説明

タンパク質抽出用マイクロチップ、タンパク質抽出装置及びタンパク質測定装置、これらを用いたタンパク質抽出方法及び空気調整機

【課題】検体に含まれるタンパク質を簡易迅速に抽出する装置を提供する。
【解決手段】
チップ内部に検体を保持するための堰き止め部を有する抽出用マイクロチップと、前記抽出用マイクロチップの抽出槽に検体及び抽出用液を送液する送液機構部とを有し、前記送液機構部が、前記検体と抽出用液を溜めておく試料液収納容器と、検体及び抽出用液を前記試料液収納容器から前記抽出用マイクロチップ内の抽出槽部にまで送液する送液ポンプとを少なくともを備えることを特徴とするタンパク質抽出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のタンパク質を含む検体からタンパク質を抽出し、高濃度のタンパク質溶液を生成し、生成したタンパク質溶液と検体との分離を行うタンパク質抽出装置、ならびにこれらを用いたタンパク質抽出方法及び空気調整機に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を用いた免疫分析法は、医療分野、生化学分野、アレルゲンなどの測定分野等において有用な分析・計測方法として知られているが、従来の免疫分析法は、操作が煩雑であり、分析に長時間を要するという課題を有している。
【0003】
近年、空気環境中の有害物質や人類の健康状態を、チップ上で計測しようとする試みが行われている。これらの技術は、μ−TAS(micro total analysis systems)、MEMS(micro electro mechanical systems)等と称され、特に生体内に含まれる分子の特異的反応を用いて、測定対象物の分析を行うバイオセンサチップが注目を集めている。なかでも、マクロ系での前処理を行うことなく、チップ上でタンパク質の抽出、分離、認識、検出といった全ての分析操作を行う、所謂Lab−on−a−chip技術に対する期待が高まっている。
【0004】
大気中の花粉、ダニ、カビ、揮発性有機化合物などの浮遊微小物質や化学物質によるアレルギー症状に多くの人が悩まされている。そこで、アレルギーの原因となるアレルゲン等のタンパク質の量を測定するため、上記μTASやMEMSの技術を適用したマイクロ流路デバイスの開発が盛んである。マイクロ流路デバイスとは、微細な流路であるマイクロチャンネル(主に、直径数μmから数百μmの流路)に液体または気体などの流体を通し、分離、化学反応または分析・測定などを行うシステムである。
【0005】
マイクロ流路デバイスは、構造が微細であるため、試料を搬送するための流体を多量に必要とはせず、試料も少量で分析・測定が可能である。さらに、分析測定装置自体の小型化及び分析測定時間の高速化も図れるという利点も有する。
【0006】
しかしながら、マイクロ流路デバイスは、試料中の対象物質の濃度が低すぎる場合には、限界が生じる。免疫分析法のために検体からタンパク質の抽出を行う際には、多量の抽出用溶液を用いるため、抽出液のタンパク質濃度が低いものしか得られない。このため、この抽出液をマイクロ流路デバイスに注入し、被検液中のタンパク質の量を測定する場合、タンパク質濃度が低すぎるために正確な測定ができないという弊害も発生していた。
【0007】
マイクロ流路デバイスは、マイクロ流路を有するデバイスであれば、その形状は限定されない。マイクロ流路デバイスとして、例えば、マイクロチップ、キャピラリー、チューブがある。
【0008】
基板上にマイクロオーダーの流路を形成したマイクロ流路デバイスを免疫分析に応用する技術が、特許文献1に提案されている。特許文献1には、マイクロチャンネル反応槽部と、前記固体微粒子の径よりも小さい縦断面積を有するマイクロチャンネル分離部と、抗原及び標識抗体を別々に前記反応槽部へと導く導入部もしくはマイクロチャンネル流入部とを有しているマイクロ流路デバイスが開示されている。しかし、特許文献1には、マイクロ流路デバイスを使って、タンパク質を抽出することについては記載がない。また、特許文献1では、検出に熱レンズを使っているが、この場合は装置が大型化してしまう。
【0009】
他方、熱レンズ方式に代えて、電気化学的検出方法を用いる技術が、特許文献2に提案されている。特許文献2の技術は、マイクロ流路デバイスを一体に構成するマイクロ流路デバイスとその製作法を示し、接合技術が不要で、樹脂の光吸収や蛍光によって測定に制約を受けないマイクロ流路デバイスに関するものである。
【0010】
マイクロ流路デバイスの形態としては、一般に反応部(実際に反応・分析等を行う部分)をマイクロチップの形とし、それにチューブを接続し、外部ポンプで作動させる形態が使われる。この形態であれば、マイクロチップ部分を交換するだけで目的とする作業の切換が簡便にできるという利点がある。
【0011】
一方、免疫分析を行うためには、対象となる抗原または抗体を含む検体を効率よく採取する必要がある。従来技術では、花粉採取の検出方法は、表面にワセリンを薄く均一に塗ったスライドガラス上やドラムに巻きつけた粘着テープ上に花粉を捕集するものであった。さらに、捕集した花粉を緩衝液に入れて花粉から抗原を抽出した後、遠心分離により花粉を分離して、抗原を含む検体として、緩衝液(上澄み液)を取り出して分析試料としていた。
【0012】
花粉の採取・分析についての発明も提案されている。自動花粉捕集装置に関する技術が、特許文献3に提案されている。また、捕集した花粉からアレルゲンを抽出する技術が、特許文献4または5に提案されている。
【特許文献1】特開2001−4628号公報
【特許文献2】特開2003−285298号公報
【特許文献3】特開平5−215653号公報
【特許文献4】特開平6−329553号公報
【特許文献5】特表2003−507432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した従来技術にかかる測定方法においては、検体からタンパク質の抽出を行う際に多量(10〜1000ml程度)の抽出用溶液を用いるため、抽出液のタンパク質濃度が低くなる。このため、この抽出液を被検液(通常1〜500μlを使用)としてマイクロ流路デバイスに注入し被検液中のタンパク質の量を測定する場合、タンパク質濃度が低すぎるために正確な測定ができない場合がある。
【0014】
この問題を解決するため、抽出されるタンパク質の絶対量を増やすために多量のタンパク質抽出液をマイクロ流路デバイスに注入する方法も考えられる。しかし、マイクロ流路デバイスは通常、流速を6μl/分程度にして使用されるので、マイクロ流路に10〜1000ml程度のタンパク質抽出液を流そうとすると、流し終わるまでに、約30〜2800時間かかることになる。よって、この方法は実用的ではない。
【0015】
それゆえ、低濃度のタンパク質抽出液を、簡便かつ短時間に濃縮する技術が必要とされている。
【0016】
また、従来技術においては、空気中に浮遊するアレルゲンを含む物質(例えば花粉)をスライドガラス又は粘着テープ表面に付着させる方法により検体を採集し、しかる後にこれを抽出用溶液に入れてタンパク質を抽出するという操作を行っているが、この方法ではタンパク質の測定を行うまでに多くの時間を要する。このため、簡便かつ迅速な測定を行うためには、これらの一連の工程を自動化する必要があるが、未だこれらの工程を自動化したタンパク質測定装置は提供されていない。
【0017】
それゆえ、検体の採取から抗原タンパク質の抽出、測定までを自動的に行うことのできる装置の開発が望まれている。
【0018】
本発明は、検体の採取から抗原タンパク質の抽出、測定までのこれらの一連の工程を自動的に行うことのできる、タンパク質抽出用マイクロチップ、タンパク質抽出装置及びタンパク質測定装置、これらを用いた空気調整機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための第1の発明は、検体から目的成分を抽出する抽出槽部と、前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの注入用流路と、前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの排出用流路とを備える抽出用マイクロチップである。
【0020】
本発明にかかる抽出用マイクロチップの1つの態様は、前記抽出槽部内の注入用流路と排出用流路との間に、チップ平面視形状が湾曲形状の堰き止め部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記構造であれば、検体からの目的成分であるタンパク質の抽出と、検体と抽出されたタンパク質の分離を、マイクロチップ内で行うことが可能となる。また、少量の抽出用液でタンパク質の抽出を行うことが可能となるため、高濃度のタンパク質抽出液を生成することができ、従来必要であった煩雑な濃縮工程が不要となる。また、この高濃度タンパク質抽出液をタンパク質検出用の試験液として用いることにより、精度の高いタンパク質の量の測定が可能になる。
【0022】
上記の態様のマイクロチップにおいて、堰き止め部は、チップの平面視形状が湾曲形状を有している。ここで、チップ平面視形状とは、抽出用マイクロチップを平面に載置し、上から透視した場合の形状をいう。この構成によれば、堰き止め面積を増やすことができ、堰き止めの効果を上げるとともに、検体が堰き止め部に詰まることによる送液速度の低下を抑制することができる。上記の湾曲形状は、様々なものが設計できるが、排出用流路側に凸であることが好ましい。
【0023】
上記の態様のマイクロチップにおいて、抽出槽部のチップ平面視形状は、円形状または楕円形状であることが、チップ内での検体の円滑な移動に優れるため好ましい。
【0024】
上記の態様のマイクロチップにおいて、上記第1の発明において、堰き止め部は、スリット構造を有する構成とすることができる。この構成によれば、抽出槽部と堰き止め部の深さを同じにすることが可能になり、マイクロチップの製造が容易となる。
【0025】
本発明にかかる抽出用マイクロチップの別の態様は、前記堰き止め部が、前記抽出槽部の流出入方向と垂直方向にある両端面をつなぐ形状で設けられ、両端面近傍のスリット幅が中央領域におけるスリット幅よりも広くなっていることを特徴とする。この構成によれば、検体が中央部に集中することが防止され、検体が堰き止め部に詰まることによる送液速度の低下を抑制することができ、検体中からタンパク質の抽出及び、抽出後の検体の回収を効率良く行うことができる。
【0026】
本発明にかかる抽出用マイクロチップの別の態様は、前記抽出槽内の注入用流路と排出用流路との間に、スリット構造を有する堰き止め部が流れ方向に向かって少なくとも2列設けられていることを特徴とする。この構成によれば、堰き止め面積を増やすことができ、堰き止めの効果を上げることができる。また前後のスリット幅を変えることで、検体の大きさによって、検体を分離することができ、凝集が起こりにくくする効果を有する。
【0027】
本発明の抽出用マイクロチップのさらなる別の態様は、前記抽出槽内の注入用流路と排出用流路との間に、スリット構造を有する堰き止め部が複数配置され、当該複数の堰き止め部は流れ方向に向かって多段階的に配置されていることを特徴とする。この構成によれば、堰き止め面積を増やすことができ、堰き止めの効果を上げることができる。また、検体の滞留を複数箇所で行わせるので、凝集が生じにくい効果がある。
【0028】
本発明の抽出用マイクロチップのさらなる別の態様は、抽出槽部が少なくとも2本の排出用流路に接続され、それぞれの排出用流路と注入用流路との間に堰き止め部が設けられていることを特徴とする。
【0029】
上記構成であれば、排出用流路を2本以上設け、それぞれの排出用流路に堰き止め部を設けることにより、検体が各堰き止め部に分散され、検体が堰き止め部に詰まることによる送液速度の低下を抑制することができる。また、1本の流路が詰まった場合でも、それ以外の排出流路があることにより、送液を継続することが可能である。さらに、検体が分散されることにより、検体中からタンパク質の抽出及び、抽出後の検体の回収を効率良く行うことができる。
【0030】
上記の各態様の抽出用マイクロチップにおいて、マイクロチップ内の抽出槽部の容積が5〜50μlである構成とすることができる。この構成によれば、少量の抽出用液中でタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質溶液を得ることができる。
【0031】
本発明のマイクロチップは花粉等のタンパク質抽出工程に適したものであるが、タンパク質以外の成分(例えば、アミノ酸または核酸など)の抽出のために用いることも可能である。さらに、堰き止め部に固体を滞留させ、そこへ流体を流しこむような工程なら抽出工程以外にも応用可能である。他の工程の例としては、中の固体を完全に流入液体に溶解させるような工程または反応工程などが挙げられる。
【0032】
上記課題を解決するための第2の発明は、上記の本発明にかかる抽出用マイクロチップと、抽出用マイクロチップの抽出槽部に検体及び抽出用液を送液する送液機構部とを有し、その送液機構部が、検体と抽出用液を溜めておく試料液収納容器と、検体及び抽出用液を前記試料液収納容器から前記抽出用マイクロチップ内の抽出槽部にまで送液する送液ポンプとを少なくともを備えるタンパク質抽出装置である。
【0033】
本発明によれば、少量の抽出用液中にタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質抽出液を生成することができ、従来必要であった煩雑な濃縮工程が不要となる。そのため、装置の小型化が可能となり、自動化が容易になる。また、この高濃度タンパク質抽出液をタンパク質検出用の試験液として用いることにより、精度の高いタンパク質の量の測定が可能になる。
【0034】
上記の本発明のタンパク質抽出装置において、抽出用液の送液量が、5〜100μlである構成とすることができる。この構成によれば、少量の抽出用液中でタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質溶液を得ることができる。
【0035】
上記の本発明のタンパク質抽出装置において、マイクロチップに抽出槽部を振動させる手段を設ける構成とすることができる。振動により、マイクロチップ中での攪拌効果が発生し、検体中からタンパク質が抽出され易くなり、抽出効率を上げることが可能である。
【0036】
上記の振動装置としては、超音波発生装置が好ましい。これにより、超音波による微細振動により、検体からのタンパク質の抽出効率を一層上げることができる。
【0037】
上記の本発明のタンパク質抽出装置において、マイクロチップにマイクロヒーターを設ける構成とすることができる。これにより、マイクロチップ内の温度が上がれば、タンパク質の溶解度が一般的に上昇するので、抽出用液へのタンパク質の溶解量が増える効果が得られる。
【0038】
上記のタンパク質抽出装置において、送液機構部に、吸引ポンプをさらに設ける構成とすることができる。
【0039】
この構成によれば、送液ポンプ及び吸引ポンプを稼動させ、前記抽出槽部内の前記抽出用液を交互に流れ方向及び逆方向に揺動させて、タンパク質を抽出する方法が可能となる。
【0040】
また、検体からタンパク質を抽出した後、上記の吸引ポンプを使って、抽出槽部内に残った検体及び抽出用液を、抽出槽部から排出する洗浄工程が可能となり、一つのマイクロチップで、検体から目的とするタンパク質の抽出を繰返し行うことが可能となる。
【0041】
本発明では、上記のタンパク質抽出装置において、検体と混合された搬送用液を送液ポンプで送液し、搬送用液とともに検体をマイクロチップ内に送入することにより、タンパク質を抽出する方法がさらに提供される。この方法によれば、マイクロチップ内の微小部分に検体を容易に送入することが可能となる。さらに、マイクロチップ内に設けた抽出槽部に全ての検体を送入することが容易となる。
【0042】
上記のタンパク質抽出方法において、検体は、花粉などの生体物質の他、様々なものが抽出可能である。
【0043】
上記の搬送用液は、検体から抽出されるタンパク質が溶けにくいタンパク質貧溶媒であることが好ましい。検体が花粉の場合は、純水が好ましい。これにより、搬送時に検体中のタンパク質が搬送用液とともに排出されることが防止されるため、タンパク質の抽出効率を上げることが可能となる。
【0044】
上記の搬送用液の送液量は、0.5〜10mlであることが好ましい。この範囲であれば、マイクロチップ内に設けた抽出槽部に検体を短時間に容易に送入することが可能となる。
【0045】
上記のタンパク質抽出方法において、抽出用液は、検体が花粉の場合は、抽出液としてリン酸緩衝液またはトリス緩衝液が好ましい。
【0046】
上記の第2の発明群にかかるタンパク質抽出装置において、外部空間から検体を捕集する捕集部をさらに設け、捕集部で捕集した検体を、抽出用マイクロチップの抽出槽部に送入する構成とすることができる。この構成によれば、空中からの検体の捕集から、タンパク質の抽出及び分離の動作を一つの装置により自動で行うことが可能となる。また、少量の抽出液中でタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質抽出液を生成することができ、従来必要であった煩雑な濃縮工程が不要であり、装置の小型化が可能となる。さらに、この高濃度タンパク質抽出液をタンパク質検出用の試験液として用いることにより、精度の高いタンパク質の量の測定が可能になる。
【0047】
上記課題を解決するための第3の発明は、上記した第2の発明群にかかるタンパク質抽出装置を組み込んだタンパク質測定装置に関する。
【0048】
本発明のタンパク質測定装置は、上記の第2の発明群のいずれかの構成を備えたタンパク質抽出装置と、前記タンパク質抽出装置により抽出されたタンパク質の種類及び量を検出するマイクロ流路デバイスと、を備え、当該マイクロ流路デバイスが、反応物質を含む反応部と、タンパク質の量を検出する検出部とを有してなるものである。
【0049】
このような構成であれば、タンパク質の抽出及び測定を連続的に行うことができる。特に、上記捕集部を備えたタンパク質測定装置の場合、外部空間からの検体の捕集から、タンパク質の抽出、タンパク質の検出までの動作を、一つの装置で行うことができるので、タンパク質の種類の同定や含有量の測定の作業効率が格段に向上する。
【0050】
上記マイクロ流路デバイスとしては、例えば、図14に示すような、反応流路と、反応流路内に固定された反応物質と、検出部(電極)とを備えるものを用いることができる。
【0051】
上記課題を解決するための第4の発明は、上記した第3の発明にかかるタンパク質測定装置を組み込んだ空気調整機に関する。
【0052】
本発明の空気調整機は、上記第3の発明にかかるタンパク質測定装置と、送風手段と、前記タンパク質測定装置により測定された前記外気に含まれるタンパク質の量に応じて前記送風手段の送風量を増減する送風制御手段とを備える。
【0053】
この構成によると、検出されたタンパク質の量に応じて、送風量を変化させることができる。例えば、アレルゲンタンパク質が多いときには、送風量を大きくするよう制御させることにより、アレルゲンタンパク質を含む検体を空気調整機中のフィルターに吸着させて、外気中の検体の量を減少させることができる。また、アレルゲンタンパク質が少ないときには、送風量を減らして、装置のランニングコストを下げることができる。
【0054】
本発明にかかる空気調整機の別の態様として、上記第3の発明にかかるタンパク質測定装置と、タンパク質含有物質を除去するタンパク質含有物質除去手段と、前記タンパク質測定装置により測定されたタンパク質の量に応じて、前記タンパク質含有物質除去手段の動作を制御する除去動作制御手段とを備えるものが提供される。
【0055】
この構成によると、検出されたタンパク質の量に応じて、検体除去手段の動作を変化させ、タンパク質の除去動作を適正にする。検体除去手段は、例えば、イオン発生部又はプラズマ発生部とイオン又はプラズマにより帯電した検体を吸着する吸着部とを有してなるものとする。上記のタンパク質測定装置がタンパク質を検出したとき、イオン又はプラズマを発生させ、それによりタンパク質含有物質が帯電し、吸着部で吸着除去される。
【発明の効果】
【0056】
以上に説明したように、本発明のタンパク質抽出装置によると、外部空間からの検体の捕集から、タンパク質の抽出及び分離までの動作を短時間に効率よく行うことができる。また、本発明のタンパク質抽出装置は、従来必要であった煩雑な濃縮工程が不要となり、装置の小型化が可能とあり、自動化が容易になる。このような本発明のタンパク質抽出装置は、タンパク質の同定又は定量を行う前処理装置として好適である。
【0057】
また、本発明のタンパク質測定装置によると、花粉、微生物などの検体の採取、タンパク質の抽出、タンパク質の同定・定量を連続的に行うことができる。このような本発明のタンパク質測定装置によると、検体の採取からタンパク質の同定又は定量までを簡便、迅速に、かつ高精度に行うことができる。
【0058】
また、本発明の空気調整機によると、タンパク質の有無や存在量を監視しつつ、室内等の空気調整を行うことができ、これにより、例えば快適な生活環境を保持することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0060】
〔第1実施形態〕
本実施形態にかかるタンパク質抽出用マイクロチップ(以下抽出用チップ、または単にチップという)について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の抽出用チップの一態様を示すものである。(a)は平面図であり、(b)は(a)のX−X‘のラインでの断面図である。(c)はチップの基板22と蓋機材23とを貼付する前の斜視図である。
【0061】
図1の各図に示すように、抽出用チップ1は、検体からタンパク質の抽出を行う抽出槽部16と、注入口17、排出口18、注入流路19及び、排出流路20からなる。抽出槽部16内には、検体が排出口18から排出されるのを防止するための堰き止め部21が形成されている。
【0062】
図1(c)から分かるように、本発明の抽出用チップは、基板22と蓋基材23とを貼付した構造をしている。基板22には凹部が形成されており、蓋基材23と貼付された後には、この凹部は、基板22と蓋基材23との間の空隙となる。この空隙と連絡するように蓋基材23に基板面に対して垂直に2つの穴を開ける。1つの穴を液体の注入口17、もうひとつの穴を排出口18とする。この空隙の形状は、基板面上部から見て、注入口17及び排出口18の付近では幅を狭くして流路とし(19、20)、基板中央付近で幅が広くなっている。この幅が広くなっている部分を抽出槽部16とする。
【0063】
この抽出槽部は、抽出用チップの幅に対して十分な幅を有する空間であることが必要である。抽出槽部の空間が狭ければ、検体が凝集する可能性が増え、検体と抽出用液との接触面積が小さくなるため、抽出が効率よく行えないからである。
【0064】
図1のチップでは、注入口17及び排出口18が、基板面に対して垂直に穿孔されているが、その他の態様でもかまわない。例えば、注入口17及び排出口18が、注入流路19及び排出流路20と直線的に接続するような場合も可能である。
【0065】
上記マイクロチップ内の抽出槽部には、検体を通過させない形状からなる堰き止め部を設ける。この堰きとめ部により、抽出時に検体を抽出槽部内に保持することができ、さらに、抽出後のタンパク質溶液と検体とを分離することができる。
【0066】
上記堰き止め部は、検体が通過できない構造であれば、任意の構造が使用できる。例えば、抽出槽部の隙間を検体が通れない位の大きさとする凸部を設けてもよいが、検体が通過できない幅のスリット構造を有する構成とするのが好ましい(図1のc参照)。この構成によれば、抽出槽部と堰き止め部の深さとを同じにすることが可能になり、本発明のマイクロチップの製造が容易となる。
【0067】
抽出用チップ1の基板22の表面には、抽出槽部16、注入流路19、排出流路20、堰き止め部21が形成されており、それらの深さは50〜200μm程度である。これより浅くなると抽出槽部16の面積を大きくする必要があり、抽出用チップ1のサイズが大きくなってしまう。これより深くなると、注入流路19、排出流路20部の容積が大きくなり、抽出用液の量を増やす必要が生じる。また、注入流路19、排出流路20の幅は、50〜200μm程度である。
【0068】
抽出槽部16の容積は、5〜50μl程度が好ましい。この範囲であれば、抽出により高濃度のタンパク質溶液を得ることができる。
【0069】
蓋基材23には、注入口17及び排出口18が形成されており、送液用チューブが接続される。
【0070】
基板22、蓋基材23の材質としては、シリコン、ガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、またはPMMA(ポリメチルメタクリレート)、COP(環状オレフィンポリマー)もしくはCOC(環状オレフィンコポリマー)等の樹脂を用いることができる。特に、樹脂の場合は、パターンの形成及び貼り合せが容易であり、量産性に優れる。
【0071】
本発明のようにデバイス内に抽出槽部を設ける場合には、マイクロ流路デバイスの製法としては、基板に流路のパターンを形成させた後、蓋基材を貼付することでデバイスを完成させる方法が好ましい。流路パターンの形成方法としては、シリコン、ガラス等の場合は、異方性のドライエッチング、フッ酸などを用いたウェットエッチング等が用いられる。また、樹脂材料のパターン形成方法としては、ソフトリソグラフィ法、光ナノインプリント法、ホットエンボス法等が挙げられる。
【0072】
堰き止め部21は、検体を抽出槽部16内に堰き止める構造をしている。例えば、抽出槽部16と同じ深さで、検体が通過できない幅のスリット状のパターンが用いられる。スリット構造の場合、抽出槽部と堰き止め部の深さを同じにすることが可能であり、マイクロチップの製造が容易となる。検体がスギ花粉の場合、幅10μmのスリットを用いることにより、粒径が30μm程度であるスギ花粉を堰き止めることが可能である。検体の通過が防止できるものであれば、ダム形状やピラー形状等のスリット以外のパターンであってもかまわない。
【0073】
〔第2実施形態〕
本実施形態にかかるタンパク質抽出装置について、図1から図2を用いて説明する。図2に示すように、タンパク質抽出装置は、検体からタンパク質の抽出を行う抽出用チップ1と、検体及び抽出用液を抽出部に送るための送液機構部111とからなる。
【0074】
送液機構部は、液を溜めておく液容器2、3、4と、検体及び液を送るためのポンプ5、6と、バルブ7、8、9、10、11及び、送液用チューブ12から構成されており、検体の抽出用チップ1への送入、抽出液の抽出用チップ1への充填、及び抽出されたタンパク質の検出部13への送出等を行う。以下に、装置の具体的内容を説明する。
【0075】
(検体のマイクロチップへの搬送)
まず、回収用液容器2内に、検体と搬送用液を入れる。検体としては、例えば、空中から捕集したスギ花粉が用いられる。搬送用液には、検体から抽出されるタンパク質が溶けにくいタンパク質貧溶媒を用いる。これにより、搬送時に検体中のタンパク質が搬送用液とともに排出されることが防止されるため、タンパク質の抽出効率を上げることが可能となる。検体がスギ花粉の場合、搬送用液として純水を用いることができる。
【0076】
搬送用液の液量は、0.5〜10ml程度が好ましい。これより少なくなると検体を搬送用液内に送り込み難くなり、これより多くなると、検体を抽出槽部に送る時間が長くなり、かつ、液容器を大きくする必要があるため装置が大きくなってしまう。
【0077】
第2実施形態では、検体としてスギ花粉を例にあげて説明するが、ヒノキ、ブタクサ等の他の花粉や、花粉以外の検体(ダニ等の空気中浮遊物)にも適用可能である。搬送用液も純水に限定されるものではなく、検体から抽出されるタンパク質に合わせて選定することが可能である。
【0078】
次に、回収用液容器2内の検体と搬送用液の混合液14を、ポンプ5を用いて、抽出用チップ1内の抽出槽部16に送入する。送液流速としては、送液時間や抽出用チップ1の耐久性等を考慮した場合、0.5〜10ml/分程度が好ましい。
【0079】
また、検体と搬送用液の混合液14を抽出槽部16に送入する際に、回収用液容器2内で、検体と搬送用液を攪拌するのが望ましい。攪拌させることにより、全ての検体を回収用液容器2から抽出槽部16に送ることが容易となる。攪拌の方法としては、容器に振動を加える、機械的に攪拌する、空気を送り込むことにより攪拌する等の方法を用いることができる。
【0080】
回収用液容器2の形状は、検体が容器内に残りにくい形状が望ましく、底面部分は、平面部をなるべく少なくし底面積が小さくなるよう、例えば、先端部を尖らせた形状が好ましい。
【0081】
また、抽出槽部16や排出流路20に、検体から抽出されるタンパク質が吸着するのを防止するため、抽出槽部16及び排出流路20の表面に、タンパク質の非特異吸着防止処理を予め施しておいてもよい。例えば、検体と搬送用液の混合液14を抽出槽部16に送入する前に、カゼイン溶液やBSA(牛血清アルブミン)溶液等のブロッキング剤を、抽出槽部16内に注入してもかまわない。抽出槽部16、排出流路20の表面が、ブロッキング剤で覆われることにより、抽出槽部16、排出流路20へのタンパク質の吸着が抑えられ、タンパク質を効率良く抽出することが可能となる。
【0082】
抽出用チップ1に送られた検体は、堰き止め部21により抽出槽部16内に留まり、搬送用液のみが、排出流路20を通り、排出口18から排出用液容器4に排出される。
【0083】
このように、検体を搬送用液に混ぜて送ることにより、チップ内の微小部分に、検体を容易に送入することが可能となる。
【0084】
排出された搬送用液は、連続して抽出を行う場合には、再利用することが可能である。そうすることにより、廃液量を低減することができ、装置をより小型化することが可能となる。
【0085】
(抽出用液の充填)
次に、抽出用液容器3内の抽出用液15を、ポンプ6を用いて、抽出用チップ1内の抽出槽部16に充填する。
【0086】
抽出用液15は、検体中のタンパク質の抽出効率が優れた分子やpHを持つ溶液を用いることが好ましい。スギ花粉の場合は、抽出用液としてリン酸緩衝生理食塩水緩衝液やトリス緩衝液を用いることができる。
【0087】
抽出用液15の液量は、5〜100μl程度が好ましい。この範囲であれば、高濃度のタンパク質溶液を得ることができる。液量が多くなると、タンパク質の抽出液濃度が低くなり、検出部でのタンパク質の量の計測が難しくなり、濃縮が必要となる。
【0088】
搬送用液と抽出液の流速と流量は、ポンプ5、6の圧力と、送液用チューブ12の内径により制御することが可能である。また、流速と流量を制御するのための機構を別に設けても構わない。
【0089】
抽出用チップに流路が3つ以上接続している場合には、搬送用液と抽出用液で、注入口、注入流路、排出流路、排出口を別に設けても構わない。この構成によると、それぞれの液に対して流速と流量を独立して調整することが可能となり、流速と液量の制御が容易となる。
【0090】
また、送液のためのバルブの一部を抽出用チップ1内に設けても構わない。マイクロチップ内にマイクロバルブを設けることにより、抽出液のデッドボリューム(容器に残ってしまう少量の液)を低減され、液量の制御が容易となる。また、部品点数が少なくなり、装置をより小型にすることが可能となる。
【0091】
(タンパク質の抽出工程と検出工程)
次に、検体と、抽出用液15を抽出槽部16に充填した状態で、検体中のタンパク質が抽出用液に抽出される。抽出時間は1〜60分程度が好ましい。
【0092】
抽出用チップ1内に抽出槽部16を振動させる手段を設けてもよい。この構成によると、検体中からタンパク質が抽出され易くなり、抽出効率を上げることができる。
【0093】
また、抽出用チップ1に、超音波発生装置を備えてもよい。タンパク質の抽出時に、抽出槽部16に超音波を発生させることにより、検体からのタンパク質の抽出効率を一層上げることが可能となる。
【0094】
また、抽出用チップ1に、マイクロヒーターを備えてもよい。タンパク質の抽出時に、マイクロヒーターにより抽出槽部16を温めることにより、検体からのタンパク質の抽出効率を上げることができる。
【0095】
また、タンパク質の抽出時に、抽出用チップ1内の抽出用液15を揺動させてもよい。例えば、ポンプによる抽出槽部16への吸引、排出の繰り返しや、機械式の抽出槽部16への加圧、減圧の繰り返し等を制御する遥動機構部を設けることにより、抽出用液15を揺動させることが可能である。抽出用液15を揺動させることにより、検体からのタンパク質の抽出効率を上げることができる。
【0096】
(タンパク質の量の検出)
最後に、抽出用液中にタンパク質が抽出されたタンパク質溶液を、排出流路20から、排出口18を通り、検出部13へ送液し、抽出されたタンパク質の量の検出を行う。タンパク質溶液を排出流路20から排出する際、検体中からタンパク質が抽出された検体は、堰き止め部21で堰き止められ排出流路20から排出されないため、タンパク質溶液と検体を容易に分離することができる。
【0097】
検出部13は、タンパク質の検出に適した手段から広く選択可能である。後述の電気化学検出型マイクロ流路デバイスの他、IR等の分光測定法、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどを使用することができる。
【0098】
以上のように、本実施形態によると、少量の抽出液中でタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質抽出液を生成することができ、従来必要であった煩雑な濃縮工程が不要となる。そのため、装置の小型化が可能となり、自動化が容易になる。また、この高濃度タンパク質抽出液をタンパク質検出用の試験液として用いることにより、精度の高いタンパク質の量の測定が可能になる。
【0099】
本実施形態では、検体を搬送用液に混ぜて、抽出用チップ1内の抽出槽部16に注入を行なったが、シリンジ等を用いて、検体を抽出槽部16に直接注入しても構わない。抽出槽部16内に検体を入れて抽出を行うことで、少量の抽出液中でタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質抽出液を生成することが可能である。
【0100】
次に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、下記の各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
【0101】
(実施例1)
実施例1は、第2実施形態で説明したタンパク質抽出装置にかかる例である。本実施例にかかるタンパク質抽出装置について、図1から図2を用いて説明する。
【0102】
本実施例のタンパク質抽出装置には、図1に示した抽出用チップ1と、図2に示した送液機構部111とを用いた。空中のスギ花粉を検体として、スギ花粉に含まれるアレルゲンタンパク質のCry−J1を、タンパク質抽出装置により抽出し、抽出されたCry−J1の量を検出部で検出した。
【0103】
図1に示すように、抽出用チップ1の堰き止め部21は、堰き止め面積を増やすために、全体の形状を流れ方向に凸の湾曲形状とした。
【0104】
回収用液容器2、抽出用液容器3及び、排出用液容器4にはTOP製15mL遠沈管を、ポンプ5、6にはモーター式ポンプ(榎本マイクロポンプ製作所製 CM−50−12)、バルブ7、8、9、10、11には電磁式バルブを、送液用チューブ12には内径0.75μmのテフロン(登録商標)チューブを、それぞれ使用した。
【0105】
まず、検体と搬送用液の混合液14を抽出槽部16に送入する前に、カゼイン溶液を抽出槽部16内に注入した。抽出槽部16、排出流路20の表面をカゼイン溶液で覆うことにより、抽出槽部16、排出流路20へのタンパク質の吸着が抑えられ、タンパク質を効率良く抽出することが可能となる。
【0106】
次に、回収用液容器2内に、空中より採取したスギ花粉と純水5mlを入れ、十分に攪拌させた後、バルブ7、9、10を開にして、ポンプ5をONし、スギ花粉と純水の混合液を、送液流速2ml/分程度で、抽出用チップ1内の抽出槽部16に送入した。
【0107】
抽出用チップ1に送られたスギ花粉は、堰き止め部21により抽出槽部16内に留まり、純水のみが、排出流路20を通り、排出口18から排出用液容器4に排出された。このように、スギ花粉を純水に混ぜて送ることにより、チップ内の微小部分に、検体を容易に送入することが可能であった。
【0108】
抽出用チップ1は、図1に示す構造で、基板22にはシリコン基板を、蓋基材にはPDMSを用いた。抽出槽部16、注入流路19、排出流路20、堰き止め部21の深さは各々200μm、注入流路19、排出流路20の幅は各々200μmであった。また、抽出槽部16の容積は、約10μlであった。
【0109】
堰き止め部21は、抽出槽部16と同じ深さを有するスリット状のパターンを形成した。スリット幅は約10μmで、粒径が30μm程度であるスギ花粉を堰き止めることが可能であった。
【0110】
次に、バルブ8、9、10を開き、ポンプ6をONし、抽出用液容器3内の抽出用液15を、抽出用チップ1内の抽出槽部16に充填した。抽出用液15の送液量の定量化は、バルブの開閉時間をマイコン制御で一定にすることにより実行した。抽出用液15はリン酸緩衝生理食塩水緩衝液を用い、送液量は約50μlであった。
【0111】
次に、バルブ9、10、11を閉じ、抽出用液15を抽出槽部16に充填した状態で、スギ花粉に含まれるアレルゲンタンパク質のCry−J1の抽出を行なった。抽出時間は約15分で、抽出中に、抽出用チップ1に設けた振動モーターにより、抽出槽部16を振動させた。
【0112】
最後に、Cry−J1が抽出された抽出液を、排出流路20から、排出口18を通り、検出部13へ送液し、抽出されたCry−J1量の検出を行なった。抽出液を排出流路20から排出する際、花粉殻は、堰き止め部21で堰き止められ排出流路20から排出されないため、抽出液と花粉殻を容易に分離することができた。
【0113】
抽出されたCry−J1量は、従来の電気化学検出型マイクロ流路デバイスにより検出できることが確認できた。このことから、本実施例にかかる装置を用いると、目的とするタンパク質を高濃度で抽出することが可能であり、従来必要であった煩雑な濃縮工程が不要となり、装置の小型化、自動化が容易になることがわかる。また、高濃度タンパク質抽出液をタンパク質検出用の試験液として用いることにより、精度の高いタンパク質の量の測定が可能になる。
【0114】
(実施例2)(マイクロチップの洗浄)
実施例2では、実施例1で説明したタンパク質抽出装置で抽出工程を行なった後、抽出用チップ内部を洗浄する工程が説明される。本実施例にかかるタンパク質抽出装置について、図1及び図3を用いて説明する。
【0115】
本実施例のタンパク質抽出装置には、図3に示した吸引ポンプ25を有する送液機構部と、図1に示した抽出用チップ1を用いた。実施例1と同様に、空中のスギ花粉を検体として、スギ花粉に含まれるアレルゲンタンパク質のCry−J1を、タンパク質抽出装置により抽出し、抽出されたCry−J1の量を検出部で検出した。
【0116】
実施例1と同様に抽出工程を行なった後、バルブ9、27を開き、吸引ポンプ25をONし、搬送用液容器24内の搬送用液28を、排出口18から、抽出用チップ1内に注入し、抽出槽部16内に残った花粉殻を、注入口17から回収用液容器2に回収した。搬送用液には純水を用いた。その後、バルブ26を開き、ポンプ5をONし、回収用液容器2内の純水及び花粉殻を、排出用液容器4に排出した。必要により、本洗浄工程を繰り返すことにより、抽出用チップ1内の洗浄を行なった。
【0117】
本洗浄工程を行うことにより、検体から目的とするタンパク質の抽出を繰返し行うことが可能となった。また、検体を抽出チップ内に送入する際に、排出される搬送用液を再利用することにより、廃液量を低減することができ、装置をより小型化することが可能となった。
【0118】
(実施例3)
抽出用チップを図4のチップ101としたこと以外は、実施例1と同様に抽出工程をおこなった。抽出用チップ101は、抽出槽部16、注入流路19、排出流路20、堰き止め部21の深さが200μm、注入流路19、排出流路20の幅が200μmであった。また、抽出槽部16の容積は、約10μlであった。
【0119】
堰き止め部21は、抽出槽部16と同じ深さのスリット状のパターンを形成した。スリット幅が中央付近で最も狭く、中央から離れるにつれ広くなっており、約5μmから約20μmの範囲で変化しており、粒径が30μm程度であるスギ花粉を堰き止めることが可能であった。
【0120】
このチップでは、堰き止め部21のスリット幅を中央部より周辺部で広くすることにより、検体が中央部に集中することが防止され、検体が堰き止め部に詰まることによる送液速度の低下を抑制することができる。
【0121】
抽出槽部16への検体の送入、抽出用液15の注入、検体中からタンパク質の抽出及び、Cry−J1が抽出された抽出液の検出部13へ送液を、実施例1と同様の方法により行なった。堰き止め部102のスリット幅を中央部より周辺部で広くすることにより、検体が中央部に集中することが防止され、検体中からタンパク質の抽出を効率良く行うことができた。
【0122】
実施例1と同様に、抽出されたCry−J1量は、従来の電気化学検出型マイクロ流路デバイスにより検出できることが確認できた。
【0123】
さらに、抽出槽部16内に残った花粉殻の回収及び抽出槽部の洗浄を、実施例2と同様の方法により実行した。
【0124】
(実施例4)
抽出用チップを図5のチップ102としたこと以外は、実施例1と同様に抽出工程をおこなった。抽出用チップ102は、抽出槽部16、注入流路19、排出流路20、堰き止め部21の深さが200μm、注入流路19、排出流路20の幅が200μmであった。また、抽出槽部16の容積は、約10μlであった。
【0125】
抽出用チップ102の堰き止め部21は、抽出槽部16と同じ深さのスリット状のパターンを形成した。スリットの列が2列になっており、スリット間隔は約10〜30μmで、前(注入口側)のスリット間隔は、後(排出口側)のスリット間隔よりも広くなっている。この構造により、検体をそれぞれの列にサイズに基づいて分散させることができ、検体が堰き止め部に詰まることによる送液速度の低下を抑制することができる。
【0126】
また、堰き止め部21のスリットの列を2列としたことで、堰き止め部の面積を増やすことができ、タンパク質抽出の効果を上げることができた。
【0127】
抽出槽部16への検体の送入、抽出用液15の注入、検体中からタンパク質の抽出及び、Cry−J1が抽出された抽出液の検出部13へ送液を、実施例1と同様の方法により行なった。
【0128】
堰き止め部21のスリット列を複数にすることにより、検体が分散され、検体中からタンパク質の抽出を効率良く行うことができた。
【0129】
実施例1と同様に、抽出されたCry−J1量は、従来の電気化学検出型マイクロ流路デバイスにより検出できることが確認できた。
【0130】
さらに、抽出槽部16内に残った花粉殻の回収を、実施例2と同様の方法により実行した。
【0131】
(実施例5)
抽出用チップを図6のチップ103としたこと以外は、実施例1と同様に抽出工程をおこなった。抽出用チップ103は、抽出槽部16、注入流路19、排出流路20、堰き止め部21の深さが200μm、注入流路19、排出流路20の幅が200μmであった。また、抽出槽部16の容積は、約10μlであった。
【0132】
堰き止め部21は、抽出槽部16と同じ深さのスリット状のパターンを形成した。スリット幅は約10μmで、粒径が30μm程度であるスギ花粉を堰き止めることが可能であった。
【0133】
このチップの堰き止め部21は、抽出槽部16の横幅と同程度のスリット列と、そのスリット列より注入口側に配置された抽出槽部16の横幅より短い複数のスリット列とからなっていた。
【0134】
抽出槽部16内に複数の堰き止め部を分散させて設けることにより、検体が特定部分に集中することが防止され、検体が堰き止め部に詰まることによる送液速度の低下を抑制することができる。
【0135】
抽出槽部16への検体の送入、抽出用液15の注入、検体中からタンパク質が抽出及び、Cry−J1が抽出された抽出液の検出部13へ送液を、実施例2と同様の方法により行なった。
【0136】
抽出槽部16内に複数の堰き止め部を分散させて設けることにより、検体が特定部分に集中することが防止され、検体中からタンパク質の抽出を効率良く行うことができた。
【0137】
実施例1と同様に、抽出されたCry−J1量は、従来の電気化学検出型マイクロ流路デバイスにより検出できることが確認できた。
【0138】
(実施例6)
本実施例では、抽出用チップを図7(a)のチップ104及び図7(b)のチップ105とした。排出口が2箇所あることに対応して、その排出口にチューブを繋ぐなどの若干の設計変更を送液機構部111に施した。それ以外は、実施例1と同様に抽出工程をおこなった。
【0139】
図7の(a)で示される抽出用チップ104は、注入流路19と注入口17とが1箇所、排出流路20と排出口18とが2箇所設けられている。抽出槽部16、注入流路19、排出流路20、堰き止め部21の深さが200μm、注入流路19、排出流路20の幅が200μmであった。また、抽出槽部16の容積は、約10μlであった。
【0140】
このチップの堰き止め部21は、2箇所の排出口18に対して、独立して設けられており、抽出槽部16と同じ深さのスリット状のパターンを形成した。スリット幅は約10μmで、粒径が30μm程度であるスギ花粉を堰き止めることが可能であった。
【0141】
堰き止め部21を2箇所に設けることにより、検体が2箇所の堰き止め部に分散され、検体中からタンパク質の抽出を効率良く行うことができる。また、排出口を2箇所設けることより、検体が2箇所の堰き止め部に分散され、検体が堰き止め部に詰まることによる送液速度の低下を抑制することができる。さらに、片方の排出流路20が詰まった場合でも、もう一方の排出流路20により送液を行うことができる。これにより、詰まりによる抽出工程の中断を防ぎ、さらに詰まりによる内圧上昇が起こりにくいのでチップの耐久性も向上する。
【0142】
抽出槽部16への検体の送入、抽出用液15の注入、検体中からタンパク質が抽出及び、Cry−J1が抽出された抽出液の検出部13へ送液を、実施例2と同様の方法により行なった。
【0143】
抽出されたCry−J1量は、従来の電気化学検出型マイクロ流路デバイスにより検出できることが確認できた。
【0144】
さらに、抽出槽部16内に残った花粉殻の回収を、実施例1と同様の方法により行なった。本実施例では、堰き止め部21を2箇所に設けることにより、検体が2箇所の堰き止め部に分散され、花粉殻の回収を効率良く行うことができた。
【0145】
また、本実施例に用いられる抽出用チップは、図7(a)に示した抽出用チップ104の構造に限定されるものではない。排出流路20及び排出口18を2箇所以上設け、堰き止め部をそれぞれの排出口18に対して、独立して設けた構成であればよく、例えば、図7(b)に示した抽出用チップ105のような構造でも構わない。この場合は、2箇所の堰き止め部21が対向して設けられ、反対方向に液が排出されるため、検体がより分散しやすくなり、抽出及び回収をより効率良く行うことが可能となる。
【0146】
(実施例7)
実施例7は、実施形態1で説明したタンパク質抽出装置にかかるさらに別の例である。本実施例にかかるタンパク質抽出装置について、図8、図9及び図10を用いて説明する。
【0147】
本実施例のタンパク質抽出装置は、図8に示した送液機構部の抽出用チップ1の部分に、図9(a)に示した抽出用チップ106を導入したものである。空中のスギ花粉を検体として、スギ花粉に含まれるアレルゲンタンパク質のCry−J1を、タンパク質抽出装置により抽出し、抽出されたCry−J1の量を検出部で検出した。
【0148】
使用した容器、ポンプ、バルブ及びチューブは、実施例1と同じとした。
【0149】
まず、検体と搬送用液の混合液14を抽出槽部16に送入する前に、カゼイン溶液を抽出槽部16内に注入した。抽出槽部16、排出流路20の表面をカゼイン溶液で覆うことにより、抽出槽部16、排出流路20へのタンパク質の吸着が抑えられ、タンパク質を効率良く抽出することが可能となる。
【0150】
次に、回収用液容器2内に、空中より採取したスギ花粉と純水5mlを入れ、十分に攪拌させた後、バルブ9、401、27を開き、ポンプ5をONし、スギ花粉と純水の混合液を、送液流速2ml/分程度で、抽出用チップ106内の抽出槽部16に送入した。
【0151】
図9(a)に示したとおり、抽出用チップ106は、搬送用液と抽出用液で、注入口、注入流路、排出流路、排出口が別に設けられた構造をしている。抽出用チップ106の抽出槽部16、搬送用液注入流路32、抽出用液注入流路33、搬送用液排出流路34、抽出用液排出流路35、堰き止め部21の深さが200μm、搬送用液注入流路32、搬送用液排出流路34の幅が200μm、抽出用液注入流路33、抽出用液排出流路35の幅が100μmであった。また、抽出槽部16の容積は、約10μlであった。スギ花粉と純水の混合液は、搬送用液注入口30から搬送用液注入流路32を通り、抽出槽部16に注入された。
【0152】
抽出用チップ106に送られたスギ花粉は、堰き止め部21により抽出槽部16内に留まり、純水のみが、搬送用液排出流路34を通り、搬送用液排出口36から搬送用液容器24に排出された。このように、スギ花粉を純水に混ぜて送ることにより、チップ内の微小部分に、検体を容易に送入することが可能であった。
【0153】
堰き止め部21は、抽出槽部16と同じ深さのスリット状のパターンを形成した。スリット幅は約10μmで、粒径が30μm程度であるスギ花粉を堰き止めることが可能である。
【0154】
次に、バルブ8を開き、ポンプ25をONし、抽出用液容器3内の抽出用液15を、回収用液容器2内に送入した。その後、バルブ402、403、10を開状態にして、ポンプ5をONし、回収用液容器2内の抽出液15を、抽出用チップ106内の抽出槽部16に送入した。抽出用液15の送液量は、バルブの開閉時間をマイコン制御で一定にすることにより定量化した。抽出用液15はリン酸緩衝生理食塩水緩衝液を用い、送液量は約50μlであった。抽出用液15は、抽出用液注入口31から抽出用液注入流路33を通り、抽出槽部16に注入された。
【0155】
次に、抽出用液15を抽出槽部16に充填した状態で、スギ花粉に含まれるアレルゲンタンパク質のCry−J1の抽出を行なった。抽出時間は約15分であった。
【0156】
抽出中に、バルブ402、403、10を開き、ポンプ5とポンプ25のON、OFFの切換をマイコン制御で短時間毎に繰り返すことにより、抽出槽部16内の抽出用液15を流れ方向及び逆方向に揺動させることを行なった。これにより、検体中からタンパク質が抽出され易くなり、静止の状態に比べて、抽出効率を上げることができた。
【0157】
次に、Cry−J1が抽出された抽出液を、抽出用液排出流路35から、抽出用液排出口37を通り、検出部13へ送液し、抽出されたCry−J1量の検出を行なった。抽出液を抽出用液排出口37から排出する際、花粉殻は、堰き止め部21で堰き止められ抽出用液排出口37から排出されないため、抽出液と花粉殻を容易に分離することができた。
【0158】
実施例1と同様に、抽出されたCry−J1量は、従来の電気化学検出型マイクロ流路デバイスにより検出できることが確認できた。
【0159】
本実施例では、搬送用液と抽出用液で、抽出用チップの注入口、注入流路、排出流路、排出口を別に設けた構成にすることで、それぞれの液に対して流速と流量を独立して調整することが可能となり、流速と液量の制御が容易となった。
【0160】
また、本実施例に用いられる抽出用チップは、図9(a)に示した抽出用チップ106の構造に限定されるものではない。搬送用液と抽出用液で、抽出用チップの注入口、注入流路、排出流路、排出口を別に設けた構成であればよく、例えば、図9(b)に示した抽出用チップ107のような構造でも構わない。
【0161】
図9(b)の構成であれば、搬送用液と抽出用液の送入方向が異なることにより、抽出液を注入する際、堰き止め部21に堰き止められた花粉の影響を受けにくく、より安定した送液が可能となる。さらに、抽出中に、抽出槽部16内の抽出用液15を揺動させる際に、抽出槽部16の抽出用液注入口31側と抽出用液排出口37側の両側に堰き止め部21が配置された構成であるため、検体が抽出槽部16の外に出ることを防止することが可能となり、抽出効率をさらに上げることができる。
【0162】
また、図9(b)の構成であれば、搬入の際に堰き止め部に凝集した検体を、垂直方向から抽出用液を流すことにより、凝集を解消しながら抽出が行えるという利点がある。
【0163】
さらに、本実施例では、送液用液と抽出用液の送液を同じポンプを用いて行なっているが、異なるポンプを用いてもよい。例えば、図10に示した搬送機構部の構成でも構わない。この場合、抽出用液の送液用のポンプ404、405に、シリンジポンプ等の少量送液用のポンプを用いることにより、抽出用液の定量化を、より精度良く行うことが可能となる。
【0164】
〔第3実施形態〕
本実施形態は、上記のタンパク質抽出装置に空中から検体を捕集する捕集機構部を備えたものである。
【0165】
図11に示すように、本実施形態のタンパク質抽出装置は、空中から検体を捕集する捕集機構部40と、検体を抽出部に送るための送液機構部と、検体からタンパク質の抽出を行う抽出用チップ1からなる。
【0166】
図12に捕集機構部40の構造を示す。(a)は正面図で、(b)は(a)のY−Y´の線で切断した場合の断面図であり、(c)は、捕集機構部40の斜視図である。捕集機構部40では、空中の検体をポンプもしくはファン等により吸引し、捕集機構部40の捕集容器42内に捕集する。
【0167】
捕集容器42内には、担持体43が取り付けられており、担持体43の裏面に設けられた吸入用ファン44により、吸入口45から空気を吸入することで、空中の検体を担持体43上に捕獲する。本実施形態では、吸入用にファンを用いているが、ポンプ等の他の機構を利用しても構わない。
【0168】
担持体43は、裏面部から吸引が可能であり、目的とする検体を通さず表面上に捕獲することができ、且つ、表面上に捕獲した検体を容易に回収可能な部材が望ましい。担持体43としては、例えば、濾紙、フィルム、フィルター等が利用できる。フィルターの材質としては、ステンレス、銅、ニッケル、ナイロン、ポリエステル、カーボンなどが利用できる。その中でも、金属製のフィルターは、捕獲した検体の回収が容易であり、特に好ましい。
【0169】
また、担持体43の表面に帯電防止コートを施しても構わない。そうすることにより、静電気による検体の吸着が防止され、担持体上に捕獲した検体を、担持体からさらに回収し易くすることができる。
【0170】
捕集容器42は、内壁部へ検体が吸着しにくい部材が好ましい。例えば、ステンレス、アルミ等の金属材や、ポリカーネート、アクリル等のプラスチック材の表面に帯電防止コート等を施したものを用いることが可能である。
【0171】
吸入口45には、検体より径の大きい塵埃の侵入を防止するための塵埃用フィルターを設けても構わない。塵埃用フィルターは、その孔が検体よりも大きく検体が容易に通過可能であり、フィルター上に検体が吸着しにくいフィルターが望ましく、例えば、金属製のフィルターが利用可能である。
【0172】
例えば、塵埃用フィルターとして濾過精度が100μmの平畳織金網フィルターを設けた場合、100μm以上の塵埃の侵入を防止することができ、スギ花粉の捕集、抽出をより安定して行うことが可能となる。
【0173】
次に、吸入口45から空気を一定時間吸引した後、捕集容器42に設けられたシャッター46を閉じ、捕集容器42を密閉した状態で、回収口47から、吸引ポンプ等を用い一定時間吸引することにより、担持体43上に捕獲された検体を、回収用液容器2内に送入する。
【0174】
回収用液容器2内に予め搬送用液を注入しておき、搬送用液中に検体を空気と共に送入することにより、検体と搬送用液が攪拌される。そのため、別途攪拌手段を設ける必要が無くなり、装置の小型化が可能となる。
【0175】
担持体43上の検体を回収する際、担持体43に振動機構48を設け、担持体43を振動させながら吸引を行ってもよい。担持体43を振動させることにより、担持体43上の検体がより取れ易くなり、空中からの検体の捕集効率を上げることができる。
【0176】
また、担持体43上の検体を回収する際、担持体43の裏面の一部を叩きながら吸引を行ってもよい。担持体43に衝撃を加えることにより、担持体43上の検体がより取れ易くなり、空中からの検体の捕集効率を上げることができる。
【0177】
また、担持体43上の検体を回収する際、担持体43の裏面もしくは表面からファン等で送風しながら、吸引を行ってもよい。担持体43に風圧を加えることにより、担持体43上の検体がより取れ易くなり、空中からの検体の捕集効率を上げることができる。
【0178】
また、担持体43上の検体を回収する際、担持体43上の検体を金属ブラシ等でかき取りながら吸引を行ってもよい。検体を直接かき取ることにより、担持体43上の検体がより取れ易くなり、空中からの検体の捕集効率を上げることができる。
【0179】
また、担持体43上の検体を回収する際、ポンプやファン等の吸引機構を移動可能にすることにより、担持体43上の表面を、吸引ノズルを移動させながら吸引を行ってもよい。検体を直接吸引することにより、担持体43上の検体がより取れ易くなり、空中からの検体の捕集効率を上げることができる。
【0180】
また、担持体43上の検体を回収する際、捕集容器42内に搬送用液を流しながら吸引を行ってもよい。搬送用液で洗い流すことにより、捕集容器42内の検体がより回収しやすくなり、空中からの検体の捕集効率を上げることができる。
【0181】
回収用液容器2に回収された検体は、第1実施形態と同様の方法により、タンパク質の抽出を行うことが可能である。
【0182】
以上のように、本実施形態によると、空中からの検体の捕集から、タンパク質の抽出、分離までの動作を一つの装置により自動で行うことが可能となる。担持体43上に一旦捕獲した後回収を行う方法で検体を捕集することにより、捕獲時の吸引速度を上げる事が容易となり、検体の捕集時間を短くすることが可能となる。また、少量の抽出液中でタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質抽出液を生成することができ、従来必要であった煩雑な濃縮工程が不要であり、装置の小型化が可能となる。さらに、この高濃度タンパク質抽出液をタンパク質検出用の試験液として用いることにより、精度の高いタンパク質の量の測定が可能になる。
【0183】
本実施形態では、空中からの検体の捕集において、担持体43上に一旦捕獲した後回収を行う方法を用いたが、担持体43を介さず、ポンプ等により吸引を行い、回収用液容器2内へ直接捕集しても構わない。担持体43を用いる場合に比べ、吸引速度に対する制限が厳しくなるが、担持体43等への吸着が低減され、捕集効率を上げることが容易となる。
【0184】
また、本実施形態では、塵埃と検体の分離にフィルターを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、サイクロン構造を利用して遠心力の違いにより分離する方法や、重力の違いを利用して分離する方法等を用いても構わない。
【0185】
また、本実施形態では、検体を搬送用液に混ぜて、抽出用チップ1内の抽出槽部16に注入を行なったが、検体を抽出槽部16に直接注入しても構わない。抽出槽部16内に検体を入れて抽出を行うことで、少量の抽出液中でタンパク質が抽出されるため、高濃度のタンパク質抽出液を生成することが可能である。
【0186】
(実施例8)
第3実施形態にかかるタンパク質抽出装置の一例を本実施例において説明する。
【0187】
本実施例のタンパク質抽出装置には、図12に示した捕集機構部40と、図11に示した送液機構部111と、図1に示した抽出用チップ1を用いた。空中のスギ花粉を検体として、スギ花粉に含まれるアレルゲンタンパク質のCry−J1を、タンパク質抽出装置により抽出し、抽出されたCry−J1の量を検出部で検出した。
【0188】
使用した容器、ポンプ、バルブ及びチューブは、実施例1と同じとした。
【0189】
図12に捕集機構部40の構造を示す。捕集容器42内には、担持体43として金網フィルターが取り付けられており、金網フィルターの裏面に設けられた吸入用ファン44により、吸入口45から空気を吸入することで、空中のスギ花粉を金網フィルター上に捕獲した。
【0190】
金網フィルターは、サイズが120mm×120mm、濾過精度が20μmの綾畳織金網フィルターを用いた。吸入ファンにより金網フィルターを通過する流速は0.6m/sであった。
【0191】
捕集容器42は、内壁部へスギ花粉が吸着するのを防止するため、ステンレスを用いた。
【0192】
吸入口45から空気を吸入している間に、バルブ9、27を開き、ポンプ25をONし、搬送用液容器24から、搬送用液である純水5mlを、回収用液容器内に注入した。
【0193】
次に、吸入口45から空気を5分間吸入した後、捕集容器42に設けられたシャッター46を閉じ、捕集容器42を密閉した状態にし、バルブ38を開き、ポンプ25をONし、回収口47から、担持体43である金網フィルターに捕獲されたスギ花粉を、回収用液容器2内に送入した。
【0194】
金網フィルター上のスギ花粉を回収する際、金網フィルターに取り付けられた振動モーターにより、金網フィルターを振動させながら回収を行なった。金網フィルターを振動させることにより、金網フィルター上のスギ花粉がより取れ易くなり、空中からのスギ花粉の捕集効率を上げることができた。
【0195】
回収用液容器2内に予め注入しておいた純水中にスギ花粉を空気と共に送入することにより、スギ花粉と純水が容易に攪拌された。そのため、攪拌手段を別途設ける必要が無く、装置の小型化が可能となった。
【0196】
スギ花粉と純水の混合液を抽出槽部16に送入する前に、カゼイン溶液を抽出槽部16内に注入した。抽出槽部16、排出流路20の表面をカゼイン溶液で覆うことにより、抽出槽部16、排出流路20へのタンパク質の吸着が抑えられ、タンパク質を効率良く抽出することが可能となった。
【0197】
以下、実施例1と同様に、回収容器用液容器2内の検体の搬送工程及び抽出工程を行なった。抽出されたCry−J1量は、従来の電気化学検出型マイクロ流路デバイスにより検出できることが確認できた。
【0198】
以上のように、本実施例によると、空中からのスギ花粉の捕集から、タンパク質の抽出、分離までの動作を一つの装置により自動で行うことが可能であった。また、金網フィルター上に一旦捕獲した後回収を行う方法でスギ花粉を捕集することにより、捕獲時の吸引速度を上げる事が容易となり、スギ花粉の捕集時間を短くすることが可能であった。
【0199】
〔第4実施形態〕
本実施形態では、第3実施形態にかかるタンパク質抽出装置と、タンパク質検出用マイクロチップとを一体化したタンパク質測定装置について説明する。
【0200】
図13は、本実施形態にかかるタンパク質測定装置の概略図である。タンパク質測定装置は、タンパク質抽出装置300と、タンパク質検出用マイクロチップ500とが、配管により接続された構成である。このタンパク質抽出装置300は、第3実施形態と同様のものである。
【0201】
タンパク質検出用マイクロチップ500は、流路504が形成された基板501と、注入口504Aと、排出口505Aと、電気化学検出用電極506が形成された蓋基板510とが重ね合わせてなる。
【0202】
流路504には、反応物質である抗体が固定された微粒子502が充填されている。微粒子502には、抽出されたタンパク質と抗原抗体反応を起こす抗体が固定されている。また、注入口504Aには、タンパク質抽出装置300から繋がる配管が、ジョイント511により固定されている。
【0203】
また、この配管には、洗浄液、標識付抗体溶液、及び基質溶液貯蔵部301に繋がれた配管302が切換バルブ303を介して接続されている。
【0204】
この装置では、まず切換バルブ303を切り換えることで、第2実施形態と同様にして抽出されたタンパク質抽出液を、マイクロ流路デバイス500の注入口504Aから注入する。これにより、タンパク質抽出液に含まれるアレルゲンと、微粒子502の抗体とが反応して、アレルゲンが捕捉される。
【0205】
この後、洗浄液を流して、流路504を洗浄する。
【0206】
この後、酵素標識付抗体溶液を、マイクロ流路デバイス500の注入口504Aから注入する。これにより、酵素標識付抗体と、微粒子502に固定された抗体−抗原複合体とが反応して、酵素標識付抗体が捕捉される。
【0207】
この後、洗浄液を流して、流路504を洗浄した後、基質溶液を、マイクロ流路デバイス500の注入口504Aから注入する。これにより、基質と酵素とが反応して、電気化学活性物質が生じる。
【0208】
この電気化学活性物質の量を、電極506により検出する。
【0209】
尚、タンパク質抽出装置300及びマイクロ流路デバイス500並びにそれらを繋ぐ流路内において、タンパク質を含む溶液が接する壁の表面にはタンパク質の非特異的吸着を防止する膜又は処理がなされている。
【0210】
本実施形態によると、検体の捕集からアレルゲンの量の検出までの動作を一つの装置で行うことができ、作業効率が飛躍的に向上する。
【0211】
本実施形態では、タンパク質検出用マイクロチップの検出方法として、電気化学的検出方法を用いたが、これに限定されるものではない。熱レンズ方式やSPR法等の他の検出方法を用いたマイクロ流路デバイスであっても構わない。この場合も、検体の捕集からアレルゲンの量の検出までの動作を一つの装置で行うことが可能となる。
【0212】
〔第5実施形態〕
本実施形態では、第4実施形態にかかるタンパク質測定装置を、空気清浄機に組み込んだものについて説明する。
【0213】
図15に、本実施態様にかかる空気清浄機の概略図を示す。(a)は、空気清浄機の正面図であり、(b)は(a)のZ−Z´ラインで切断したときの断面図である。
【0214】
図15(b)に示すように、本体601内部は、仕切り板602によって前後に仕切られている。この結果、本体601内部の前方(仕切り板602よりも風上側)には第1区画室603が形成され、後方(仕切り板602よりも風下側)には第2区画室604が形成されている。第1区画室603と第2区画室604とは、仕切り板602に設けられた単一または複数の開口部を介して連通している。また、本体601の前方には、外部からの空気の吸込口605が設けられており、本体601の後方上面には、吸い込んだ空気を外部に放出するための吹出口606が設けられている。
【0215】
吸込口605は、複数の吸込口で構成されている。本実施形態では、吸込口605は、第1吸込口605aと、第2吸込口605bとで構成されており、これらが本体601の前面で上下に並設されている。
【0216】
また、本体601内には、フィルター607と、イオン発生器608と、送風手段609とが設けられている。
【0217】
フィルター607は、外部から吸い込んだ空気を通過させて清浄化するものであり、第1区画室603内に設けられている。このフィルター607は、集塵フィルターと、脱臭フィルターとで構成されている。集塵フィルターは、空気中に含まれる塵埃を除去するものであり、脱臭フィルターは、空気中の臭気成分を除去するものである。
【0218】
フィルター607は、いずれかの吸込口から吸い込まれた空気のみが通過するように本体601の内部に設けられており、特に、本実施形態では、第1の吸込口605aから吸い込まれた空気のみが通過するように、第1吸込口605aのすぐ後方(風下側)に設けられている。つまり、第2吸込口605bの後方にはフィルター607は配置されていない。これにより、本体601内部に吸い込まれる空気の経路としては、第1吸込口605aから吸い込まれてフィルター607を通過する経路(以下、第1経路Aと称する)と、第2吸込口605bから吸い込まれてフィルター607を通過しない経路(以下、第2経路Bと称する)との2通りの経路があることになる。
【0219】
イオン発生器608は、誘電体を介して対向配置される放電電極と誘導電極とを備え、これら両電極間を放電させることによってイオンを発生するものであり、第2区画室604において吹出口606の近傍に設けられている。イオン発生器608は、正負イオンのうちの少なくとも一方を発生させることができる。イオン発生器608から正負両イオンを発生させれば、これらのイオンにより空気中の浮遊細菌を不活化させたり、空気中の有害物質を除去したりすることができる。
【0220】
送風手段609は、外部から吸い込んだ空気を、イオン発生器608を介して外部に放出するものであり、ファン609aと、そのファン609aを回転させるモーター609bとを有している。ファン609aは、第2区画室604に設けられており、モーター609bは、第1区画室603と第2区画室604とにまたがって設けられている。
【0221】
シャッター610は、第2吸込口605bのすぐ後方に設けられており、それ自身の開閉動作により、第2吸込口605bを開閉する。
【0222】
タンパク質抽出装置300は、吸込口605bを入った所定の場所に設けられており、吸込口605bの下には、例えば従来提案されているアレルゲン検出用マイクロチップ500を挿入する挿入口611が設けられている。アレルゲン検出用マイクロチップ500を挿入口611から挿入すると、アレルゲン検出用マイクロチップ500と本発明のタンパク質抽出装置300が接続される。この接続された状態は、上記の第3実施形態と同様である。
【0223】
空気清浄機を作動すると、フィルター607を介さない空気がタンパク質抽出装置300に送られる。上記の第2実施形態、第3実施形態で説明したように、花粉が採取され、タンパク質が抽出され、タンパク質の量が検出される。
【0224】
検出されたタンパク質の量に応じた電気信号が、マイクロチップ500から空気清浄機制御部に送られる。空気清浄機制御部では、マイコン制御などによりファン609aの回転量(送風量)やイオン発生器のイオン発生量が制御される。
【0225】
ここで、アレルゲン検出用マイクロチップ500は、使用後、再生処理を行って、複数回使用する。感度が落ちたアレルゲン検出用マイクロチップ500は、挿入口611から取り出され、新しいアレルゲン検出用マイクロチップ500が挿入される。
【0226】
本実施形態では、空気清浄機を例にして、本発明のタンパク質測定装置の応用例を説明したが、エアーコンディショナー、加湿器、除湿機などの他の空気調整機にも応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0227】
上述したように、本発明によると、目的とするタンパク質を効率的に抽出できるタンパク質抽出装置が実現できる。この装置を測定器に繋ぐことで、タンパク質測定装置が実現できる。これにより、花粉等の外部空間に含まれる検体の採取から、タンパク質の抽出、濃縮、分離、測定までの動作を、一つの装置で効率よく行うことができる。よって、その産業上の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】第1実施形態にかかる抽出用チップ構造を示す概略図である。
【図2】第2実施形態にかかるタンパク質抽出装置の概要を説明する概略図である。
【図3】実施例2にかかるタンパク質抽出装置の概要を説明する概略図である。
【図4】実施例3にかかる抽出用チップ構造を示す概略図である。
【図5】実施例4にかかる抽出用チップ構造を示す概略図である。
【図6】実施例5にかかる抽出用チップ構造を示す概略図である。
【図7】実施例6にかかる抽出用チップ構造を示す概略図である。
【図8】実施例7にかかるタンパク質抽出装置の概要を説明する概略図である。
【図9】実施例7にかかる抽出用チップ構造を示す概略図である。
【図10】実施例7にかかる別のタンパク質抽出装置の概要を説明する概略図である。
【図11】第3実施形態にかかるタンパク質抽出装置の概要を説明する概略図である。
【図12】第3実施形態にかかる捕集機構部の構造を示す概略図である。
【図13】第4実施形態にかかるタンパク質測定装置の概要を説明する概略図である。
【図14】第4実施態様で用いるアレルゲン検出用マイクロチップの概要を説明する概略図である。
【図15】第5実施形態にかかる空気清浄機の概要を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0229】
1 抽出用チップ
2 回収用液容器
3 抽出用液容器
4 排出用液容器
5、6 送液ポンプ
7、8、9、10、11 バルブ
12 送液用チューブ
13 検出部
14 検体と搬送用液との混合液
15 抽出用液
16 抽出槽部
17 注入口
18 排出口
19 注入流路
20 排出流路
21 堰き止め部
22 基板
23 蓋基材
24 搬送用液容器
25 吸引ポンプ
26、27 バルブ
28 搬送用液
30 搬送用液注入口
31 抽出用液注入口
32 搬送用液注入流路
33 抽出用液注入流路
34 搬送用液排出流路
35 抽出用液排出流路
36 搬送用液排出口
37 抽出用液排出口
38 バルブ
40 捕集機構部
41 回収用チューブ
42 捕集容器
43 担持体
44 吸入用ファン
45 吸入口
46 シャッター
47 回収口
48 振動機構
101、102、103、104、105、106、107 抽出用チップ
111 送液機構部
300 タンパク質抽出装置
301 溶液貯蔵部
302 配管
303 切換バルブ
401、402、403 バルブ
404、405 ポンプ
500 タンパク質検出用マイクロチップ
501 基板
502 抗体付微粒子
503 反応槽部
504、505 流路
504A 注入口
505A 排出口
506 電極
507 接続パッド
508 堰き止め部
509 配線
510 蓋基板
511 ジョイント
601 空気調整機本体
602 仕切り板
603 第1区画室
604 第2区画室
605a 第1吸込口
605b 第2吸込口
606 吹出口
607 フィルター
608 イオン発生器
609a ファン
609b モーター
610 シャッター
611 挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体から目的成分を抽出する抽出槽部と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの注入用流路と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの排出用流路と、
を備える抽出用マイクロチップにおいて、
前記抽出槽部内の注入用流路と排出用流路との間に、チップ平面視形状が湾曲形状の堰き止め部が設けられている、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項2】
請求項1に記載の抽出用マイクロチップにおいて、
前記抽出槽部の平面視形状が、円形状または楕円形状である、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項3】
請求項1ないし2に記載の抽出用マイクロチップにおいて、
前記堰き止め部は、排出用流路側に凸の湾曲形状である、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の抽出用マイクロチップにおいて、
前記堰き止め部は、スリット構造からなるものである、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項5】
検体から目的成分を抽出する抽出槽部と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの注入用流路と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの排出用流路と、
を備える抽出用マイクロチップにおいて、
前記堰き止め部は、前記抽出槽部の流出入方向と垂直方向にある両端面をつなぐ形状で設けられ、両端面近傍のスリット幅が中央領域におけるスリット幅よりも広くなっている、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項6】
検体から目的成分を抽出する抽出槽部と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの注入用流路と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの排出用流路と、
を備える抽出用マイクロチップにおいて、
前記抽出槽内の注入用流路と排出用流路との間に、スリット構造を有する堰き止め部が流れ方向に向かって少なくとも2列設けられている、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項7】
検体から目的成分を抽出する抽出槽部と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの注入用流路と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの排出用流路と、
を備える抽出用マイクロチップにおいて、
前記抽出槽内の注入用流路と排出用流路との間に、スリット構造を有する堰き止め部が複数配置され、当該複数の堰き止め部は流れ方向に向かって多段階的に配置されている
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項8】
検体から目的成分を抽出する抽出槽部と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも1つの注入用流路と、
前記抽出槽部に接続された、少なくとも2つの排出用流路と、
を備える抽出用マイクロチップにおいて、
前記抽出槽部には、それぞれの排出用流路と注入用流路との間に、それぞれスリット構造を有する堰き止め部が設けられている、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の抽出用マイクロチップにおいて、
マイクロチップ内の前記抽出槽部の容積が、5〜50μlである、
ことを特徴とする抽出用マイクロチップ。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかに記載の抽出用マイクロチップと、
前記抽出用マイクロチップの抽出槽に検体及び抽出用液を送液する送液機構部と、
を有し、
前記送液機構部が、前記検体と抽出用液を溜めておく試料液収納容器と、検体及び抽出用液を前記試料液収納容器から前記抽出用マイクロチップ内の抽出槽部にまで送液する送液ポンプと、を少なくともを備える、
ことを特徴とするタンパク質抽出装置。
【請求項11】
請求項10に記載のタンパク質抽出装置において、
抽出用液の送液量が、5〜100μlである、
ことを特徴とするタンパク質抽出装置。
【請求項12】
請求項10ないし11に記載のタンパク質抽出装置において、
前記マイクロチップに前記抽出槽部を振動させる手段を設ける、
ことを特徴とするタンパク質抽出装置。
【請求項13】
請求項10ないし11に記載のタンパク質抽出装置において、
マイクロチップに超音波発生装置を設ける、
ことを特徴とするタンパク質抽出装置。
【請求項14】
請求項10ないし13の何れかに記載のタンパク質抽出装置において、
マイクロチップにマイクロヒーターを設ける、
ことを特徴とするタンパク質抽出装置。
【請求項15】
請求項10ないし14の何れかに記載のタンパク質抽出装置において、
前記送液機構部に、吸引ポンプをさらに設ける、
ことを特徴とするタンパク質抽出装置。
【請求項16】
請求項10ないし15の何れかに記載のタンパク質抽出装置において、
外部空間から検体を捕集する捕集機構部を設ける、
ことを特徴とするタンパク質抽出装置。
【請求項17】
請求項10ないし16の何れかに記載のタンパク質抽出装置と、
前記タンパク質抽出装置により抽出されたタンパク質の種類及び量を検出するマイクロ流路デバイスと、を備え、
当該マイクロ流路デバイスが、前記タンパク質と反応する反応物質を含む反応部と、
当該タンパク質の量を検出する検出部と、
を有してなる、
ことを特徴とするタンパク質測定装置。
【請求項18】
請求項17に記載のタンパク質測定装置と、
前記検体を空気と共に移動させる送風手段と、
前記タンパク質測定装置により測定された前記外気に含まれるタンパク質の量に応じて前記送風手段の送風量を増減する送風制御手段と、を備える、
ことを特徴とする空気調整機。
【請求項19】
請求項17に記載のタンパク質測定装置と、
タンパク質含有物質を除去するタンパク質含有物質除去手段と、
前記タンパク質測定装置により測定されたタンパク質の量に応じて、前記タンパク質含有物質除去手段の動作を制御する除去動作制御手段と、を備える、
ことを特徴とする空気調整機。
【請求項20】
検体から目的成分を抽出する抽出槽部と、前記抽出槽部に接続された少なくとも1つの注入用流路と、前記抽出槽部に接続された少なくとも1つの排出用流路と、を備える抽出用マイクロチップであって、前記抽出槽部内の注入用流路と排出用流路との間に堰き止め部が設けられていることを特徴とする抽出用マイクロチップと、
前記抽出用マイクロチップの抽出槽に検体及び抽出用液を送液する送液機構部と、
を有し、
前記送液機構部が、前記検体及び抽出用液を溜めておく試料液収納容器と、
検体及び抽出用液を前記試料液収納容器から前記抽出用マイクロチップ内の抽出槽部にまで送液する送液ポンプと、
を少なくともを備えるタンパク質抽出装置を用いて、
検体からタンパク質を抽出するタンパク質抽出方法であって、
前記検体と混合された搬送用液を前記送液ポンプで送液し、搬送用液と共に前記検体をマイクロチップ内に搬送する、
ことを特徴とするタンパク質抽出方法。
【請求項21】
請求項1ないし9の何れかに記載の抽出用マイクロチップと、
前記抽出用マイクロチップの抽出槽に検体及び抽出用液を送液する送液機構部と、
を有し、
前記送液機構部が、前記検体及び抽出用液を溜めておく試料液収納容器と、
検体及び抽出用液を前記試料液収納容器から前記抽出用マイクロチップ内の抽出槽部にまで送液する送液ポンプと、
を少なくともを備えるタンパク質抽出装置を用いて、
検体からタンパク質を抽出するタンパク質抽出方法であって、
前記検体と混合された搬送用液を前記送液ポンプで送液し、搬送用液と共に前記検体をマイクロチップ内に搬送する、
ことを特徴とするタンパク質抽出方法。
【請求項22】
請求項20ないし21に記載のタンパク質抽出方法において、
前記送液ポンプと前記吸引ポンプとにより、前記抽出用液を交互に送液及び逆送させて、前記抽出用液を揺動させることにより検体からタンパク質を抽出する、
ことを特徴とするタンパク質抽出方法。
【請求項23】
請求項20ないし22の何れかに記載のタンパク質抽出方法において、
前記搬送用液として、検体に含まれる抽出目的タンパク質の溶けないタンパク質貧溶媒を用いる、
ことを特徴とするタンパク質抽出方法。
【請求項24】
請求項20ないし23の何れかに記載のタンパク質抽出方法において、
前記検体が花粉である、
ことを特徴とするタンパク質抽出方法。
【請求項25】
請求項20ないし24の何れかに記載のタンパク質抽出方法において、
前記搬送用液が、純水である、
ことを特徴とするタンパク質抽出方法。
【請求項26】
請求項20ないし25の何れかに記載のタンパク質抽出方法において、
前記抽出用液がリン酸緩衝液である、
ことを特徴とするタンパク質抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−209094(P2009−209094A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54080(P2008−54080)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】