説明

タンパク質精製法

【課題】様々な中間洗浄バッファーで固相を洗浄することにより汚染物質を除去することを含んでなる、プロテインAクロマトグラフィーによるタンパク質を精製するための方法の提供。
【解決手段】CH2/CH3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;(b)洗浄剤と塩とを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;(c)固相からタンパク質を回収する、ことを含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
この発明は一般的なタンパク質の精製に関する。特に、当発明は、抗体や免疫付着因子のようなC2/C3領域を含むタンパク質の、プロテインA・アフィニティー・クロマトグラフィー法による精製方法に関する。
【0002】
〔関連技術の技術〕
大規模に、経済的にタンパク質を精製することは、バイオテクロノジー産業にとってますます重要な問題となっている。一般的に、興味あるタンパク質を産生するために、そのタンパク質の遺伝子を含む組換え型プラスミドの挿入により遺伝子工学的に作られた哺乳類又はバクテリアいずれかの細胞株を用いて、タンパク質は細胞培養によって産生される。使用される細胞株は生きた組織であるので、糖質、アミノ酸及び通常は動物の血清の調合液から供給される増殖因子を含む複合増殖培地で養わなければならない。細胞に与えた組成物の混合物からのタンパク質と、細胞自身の副生成物からのタンパク質とを、ヒトの治療用として使うために差し支えない純度で分離することは、侮りがたい挑戦である。
【0003】
細胞破片からタンパク質を精製する手順は、最初にタンパク質の発現部位によって決まる。いくつかのタンパク質は細胞から周囲の増殖培地の中へ直接分泌されることによって得られるが、他のタンパク質は細胞内で作られる。後者のタンパク質への精製プロセスの最初の段階は細胞破砕を含み、その細胞破砕は機械的剪断、浸透圧ショック、あるいは酵素的処理を含む多様な方法により行われる。このような破砕は、細胞のすべての内容物をホモジェネート中へ放出し、付け加えると、微小なので取り除くことが難しい細胞内断片を作り出してしまう。これらは一般的に分画遠心法又は濾過法で取り除かれる。小さい範囲ではあるが、細胞の自然死や、タンパク質産生工程の過程の中での細胞内宿主細胞タンパク質の放出に起因した分泌タンパク質により、全く同じ問題が直接生じる。
【0004】
ひとたび興味あるタンパク質を含む精製溶液が得られれば、細胞によって産生された他のタンパク質からの分離は、通常、異なるクロマトグラフィー法の組合せを用いて試みられる。これらの手法は、電荷、親水性の程度、又は大きさに基づいてタンパク質混合物を分離する。いくつかの異なるクロマトグラフィー用樹脂を、これらのそれぞれの手法に使用することができ、特異タンパク質にかかわる精製計画に正確に調整することも可能である。これらそれぞれの分離法の本質は、より速くカラムを下るように物理的な分離を増大させることにより、タンパク質が異なる速度比で長いカラムを下るようにするか、又は、異なる溶媒によって異なる溶出をされることにより、分離媒体に選択的に付着するようにするかのいずれかである。場合によって、不純物が非常に良くカラムに付着し、興味あるタンパク質が付着しない、つまり、興味あるタンパク質が「フロースルー(flow-through)」である時に、目的のタンパク質が不純物から分離される。
【0005】
精製されるタンパク質と固定化された捕捉剤の間の特別な相互作用を利用したアフィニティー・クロマトグラフィーは、ある種のタンパク質にとっての選択肢ともなりうる。プロテインAは、例えばFc領域を含む抗体のようなタンパク質のアフィニティー・クロマトグラフィーには、有用な吸着剤である。プロテインAは、抗体のFc領域に高い親和性(ヒトIgGに対して約10−8M)で結合する Staphylococcus aureas から得られる、41kDの細胞壁タンパク質である。
【0006】
タンパク質は制御された空孔ガラス(Sulkowski, E. Protein Purification: Micro to Macro, pgs 177-195 (1987); Chadhaら,Preparative Biochemistry 11(4):467-482 (1981))、又は被覆されていないシリカ(Reifsnyderら,J. Chromatography 753:73-80 (1996))を用いて精製されるであろう。
【0007】
米国特許6,127,526及び6,333,398(Blank, G.)には、不純物を取り除くために疎水性電解質、例えば塩化テトラメチルアンモニウム(以下TMACと略す)及び塩化テトラエチルアンモニウム(以下TEACと略す)、を用いるプロテインAクロマトグラフィーの中間洗浄段階について記載されているが、プロテインAカラムに束縛された固定化プロテインA又は興味あるタンパク質についての記載はない。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、プロテインAクロマトグラフィーに用いる、TMAC又はTEAC以外の、多様な中間洗浄バッファーを提供する。
第一の実施形態では、本発明は、C2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)洗浄剤と塩とを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法を提供する。
【0009】
もうひとつの実施形態では、本発明は、C2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)約0.8Mより大きい濃度のバッファーを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法を提供する。
【0010】
本発明は、別の実施形態として、C2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)塩と溶媒とを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法にも関する。
【0011】
さらに、本発明は、C2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)塩とポリマーとを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法を提供する。
【0012】
好ましい実施形態として、タンパク質は抗体(例えば、HER2、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、IgE、CD20、CD40、CD11a、組織因子(TF)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、インターロイキン−8(IL−8)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、HER3、HER4、α4β7又はα5β3と結合するもの)あるいは免疫付着因子(例えば、TNF受容体免疫付着因子)である。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
〔定義〕
ここで用いられるとき、用語「プロテインA」は、その天然源から回収されたプロテインA、合成的に(例えば、ペプチド合成あるいは再組換え技術により)産生されたプロテインA、及びC2/C3領域を持つタンパク質と結合する能力を持つそれらの変異体とを包含している。プロテインAはRepligen, Pharmacia and Fermatech社から商業的に購入することができる。
【0014】
プロテインAは固相上に固定化される。「固相」によって、プロテインAが付着できる非水性のマトリックスを意図させる。その興味ある固相は一般的にガラス、シリカ、アガロース又はポリスチレン表面を含む物である。好ましい実施形態では、固相は、空孔を制御されたガラス・カラム又はケイ酸カラムである。さらに好ましい実施形態では、固相は、固相への汚染物質の非特異的な付着を防ぐことを目的とした試薬(グリセロール等)によってコートされている。
【0015】
その興味あるタンパク質はC2/C3領域を含むものであり、プロテインAクロマトグラフィーによる精製によって影響を受けやすいものでもある。ここで用いるときの用語「C2/C3領域」は、プロテインAと相互作用する免疫グロブリン分子のFc領域内におけるそれらのアミノ酸残基を示す。好ましい実施形態として、C2/C3領域は、後に非損傷のC3領域が続く非損傷のC2領域を含み、最も好ましくは免疫グロブリンのFc領域を含む。タンパク質を含有するC2/C3領域の実施形態は、抗体、免疫付着因子及び、C2/C3領域と融合あるいは結合した興味あるタンパク質からなる融合タンパク質を包含する。
【0016】
「中間洗浄段階」は興味あるタンパク質が固相上に載せられ、プロテインAに吸着された後であるが、タンパク質がカラムから回収される前に行われるステップである。中間洗浄段階は、興味あるタンパク質とプロテインAを固相から著しく溶出することなしに、固相、抗体及び/又はプロテインAに非特異的に付いた汚染物質を除去する役目を果たす。中間洗浄段階では、固相は望ましい「中間洗浄バッファー」(例えば、中間洗浄バッファーは固相であるプロテインAカラムを通り抜ける)で洗浄される。
【0017】
「バッファー」は、酸−塩基結合成分の挙動によるpHの変化に耐える緩衝溶液である。
ここでの「平衡バッファー」は、興味あるタンパク質をローディングするための(固定化プロテインAを伴う)固相を準備するために用いられる。平衡バッファーは好ましくはイオン性で、通常pHは6〜8の範囲である。平衡バッファーの実施例は、トリス25mM、塩化ナトリウム25mM、EDTA5mM、pH7.1であった。
【0018】
「ローディング・バッファー」は、タンパク質と汚染物質を含むC2/C3領域の混合物をプロテインAが固定化された固相上にのせるために用いられる。しばしば、平衡バッファーとローディング・バッファーは同じである。
【0019】
「溶出バッファー」は、固定化プロテインAからC2/C3領域含有タンパク質を溶出するために用いられる。好ましくは、溶出バッファーは低pHであり、それによってプロテインAと興味あるタンパク質の間の相互作用を壊す。好ましくは、低pHの溶出バッファーのpHは約2から約5の範囲であり、最も好ましくは、約3から約4の範囲である。この範囲内にpHを制御できるバッファーの例には、リン酸、酢酸、クエン酸及びアンモニウムバッファー、とこれらの組合せが含まれる。より好ましいこれらのバッファーはクエン酸及び酢酸バッファーであり、最も好ましくは、クエン酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムバッファーである。その他の溶出バッファーとしては、高pHのバッファー(例えば、それらのpHが9ないしそれ以上)、又は興味のあるタンパク質を溶出するための例えばMgCl(2mM)などの成分あるいは組成物を含むバッファーが予期される。
【0020】
「中間洗浄バッファー」は、例えばCHOPのように、プロテインAに結合された興味あるタンパク質の著しい量を除去することなしに、固定化プロテインAから汚染物質を取り除くためのバッファーである。その中間洗浄バッファーは好ましくは、(a)塩及び洗浄剤(例えば、ポリソルベート);(b)塩及び溶媒(例えば、へキシレングリコール);(c)高濃縮塩(例えば、高モル濃度のトリス・バッファー);又は(d)塩とポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))を含む。
【0021】
「塩」は酸と塩基の相互作用によって形成される。ここでの好ましい塩は、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、塩化物(例えば、塩化ナトリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)、又はカリウム塩である。
ここで用いられる、「溶媒」とは、一つ又はそれ以上の物質を溶解又は分散することができる、溶液を準備するための液体物質を示す。好ましい溶媒は、有機物、非極性溶媒、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、へキシレングリコール、プロピレングリコール、及び2,2−チオジグリコールである。
【0022】
「洗浄剤」という用語は、ポリソルビン酸類(例えば、ポリソルベート20又は80);ポロキサマー(poloxamer)類(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチル配糖体ナトリウム(sodium octyl glycoside);ラウリル−,ミスチリル−,リノレイル−,又はステアリルスルフォベタイン;ラウリル−,ミスチリル−,リノレイル−,又はステアリルサルコシン;リノレイル−,ミスチリル−,又はセチルベタイン;ラウロアミドプロピル(lauroamidopropyl)−,コカミドプロピル(cocamidopropyl)−,リノレアミドプロピル(linoleamidopropyl)−,ミリスタミドプロピル(myristamidopropyl)−,パルミドプロピル(palmidopropyl)−,又はイソステラミドプロピル−ベタイン(isostearamidopropyl-betaine)(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル(myristamidopropyl)−,パルミドプロピル(palmidopropyl)−,又はイソステラミドプロピル−ジメチルアミン;メチルココイルナトリウム(sodium methyl cocoyl)−,又はメチルオレイル−タウレート二ナトリウム塩(disodium methyl oleyl-taurate);及びモナクアト(MONAQUAT,登録商標)シリーズ(Mona Industries, Inc., Paterson, New Jersey)等のナトリウム非イオン性界面活性剤を示す。好ましい洗浄剤は、ポリソルベートであり、例えばポリソルベート20(TWEEN20(登録商標))あるいはポリソルベート80(TWEEN80(登録商標))である。
ここでの「ポリマー」とは二つ又はそれ以上のモノマーの共有結合によって形成された分子であり、そのモノマーはアミノ酸残基ではない。ポリマーの実施例は、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及び、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコーポリマー類(例えば、プルロニクス(Pluronics)、PF68等)。好ましいポリマーはポリエチレングリコール(PEG)であり、例えば、PEG400及びPEG8000である。
【0023】
「抗体」という用語は、最も広義かつ具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異抗体(例えば、二重特異性抗体(bispecific antibodies))及び抗体断片に用いられ、ここに定義されるようなC2/C3領域に、それらが保持している間、あるいは構成されるために修飾されている間に用いられる。
「抗体断片」は、完全長抗体の一部分、一般的に抗原結合あるいはそれの可変領域を含む。抗体断片の実施例は、Fab、Fab’、F(ab’)、又はFv断片類;単一の鎖の抗体分子類;ダイアボディ類(diabodies);線形の抗体;また、抗体断片から生じた多重特異抗体などを含む。
【0024】
ここに使用されるような用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質の抗体の個体群から得られた抗体を示す。すなわち、個体群を含む個々の抗体は、少量の中に存在してもよい自然発生的に生じ得る変異体を除いて、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対して導かれている。さらに、典型的には異なる決定要素(エピトープ)に対して指示された異なる抗体を含んでいる従来の(ポリクローナル)抗体準備とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定要素に対して指示される。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質の個体群から得られているような抗体の特徴を示し、任意の特別の方法により得られる抗体の産生物としては解釈しない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体はKohlerらによって最初に記述された(Nature 256:495(1975))ハイブリドーマ法によって作られてもよいし、あるいは組換えDNA法(例えば米国特許4,816,567参照)によって作られてもよい。「モノクローナル抗体」も、例えば、Clacksonら(Nature 352:624-628(1991))や、Marksら(J. Mol. Biol. 222:581-597(1991))によって記述された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから分離されてもよい。
【0025】
モノクローナル抗体は、ここでは特に、鎖のリマインダーが同一、あるいは特別の抗体から派生した抗体中の対応する配列に同族、あるいは特別な抗体のクラスあるいは下位クラスに属している間、そのような抗体の断片と同様に、それらが要求される生物学的活性を示す限り、その中の重鎖及び/又は軽鎖の一部分が同一、あるいは特別の抗体から派生した抗体中の対応する配列に同族、あるいは特別な抗体のクラスあるいは下位クラスに属している「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含んでいる(米国特許4,816,567;及び、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0026】
ここに使用される「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与している抗体のアミノ酸残基を示す。超可変領域は、「相補性決定領域」あるいは「CDR」(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基24-34(L1)、50-56(L2)、と89-97(L3)、及び重鎖可変ドメイン中の残基31-35(H1)、50-65(H2)と95-102 (H3);Kabat ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))からのアミノ酸残基及び/又は「超可変ループ」(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基26-32 (L1)、 50-52 (L2) と 91-96 (L3) 、及び重鎖可変ドメイン中の残基26-32 (H1), 53-55 (H2) と 96-101 (H3);Chothia と Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))からの残基を含む。「フレームワーク」あるいは「FR」残基は、ここに定義されるような超可変領域残基以外の可変領域残基である。
【0027】
非ヒト(例えば、ネズミ科の)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来した最小の配列を含むキメラ抗体である。大部分は、ヒト化抗体は、要求される特異性、親和性及び受容力を持つ、例えばマウス、ラット、ウサギあるいはヒト以外の霊長類のようなヒト以外の種(ドナー抗体)からの超可変領域残基によって置き換えられた受容体の超可変領域残基であるヒト免疫グロブリン(受容抗体)である。いくつかの実例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基と置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、受容抗体中あるいはドナー抗体中で見つからない残基を含む可能性がある。これらの変異体は抗体性能をさらに精製するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、そして典型的には二つ、すべてあるいは非ヒト免疫グロブリンのもの及びすべてあるいは実質的にFR領域のすべてに対応する超可変ループの実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである可変領域、のすべてを実質的に含む。ヒト化抗体は、任意に、典型的にヒト免疫グロブリンの一部分である免疫グロブリンの定常領域(Fc)の一部分を少なくとも含むであろう。さらに詳細には、Jones ら、Nature 321:522-525 (1986);Riechmann ら、Nature 332:323-329 (1988);及び Presta、 Curr. Op. Struct Biol. 2:593-596 (1992)を参照せよ。
【0028】
ここに使用されるように「免疫付着因子」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を持つ異種起源の「付着因子」タンパク質(例えば受容体、配位子あるいは酵素)の「結合ドメイン」を結びつける、擬抗体分子を指す。構造上、免疫付着因子は、抗体(つまり、「異種起源である」)及び免疫グロブリン定常ドメイン配列の抗原認識及び結合部位(部位を結びつける抗原)以外の要求される結合特異性を備えた付着因子アミノ酸配列免疫グロブリンの融合体を含む。免疫付着因子の中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、これら領域を含む免疫付着因子をプロテインAクロマトグラフィーによって精製することができるようになって以来(Linamarkら,J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))、好ましくはγ1、γ2あるいはγ4の重鎖から生成される。
【0029】
ここに使用される「配位子結合ドメイン」という用語は、任意の天然細胞表面受容体あるいは任意の領域あるいは誘導体をしめし、それらは対応する天然受容体の定性的配位子結合を少なくとも1つ保持する。具体的な実施形態では、受容体は、免疫グロブリンのスーパー遺伝子群のメンバーに同族の、細胞外ドメインを持つ細胞表面ポリペプチドから出る。他の受容体、それらは免疫グロブリンのスーパー遺伝子群のメンバーではないが、それにもかかわらずこの定義によって特にカバーされる受容体は、サイトカイン用の受容体、及び特にチロシン・キナーゼ活性(受容体チロシン・キナーゼ)を伴うの受容体、ヘマトポエチン(hematopoietin)のメンバー、及び神経成長因子受容体の上科、及び細胞付着分子(例えば(E、L-またP-)セレクチン(selectins))である。
【0030】
「抗体結合ドメイン」という用語は、細胞付着分子を含む受容体用の任意の天然配位子、あるいは任意の領域、あるいは対応する天然配位子の少なくとも1つの定性受容体結合能力を保持する前記天然配位子の誘導体を指定するために使用する。この定義は、数ある中でも、特に、上述の受容体用配位子からの結合配列を含有する。
【0031】
「抗体−イムノアドヘシン・キメラ」は、少なくとも一つの(本出願中で定義された)イムノアドヘシンをもつ(ここで定義された)抗体の少なくとも1つの結合ドメインを組み合わせる分子を含む。典型的な抗体−免疫付着因子キメラはBergらによるPNAS (USA) 88:4723-4727 (1991) 及び Chamow らによる J. Immunol. 153:4268 (1994)に記載された二重特異性のCD4−IgGキメラ類である。
「トラスツズマブ (Trastuzumab)」あるいは「ハーセプチン(HERCEPTIN)(登録商標)」は、配列番号:1の軽鎖アミノ酸配列、及び配列番号:2の重鎖アミノ酸配列、あるいはHER2に結合するための能力を保持し、HER2(米国特許5,677,171参照;明確に参照文献よりここに合わせた)を過剰発現して癌細胞成長を阻害するアミノ酸配列変異体、を含むヒト化抗HER2抗体である。
【0032】
〔発明を行うためのモード〕
ここでのプロセスはプロテインAクロマトグラフィーによって汚染物質からC2/C3領域を含むタンパク質を精製することを含む。好ましい実施形態では、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製されるタンパク質は、抗体、イムノアドヘシンあるいはC2/C3領域に融合、又は結合したタンパク質である。前記分子を生み出すための技術について、以下に論ずる。
【0033】
〔1.抗体〕
本発明によって精製される好ましいタンパク質は抗体である。本発明の範囲内の抗体は、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))( Carter らProc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992), 米国特許5,725,856)を含む抗HER2抗体;例えば、米国特許5,736,137 (RITUXAN(登録商標))にあるようなキメラ抗CD20「C2B8」、米国特許5,721,108,B1にあるような2H7抗体のキメラ又はヒト化変異体、あるいはTositumomab(BEXXAR(登録商標))である抗CD20抗体;抗-IL-8(St John ら Chest, 103:932 (1993),及び国際公開WO 95/23865);、例えばヒト化抗VEGF抗体huA4.6.1 AVASTIN(登録商標)(Kim ら Growth Factors, 7:53-64 (1992), 国際公表 WO 96/30046, 及びWO 98/45331,1998年10月15日公開)のようなヒト化及び/又はアフィニティー成熟させた抗VEGF抗体を含む抗VEGF抗体;抗PSCA抗体(WO01/40309); S2C6及びそれのヒト化変異体(W00/75348)を含む抗CD40抗体;抗CD11a (米国特許 5,622,700,WO 98/23761,Steppe ら Transplant Intl. 4:3-7 (1991), 及び Hourmant ら Transplantation 58:377-380 (1994));抗IgE(Prestaら J. Immunol. 151:2623-2632 (1993),及び 国際公開 WO 95/19181);抗CD18(米国特許 5,622,700, 1997年4月22日発行,又は WO 97/26912,1997年7月31日公開);抗IgE(E25,E26 と E27を含む; 米国特許 5,714,338,1998年2月3日発行,あるいは米国特許5,091,313,1992年2月25日発行,WO 93/04173 1993年3月4日,又は国際出願PCT/US98/13410 1998年6月30日出願,米国特許 5,714,338);抗-Apo-2レセプター抗体(WO 98/51793 1998年11月19日公開);cA2(REMICADE(登録商標))、CDP571及びMAK-195(米国特許 5,672,347 1997年9月30日発行,Lorenzら J. Immunol. 156(4):1646-1653 (1996),及び Dhainautら Crit. Care Med. 23(9):1461-1469 (1995))を含む、抗TNF-a抗体;抗組織因子(TF)(欧州特許 0 420 937 B1,1994年11月9日取得);抗ヒトのαβインテグリン(WO 98/06248,1998年2月19日公開);抗EGFR(1996年12月19日に公表されたWO 96/40210でのようなキメラ化あるいはヒト化された225抗体);OKT3(米国特許4,515,893,1985年5月7日発行)のような抗CD3抗体;CHI-621(SIMULECT(登録商標)) 及び(ZENAPAX(登録商標))(米国特許5,693,762,1997年12月2日発行参照)のような、抗CD25抗体あるいは抗tac(anti-tac)抗体;cM-7412抗体(Choyら,Arthritis Rheum 39(1):52-56 (1996))のような抗CD4抗体;CAMPATH-1H(Riechmannら,Nature 332:323-337 (1988))のような抗CD52抗体;GrazianoらのJ. Immunol. 155(10):4996-5002 (1995)によるようなFcγRIに対して方向性をもったM22抗体のような抗Fcレセプター抗体;hMN-14(Sharkeyら、Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s (1995))のような抗癌胎児性抗原(anti-carcinoembryonic antigen:CEA)抗体;huBrE-3、hu-Mc 3及びCHL6(Ceriani ら,Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s (1995);及び Richman ら, Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s (1995));C242(Litton ら, Eur J. Immunol. 26(1):1-9 (1996))のような結腸癌細胞に結合する抗体;抗CD38抗体、例えばAT 13/5(Ellis ら,J. Immunol. 155(2):925-937 (1995)); Hu M195(Jurcic ら, Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s (1995))、 及びCMA-676、又はCDP771のような抗CD33抗体;LL2あるいはLymphoCide(Juweidら、Cancer Res 55(23 Suppl):5899s-5907s (1995))のような抗CD22抗体;1/-1A(PANOREX(登録商標))のような抗EpCAM抗体;abciximabあるいはc7E3 Fab(REOPRO(登録商標))のような抗GpIIb/IIIa抗体;MEDI-493(SYNAGIS(登録商標))ような抗RSV抗体;PROTOVIR(登録商標)のような抗CMV抗体;PRO542のような抗HIV抗体;抗Hep B抗体OSTAVIR(登録商標)のような抗肝炎抗体;抗CA 125抗体OvaRex;抗イディオタイプ(anti-idiotypic)GD3エピトープ抗体BEC2;抗αvβ3抗体VITAXIN(登録商標);ch-G250のような抗ヒト腎臓細胞癌抗体;ING-1;抗ヒト17-1A抗体(3622W94);抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対して方向性をもった抗ヒト黒色腫抗体R24;抗ヒトの扁平上皮細胞癌(SF-25);また、Smart ID10及び抗HLA DR抗体Oncolym(Lym-1)のような抗ヒト白血球抗原(HLA)抗体、などを含んでいるが、しかしそれらに制限されていない。ここでの抗体用の好ましいターゲット抗原はHER2受容体、VEGF、IgE、CD20、CD11a及びCD40である。
特に上に識別された抗体に加えて、熟練した実施者は、例えば、下記の技術の使用により、興味ある抗原に対して方向性をもった抗体を生成することができた。
【0034】
〔(i)抗原選択及び準備〕
ここでの抗体は、興味ある抗原に対して指図される。好ましくは、抗原は、生物学上重要なポリペプチドであり、哺乳動物の治療の利益に帰着することができる疾病や疾患に苦しむ哺乳動物の抗体の管理者である。しかしながら、非ポリペプチド抗原(腫瘍関連糖脂質抗原のような; 米国特許5,091,178参照)に対して方向性をもった抗体も熟考される。抗原がポリペプチドである場合、それは成長因子のような膜貫通型分子(例えば受容体)、あるいは配位子かもしれない。典型的な抗原は、下のセクション(iii)に記述されたタンパク質を含んでいる。本発明によって包含された抗体への典型的な分子ターゲットは、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22及びCD34のようなCDタンパク質;EGF、HER2、HER3あるいはHER4受容体のようなErbB受容体ファミリーのメンバー;LFA-1のような細胞付着分子、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びそこにαかβいずれかのサブユニット(例えば抗CD11 a、抗CD18あるいは抗CD11b抗体)を含むαv/β3インテグリン;VEGFのような成長因子;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC,あるいはここに言及された以外の抗原のいずれか、を含む。
【0035】
他の分子に任意に結合した、可溶の抗原あるいはそれの破片は、抗体の生成のための免疫原として用いることができる。受容体のような膜貫通型分子については、これらの断片(例えば、受容体の分子外ドメイン)は免疫原として用いることができる。代替的に、膜貫通型分子を発現する細胞は免疫原として用いることができる。そのような細胞は、天然の出所(例えば癌細胞株)に由来することができるか、あるいは膜貫通型分子を発現するための組換え技術によって変異された細胞かもしれない。
抗体を準備するのに役立つ他の抗原及びその形式は、技術的に明らかであろう。
【0036】
〔(ii) ポリクローナル抗体〕
ポリクローナル抗体は、好ましくは、適切な抗原及びアジュバントの、多重皮下注射(sc)又は腹腔内投与(ip)によって、動物の中で育成される。例えば、キーホール・リンペット・ヘモシニアン(keyhole limpet hemocyanin)、血清アルブミン、牛サイログロブリン(bovine thyroglobulin)、二官能性又は被覆剤を使用する大豆トリプシン抑制剤(例えば、マレイミドベンゾイル硫化コハク酸イミドエステル(maleimidobenzoyl sulfosuccinimide ester)(システイン残基を経由して結合)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(N-hydroxysuccinimide)(リジン残基経由)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとR1が異なるアルキル基である場合のR1=C=NRのように、免疫になる種において免疫原のタンパク質へ抗原を結合させることは有用かもしれない。動物は、抗原、免疫原性結合、連結による誘導体(例えば、タンパク質100μgないし5μg、あるいは完全フロインドアジュバント(Freund's complete adjuvant)の3体積量でその溶液を複数部位から皮内投与注射されるコンジュゲート(それぞれ、ウサギ又はマウスへ))に対して免疫を与えられる。1か月後に、動物は、複数部位からの皮下注射によって、完全フロインドアジュバント中の抗原又はコンジュゲートの初期量の1/5から1/10の量でブーストされる。7-14日後に、動物から採血し、血清の抗体力価を分析する。動物の抗体力価が一定になるまでブーストされる。好ましくは、動物は同じ抗原の結合したもので増加されるが、異なるタンパク質に、及び/又は異なる架橋試薬によっても結合する。結合を、タンパク質融合として組換え細胞培養の中で作ることができる。さらに、ミョウバンのような凝集剤は免疫反応を増強するために適宜用いられる。
【0037】
〔(iii) モノクローナル抗体〕
モノクローナル抗体はKohlerらNature, 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して作られるか、あるいは組換えDNA法(米国特許4,816,567)によって作られるであろう。
【0038】
ハイブリドーマ法では、ハムスター又はマカークのサルのような、マウスあるいは他の適切なホスト動物は、免疫付与のために使われるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生する、あるいは産生する能力を有するリンパ球を発現するために、上に記述されているように、免疫付与される。あるいは、リンパ細胞は生体外で免疫になってもよい。その後、リンパ細胞は、ハイブリドーマ・セル(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))を形成するために、ポリエチレングリコールのような、適切な融合剤を使用して、骨髄腫細胞で融合される。
このように 準備されたハイブリドーマ・セルは、融合されていない親骨髄腫細胞の成長又は生存を抑制する1つ以上の物質を好ましくは含んでいる適切な培養培地の中で植えられ育てられる。例えば、親骨髄腫細胞に、酵素ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル転移酵素(HGPR 1あるいはHPR 1 )が欠けるとき、ハイブリドーマ用の培養培地は典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)( HGPRT−不完全細胞の成長を阻害する物質)を含む。
【0039】
好ましい骨髄腫細胞は効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を支援し、HAT培地のような培地に敏感である。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞株は、ソーク研究所細胞流通センター(the Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USA)から利用可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫物や、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(the American Type Culture Collection, Rockville, Maryland USA)から利用可能なSP-2あるいはX63Ag8-653細胞に由来した物のような、ネズミ科の骨髄腫株である。ヒトの骨髄腫及びマウス−ヒト・ヘテロ骨髄腫細胞株が、ヒトのモノクローナル抗体を産生することについても既に記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur ら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0040】
ハイブリドーマ・セルが成長している培養培地は、抗原に対して方向性をもったモノクローナル抗体の産生のために分析される。好ましくは、ハイブリドーマ・セルによって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈澱あるいは放射免疫測定(RIA)あるいは酵素をリンクした免疫吸収剤分析(ELISA)のような生体外の結合分析によって決定される。
【0041】
要求される特異性、アフィニティー及び/又は活性のある抗体を産生するハイブリドーマ・セルが識別された後、クローンは希釈過程の制限によりサブクローン化され、標準の方法により生育される(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。この目的のための適切な培養培地は、例えば、D-MEMあるいはRPMI-1640培地を含んでいる。さらに、ハイブリドーマ・セルは、動物中の腹水腫物として生体内で成長させてもよい。
【0042】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース(Sepharose)、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析あるいはアフィニティー・クロマトグラフィーのような従来の免疫グロブリン精製過程によって、培養培地、腹水流体あるいは血清から適切に分離される。好ましくは、ここに記述されたプロテインAクロマトグラフィー処理が用いられる。
【0043】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の処理(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合力を有するオリゴヌクレオチド・プローブの使用による)を使用して、容易に分離され順番に並べられる。ハイブリドーマ・セルはそのようなDNAの好ましい源として働く。ひとたび分離されれば、DNAは、組換え宿主細胞中のモノクローナル抗体の合成を得るために、例えば、大腸菌細胞(E. coli cells)、サルCOS細胞、中国ハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を他の形で産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞中へ核酸注入される、発現ベクターに入れられてもよい。
【0044】
DNAもまた、例えば同族のネズミ科の配列(米国特許 4,816,567; Morrisonら, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984))の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインにコード配列を代用することにより、あるいは、配列あるいは非免疫グロブリンポリペプチドのためのコードした配列のすべてか一部をコードする免疫グロブリンと共有結合で連結することによって修飾されてもよい。
【0045】
典型的に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに代用されるか、あるいは、それらは抗原への特異性がある一つの抗原結合部位と、異なる抗原への特異性がある他の抗原結合部位とを含むキメラ二価の抗体をつくるための抗体の一つの抗原結合部位の可変領域に代用される。
【0046】
さらなる実施形態では、モノクローナル抗体はMcCaffertyらにより Nature, 348:552-554 (1990) に記載された技術を使用して生成された抗体ファージ・ライブラリから分離することができる。Clacksonら,Nature, 352:624-628 (1991)及びMarksら,J. Mol. Biol, 222:581-597 (1991)には、それぞれファージ・ライブラリを使用して、ネズミ科の抗体とヒトの抗体の分離について記述している。後者の文献は、非常に大きなファージ・ライブラリ(Waterhouse ら, Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266 (1993))を構築するための戦略として組み合わせ感染及び体内での組換えと同様にチェーン・シャッフリング(chain shuffling :Marksら,Bio/Technology, 10:779-783 (1992))による高アフィニティー(nM範囲)のヒト抗体の産生について記載がある。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体分離用の従来のハイブリドーマ技術への、実行可能な代案である。
【0047】
〔(iv) ヒト化及びヒトの抗体〕
ヒト化抗体は、1つ以上のアミノ酸残基を非ヒトである出所からその中に導入します。これらの非ヒトアミノ酸残基は「インポート」残基(それらは典型的には「インポート」可変領域から取られる)としばしば呼ばれます。
【0048】
ヒト化は、ヒトの抗体の対応する配列にげっ歯類CDRあるいはCDR配列を代用することにより、Winter及び同僚(Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann ら, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen ら, Science, 239:1534-1536 (1988))の手法に従って、実質的に実行することができる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許4,816,567)であり、それは、ヒト以外の種からの対応している配列によって代用された損傷のないヒトの可変領域に比べて著しく少ない。実際上、ヒト化抗体は典型的には、げっ歯類抗体中のアナログの部位からの残基によっていくつかのCDR残基及び恐らくいくつかのFR残基が置き換えられたヒトの抗体である。
【0049】
ヒト化抗体を作るのに使用されるヒトの可変領域の選択は、軽鎖でも重鎖でも、抗原性を低減させるために非常に重要である。「ベストフィット(best-fit)」と呼ばれる方法によれば、げっ歯類抗体の可変領域の配列は、既知のヒト可変領域配列の全ライブラリからスクリーンされる。げっ歯類の配列に近いヒトの配列は、ヒト化抗体(Simsら,J. Immunol., 151:2296 (1993))用のヒト FRとして認められる。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特別のサブグループのすべてのヒトの抗体の一致配列に由来した特別のフレームワークを使用している。同じフレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992); Presta ら,J. Immunol, 151:2623 (1993))のために使用することができる。
【0050】
抗原及び他の好ましい生物学的特性への高いアフィニティー性の保持とともに抗体がヒト化されることはさらに重要である。このゴールを達成するために、好ましい方法によって、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元のモデルを用いて、親配列及び様々な概念のヒト化製品の分析のプロセスによって準備される。三次元の免疫グロブリンモデルは一般に入手可能で、技術に熟練している人々にはよく知られている。選ばれた候補である免疫グロブリン配列の有望な三次元の立体構造を例証し表示するコンピュータ・プログラムを利用することができる。これらの表示の検証は、候補の免疫グロブリン配列の機能中で残基の適当な役割の分析、つまり、候補の免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このように、ターゲット抗原のために親和性を増大させるように、要求される抗体特性が達成されるために、FR残基は受容体配列とインポート配列から選ばれ、組み合わせられる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的かつ最も実質的に関係している。
【0051】
もう一つの方法として、現在では、内部成長的な免疫グロブリン産生がない状態でのヒトの抗体の十分なレパートリーの産生することが免疫付与により可能な、遺伝子組換え動物(例えば、マウス)をつくることができる。例えば、キメラ生殖細胞系変異マウス中の抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子の同型接合体の欠失は、内在的な抗体産生を完全に阻害することは記述されている。上記生殖細胞系変異マウス中へのヒトの生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子配列の移入は、抗原投与時のヒトの抗体の産生という結果をもたらすだろう。例えばJakobovitsら. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovitsら,Nature, 362:255-258 (1993); Bruggermannら,Year in Immuno., 7:33 (1993); 及び Duchosalら, Nature 355:258 (1992)を参照。ヒトの抗体もファージ・ディスプレイ・ライブラリから生成することができる(Hoogenboomら,J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks ら,J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Vaughanら,Nature Biotech 14:309 (1996))。
【0052】
〔(v) 抗体断片〕
様々な技術は抗体断片の産生のために開発されている。従来は、これらの断片は完全な抗体(Morimotoら,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992) 及び Brennanら,Science, 229:81 (1985))のタンパク質分解を生ずる消化によって引き出された。しかしながら、これらの断片を、現在は組換え宿主細胞によって直接産生することが可能である。例えば、抗体断片は上に議論された抗体ファージ・ライブラリから分離することができる。その代わりに、Fab'-SH断片は大腸菌(E. coli)から直接回収され、F(ab')2断片(Carterら,Bio/Technology 10:163-167 (1992))を形成するために化学的に連結される。別のアプローチによれば、F(ab')2断片は組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の産生するための他の技術は熟練した実施者には明らかである。他の実施形態では、選択した抗体が単一鎖Fv断片(scFv)である。WO 93/16185を参照のこと。
【0053】
〔(vi) 多重特異(Multispecific)抗体〕
多重特異抗体は、少なくとも二つの異なる抗原用の結合特異性を持っている。そのような分子は通常二つの抗原を単に結合するだけだが(つまり二重特異性抗体、BsAbs)、ここに使用されるときには、三重特異性抗体のような追加の特異性を備えた抗体は、この表現によって包含される。二重特異性抗体を作る方法は、技術的に知られている。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、二つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペアの同時発現に基づき、その二つの鎖は異なる特異性(Millsteinら, Nature, 305:537-539 (1983))を持つ。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の任意の類別のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ:quadromas)は、10の異なる抗体分子(1つだけがそれに的確な二重特異性構造を持っている)の潜在的な混合物を産生する。アフィニティー・クロマトグラフィー・ステップによって通常行われる正確な分子の精製はやや厄介であり、産生収量は低い。同様の処理はWO 93/08829、及びTrauneckerら,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0054】
W096/27011に記述された別のアプローチによれば、1ペアの抗体分子間のインターフェースは、組換え細胞培養から回収される異種二量体(heterodimers)の割合を最大限にするために生産を行える。好ましいインターフェースは、抗体の定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子のインターフェースからの1つ以上の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えば、チロシンあるいはトリプトファン)と置き替えられる。大きな側鎖への同一あるいは同様のサイズの補償的な「キャビティー」は、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニンあるいはトレオニン)に置き替えることにより、第二の抗体分子のインターフェース上で創られる。これは、同種二量体(homodimers)のような他の望まれない最終産生物の中から異種二量体の収量を増加させるためのメカニズムを提供する。
【0055】
二重特異性抗体は、架橋あるいは「ヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)」した抗体を含んでいる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体のうちの1つはアビディン(avidin)に、もう一方はビオチンに連結される。そのような抗体が、例えば、不要な細胞(米国特許4,676,980)へ、そしてHIV感染症(WO 91/00360、WO 92/200373及びEP 03089)の治療のために、免疫系細胞を目標とすることが提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体はどんな便利な架橋方法を使用してつくられてもよい。適した架橋剤は、米国特許4,676,980に開示されており、数多くの架橋技術と同様に、技術的によく知られている。
【0056】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は化学的連結を使用して準備することができる。Brennanら, Science, 229: 81 (1985)には、非損傷抗体がF(ab')2断片を生成するためにタンパク質分解的に開裂される処理について記載している。隣接するジチオールを安定させて、分子間ジスルフィド体の形成を防ぐためのジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で、これらの断片は、低減される。生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(thionitrobenzoate:TNB)誘導体に変換される。Fab'-TNB誘導体のうちの1つが、メルカプトエチルアミン(mercaptoethylamine)での低減によりFab'-tiolに再変換され、等モル量のもう一方のFab'-TNB誘導体と混合することにより、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的な固定化剤として使用することができる。
【0057】
最近の進歩は、二重特異性抗体を形成するために化学的に連結することができる大腸菌(E. coli)からのFab'-SH断片の直接の回収を容易化している。Shalabyら,J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992) は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab')2分子の産生について記載している。Fab’断片は、大腸菌から別々に分泌され、二重特異性抗体を形成するために生体外で配向された化学的な結合にさらされた。このように形成された二重特異性抗体は、ヒトの乳房腫瘍ターゲットに対するヒトの細胞傷害性リンパ球の細胞溶解作用を引き起こすことができたと同様に、ErbB2受容体や正常なヒトT細胞を過剰発現する細胞へ結合することができた。
【0058】
組換え細胞培養で二重特異性抗体断片を直接作り、分離するための様々な技術についても記載されている。例えば、二重特異性抗体はロイシン・ジッパーを用いて産生された。Kostelny ら,J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。FosとJunタンパク質からのロイシン・ジッパー・ペプチドは、遺伝子融合による二つの異なる抗体のFab’部分にリンクされた。抗体の同種二量体は、モノマーを形成するためのヒンジ領域で減少され、次に、抗体異種二量体を形成するために再酸化された。この方法は抗体同種二量体の産生のためにも利用することができる。Hollingerら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に記載された「ダイアボディー」技術は、二重特異性抗体断片を作るために代替メカニズムを提供した。重鎖変数領域(VH)を含む断片は、短すぎて同じ鎖上の二つの領域間を対に合わせることができないリンカーによって、軽鎖変数領域(VL)に接続された。従って、一個の断片のVHとVLの領域は、別の断片の補完的なVL及びVH領域と対になることを強いられ、そのために、二つの抗原結合サイトを形成する。単一の鎖のFv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体断片をつくるための別の戦略も報告されている。Gruberら,J. Immunol., 152:5368 (1994).を参照。代替的に、抗体は、Zapataら,Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)の中に記載されるような「線形の抗体」であってもよい。簡潔にいうと、これらの抗体は、抗原結合領域の対を形成する一対のタンデム型Fd配列(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線形抗体は二重特異性又は単一特異的になりえる。
二つ以上の原子価を備えた抗体が意図されている。例えば、三重特異的な抗体は準備される。Tuttら,J.Immunol., 147:60(1991)。
【0059】
〔2. イムノアドヘシン〕
最も単純で最も簡単であるイムノアドヘシン設計では、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域とFc領域を持つ付着因子(例えば、受容体の細胞外ドメイン(ECD))の結合ドメインを組み合わせる。通常、本発明の免疫付着因子を準備する時、付着因子の結合ドメインをコードする核酸は、免疫グロブリン定数ドメイン配列のN-末端をコードする核酸にC-末端的に融合されるであろう。しかしながら、さらにN-末端融合は可能である。
【0060】
典型的には、そのようなコードされたキメラポリペプチドの融合では、免疫グロブリン重鎖の定常領域の、少なくとも機能的に活性なヒンジ・ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを保持するであろう。融合も、定常ドメインのFc部分のC-末端へ、あるいは重鎖のCH1又は軽鎖の対応する領域へのN-末端へ、すぐにつくられる。融合が作られる正確な部位は重要ではない;特定の部位はよく知られており、イムノアドヘシンの生物学的活性、分泌あるいは結合特性を最適化するために選択されるであろう。
【0061】
好ましい実施形態では、付着因子配列が、免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域のN-末端へ融合される。付着因子配列へ重鎖定数領域全体を融合させることは可能である。しかしながら、より好ましくは、IgG Fcを化学的(つまり、残基216:重鎖定常ドメインの第一の残基が114である)に明らかにするパパイン分裂部位のちょうど上流にあるヒンジ領域で始まる配列、あるいは他の免疫グロブリンのアナログの部位に、融合の中で用いられる。特に好ましい実施形態では、付着因子アミノ酸配列は(a)ヒンジ領域及びCH2及びCH3、又は(b)IgG重鎖のCH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメイン、へ融合する。
【0062】
二重特異性イムノアドヘシンについては、イムノアドヘシンは、マルチマー類(multimers)として、及び特にヘテロダイマー類(heterodimers)又はヘテロテトラマー類(heterotetramers)として組み立てられる。一般に、これらの組み立てられた免疫グロブリンは、ユニット構造として知られている。基本的な四本鎖構造のユニットは、IgG、IgD及びIgEが存在する形状である。4つのチェーン・ユニットはより高分子量免疫グロブリンの中で繰り返される;IgMは一般的には、ジスルフィド結合により一緒に置かれた4つの基本単位のペンタマー(五量体:pentamer)として一般に存在する。IgAグロブリン、そして時々IgGグロブリン、さらに血清中の多重結合の形状で存在してもよい。マルチマーの場合には、四つのユニットの各々が同じであっても、異なっていてもよい。
【0063】
範囲内の様々な典型的に組み立てられたイムノアドヘシンは、以下に概略的に示される:
(a) ACL - ACL
(b) ACH - (ACH, ACL - ACH, ACL - VHCH, 又はVLCL - ACH);
(c) ACL - ACH - (ACL - ACH, ACL - VHCH, VLCL - ACH, 又はVLCL - VHCH)
(d) ACL - VHCH - (ACH, 又はACL - VHCH, 又はVLCL - ACH);
(e) VLCL - ACH - (ACL - VHCH, 又は VLCL - ACH); そして
(f) (A-Y)n - (VLCL-VHCH)2,
そこで各Aは同一か異なる付着因子アミノ酸配列を表わす;
VLは免疫グロブリン軽鎖変数ドメインであり;
VHは免疫グロブリン重鎖変数ドメインであり;
CLは免疫グロブリン軽鎖定数ドメインであり;
CHは免疫グロブリン重鎖定数ドメインであり;
nは1を越える整数であり;
Yは、共有結合の架橋剤の残基と定める。
手短に述べると、先の構造は重要な特徴のみを単に示す。すなわち、それらは連結する(J)あるいは免疫グロブリンの他のドメインを示さず、また、ジスルフィド結合も示さない。しかしながら、そのようなドメインが結合活性を必要とする場合、それらは、それらが免疫グロブリン分子の中で占める、通常の位置の中に存在するように構築されるものとする。
【0064】
代替的に、付着因子配列は、キメラ重鎖を含む免疫グロブリンが得られるように、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖配列の間に挿入することができる。ここでの実施形態では、付着因子配列が、ヒンジとCH2ドメインの間あるいはCH2とCH3のドメイン間のいずれかの、免疫グロブリンの各腕の中の免疫グロブリン重鎖の3'端まで融合される。似た構造については、Hoogenboomら,Mol. Immunol. 28:1027-1037 (1991)によって報告された。免疫グロブリン軽鎖の存在は本発明の免疫付着因子の中で要求されないが、免疫グロブリン軽鎖は付着因子−免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドへ共有結合的に連結されるか、あるいは付着因子に直接融合されるかもしれない。前者の場合では、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、典型的に付着因子−免疫グロブリン重鎖融合タンパク質をコードするDNAで同時発現される。分泌に際して、ハイブリッド重鎖及び軽鎖は、二つのジスルフィド連結された免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペアを含む免疫グロブリン状の構造を提供するために共有結合的に連結させられるだろう。そのような構造の準備にふさわしい方法は、例えば、米国特許4,816,567(1989年3月28日公開)に公開された。
【0065】
イムノアドヘシンは、免疫グロブリンcDNA配列への付着因子部分をコードする配列をインフレーム(in-frame)で融合することによって、最も便利に構築される。しかしながら、遺伝子的免疫グロブリン断片への融合にも用いることができる(例えば、Aruffoら,Cell 61:1303-1313 (1990);及び Stamenkovicら,Cell 66:1133-1144 (1991)を参照)。後者のタイプの融合は、発現のためのIg調節塩基配列の存在を要求する。IgG重鎖定常領域にコードされたcDNAは、ハイブリッド化あるいはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により、脾臓又は末梢血リンパ球に由来したcDNAライブラリから公表された配列に基づいて分離することができる。「付着因子」及びイムノアドヘシンの免疫グロブリン部分をコードするcDNAは、選ばれた宿主細胞中の効率的な発現を命令するプラスミド・ベクターに縦並びに挿入される。
【0066】
〔3. 他のC2/C3の領域を含むタンパク質〕
他の実施形態では、精製されるタンパク質は、C2/C3領域へ融合されるか、接合されるものである。そのような融合タンパク質は、タンパク質の血清半減期を増加させるかつ/又はプロテインAクロマトグラフィーによってタンパク質の精製を促進するために産生される。
【0067】
このように接合することができる生物学上重要なタンパク質の例には、レニン(renin);ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;甲状腺傍ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−抗トリプシン;インシュリンA鎖;インシュリンB鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;要因VIIIC、要因IX、組織因子及びフォン・ヴィレブランド因子(von Willebrands factor)のような凝固因子;タンパク質Cのような抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼかヒトの尿、あるいは組織タイプ・プラスミノゲン活性剤(t-PA)のようなプラスミノゲン活性剤;ボンベシン(bombesin);トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−α及びβ;エンケファリナーゼ(enkephalinase);RANTES;( 通常、T細胞が発現あるいは分泌されることによる活性化に規制された);ヒトのマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンのような血清アルブミン;Muellerian−阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;β−ラクタマーゼ(beta-lactamase)のような微生物のタンパク質;デオキシリボヌクレアーゼ(DNase);IgE;細胞毒素のT−リンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン(inhibin);アクティビン(activin);血管内皮細胞増殖因子(VEGF);ホルモン又は成長因子用受容体;プロテインA又はD;リューマチ因子;骨由来の神経栄養因子のような神経栄養因子(BDNF) 、neurotrophin-3、-4、-5、あるいは-6(NT-3、NT-4、NT-5あるいはNT-6)、NGF-βのような神経成長因子;血小板由来の成長因子(PDGF);aFGFとbFGFのような線維芽細胞増殖因子;上皮細胞増殖因子(EGF);TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4あるいはTGF-β5を含むTGFα及びTGFβのような形質転換成長因子(TGF);インスリン様増殖因子-I及びII(IGF-I及びIGF-II);インスリン様タンパク質結合成長因子のdes(1-3)-IGF-I(脳IGF-I);CD3、CD4、CD8(CD19及びCD20)のようなCDタンパク質;赤血球生成促進因子(erythropoietin);骨誘発因子(osteoinductive factors);抗毒素(immunotoxins);骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−α、−β及び−γのようなインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF) (例えばM-CSF、GM-CSF、G-CSF);インターロイキン(IL) (例えば、IL-1 からIL-10);スーパーオキシド・ジスムターゼ(superoxide dismutase);T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊加速因子(decay accelerating factor);例えば、AIDS膜の一部のようなウイルスの抗原;輸送タンパク;ホーミング受容体;アドレシン(addressins);調節タンパク質(regulatory proteins);CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAMのようなインテグリン;HER2、HER3あるいはHER4受容体のような腫瘍関連抗原;及び上記のリストされたポリペプチドのうちのいずれかの断片等を含む。
【0068】
〔4. タンパク質精製〕
ここに記載された方法を用いて精製されるタンパク質は、一般的に組換え技術を使用して産生される。組換えタンパク質を産生する方法は、例えば、米国特許5,534,615及び4,816,567、特にここの引用文献を併せて、記載されている。好ましい実施形態では、興味あるタンパク質がCHO細胞(参照、例えばWO 94/11026)の中で産生される。ここに記載されたプロセスを使用して精製することができるタンパク質の例は、上に記した。
【0069】
組換え技術を使用する場合、タンパク質はペリプラズムな(periplasmic)空間中で細胞内で産生されるか、あるいは直接培地へ分泌されるかである。
【0070】
最初の段階として、タンパク質が、微粒子上破片、宿主細胞あるいは溶解された断片のいずれかから分子内で産生されるなら、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去される。タンパク質が培地へ分泌される場合には、組換え宿主細胞は、例えば、縦向きのフロー濾過によって細胞培養培地から分けられるかもしれない。
【0071】
固相上で固定化されたプロテインAは、C2/C3領域を含むタンパク質を精製するために用いられる。固相は、好ましくは、プロテインA.を固定化するための、ガラス、ケイ酸、アガロースあるいはポリスチレン表面を含むカラムである。好ましくは、固相は制御された空孔ガラス・カラムあるいはケイ酸カラムである。時々、カラムは、カラムへの非特異的な付着を防ごうとして、グリセロールのような試薬でコートされている。PROSEP A(登録商標)カラム(Bioprocessing社:商業的利用可能)は、グリセロールでコートされたプロテインA空孔制御ガラス・カラムの例である。ここに検討されたカラムの他の例としては、ポロス(POROS) 50 A(登録商標)(ポリスチレン)カラムあるいは rProtein A SEPHAROSE FAST FLOW(登録商標)(アガロース)カラムを含んでいる。
【0072】
プロテインAクロマトグラフィーのための固相は、適切なバッファーで平衡に保たれる。例えば、平衡状態バッファーは25mMトリス、25mM NaCl、5mM EDTA、pH 7.1でよい。
【0073】
組換え宿主細胞に由来し、汚染された調合液は、平衡バッファーと同じであってもよいローディング・バッファーを用いて、平衡に保たれた固相に載せられる。汚染された調合液が固相を通って流れるとともに、タンパク質は固定化されたプロテインAに吸着され、また、他の汚染物質(タンパク質がCHO細胞の中で産生したチャイニーズ・ハムスター卵巣タンパク質、CHOPのように)は、固相へ非特異的に結合するであろう。
【0074】
連続して実行された次のステップでは、中間洗浄ステップで固相を洗浄することにより、固相、抗体及び/又はプロテインAに付いた汚染物質を取り除く必要がある。ローディングの後に、固相は中間洗浄ステップを始める前に、平衡バッファーで平衡に保たれる。
【0075】
中間洗浄バッファーは、塩及びさらなる化合物を含み、さらなる組成物は(a)洗浄剤(好ましくは、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80);(b)溶剤(好ましくは、へキシレングリコール);そして(c)ポリマー(好ましくは、PEG)、である。
【0076】
採用された塩は、興味あるタンパク質に基づいて選択されるが、好ましくは酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)であり、特に抗体が抗HER2抗体である場合はトラスツズマブ;あるいはクエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)、特に抗体がIgE抗体である場合はE26のような塩である。組成物中の塩及びさらなる化合物の量は、著しく興味あるタンパク質を取り除いてしまうことなしに、汚染物質を溶出する組合せの量による。このような洗浄バッファー中の好ましい塩濃度は、約0.1Mから約2Mであり、さらに好ましくは約0.2Mから約0.6Mである。
【0077】
有用な洗浄剤濃度は、例えば、洗浄剤がポリソルベートである場合、約0.01%から約5%であり、さらに好ましくは約0.1から約1%までであり、最も好ましくは約0.5%である。典型的な溶剤濃度は、約1%から約40%までで、好ましくは約5%から約25%までである。例えば、ここの例では、E26のための溶剤(へキシレングリコール)の好ましい濃度は約20%であるが、それに対して、トラスツズマブについては、溶剤(再びへキシレングリコール)の好ましい濃度が約10%であった。さらなる化合物がポリマー(例えば、PEG 400あるいはPEG 8000)である場合、それらの濃度は、例えば、約1%から約20%までであり、好ましくは約5%から約15%までである。別の実施形態では、中間洗浄ステップが、例えば、約0.8M以上、約2M以下の濃度のバッファー、そして好ましくは、約0.8Mから約1.5Mの範囲で、最も好ましくは1Mである高濃縮バッファーの使用を含む。この実施形態では、好ましくはバッファーがトリス酢酸塩のようなトリス・バッファーである。
【0078】
中間洗浄バッファーのpHは、好ましくは約4から約8までであり、より好ましくは約4.5から約5.5までであり、最も好ましくは5.0である。別の好ましい実施形態では、pHが約7.0である。
【0079】
前の段落の中間洗浄ステップに続いて、興味のあるタンパク質はカラムから回収される。これは通常、適切な溶出バッファーを使用して実現される。タンパク質は、例えば、pHが約2から約5までの範囲の中で、好ましくは約2.5から約3.5までの範囲の中である低pH性を有する溶出バッファーを用いるカラムから溶出される。この目的用の溶出バッファーの例は、クエン酸塩又は酢酸塩のバッファーを含んでいる。
【0080】
溶出されたタンパク質の調合液は、プロテインAクロマトグラフィー・ステップの前もってあるいは後のいずれかに、追加の精製ステップにさらされる。典型的なさらなる精製ステップは、ヒドロキシルアパタイト(hydroxylapatite)・クロマトグラフィー;透析;タンパク質を捕捉するための抗体を使用するアフィニティー・クロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);硫酸アンモニウム沈澱;陰イオンあるいは陽イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈澱;逆相HPLC;シリカ上クロマトグラフィー;クロマトフォーカシング(chromatofocusing);またはゲル濾過を含む。ここの例において、下流の陽イオン交換(SP-Sepharose)及び陰イオン交換(Q-Sepharose)精製ステップは、プロテインAクロマトグラフィー・ステップに続く。このように回収されたタンパク質は、薬学的に許容可能なキャリアーとしてで策定されてもよいし、様々な診断、治療、そのような分子に知られた他の使用法のために使われてもよい。
【0081】
次の実施例は、発明を説明するためのものであり、限定するためのものではない。明細書中のすべて引用の開示は、参照文献に明らかに盛り込まれている。
【実施例】
【0082】
〔実施例1:中間洗浄溶液〕
抗HER2抗体トラスツズマブ(図1A-B;ハーセプチン(登録商標))、抗IgE抗体(E26;米国特許5,994,511,Lowmanら)及びヒト化抗CD11a抗体(XANELIM(登録商標); 米国特許6,037,454)は、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞の中で遺伝子組換え的に産生され、汚染成分のCHOタンパク質(CHOP)を除去するための最初のクロマトグラフィーのステップとして、プロテインAクロマトグラフィーによって精製された。しかしながら、CHOPは、ProSepA(このステップで使用された樹脂)に非特異的に結合しやすい。ProSep Aはグリセロールでコートされた空孔制御ガラス上に固定化された抗体結合プロテインAを有する。グリセロール・コートは非特異性の結合を低減するが、ある種のCHOPはまだ樹脂のガラスバックボーンに付着してしまう。プロテインAオペレーションの溶出過程中に、どの非特異的に付着したCHOPも、製品プールの純度を危険にさらしながら、抗体と同時に溶出する。溶出過程の前にこのCHOPを除去するために、米国特許6,127,526及び6,333,398(Blank, G.)は、CHOPを除去するためにテトラメチルアンモニウム塩化物(TMAC)を用いて、中間洗浄ステップを例証している。TMACは非特異的付着CHOPを除去するには有効だが、取り扱い、分配することは困難であり、有毒あり、有害廃棄物として高価な処分を必要とし、高濃度及び低pHのものは腐食性である。以下の研究は、TMACの欠点無しに、中間洗浄ステップで代替洗浄組成物を用いることができることを示す。他のバッファー(平衡、ロード、溶出及び再生バッファー)は、米国特許6,127,526及び6,333,398中の例と同様であった。
【0083】
種々様々の「中間洗浄バッファー」は抗IgE抗体E26、抗HER2抗体トラスツズマブ及び抗CD11a抗体XANELIM(登録商標)に関してスクリーンされた。洗浄バッファーのクラスは次のとおり:(a)洗浄剤及び塩;(b)溶剤及び塩;(c)ポリマー及び塩;(d)高濃度バッファー;そして(e)尿素、であった。
【0084】
プロテインAプール中のタンパク質収量、CHOP除去、及びタンパク質凝集は、中間洗浄バッファーの各々用に決定された。すべての実行については、タンパク質がトラスツズマブだった場合、20%のへキシレングリコールを含む中間洗浄溶液以外では、収量は94%以上でした。様々な中間洗浄バッファーで達成されたCHOP除去は、図2−6の中で描写している。サイズ排除クロマトグラフィーによって決定されるようなタンパク質凝集はすべての実験例において1.5%未満であった。
【0085】
CHOPのクリアランス、最終タンパク質収量、及び使い易さを考慮に入れると、好ましい中間洗浄バッファーは:(a)ポリソルベート/塩;(b)へキシレングリコール/塩;そして(c)高濃度トリス・バッファー、であった。ポリソルベート/塩・中間洗浄バッファーが、さらなる研究のために選択された。
【0086】
〔実施例2:中間洗浄バッファーの変更〕
CHOP除去に対する中間洗浄バッファーの (a)塩の種類及び濃度、(b)ポリソルベート濃度、及び(c) pH、の影響が評価された。抗体は、抗IgE抗体E26、及び抗HER2抗体トラスツズマブであった。
【0087】
図7では、CHOP除去時の塩の種類及び濃度の影響を描いた。E26については、溶出プール中のCHOPレベルは、洗浄溶液中でのクエン酸塩あるいは硫酸塩の濃度によって著しくは影響されなかった。トラスツズマブについては、溶出プール中のCHOPレベルが、中間洗浄バッファー中の塩の濃度によって影響された。好ましい塩の濃度は約0.3Mから約0.6Mであった。
【0088】
溶出プール中のCHOPレベルに対するポリソルベート濃度の影響も評価された。図8に示す通り、中間洗浄バッファー中のポリソルベートの濃度が増加するとともに、CHOP汚染の量は減少した。ポリソルベートの好ましい濃度は、約0.5%から約1%である。
CHOPに対するpHの影響も評価され、その実験の結果は図9に示される。より低いpHでは、溶出されたタンパク質中のより少ないCHOP汚染に帰着した。好ましいpHは約5である。
【0089】
〔実施例3:下流の実行〕
CHOP除去、収量など(SDS-PAGE、HPLC-IEC、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及びプロテインA浸出) での下流の実行は、E26とトラスツズマブのために決定された。下流の精製ステップは陽イオン交換クロマトグラフィー(SP-Sepharose)及び陰イオン交換クロマトグラフィー(Q-Sepharose)であった。
【0090】
E26については、中間洗浄バッファーは:(a)0.5%ポリソルベート20/0.2Mクエン酸ナトリウム、(b)20%のへキシレングリコール/0.2Mクエン酸ナトリウム、及び(c)1Mのトリス酢酸塩、であった。結果は、以下の表に示す。
【表1】

【0091】
トラスツズマブについては、中間洗浄バッファーは:(a) 0.5%のポリソルベート20/0.5M酢酸ナトリウム、(b)10%のへキシレングリコール/0.5M酢酸ナトリウム、及び(c)1Mのトリス酢酸塩、であった。結果は、以下の表に要約する。
【表2】

【表3】

【0092】
収量及びCHOP除去について、テストされた二つの抗体の結果は類似していた。ポリソルベート、へキシレングリコール及びトリスは、プロテインAクロマトグラフィー及びそれに続くイオン交換クロマトグラフィー・ステップの後に、良いCHOPクリアランスと収量を示した。
【0093】
パーセンテージ凝集とSDS-PAGEを測定するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、Q-Sepharoseプール上で行われた。パーセント・メイン・ピークを測定するためのイオン交換分析(IEX)、及び凝集を評価するためのSECは、プロテインA及びSP-Sepharoseプール上で行われた。トラスツズマブ及びE26の両方については、積極的な制御(TMAC)の場合と、代替的な中間洗浄バッファーの間で同様の分析結果を示した。
【0094】
〔実施例4:カラム再使用〕
この実験の目的は中間洗浄バッファー中のポリソルベート20が樹脂の寿命に影響するかどうか決定することであった。バッファー(平衡状態、ポリソルベート20、中間洗浄、溶出及び再生)は、400サイクル以上の間、6.84mlのカラム(0.66cm×20cm)上で再利用された。HER2ブレークスルー・カーブは、樹脂の結合キャパシティー(容量)を決定するために、毎50サイクルごとに実行される。結合キャパシティーを最大にするための現在の仕様は、樹脂の1リットル当たり20グラムの抗体である。サイクル数増加による結合キャパシティーの低下は、ポリソルベート20が樹脂寿命を低下させていることを示すであろう。しかし、この実験では、ポリソルベート20が樹脂寿命を低下させないことを実証した。実際の再使用は140サイクルで終了し、収量の変化は見られない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))の軽鎖アミノ酸配列(配列番号:1)である。
【図1B】トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))の重鎖アミノ酸配列(配列番号:2)である。
【図2】抗IgE−E26抗体に関する各種の中間洗浄バッファーのスクリーニング結果を示す図である。溶出液中のチャイニーズ・ハムスター卵巣タンパク質(CHOP)汚染の量(ppm)を示す。
【図3】ポリエチレングリコール(PEG)を含む中間洗浄バッファーのスクリーニング結果を示す図である。抗体はE26である。
【図4】抗体がE26であるときの、尿素中間洗浄のスクリーニング結果を示す図である。
【図5】抗HER2抗体トラスツズマブに関する各種の中間洗浄バッファーのスクリーニング結果を示す図である。溶出プール中のCHOPの量(ppm)を示す。
【図6】トラスツズマブ抗体とヒト化抗CD11a抗体に関する各種の中間洗浄バッファーでのスクリーニング結果を示す図である。
【図7】トラスツズマブ及びクエン酸ナトリウム塩又は酢酸ナトリウム塩を含む中間洗浄バッファー;又はE26及び硫酸ナトリウム塩又はクエン酸ナトリウム塩を含む中間洗浄バッファーのためのプロテインAプール中のCHOPの量(ppm)を示す図である。
【図8】E26のための中間洗浄バッファー中のポリソルベート20の変化に対するCHOPの量を示す図である。
【図9】トラスツズマブとE26のための溶出プール中のCHOPに対するpHの効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)洗浄剤と塩とを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
固相がシリカ、ガラス、アガロースあるいはポリスチレンを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
固相がシリカ又はガラスを含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
タンパク質が抗体あるいは免疫付着因子である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
タンパク質が抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
抗体が、HER2、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、IgE、CD20、CD40、CD11a、組織因子(TF)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、インターロイキン−8 (IL−8)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、HER3、HER4、α4β7あるいはα5β3から成る群から選択される抗原に結合する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
抗体が抗HER2抗体である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
抗体が抗IgE抗体である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
洗浄剤がポリソルベートである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
組成物中のポリソルベートの濃度が約0.1から約1%までである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
塩が酢酸塩又はクエン酸塩である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
組成物が約pH 4.5から約pH5.5である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
組成物中の塩の濃度が約0.2Mから約0.6Mである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)約0.8Mより大きい濃度のバッファーを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法。
【請求項15】
バッファーがトリス酢酸塩である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
トリス酢酸塩バッファーの濃度が約0.8Mから約1.5Mである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)塩と溶媒とを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法。
【請求項18】
溶媒がへキシレングリコールである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
2/C3領域を含むタンパク質を、その汚染液からプロテインAクロマトグラフィーによって精製する方法において:
(a)固相上に固定化されたプロテインAへタンパク質を吸着させ;
(b)塩とポリマーとを含む組成物で固相を洗浄することにより、汚染物質を除去し;
(c)固相からタンパク質を回収する、
ことを含んでなる方法。
【請求項20】
ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項19記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−196998(P2009−196998A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−83680(P2009−83680)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【分割の表示】特願2003−566033(P2003−566033)の分割
【原出願日】平成15年2月3日(2003.2.3)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】