タンパク質結合部位の同定
【課題】結合分子と対応する不連続もしくは配座結合部位または不連続もしくは配座エピトープの分子認識または検出方法を提供する。
【解決手段】タンパク質・タンパク質、タンパク質・核酸、核酸・核酸、または生体分子・リガンドの相互作用に関し、結合分子と相互作用することができる不連続結合部位の検定、同定、特徴付け、または検出を可能にする合成分子ライブラリを提供し、このライブラリは、複数の検定物を備え、各検定物は、第2のセグメントに隣接してスポットされる少なくとも1つの第1のセグメントを有し、各セグメントは、不連続結合部位の潜在的単一部分となることができる。
【解決手段】タンパク質・タンパク質、タンパク質・核酸、核酸・核酸、または生体分子・リガンドの相互作用に関し、結合分子と相互作用することができる不連続結合部位の検定、同定、特徴付け、または検出を可能にする合成分子ライブラリを提供し、このライブラリは、複数の検定物を備え、各検定物は、第2のセグメントに隣接してスポットされる少なくとも1つの第1のセグメントを有し、各セグメントは、不連続結合部位の潜在的単一部分となることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合分子と対応または相互作用する不連続もしくは配座結合部位または不連続もしくは配座エピトープの分子認識または検出の分野に関し、特に、タンパク質・タンパク質、またはタンパク質・リガンドの相互作用に関する。
【背景技術】
【0002】
結合分子間、一般に生体分子と、これらに対応するリガンドとの相互作用は、生命の中心をなす。細胞は、ホルモン、ペプチド、薬剤、抗原、エフェクタ分子、または別のレセプタ分子と相互に作用する、または結合するレセプタ分子、基質と結合する酵素、抗原と結合する抗体分子、タンパク質と結合する核酸などをしばしば担持または含有する。「相互に作用する、または結合する」とは、結合分子とリガンドとが、分子力の範囲内で相互に接近し、それぞれ他方の特性に影響を及ぼし得ることを意味する。この接近は、程度が次第に増加する親密性および相互作用を含む、分子認識の種々の段階を通じて、結合分子およびそのリガンドを取り込む。
【0003】
結合分子は問題のリガンドの認識を可能にする区別可能な結合部位を含むので、結合分子は結合能力を有する。次に、リガンドは、対応する結合部位を有し、2つの結合部位が(本質的に空間的な)相補性によって相互作用することができる場合、2つの分子は結合し得る。言うまでもなく、分子は3次元構造を有し、結合部位は3次元性であり、しばしば一方の結合部位の1つまたはそれ以上の表面突起または隆起が、他方のくぼみまたは凹部に対応し、誘導適合変種においては、3次元の鍵と鍵穴の配列である。
【0004】
このような隆起は、問題の分子の単一のループを含むこともあり、それは結合部位を本質的に形成するこの隆起のみである。この場合、しばしばこれらの結合部位は、線状または連続結合部位と称され、問題の分子の単なる線状部分は、本質的に結合相互作用に応答可能である。この専門用語は、たとえば抗体抗原反応について述べるために広く使用され、この抗原はタンパク質配列の一部、線状ペプチドを含む。それ以上にしばしば、連続的に結合されたアミノ酸のループによって抗原分子の結合部位(エピトープ)を形成する、線状または連続エピトープについて述べられる。しかしながら、類似の連続結合部位(ここでエピトープと結合部位とは交互に使用される。)は、レセプタ・抗原相互作用(たとえばT細胞レセプタ)、レセプタ・リガンド相互作用(たとえばホルモンレセプタ、およびアゴニストまたはアンタゴニスト)、レセプタ・サイトカイン相互作用、またはたとえば酵素・基質もしくは酵素・薬剤相互作用などによって発見され、これによって分子の線状部分が結合部位と認識される。
【0005】
しかしながら、さらにしばしば、このような突起と凹部とは問題の分子の様々な区別可能な部分を含み、これらは結合部位を本質的に形成する複合部分である。一般に、このような問題の分子の区別可能な部分を含む結合部位は、不連続もしくは配座結合部位、または不連続もしくは配座エピトープと称される。たとえば、一次構造(タンパク質分子のアミノ酸配列)、二次および三次構造(αヘリックスまたはβシートへの分子の保持、およびその全体形状)、ときには四次構造(他のタンパク質分子との相互作用)をとるタンパク質上に存在する結合部位は、一次構造では遠く離れる一方で、この結合部位ではともに接近して保持される、隆起または凹部のアミノ酸または短いペプチド配列を、本質的に含み得る。
【0006】
結合分子およびこれらのリガンドが生命において中心的役割を果たしているために、結合部位の性質または特徴の検定または同定に関心が拡大している。特に、プロテオミクスのようなバイオテクノロジー分野の急速な発達は、ますます多くの結合分子とこれらに対応するリガンドの同定を近い将来にもたらすであろう。タンパク質・タンパク質相互作用、および酵素・基質相互作用(タンパク質酵素のみならず、たとえばRNA触媒に基づいた相互作用も確実に含む。)の検出、ならびに結合分子および対応するリガンドのタンパク質・核酸および核酸・核酸ペアの同定は、これらの分子間の正確な相互作用(結合)部位がどこに存在するか、および特定の相互作用を調節する化合物(アゴニスト、アンタゴニスト、薬剤)をどのようにして発達させるかという点で関心を必ず引起すであろう。
【0007】
たとえば必要なときに結合分子またはリガンドを置換または補完するために、問題の結合分子とリガンドとの間の特定の相互作用の正確な性質に関心があるだけでなく、関係する結合部位またはリガンドを模倣する構造類似体、アゴニスト、アンタゴニストまたはその他の化合物を発見または設計するために、相互作用の近似する特徴を理解することにも関心がある。
【0008】
連続エピトープまたは結合部位の検定または同定のための汎用性がありかつ迅速な方法が知られている。大部分は、核酸検出技術およびこれらを用いる分子ライブラリがなければ、DNA、RNAまたはPNAであろうと、相補的核酸鎖による本質的に連続的な核酸伸長のハイブリッド形成を必然的に伴う。本質的に核酸の性質の不連続結合部位の迅速かつ端的な同定を可能にする方法は、ほとんど注目されなかった。リボソームタンパク質がtRNAに結合する、取り囲むリボソーム結合部位についての理解の欠如のみを考慮して、プロモーター配列における調節部位、DNAおよびRNA間のポリメラーゼとレプリカーゼとの間の相互作用、触媒RNA反応などの多くのこのような部位などが存在するけれども、このような部位に容易にアクセスさせる分子ライブラリは存在しない。
【0009】
ペプチド分野の早期の研究は、タンパク質中の抗原活性のあるアミノ酸配列またはペプチドを検出または決定する方法に関する国際公開公報第84/03564号である。複数の異なるペプチドが、第1のアミノ酸を第2のアミノ酸にペプチド結合で連結することなどによって合成され、かつ検定形式中第2の位置でさらに別の第1のアミノ酸が第2のアミノ酸に連結されるなどした後、合成されたペプチドが問題の結合分子によってそれぞれ検定される、いわゆるペプスキャン(Pepscan)技術を提供するこの研究は、タンパク質またはペプチド配列において重要な、あらゆる連続抗原決定基または連続エピトープの決定を可能にする。広義のペプスキャン技術はまた、様々な性質の結合部位またはリガンドと本質的に同一、類似、または模倣する、(線状ではあるが)ペプチドの検定または同定を提供する(mimotopes, Geyssen at el, Mol. Immunol. 23:709-715, 1986)。
【0010】
ペプスキャン技術は、相対的に小さい努力で問題の結合分子との反応度に関して多数のペプチドを検定することを可能にする、迅速かつ端的な方法で、レセプタ分子、酵素、抗体などと相互作用する線状ペプチド配列の同定を可能にする。ペプスキャン技術によって発達した大規模な検定能力は(たとえば、検定形式の小型化にも起因する。たとえば国際公開公報第93/09872号を参照。)、多様なペプチドをランダムに検定することをさらに可能にして、自動コンビナトリアルケミストリ形式をもたらし、ここで多数の結合分子が、潜在的な連続結合部位またはリガンドを示す合成ペプチドの分子ライブラリとの反応度をパターンで(要求に応じてランダムに)検定され、検定された分子の何万もの組合せのうち、特に関連する分子の迅速な検出を可能にする。
【0011】
しかしながら、結合分子に対する不連続または配座結合部位の検定に関して、ペプスキャン技術と類似する、または同様に多目的な形式は存在しない。ペプスキャン技術によって不連続エピトープを同定する試みは扱い難い。これは、一般的に、既存のペプチドにより多いアミノ酸を連結することによって検定ペプチドの合成を単に拡張することと、こうして形成されたより長いペプチドの一部が、少なくとも2つの区別可能な部分が不連続な方法で示され、かつ結合分子によって認識されるような方法で折り重なるという要求とを満足させない。結合が実際には不連続結合部位を介することを迅速かつ端的な方法で発見する方法がないことよりも、より長い単一のループしか結合に応答可能でないということかもしれない。
【0012】
いくつかの追加の可能性が、結合部位の予備同定された2つの部分を含むように設計された合成ペプチド配列を検定することによって、提供され、各部分は、本質的に線状であり、かつより大きい線状ペプチドの一部である。ここでの早期の研究は、AtassiおよびZablockiによって行われ(J.Biol.Chem 252:8784,1977)、卵白リゾチームの抗原部位の空間的または立体配座的に隣接する(さもなければ配列中で隔たれた)表面残基が、リゾチーム中に存在しないがそれの表面領域を模倣するよう試みる単一のペプチドに、ペプチド結合によって連結されたことを述べる。しかしながら、表面模倣合成と呼ばれる彼らの技術は、研究に基づくタンパク質の3次元構造の詳細な知識と、事前に結合部位を構成する残基の完全な化学的同定と、これらの正確な立体配座の空間的かつ方向的な要件とを要求する。
【0013】
同じ方法で、Dimarchiら(Science 232:339-641, 1986)は、ウイルスコートタンパク質の予備同定された2つの個別のペプチジル領域からなる38〜40アミノ酸長の合成ペプチドを述べる。このペプチドは、ペプチドを生じさせるさらに成長中のペプチドにペプチド結合でその後のアミノ酸を加えることによってありふれたペプチド合成技術(Merrifield et al., Biochemistry 21, 5020, 1982)を用いて合成され、ここで2つのペプチジル領域は、二次構造ターンの表示としておそらく機能するdiprolineスペーサーによって接続され、これによって2部エピトープまたは結合部位を供給する。
【0014】
しかしながら、所望の不連続結合部位を供給するために(この場合においてのみ)関連する2つの部分の配列をすでに事前に知らなければならない場合、このことが、大規模な検定のために単に潜在的な不連続結合部位の全アレイを(望ましくはランダムな方法で)供給する実現可能性を排除することは、明らかである。さらに、上述の戦略の主要な欠点は、なおも線状エピトープ、または不連続エピトープの支配的な結合領域しか、十分に模倣され得ないということである。不連続結合部位のより完全な合成のために、寄与する部分はすべて、高い類似性の結合を達成するように特有の配座において配列されなければならず、したがって、不連続結合部位の単一の各部は、連結されなければならない。
【0015】
15年後、Dimarchi、Reinekeら(Nature Biotechnology, 17:271-275, 1999)は、サイトカイン上の不連続結合部位の合成模倣と、いくらかフレキシブルな、かつ規模の若干大きい検定を可能にするような不連続結合部位を発見する方法とを提供し、ここで、サイトカインの2つの個別領域に由来する位置的にアドレス可能なペプチドコレクションが、連続セルロース膜上に表示され、かつ最良の結合ペプチドを発見する方法で置換された。各領域からの「最良反応体」の選択後、これらは、さらに数周の置換を受ける別の合成ペプチドコレクション(デュオトープ(duotope)と称されるペプチドを含む。)を生じさせるように組合された。
【0016】
この結果、Reinekeらは、デュオトープを含むペプチド鎖の合成を提供するが、このペプチド鎖はペプスキャン技術によって推定構成部分の予備同定後にさらに選択され、したがって、迅速かつ端的な方法での不連続結合部位の検定を未だに可能にしない。
【0017】
しかしながら、前に示したように、結合部位を模倣するタンパク質ドメインまたは小さい分子が、薬剤発見、診断学およびバイオテクノロジーにおいて果たす役割は高まっている。結合部位および模倣に結合する、または自然リガンドの作用に敵対する特定の分子の検索は、多くの研究所において開始された。前に示したように、合成分子ライブラリにおいてこのような構造を発見する試みは、大多数の結合部位の本質的に不連続的な性質と空間的相補性とのために、しばしば失敗する。したがって、結合部位が本質的に不連続である、より多くの場合に関して、これらの部位を同定するための改良された手段および方法が必要とされ、特に、前記部分が所望の不連続結合部位の推定または一時的のみの構成部分として予備同定によって必然的に第一に選択される必要はないが、それ自体多少区別可能な特徴を有する分子であることによってこの部位の一部である可能性のみを保持する不連続結合部位の検定を可能にする手段および方法が必要とされる。
【0018】
本発明は、分子ライブラリを供給する方法を提供し、この方法は、複数の検定物を有する前記ライブラリを供給し、この検定物は、従来行われた検定分子を逐次合成すること、および1個の分子またはこの1個の分子の数個の複製物を単一物としてスポットすることによる代わりに、セグメントスポッティングによって、すなわち、たとえば核酸またはペプチドの少なくとも2つの(二量体、三量体、オリゴマーまたは多量体の)セグメントを、直接または間接にアレイ表面のような固相に対して、極めて近接してスポット、取付けまたは付着することによって、本質的に産生された。理論上、これらのセグメントは、反復的な方法で、1つの単量体(たとえばヌクレオチドまたはアミノ酸)から別の単量体に対して、所望の長さの(本質的に重合体の)分子(セグメント)が得られるまで、相互に極めて近接して逐次合成されることができる。本質的に、既存の核酸ライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸長時に1つのヌクレオチドまたはヌクレオシドを加えることによって、逐次合成される核酸を含み、既存のペプチドライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸張時に1つのアミノ酸を加えることによって、逐次合成されるペプチドを含む。しかしながら、相互に極めて近接して特定のセグメントを合成することによって、これらのセグメントはともに、推定結合部位を表すことができるが、既存のライブラリによっては注目されていない。核酸によって、前記単量体は、周知のヌクレオチドの限定された組から本質的に選択され、ペプチドによって、前記単量体は、アミノ酸の周知の組から本質的に選択される。自然発生の単量体が使用されるだけでなく、ペプチド核酸(PNA)分子のような合成ヌクレオチド、または非自然発生アミノ酸もしくはD−アミノ酸も単量体として通常使用され、これによって本質的に重合体の分子は、自然状態での単量体分子からの重合体の逐次合成に本質的に従う方法を用いて、生成または産生される。本発明に従えば、好適なものは、セグメントが極めて近接して固相に付着される前に、これらのセグメントを合成することであり、これによって、所望の検定物を産生することはより容易であり、推定結合部位は、極めて近接して位置し、かつ固相たとえばアレイ表面に付着される2つまたはそれ以上のセグメントからなる。ここで、極めて近接して、とは、推定結合分子が少なくとも2つの接近してスポットされたセグメントまたはその部分に結合し得るという可能性を示し、かつ結合部位の一般的な分子規模を示すオングストローム単位で定められ、好適には長いリンカーの必要性を未然に防ぎ、相互にたった100オングストロームしか離さずに所望の検定物を形成する2つまたはそれ以上のセグメントを付着することであり、または小さいセグメントが使用される場合、50オングストロームより短い、好ましくは30オングストロームより短い、もしくはさらに15オングストロームより短い間隔が好適であり、一般的に、この間隔が短くなればなるほど、結合部位により好ましく適合する。最短の近接性は1〜2オングストロームであり、これによってこれらのセグメントは、たとえば、重合体において1〜2原子だけ相互に離れた、様々に保護されたチオール基に連結される。さらに、フレキシブルリンカーの長さは、好ましくは10〜100オングストロームであるべきであり、セグメントの好適な長さは約5〜100オングストロームであり、セグメントの頂点間の好適な距離は、0〜30オングストロームになる。
【0019】
たとえば、2つのセグメントは、(ポリカーボン)重合体表面上に、好ましくはループとして、結合され得る。余剰のスペーシングビルディングブロック(たとえばフェニルアラニンアミノ酸)によって、ループを拡張される。(ポリカーボン)表面上に、たとえば2タイプ(図1の適切なタイプも参照。)の保護されたシステイン(たとえば、cys(trt)およびcys(mmt))とたとえば1つのスペーシングビルディングブロックとが連結される。このcys(mmt)は、cys(trt)が保護されたままである一方で、1%のTFAによって脱保護される。第1のセグメントは脱保護されたcys(mmt)に結合される。その後、第2のcys(trt)は95%のTFAによって脱保護される。その後、第2のセグメントは、脱保護されたところのcys(trt)に結合される。望みに応じて、セグメントはまた、適切な化学変化を用いて、ともに連結され得る。
【0020】
さらに、セグメントを前記表面に直接連結する代わりに(連鎖群を介するが)、セグメントは、この表面にそれ自身連結されるテンプレートに第一に連結され得る。好適な実施形態において、このようなテンプレートはたとえばペプチドである。たとえば、2つのセグメントは、それ自身重合体表面に連結される環状テンプレート上に連結され得る。この環状テンプレートは、たとえば環状のフレキシブルなペプチドである。この環状ペプチドは、たとえば、4つのリシン(mmt)、2つのシステイン(trt)および2つのシステイン(butyl)のような、反応性群を含む。このテンプレートは、たとえば、硫黄を介して合成樹脂に結合される。したがって、本発明は、分子ライブラリを提供し、これは、連続結合部位の検出またはスクリーニングにも適しているが、特に、たとえばタンパク質・タンパク質、タンパク質・核酸、および核酸・核酸相互作用のような分子・リガンド相互作用の結合に関し、不連続結合部位の検出またはスクリーニングに特に好ましく適しており、それぞれ不連続結合部位の一部を表し得る少なくとも2つの異なるセグメントは単一物としてスポットされ、本明細書において結合体とも称される、ことによるとまだ知られていない不連続結合部位を一時的に表す。
【0021】
本明細書の範囲内で、結合体という用語は、一般的に、本質的にすべてのペプチドセグメント構成に関して使用され、しかしながら、すべてのペプチドの組合せに関して記載される本技術はまた、核酸の組合せまたはさらに混合された性質の組合せにも当然に使用され得る。結合体は、本質的に、本明細書に記載される本発明に従った方法によって同定または取得可能な結合部位を含む合成分子であり、本質的にランダムペプチドセグメントの組合せであり、これは、抗体のような結合分子として作用する。抗体の場合と同様に、認識は、多少不完全でもよく、たとえば目標物の結合部位は常に最適である必要はない。この結合体は、原則として目標分子のどの部分にも結合し得る。たとえば、あるものは、TNF−アルファの作用を中和するために、TNF−アルファのレセプタ結合部位と特異的に相互作用する小さい分子を発生し得る。さらに、あるものは、まだ明らかでない場所でTNF−アルファと相互作用し、かつその作用を中和する抗体を発生し得る。これは、ときには小さい分子が溶液であり、ときには大きい抗体であることを示す。あいにく、両者は、不都合を有し、小さい分子は大きい認識部位に役立つのは困難または不可能であり、抗体のような大きい分子は、相当容易に発生し得るが、細胞内部で使用されることができず、かつ免疫原性および細胞内部での作用不能のような薬理学上の種々の不都合を有する。
【0022】
結合体の有利な特性は、小さい分子および大きい分子の有利な特性を組合せる。結合体は両者の好都合を共有する。好適な結合体は、たとえばCDRまたはその他の結合ドメインと類似するようにわずかに偏られた、または混ぜられたランダムペプチドセグメントからなる。必要または望みに応じて、CDRは、たとえばそれぞれ1つの生じ得るCDRを表す、6つのセグメントを用いることによって模倣され得るが、2つ、3つまたは4つのセグメントの組合せは、多様性をすでに供給するであろう。このペプチドセグメントは、好ましくは、両側で足場物質または固相に連結される。したがって、結合体は、1つ、2つまたはそれ以上のペプチドセグメントを有する分子から構成される。かなり多様化した結合体ライブラリは、相対的に少数のランダムペプチドセグメントの合成の組合せに基づいて産生され得る。100個の結合体のライブラリは、本願に記載されたような位置を定められたペプチドセグメントアレイを用いて容易に産生される。いずれの所定の分子によってもこのようなライブラリのスクリーニングは、簡単で、速く、かつ端的である。ヒットしたものは、(位置を定められた配列のために)、この結合体から構成されるアミノ酸またはセグメントに直接に翻訳されることができる。1,000,000個の結合体のライブラリは、たとえば、相互に小さいライブラリからの全ペプチドを組合せること、またはより大きい固体支持表面から始めることによって、容易に産生され得る。1,000,000個の結合部位のライブラリは、たとえば、3つのセグメントを含む結合体により小さいライブラリの全ペプチドを組合せることによって、容易に産生され得る。したがって、多様な結合体が、1,000,000個またはそれ以上に多様化するために、少数のランダムペプチド(たとえば10個)および単一の結合体に組合されたペプチドの複数の組合せ(たとえば6個)から始めて産生され得る。さらに、同じ結合部位の多様性は、たとえば1000個のランダムペプチドから始めて、かつ各結合体に2個のペプチドセグメントのみを用いて得られ得る。抗体と同様に、結合体は、「成熟」し得る。ランダム結合体の最初の組によってヒットしたものに基づいて、多数の改良された組合せを含有する(上述の)新たに供されるライブラリが産生され得る。最良のものは、第2に供されるライブラリを用いるなど、追加の周において選択または改良され得る。高い類似性のある結合体は、分子足場物質または固相にペプチドを好ましくは両端で結合するための化学変化によって、各結合体が位置を定められたアレイシステムを用いることによって、さらに適切な小型化によって、かつ/またはデータを分析し、かつその後改良された結合体または結合体の供されるライブラリを設計するための適切なバイオインフォマティクスによって、発生される。
【0023】
2つまたはそれ以上の異なるセグメントはもちろん、二量体配列、三量体配列、またはオリゴマー配列のいずれの組からも、たとえば二量体ヌクレオチド、三量体ヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、または二量体ペプチド、三量体ペプチドもしくはオリゴペプチドから、ランダムにそれぞれ選択され得るけれども、ときには、検定物において少なくとも1つの特定のセグメントを含むことは好適であり、特定とは、このセグメントが、生体分子の知られているセグメントまたは区別可能な部分、たとえば遺伝子、タンパク質、酵素、核酸またはこれら独自のフラグメント、翻訳のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関係するタンパク質、t−RNA、SNRP、抗体、相補性決定領域(CDR)、抗原、レセプタ、輸送タンパク質、転写因子または転写のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションに関係する因子、周知のTATAボックス因子に必然的にそれ自体制限されないプロモーター配列、リプレッサー部位、オペレーター部位およびその他の制御因子、ポリメラーゼ、レプリカーゼの部分の中から、要するに、不連続結合部位を介した結合に関係することで知られている、または思われている結合分子の知られているセグメントまたは区別可能な部分の中から、選択されたという意味である。
【0024】
極めて近接してスポットされた、知られているセグメントまたは部分は、不連続結合部位を構成する部分としてもちろんすでに知られているが、本発明に従った分子ライブラリによるこのような部位のスクリーニングは、この構成するセグメントまたはその部分の迅速かつ端的な同定を可能にするので、予備同定それ自体は本質的に必要ではない。
【0025】
このようなライブラリのスクリーニングは、ライブラリの分子が、構成するセグメントを重複方法で選択するという点でのみ異なる場合、容易に推定されることができ、この重複方法によって、もし前記生体分子の可能性のあるセグメントがすべて、極めて近接して2つずつ(または3つずつ、もしくはそれ以上ごとに)スポットされるまで要求されるなら、区別可能な生体分子からの第1のセグメントは、第2のセグメントに隣接して、そして第3のセグメントに、そして第4のセグメントにスポットされ、第2のセグメントは、第3のセグメントに隣接して、そして第4のセグメントにスポットされる。これは生体分子上に存在し得る不連続結合部位の組織的スクリーニングを可能にする。
【0026】
しかしながら、重複方法は当然に要求されず、極めて近接してスポットされたランダムなセグメントの組合せが結合部位に関する有益な情報を提供するであろう。
【0027】
したがって、本発明は、結合分子と相互作用することができる結合部位の同定または検出のための分子ライブラリを産生する方法を提供し、したがって、結合分子として分子の同定のために、この方法は、結合分子またはこれらのリガンド由来の複数のセグメントを有するライブラリを供給することを含み、少なくとも2つのセグメントをペアで、または3つを3つ組で、またはそれ以上をそれぞれ複数で、好ましくはこのペア、3つ組、または複数の大部分、最も好ましくはこのペア、3つ組または複数の本質的に全部をスポットすることをさらに含み、少なくとも、第1のセグメントを、第2のセグメント、たとえば二量体、三量体、または多量体を含むセグメントに隣接してスポットすることによる。
【0028】
既存のライブラリは一般的に、たとえば核酸(ヌクレオチド、ヌクレオシド、もしくはペプチド核酸、またはこれらの組合せの反復バックボーンを含有する。)であろうが、またはアミノ酸(アミノ酸の反復バックボーンを含有する。)であろうが、単一の分子(もしくは単一のセグメント)または複数の単一の分子の複製物が、スポットされ、かつ結合部位を表す検定物として用いられる点で共通している。このようなライブラリは、たとえば核酸またはアミノ酸の伸長のようなオリゴマーまたは多重結合分子を含み、これは所望の長さの(本質的に重合体の)分子が得られるまで、1つの単量体(たとえばヌクレオチドまたはアミノ酸)を他方に反復して逐次連結することによって産生されてきた。本質的に、既存の核酸ライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸長時に1つのヌクレオチドまたはヌクレオシドを加えることによって、逐次合成されるアミノ酸を含み、既存のペプチドライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸長時に1つのアミノ酸を加えることによって、逐次合成されるペプチドを含む。核酸によって、この単量体は、本質的に周知のヌクレオチドの限定された組から選択され、ペプチドによって、この単量体は、本質的にアミノ酸の周知の組から選択される。自然発生の単量体が用いられるだけでなく、ペプチド核酸(PNA)分子のような合成ヌクレオチド、または非自然発生アミノ酸もしくはD−アミノ酸は、本質的に重合体の分子が、自然状態での単量体の分子からの重合体の逐次合成に本質的に従った方法を用いて生成または産生される、単量体として通常用いられる。これらの単一の単量体はその後単一の方法でスポットされ、1つの単量体は、不連続結合部位を構成する結合部位の複数部分を考慮に入れることなく、完全な結合部位またはほとんど完全な結合部位を表すと考えられる。
【0029】
本発明は、二量体の、またはそれ以上(三量体、オリゴマーまたは多重結合)のセグメントをペアで、3つ組でまたはそれ以上で組合せて本質的に用いて、区別可能な利点を与える認識を提供する。様々なセグメントから構成された分子に達するまたは認識するためのより迅速な方法を提供するだけでなく、所望のライブラリのための分子または検定物レパートリーを産生するためのセグメントの迅速かつ効果的な混合をも提供する。本発明はたとえば、合成は単量体から始められ、極めて近接してこれに対して二量体、たとえばジヌクオレチドまたはジペプチドを含む第2のセグメントがスポットされる方法を提供する。ここで、二量体を含む第2のセグメントは、少なくとも二量体からなるが、たとえば、要求に応じて、いずれの性質の単量体を連結した、三量体またはその他のいずれの多量体でも可能である。もちろん、2つのセグメントが極めて近接してスポットされると、さらなるセグメントをそれに加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
好適な実施形態において、さらなる合成を加速し、または所望の区別可能なセグメントを選択可能にするために、本発明は、第1のセグメントも二量体を含み、さらに好適な方法において、さらなるセグメントも二量体を含む方法を提供する。好適な実施形態において、この二量体は、ジヌクレオチドおよびジペプチドを含み、もちろんその他の二量体も構成され得る。本発明はさらに本詳細な説明でさらに説明され、ここで各セグメントは、ペプチド、たとえばトリペプチド、ペンタペプチド、またはノナペプチドを含み、しかしながら、本発明は、より長いセグメント、たとえば10〜15個、15〜20個、20〜30個もしくは30〜40個、またはそれ以上のアミノ酸長または核酸長の使用と、たとえば核酸・タンパク質複合体において発見される結合部位をより好ましく模倣するために、たとえば一方は核酸を含み、他方はペプチドを含む、様々な性質の使用とを提供する。
【0031】
好適な実施形態において、本実施例に示される例に関して、本発明は、第1のセグメントが、第2のセグメントに隣接してチオエーテル結合によって、固相に対してスポットまたは付着される方法を提供し、しかしながら、本発明は、この方法に当然に限定されない。ヌクレオチドまたはヌクレオシドセグメントはたとえば、酵素またはリガーゼをスプライシングすることによって、または第1のセグメントと第2のセグメントとを、両セグメントに部分的に相補的である本質的に相対的に短いヌクレオチド鎖で重複することによって、共有結合して連結または結合されることができる。
【0032】
したがって、本発明は、結合分子と相互作用することができる連続または不連続結合部位の検定、同定、特徴付けまたは検出を可能にする分子ライブラリを提供し、このライブラリは、複数(ペア、3つ組、4つ組、5つ組、6つ組)のセグメントを備え、各組は好ましくは第2のセグメントに極めて近接してスポットされた少なくとも1つの第1のセグメントを有し、ここで少なくとも第2のセグメントは、二量体または多量体として以前存在したものである。好ましくは、各セグメントまたはその部分は、不連続結合部位の潜在的な単一の部分となることができ、好ましくは、少なくとも第1および第2のセグメントまたはその部分はそれぞれ、不連続結合部位の潜在的な単一の部分を表す。このようなライブラリは、たとえば、セグメントの化学的スポッティングによって形成された合成分子ライブラリに存在する。
【0033】
好ましくは、このようなセグメントは、区別可能な特徴を有し、たとえば、セグメントは本質的に、生体構造、たとえば、ヌクレオチド、糖質、脂質、アミノ酸、核酸分子(DNAまたはRNA)、ペプチド核酸分子(PNA)、炭水化物、脂肪酸または脂肪(の組合せ)の分子構成であるか、これを含むか、またはこれを模倣する。
【0034】
これによって、本発明は、不連続結合部位の少なくとも2つの区別可能な部分を潜在的に表す個別のセグメントを含む分子の合成を提供し、この部分は、潜在的構成部分の予備同定後に第一に選択される必要はなく、これによって、迅速かつ端的な方法で不連続結合部位の検定を可能にする。
【0035】
したがって、本発明は、ホルモン、ペプチド、薬剤、抗原、エフェクタ分子または別のレセプタ分子と接触部位で相互作用または結合するレセプタ分子、基質と結合する酵素、抗体の結合部位と結合する抗体分子、タンパク質と結合する核酸などの不連続結合部位の同定を可能にする。本発明の好適な実施形態において、これらのセグメントのうち少なくとも1つは、ペプチドを含み、別のセグメントは、たとえばDNA、RNA、PNA、炭水化物、脂肪酸、ペプチド、ホルモン、または有機分子全体である。本発明の1つの実施形態において、すべてのセグメントは、ペプチドを含む。この方法において、複数の異なる結合体は、第1のセグメントを第2のセグメントなどに隣接してスポットすることによって合成され、かつ検定またはライブラリ形式の第2の位置において、さらに別の第1のセグメントは第2のセグメントなどに連結され、この後、この合成された結合体は、問題の結合分子によってそれぞれ検定され、たとえば核酸、タンパク質またはペプチド配列において重要な不連続抗原決定基または不連続エピトープの決定を可能にする。
【0036】
ペプチドセグメントは、少なくとも2つのアミノ酸を含み、望まれる場合に限り、たとえば100個のアミノ酸またはそれ以上を含む。好適な実施において、このペプチドセグメントは、3〜30個、好ましくは4〜20個、さらに好ましくは、5または6〜12〜15個のアミノ酸、たとえば9個または12個のアミノ酸を含む。もちろん個別のセグメントは、等しい長さでなければならない必然性はない。
【0037】
さらに、ともに、または相互に極めて近接してスポットされるべきペプチドセグメントは、ランダムに、または知られているタンパク質もしくはペプチド配列の指図に従って選択され得る。ランダムでの選択は、本発明に従ったランダムなライブラリを供給する。知られているタンパク質またはペプチド配列からの選択は、たとえば、不連続結合部位が区別可能なタンパク質またはペプチドに、たとえば、特定の結合分子が結合し得る折り畳みタンパク質に存在する区別可能な部位または部分から構成されているか否かを発見することが望まれる場合、有用である。1つの知られているタンパク質またはペプチド配列からの様々なペプチドセグメントの選択は、不連続結合部位が1つのタンパク質またはペプチドにおいて、たとえば特定の結合分子が結合し得る保持されたタンパク質において存在する区別可能な部位または部分から構成されているか否かを発見することが望まれる場合、有用である。ペプチドセグメントの選択は、このような知られている配列から重複するペプチドを選択することによって、行われることができる。重複するペプチドは、好ましくは隣接する方法で重複して、たとえば1個または2個を除いてすべてのアミノ酸を共通して有することができ、または1個だけまたはいくつかのアミノ酸で重複することができる。知られているタンパク質の不連続結合部位の迅速な走査のために、たとえば、このタンパク質配列からノナペプチドセグメントを選択することは有用であり、この一方は他方のペプチドセグメントと5アミノ酸長重複する。しかしながら同様に、1個のアミノ酸のみ重複するこの配列からトリペプチドセグメントを選択すること、および検定されるべき結合分子が結合する推定結合部位分子を構成する3つまたはそれ以上のセグメントを用いることは有用である。
【0038】
もちろん、このような選択方法は、異なる性質のセグメントに等しく応用可能であり、核酸セグメントは、特定数のヌクレオチド、たとえば5、7、9個などを含み、推定または求められている不連続結合部位を含む既知の核酸配列から選択されることができ、各セグメントは、望みに応じて重複方法においても、この既知の核酸配列の特定位置から選択される。この核酸セグメントは、少なくとも2個のヌクレオチドを(DNA、RNA、PNAまたはこれらの機能的同等物のいずれであろうが)含み、望まれる限り、原則として、たとえば100個のヌクレオチドまたはそれ以上を含むことができる。好適な実施において、前記核酸セグメントは、3〜30個、好ましくは4〜20個、さらに好ましくは5個または6〜12〜15個のヌクレオチド、たとえば9個または12個のヌクレオチドを含む。もちろん個別のセグメントは、等しい長さでなければならない必然性はなく、上述のとおり、異なる性質、たとえばDNAを有するペプチドにもなり得る。
【0039】
セグメントは、たとえば化学的連結または結合によって、固相に化学的に付着されることができる。この連結または結合は、本技術分野において知られているたとえばペプチドまたはヌクレオチド化学反応および選択的連結反応の方法の多くの組合せを用いて形成されることができる。連結化学反応は、たとえばKent(Ph.E.Dawson et al., 自然化学的連結反応によるタンパク質合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical
Ligation), Science 266 (1994) 766-779)、Tam(J.P.Tam et al., 直交結合法による保護されないペプチドを用いたペプチド合成(Peptide Synthesis using Unprotected Peptides through Orthogonal Coupling Methods), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 12485-12489; C.F.Liu et al., HIV−1プロテアーゼ構造類似体の合成のための偽プロリン形成による保護されないペプチドの直交連結(Or thogonal Ligation of
Unprotected Peptide through Pseudoproline Formation for the Synthesis
of HIV-1 Protease Analogs), J.Am.Chem.Soc. 188 (1996) 307-312; L.Zhang & J.P.Tam、合成ペプチドおよびタンパク質のための一般的かつ部位特異的な複合方法としてのチアゾリドン形成(Thiazolidone Formation as a General and Site-specific Conjugation Method for Synthetic Peptides and Proteins), Analytical Biochemistry 233 (1996) 87-93)、およびMutter(G.Tuchscherer & M.Mutter, ペプチド化学者への挑戦としてのタンパク質設計(Protein Design as a Challenge for Peptide Chemists), J.Peptide Science 1 (1995) 3-10; S.E.Cervigni et al., テンプレートに援助されたタンパク質設計:化学選択的連結反応によるキメラTASP(Template-assisted Protein Design: Chimeric TASP by Chemoselective Ligation), Peptide: Chemistry, Structure and Biology, P.T.P Kaumaya & R.S. Hodges eds, Mayflower (1996) 555-557)のグループによって発表された。
【0040】
本発明によって好ましく提供される連結の構成に関する、可能性のある方法は、以下の例のとおりである。
【0041】
1.固相とセグメントとの連結は、ホモまたはヘテロ二官能連結物質を用いて形成される(S.S.Wong:タンパク質複合および交差連結の化学反応(Chemistry of Protein
Conjugation and Cross-Linking), CRC Press Inc, Boca Raton, Florida USA 1991)。この構成において、セグメントにおける反応性群は、二官能連結物質の一部と反応するために用いられ、したがって、この連結物質の第2の部分が、固相からの反応性群と反応することを容易にし、またはこの逆も同様である。たとえば、MBS(m−マレインイミドベンゾ酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)のようなリンカーは、活性のあるエステル(スクシンイミド)を介して1つのセグメントのアミノ基と、およびマレインイミド基を介して固相からの遊離チオール基と、またはこの逆と反応するために用いられる。このような方法において、連結時に好ましくは他の遊離アミノ基または遊離チオール基もセグメント中に存在してはならない。これを達成するために、この反応に関係するべきアミノ基またはチオール基は、たとえば1%のトリフルオト酢酸のような低刺激性の試薬によって開裂され得る側鎖保護基を用いることによって、選択的に脱保護されることができ、この試薬はその他の側鎖保護基を無傷のままにする。
【0042】
2.前記連結は、1つまたはそれ以上のセグメントの合成における修飾されたアミノ酸の導入によって形成される。アミノ酸は、たとえば側鎖またはαアミノ基における特殊な基の導入によって修飾され得る。αアミノ酸における修飾は、アミドまたはバックボーン修飾されたペプチドをもたらす(たとえばGillon etal, Biopolymers, 31:745-750, 1991
を参照。)。たとえば、この基は、リシンの側鎖アミノ基におけるマレインイミド基とすることができる。このペプチド合成の終期に、この基は固相のチオール基と迅速かつ選択的に反応するであろう。Tamら(PNAS 92:12485-12489, 1995)は、保護されたセリン残基によって側鎖において修飾されたリシン残基とのペプチドの合成を述べた。過ヨウ化酸塩を用いた脱保護および選択的酸化後、セリンのαアミノ、βヒドロキシ官能基は、別のチオール担持表面に選択的に連結され得るアルデヒド官能基に変換される。また、ペプチドバックボーン連結は、ペプチドのアミノ基に付着した基を介して、セグメントをスポットするために用いられ得る(Bitan et al., J.Chem. Soc. Perkin Trans.1:1501-1510, 1997; Bitan and Gilon, Tetrahedon, 51:10513-10522, 1995; Kaljuste and Unden, Int. J.Pept. Prot. Res. 43:505-511, 1994)。
【0043】
3.さらに連結を形成する別の方法は、セグメント、たとえばペプチドを修飾されたN末端と合成することである。たとえば、N末端αハロアセトアミド基は合成の終期に導入され得る。この基は、チオール基を含む固相と迅速かつ選択的に反応する。たとえば、第1のセグメントはN末端ブロモアセトアミドと合成され、固相はシステインを備える。クロロアセトアミド、ブロモアセトアミドまたはイオドアセトアミドのような大部分のαハロアセトアミド基は、チオール基と反応するであろうが、これらの場合、迅速な集合が要求され、ブロモアセトアミド基は、導入の容易さ、およびチオール基との迅速かつ選択的な反応のために好適である。
【0044】
さらに本発明は、第1および/もしくは第2の、または連続したセグメントの全位置における連結について扱う可能性を提供する。たとえば、ペプチドセグメントに関して、ペプチドの組は合成され、ここにおいてシステインまたは側鎖修飾されたリシンは、N末端アミノ酸位置から1つずつC末端アミノ酸位置まで転換し、好適な実施形態における両アミノ酸残基は別のセグメントと選択的に連結することができる。これらの可能性の組合せは本発明によって提供されるライブラリを再び導く。
【0045】
別の好適な実施形態において、セグメントは、少なくとも極めて近接して固相に2度連結され、好ましくは表面にセグメントの各端を連結することによって連結され、その結果、いわばループしたセグメントが固相に付着される。このような好適な実施形態において、ペア(またはより多い複数)のループしたセグメントは、固相に付着され、これら自身を結合体と表す。
【0046】
好適な実施形態において、本発明は、前記複数は、たとえば配列方法で、位置的にまたは空間的にアドレス可能であって、望みに応じて用いられたライブラリの支持体もしくは固相の寸法(たとえば平面または表面)内の特定のペアもしくは3つ組(もしくはより大きい複数)または複数の組の定位および/または認識を対象としたコンピュータによって支援される、ライブラリを提供する。アレイにおいて、これらの複数は、たとえばグリッドまたはマトリクス中にこれらの位置毎にアドレス可能にされる。
【0047】
さらに、本発明の好適な実施形態は、たとえば1cm2あたりの固体支持体上の構成数に関する合成のグレードアップを可能にする。たとえば、タンパク質の少なくとも2つのペプチドセグメントを含む検定物(ペア、3つ組またはそれ以上の複数)を含む、大多数の可能性のある構成の産生を容易にするために、何千ものペプチド構成が形成される。たとえば、両セグメントがたとえば12個のアミノ酸長である構成がすべて100個のアミノ酸残基の長さを有する小さいタンパク質に由来することを必要とする場合、もしセグメントがたとえば第1のセグメントのC末端および第2のセグメントのN末端を介して、もしくはその逆を介して、または両者とも1タイプの連結のみを用いて、固相に連結されるのみならば、さらに89×89=7921個のペプチド構成が形成される。1000個のアミノ酸残基の長さを有するペプチドに関しては、少なくとも989×989=978121個の構成が形成される。これらの構成数の有効なELISA検定に関して、固体支持体における高い構成密度が好適である。固体支持体における構成の高い密度は、本発明によって供給され、ここにおいてたとえばN末端におけるブロモアセトアミド基を有する第1のセグメント(の層)は、たとえば1cm2の表面において合成される。表面のさらに別の部分において、別の第1のセグメントが用いられ得る。支持体の各ペプチド官能化表面において、一組の、遊離チオール基を含むたとえば10個、好ましくは50個、好ましくは100個、またはそれ以上の第2のペプチドセグメントは、位置的にまたは空間的にアドレス可能な方法で、スポットまたはグリッドされ、結合後、多数の異なるペプチドペアを与える。スポッティングは、たとえば圧電性ドロップオンデマンド技術を用いて、または小型電磁弁を用いて行われることができる。グリッディングは、たとえば、第2のセグメントを含む溶液を含有するマイクロリットル未満の量のセグメント溶液を、マイクロタイタープレートから取出す一組の個体針を用いて行われる。この連結反応の後、結合されないペプチドを除去するために支持体のその後の脱保護および大規模な洗浄は少なくとも、1cm2あたり10〜50個、または100〜200個、最大で50〜1000個までのスポットされたペプチド構成ペア密度を与える。この密度は、抗体と結合するためのタンパク質由来の大多数の起こり得るペプチドペアまたは結合体をスクリーニングすることを可能にする。たとえば、20,000〜100,000個の構成が1000cm2に形成される好適な実施形態において、通常この表面は、1〜10μgの抗体/mLを含有する100mLの抗体溶液とELISAにおいて結合するためにスクリーニングされる。たとえば、間接または直接の蛍光検出は、抗体結合構成を割り当てる。共焦点走査検出方法による直接蛍光検出は、たとえばナノリットル未満の範囲内の小滴ペプチド溶液によって産生されたスポット上での抗体検出を可能にし、さらに高い構成密度を実現可能にする。もちろん、核酸ライブラリは、同様の方法で形成され得る。
【0048】
さらに、本発明は、本発明に従ったライブラリを含む固体支持体を提供し、この固体支持体は結合分子に対する潜在的に不連続または配座結合部位またはエピトープの提示を可能にし、この固体支持体は、複数の検定物を備え、ペア、3つ組またはそれ以上の複数のこの検定物または結合体はそれぞれ、結合部位またはエピトープのあり得る表示であり、かつたとえば、固相に共有結合して連結された少なくとも1つの第1のペプチドまたはヌクレオチドをたとえば含む。
【0049】
好適な実施形態において、固体支持体は、少なくとも、1cm2あたり10個、20個もしくは50個、またはさらに100個、200個もしくは最大500個もしくは1000個の密度のスポットまたはドット(たとえば推定結合部位、検定物、またはセグメントのペア)を含み、好ましくは、このスポットまたはドットは、位置的にまたは空間的にアドレス可能である。
【0050】
さらに、本発明は、結合分子と相互作用することができる不連続結合部位をスクリーニング、すなわち検定、同定、特徴付け、または検出する方法を提供し、この方法は、たとえば抗体、Fc尾部(Fc-tail)または検出タグを含有する可溶性レセプタ、細胞上レセプタ、ビオチン化分子または蛍光分子のような結合分子によって本発明に提供されたライブラリをスクリーニングすることを含む。
【0051】
代替のセグメントとしては、たとえば、炭水化物、非自然アミノ酸、PNA、DNA、脂質、ペプチド結合模倣を含有する分子を含み得るであろう。特に、本発明は、結合分子と相互作用することができる不連続結合部位をスクリーニングするための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの検定物によって本発明に従ったライブラリをスクリーニングすること、およびライブラリのメンバーと検定物との間の結合を検出することを含む。好適な実施形態において、この結合は、たとえばELISA技術によって、免疫学的に検出される。
【0052】
ライブラリの特定の検定物(結合体とも称する。)との結合を検出することによって、本発明は、前記メンバーまたは結合体を提供し、合成分子は、本発明に従った方法によって同定可能なもしくは同定された、または取得可能なもしくは取得された不連続結合部位を含むこの結合体もしくは検定物、またはペアもしくはそれ以上の複数の(ループ)セグメントを含む。したがって、本発明は、本発明に従ったライブラリの使用、本発明に従った1つまたはそれ以上の結合体または検定物を備えた固体支持体もしくは固相またはアレイ表面の使用、または不連続結合部位もしくはこの部位と結合することができる結合分子を含む合成分子を同定もしくは取得する本発明に従った方法の使用を提供する。不連続結合部位が供給されるので、このような合成分子は、たとえばホルモン、ペプチド、薬剤もしくは抗原、エフェクタ分子、アゴニスト、アンタゴニストまたは別のレセプタ分子と標準的に相互作用または結合するレセプタ分子、基質と標準的に結合する酵素、抗体分子、核酸、タンパク質、要するに生体分子と相互作用または結合するための結合分子を発見するために、かつ結合分子に対する結合を達成し、かつ/またはこの結合に影響を与えるために、in vitroまたはin vivoで好都合に使用されることができる。本発明はさらに、本発明を限定することなく以下の詳細な記載において説明される。
【0053】
(ペプチド構成の合成)
ポリプロピレンもしくはポリエチレン、またはその他の適した材料の支持体を、たとえばポリアクリル酸と移植した。例として、CuSO4を含有する6%のアクリル酸水溶液中のポリプロピレン支持体を、12kGyの照射量でガンマ放射線で照射した。カルボン酸基を含有するこの移植された固体支持体を、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)とともにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いるt−ブチルオキシカルボニル−ヘキサメチレンジアミン(Boc−HMDA)の結合と、その後のトリフルオロ酢酸を用いるこのBoc基の開裂とを介して、アミノ基と官能化した。その後、この表面を、標準Fmoc化学反応を用いて、Cysアミノ酸(好適には種々に保護されたCysの混合)と官能化する。
【0054】
種々に保護されたCys基の例は、Cys(Trt)およびCys(mmt)である。FMOCの除去後、アミノ基をアセチル化する。側鎖脱保護は、記載されたように行われ得る。標準Fmocペプチド合成化学反応を、アミノ官能化された固体支持体にペプチド(セグメント)を連結するために用いた。最終アミノ酸のFmoc基の開裂および洗浄後、ブロモ酢酸を、DCCまたはDCC/HOBtを用いて結合した。第2のブロモ酢酸は(同じステップで)、たとえばリシン(Lys)残基がペプチド中に存在する場合、この表面に結合され得る。このLysの側鎖保護化学反応(FMOC−Lys(MTT)−OHを用いる。)は、他のアミノ酸が保護されたままにされる一方で、Lys側鎖のアミノ基のみが(ジクロロメタン中の1%のトリフルオロ酢酸によって)振動されることを可能にする。その後、もしDCCのみが用いられるならば、ペプチドはチオール反応性ブロモアセトアミド基を含有し、しかしながら、もしDCC/HOBtがブロモ酢酸を結合するために用いられるならば、ペプチドは本質的にブロモ基を含有せず、セグメント間で同じチオエーテル連結を形成するチオール基と効果的に反応することができる別の反応性基を含有する。固体支持体に結合または合成されたペプチドの次に第2のペプチドを結合または連結した。ブロモ官能化ペプチドは、約pH7〜8の重炭酸ナトリウム緩衝液を含有する水溶液中で、(チオールが存在する場合)固体支持体に結合され得る。ペプチドを、ポリ−ヒドロメチルメタクリル酸塩(poly−HEMA)と移植されたポリエチレンピンにおいて合成した。この移植重合体を、30〜50kGyの照射量で、メタノール/水(80/20または70/30)中の20%のHEMA溶液中でポリエチレンピンのガンマ放射線によって形成した。この官能化支持体は、β−アラニンと、酸性不安定Fmoc−2,4−ジメトキシ−4,−(カルボキシメチルオキシ)−ベンズヒドリルアミン(Rink)リンカーとの結合後、1μmolのペプチド/cm2の合成のために用いられ得る。このペプチドを、標準Fmoc化学反応を用いて合成し、このペプチドを、スカベンジャーとともにトリフルオロ酢酸を用いて合成樹脂から脱保護かつ開裂した。約1mg/mLの濃度でシステイン残基を含有するこの開裂されたペプチドを、約pH7〜8で水/重炭酸ナトリウム緩衝液中で上述の固体支持体と反応させ、したがって固体支持体にチオエーテルボンドを介してそれぞれ少なくとも1度共有結合された2個のペプチドの部分的に保護された構成を形成する。上述の構成を、トリフルオロ酢酸/スカベンジャーの組合せを用いて標準的な手順に続いて脱保護した。固体支持体におけるこの脱保護された構成を、ドデシル硫酸ナトリウムおよびβ−メルカプトエタノールを含有する、開裂した緩衝液と超音波洗浄を用いて広範囲に洗浄し、かつELISAにおいて直接に用いた。開裂した緩衝液中のその後の洗浄は、ELISAにおける抗体に対する反復検定を可能にする。
【0055】
これらの方法に従って、たとえばN末端ブロモアセチル化された第2セグメントに隣接してC末端付加システイン残基を介して結合されたドデカペプチドからなる構成のライブラリは、たとえば単一アミノ酸残基のステップによって、タンパク質配列を走査することを可能にする。ブロモアセトアミドペプチドを、上述したように3μウェル中で官能化されたポリエチレン/ポリアクリル酸固体支持体に供給結合した。このシステイン含有配列を、上述したように官能化されたポリエチレンピンにおいて合成し、かつこれから開裂する。固体支持体の表面において、ペプチドを上述したように合成する。このペプチド官能化支持体において、遊離チオール基を含有する第2のペプチドセグメントを、マイクロドージング装置および圧電性自動ピペット(Auto Drop−Micropipette AD−K−501)(マイクロドロップ社(microdrop Gesellschaft fur
Mikrodosier Systeme GmbH.))を用いて、圧電性ドロップオンデマンド技術を用いてスポットした。代替的に、スポッティングまたはグリッディングを、小型電磁弁(INKX0502600A;the Ice Company)、または硬化された精密なグラウンドグリッディングピン(ground gridding pin)(ジェノミックソリューションズ社(Genomic Solutions)、直径0.4、0.6、0.8または1.5mm)を用いて行った。
【0056】
結合されていないペプチドを除去するためのその後の構成脱保護および広範囲洗浄は、スポット領域において結合体構成を生じさせた。ナノリットル範囲のペプチド溶液小滴によって産生されたペプチド構成は、検出用抗体と十分に結合し、この場合は間接蛍光検出を用いる。0.25nL〜50nLによって産生されたスポットは、1mm2よりも小さい。したがって、この状況において、結合体密度は、1cm2あたり100〜1000スポットになることができ、より小さい設備を用いると、密度はさらに高くなり得る。
【0057】
要するに、チオール官能を、アミノ官能化固体支持体において導入する。これは、たとえばイミノチオランとアミノ基との直接反応によって、またはFmoc−Cys(Trt)−OHの結合によって、続いて、ピペリジンと、アセチル化と、TFA/スカベンジャー混合を用いるトリチル脱保護とを用いるFmoc開裂によって、形成される。このチオール官能化固体支持体は、保護されたシステイン残基を含有する、たとえば、ブロモアセトアミドペプチドと反応されることができる。第1のペプチドの結合後、システインは、たとえばTFA/スカベンジャー混合を用いて脱保護され得る。まだ使用されていない遊離チオール基は、再び保護されたシステインを含有する、第2のブロモアセトアミドペプチドを結合するために用いられ得る。この手順は、セグメント構成を形成するために反復され得る。数タイプの走査は、この複数セグメント走査と組合せて用いられ得る。
【0058】
使用例
タンパク質およびペプチドは結合分子のいずれのタイプ、たとえば、抗体、Fc−尾部または検出タグを含有する可溶性レセプタ、ビオチン化分子または蛍光分子のような生体分子を用いて、スクリーニングされ得る。代替のセグメントとしては、たとえば炭水化物、非自然アミノ酸、PNA、DNA、脂質、ペプチド結合模倣を含有する分子になり得る。
【0059】
TSH例
TSHまたはTSHRのような大きいタンパク質の不連続結合部位の合成模倣の設計および合成が目下望まれる。このような目的で、タンパク質のテンプレート基礎模倣は基本研究のための強力な新しいツールを提供した。ここに提供される技術は、不連続結合部位のマッピング、合成テンプレートにこれらを結合すること、および構造的かつ機能的特徴を詳細に観測することを可能にする。
【0060】
この方法の中枢は、アレイ形式における100,000個の合成ペプチドの合成および検定の可能性である。これは、ここに提供される技術によって可能である。これらの技術は、ペプチドアレイ合成と、テンプレート化学反応における新しい方法論を含む。化学反応を通じて、全種類の合成基はこれらのテンプレート上の2つまたはそれ以上の異なる位置で結合され、不連続結合部位の復元と模倣の合成とを可能にする。大きいタンパク質間の不連続結合部位のマッピングを可能にする方法の発達は、主要な研究目標である。様々な戦略が適度の成功によって採用された。今日の最も成功した技術は、X線結晶学、組合せライブラリおよび質量分光分析学である。ペプチドアレイに関係する新しい方法を提供する。ペプチドアレイ技術は、結合に関係する短い線状ペプチドを同定するために長らく使用されてきた。所定のタンパク質の完全重複する線状ペプチド(12〜15mer)は、プラスチックまたは紙のような固体支持体において合成され、かつ目標タンパク質と、最も多くは抗体とインキュベーションされる。認識されるこれらのペプチドは、いわゆる線状エピトープである。不連続エピトープは、検出され得ないであろう。それにもかかわらず、早期のペプチドアレイ技術は、合成方法で不連続エピトープを同定する方法の基盤を据えた。これは、いずれの配向においても、アレイ表面上でタンパク質のあらゆるの部分(たとえば15アミノ酸長のペプチド)を、タンパク質の別のあらゆるの部分(たとえば15アミノ酸長のペプチド)に隣接して結合することを可能にした。ペプチドのすべての可能性ある組合せを有するこれらのアレイは、不連続エピトープの正確な定義を可能にすることを、我々の元で示した(図2)。グレーブス病および橋本病に関係する不連続エピトープに重点をおくが、その他のものも手の届くところにある。甲状腺疾患は、甲状腺に対する自己免疫疾患である。抗体は、甲状腺上の甲状腺刺激ホルモンレセプタにおいて不連続エピトープと結合する。甲状腺の亢進(グレーブス)または閉塞(橋本)は、深刻な健康問題を招く。両方の抗体結合領域およびTSH結合領域のマッピングは、両疾患の理解に多大に寄与する。その後、これらの不連続エピトープのhTSHおよびhTSHR模倣は、グレーブス病および橋本病の早期発見を可能にする新しい診断ツールに用いられるであろう。ヒト濾胞刺激ホルモン(hFSH)およびそのレセプタ(hFSHR)の研究は不連続結合部位を明らかにした。hFSHの様々な領域を覆うビオチン化40merは、hFSHRの線状配列を覆う完全重複30merにおいて、ここで提供されるようなペプチドアレイ結合アッセイで検定された。
【0061】
40merの1つは、レセプタ領域に結合した(図1)。これらの結果に基づいて、hFSH/hFSHR結合と構造的に酷似しているホルモンレセプタ結合、hTSH/hSHR結合hTSHRにおける同様の研究は、グレーブス病およびまたは橋本病のための診断ツールとして用いられ得るペプチドを提供する。グレーブス病または橋本病の患者は、それぞれ甲状腺機能亢進または甲状腺機能低下を招く自己甲状腺レセプタに対して抗体を発達させる。抗甲状腺刺激物質レセプタ抗体の集団は異種であるけれども、大部分の橋本病の抗体がレセプタのC末端を結合するのに対して、大部分のグレーブス病の抗体はレセプタのN末端に結合する。我々の研究において、グレーブスおよび橋本の血清のパネルは、a)ペプチドアレイにおける、hTSHレセプタを覆う重複する30merの組に対する結合に関して、b)hTSHレセプタに対する、ビオチン化40merのTSHペプチドの結合が、グレーブス病および橋本病の血清と競合された競合的アッセイにおいて、検定される。この方法で、不連続結合部位をマッピングする。不連続結合部位のマッピング後、合成模倣は、設計かつ合成される。この種類の合成模倣の合成に関する第一の戦略は、不連続エピトープが復元され得るテンプレートの合成である。テンプレートの使用は、不連続エピトープの様々な部分を追加する可能性を助長する。この方法で、特定の結合情報は、ペプチド構成の高いフレキシビリティによってほとんど失われないであろう。
【0062】
テンプレート構造に対するペプチドの付着は、自然の不連続エピトープそっくりに模倣する。最近、この分野は相当進歩した。認識フラグメントを結合する枠組みとして安定したテンプレートを用いることによって、ペプチドは所望の活性を得ることができる。
【0063】
(さらなる実施例)
使用例
ヒト腫瘍壊死因子(hTNF)における不連続エピトープのマッピング(図10〜15)
hTNFに対するモノクローナル抗体mAb−210を、線状およびループペプチドにおいて検定した(mAb−210はR&Dシステムズ社(R&D Systems)から購入した。MAB210、クローン1825.12、ITKダイアグノスティックスオイトホルン(ITK Diagnostics Uithoorn)、オランダ)。第一に、これを、hTNFを覆う全体重複線状12merにおいて、ペプスキャンで検定した。これは、配列IKSPCQRETPEGの周りでより低いピークを生じさせた(図10)。第二に、これを、二重15merループ・ループペプチドにおいてペプスキャンマトリクススキャンで検定した(図3および図4において記載され、かつ図11〜12を通じて説明される。)。2つのループ領域を区別した。ペプチド配列GQGCPSTHVLLT(スクエア65から67)およびSAIKSPCQRE(スクエア92から96)(図13,14)。さらに、様々なスクエアにおいて、ループペプチドスポットを、配列GQGCPSTHVLLT(スポット65−67)、SAIKSPCQRE(スポット92−96)およびKGDRLSAEINR(スポット126−129)に対応して同定した(図14)。hTNFの三次元モデルにおける図15に表されたこれらの3つの領域は、hTNF分子の片側に位置し、かつ1つの大きい不連続エピトープ領域を形成する。
【0064】
抗体(結合体)の合成模倣の同定(図16)
6つの異なる抗体から、HCDR3領域(3つの抗体重鎖の相補性決定領域)を合成ループペプチドとして合成した。例として、4つの異なる抗リゾチーム抗体および2つの異なる抗絨毛性ゴナドトロピン抗体を選択し、1fdl.pdb(D1.3),1mlb.pdb(D44.1),3hfl.pdb(HyHel−5),3hfm.pdb(HyHel−10)は全て抗リゾチーム、および1qfw.pdb、ならびに2つの抗ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、1つは抗α、および1つは抗βである。これらの合成ループペプチドを、上述したようなミニカードに結合した。これらの3次元コーディネイト(pdbファイル)は、www.rcsb.org(RCSB,Research Collaboratory for
Structural Bioinformatics)におけるタンパク質データバンク(Protein Data Bank)(PDB)から引用された(Berman et al., 2000, The Protein Data Bank. Nucleic
Acids Research, 28pp.235-242; Bernstein et al., 1977, The protein data bank, 高分子構造に関するコンピュータを利用した永久保存用ファイル(A computer-based
archival file for macromolecular structures) J. Mol. Biol. 112:535-542)。
【0065】
各6個のペプチドとともに、27個の異なる他のループペプチドを図3Bに記載されたようなミニカードに結合した。したがって、グループ1は、LCDR1、LCDR2またはLCDR3を覆う27個の異なるループの隣で結合された1fdl.pdbのHCDR3のループであり、グループ2は、LCDR1、LCDR2またはLCDR3など(LCDR、3つの抗体軽鎖の相補性決定領域)を覆う27個の異なるループに隣接して結合された1mlb.pdbのループであった。27個の異なるループペプチドは、上述の同一抗体(1fdl.pdb、1mlb.pdb、3hfl.pdb、3hfm.pdbまたは1qfw.pbd)のLCDR1、LCDR2またはLCDR3を表した。
【0066】
この結果は、図16に示される(27個のループ・ループ結合ペプチドを有する6グループ)。最も高い結合活性を有する6個のループ・ループ結合ペプチドは、+LHGNYDFDGZ+SESVDSYGNSFMQZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)(図16参照)、+LHGNYDFDGZ+RASESVDSYGNSFMQZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)、+LHGNYDFDGZ+RASESVDSYGNSFZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ。)、+LHGNYDFDGZ+ASESVDSYGNSFMZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)、+LHGNYDFDGZ+ASESVDSYGNSFZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)および+LHGNYDFDGZ+LLVYYTTTLADGZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)であった。
【0067】
最も高い結合活性を有するループ・ループペプチドペア+LHGNYDFDGZ+SESVDSYGNSFMQZ(それぞれ3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)は、矢印で示される(図16)。ループ・ループペプチドペアは、抗リゾチーム抗体および抗ヒト絨毛性ゴナドトロピン抗体に由来する。図16に示された結果は、合成CDRの特定ペアがその他のペア、特にグループCに比べてリゾチームに対するより好ましい結合を示すことを示す。したがって、(異なる)抗体の異なるCDRを表す合成ループのループ・ループの組合せは、たとえば抗リゾチーム抗体である原抗体に由来する必要はなしに、抗体を模倣する鉛合成化合物を同定するために用いられることができる。
【0068】
不連続エピトープの二重ループ模倣の構成(図17)
不連続エピトープの2つの個別部分を構成する2個のペプチドを、図12の凡例において上述されたミニカードの表面に結合した(図3Aおよび図4(例4)参照)。cys(mmt)を、単独で、またはcys(trt)および/もしくはval(mmt)(cysおよびvalは1:1、1:3または1:9などの割合)と組合せて結合した。この方法で、1個のペプチドを結合し(配列AおよびC)、またはシステイン間でバリンを増加した2個のペプチドを結合した(配列BおよびD)(図4B(例4),図17参照)。これらの4つの構成を、2つの異なる抗体とともにインキュベーションした。
【0069】
抗体1は、個別のループペプチドが単一ループとして結合されると、ループペプチド2のみを認識した。抗体2は、個別のループペプチドが単一ループとして結合されると、ループペプチド1のみを認識した。これら2個のループペプチドを組合せると、抗体1は、第一に結合されたようなペプチド1とより高い結合活性を示した。これら2個のループペプチドを組合せると、抗体2はより高い結合活性を示さなかった。
【0070】
図17に示された結果は、不連続エピトープの合成ループの特定部分が特定の抗体に対する向上した結合を示すことを示す。したがって、不連続エピトープの部分である合成ループの組合せは、不連続エピトープを模倣する鉛合成化合物を同定するために用いられ得る。
【0071】
本発明は、以下の実施の形態が可能である。
(1)結合部位の同定または検出のための分子ライブラリの作成方法であって、ライブラリに複数の検定物を備えることを含み、さらにまた、固相において少なくとも第1のセグメントを極めて近接して第2のセグメントにスポットすることによって、検定物のうちの少なくとも1つを産生することをさらに含むことを特徴とする方法。
【0072】
(13)前記方法によって同定可能な、または取得可能な結合部位を含むことを特徴とする合成分子。
【0073】
(14)前記方法によって同定可能な、または取得可能な結合部位を含むことを特徴とする結合分子。
【0074】
(15)結合部位は不連続結合部位を含むことを特徴とする結合分子。
【0075】
(18)結合分子と相互作用する、または結合分子との結合をもたらすための結合分子の使用。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】異なる条件のもとで臭素の結合に用いられ得る6つの異なるシステイン。
【図2】(暗色によるスポッティング) 両側連結の有利な効果およびループ形成を示す2個の異なるペプチドの分析。左側では、ペプチドはアミノ末端Brを有する。右側では、ペプチドはアミノ末端BrおよびC末端リシンBr(図4Bの凡例中に記載されたように合成された。)を有する。ミニウェル設定で検定を実行した(各ウェル3μL)。表面は、チオール基(−SH基)と官能化される。ペプチドを、ペプチドの臭素(Br)基を用いる表面に結合した。ペプチドの異なる濃度を、表面に結合するために用いた。2組のペプチドを用い、一方は、1つのBr基を有し、他方(ペプチドのC末端における余剰リシン+Br−アセチル半分による前のペプチドのみ異なる。)は2つのBr基を有する。結合を、ELISA設定で異なった抗体濃度を用いて決定した。
【図3A】固体支持体への結合後のセグメント近接性。左側において、2オングストロームの最短距離で、15オングストロームのリンカーを結合した。セグメントをこれらのリンカーに結合する。リンカーのフレキシビリティは、2つのセグメントの末端を0〜30オングストロームの距離内で移動可能とする。右側において、リンカー間距離は2〜50オングストロームまたはそれ以上に変化し得る。例として、9オングストロームを示す。これは2つのセグメントの末端を0〜40オングストロームの距離内で移動可能とする。
【図3B】2つのセグメントがポリカーボン重合体表面にループとしてどのように連結されるかの概略図である。少なくともCDR由来の結合体の場合において、ループの頂点間の好適な距離は、抗体におけるCDRと類似する0〜30オングストロームである。
【図4A】2つのセグメントが(ポリカーボン)−重合体表面にどのように結合され得るかの概略図である。グラフは4つの例を示す。例1において、2つの線状セグメントを結合する。例2において、2つのループセグメントを結合する。例3において、2つのセグメントをループとして結合する。例4において、2つのセグメントをループとして結合する。余剰のスペーシングビルディングブロック(たとえばフェニルアラニンアミノ酸)によって、2つはループを拡張する。(ポリカーボン)−表面において、2タイプの保護されたシステイン(cys(trt)およびcys(mmt))とたとえば1つのスペーシングビルディングブロックとを結合する。cys(trt)を保護したままにする一方で、cys(mmt)を1%のTFAで脱保護する。第1のセグメントを、この脱保護されたcys(mmt)に結合する。その後、第2のセグメントを95%のTFAで脱保護する。その後、第2のセグメントを、ちょうど脱保護されたところのcys(trt)に結合する。
【図4B】2つのセグメントが重合体表面にそれ自身結合される環状テンプレートにどのように結合されるかの概略図である。この環状テンプレートは、環状のフレキシブルなペプチドである。この環状ペプチドは、4つのリシン(mmt)、2つのシステイン(trt)および2つのシステイン(butyl)を含有する。このペプチドを1%のTFAに感受性のある硫黄を介して合成樹脂に結合する。アミノ末端において、臭素を前に記載したように付着する。これはリシンの脱保護および合成樹脂からペプチドの脱結合を生じさせる。システインは保護されたままである。pHを8に上げた後、ペプチドのN末端およびC末端をSおよびBrを通って連結する。その後、脱保護したリシンにおける−NH2をBrに結合する。この結果生じる環状ペプチドは、4つのBrと、さらに4つの保護したシステインを有し、Brを介してリンカーに結合される。リンカー・システインに結合された環状テンプレートに対して、2つのペプチドセグメントを結合する。第一に2つのシステイン(trt)を95%のTFAで脱保護する。その後、第1のセグメントを結合する。第2に、2つのcys(butyl)をNaBH4で脱保護する。その後、第2のセグメントを結合する。
【図4C】2つのセグメントが重合体表面に結合される2つの他のセグメントにどのように結合され得るかの概略図である。表面上の遊離−SHによって、2つのセグメントをN末端およびC末端Brを介してこの表面に結合する。N末端Brを前に記載したように合成する。C末端Brを図4Bに記載したようにC末端リシンに連結する。両セグメントは、保護されたシステインを含有し、ここにおいて2つの他のセグメントを図4Bに記載したように結合する。
【図5】2つのセグメントを有するマトリクススキャンの概略図である。重合体表面において、cys(mmt)およびcys(trt)の混合を結合する。1%のTFAの後、cys(mmt)を脱保護する。その後、各スクエアにおいて、1つのペプチドを1つまたは2つの末端Brを介して結合する。したがって、ペプチド1をスクエア1に、ペプチド2をスクエア2になど、ペプチド100をスクエア100においてまで、結合する。その後、cys(trt)を95%のTFAで脱保護する。その後、各スクエアにおいて100個の異なるペプチドをスポットする。したがって、ペプチド1〜100をスクエア1に、ペプチド1〜100をスクエア2になど、ペプチド1〜100をスクエア100においてまで、スポットする。
【図6】ビオチン化合成40merhFSHペプチド、ビオチン−EKEEARFCISINTTWAAGYAYTRDLVYKDPARPKIQKTAT−CONH2と、hFSHRの線状配列を覆う完全重複30merとの結合アッセイ。30merペプチドを記載したようにスポットし、40merペプチドを標準FMOC化学反応を用いて合成した。様々な30merペプチドを1μg/mLのhFSHペプチドとともにインキュベーションした。洗浄後、ペプチドをストレプトアビジン−ペルオキシダーゼとともにインキュベーションし、その後の洗浄後、ペルオキシダーゼの基質およびH2O2とインキュベーションした。
【図7】hTSHRおよびhTSHにおける不連続結合部位の合成模倣の発生の概略図である。甲状腺細胞において、hTSHレセプタはhTSHと結合する。グレーブスおよび橋本病患者からの自己免疫抗体はまた、hTSHレセプタと結合する。hTSHの完全重複30merのスクリーニングを通して、hTSHRに関する不連続結合部位のセグメントを同定する(FSHに関して記載したように。図6凡例参照。)。hTSHRの完全重複30merのスクリーニングを通して、グレーブス病および橋本病の抗体に関する不連続結合部位のセグメントを同定する。合成テンプレートの造形および用法を通して、個別のセグメントを1つの不連続合成模倣と組合せる。
【図8】不連続結合部位または結合体の合成模倣を含むアレイの概略図である。結合体は、固体表面において(または代替的に、個別の分子足場物質において)多様性のある空間的にアドレス可能な結合体を含有するアレイを形成することによって、選択かつ改良される。関心の目標物と結合する結合体をスクリーニングするために、このアレイを、目標物とともにインキュベーションし得る。鉛結合体の複数の変異体から構成される追加のアレイを形成することによって、たとえば配列混合によって、鉛結合体を改良し得る。もし所望の特異性および/または類似性が達成されるならば、結合体は足場物質において産生され、大量に産生かつ使用される。
【図9】CDR配列由来の不連続結合部位または結合体の合成模倣の発生の概略図である。結合体は固相もしくはアレイ表面(好ましくは(ポリカーボン)−重合体表面)、または予め定められた足場物質もしくはテンプレートにおいて位置決めることによって構成される。結合体は、抗体の相補性決定領域(CDR)、または好ましくは高い類似性を有し、その他の分子と結合する事で知られている他のいずれのタンパク質モチーフに由来し得る。
【図10】モノクローナル抗体210(R&Dシステムズ社、MAB210、クローン1825.12、ITKダイアゴノスティックオイトホルン、オランダ)による、hTNFの線状配列を覆う完全オーバーラップ合成12merにおける標準線状ペプスキャン。配列IKSPCQRETPEGによる小さいピークを同定した。y軸はccdカメラ装置を用いて得られた光学濃度値(OD)である。Rampoウサギ抗マウスペルオキシダーゼ(DAKO)。
【図11】ループ・ループ15merマトリクススキャンのために合成されたペプチドの部分的リスト。ヒト腫瘍壊死因子(hTNF)の線状配列を覆う完全オーバーラップ15merループペプチドを合成し、すなわちトータルで145個のhTNFループペプチドであった。Zは、Cys−butylである。すべてのペプチドのアミノ末端はブロモ基(+)を含有する。
【図12】ループ・ループ15merマトリクススキャンの構成。2つのループセグメントによるマトリクススキャンの概略図である。重合体表面において、cys(mmt)およびcys(trt)の混合を結合する。1%のTFA後、cys(mmt)を脱保護する。その後、各スクエアにおいて、1つのペプチドをN末端ブロモ基(+)を介して結合する。したがって、ペプチド1をスクエア1に、ペプチド2をスクエア2になど、ペプチド145をスクエア145においてまで結合する。その後、cys(trt)を95%のTFAで脱保護する。その後、各スクエアにおいて145個の異なるペプチドを同時にスポットする。したがって、ペプチド1〜145をスクエア1に、ペプチド1〜145をスクエア2になど、ペプチド1〜145をスクエア145においてまで、スポットする。いくらかの余りのスクエアを、対照(線状エピトープ)用に用いた。
【図13】抗hTNFmAb210(10μg/mL)によるループ・ループ15merマトリクススキャンの結果。145の全スクエアで得られた結果を示す。スクエア66、67および92〜96を明確に区別している(第一に結合されたループペプチド)。これらおよびその他のスクエアに加えて、スポットも区別する(スポットは第2のループペプチドに隣接して結合された第1のペプチドを表す。)。
【0077】
スポットにおける同定された配列
y軸は任意単位である。
【0078】
【図14】スクエア65および127の詳細によってmAb210(10μg/mL)によるループ・ループ15merマトリクススキャンの結果。ループペプチド65とループペプチド94,95との組合せ、ループペプチド65と126〜127との組合せ、ループペプチド127とループペプチド65〜77との組合せ、およびループペプチド127とループペプチド94〜96との組合せを区別している。y軸は任意単位である。
【図15】mAb−210(10μg/mL)による同定された結合ループ・ループペプチドの3次元図である。同定された3つの領域を示している(ペプチド65〜69、94〜96および126〜127)。GQGCPSTHVLLTHTIS(VLLTを区別している。)、SAIKSPCQRE(KSPCを区別している。)、KGDRLSAEINR(SAを区別している。)。
【図16】リゾチームビオチンによる(100μg/mL、3つで)、抗体のループ・ループCDR領域のループ・ループ15merマトリクススキャンの結果。1μg/mLのリゾチームビオチンを用いて、結合は観測されない(図示しない)。検定間におけるストレプトアビジン−ペルオキシダーゼのみの対照はマイナスであった(図示しない)。
【0079】
ペプチドA,B,C,D,EおよびF:
【0080】
(1fdl.pdb、1mlb.pdb、3hfl.pdbおよび3hfm.pdbはリゾチームと結合する抗体である。1qfw.pdbはヒト絨毛性ゴナドトロピンを結合する2つの抗体である。)すべてのペプチドは、アミノ末端ブロモ基(+)とカルボキシ末端リシン−mmt(Z)を有する。
【0081】
ペプチド1〜27
【0082】
(1fdl.pdb、1mlb.pdb、3hfl.pdbおよび3hfm.pdbはリゾチームと結合する抗体である。1qfw.pdbはヒト絨毛性ゴナドトロピンを結合する2つの抗体である。)すべてのペプチドは、アミノ末端ブロモ基(+)とカルボキシ末端リシン−mmt(Z)を有する。
最も高い結合活性を有するループ・ループペプチドペア、+LHGNYDFDGZ+SESVDSYGNSFMQZ(3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)を矢印で示している。
【図17】上述のようなペプスキャンミニカードに結合された単一または2つのペプチドループにおける2つの異なる抗体によるペプスキャンエリザの結果。スクエアAへの結合:ループペプチド1、スクエアBへの結合:ループペプチド2が続く第1のループペプチド1、スクエアCへの結合:ループペプチド2、スクエアDへの結合:ループペプチド1が続く第1のループペプチド2。ループペプチド1:+KSYNRVTVMGGFKVEZ−conh2;ループペプチド2:+LQENPFFSQPGAPILZ−conh2。y軸はccdカメラ装置を用いて得られる光学濃度値(OD)である。両ループペプチドは、ヒト濾胞刺激ホルモン(hFSH)に由来する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合分子と対応または相互作用する不連続もしくは配座結合部位または不連続もしくは配座エピトープの分子認識または検出の分野に関し、特に、タンパク質・タンパク質、またはタンパク質・リガンドの相互作用に関する。
【背景技術】
【0002】
結合分子間、一般に生体分子と、これらに対応するリガンドとの相互作用は、生命の中心をなす。細胞は、ホルモン、ペプチド、薬剤、抗原、エフェクタ分子、または別のレセプタ分子と相互に作用する、または結合するレセプタ分子、基質と結合する酵素、抗原と結合する抗体分子、タンパク質と結合する核酸などをしばしば担持または含有する。「相互に作用する、または結合する」とは、結合分子とリガンドとが、分子力の範囲内で相互に接近し、それぞれ他方の特性に影響を及ぼし得ることを意味する。この接近は、程度が次第に増加する親密性および相互作用を含む、分子認識の種々の段階を通じて、結合分子およびそのリガンドを取り込む。
【0003】
結合分子は問題のリガンドの認識を可能にする区別可能な結合部位を含むので、結合分子は結合能力を有する。次に、リガンドは、対応する結合部位を有し、2つの結合部位が(本質的に空間的な)相補性によって相互作用することができる場合、2つの分子は結合し得る。言うまでもなく、分子は3次元構造を有し、結合部位は3次元性であり、しばしば一方の結合部位の1つまたはそれ以上の表面突起または隆起が、他方のくぼみまたは凹部に対応し、誘導適合変種においては、3次元の鍵と鍵穴の配列である。
【0004】
このような隆起は、問題の分子の単一のループを含むこともあり、それは結合部位を本質的に形成するこの隆起のみである。この場合、しばしばこれらの結合部位は、線状または連続結合部位と称され、問題の分子の単なる線状部分は、本質的に結合相互作用に応答可能である。この専門用語は、たとえば抗体抗原反応について述べるために広く使用され、この抗原はタンパク質配列の一部、線状ペプチドを含む。それ以上にしばしば、連続的に結合されたアミノ酸のループによって抗原分子の結合部位(エピトープ)を形成する、線状または連続エピトープについて述べられる。しかしながら、類似の連続結合部位(ここでエピトープと結合部位とは交互に使用される。)は、レセプタ・抗原相互作用(たとえばT細胞レセプタ)、レセプタ・リガンド相互作用(たとえばホルモンレセプタ、およびアゴニストまたはアンタゴニスト)、レセプタ・サイトカイン相互作用、またはたとえば酵素・基質もしくは酵素・薬剤相互作用などによって発見され、これによって分子の線状部分が結合部位と認識される。
【0005】
しかしながら、さらにしばしば、このような突起と凹部とは問題の分子の様々な区別可能な部分を含み、これらは結合部位を本質的に形成する複合部分である。一般に、このような問題の分子の区別可能な部分を含む結合部位は、不連続もしくは配座結合部位、または不連続もしくは配座エピトープと称される。たとえば、一次構造(タンパク質分子のアミノ酸配列)、二次および三次構造(αヘリックスまたはβシートへの分子の保持、およびその全体形状)、ときには四次構造(他のタンパク質分子との相互作用)をとるタンパク質上に存在する結合部位は、一次構造では遠く離れる一方で、この結合部位ではともに接近して保持される、隆起または凹部のアミノ酸または短いペプチド配列を、本質的に含み得る。
【0006】
結合分子およびこれらのリガンドが生命において中心的役割を果たしているために、結合部位の性質または特徴の検定または同定に関心が拡大している。特に、プロテオミクスのようなバイオテクノロジー分野の急速な発達は、ますます多くの結合分子とこれらに対応するリガンドの同定を近い将来にもたらすであろう。タンパク質・タンパク質相互作用、および酵素・基質相互作用(タンパク質酵素のみならず、たとえばRNA触媒に基づいた相互作用も確実に含む。)の検出、ならびに結合分子および対応するリガンドのタンパク質・核酸および核酸・核酸ペアの同定は、これらの分子間の正確な相互作用(結合)部位がどこに存在するか、および特定の相互作用を調節する化合物(アゴニスト、アンタゴニスト、薬剤)をどのようにして発達させるかという点で関心を必ず引起すであろう。
【0007】
たとえば必要なときに結合分子またはリガンドを置換または補完するために、問題の結合分子とリガンドとの間の特定の相互作用の正確な性質に関心があるだけでなく、関係する結合部位またはリガンドを模倣する構造類似体、アゴニスト、アンタゴニストまたはその他の化合物を発見または設計するために、相互作用の近似する特徴を理解することにも関心がある。
【0008】
連続エピトープまたは結合部位の検定または同定のための汎用性がありかつ迅速な方法が知られている。大部分は、核酸検出技術およびこれらを用いる分子ライブラリがなければ、DNA、RNAまたはPNAであろうと、相補的核酸鎖による本質的に連続的な核酸伸長のハイブリッド形成を必然的に伴う。本質的に核酸の性質の不連続結合部位の迅速かつ端的な同定を可能にする方法は、ほとんど注目されなかった。リボソームタンパク質がtRNAに結合する、取り囲むリボソーム結合部位についての理解の欠如のみを考慮して、プロモーター配列における調節部位、DNAおよびRNA間のポリメラーゼとレプリカーゼとの間の相互作用、触媒RNA反応などの多くのこのような部位などが存在するけれども、このような部位に容易にアクセスさせる分子ライブラリは存在しない。
【0009】
ペプチド分野の早期の研究は、タンパク質中の抗原活性のあるアミノ酸配列またはペプチドを検出または決定する方法に関する国際公開公報第84/03564号である。複数の異なるペプチドが、第1のアミノ酸を第2のアミノ酸にペプチド結合で連結することなどによって合成され、かつ検定形式中第2の位置でさらに別の第1のアミノ酸が第2のアミノ酸に連結されるなどした後、合成されたペプチドが問題の結合分子によってそれぞれ検定される、いわゆるペプスキャン(Pepscan)技術を提供するこの研究は、タンパク質またはペプチド配列において重要な、あらゆる連続抗原決定基または連続エピトープの決定を可能にする。広義のペプスキャン技術はまた、様々な性質の結合部位またはリガンドと本質的に同一、類似、または模倣する、(線状ではあるが)ペプチドの検定または同定を提供する(mimotopes, Geyssen at el, Mol. Immunol. 23:709-715, 1986)。
【0010】
ペプスキャン技術は、相対的に小さい努力で問題の結合分子との反応度に関して多数のペプチドを検定することを可能にする、迅速かつ端的な方法で、レセプタ分子、酵素、抗体などと相互作用する線状ペプチド配列の同定を可能にする。ペプスキャン技術によって発達した大規模な検定能力は(たとえば、検定形式の小型化にも起因する。たとえば国際公開公報第93/09872号を参照。)、多様なペプチドをランダムに検定することをさらに可能にして、自動コンビナトリアルケミストリ形式をもたらし、ここで多数の結合分子が、潜在的な連続結合部位またはリガンドを示す合成ペプチドの分子ライブラリとの反応度をパターンで(要求に応じてランダムに)検定され、検定された分子の何万もの組合せのうち、特に関連する分子の迅速な検出を可能にする。
【0011】
しかしながら、結合分子に対する不連続または配座結合部位の検定に関して、ペプスキャン技術と類似する、または同様に多目的な形式は存在しない。ペプスキャン技術によって不連続エピトープを同定する試みは扱い難い。これは、一般的に、既存のペプチドにより多いアミノ酸を連結することによって検定ペプチドの合成を単に拡張することと、こうして形成されたより長いペプチドの一部が、少なくとも2つの区別可能な部分が不連続な方法で示され、かつ結合分子によって認識されるような方法で折り重なるという要求とを満足させない。結合が実際には不連続結合部位を介することを迅速かつ端的な方法で発見する方法がないことよりも、より長い単一のループしか結合に応答可能でないということかもしれない。
【0012】
いくつかの追加の可能性が、結合部位の予備同定された2つの部分を含むように設計された合成ペプチド配列を検定することによって、提供され、各部分は、本質的に線状であり、かつより大きい線状ペプチドの一部である。ここでの早期の研究は、AtassiおよびZablockiによって行われ(J.Biol.Chem 252:8784,1977)、卵白リゾチームの抗原部位の空間的または立体配座的に隣接する(さもなければ配列中で隔たれた)表面残基が、リゾチーム中に存在しないがそれの表面領域を模倣するよう試みる単一のペプチドに、ペプチド結合によって連結されたことを述べる。しかしながら、表面模倣合成と呼ばれる彼らの技術は、研究に基づくタンパク質の3次元構造の詳細な知識と、事前に結合部位を構成する残基の完全な化学的同定と、これらの正確な立体配座の空間的かつ方向的な要件とを要求する。
【0013】
同じ方法で、Dimarchiら(Science 232:339-641, 1986)は、ウイルスコートタンパク質の予備同定された2つの個別のペプチジル領域からなる38〜40アミノ酸長の合成ペプチドを述べる。このペプチドは、ペプチドを生じさせるさらに成長中のペプチドにペプチド結合でその後のアミノ酸を加えることによってありふれたペプチド合成技術(Merrifield et al., Biochemistry 21, 5020, 1982)を用いて合成され、ここで2つのペプチジル領域は、二次構造ターンの表示としておそらく機能するdiprolineスペーサーによって接続され、これによって2部エピトープまたは結合部位を供給する。
【0014】
しかしながら、所望の不連続結合部位を供給するために(この場合においてのみ)関連する2つの部分の配列をすでに事前に知らなければならない場合、このことが、大規模な検定のために単に潜在的な不連続結合部位の全アレイを(望ましくはランダムな方法で)供給する実現可能性を排除することは、明らかである。さらに、上述の戦略の主要な欠点は、なおも線状エピトープ、または不連続エピトープの支配的な結合領域しか、十分に模倣され得ないということである。不連続結合部位のより完全な合成のために、寄与する部分はすべて、高い類似性の結合を達成するように特有の配座において配列されなければならず、したがって、不連続結合部位の単一の各部は、連結されなければならない。
【0015】
15年後、Dimarchi、Reinekeら(Nature Biotechnology, 17:271-275, 1999)は、サイトカイン上の不連続結合部位の合成模倣と、いくらかフレキシブルな、かつ規模の若干大きい検定を可能にするような不連続結合部位を発見する方法とを提供し、ここで、サイトカインの2つの個別領域に由来する位置的にアドレス可能なペプチドコレクションが、連続セルロース膜上に表示され、かつ最良の結合ペプチドを発見する方法で置換された。各領域からの「最良反応体」の選択後、これらは、さらに数周の置換を受ける別の合成ペプチドコレクション(デュオトープ(duotope)と称されるペプチドを含む。)を生じさせるように組合された。
【0016】
この結果、Reinekeらは、デュオトープを含むペプチド鎖の合成を提供するが、このペプチド鎖はペプスキャン技術によって推定構成部分の予備同定後にさらに選択され、したがって、迅速かつ端的な方法での不連続結合部位の検定を未だに可能にしない。
【0017】
しかしながら、前に示したように、結合部位を模倣するタンパク質ドメインまたは小さい分子が、薬剤発見、診断学およびバイオテクノロジーにおいて果たす役割は高まっている。結合部位および模倣に結合する、または自然リガンドの作用に敵対する特定の分子の検索は、多くの研究所において開始された。前に示したように、合成分子ライブラリにおいてこのような構造を発見する試みは、大多数の結合部位の本質的に不連続的な性質と空間的相補性とのために、しばしば失敗する。したがって、結合部位が本質的に不連続である、より多くの場合に関して、これらの部位を同定するための改良された手段および方法が必要とされ、特に、前記部分が所望の不連続結合部位の推定または一時的のみの構成部分として予備同定によって必然的に第一に選択される必要はないが、それ自体多少区別可能な特徴を有する分子であることによってこの部位の一部である可能性のみを保持する不連続結合部位の検定を可能にする手段および方法が必要とされる。
【0018】
本発明は、分子ライブラリを供給する方法を提供し、この方法は、複数の検定物を有する前記ライブラリを供給し、この検定物は、従来行われた検定分子を逐次合成すること、および1個の分子またはこの1個の分子の数個の複製物を単一物としてスポットすることによる代わりに、セグメントスポッティングによって、すなわち、たとえば核酸またはペプチドの少なくとも2つの(二量体、三量体、オリゴマーまたは多量体の)セグメントを、直接または間接にアレイ表面のような固相に対して、極めて近接してスポット、取付けまたは付着することによって、本質的に産生された。理論上、これらのセグメントは、反復的な方法で、1つの単量体(たとえばヌクレオチドまたはアミノ酸)から別の単量体に対して、所望の長さの(本質的に重合体の)分子(セグメント)が得られるまで、相互に極めて近接して逐次合成されることができる。本質的に、既存の核酸ライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸長時に1つのヌクレオチドまたはヌクレオシドを加えることによって、逐次合成される核酸を含み、既存のペプチドライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸張時に1つのアミノ酸を加えることによって、逐次合成されるペプチドを含む。しかしながら、相互に極めて近接して特定のセグメントを合成することによって、これらのセグメントはともに、推定結合部位を表すことができるが、既存のライブラリによっては注目されていない。核酸によって、前記単量体は、周知のヌクレオチドの限定された組から本質的に選択され、ペプチドによって、前記単量体は、アミノ酸の周知の組から本質的に選択される。自然発生の単量体が使用されるだけでなく、ペプチド核酸(PNA)分子のような合成ヌクレオチド、または非自然発生アミノ酸もしくはD−アミノ酸も単量体として通常使用され、これによって本質的に重合体の分子は、自然状態での単量体分子からの重合体の逐次合成に本質的に従う方法を用いて、生成または産生される。本発明に従えば、好適なものは、セグメントが極めて近接して固相に付着される前に、これらのセグメントを合成することであり、これによって、所望の検定物を産生することはより容易であり、推定結合部位は、極めて近接して位置し、かつ固相たとえばアレイ表面に付着される2つまたはそれ以上のセグメントからなる。ここで、極めて近接して、とは、推定結合分子が少なくとも2つの接近してスポットされたセグメントまたはその部分に結合し得るという可能性を示し、かつ結合部位の一般的な分子規模を示すオングストローム単位で定められ、好適には長いリンカーの必要性を未然に防ぎ、相互にたった100オングストロームしか離さずに所望の検定物を形成する2つまたはそれ以上のセグメントを付着することであり、または小さいセグメントが使用される場合、50オングストロームより短い、好ましくは30オングストロームより短い、もしくはさらに15オングストロームより短い間隔が好適であり、一般的に、この間隔が短くなればなるほど、結合部位により好ましく適合する。最短の近接性は1〜2オングストロームであり、これによってこれらのセグメントは、たとえば、重合体において1〜2原子だけ相互に離れた、様々に保護されたチオール基に連結される。さらに、フレキシブルリンカーの長さは、好ましくは10〜100オングストロームであるべきであり、セグメントの好適な長さは約5〜100オングストロームであり、セグメントの頂点間の好適な距離は、0〜30オングストロームになる。
【0019】
たとえば、2つのセグメントは、(ポリカーボン)重合体表面上に、好ましくはループとして、結合され得る。余剰のスペーシングビルディングブロック(たとえばフェニルアラニンアミノ酸)によって、ループを拡張される。(ポリカーボン)表面上に、たとえば2タイプ(図1の適切なタイプも参照。)の保護されたシステイン(たとえば、cys(trt)およびcys(mmt))とたとえば1つのスペーシングビルディングブロックとが連結される。このcys(mmt)は、cys(trt)が保護されたままである一方で、1%のTFAによって脱保護される。第1のセグメントは脱保護されたcys(mmt)に結合される。その後、第2のcys(trt)は95%のTFAによって脱保護される。その後、第2のセグメントは、脱保護されたところのcys(trt)に結合される。望みに応じて、セグメントはまた、適切な化学変化を用いて、ともに連結され得る。
【0020】
さらに、セグメントを前記表面に直接連結する代わりに(連鎖群を介するが)、セグメントは、この表面にそれ自身連結されるテンプレートに第一に連結され得る。好適な実施形態において、このようなテンプレートはたとえばペプチドである。たとえば、2つのセグメントは、それ自身重合体表面に連結される環状テンプレート上に連結され得る。この環状テンプレートは、たとえば環状のフレキシブルなペプチドである。この環状ペプチドは、たとえば、4つのリシン(mmt)、2つのシステイン(trt)および2つのシステイン(butyl)のような、反応性群を含む。このテンプレートは、たとえば、硫黄を介して合成樹脂に結合される。したがって、本発明は、分子ライブラリを提供し、これは、連続結合部位の検出またはスクリーニングにも適しているが、特に、たとえばタンパク質・タンパク質、タンパク質・核酸、および核酸・核酸相互作用のような分子・リガンド相互作用の結合に関し、不連続結合部位の検出またはスクリーニングに特に好ましく適しており、それぞれ不連続結合部位の一部を表し得る少なくとも2つの異なるセグメントは単一物としてスポットされ、本明細書において結合体とも称される、ことによるとまだ知られていない不連続結合部位を一時的に表す。
【0021】
本明細書の範囲内で、結合体という用語は、一般的に、本質的にすべてのペプチドセグメント構成に関して使用され、しかしながら、すべてのペプチドの組合せに関して記載される本技術はまた、核酸の組合せまたはさらに混合された性質の組合せにも当然に使用され得る。結合体は、本質的に、本明細書に記載される本発明に従った方法によって同定または取得可能な結合部位を含む合成分子であり、本質的にランダムペプチドセグメントの組合せであり、これは、抗体のような結合分子として作用する。抗体の場合と同様に、認識は、多少不完全でもよく、たとえば目標物の結合部位は常に最適である必要はない。この結合体は、原則として目標分子のどの部分にも結合し得る。たとえば、あるものは、TNF−アルファの作用を中和するために、TNF−アルファのレセプタ結合部位と特異的に相互作用する小さい分子を発生し得る。さらに、あるものは、まだ明らかでない場所でTNF−アルファと相互作用し、かつその作用を中和する抗体を発生し得る。これは、ときには小さい分子が溶液であり、ときには大きい抗体であることを示す。あいにく、両者は、不都合を有し、小さい分子は大きい認識部位に役立つのは困難または不可能であり、抗体のような大きい分子は、相当容易に発生し得るが、細胞内部で使用されることができず、かつ免疫原性および細胞内部での作用不能のような薬理学上の種々の不都合を有する。
【0022】
結合体の有利な特性は、小さい分子および大きい分子の有利な特性を組合せる。結合体は両者の好都合を共有する。好適な結合体は、たとえばCDRまたはその他の結合ドメインと類似するようにわずかに偏られた、または混ぜられたランダムペプチドセグメントからなる。必要または望みに応じて、CDRは、たとえばそれぞれ1つの生じ得るCDRを表す、6つのセグメントを用いることによって模倣され得るが、2つ、3つまたは4つのセグメントの組合せは、多様性をすでに供給するであろう。このペプチドセグメントは、好ましくは、両側で足場物質または固相に連結される。したがって、結合体は、1つ、2つまたはそれ以上のペプチドセグメントを有する分子から構成される。かなり多様化した結合体ライブラリは、相対的に少数のランダムペプチドセグメントの合成の組合せに基づいて産生され得る。100個の結合体のライブラリは、本願に記載されたような位置を定められたペプチドセグメントアレイを用いて容易に産生される。いずれの所定の分子によってもこのようなライブラリのスクリーニングは、簡単で、速く、かつ端的である。ヒットしたものは、(位置を定められた配列のために)、この結合体から構成されるアミノ酸またはセグメントに直接に翻訳されることができる。1,000,000個の結合体のライブラリは、たとえば、相互に小さいライブラリからの全ペプチドを組合せること、またはより大きい固体支持表面から始めることによって、容易に産生され得る。1,000,000個の結合部位のライブラリは、たとえば、3つのセグメントを含む結合体により小さいライブラリの全ペプチドを組合せることによって、容易に産生され得る。したがって、多様な結合体が、1,000,000個またはそれ以上に多様化するために、少数のランダムペプチド(たとえば10個)および単一の結合体に組合されたペプチドの複数の組合せ(たとえば6個)から始めて産生され得る。さらに、同じ結合部位の多様性は、たとえば1000個のランダムペプチドから始めて、かつ各結合体に2個のペプチドセグメントのみを用いて得られ得る。抗体と同様に、結合体は、「成熟」し得る。ランダム結合体の最初の組によってヒットしたものに基づいて、多数の改良された組合せを含有する(上述の)新たに供されるライブラリが産生され得る。最良のものは、第2に供されるライブラリを用いるなど、追加の周において選択または改良され得る。高い類似性のある結合体は、分子足場物質または固相にペプチドを好ましくは両端で結合するための化学変化によって、各結合体が位置を定められたアレイシステムを用いることによって、さらに適切な小型化によって、かつ/またはデータを分析し、かつその後改良された結合体または結合体の供されるライブラリを設計するための適切なバイオインフォマティクスによって、発生される。
【0023】
2つまたはそれ以上の異なるセグメントはもちろん、二量体配列、三量体配列、またはオリゴマー配列のいずれの組からも、たとえば二量体ヌクレオチド、三量体ヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、または二量体ペプチド、三量体ペプチドもしくはオリゴペプチドから、ランダムにそれぞれ選択され得るけれども、ときには、検定物において少なくとも1つの特定のセグメントを含むことは好適であり、特定とは、このセグメントが、生体分子の知られているセグメントまたは区別可能な部分、たとえば遺伝子、タンパク質、酵素、核酸またはこれら独自のフラグメント、翻訳のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関係するタンパク質、t−RNA、SNRP、抗体、相補性決定領域(CDR)、抗原、レセプタ、輸送タンパク質、転写因子または転写のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションに関係する因子、周知のTATAボックス因子に必然的にそれ自体制限されないプロモーター配列、リプレッサー部位、オペレーター部位およびその他の制御因子、ポリメラーゼ、レプリカーゼの部分の中から、要するに、不連続結合部位を介した結合に関係することで知られている、または思われている結合分子の知られているセグメントまたは区別可能な部分の中から、選択されたという意味である。
【0024】
極めて近接してスポットされた、知られているセグメントまたは部分は、不連続結合部位を構成する部分としてもちろんすでに知られているが、本発明に従った分子ライブラリによるこのような部位のスクリーニングは、この構成するセグメントまたはその部分の迅速かつ端的な同定を可能にするので、予備同定それ自体は本質的に必要ではない。
【0025】
このようなライブラリのスクリーニングは、ライブラリの分子が、構成するセグメントを重複方法で選択するという点でのみ異なる場合、容易に推定されることができ、この重複方法によって、もし前記生体分子の可能性のあるセグメントがすべて、極めて近接して2つずつ(または3つずつ、もしくはそれ以上ごとに)スポットされるまで要求されるなら、区別可能な生体分子からの第1のセグメントは、第2のセグメントに隣接して、そして第3のセグメントに、そして第4のセグメントにスポットされ、第2のセグメントは、第3のセグメントに隣接して、そして第4のセグメントにスポットされる。これは生体分子上に存在し得る不連続結合部位の組織的スクリーニングを可能にする。
【0026】
しかしながら、重複方法は当然に要求されず、極めて近接してスポットされたランダムなセグメントの組合せが結合部位に関する有益な情報を提供するであろう。
【0027】
したがって、本発明は、結合分子と相互作用することができる結合部位の同定または検出のための分子ライブラリを産生する方法を提供し、したがって、結合分子として分子の同定のために、この方法は、結合分子またはこれらのリガンド由来の複数のセグメントを有するライブラリを供給することを含み、少なくとも2つのセグメントをペアで、または3つを3つ組で、またはそれ以上をそれぞれ複数で、好ましくはこのペア、3つ組、または複数の大部分、最も好ましくはこのペア、3つ組または複数の本質的に全部をスポットすることをさらに含み、少なくとも、第1のセグメントを、第2のセグメント、たとえば二量体、三量体、または多量体を含むセグメントに隣接してスポットすることによる。
【0028】
既存のライブラリは一般的に、たとえば核酸(ヌクレオチド、ヌクレオシド、もしくはペプチド核酸、またはこれらの組合せの反復バックボーンを含有する。)であろうが、またはアミノ酸(アミノ酸の反復バックボーンを含有する。)であろうが、単一の分子(もしくは単一のセグメント)または複数の単一の分子の複製物が、スポットされ、かつ結合部位を表す検定物として用いられる点で共通している。このようなライブラリは、たとえば核酸またはアミノ酸の伸長のようなオリゴマーまたは多重結合分子を含み、これは所望の長さの(本質的に重合体の)分子が得られるまで、1つの単量体(たとえばヌクレオチドまたはアミノ酸)を他方に反復して逐次連結することによって産生されてきた。本質的に、既存の核酸ライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸長時に1つのヌクレオチドまたはヌクレオシドを加えることによって、逐次合成されるアミノ酸を含み、既存のペプチドライブラリは、所望の長さに達するまで、成長中の伸長時に1つのアミノ酸を加えることによって、逐次合成されるペプチドを含む。核酸によって、この単量体は、本質的に周知のヌクレオチドの限定された組から選択され、ペプチドによって、この単量体は、本質的にアミノ酸の周知の組から選択される。自然発生の単量体が用いられるだけでなく、ペプチド核酸(PNA)分子のような合成ヌクレオチド、または非自然発生アミノ酸もしくはD−アミノ酸は、本質的に重合体の分子が、自然状態での単量体の分子からの重合体の逐次合成に本質的に従った方法を用いて生成または産生される、単量体として通常用いられる。これらの単一の単量体はその後単一の方法でスポットされ、1つの単量体は、不連続結合部位を構成する結合部位の複数部分を考慮に入れることなく、完全な結合部位またはほとんど完全な結合部位を表すと考えられる。
【0029】
本発明は、二量体の、またはそれ以上(三量体、オリゴマーまたは多重結合)のセグメントをペアで、3つ組でまたはそれ以上で組合せて本質的に用いて、区別可能な利点を与える認識を提供する。様々なセグメントから構成された分子に達するまたは認識するためのより迅速な方法を提供するだけでなく、所望のライブラリのための分子または検定物レパートリーを産生するためのセグメントの迅速かつ効果的な混合をも提供する。本発明はたとえば、合成は単量体から始められ、極めて近接してこれに対して二量体、たとえばジヌクオレチドまたはジペプチドを含む第2のセグメントがスポットされる方法を提供する。ここで、二量体を含む第2のセグメントは、少なくとも二量体からなるが、たとえば、要求に応じて、いずれの性質の単量体を連結した、三量体またはその他のいずれの多量体でも可能である。もちろん、2つのセグメントが極めて近接してスポットされると、さらなるセグメントをそれに加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
好適な実施形態において、さらなる合成を加速し、または所望の区別可能なセグメントを選択可能にするために、本発明は、第1のセグメントも二量体を含み、さらに好適な方法において、さらなるセグメントも二量体を含む方法を提供する。好適な実施形態において、この二量体は、ジヌクレオチドおよびジペプチドを含み、もちろんその他の二量体も構成され得る。本発明はさらに本詳細な説明でさらに説明され、ここで各セグメントは、ペプチド、たとえばトリペプチド、ペンタペプチド、またはノナペプチドを含み、しかしながら、本発明は、より長いセグメント、たとえば10〜15個、15〜20個、20〜30個もしくは30〜40個、またはそれ以上のアミノ酸長または核酸長の使用と、たとえば核酸・タンパク質複合体において発見される結合部位をより好ましく模倣するために、たとえば一方は核酸を含み、他方はペプチドを含む、様々な性質の使用とを提供する。
【0031】
好適な実施形態において、本実施例に示される例に関して、本発明は、第1のセグメントが、第2のセグメントに隣接してチオエーテル結合によって、固相に対してスポットまたは付着される方法を提供し、しかしながら、本発明は、この方法に当然に限定されない。ヌクレオチドまたはヌクレオシドセグメントはたとえば、酵素またはリガーゼをスプライシングすることによって、または第1のセグメントと第2のセグメントとを、両セグメントに部分的に相補的である本質的に相対的に短いヌクレオチド鎖で重複することによって、共有結合して連結または結合されることができる。
【0032】
したがって、本発明は、結合分子と相互作用することができる連続または不連続結合部位の検定、同定、特徴付けまたは検出を可能にする分子ライブラリを提供し、このライブラリは、複数(ペア、3つ組、4つ組、5つ組、6つ組)のセグメントを備え、各組は好ましくは第2のセグメントに極めて近接してスポットされた少なくとも1つの第1のセグメントを有し、ここで少なくとも第2のセグメントは、二量体または多量体として以前存在したものである。好ましくは、各セグメントまたはその部分は、不連続結合部位の潜在的な単一の部分となることができ、好ましくは、少なくとも第1および第2のセグメントまたはその部分はそれぞれ、不連続結合部位の潜在的な単一の部分を表す。このようなライブラリは、たとえば、セグメントの化学的スポッティングによって形成された合成分子ライブラリに存在する。
【0033】
好ましくは、このようなセグメントは、区別可能な特徴を有し、たとえば、セグメントは本質的に、生体構造、たとえば、ヌクレオチド、糖質、脂質、アミノ酸、核酸分子(DNAまたはRNA)、ペプチド核酸分子(PNA)、炭水化物、脂肪酸または脂肪(の組合せ)の分子構成であるか、これを含むか、またはこれを模倣する。
【0034】
これによって、本発明は、不連続結合部位の少なくとも2つの区別可能な部分を潜在的に表す個別のセグメントを含む分子の合成を提供し、この部分は、潜在的構成部分の予備同定後に第一に選択される必要はなく、これによって、迅速かつ端的な方法で不連続結合部位の検定を可能にする。
【0035】
したがって、本発明は、ホルモン、ペプチド、薬剤、抗原、エフェクタ分子または別のレセプタ分子と接触部位で相互作用または結合するレセプタ分子、基質と結合する酵素、抗体の結合部位と結合する抗体分子、タンパク質と結合する核酸などの不連続結合部位の同定を可能にする。本発明の好適な実施形態において、これらのセグメントのうち少なくとも1つは、ペプチドを含み、別のセグメントは、たとえばDNA、RNA、PNA、炭水化物、脂肪酸、ペプチド、ホルモン、または有機分子全体である。本発明の1つの実施形態において、すべてのセグメントは、ペプチドを含む。この方法において、複数の異なる結合体は、第1のセグメントを第2のセグメントなどに隣接してスポットすることによって合成され、かつ検定またはライブラリ形式の第2の位置において、さらに別の第1のセグメントは第2のセグメントなどに連結され、この後、この合成された結合体は、問題の結合分子によってそれぞれ検定され、たとえば核酸、タンパク質またはペプチド配列において重要な不連続抗原決定基または不連続エピトープの決定を可能にする。
【0036】
ペプチドセグメントは、少なくとも2つのアミノ酸を含み、望まれる場合に限り、たとえば100個のアミノ酸またはそれ以上を含む。好適な実施において、このペプチドセグメントは、3〜30個、好ましくは4〜20個、さらに好ましくは、5または6〜12〜15個のアミノ酸、たとえば9個または12個のアミノ酸を含む。もちろん個別のセグメントは、等しい長さでなければならない必然性はない。
【0037】
さらに、ともに、または相互に極めて近接してスポットされるべきペプチドセグメントは、ランダムに、または知られているタンパク質もしくはペプチド配列の指図に従って選択され得る。ランダムでの選択は、本発明に従ったランダムなライブラリを供給する。知られているタンパク質またはペプチド配列からの選択は、たとえば、不連続結合部位が区別可能なタンパク質またはペプチドに、たとえば、特定の結合分子が結合し得る折り畳みタンパク質に存在する区別可能な部位または部分から構成されているか否かを発見することが望まれる場合、有用である。1つの知られているタンパク質またはペプチド配列からの様々なペプチドセグメントの選択は、不連続結合部位が1つのタンパク質またはペプチドにおいて、たとえば特定の結合分子が結合し得る保持されたタンパク質において存在する区別可能な部位または部分から構成されているか否かを発見することが望まれる場合、有用である。ペプチドセグメントの選択は、このような知られている配列から重複するペプチドを選択することによって、行われることができる。重複するペプチドは、好ましくは隣接する方法で重複して、たとえば1個または2個を除いてすべてのアミノ酸を共通して有することができ、または1個だけまたはいくつかのアミノ酸で重複することができる。知られているタンパク質の不連続結合部位の迅速な走査のために、たとえば、このタンパク質配列からノナペプチドセグメントを選択することは有用であり、この一方は他方のペプチドセグメントと5アミノ酸長重複する。しかしながら同様に、1個のアミノ酸のみ重複するこの配列からトリペプチドセグメントを選択すること、および検定されるべき結合分子が結合する推定結合部位分子を構成する3つまたはそれ以上のセグメントを用いることは有用である。
【0038】
もちろん、このような選択方法は、異なる性質のセグメントに等しく応用可能であり、核酸セグメントは、特定数のヌクレオチド、たとえば5、7、9個などを含み、推定または求められている不連続結合部位を含む既知の核酸配列から選択されることができ、各セグメントは、望みに応じて重複方法においても、この既知の核酸配列の特定位置から選択される。この核酸セグメントは、少なくとも2個のヌクレオチドを(DNA、RNA、PNAまたはこれらの機能的同等物のいずれであろうが)含み、望まれる限り、原則として、たとえば100個のヌクレオチドまたはそれ以上を含むことができる。好適な実施において、前記核酸セグメントは、3〜30個、好ましくは4〜20個、さらに好ましくは5個または6〜12〜15個のヌクレオチド、たとえば9個または12個のヌクレオチドを含む。もちろん個別のセグメントは、等しい長さでなければならない必然性はなく、上述のとおり、異なる性質、たとえばDNAを有するペプチドにもなり得る。
【0039】
セグメントは、たとえば化学的連結または結合によって、固相に化学的に付着されることができる。この連結または結合は、本技術分野において知られているたとえばペプチドまたはヌクレオチド化学反応および選択的連結反応の方法の多くの組合せを用いて形成されることができる。連結化学反応は、たとえばKent(Ph.E.Dawson et al., 自然化学的連結反応によるタンパク質合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical
Ligation), Science 266 (1994) 766-779)、Tam(J.P.Tam et al., 直交結合法による保護されないペプチドを用いたペプチド合成(Peptide Synthesis using Unprotected Peptides through Orthogonal Coupling Methods), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 12485-12489; C.F.Liu et al., HIV−1プロテアーゼ構造類似体の合成のための偽プロリン形成による保護されないペプチドの直交連結(Or thogonal Ligation of
Unprotected Peptide through Pseudoproline Formation for the Synthesis
of HIV-1 Protease Analogs), J.Am.Chem.Soc. 188 (1996) 307-312; L.Zhang & J.P.Tam、合成ペプチドおよびタンパク質のための一般的かつ部位特異的な複合方法としてのチアゾリドン形成(Thiazolidone Formation as a General and Site-specific Conjugation Method for Synthetic Peptides and Proteins), Analytical Biochemistry 233 (1996) 87-93)、およびMutter(G.Tuchscherer & M.Mutter, ペプチド化学者への挑戦としてのタンパク質設計(Protein Design as a Challenge for Peptide Chemists), J.Peptide Science 1 (1995) 3-10; S.E.Cervigni et al., テンプレートに援助されたタンパク質設計:化学選択的連結反応によるキメラTASP(Template-assisted Protein Design: Chimeric TASP by Chemoselective Ligation), Peptide: Chemistry, Structure and Biology, P.T.P Kaumaya & R.S. Hodges eds, Mayflower (1996) 555-557)のグループによって発表された。
【0040】
本発明によって好ましく提供される連結の構成に関する、可能性のある方法は、以下の例のとおりである。
【0041】
1.固相とセグメントとの連結は、ホモまたはヘテロ二官能連結物質を用いて形成される(S.S.Wong:タンパク質複合および交差連結の化学反応(Chemistry of Protein
Conjugation and Cross-Linking), CRC Press Inc, Boca Raton, Florida USA 1991)。この構成において、セグメントにおける反応性群は、二官能連結物質の一部と反応するために用いられ、したがって、この連結物質の第2の部分が、固相からの反応性群と反応することを容易にし、またはこの逆も同様である。たとえば、MBS(m−マレインイミドベンゾ酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)のようなリンカーは、活性のあるエステル(スクシンイミド)を介して1つのセグメントのアミノ基と、およびマレインイミド基を介して固相からの遊離チオール基と、またはこの逆と反応するために用いられる。このような方法において、連結時に好ましくは他の遊離アミノ基または遊離チオール基もセグメント中に存在してはならない。これを達成するために、この反応に関係するべきアミノ基またはチオール基は、たとえば1%のトリフルオト酢酸のような低刺激性の試薬によって開裂され得る側鎖保護基を用いることによって、選択的に脱保護されることができ、この試薬はその他の側鎖保護基を無傷のままにする。
【0042】
2.前記連結は、1つまたはそれ以上のセグメントの合成における修飾されたアミノ酸の導入によって形成される。アミノ酸は、たとえば側鎖またはαアミノ基における特殊な基の導入によって修飾され得る。αアミノ酸における修飾は、アミドまたはバックボーン修飾されたペプチドをもたらす(たとえばGillon etal, Biopolymers, 31:745-750, 1991
を参照。)。たとえば、この基は、リシンの側鎖アミノ基におけるマレインイミド基とすることができる。このペプチド合成の終期に、この基は固相のチオール基と迅速かつ選択的に反応するであろう。Tamら(PNAS 92:12485-12489, 1995)は、保護されたセリン残基によって側鎖において修飾されたリシン残基とのペプチドの合成を述べた。過ヨウ化酸塩を用いた脱保護および選択的酸化後、セリンのαアミノ、βヒドロキシ官能基は、別のチオール担持表面に選択的に連結され得るアルデヒド官能基に変換される。また、ペプチドバックボーン連結は、ペプチドのアミノ基に付着した基を介して、セグメントをスポットするために用いられ得る(Bitan et al., J.Chem. Soc. Perkin Trans.1:1501-1510, 1997; Bitan and Gilon, Tetrahedon, 51:10513-10522, 1995; Kaljuste and Unden, Int. J.Pept. Prot. Res. 43:505-511, 1994)。
【0043】
3.さらに連結を形成する別の方法は、セグメント、たとえばペプチドを修飾されたN末端と合成することである。たとえば、N末端αハロアセトアミド基は合成の終期に導入され得る。この基は、チオール基を含む固相と迅速かつ選択的に反応する。たとえば、第1のセグメントはN末端ブロモアセトアミドと合成され、固相はシステインを備える。クロロアセトアミド、ブロモアセトアミドまたはイオドアセトアミドのような大部分のαハロアセトアミド基は、チオール基と反応するであろうが、これらの場合、迅速な集合が要求され、ブロモアセトアミド基は、導入の容易さ、およびチオール基との迅速かつ選択的な反応のために好適である。
【0044】
さらに本発明は、第1および/もしくは第2の、または連続したセグメントの全位置における連結について扱う可能性を提供する。たとえば、ペプチドセグメントに関して、ペプチドの組は合成され、ここにおいてシステインまたは側鎖修飾されたリシンは、N末端アミノ酸位置から1つずつC末端アミノ酸位置まで転換し、好適な実施形態における両アミノ酸残基は別のセグメントと選択的に連結することができる。これらの可能性の組合せは本発明によって提供されるライブラリを再び導く。
【0045】
別の好適な実施形態において、セグメントは、少なくとも極めて近接して固相に2度連結され、好ましくは表面にセグメントの各端を連結することによって連結され、その結果、いわばループしたセグメントが固相に付着される。このような好適な実施形態において、ペア(またはより多い複数)のループしたセグメントは、固相に付着され、これら自身を結合体と表す。
【0046】
好適な実施形態において、本発明は、前記複数は、たとえば配列方法で、位置的にまたは空間的にアドレス可能であって、望みに応じて用いられたライブラリの支持体もしくは固相の寸法(たとえば平面または表面)内の特定のペアもしくは3つ組(もしくはより大きい複数)または複数の組の定位および/または認識を対象としたコンピュータによって支援される、ライブラリを提供する。アレイにおいて、これらの複数は、たとえばグリッドまたはマトリクス中にこれらの位置毎にアドレス可能にされる。
【0047】
さらに、本発明の好適な実施形態は、たとえば1cm2あたりの固体支持体上の構成数に関する合成のグレードアップを可能にする。たとえば、タンパク質の少なくとも2つのペプチドセグメントを含む検定物(ペア、3つ組またはそれ以上の複数)を含む、大多数の可能性のある構成の産生を容易にするために、何千ものペプチド構成が形成される。たとえば、両セグメントがたとえば12個のアミノ酸長である構成がすべて100個のアミノ酸残基の長さを有する小さいタンパク質に由来することを必要とする場合、もしセグメントがたとえば第1のセグメントのC末端および第2のセグメントのN末端を介して、もしくはその逆を介して、または両者とも1タイプの連結のみを用いて、固相に連結されるのみならば、さらに89×89=7921個のペプチド構成が形成される。1000個のアミノ酸残基の長さを有するペプチドに関しては、少なくとも989×989=978121個の構成が形成される。これらの構成数の有効なELISA検定に関して、固体支持体における高い構成密度が好適である。固体支持体における構成の高い密度は、本発明によって供給され、ここにおいてたとえばN末端におけるブロモアセトアミド基を有する第1のセグメント(の層)は、たとえば1cm2の表面において合成される。表面のさらに別の部分において、別の第1のセグメントが用いられ得る。支持体の各ペプチド官能化表面において、一組の、遊離チオール基を含むたとえば10個、好ましくは50個、好ましくは100個、またはそれ以上の第2のペプチドセグメントは、位置的にまたは空間的にアドレス可能な方法で、スポットまたはグリッドされ、結合後、多数の異なるペプチドペアを与える。スポッティングは、たとえば圧電性ドロップオンデマンド技術を用いて、または小型電磁弁を用いて行われることができる。グリッディングは、たとえば、第2のセグメントを含む溶液を含有するマイクロリットル未満の量のセグメント溶液を、マイクロタイタープレートから取出す一組の個体針を用いて行われる。この連結反応の後、結合されないペプチドを除去するために支持体のその後の脱保護および大規模な洗浄は少なくとも、1cm2あたり10〜50個、または100〜200個、最大で50〜1000個までのスポットされたペプチド構成ペア密度を与える。この密度は、抗体と結合するためのタンパク質由来の大多数の起こり得るペプチドペアまたは結合体をスクリーニングすることを可能にする。たとえば、20,000〜100,000個の構成が1000cm2に形成される好適な実施形態において、通常この表面は、1〜10μgの抗体/mLを含有する100mLの抗体溶液とELISAにおいて結合するためにスクリーニングされる。たとえば、間接または直接の蛍光検出は、抗体結合構成を割り当てる。共焦点走査検出方法による直接蛍光検出は、たとえばナノリットル未満の範囲内の小滴ペプチド溶液によって産生されたスポット上での抗体検出を可能にし、さらに高い構成密度を実現可能にする。もちろん、核酸ライブラリは、同様の方法で形成され得る。
【0048】
さらに、本発明は、本発明に従ったライブラリを含む固体支持体を提供し、この固体支持体は結合分子に対する潜在的に不連続または配座結合部位またはエピトープの提示を可能にし、この固体支持体は、複数の検定物を備え、ペア、3つ組またはそれ以上の複数のこの検定物または結合体はそれぞれ、結合部位またはエピトープのあり得る表示であり、かつたとえば、固相に共有結合して連結された少なくとも1つの第1のペプチドまたはヌクレオチドをたとえば含む。
【0049】
好適な実施形態において、固体支持体は、少なくとも、1cm2あたり10個、20個もしくは50個、またはさらに100個、200個もしくは最大500個もしくは1000個の密度のスポットまたはドット(たとえば推定結合部位、検定物、またはセグメントのペア)を含み、好ましくは、このスポットまたはドットは、位置的にまたは空間的にアドレス可能である。
【0050】
さらに、本発明は、結合分子と相互作用することができる不連続結合部位をスクリーニング、すなわち検定、同定、特徴付け、または検出する方法を提供し、この方法は、たとえば抗体、Fc尾部(Fc-tail)または検出タグを含有する可溶性レセプタ、細胞上レセプタ、ビオチン化分子または蛍光分子のような結合分子によって本発明に提供されたライブラリをスクリーニングすることを含む。
【0051】
代替のセグメントとしては、たとえば、炭水化物、非自然アミノ酸、PNA、DNA、脂質、ペプチド結合模倣を含有する分子を含み得るであろう。特に、本発明は、結合分子と相互作用することができる不連続結合部位をスクリーニングするための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの検定物によって本発明に従ったライブラリをスクリーニングすること、およびライブラリのメンバーと検定物との間の結合を検出することを含む。好適な実施形態において、この結合は、たとえばELISA技術によって、免疫学的に検出される。
【0052】
ライブラリの特定の検定物(結合体とも称する。)との結合を検出することによって、本発明は、前記メンバーまたは結合体を提供し、合成分子は、本発明に従った方法によって同定可能なもしくは同定された、または取得可能なもしくは取得された不連続結合部位を含むこの結合体もしくは検定物、またはペアもしくはそれ以上の複数の(ループ)セグメントを含む。したがって、本発明は、本発明に従ったライブラリの使用、本発明に従った1つまたはそれ以上の結合体または検定物を備えた固体支持体もしくは固相またはアレイ表面の使用、または不連続結合部位もしくはこの部位と結合することができる結合分子を含む合成分子を同定もしくは取得する本発明に従った方法の使用を提供する。不連続結合部位が供給されるので、このような合成分子は、たとえばホルモン、ペプチド、薬剤もしくは抗原、エフェクタ分子、アゴニスト、アンタゴニストまたは別のレセプタ分子と標準的に相互作用または結合するレセプタ分子、基質と標準的に結合する酵素、抗体分子、核酸、タンパク質、要するに生体分子と相互作用または結合するための結合分子を発見するために、かつ結合分子に対する結合を達成し、かつ/またはこの結合に影響を与えるために、in vitroまたはin vivoで好都合に使用されることができる。本発明はさらに、本発明を限定することなく以下の詳細な記載において説明される。
【0053】
(ペプチド構成の合成)
ポリプロピレンもしくはポリエチレン、またはその他の適した材料の支持体を、たとえばポリアクリル酸と移植した。例として、CuSO4を含有する6%のアクリル酸水溶液中のポリプロピレン支持体を、12kGyの照射量でガンマ放射線で照射した。カルボン酸基を含有するこの移植された固体支持体を、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)とともにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いるt−ブチルオキシカルボニル−ヘキサメチレンジアミン(Boc−HMDA)の結合と、その後のトリフルオロ酢酸を用いるこのBoc基の開裂とを介して、アミノ基と官能化した。その後、この表面を、標準Fmoc化学反応を用いて、Cysアミノ酸(好適には種々に保護されたCysの混合)と官能化する。
【0054】
種々に保護されたCys基の例は、Cys(Trt)およびCys(mmt)である。FMOCの除去後、アミノ基をアセチル化する。側鎖脱保護は、記載されたように行われ得る。標準Fmocペプチド合成化学反応を、アミノ官能化された固体支持体にペプチド(セグメント)を連結するために用いた。最終アミノ酸のFmoc基の開裂および洗浄後、ブロモ酢酸を、DCCまたはDCC/HOBtを用いて結合した。第2のブロモ酢酸は(同じステップで)、たとえばリシン(Lys)残基がペプチド中に存在する場合、この表面に結合され得る。このLysの側鎖保護化学反応(FMOC−Lys(MTT)−OHを用いる。)は、他のアミノ酸が保護されたままにされる一方で、Lys側鎖のアミノ基のみが(ジクロロメタン中の1%のトリフルオロ酢酸によって)振動されることを可能にする。その後、もしDCCのみが用いられるならば、ペプチドはチオール反応性ブロモアセトアミド基を含有し、しかしながら、もしDCC/HOBtがブロモ酢酸を結合するために用いられるならば、ペプチドは本質的にブロモ基を含有せず、セグメント間で同じチオエーテル連結を形成するチオール基と効果的に反応することができる別の反応性基を含有する。固体支持体に結合または合成されたペプチドの次に第2のペプチドを結合または連結した。ブロモ官能化ペプチドは、約pH7〜8の重炭酸ナトリウム緩衝液を含有する水溶液中で、(チオールが存在する場合)固体支持体に結合され得る。ペプチドを、ポリ−ヒドロメチルメタクリル酸塩(poly−HEMA)と移植されたポリエチレンピンにおいて合成した。この移植重合体を、30〜50kGyの照射量で、メタノール/水(80/20または70/30)中の20%のHEMA溶液中でポリエチレンピンのガンマ放射線によって形成した。この官能化支持体は、β−アラニンと、酸性不安定Fmoc−2,4−ジメトキシ−4,−(カルボキシメチルオキシ)−ベンズヒドリルアミン(Rink)リンカーとの結合後、1μmolのペプチド/cm2の合成のために用いられ得る。このペプチドを、標準Fmoc化学反応を用いて合成し、このペプチドを、スカベンジャーとともにトリフルオロ酢酸を用いて合成樹脂から脱保護かつ開裂した。約1mg/mLの濃度でシステイン残基を含有するこの開裂されたペプチドを、約pH7〜8で水/重炭酸ナトリウム緩衝液中で上述の固体支持体と反応させ、したがって固体支持体にチオエーテルボンドを介してそれぞれ少なくとも1度共有結合された2個のペプチドの部分的に保護された構成を形成する。上述の構成を、トリフルオロ酢酸/スカベンジャーの組合せを用いて標準的な手順に続いて脱保護した。固体支持体におけるこの脱保護された構成を、ドデシル硫酸ナトリウムおよびβ−メルカプトエタノールを含有する、開裂した緩衝液と超音波洗浄を用いて広範囲に洗浄し、かつELISAにおいて直接に用いた。開裂した緩衝液中のその後の洗浄は、ELISAにおける抗体に対する反復検定を可能にする。
【0055】
これらの方法に従って、たとえばN末端ブロモアセチル化された第2セグメントに隣接してC末端付加システイン残基を介して結合されたドデカペプチドからなる構成のライブラリは、たとえば単一アミノ酸残基のステップによって、タンパク質配列を走査することを可能にする。ブロモアセトアミドペプチドを、上述したように3μウェル中で官能化されたポリエチレン/ポリアクリル酸固体支持体に供給結合した。このシステイン含有配列を、上述したように官能化されたポリエチレンピンにおいて合成し、かつこれから開裂する。固体支持体の表面において、ペプチドを上述したように合成する。このペプチド官能化支持体において、遊離チオール基を含有する第2のペプチドセグメントを、マイクロドージング装置および圧電性自動ピペット(Auto Drop−Micropipette AD−K−501)(マイクロドロップ社(microdrop Gesellschaft fur
Mikrodosier Systeme GmbH.))を用いて、圧電性ドロップオンデマンド技術を用いてスポットした。代替的に、スポッティングまたはグリッディングを、小型電磁弁(INKX0502600A;the Ice Company)、または硬化された精密なグラウンドグリッディングピン(ground gridding pin)(ジェノミックソリューションズ社(Genomic Solutions)、直径0.4、0.6、0.8または1.5mm)を用いて行った。
【0056】
結合されていないペプチドを除去するためのその後の構成脱保護および広範囲洗浄は、スポット領域において結合体構成を生じさせた。ナノリットル範囲のペプチド溶液小滴によって産生されたペプチド構成は、検出用抗体と十分に結合し、この場合は間接蛍光検出を用いる。0.25nL〜50nLによって産生されたスポットは、1mm2よりも小さい。したがって、この状況において、結合体密度は、1cm2あたり100〜1000スポットになることができ、より小さい設備を用いると、密度はさらに高くなり得る。
【0057】
要するに、チオール官能を、アミノ官能化固体支持体において導入する。これは、たとえばイミノチオランとアミノ基との直接反応によって、またはFmoc−Cys(Trt)−OHの結合によって、続いて、ピペリジンと、アセチル化と、TFA/スカベンジャー混合を用いるトリチル脱保護とを用いるFmoc開裂によって、形成される。このチオール官能化固体支持体は、保護されたシステイン残基を含有する、たとえば、ブロモアセトアミドペプチドと反応されることができる。第1のペプチドの結合後、システインは、たとえばTFA/スカベンジャー混合を用いて脱保護され得る。まだ使用されていない遊離チオール基は、再び保護されたシステインを含有する、第2のブロモアセトアミドペプチドを結合するために用いられ得る。この手順は、セグメント構成を形成するために反復され得る。数タイプの走査は、この複数セグメント走査と組合せて用いられ得る。
【0058】
使用例
タンパク質およびペプチドは結合分子のいずれのタイプ、たとえば、抗体、Fc−尾部または検出タグを含有する可溶性レセプタ、ビオチン化分子または蛍光分子のような生体分子を用いて、スクリーニングされ得る。代替のセグメントとしては、たとえば炭水化物、非自然アミノ酸、PNA、DNA、脂質、ペプチド結合模倣を含有する分子になり得る。
【0059】
TSH例
TSHまたはTSHRのような大きいタンパク質の不連続結合部位の合成模倣の設計および合成が目下望まれる。このような目的で、タンパク質のテンプレート基礎模倣は基本研究のための強力な新しいツールを提供した。ここに提供される技術は、不連続結合部位のマッピング、合成テンプレートにこれらを結合すること、および構造的かつ機能的特徴を詳細に観測することを可能にする。
【0060】
この方法の中枢は、アレイ形式における100,000個の合成ペプチドの合成および検定の可能性である。これは、ここに提供される技術によって可能である。これらの技術は、ペプチドアレイ合成と、テンプレート化学反応における新しい方法論を含む。化学反応を通じて、全種類の合成基はこれらのテンプレート上の2つまたはそれ以上の異なる位置で結合され、不連続結合部位の復元と模倣の合成とを可能にする。大きいタンパク質間の不連続結合部位のマッピングを可能にする方法の発達は、主要な研究目標である。様々な戦略が適度の成功によって採用された。今日の最も成功した技術は、X線結晶学、組合せライブラリおよび質量分光分析学である。ペプチドアレイに関係する新しい方法を提供する。ペプチドアレイ技術は、結合に関係する短い線状ペプチドを同定するために長らく使用されてきた。所定のタンパク質の完全重複する線状ペプチド(12〜15mer)は、プラスチックまたは紙のような固体支持体において合成され、かつ目標タンパク質と、最も多くは抗体とインキュベーションされる。認識されるこれらのペプチドは、いわゆる線状エピトープである。不連続エピトープは、検出され得ないであろう。それにもかかわらず、早期のペプチドアレイ技術は、合成方法で不連続エピトープを同定する方法の基盤を据えた。これは、いずれの配向においても、アレイ表面上でタンパク質のあらゆるの部分(たとえば15アミノ酸長のペプチド)を、タンパク質の別のあらゆるの部分(たとえば15アミノ酸長のペプチド)に隣接して結合することを可能にした。ペプチドのすべての可能性ある組合せを有するこれらのアレイは、不連続エピトープの正確な定義を可能にすることを、我々の元で示した(図2)。グレーブス病および橋本病に関係する不連続エピトープに重点をおくが、その他のものも手の届くところにある。甲状腺疾患は、甲状腺に対する自己免疫疾患である。抗体は、甲状腺上の甲状腺刺激ホルモンレセプタにおいて不連続エピトープと結合する。甲状腺の亢進(グレーブス)または閉塞(橋本)は、深刻な健康問題を招く。両方の抗体結合領域およびTSH結合領域のマッピングは、両疾患の理解に多大に寄与する。その後、これらの不連続エピトープのhTSHおよびhTSHR模倣は、グレーブス病および橋本病の早期発見を可能にする新しい診断ツールに用いられるであろう。ヒト濾胞刺激ホルモン(hFSH)およびそのレセプタ(hFSHR)の研究は不連続結合部位を明らかにした。hFSHの様々な領域を覆うビオチン化40merは、hFSHRの線状配列を覆う完全重複30merにおいて、ここで提供されるようなペプチドアレイ結合アッセイで検定された。
【0061】
40merの1つは、レセプタ領域に結合した(図1)。これらの結果に基づいて、hFSH/hFSHR結合と構造的に酷似しているホルモンレセプタ結合、hTSH/hSHR結合hTSHRにおける同様の研究は、グレーブス病およびまたは橋本病のための診断ツールとして用いられ得るペプチドを提供する。グレーブス病または橋本病の患者は、それぞれ甲状腺機能亢進または甲状腺機能低下を招く自己甲状腺レセプタに対して抗体を発達させる。抗甲状腺刺激物質レセプタ抗体の集団は異種であるけれども、大部分の橋本病の抗体がレセプタのC末端を結合するのに対して、大部分のグレーブス病の抗体はレセプタのN末端に結合する。我々の研究において、グレーブスおよび橋本の血清のパネルは、a)ペプチドアレイにおける、hTSHレセプタを覆う重複する30merの組に対する結合に関して、b)hTSHレセプタに対する、ビオチン化40merのTSHペプチドの結合が、グレーブス病および橋本病の血清と競合された競合的アッセイにおいて、検定される。この方法で、不連続結合部位をマッピングする。不連続結合部位のマッピング後、合成模倣は、設計かつ合成される。この種類の合成模倣の合成に関する第一の戦略は、不連続エピトープが復元され得るテンプレートの合成である。テンプレートの使用は、不連続エピトープの様々な部分を追加する可能性を助長する。この方法で、特定の結合情報は、ペプチド構成の高いフレキシビリティによってほとんど失われないであろう。
【0062】
テンプレート構造に対するペプチドの付着は、自然の不連続エピトープそっくりに模倣する。最近、この分野は相当進歩した。認識フラグメントを結合する枠組みとして安定したテンプレートを用いることによって、ペプチドは所望の活性を得ることができる。
【0063】
(さらなる実施例)
使用例
ヒト腫瘍壊死因子(hTNF)における不連続エピトープのマッピング(図10〜15)
hTNFに対するモノクローナル抗体mAb−210を、線状およびループペプチドにおいて検定した(mAb−210はR&Dシステムズ社(R&D Systems)から購入した。MAB210、クローン1825.12、ITKダイアグノスティックスオイトホルン(ITK Diagnostics Uithoorn)、オランダ)。第一に、これを、hTNFを覆う全体重複線状12merにおいて、ペプスキャンで検定した。これは、配列IKSPCQRETPEGの周りでより低いピークを生じさせた(図10)。第二に、これを、二重15merループ・ループペプチドにおいてペプスキャンマトリクススキャンで検定した(図3および図4において記載され、かつ図11〜12を通じて説明される。)。2つのループ領域を区別した。ペプチド配列GQGCPSTHVLLT(スクエア65から67)およびSAIKSPCQRE(スクエア92から96)(図13,14)。さらに、様々なスクエアにおいて、ループペプチドスポットを、配列GQGCPSTHVLLT(スポット65−67)、SAIKSPCQRE(スポット92−96)およびKGDRLSAEINR(スポット126−129)に対応して同定した(図14)。hTNFの三次元モデルにおける図15に表されたこれらの3つの領域は、hTNF分子の片側に位置し、かつ1つの大きい不連続エピトープ領域を形成する。
【0064】
抗体(結合体)の合成模倣の同定(図16)
6つの異なる抗体から、HCDR3領域(3つの抗体重鎖の相補性決定領域)を合成ループペプチドとして合成した。例として、4つの異なる抗リゾチーム抗体および2つの異なる抗絨毛性ゴナドトロピン抗体を選択し、1fdl.pdb(D1.3),1mlb.pdb(D44.1),3hfl.pdb(HyHel−5),3hfm.pdb(HyHel−10)は全て抗リゾチーム、および1qfw.pdb、ならびに2つの抗ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、1つは抗α、および1つは抗βである。これらの合成ループペプチドを、上述したようなミニカードに結合した。これらの3次元コーディネイト(pdbファイル)は、www.rcsb.org(RCSB,Research Collaboratory for
Structural Bioinformatics)におけるタンパク質データバンク(Protein Data Bank)(PDB)から引用された(Berman et al., 2000, The Protein Data Bank. Nucleic
Acids Research, 28pp.235-242; Bernstein et al., 1977, The protein data bank, 高分子構造に関するコンピュータを利用した永久保存用ファイル(A computer-based
archival file for macromolecular structures) J. Mol. Biol. 112:535-542)。
【0065】
各6個のペプチドとともに、27個の異なる他のループペプチドを図3Bに記載されたようなミニカードに結合した。したがって、グループ1は、LCDR1、LCDR2またはLCDR3を覆う27個の異なるループの隣で結合された1fdl.pdbのHCDR3のループであり、グループ2は、LCDR1、LCDR2またはLCDR3など(LCDR、3つの抗体軽鎖の相補性決定領域)を覆う27個の異なるループに隣接して結合された1mlb.pdbのループであった。27個の異なるループペプチドは、上述の同一抗体(1fdl.pdb、1mlb.pdb、3hfl.pdb、3hfm.pdbまたは1qfw.pbd)のLCDR1、LCDR2またはLCDR3を表した。
【0066】
この結果は、図16に示される(27個のループ・ループ結合ペプチドを有する6グループ)。最も高い結合活性を有する6個のループ・ループ結合ペプチドは、+LHGNYDFDGZ+SESVDSYGNSFMQZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)(図16参照)、+LHGNYDFDGZ+RASESVDSYGNSFMQZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)、+LHGNYDFDGZ+RASESVDSYGNSFZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ。)、+LHGNYDFDGZ+ASESVDSYGNSFMZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)、+LHGNYDFDGZ+ASESVDSYGNSFZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)および+LHGNYDFDGZ+LLVYYTTTLADGZ(それぞれ、3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)であった。
【0067】
最も高い結合活性を有するループ・ループペプチドペア+LHGNYDFDGZ+SESVDSYGNSFMQZ(それぞれ3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)は、矢印で示される(図16)。ループ・ループペプチドペアは、抗リゾチーム抗体および抗ヒト絨毛性ゴナドトロピン抗体に由来する。図16に示された結果は、合成CDRの特定ペアがその他のペア、特にグループCに比べてリゾチームに対するより好ましい結合を示すことを示す。したがって、(異なる)抗体の異なるCDRを表す合成ループのループ・ループの組合せは、たとえば抗リゾチーム抗体である原抗体に由来する必要はなしに、抗体を模倣する鉛合成化合物を同定するために用いられることができる。
【0068】
不連続エピトープの二重ループ模倣の構成(図17)
不連続エピトープの2つの個別部分を構成する2個のペプチドを、図12の凡例において上述されたミニカードの表面に結合した(図3Aおよび図4(例4)参照)。cys(mmt)を、単独で、またはcys(trt)および/もしくはval(mmt)(cysおよびvalは1:1、1:3または1:9などの割合)と組合せて結合した。この方法で、1個のペプチドを結合し(配列AおよびC)、またはシステイン間でバリンを増加した2個のペプチドを結合した(配列BおよびD)(図4B(例4),図17参照)。これらの4つの構成を、2つの異なる抗体とともにインキュベーションした。
【0069】
抗体1は、個別のループペプチドが単一ループとして結合されると、ループペプチド2のみを認識した。抗体2は、個別のループペプチドが単一ループとして結合されると、ループペプチド1のみを認識した。これら2個のループペプチドを組合せると、抗体1は、第一に結合されたようなペプチド1とより高い結合活性を示した。これら2個のループペプチドを組合せると、抗体2はより高い結合活性を示さなかった。
【0070】
図17に示された結果は、不連続エピトープの合成ループの特定部分が特定の抗体に対する向上した結合を示すことを示す。したがって、不連続エピトープの部分である合成ループの組合せは、不連続エピトープを模倣する鉛合成化合物を同定するために用いられ得る。
【0071】
本発明は、以下の実施の形態が可能である。
(1)結合部位の同定または検出のための分子ライブラリの作成方法であって、ライブラリに複数の検定物を備えることを含み、さらにまた、固相において少なくとも第1のセグメントを極めて近接して第2のセグメントにスポットすることによって、検定物のうちの少なくとも1つを産生することをさらに含むことを特徴とする方法。
【0072】
(13)前記方法によって同定可能な、または取得可能な結合部位を含むことを特徴とする合成分子。
【0073】
(14)前記方法によって同定可能な、または取得可能な結合部位を含むことを特徴とする結合分子。
【0074】
(15)結合部位は不連続結合部位を含むことを特徴とする結合分子。
【0075】
(18)結合分子と相互作用する、または結合分子との結合をもたらすための結合分子の使用。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】異なる条件のもとで臭素の結合に用いられ得る6つの異なるシステイン。
【図2】(暗色によるスポッティング) 両側連結の有利な効果およびループ形成を示す2個の異なるペプチドの分析。左側では、ペプチドはアミノ末端Brを有する。右側では、ペプチドはアミノ末端BrおよびC末端リシンBr(図4Bの凡例中に記載されたように合成された。)を有する。ミニウェル設定で検定を実行した(各ウェル3μL)。表面は、チオール基(−SH基)と官能化される。ペプチドを、ペプチドの臭素(Br)基を用いる表面に結合した。ペプチドの異なる濃度を、表面に結合するために用いた。2組のペプチドを用い、一方は、1つのBr基を有し、他方(ペプチドのC末端における余剰リシン+Br−アセチル半分による前のペプチドのみ異なる。)は2つのBr基を有する。結合を、ELISA設定で異なった抗体濃度を用いて決定した。
【図3A】固体支持体への結合後のセグメント近接性。左側において、2オングストロームの最短距離で、15オングストロームのリンカーを結合した。セグメントをこれらのリンカーに結合する。リンカーのフレキシビリティは、2つのセグメントの末端を0〜30オングストロームの距離内で移動可能とする。右側において、リンカー間距離は2〜50オングストロームまたはそれ以上に変化し得る。例として、9オングストロームを示す。これは2つのセグメントの末端を0〜40オングストロームの距離内で移動可能とする。
【図3B】2つのセグメントがポリカーボン重合体表面にループとしてどのように連結されるかの概略図である。少なくともCDR由来の結合体の場合において、ループの頂点間の好適な距離は、抗体におけるCDRと類似する0〜30オングストロームである。
【図4A】2つのセグメントが(ポリカーボン)−重合体表面にどのように結合され得るかの概略図である。グラフは4つの例を示す。例1において、2つの線状セグメントを結合する。例2において、2つのループセグメントを結合する。例3において、2つのセグメントをループとして結合する。例4において、2つのセグメントをループとして結合する。余剰のスペーシングビルディングブロック(たとえばフェニルアラニンアミノ酸)によって、2つはループを拡張する。(ポリカーボン)−表面において、2タイプの保護されたシステイン(cys(trt)およびcys(mmt))とたとえば1つのスペーシングビルディングブロックとを結合する。cys(trt)を保護したままにする一方で、cys(mmt)を1%のTFAで脱保護する。第1のセグメントを、この脱保護されたcys(mmt)に結合する。その後、第2のセグメントを95%のTFAで脱保護する。その後、第2のセグメントを、ちょうど脱保護されたところのcys(trt)に結合する。
【図4B】2つのセグメントが重合体表面にそれ自身結合される環状テンプレートにどのように結合されるかの概略図である。この環状テンプレートは、環状のフレキシブルなペプチドである。この環状ペプチドは、4つのリシン(mmt)、2つのシステイン(trt)および2つのシステイン(butyl)を含有する。このペプチドを1%のTFAに感受性のある硫黄を介して合成樹脂に結合する。アミノ末端において、臭素を前に記載したように付着する。これはリシンの脱保護および合成樹脂からペプチドの脱結合を生じさせる。システインは保護されたままである。pHを8に上げた後、ペプチドのN末端およびC末端をSおよびBrを通って連結する。その後、脱保護したリシンにおける−NH2をBrに結合する。この結果生じる環状ペプチドは、4つのBrと、さらに4つの保護したシステインを有し、Brを介してリンカーに結合される。リンカー・システインに結合された環状テンプレートに対して、2つのペプチドセグメントを結合する。第一に2つのシステイン(trt)を95%のTFAで脱保護する。その後、第1のセグメントを結合する。第2に、2つのcys(butyl)をNaBH4で脱保護する。その後、第2のセグメントを結合する。
【図4C】2つのセグメントが重合体表面に結合される2つの他のセグメントにどのように結合され得るかの概略図である。表面上の遊離−SHによって、2つのセグメントをN末端およびC末端Brを介してこの表面に結合する。N末端Brを前に記載したように合成する。C末端Brを図4Bに記載したようにC末端リシンに連結する。両セグメントは、保護されたシステインを含有し、ここにおいて2つの他のセグメントを図4Bに記載したように結合する。
【図5】2つのセグメントを有するマトリクススキャンの概略図である。重合体表面において、cys(mmt)およびcys(trt)の混合を結合する。1%のTFAの後、cys(mmt)を脱保護する。その後、各スクエアにおいて、1つのペプチドを1つまたは2つの末端Brを介して結合する。したがって、ペプチド1をスクエア1に、ペプチド2をスクエア2になど、ペプチド100をスクエア100においてまで、結合する。その後、cys(trt)を95%のTFAで脱保護する。その後、各スクエアにおいて100個の異なるペプチドをスポットする。したがって、ペプチド1〜100をスクエア1に、ペプチド1〜100をスクエア2になど、ペプチド1〜100をスクエア100においてまで、スポットする。
【図6】ビオチン化合成40merhFSHペプチド、ビオチン−EKEEARFCISINTTWAAGYAYTRDLVYKDPARPKIQKTAT−CONH2と、hFSHRの線状配列を覆う完全重複30merとの結合アッセイ。30merペプチドを記載したようにスポットし、40merペプチドを標準FMOC化学反応を用いて合成した。様々な30merペプチドを1μg/mLのhFSHペプチドとともにインキュベーションした。洗浄後、ペプチドをストレプトアビジン−ペルオキシダーゼとともにインキュベーションし、その後の洗浄後、ペルオキシダーゼの基質およびH2O2とインキュベーションした。
【図7】hTSHRおよびhTSHにおける不連続結合部位の合成模倣の発生の概略図である。甲状腺細胞において、hTSHレセプタはhTSHと結合する。グレーブスおよび橋本病患者からの自己免疫抗体はまた、hTSHレセプタと結合する。hTSHの完全重複30merのスクリーニングを通して、hTSHRに関する不連続結合部位のセグメントを同定する(FSHに関して記載したように。図6凡例参照。)。hTSHRの完全重複30merのスクリーニングを通して、グレーブス病および橋本病の抗体に関する不連続結合部位のセグメントを同定する。合成テンプレートの造形および用法を通して、個別のセグメントを1つの不連続合成模倣と組合せる。
【図8】不連続結合部位または結合体の合成模倣を含むアレイの概略図である。結合体は、固体表面において(または代替的に、個別の分子足場物質において)多様性のある空間的にアドレス可能な結合体を含有するアレイを形成することによって、選択かつ改良される。関心の目標物と結合する結合体をスクリーニングするために、このアレイを、目標物とともにインキュベーションし得る。鉛結合体の複数の変異体から構成される追加のアレイを形成することによって、たとえば配列混合によって、鉛結合体を改良し得る。もし所望の特異性および/または類似性が達成されるならば、結合体は足場物質において産生され、大量に産生かつ使用される。
【図9】CDR配列由来の不連続結合部位または結合体の合成模倣の発生の概略図である。結合体は固相もしくはアレイ表面(好ましくは(ポリカーボン)−重合体表面)、または予め定められた足場物質もしくはテンプレートにおいて位置決めることによって構成される。結合体は、抗体の相補性決定領域(CDR)、または好ましくは高い類似性を有し、その他の分子と結合する事で知られている他のいずれのタンパク質モチーフに由来し得る。
【図10】モノクローナル抗体210(R&Dシステムズ社、MAB210、クローン1825.12、ITKダイアゴノスティックオイトホルン、オランダ)による、hTNFの線状配列を覆う完全オーバーラップ合成12merにおける標準線状ペプスキャン。配列IKSPCQRETPEGによる小さいピークを同定した。y軸はccdカメラ装置を用いて得られた光学濃度値(OD)である。Rampoウサギ抗マウスペルオキシダーゼ(DAKO)。
【図11】ループ・ループ15merマトリクススキャンのために合成されたペプチドの部分的リスト。ヒト腫瘍壊死因子(hTNF)の線状配列を覆う完全オーバーラップ15merループペプチドを合成し、すなわちトータルで145個のhTNFループペプチドであった。Zは、Cys−butylである。すべてのペプチドのアミノ末端はブロモ基(+)を含有する。
【図12】ループ・ループ15merマトリクススキャンの構成。2つのループセグメントによるマトリクススキャンの概略図である。重合体表面において、cys(mmt)およびcys(trt)の混合を結合する。1%のTFA後、cys(mmt)を脱保護する。その後、各スクエアにおいて、1つのペプチドをN末端ブロモ基(+)を介して結合する。したがって、ペプチド1をスクエア1に、ペプチド2をスクエア2になど、ペプチド145をスクエア145においてまで結合する。その後、cys(trt)を95%のTFAで脱保護する。その後、各スクエアにおいて145個の異なるペプチドを同時にスポットする。したがって、ペプチド1〜145をスクエア1に、ペプチド1〜145をスクエア2になど、ペプチド1〜145をスクエア145においてまで、スポットする。いくらかの余りのスクエアを、対照(線状エピトープ)用に用いた。
【図13】抗hTNFmAb210(10μg/mL)によるループ・ループ15merマトリクススキャンの結果。145の全スクエアで得られた結果を示す。スクエア66、67および92〜96を明確に区別している(第一に結合されたループペプチド)。これらおよびその他のスクエアに加えて、スポットも区別する(スポットは第2のループペプチドに隣接して結合された第1のペプチドを表す。)。
【0077】
スポットにおける同定された配列
y軸は任意単位である。
【0078】
【図14】スクエア65および127の詳細によってmAb210(10μg/mL)によるループ・ループ15merマトリクススキャンの結果。ループペプチド65とループペプチド94,95との組合せ、ループペプチド65と126〜127との組合せ、ループペプチド127とループペプチド65〜77との組合せ、およびループペプチド127とループペプチド94〜96との組合せを区別している。y軸は任意単位である。
【図15】mAb−210(10μg/mL)による同定された結合ループ・ループペプチドの3次元図である。同定された3つの領域を示している(ペプチド65〜69、94〜96および126〜127)。GQGCPSTHVLLTHTIS(VLLTを区別している。)、SAIKSPCQRE(KSPCを区別している。)、KGDRLSAEINR(SAを区別している。)。
【図16】リゾチームビオチンによる(100μg/mL、3つで)、抗体のループ・ループCDR領域のループ・ループ15merマトリクススキャンの結果。1μg/mLのリゾチームビオチンを用いて、結合は観測されない(図示しない)。検定間におけるストレプトアビジン−ペルオキシダーゼのみの対照はマイナスであった(図示しない)。
【0079】
ペプチドA,B,C,D,EおよびF:
【0080】
(1fdl.pdb、1mlb.pdb、3hfl.pdbおよび3hfm.pdbはリゾチームと結合する抗体である。1qfw.pdbはヒト絨毛性ゴナドトロピンを結合する2つの抗体である。)すべてのペプチドは、アミノ末端ブロモ基(+)とカルボキシ末端リシン−mmt(Z)を有する。
【0081】
ペプチド1〜27
【0082】
(1fdl.pdb、1mlb.pdb、3hfl.pdbおよび3hfm.pdbはリゾチームと結合する抗体である。1qfw.pdbはヒト絨毛性ゴナドトロピンを結合する2つの抗体である。)すべてのペプチドは、アミノ末端ブロモ基(+)とカルボキシ末端リシン−mmt(Z)を有する。
最も高い結合活性を有するループ・ループペプチドペア、+LHGNYDFDGZ+SESVDSYGNSFMQZ(3hfl.pdbのHCDR3のループおよび1qfw.pdbのLCDR1のループ)を矢印で示している。
【図17】上述のようなペプスキャンミニカードに結合された単一または2つのペプチドループにおける2つの異なる抗体によるペプスキャンエリザの結果。スクエアAへの結合:ループペプチド1、スクエアBへの結合:ループペプチド2が続く第1のループペプチド1、スクエアCへの結合:ループペプチド2、スクエアDへの結合:ループペプチド1が続く第1のループペプチド2。ループペプチド1:+KSYNRVTVMGGFKVEZ−conh2;ループペプチド2:+LQENPFFSQPGAPILZ−conh2。y軸はccdカメラ装置を用いて得られる光学濃度値(OD)である。両ループペプチドは、ヒト濾胞刺激ホルモン(hFSH)に由来する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合部位の同定または検出のための分子ライブラリの作成方法であって、ライブラリに複数の検定物を備えることを含み、さらにまた、少なくとも第1のセグメントと第2のセグメントとを相互に100オングストロームしか離れずに近接させて固相にスポットすることによって、検定物のうちの少なくとも1つを産生することをさらに含み、
推定結合分子が少なくとも2つの近接させてスポットされたセグメントまたはその部分に結合し得、
セグメント間の距離は可変であることを特徴とする方法。
【請求項2】
固相はアレイ表面を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
セグメントのうち少なくとも1つはペプチドを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各セグメントはペプチドを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも第1のセグメントは、固相に対してチオエーテル結合によって連結されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも第1および/または第2のセグメントまたはその部分はそれぞれ、不連続結合部位の潜在的部分を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって取得可能な少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数の検定物を含むことを特徴とするライブラリ。
【請求項8】
検定物は、位置的に、または空間的にアドレス可能であることを特徴とする請求項7記載のライブラリ。
【請求項9】
少なくとも第1および/または第2のセグメントまたはその部分はそれぞれ、不連続結合部位の潜在的部分を表すことを特徴とする請求項7または8に記載のライブラリ。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリを含むことを特徴とする固体支持体。
【請求項11】
結合分子と相互作用することができる結合部位のスクリーニング方法であって、少なくとも1つの潜在的結合分子によって請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリをスクリーニングすることと、このライブラリの検定物とこの潜在的結合分子との間の結合を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
結合部位は不連続結合部位であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
結合部位を含む合成分子を同定または取得するための請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリ、請求項10記載の固体支持体、または請求項11もしくは12に記載の方法の使用。
【請求項14】
結合部位に結合することができる結合分子を同定または取得するための請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリ、請求項10記載の固体支持体、または請求項11もしくは12に記載の方法の使用。
【請求項1】
結合部位の同定または検出のための分子ライブラリの作成方法であって、ライブラリに複数の検定物を備えることを含み、さらにまた、少なくとも第1のセグメントと第2のセグメントとを相互に100オングストロームしか離れずに近接させて固相にスポットすることによって、検定物のうちの少なくとも1つを産生することをさらに含み、
推定結合分子が少なくとも2つの近接させてスポットされたセグメントまたはその部分に結合し得、
セグメント間の距離は可変であることを特徴とする方法。
【請求項2】
固相はアレイ表面を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
セグメントのうち少なくとも1つはペプチドを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各セグメントはペプチドを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも第1のセグメントは、固相に対してチオエーテル結合によって連結されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも第1および/または第2のセグメントまたはその部分はそれぞれ、不連続結合部位の潜在的部分を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって取得可能な少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数の検定物を含むことを特徴とするライブラリ。
【請求項8】
検定物は、位置的に、または空間的にアドレス可能であることを特徴とする請求項7記載のライブラリ。
【請求項9】
少なくとも第1および/または第2のセグメントまたはその部分はそれぞれ、不連続結合部位の潜在的部分を表すことを特徴とする請求項7または8に記載のライブラリ。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリを含むことを特徴とする固体支持体。
【請求項11】
結合分子と相互作用することができる結合部位のスクリーニング方法であって、少なくとも1つの潜在的結合分子によって請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリをスクリーニングすることと、このライブラリの検定物とこの潜在的結合分子との間の結合を検出することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
結合部位は不連続結合部位であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
結合部位を含む合成分子を同定または取得するための請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリ、請求項10記載の固体支持体、または請求項11もしくは12に記載の方法の使用。
【請求項14】
結合部位に結合することができる結合分子を同定または取得するための請求項7〜9のいずれかに記載のライブラリ、請求項10記載の固体支持体、または請求項11もしくは12に記載の方法の使用。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−58517(P2009−58517A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244881(P2008−244881)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【分割の表示】特願2002−534844(P2002−534844)の分割
【原出願日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【出願人】(503136174)ペプスキャン システムズ ベー.フェー. (4)
【氏名又は名称原語表記】PEPSCAN SYSTEMS B.V.
【住所又は居所原語表記】Edelhertweg 15,Lelystad,the Netherlands
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【分割の表示】特願2002−534844(P2002−534844)の分割
【原出願日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【出願人】(503136174)ペプスキャン システムズ ベー.フェー. (4)
【氏名又は名称原語表記】PEPSCAN SYSTEMS B.V.
【住所又は居所原語表記】Edelhertweg 15,Lelystad,the Netherlands
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]