク質がリゾチームであることを特徴とする請求項3記載の方法。

【図1】
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