説明

タンパク質の細胞内導入のためのポリイオンデンドリマー

【課題】 本発明は、共有結合を介さず、分子間相互作用を利用して、単に混合という簡便な操作でタンパク質を細胞内に輸送することのできる、汎用性の高いタンパク質輸送剤として有用なポリイオンデンドリマー、及びそれを用いたタンパク質の高効率な輸送方法を提供する
【解決手段】 本発明は、表面部にグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を有し、分岐鎖としてポリアルキレンオキシ基を有し、かつ、コア部にベンゾフェノン基を有する置換基が結合していることを特徴とするポリイオンデンドリマー、それを用いたタンパク質輸送剤、及びタンパク質の輸送方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面部としてグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を有し、分岐鎖としてポリアルキレンオキシ基を有し、コア部としてベンゾフェノン基を有する置換基が結合していることを特徴とするポリイオンデンドリマーに関する。本発明のポリイオンデンドリマーは、共有結合を介さず、分子間相互作用を利用して、単に混合という簡便な操作でタンパク質を細胞内に輸送できる、汎用性の高いタンパク質輸送剤として有用であり、本発明は、さらに本発明のポリイオンデンドリマーを用いたタンパク質輸送剤、及び生体細胞内へのタンパク質の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、その機能の特異性や生体適合性の高さから新しいタイプの薬剤として注目されている。一般にタンパク質のような高分子化合物は細胞膜透過性が極めて低いという問題があるために、効率的な細胞内導入を可能にするキャリアの使用が必要不可欠である。
タンパク質の細胞内取り込みを実現するアプローチの一つとして、アルギニンを多数含有する細胞内輸送ペプチドを連結させる方法が知られている (非特許文献1参照) 。しかしながら、この方法ではペプチドを共有結合で標的のタンパク質に連結させる必要があるため、タンパク質の変性や機能の損失を引き起こす可能性があるという問題があった。
【0003】
もう一つのアプローチとして、カチオン性脂質を用いた非共有結合的方法が提案されている(非特許文献2参照)。この方法は、カチオン性脂質がタンパク質を内包するミセルを形成し、このミセルが細胞膜と融合することを利用して、標的タンパク質を細胞内に移行させる方法である。この方法では、前述の細胞内輸送ペプチドを用いる方法と異なり、共有結合形成を必要としないため、標的タンパク質の変性や失活を回避することができる。しかしながら、カチオン性脂質を用いたタンパク質輸送は10μM以上の濃度の脂質分子を必要とするため、拡散の影響で希釈されてしまうin vivoでは十分な輸送効率を実現できていなかった。このため、in vivoで、タンパク質をそのまま効率よく細胞内に輸送できるキャリアの開発が待たれていた。
【0004】
デンドリマーは、ギリシャ語の「dendri-」(樹木状)と「meros」(一部)を組み合わせて名づけられた、中心から規則的に分岐した構造を持つ樹状高分子で、構造が正確にコントロールされた樹木状のポリマーである。過去10年間に5000以上の論文が発表されてきているが、他の高分子と比べて合成が極めて困難であるため、実用化は難しいとされている。現在最もよく用いられているポリアミドアミン構造を持つPAMAMデンドリマーなどは、既に市販されてきている。
デンドリマーは、コア (core) と呼ばれる中心分子と、デンドロン (dendron) と呼ばれる樹状の分岐構造部分、及び表面(surface)と呼ばれる末端基部分から構成され、デンドロン部分の分岐回数を世代 (generation) と言っている。一般に高分子はある程度の分子量分布を持つが、高世代のデンドリマーは、分子量数万に達するものでもほとんど単一分子量であるという、際立った特徴を持っている。
コア(core)はデンドリマー全体のサイズ・形・方向性・多様性を決定する部位であるとされており、デンドロン (dendron) は、枝状のセルが規則的に増えていく部分で、このセルが空間のタイプと大きさを決定し、枝状のセルの多重度は世代(generation)に対して指数関数的に増加する。表面(surface)は反応性・非反応性の末端基で構成され、末端基のタイプにより様々な機能を発現することができると共に、外部のゲスト分子の出入りをコントロールするゲートの役割も担っている。
【0005】
デンドリマーの製造法はよく知られており、例えば、リジン単位の層に基づくデンドリマーの製造法(特許文献1参照)、ポリアミドアミンを含む他の単位に基づくデンドリマーやPAMAMデンドリマーの製造法(特許文献2参照)などが報告されている。これらのデンドリマーは、表面修飾剤、金属キレート剤、解乳化剤又は油/水エマルジョン、製紙における湿潤紙力増強剤、及び塗料などの水性配合物での粘度調節剤などとしての使用に適するとされているが、医薬製造用の基剤としての使用(特許文献3参照)や、生物学的反応修飾物質になりうる担体物質と会合させるためのもの(特許文献4参照)なども既に報告されてきている。
また、表面の末端基としてグアニジン基のようなカチオン性の基を有するデンドリマー(樹状高分子化合物)も知られており、例えば、ポリアミドアミンデンドリマーやポリリジンデンドリマーやポリ(プロピレンイミン)デンドリマーなどの表面に4級アミノ含有部
分、ピリジニウム含有部分、グアニジウム含有部分、アミジニウム含有部分などのイオン性基を設けたデンドリマーを毒性物質による疾患の予防又は治療に用いるもの(特許文献5参照)や、同じデンドリマーを細菌などの微生物又は寄生虫による疾患の予防又は治療に用いるもの(特許文献6参照)、また、このようなイオン性末端基を有するデンドリマーをゲル形成剤として農薬や衛生用品の担体として使用するもの(特許文献7参照)などが報告されている。さらに、カチオン性の基を有するポリエチレンイミンデンドリマーなどのカチオン性物質をアニオン性の酵素活性蛍光基質と複合させて蛍光基質の膜輸送系を形成させる方法も報告されている(特許文献8参照)。
しかしながら、コア部にベンゾフェノン基を有する置換基が結合しているものは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,289,872号明細書
【特許文献2】米国特許第4,587,329号明細書
【特許文献3】米国特許第4,410,688号明細書
【特許文献4】国際特許公開 WO95/24221号公報
【特許文献5】特表2002−524523号公報
【特許文献6】特表2002−524524号公報
【特許文献7】特表2002−538186号公報
【特許文献8】特表2006−517382号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shiroh Futaki, Membrane-permeable arginine-rich peptides and the translocation mechanisms, Advanced Drug Delivery Reviews 57 (2005) 547-558
【非特許文献2】B.T.F. van der Gun et al, Serum insensitive, intranuclear protein delivery by the multipurpose cationic lipid SAINT-2, Journal of Controlled Release 123 (2007) 228-238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明で解決しようとする課題は、共有結合を介さず、分子間相互作用を利用して、単に混合という簡便な操作でタンパク質を細胞内に輸送することのできる、汎用性の高いタンパク質輸送剤として有用なポリイオンデンドリマーを提供すること、それを用いたタンパク質輸送剤、及びタンパク質の高効率な輸送方法を提供することにある。また、このようなタンパク質輸送剤の基本骨格となる分子の設計指針と合成手法を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複数のイオン種間で特に強い相互作用が働くことに着目し、分子表面にアルギニンの側鎖として知られるグアニジン基あるいはチオウレニウム基などを多数擁するポリカチオンデンドリマーの分子設計とその合成法を確立することによる、より高効率なタンパク質輸送剤の可能性の開拓に挑戦してきた。これらの化合物は、複数のイオン性官能基を表面に持つため、高い細胞膜透過性が期待できるとともに、標的タンパク質、核酸など複数のアニオン性官能基を持つ生体分子と強く結合する役割を果たすために、低濃度でのタンパク質・キャリア複合体形成が可能になることが期待できる。さらに、コア部に連結した疎水性のベンゾフェノン基は細胞膜内の疎水性の層に積極的に入り込むことで、上記のタンパク質・キャリア複合体を細胞膜上に集積・濃縮させる効果があることを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、デンドリマーの表面部としてグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を有し、分岐鎖としてポリアルキレンオキシ基を有し、かつ、コア部としてベンゾフェノン基を有する置換基が結合していることを特徴とするポリイオンデンドリマーに関する。より詳細には、本発明は、下記の一般式[1]
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、Xは下記の一般式[2]又は[3]
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、kは0又は1〜5の整数を表す。]
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、kは0又は1〜5の整数を表す。]
で表されるベンゾフェノン基を有する置換基を示し、Yは、それぞれ独立してグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を示し、lは1〜6の整数を表し、mは0又は1を表し、nは世代数を示し1〜5の整数を表す。なお、一般式[1]中の分岐部分の3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸アミドは、3,4,5−トリヒドロキシ桂皮酸アミドであってもよく、分岐鎖のエチレンオキシ鎖は、炭素数1〜6、好ましくは2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖であってもよい。]
で表されるポリイオンデンドリマーに関する。
より詳細には、本発明は、下記の一般式[4]
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、Yは、それぞれ独立してグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を示し、mは0又は1を表す。]
で表されるポリイオンデンドリマーに関する。
さらに詳細には本発明は、下記の式[5]で表されるポリイオンデンドリマーに関する。
【0019】
【化5】

【0020】
また、本発明は、前記した本発明のポリイオンデンドリマーを含有してなるタンパク質輸送剤又はタンパク質輸送剤用組成物に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明のポリイオンデンドリマーを含有してなるタンパク質輸送剤又はタンパク質輸送剤用組成物を用いて生体細胞膜内にタンパク質を輸送する方法に関する。
【0021】
本発明をより詳細に説明すれば、以下のとおりとなる。
(1)デンドリマーの表面部にグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を有し、分岐鎖としてポリアルキレンオキシ基を有し、かつ、コア部にベンゾフェノン基を有する置換基が結合していることを特徴とするポリイオンデンドリマー。
(2)分岐鎖が、末端に1,4位で結合した1,2,3−トリアゾ−ル基を有していてもよい繰り返し回数1〜6のポリエチレンオキシ基である前記(1)に記載のポリイオンデンドリマー。
(3)分岐部分が、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸アミド又は3,4,5−トリヒドロキシ桂皮酸アミドから構成されるものである前記(1)又は(2)に記載のポリイオンデンドリマー。
(4)ベンゾフェノン基を有する置換基が、前記の一般式[2]又は[3]で表されるベンゾフェノン基を有する置換基である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(5)世代が、1〜5世代である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(6)ポリイオンデンドリマーが、前記した一般式[1]で表されるポリイオンデンドリマーである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(7)ポリイオンデンドリマーが、前記した一般式[4]で表されるポリイオンデンドリマーである前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(8)ポリイオンデンドリマーが、前記した式[5]で表されるポリイオンデンドリマーである前記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマーを含有してなるタンパク質輸送剤。
(10)前記(9)に記載のタンパク質輸送剤を用いることを特徴とするタンパク質の輸送方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポリカチオン型デンドリマー(樹状高分子)は、共有結合を介さずに標的タンパク質と強い分子間相互作用によりタンパク質・キャリア複合体を形成することが可能であり、低濃度で、迅速に、かつタンパク質の活性を損なうことなく細胞内にタンパク質を輸送することができる。また、当該タンパク質輸送活性は血清存在下でも十分に高い効率が維持され、生体内においても十分な活性を示す。
さらに、本発明のタンパク質キャリア用のポリカチオン型デンドリマー(樹状高分子)は、実用的な1μMの濃度でも細胞毒性を示さない。
【0023】
以上のように、本発明のグアニジン等のカチオン性の基を多数有するポリカチオン型デンドリマーは、タンパク質と強く相互作用し、細胞へのタンパク質輸送剤として、従来のカチオン性脂質型タンパク質導入試薬SAINT-phDを遙かに上回る高効率なタンパク質の細胞内導入を実現することができるものである。そして、本発明のポリカチオン型デンドリマー(樹状高分子)は、従来の試薬と比較して、低濃度で迅速、かつ安全に使用できることから、従来のものでは困難であったin vivoへ応用が可能となる。
また、本発明は、表面部としてグアニジン基などのカチオン性の基、分岐鎖として親水性の高いポリエチレングリコール基、コア部としてベンゾフェノン基を有する置換基を有する樹状高分子を分子設計し、その製造法を確立した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、タンパク質として蛍光標識アクチンを用いた、本発明のデンドリマーG1−BP(図1の右端)、Arg9、G1−NOMe、G1−NFITC、及びSAINT-phDによるタンパク質取り込み活性を比較した結果を示すものである。図1の左端はコントロールであり、その右側はアクチンのみをを接触させた場合である。
【図2】図2は、本発明のデンドリマーG1−BPによるタンパク質取り込みを共焦点顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【図3】図3は、本発明のデンドリマーG1−BP、又はSAINT-phDによるタンパク質取り込み活性に対する血清の影響を解析した結果を示すものである。
【図4】図4は、本発明のデンドリマーG1−BPによるタンパク質取り込み活性についての接触時間及び濃度による影響を解析した結果を示すものである。
【図5】図5は、本発明のデンドリマーG1−BPにより取り込まれたタンパク質の活性が維持されているかどうかを共焦点顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【図6】図6は、本発明のデンドリマーG1−BPの細胞毒性を解析した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリイオンデンドリマーの特徴は、第一にデンドリマーの表面部にグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を有することである。このようなカチオン性の基としては、次の式[6]、[7]、及び[8]、
【0026】
【化6】

【0027】
が挙げられる。これらの基の水素原子部分は炭素数1〜10、好ましくは1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などで置換されていてもよい。
このようなカチオン性の基はデンドリマー表面部に1個以上あればよいが、好ましくは表面部の末端の全てがこれらのカチオン性の基を有するものが挙げられる。
また、デンドリマー表面部における、このようなカチオン性の基は、同一であっても異なっていてもよいが、製法の容易性からは全てが同一の場合が好ましい。
最近、グアニジン基を有するアミノ酸であるアルギニンの作用に注目が集まっている。特に、アルギニンを導入した化合物の細胞膜透過性が増すことが報告されており、この理由がグアニジン基のようなカチオン性の基にあるとされている。本発明のデンドリマー(樹状高分子)においても、本発明のデンドリマーが優れた細胞膜透過を有する一因が、グアニジン基のようなカチオン性の基を多数有していることと考えられる。
【0028】
本発明のポリイオンデンドリマーの特徴は、第二に分岐鎖として親水性の高いポリアルキレンオキシ基を有していることである。本発明におけるアルキレン基としては、炭素数1〜6、好ましくは2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基などが挙げられるが、入手のしやすさや親水性などの点からエチレンオキシ基が好ましい。また、これらのアルキレンオキシ基は、水酸基、炭素数1〜5のアルコキシ基などの親水性の基で置換されていてもよい。
分岐鎖におけるアルキレンオキシ基の繰り返し数としては、特に制限はないが、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜4が挙げられる。また、デンドリマーの各世代において、これらの繰り返し数は同じであっても異なっていてもよい。これらの繰り返し数により、デンドリマーの内部のセル空間の広さが確保されることから、コア部に疎水性のベンゾフェノン基を有する大きな基を導入しようとする場合には、比較的大きな繰り返し数が必要となるし、疎水性のベンゾフェノン基を有する基が小さいものであれば、繰り返し数は比較的少なくてもよい。
本発明の一般式[1]においては、分岐鎖としてエチレンオキシ鎖が例示されているが、前記してきたように、本発明のポリイオンデンドリマーの分岐鎖としては、一般式[1]に例示されているエチレンオキシ鎖に限定されるものではなく、親水性の高いポリアルキレンオキシ鎖であれば炭素数1〜6、好ましくは2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖のいずれであってもよい。
【0029】
本発明のポリイオンデンドリマーの特徴は、第三にコア部としてカルボキシル基を有し当該カルボキシル基にアルキレンオキシ基を介してベンゾフェノン基を有する置換基が結合していることである。当該カルボキシル基は、遊離のカルボキシル基として存在することができるのであれば、分岐鎖を形成することができる基を有している限りにおいて、どのような化合物から誘導されるものであってもよいが、好ましくは本発明のデンドリマーにおける分岐部分を形成する分子と同じ化合物から誘導されるものが挙げられる。例えば、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリアミノカルボン酸、トリカルボン酸や、テトラカルボン酸などが挙げられる。好ましい具体例としては、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸アミド、3,4,5−トリヒドロキシ桂皮酸、又は3,4,5−トリヒドロキシ桂皮酸アミドなどが挙げられる。
なお、一般式[1]、[4]、及び[5]においては、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸アミドが例示されているが、これに限定されるものではない。
また、当該カルボキシ基に結合するアルキレンオキシ基の繰り返し数としては、特に制限はないが、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは3〜5が挙げられる。ベンゾフェノン基はカルボキシル基に結合しているアルキレンオキシ基に直接結合していてもよいし、たとえばチオウレア基を介して結合していてもよい。好ましい例としては、
【0030】
【化7】

【0031】
式[9]及び式[10]で示されるようにベンゾフェノンにカルボキシ基に共有結合させるための官能基を導入して、コア部のカルボキシ基とアミド結合させることができる。
コア部のカルボキシル基とベンゾフェノンを有する置換基との結合は、共有結合が可能であればどのような形態であってもよい。好ましい結合としては、アミド結合、エステル結合などが挙げられる。
ベンゾフェノン基を有する置換基におけるベンゾフェノンは、コア部のカルボキシ基に結合するための官能基、例えば、水酸基などの官能基のほかに、炭素数1〜10、好ましくは1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基のような不活性な基で置換されていてもよい。また、コア部のカルボキシ基に結合するためのベンゾフェノンの官能基の位置は、特に制限はなく、2〜6位のいずれであってもよい。好ましい位置としては、4位が挙げられる。
【0032】
本発明のポリイオンデンドリマーの分岐部分を形成する化合物としては、分岐可能なものであれば特に制限はないが、好ましくは前記したコア部の化合物と同種の化合物の使用が挙げられる。例えば、コア部におけるカルボキシ基を有する化合物として、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、又は3,4,5−トリヒドロキシ桂皮酸用いた場合には、分岐部分においてもこれを用いることが製造の容易さの点からも好ましい。
分岐部分の化合物と、分岐鎖の結合も任意に選択することができる。例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、イミノ(−N−)結合などの任意の結合を選択することができる。また、必要に応じてトリアゾリルメチル基を挿入することもできる。
【0033】
本発明のポリイオンデンドリマーの製造方法としては、デンドリマーの公知の製造方法に準じた製造方法を適用することができる。例えば、コア部を形成して第一世代を製造する方法、又は第一世代を形成した状態でコア部を形成させる方法により、コア部と第一世代を製造し、次いで、必要に応じて第二世代、第三世代と成長させる方法が挙げられる。
そして、表面の末端部を形成させることにより製造することができる。
より具体的には、後記する実施例を参照されたい。
【0034】
前記してきた一般式[1]で表される本発明のポリイオンデンドリマーは、分岐鎖がエチレンオキシ基であり、分岐部分が3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸で前の世代の分岐鎖とアミド結合で結合され、次の世代とエーテル結合で結合され、分岐鎖の繰り返し数がlで世代がnのものを表している。
また、前記した一般式[4]は、1世代の状態の本発明のポリイオンデンドリマーを表している。
これらはいずれも本発明の好ましいポリイオンデンドリマーの例であり、より具体的には、本発明の好ましいポリイオンデンドリマーとして、次式、
【0035】
【化8】

【0036】
で表されるポリイオンデンドリマー(以下、この化合物をG1−BPという。)が挙げられる。
【0037】
本発明のポリイオンデンドリマーは、細胞膜透過性を有するだけでなくタンパク質と会合して、タンパク質・キャリア複合体を形成することができる。本発明のポリイオンデンドリマーはタンパク質と会合するだけであり、共有結合で結合されている訳ではないことからタンパク質の構造は何等変化することなくタンパク質の活性を維持したままで細胞膜内に目的のタンパク質を導入することができる。したがって、本発明は、本発明のポリイオンデンドリマーとタンパク質とのタンパク質・キャリア複合体を提供するものである。
本発明は、本発明のポリイオンデンドリマーを含有してなる細胞内へのタンパク質輸送剤を提供する。本発明のタンパク質輸送剤は、0.01μM以上の濃度で、好ましくは0.05〜5μMの濃度で、迅速かつ安全に、しかも効率よく目的のタンパク質を細胞内へ輸送することができる。また、本発明のタンパク質輸送剤は、血清に対する影響を受けにくく、生体内においても使用することが可能である。また、本発明は、本発明のポリイオンデンドリマーを含有してなる細胞内へのタンパク質輸送担体(キャリアー)を提供する。さらに、本発明は、本発明のポリイオンデンドリマー及びタンパク質輸送用溶媒を含有してなる細胞内へのタンパク質輸送用組成物を提供する。
本発明は、本発明のタンパク質輸送剤を用いることを特徴とするタンパク質の輸送方法を提供する。本発明の輸送方法は、目的とするタンパク質と本発明のタンパク質輸送剤を混合し、得られた混合物を緩衝液や培養液などにより適宜希釈し、これを標的の細胞に接触させることにより行うことができる。本発明の輸送方法によれば、目的のタンパク質を迅速かつ安全に、しかも効率よく標的とする細胞へ輸送することができる。
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
G1−BPの製造
次に示す化学反応式にしたがって、目的の本発明のデンドリマーG1−BPを製造した。
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
(1)化合物3の製造
p−トルエンスルホン酸2−(2−(2−アジドエトキシ)エトキシ)エチル(化合物1)1.66g(5.04mmol)と4−ヒドロキシベンゾフェノン(化合物2)1.00g(5.04mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)15mlに溶解させた。炭酸カリウム2.09g(15.1mmol)を添加し、80℃で18時間撹拌した。クロロホルムで希釈した後、ろ過により固体を除去し、減圧下、60℃で溶媒を除去した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去した後、2回のカラムクロマトグラフィー(アルミナ、クロロホルム)、(シリカゲル、クロロホルム)で精製し、化合物3を薄黄色油状の透明液体として得た(1.60g;収率89%)。
H−NMR(CDCl): δ (ppm)
3.37 (t, 2H; CH), 3.63-3.80 (m, 6H; OCH),
3.90 (t, 2H; Ar−OCHCH), 4.21 (t, 2H; Ar−OCH),
6.98 (d, 2H; 3,5-Ar-H), 7.41-7.61 (m, 3H; 3',4',5'-Ar-H),
7.70-7.88 (m, 4H; 2,2',5,5'-Ar-H).
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)
50.6, 67.5, 69.5, 70.0, 70.6, 70.8, 113.9, 127.9,
129.5, 130.0, 131.6, 132.2, 138.0, 162.2, 195.1.
MALDI−TOF−MS m/z
計算値: 394.29,
実測値: [M+K] 394.12,
計算値: 378.32,
実測値: [M+Na] 378.14,
計算値: 356.35,
実測値: [M+H] 356.16.
【0043】
(2)化合物4の製造
1.45g(4.08mmol)の化合物3とパラジウム−炭素(Pd:10%)100mgを混合し、エタノール10mlに懸濁させた。水素下、室温で終夜撹拌した後、クロロホルムで希釈した。セライトろ過により固体を除去し、溶媒を減圧除去することで化合物4を黄色の固体として得た(1.24g;収率93%)。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)
3.15 (t, 2H; CHNH), 3.55-3.97 (m, 8H; OCH),
4.22 (t, 2H; Ar−OCH), 5.39 (br, 2H; NH),
7.00 (d, 2H; 3,5-Ar-H), 7.41-7.61 (m, 3H; 3',4',5'-Ar-H),
7.70-7.88 (m, 4H; 2,2’,5,5'-Ar-H).
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)
39.8, 67.5, 69.4, 70.0, 70.6, 70.8, 114.1, 128.1,
129.6, 130.3, 131.9, 132.4, 138.0, 162.0, 195.5.
MALDI−TOF−MS m/z
計算値: 370.46,
実測値: [M+K] 368.13,
計算値: 352.41,
実測値: [M+Na] 352.15,
計算値: 330.43,
実測値: [M+H] 330.17.
【0044】
(3)化合物6の製造
既知のトリアジドデンドロン(化合物5)500mg(0.779mmol)と254mg(0.771mmol)の化合物4及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)200μlを混合し、アセトニトリル/クロロホルム(1/1)10mlに溶解させた。1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−ベンゾトリアゾリウム−3−オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)192mg(0.818mmol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧除去した後、酢酸エチルに溶解させ、2M硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。アルミナでろ過し、溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=4/1→1/0)で精製した。これをさらにリサイクルGPCで精製し、化合物6を薄黄色油状の液体として得た(373mg;収率51%)。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)
3.36 (m, 6H; CH), 3.52-3.94 (m, 34H; OCH, NHCH),
4.18 (m, 8H; Ar−OCH), 6.84 (t, 1H; CONHCH),
6.93 (d, 2H; 3,5-benzophenone-H), 7.08 (s, 2H; Ar-H),
7.40-7.60 (m, 3H; 3',4',5'-benzophenone-H),
7.67-7.83 (m, 4H; 2,2’,5,5’-benzophenone-H).
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)
39.8, 50.6, 67.5, 69.0, 69.4, 69.7, 69.8, 69.9, 70.1, 70.4,
70.6, 70.7, 72.3, 106.9, 113.9, 128.0, 129.6, 130.1, 131.7,
132.3, 137.9, 141.2, 152.2, 162.0, 166.7, 195.5.
MALDI−TOF−MS m/z
計算値: 991.81,
実測値: [M+K] 991.39,
計算値: 975.84,
実測値: [M+Na] 975.42.
【0045】
(4)化合物8の製造
既知のデンドロン(化合物7)1.13g(0.876mmol)とプロパルギルアミン103mg(1.87mmol)を混合し、アセトニトリル10mlに溶解させた。1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−ベンゾトリアゾリウム−3−オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)215mg(0.920mmol)を添加した後、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧除去した後、酢酸エチルに溶解させ、2M硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これをアルミナでろ過し、減圧下で乾燥させることで化合物8を白色の固体として得た(661mg;収率57%)。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)
1.46 (m, 57H; CH), 3.48-3.86 (m, 31H; OCH, CH-guanidine, CCH),
4.19 (m, 8H; Ar−OCH, CONHCH), 7.12 (br, 1H; CONHCH),
7.25 (s, 2H; Ar-H), 8.58 (br, 3H; CHNHC(NBoc)(NHBoc)),
11.4 (br, 3H; NHBoc).
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)
27.8, 28.0, 29.2, 40.3, 60.0, 68.6, 68.9, 69.5, 70.0,
70.1, 70.4, 70.8, 71.9, 78.8, 79.6, 82.5, 82.6, 106.8,
128.4, 140.9, 151.9, 152.4, 155.8, 162.9, 166.1.
MALDI−TOF−MS m/z
計算値: 1350.10,
実測値: [M+Na] 1349.71,
計算値: 1274.48,
実測値: [M−C+H] 1271.66,
計算値: 1229.57,
実測値: [M−Boc+H] 1227.67,
計算値: 1177.36,
実測値: [M−Boc−C+H] 1171.61,
計算値: 1128.38,
実測値: [M−2Boc+H] 1127.62,
計算値: 1064.49,
実測値: [M−2Boc−C+H] 1071.56,
計算値: 1031.08,
実測値: [M−3Boc+H] 1027.57,
計算値: 828.73,
実測値: [M−5Boc+H] 827.46,
計算値: 727.22,
実測値: [M−6Boc+H] 727.41.
【0046】
(5)化合物9の製造
119mg(0.125mmol)の化合物6と555mg(0.418mmol)の化合物8と硫酸銅五水和物11mg(0.04mmol)及びアスコルビン酸ナトリウム166mg(0.836mmol)を混合し、テトラヒドロフラン(THF)/水(1/1)10mlに溶解させ、室温で12時間撹拌した。酢酸エチルで希釈した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。セライトろ過により固体を除去し、減圧下で溶媒を除去した後、リサイクルGPCで精製することにより化合物9を薄茶色の固体として得た(420mg;収率68%)。
H−NMR(CDCl;ppm):δ
1.39 (m, 162H; CH), 3.33-3.85 (m, 122H; OCH, CH-guanidine),
3.93-4.18 (m, 26H; Ar−OCH), 4.38 (br, 6H; CHCH-triazol),
4.53 (br, 6H; triazol-CH-NHCO), 6.82 (m, 3H; triazol-H),
7.08 (br, 6H; 3,5-benzophenone-H, CONH),
7.29 (br, 10H; Ar-H, 3,5-benzophenone-H),
7.33-7.53 (m, 3H; 3',4',5'-benzophenone-H),
7.55-7.86 (m, 4H; 2,2',5,5'-benzophenone-H),
8.52 (br, 9H; CHNHC(NBoc)(NHBoc)), 11.4 (br, 9H; NHBoc).
13C−NMR(CDCl;ppm):δ
27.9, 28.1, 35.2, 40.4, 49.9, 68.8, 69.0, 69.2, 69.5, 69.9,
70.2, 70.4, 70.5, 72.1, 78.8, 82.6, 106.9, 113.8, 123.2, 127.8,
128.8, 129.3, 129.5, 129.9, 131.5, 132.0, 137.8, 141.1, 152.1,
152.6, 155.8, 161.9, 163.0, 166.4, 166.6, 194.8.
【0047】
(6)G1−BPの製造
405mg(0.082mmol)の化合物9を4.0M塩化水素ジオキサン溶液5mlに溶解させ、室温で6時間撹拌した後、減圧下で乾燥させてG1−BPを薄茶色の固体として得た(282mg;収率>99%)
H−NMR(DO;ppm):δ
3.28 (m, 18H; CH-guanidine),
3.37-4.23 (m, 106H; OCH, CHCHNHCO),
4.36 (m, 26H; Ar−OCH),
4.59 (br, 12H; CHCH-triazol, triazol-CH-NHC),
6.65 (m, 3H; triazol-H), 6.94-7.15 (m, 10H; Ar-H, 3,5-benzophenone-H),
7.19-7.56 (m, 7H; 3',4',5'-benzophenone-H, 2,2',5,5’-benzophenone-H).
13C−NMR(DO;ppm):δ
29.0, 40.52, 42.0, 51.4, 67.2, 69.0, 69.5, 69.6, 69.7, 70.1, 70.3, 70.4,
70.7, 72.7, 106.6, 106.8, 114.7, 129.6, 130.2, 130.3, 133.2, 133.4,
137.4, 140.2, 152.4, 152.6, 157.8, 162.9, 166.7, 167.5, 168.8, 198.0.
【実施例2】
【0048】
G1−NBPの製造
次に示す化学反応式にしたがって、目的の本発明のデンドリマーG1−NBPを製造した。
【0049】
【化11】

【0050】
【化12】

【0051】
(1)化合物11の製造
アミノ基をベンジルオキシカルボニル基(Cbz)で保護した、既知のトリエチレングリコール誘導体(化合物10)330mg(1.17mmol)、500mg(0.779mmol)の化合物5、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)171μlを混合し、アセトニトリル6mlに溶解させた。1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−ベンゾトリアゾリウム−3−オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)190mg(0.810mmol)を添加した後、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧除去した後、2回のカラムクロマトグラフィー(アルミナ、酢酸エチル+10%メタノール)、(シリカゲル、酢酸エチル)で精製し、化合物11を薄黄色油状の液体として得た(469mg;収率66%)。
H−NMR(CDCl;ppm):δ
3.36 (m, 8H; CH, CHNHCOBn),
3.51-3.88 (m, 34H; OCH, CHNHCO), 4.18 (m, 6H; Ar−OCH),
5.06 (s, 2H; PhCHO), 7.04 (s, 2H; Ar-H), 7.31 (br, 5H; Ph-H).
13C−NMR(CDCl;ppm):δ
50.6, 61.7, 66.7, 69.0, 69.7, 69.9, 70.1, 70.4, 70.6, 70.7, 72.3,
107.0, 127.9, 128.3, 129.6, 136.3, 141.1, 152.2, 156.2, 166.8.
MALDI−TOF−MS m/z
計算値: 944.17,
実測値: [M+K] 944.39,
計算値: 928.19,
実測値: [M+Na] 928.41.
【0052】
(2)化合物12の製造
410mg(0.453mmol)の化合物11をTHF4mlに溶解させ、0℃に冷却した。ここにトリフェニルホスフィン392mg(1.49mmol)を添加した後、徐々に室温まで昇温させ、その後室温で3時間撹拌した。水1mlを添加した後、さらに50℃で終夜撹拌した。室温に戻した後、水3mlと12M塩酸450μlを添加した後、トルエンで3回洗浄した。これを減圧下で溶媒を除去することで化合物12を茶色油状の液体として得た(423mg;収率>99%)。
H−NMR(DO;ppm):δ
3.08 (m, 8H; CH, CHNHCOBn),
3.35-3.88 (m, 34H; OCH, CHNHCO),
4.03-4.20 (m, 6H; Ar−OCH), 4.84 (s, 2H; PhCHO),
7.00 (s, 2H; Ar-H), 7.11-7.27 (m, 5H; Ph-H).
13C−NMR(DO;ppm):δ
40.2, 61.4, 67.4, 69.3, 69.9, 70.1, 70.5, 70.8, 71.0, 73.1,
107.5, 128.3, 129.0, 129.5, 130.4, 137.3, 140.5, 152.6, 158.7, 169.7.
MALDI−TOF−MS m/z
計算値: 866.00,
実測値: [M+K] 866.42,
計算値: 850.04,
実測値: [M+Na] 850.44,
計算値: 828.07,
実測値: [M+H] 828.46.
【0053】
(3)化合物13の製造
1.71g(1.33mmol)の化合物7、377mg(0.402mmol)の化合物12及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)292μlを混合し、アセトニトリル10mlに溶解させた。1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−ベンゾトリアゾリウム−3−オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)324mg(1.38mmol)を添加した後、室温で4.5時間撹拌した。溶媒を減圧除去した後、酢酸エチルに溶解させてアルミナでろ過した。再度、溶媒を減圧除去し、クロロホルムに溶解させ、ヘキサン中で再沈殿させることにより化合物13を薄黄色の固体として得た(1.13g;収率60%)。
H−NMR(CDCl;ppm):δ
1.45 (m, 162H; CH),
3.42-3.86 (m, 132H; OCH, CH-guanidine, CHNHCO),
3.86 (m, 24H; Ar−OCH), 7.07 (br, 8H; Ar-H), 7.22 (m, 5H; Ph-H),
8.56 (br, 9H; CHNHC(NBoc)(NHBoc)), 11.4 (br, 9H; NHBoc).
13C−NMR(CDCl;ppm):δ
28.0, 28.3, 38.5, 39.8, 40.5, 43.4, 66.4, 68.9, 69.2, 69.6, 70.1,
70.3, 70.5, 72.2, 79.1, 82.8, 106.9, 127.7, 127.8, 128.2,
129.4, 129.5, 141.1, 152.2, 152.6, 155.9, 163.1, 166.8.
【0054】
(4)化合物14の製造
931mg(0.200mmol)の化合物13とパラジウム−炭素(Pd:10%)50mgを混合し、エタノール10mlに懸濁させた。水素下、室温で終夜撹拌した後、クロロホルムで希釈した。セライトろ過により固体を除去し、溶媒を減圧除去することで白色の固体として得た(852mg;収率94%)。
H−NMR(CDCl;ppm):δ
1.41 (m, 162H; CH), 3.07 (br, 2H; CHNH),
3.38-3.93 (m, 130H; OCH, CH-guanidine, CHNHCO),
4.11 (m, 24H; Ar−OCH), 7.09 (m, 8H; Ar-H),
8.27 (br, 2H; NH), 8.56 (br, 9H; CHNHC(NBoc)(NHBoc)),
11.2 (br, 9H; NHBoc).
13C−NMR(CDCl;ppm):δ
27.2, 27.4, 39.0, 41.3, 42.1, 53.8, 68.1, 68.5, 68.8, 68.9,
69.6, 69.8, 71.6, 81.6, 84.2, 106.1, 126.9, 127.1, 127.6,
128.8, 135.9, 139.7, 151.3, 154.4, 155.8, 157.9, 166.2.
【0055】
(5)化合物15の製造
476mg(0.106mmol)の化合物14、既知のベンゾフェノン−4−イソチオシアネート638mg(2.67mmol)及びトリエチルアミン368μlを混合し、DMF5mlに溶解させた後、室温で終夜撹拌した。酢酸エチルで希釈した後、飽和食塩水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。2回の再沈殿(クロロホルム→ヘキサン、クロロホルム→ジエチルエーテル)で精製することにより化合物15を茶色の固体として得た(375mg;収率75%)。
H−NMR(CDCl;ppm):δ
1.44 (m, 162H; CH), 3.34-3.84 (m, 132H; OCH, CH-guanidine,
CHNHCO, CHNHCS), 4.22 (m, 24H; Ar−OCH),
7.06 (m, 8H; Ar-H), 7.32-7.99 (m, 9H; benzophenone-H),
8.57 (br, 9H; CHNHC(NBoc)(NHBoc)), 11.4 (br, 9H; NHBoc).
13C−NMR(CDCl;ppm):δ
28.1, 28.3, 39.9, 40.6, 68.5, 68.9, 69.3, 69.8, 70.3, 70.4,
72.5, 79.2, 83.0, 102.8, 107.0, 117.7, 125.3, 128.1, 128.2,
128.3, 129.7, 129.9, 131.5, 131.8, 138.0, 140.0, 152.3,
152.7, 156.3, 162.1, 163.5, 195.5.
【0056】
(6)G1−NBPの製造
325mg(0.068mmol)の化合物15を4.0M塩化水素ジオキサン溶液5mlに溶解させ、室温で8.5時間撹拌した後、減圧下で乾燥させた。これをクロロホルムで洗浄することでG1−NBPを暗褐色の固体として得た(151mg;収率67%)
H−NMR(dDMSO;ppm):δ
2.85-3.15 (m, 18H; CH-guanidine),
3.17-3.81 (m, 108H;OCH, CHCHNHCO),
3.90-4.24 (m, 24H; Ar−OCH),
6.92-7.20 (m, 10H; Ar-H, 3,5-benzophenone-H),
7.32-7.85 (m, 7H; 3',4',5'-benzophenone-H, 2,2',5,5'-benzophenone-H).
13C−NMR(DO;ppm):δ
40.6, 42.3, 69.4, 69.9, 70.9, 73.2, 107.6, 119.1, 129.2, 130.6,
131.6, 132.2, 133.3, 138.0, 141.1, 152.7, 158.2, 168.6, 196.6.
【実施例3】
【0057】
タンパク質の細胞内取り込み
(1)標識タンパク質の調整
標的タンパク質として、蛍光標識されたアクチンを以下の方法で調整した。
アクチン(ウサギ骨格筋由来)1mgを20mM HEPES緩衝液(25mM塩化カリウム含有、pH7.0)500μlに溶解させた。これにAlexa Fluor(登録商標)633 C−マレイミド(1mM)HEPES緩衝溶液50μlを添加し、室温で4時間静置した。脱塩カラムG−25で過剰の蛍光色素を除去した後、HEPES緩衝液で200μg/mlに希釈して分注し、−20℃で保存した。
(2)タンパク質取り込み活性の評価
タンパク質の取り込み活性評価は以下の方法で行った。
6−well培養ディッシュに100,000個/wellとなるようにHeLa細胞を、仔ウシ血清(FBS;10%)を含むDMEM培地中で培養した。下記に示す各種試薬とAlexa Fluor(登録商標)633標識アクチンを混合した後、FBSを含まないDMEM培地で下記に示す濃度に希釈した。これをPBSで洗浄したHeLa細胞に添加し、37℃、5%CO雰囲気で4時間接触させた。再度HeLa細胞をPBSで3回洗浄し、トリプシン−EDTAでディッシュから剥がしたものをフローサイトメトリーによって解析し、アクチンに結合させたAlexa Fluor(登録商標)633の蛍光強度を測定した。比較のため、蛍光標識アクチンのみを接触させた場合を測定した。図1に示す結果を得た。
【0058】
使用したタンパク質、試薬の接触時の濃度は以下の通りである。
(1)蛍光標識アクチン:50nM(共通)
(2)蛍光標識アクチン + アルギニン九量体(Arg):1μM
(3)蛍光標識アクチン + G1−NOMe:1μM
(4)蛍光標識アクチン + G1−NFITC:1μM
(5)蛍光標識アクチン + SAINT-phD:15μM
(6)蛍光標識アクチン + G1−BP:1μM
なお、比較例とした用いた(2)のアルギニン九量体(Arg)は細胞膜透過性ペプチドであり、(3)のG1−NOMeは次の化学式、
【0059】
【化13】

【0060】
で示されるコア部にベンゾフェノン基を有していないポリイオンデンドリマーであり、(4)のG1−NFITCは次の化学式、
【0061】
【化14】

【0062】
で示されるコア部にベンゾフェノン基ではなく9−フェニルキサンテン誘導体を有するポリイオンデンドリマーであり、(5)のSAINT-phDは市販のタンパク質導入剤である。
図1に示されるように、膜透過性ペプチドとして知られているArgは、アクチンのみを接触させた場合とほとんど違いは見られなかった。市販のタンパク質導入剤であるSAINT-phDを用いた場合は、Argと比較しても有意に高い取り込み活性が見られた。
一方、本発明のG1−BPを用いた場合では、SAINT-phDの1/15の濃度であるにもかかわらず、3倍以上の高い取り込み活性を示した。
また、コア部にベンゾフェノン基を有していないポリイオンデンドリマーであるG1−NOMe及びG1−NFITCは、いずれもアクチンのみを接触させた場合とほとんど違いは見られなかった。
この結果、本発明のコア部にベンゾフェノン基を有する置換基が結合しているポリイオンデンドリマーは、他のポリイオンデンドリマーに比べて顕著なタンパク質輸送作用を有していることが確認された。
【実施例4】
【0063】
タンパク質取り込みの共焦点顕微鏡での観察による確認
また、本発明のG1−BPによるAlexa Fluor(登録商標)633標識アクチンの細胞内への取り込みは、以下のようにしても確認した。
顕微鏡観察用のガラス底培養ディッシュに10,000個/枚となるようにHeLa細胞を培養した。G1−BPとAlexa Fluor(登録商標)633標識アクチンを混合した後、FBSを含まないDMEM培地で希釈した。これをPBSで洗浄したHeLa細胞に添加し、37℃、5%CO雰囲気で4時間接触させた。PBSで3回洗浄した後、DMEM培地を添加し、共焦点顕微鏡で観察し(励起波長633nm)、図2の結果を得た。
使用したタンパク質、試薬の接触時の濃度は以下の通りである。

(1)蛍光標識アクチン:50nM
(2)蛍光標識アクチン + G1−BP:1μM

図2の左側は、本発明のG1−BPを混合した場合を示し、右側は蛍光標識アクチンのみの場合を示す。図2の左側のように、本発明のG1−BPを混合した場合には、細胞内部にAlexa Fluor(登録商標)633由来の蛍光が観察され、標識したアクチンがHeLa細胞内に取り込まれていることが確認できた。
【実施例5】
【0064】
血清の影響
タンパク質取り込み活性に対する血清の影響を調べるために、同様の実験を、FBSを10%含む培地を用いて行った。具体的な操作は以下の通りである。
6−well培養ディッシュに100,000個/wellとなるようにHeLa細胞を、仔ウシ血清(FBS;10%)を含むDMEM培地中で培養した。下記に示す各種試薬とAlexa Fluor(登録商標)633標識アクチンを混合した後、DMEM培地(10%FBS)で希釈した。これをPBSで洗浄したHeLa細胞に添加し、37℃、5%CO雰囲気で4時間接触させた。再度HeLa細胞をPBSで3回洗浄し、トリプシン−EDTAでディッシュから剥がしたものをフローサイトメトリーによって解析し、図3に示す結果を得た。図3の左側は、SAINT-phDを混合した場合を示し、右側は本発明のG1−BPを混合した場合を示す。それぞれの、左側(青色)は血清がない場合を示し、右側(黄色)は血清がある場合を示す。

使用したタンパク質、試薬の接触時の濃度は以下の通りである。
蛍光標識アクチン:50nM(共通)
(1)蛍光標識アクチン + SAINT-phD:15μM
(2)蛍光標識アクチン + G1−BP:1μM

図3にSAINT-phDとG1−BPの血清なし・血清ありのそれぞれの結果を示す。本発明のG1−BPは血清の存在下においても十分に高いタンパク質取り込み活性を示し、依然としてSAINT-phDの2倍以上の活性を示す。
【実施例6】
【0065】
濃度及び接触時間の影響
G1−BPの接触濃度、接触時間がタンパク質取り込み量に与える影響を調べるために、以下の実験を行った。
6−well培養ディッシュに100,000個/wellとなるようにHeLa細胞を、仔ウシ血清(FBS;10%)を含むDMEM培地中で培養した。各種試薬とAlexa Fluor(登録商標)633標識アクチンを混合した後、FBSを含まないDMEM培地で希釈した。これをPBSで洗浄したHeLa細胞に添加し、37℃、5%CO雰囲気で、G1−BP(1μM)の条件で1〜4時間、あるいはG1−BP(0.05,0.1,0.5,1μM)の条件で4時間接触させた。再度HeLa細胞をPBSで3回洗浄し、トリプシン−EDTAでディッシュから剥がしたものをフローサイトメトリーによって解析し、図4(a)及び(b)に示す結果を得た。図4の(a)[上側]は、本発明のG1−BP(1μM)の条件で1〜4時間接触させた時の結果を示し、図4(b)[下側]は、本発明のG1−BPの濃度が、0.05μM、0.1μM、0.5μM、又は1μMの濃度で4時間接触させた時の結果を示す。
本発明のG1−BP 1μMを使用した場合、接触時間が1時間でもSAINT-phD4時間接触時の活性を上回る性能を示した。SAINT-phDのプロトコルでは、細胞内導入のためのインキュベート時間が4時間であるのに対し、本発明のポリカチオン型デンドリマーを1μMの濃度で使用した場合には1時間でこれを上回る迅速なタンパク質輸送が達成されることが明らかになった。また、4時間接触では、0.5μM(SAINT-phDの1/30)という低濃度でも、市販のタンパク質導入試薬SAINT-phD(カチオン性脂質)を15μMの濃度で用いた場合の2.5倍以上のタンパク質輸送活性を示した。
【実施例7】
【0066】
タンパク質の変性の有無
細胞内にG1−BPによって取り込まれたタンパク質がその活性を維持しているかどうかを以下の実験により確認した。
顕微鏡観察用のガラス底培養ディッシュに10,000個/枚となるようにHeLa細胞を培養した。G1−BPと緑色蛍光タンパク質(GFP)を混合した後、FBSを含まないDMEM培地で希釈した。これをPBSで洗浄したHeLa細胞に添加し、37℃、5%CO雰囲気で4時間接触させた。PBSで3回洗浄した後、DMEM培地を添加し、共焦点顕微鏡で観察し(励起波長488nm)、図5に示す結果を得た。図5の左側は、本発明のG1−BPを混合したときの結果を示し、右側は緑色蛍光タンパク質(GFP)のみのときの結果を示す。
使用したタンパク質、試薬の接触時の濃度は以下の通りである。

緑色蛍光タンパク質(GFP):5nM
G1−BP:1μM

細胞内に取り込まれたGFP由来の蛍光が確認できることから、取り込まれたタンパク質は変性や失活を引き起こさず、その機能を維持できたことがわかる。
【実施例8】
【0067】
細胞毒性
G1−BPの細胞毒性をCell Counting Kit-8(同仁化学)を用いて以下のように調べた。
96−well培養プレートに5,000個/wellとなるようにHeLa細胞を培養した。PBSで洗浄したこれらのHeLa細胞にG1−BPを含むDMEM培地(FBSを含まない)を100μlずつ添加し、37℃、5%CO雰囲気で4時間接触させた。ここに、Cell Counting Kit-8発色試薬を10μLずつ添加し、さらに37℃、5%CO雰囲気で1時間静置下後、450nmの吸光度測定によって毒性を評価し、図6に示す結果を得た。図6の縦軸は細胞生存率(比率)を示し、横軸はG1−BPの濃度(μM)を示す。
図6のように、タンパク質取り込み活性が十分に発揮される1μMの濃度でも細胞毒性は全く生じていない。以上のように、本発明のG1−BPは標的の細胞に全く毒性を示さずに、既存のSAINT-phDを上回る高いタンパク質取り込み活性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、目的とするタンパク質を、迅速かつ効率よく、しかもタンパク質の活性を損なうことなく安全に細胞内に輸送することができる、タンパク質キャリア用分子としての新規なポリカチオン型デンドリマー(樹状高分子)を提供するものであり、細胞内への効率的かつ迅速なタンパク質輸送剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンドリマーの表面部にグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を有し、分岐鎖としてポリアルキレンオキシ基を有し、かつ、コア部にベンゾフェノン基を有する置換基が結合していることを特徴とするポリイオンデンドリマー。
【請求項2】
分岐鎖が、末端に1,4位で結合した1,2,3−トリアゾ−ル基を有していてもよい繰り返し回数1〜6のポリエチレンオキシ基である請求項1に記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項3】
分岐部分が、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸アミド又は3,4,5−トリヒドロキシ桂皮酸アミドから構成されるものである請求項1又は2に記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項4】
ベンゾフェノン基を有する置換基が、次の一般式[2]又は[3]、
【化15】

[式中、kは0又は1〜5の整数を表す。]
【化16】

[式中、kは0又は1〜5の整数を表す。]
で表されるベンゾフェノン基を有する置換基である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項5】
世代が、1〜5世代である請求項1〜4のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項6】
ポリイオンデンドリマーが、次の一般式[1]
【化17】

[式中、Xは次に示す一般式[2]又は[3]、
【化18】

[式中、kは0又は1〜5の整数を表す。]
【化19】

[式中、kは0又は1〜5の整数を表す。]
で表されるベンゾフェノン基を有する置換基を示し、Yは、それぞれ独立してグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を示し、lは1〜6の整数を表し、mは0又は1を表し、nは世代数を示し1〜5の整数を表す。なお、式中の分岐部分の3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸アミドは、3,4,5−トリヒドロキシ桂皮酸アミドであってもよく、分岐鎖のエチレンオキシ鎖は、炭素数1〜6、好ましくは2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖であってもよい。]
で表されるポリイオンデンドリマーである請求項1〜5のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項7】
ポリイオンデンドリマーが、次の一般式[4]
【化20】

[式中、Yは、それぞれ独立してグアニジン基、チオウレニウム基、及びイソチオウレニウム基からなる群から選ばれるカチオン性の基を示し、mは0又は1を表す。]
で表されるポリイオンデンドリマーである請求項1〜6のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項8】
ポリイオンデンドリマーが、次の式[5]
【化21】

で表されるポリイオンデンドリマーである請求項1〜7のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリイオンデンドリマーを含有してなるタンパク質輸送剤。
【請求項10】
請求項9に記載のタンパク質輸送剤を用いることを特徴とするタンパク質の輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178756(P2011−178756A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47133(P2010−47133)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】