説明

タンパク質結合部分を選択するための方法

標的に結合する結合部分を同定するための方法、組成物、および装置が提供される。上記結合部分をコードするベクターもまた提供される。上記方法は、以下の工程:上記結合部分を発現するためにこの結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、この結合部分が上記第1の宿主細胞の表面に提示される工程;その表面に上記結合部分を有する上記第1の宿主細胞を、標的にさらす工程;その表面に標的に結合した結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を、選択する工程、を包含する。特定の実施形態では、これらの方法は、上記結合部分をコードする核酸を、細胞分裂を必要としない様式で増幅させる工程を、さらに包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願番号第10/457,943号(出願日2003年6月9日)に対して優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
標的に結合する結合部分を同定するための方法、組成物、および装置が提供される。潜在的結合部分をコードするベクターもさらに提供される。特定の実施形態では、細胞による潜在的結合部分の提供、標的に結合する結合部分の選択、および結合部分をコードする核酸の増幅のための方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
(背景)
種々の標的に結合するポリペプチドの検出および同定は、公知であり、かつ有用である。このような手順が使用されてもよい例示的な分野は、細胞シグナリング、受容体リガンド相互作用および薬物開発の分野における、治療、薬物の検証、および基礎研究を含んでもよい。ポテンシャル結合ポリペプチドの同定方法は、動物の免疫化、ハイブリドーマ技術、ファージディスプレイおよび細胞表面ディスプレイを含む。これらの方法は、典型的には、典型的に増殖のための長期間のインキュベーションを含む連続的な一連の増幅およびスクリーニングを必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
特定の実施形態では、標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法が提供される。特定の実施形態では、これらの方法は、以下の工程:潜在的結合部分を発現するために上記潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、上記結合部分が上記第1の宿主細胞の表面に提示される工程;その表面に潜在的結合部分を有する上記第1の宿主細胞を標的にさらす工程;その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程を包含する。特定の実施形態では、これらの方法は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を細胞分裂を必要としない様式で増幅させる工程をさらに包含し、上記増幅する工程は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞を少なくとも1つの選択された上記第1の宿主細胞にさらす工程;および上記潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す工程を包含する。特定の実施形態では、これらの方法は、上記標的に結合する潜在的結合部分を同定する工程をさらに包含する。
【0005】
特定の実施形態では、上記潜在的結合部分をコードする核酸が上記第2の宿主細胞に移された後、上記第2の宿主細胞が、以下の工程:潜在的結合部分を発現する第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、潜在的結合部分が上記第2の宿主細胞の表面上に提示される、工程;その表面に結合する潜在的結合部分を有する第2の宿主細胞を標的にさらす工程;そしてその表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を選択する工程を包含する一連の選択に供される。
【0006】
特定の実施形態では、標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法が提供される。特定の実施形態では、これらの方法は、以下の工程:潜在的結合部分を発現するために潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、上記潜在的結合部分が上記第1の宿主細胞の接近可能な区画に提示される工程;それらの接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する上記第1の宿主細胞を標的にさらす工程;標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程を包含する。特定の実施形態では、この方法は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を細胞分裂を必要としない様式で増幅させる工程であって、上記増幅する工程は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらす工程;および上記潜在的結合部分をコードする核酸を第2の宿主細胞に移す工程;および上記標的に結合する潜在的結合部分を同定する工程をさらに包含する。
【0007】
特定の実施形態では、上記潜在的結合部分をコードする核酸が上記第2の宿主細胞に移された後、上記第2の宿主細胞が、以下の工程:潜在的結合部分を発現する第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、潜在的結合部分が上記第2の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される、工程;接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する第2の宿主細胞を標的にさらす工程;標的に結合した接近可能な区画中の潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を選択する工程を包含する一連の選択に供される。
【0008】
特定の実施形態では、標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法が提供される。特定の実施形態では、当該方法は、以下の工程:潜在的結合部分を発現するために潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、上記結合部分が上記第1の宿主細胞の表面に提示される工程;その表面に潜在的結合部分を有する上記第1の宿主細胞を標的にさらす工程;標的に結合したその表面の潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程を含む。特定の実施形態では、この方法は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程をさらに包含し、上記増幅する工程は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞の培養物を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらす工程;および上記潜在的結合部分をコードする核酸を第2の宿主細胞に移す工程を包含する。特定の実施形態では、この方法は、上記標的を結合する潜在的結合部分を同定する工程をさらに包含する。
【0009】
特定の実施形態では、上記潜在的結合部分をコードする核酸が上記第2の宿主細胞に移された後、上記第2の宿主細胞が、以下の工程:潜在的結合部分を発現するために第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、潜在的結合部分が上記第2の宿主細胞の表面上に提示される、工程;その表面の潜在的結合部分を有する第2の宿主細胞を標的にさらす工程;その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を選択する工程を包含する一連の選択に供される。
【0010】
特定の実施形態では、標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法が提供される。特定の実施形態では、当該方法は、以下の工程:潜在的結合部分を発現するために潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、上記潜在的結合部分が上記第1の宿主細胞の接近可能な区画に提示される工程;それらの接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する上記第1の宿主細胞を標的にさらす工程;標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程を包含する。特定の実施形態では、この方法は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程をさらに包含し、上記増幅する工程は、上記潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞の培養物を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらす工程;および上記潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す工程をさらに包含する。特定の実施形態では、この方法は、上記標的に結合する潜在的結合部分を同定する工程をさらに包含する。
【0011】
特定の実施形態では、上記潜在的結合部分をコードする核酸が上記第2の宿主細胞に移された後、上記第2の宿主細胞が、以下の工程:潜在的結合部分を発現する第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、潜在的結合部分が上記第2の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される、工程;その接近可能な区画中に結合する潜在的結合部分を有する第2の宿主細胞を標的にさらす工程;標的に結合した接近可能な区画中の潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を選択する工程を包含する一連の選択に供される。
【0012】
特定の実施形態では、ポリペプチドをコードするベクターが提供される。特定の実施形態では、上記ポリペプチドは、以下:宿主細胞中で発現する場合、接近可能な区画または細胞外の空間内へのポリペプチドの少なくとも一部分の分泌を可能にする少なくとも1つの分泌リーダーおよびキャリアタンパク質;標的に対して結合するための試験される潜在的結合部分;およびポリペプチドの少なくとも一部分を宿主細胞の内膜または外膜のいずれかに結合するアンカー部分を含み、ここで、ベクターが宿主細胞に含まれる場合、この宿主細胞は別の宿主細胞に上記ベクターを移すことが可能であり;および上記ベクターは、核酸を移すための少なくとも1つのエレメントを含む。
【0013】
特定の実施形態では、ベクターを含む移動剤が提供される。特定の実施形態では、ベクターを含むファージが提供される。特定の実施形態では、複数のベクターを含むライブラリが提供され、ここで各ベクターは、異なる潜在的結合部分をコードする異なる核酸配列を含む。
【0014】
特定の実施形態では、ポリペプチドをコードするベクターが提供される。特定の実施形態では、上記ポリペプチドは、以下:宿主細胞中に発現される場合、接近可能な区画または細胞外の空間内へのポリペプチドの少なくとも一部分の分泌を可能にする分泌リーダー;標的への結合について試験される潜在的結合部分;およびポリペプチドを宿主細胞の接近可能な区画に対して移動することを指向するシグナル部分を含み、ここで、ベクターが宿主細胞に含まれる場合、この宿主細胞は別の宿主細胞に上記ベクターを移すことが可能であり;および上記ベクターは、核酸を移すための少なくとも1つのエレメントを含む。
【0015】
特定の実施形態では、ベクターをコードする移動剤が提供される。特定の実施形態では、ベクターを含むファージが提供される。特定の実施形態では、複数のベクターを含むライブラリが提供され、ここで、各ベクターは、異なる潜在的結合部分をコードする異なる核酸配列を含む。
【0016】
特定の実施形態では、ポリペプチドを含むベクターが提供される。特定の実施形態では、上記ポリペプチドは、以下:宿主細胞中に発現される場合、宿主細胞中の接近可能な区画または細胞外の空間内へのポリペプチドの少なくとも一部分の分泌を可能にする分泌リーダー;ペプチダーゼ存在下で分泌リーダーをポリペプチドから開裂させるリーダーペプチダーゼ開裂部位;標的に対して結合するための試験される潜在的結合部分;潜在的結合部分に対する2次構造を提供する骨格ペプチド;宿主細胞の内膜または外膜のいずれかにポリペプチドの一部分を結合するアンカー部分;および潜在的結合部分とアンカー部分との間に配置されるリンカーペプチドを含む。特定の実施形態では、上記ベクターは以下:オペレーターおよびイニシエーターのうち少なくとも1つから選択される制御領域;RNAポリペラーゼを結合可能にするプロモーター領域;転写開始部位;Shine−Delgarno配列を含むリボソーム結合部位;開始コドン;停止コドン;および転写ターミネーターをさらに含み;ここで、ベクターが宿主細胞に含まれる場合、この宿主細胞は別の宿主細胞に上記ベクターを移すことが可能であり;および上記ベクターは、核酸を移すための少なくとも1つのエレメントを含む。
【0017】
特定の実施形態では、以下:潜在的結合部分を有する第1のバクテリア細胞を標的にさらすコンポーネント;標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの宿主細胞を標的に結合していない第1の宿主細胞から分離するコンポーネント;および潜在的結合部分をコードする核酸をもたない宿主細胞の培養物を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらすコンポーネントを含む装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(本発明の特定の実施形態の詳細な説明)
上述の一般的な記載および以下の詳細な説明の両方が例示的および説明的なもののみであり、請求されるような本発明を制限するものではないことが理解される。本出願において、もし特に確定していなければ、単数形の使用は複数を含む。本出願において、他に言及しない限り、「または」は「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」、および他の形態、例えば「含む(includes)」および「含まれる(included)」の使用は限定されない。また、「エレメント」または「コンポーネント」は、他に特に言及されない限り、1つのユニットを含むエレメントおよびコンポーネントならびに1つより多いサブユニットを含むエレメントおよびコンポーネントの両方を包含する。
【0019】
本願明細書において使用されるセクションの見出しは、編成のためのみの目的であり、記載される課題を限定するものと解釈されるべきではない。本出願において引用されるすべての文書、または文書の一部分(限定されないが、特許、特許出願、文献、書籍および論文を含む)は、任意の目的のためにその全体を参考として本願明細書に組み込まれる。
【0020】
標準的な技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養および形質転換(例えば、化学方法、エレクトロポレーション、リポフェクション等)のために用いられてもよい。酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書に従って行ってもよいか、または従来技術において共通に達成されているように、または本願明細書に記載されているように行ってもよい。上述の技術および手順は、一般的に、当該技術分野で周知の従来技術に従って、および本願明細書全体で引用され議論される種々の一般的およびさらに特定の参考文献に記載されるように行われてもよい。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)(任意の目的のために参考として本明細書に組みこまれる)を参照。特定の定義が提供されない限り、組み合わせて使用される命名法、および本明細書中で記載される分析化学、合成有機化学、および医学および薬学の実験手順および技術は周知であり、当該技術分野で共通に使用される。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬学的調製、処方化、および送達のために使用されてもよい。
【0021】
(定義および用語)
本明細書中で用いられる場合、用語「ヌクレオチド塩基」は、置換型および非置換型の芳香環を意味する。一定の態様において、芳香環は、少なくとも1個の窒素原子を含む。一定の態様において、ヌクレオチド塩基は、適当な相補的ヌクレオチド塩基とともに、ワトソン−クリック型および/またはフーグステン(Hoogsteen)型水素結合を形成し得る。例示的なヌクレオチド塩基およびこれらのアナログとしては、天然のヌクレオチド塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、および、天然のヌクレオチド塩基のアナログ(例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザ−8−アザグアニン、7−デアザ−8−アザアデニン、N6−Δ2−イソペンテニルアデニン(6iA)、N6−Δ2−イソペンテニル−2−メチルチオアデニン(2ms6iA)、N2−ジメチルグアニン(dmG)、7−メチルグアニン(7mG)、イノシン、ネブラリン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、プソイドシトシン、プソイドイソシトシン、5−プロピニルシトシン、イソシトシン、イソグアニン、7−デアザグアニン、2−チオピリミジン、6−チオグアニン、4−チオチミン、4−チオウラシル、O−メチルグアニン、N−メチルアデニン、O−メチルチミン、5,6−ジヒドロチミン、5,6−ジヒドロウラシル、ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン(例えば、米国特許第6,143,877号および第6,127,121号、ならびにPCT公開出願第WO 01/38584号参照)、エテノアデニン、インドール類(例えば、ニトロインドールおよび4−メチルインドール)、ならびにピロール類(例えば、ニトロピロール)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例示的なヌクレオチド塩基が、例えば、Fasman,1989,Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,pp.385〜394、CRC Press,Boca Raton,Fla、およびそこで引用されている文献に記載されている。
【0022】
本明細書中で用いられる場合、用語「ヌクレオチド」とは、糖(例えば、リボース、アラビノース、キシロース、およびピラノース)ならびにこれらの糖のアナログのC−1’炭素に結合したヌクレオチド塩基を含む化合物をいう。ヌクレオチドという用語はまた、ヌクレオチドアナログも包含する。この糖は、置換型でも非置換型でもよい。置換型リボース糖としては、1個以上の炭素原子(例えば2’−炭素原子)が、同一または別個の、Cl、F、−R、−OR、−NR(ここで、各Rは、別々に、H、C〜Cアルキル、もしくはC〜C14アリールである)、またはハロゲン基によって置換されているリボースが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なリボースとしては、2’−(C1−C6)アルコキシリボース、2’−(C5−C14)アリールオキシリボース、2’,3’−ジデヒドロリボース、2’−デオキシ−3’−ハロリボース、2’−デオキシ−3’−フルオロリボース、2’−デオキシ−3’−クロロリボース、2’−デオキシ−3’−アミノリボース、2’−デオキシ−3’−(C1−C6)アルキルリボース、2’−デオキシ−3’−(C1−C6)アルコキシリボース、および2’−デオキシ−3’−(C5−C14)アリールオキシリボース、リボース、2’−デオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、2’−ハロリボース、2’−フルオロリボース、2’−クロロリボース、および、2’−アルキルリボース(例えば、2’−O−メチル,4’−α−アノマーヌクレオチド、1’−α−アノマーヌクレオチド、2’−4’−および3’−4’−に結合した、ならびに他の「ロックされた(locked)」ヌクレオチドすなわち「LNA」、二環式糖修飾体(例えば、PCT公開出願第WO 98/22489号、同第WO 98/39352号、および同WO 99/14226号など参照))が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドの中にある例示的なLNA糖アナログとしては、以下の構造体:
【0023】
【化1】

が挙げられるが、これらに限定されない。式中、Bはいずれのヌクレオチドであってもよい。
【0024】
リボースの2’位または3’位の修飾基としては、水素、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、アリルオキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、メトキシエチル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アジド基、アミノ基、アルキルアミノ基、フルオロ基、クロロ基、およびブロモ基が挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチドとしては、天然のD型光学異性体、およびL型光学異性体が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Garbesi(1993)Nucl.Acids.Res.21:4159−65;Fujimori(1990)J.Amer.Chem.Soc.112:7435;Urata,(1993)Nucleic Acids Symposium Ser.No.29:69−70参照)。ヌクレオチド塩基が、プリン基(例えば、AまたはG)の場合、リボース糖は、ヌクレオチド塩基のN−位に結合している。ヌクレオチド塩基が、ピリミジン基(例えば、C、TまたはU)の場合、リボース糖は、ヌクレオチド塩基(プソイドウリジンを除く)のN−位に結合している。プソイドウリジンでは、ウラシルヌクレオチド塩基のC5位にペントース糖が結合している(例えば、KornbergとBaker,(1992)DNA Replication,第2版、Freeman,San Francisco,CA参照)。
【0025】
ヌクレオチドのペントースの1個以上の炭素は、式:
【0026】
【化2】

をもつリン酸エステルにより置換され得る。
式中、αは0から4までの整数である。一定の態様において、αは2であり、リン酸エステルが、ペントースの3’−炭素または5’−炭素に結合している。一定の態様において、ヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基がプリン、7−デアザプリン、ピリミジン、またはこれらのアナログであるヌクレオチドである。「ヌクレオチド5’−三リン酸」とは、5’位に三リン酸エステル基を有するヌクレオチドをいい、時に、「NTP」、または「dNTP」および「ddNTP」と表記して、リボース糖の構造的特徴を指し示す。三リン酸エステル基としては、種々の位置にある酸素に対する硫黄置換物(例えば、α−チオ−ヌクレオチド5’−三リン酸)が挙げられる。ヌクレオチドの化学の概説については、Shabarova,Z.およびBogdanov,A.Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,VCH,New York,1994参照。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、用語「ヌクレオチドアナログ」とは、ペントース糖、および/またはヌクレオチド塩基、および/または、ヌクレオチドの1個以上のリン酸エステルが、それぞれのアナログで置換されている態様をいう。一定の態様において、例示的なペントース糖アナログは、上記されているものである。一定の態様において、ヌクレオチドアナログは、上記したようなヌクレオチド塩基アナログを有する。一定の態様において、例示的なリン酸エステルのアナログとしては、アルキルホスホネート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリデート(phosphoroanilidate)、ホスホロアミデート、ボロノホスフェート(boronophosphate)などが挙げられるが、これらに限定されず、そして例示的なリン酸エステルのアナログは、会合する対イオンを包み得る。
【0028】
また、「ヌクレオチドアナログ」の定義の範囲内に含まれるのは、DNA/RNAのリン酸エステルおよび/または糖のリン酸エステル骨格が、種々の型のヌクレオチド間結合に置換されているポリヌクレオチドアナログに重合し得るヌクレオチドアナログの単量体である。例示的なポリヌクレオチドアナログとしては、ポリヌクレオチドの糖リン酸骨格がペプチド骨格によって置換されているペプチド核酸が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は互換的に使用され、ヌクレオチド単量体の一本鎖ポリマーおよび二本鎖ポリマー(ヌクレオチド間リン酸エステル結合、または、ヌクレオチド間アナログ、および、会合する対イオン(例えば、H、NH、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Naなど)によって結合している2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチド(RNA)が挙げられる)を意味する。核酸は、全体がデオキシリボヌクレオチドから、全体がリボヌクレオチドから、または、これらのキメラ混合体から構成され得る。ヌクレオチド単量体のユニットは、本明細書に記載されている任意のヌクレオチド(天然のヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。核酸の大きさは、典型的には、数個(例えば、5〜40個)の単量体ユニット(この場合、当技術分野において時としてオリゴヌクレオチドと称されることがある)のサイズから、数千の単量体ヌクレオチドユニットまでの範囲にある。別段の記載がない限り、核酸配列が表示されるときはいつも、当然ながら、ヌクレオチドは、特段の記載がない限り、左から右に5’から3’の順となり、また、「A」はデオキシアデノシンまたはそのアナログを示し、「C」はデオキシシトシンまたはそのアナログを示し、「G」はデオキシグアノシンまたはそのアナログを示し、そして、「T」はチミジンまたはそのアナログを示す。
【0030】
核酸としては、ゲノムDNA、cDNA、hnRNA、mRNA、rRNA、tRNA、断片化された核酸、合成核酸、細胞下オルガネラ(subcellular organelle)(例えば、ミトコンドリアもしくはクロロプラスト)から得られる核酸、および、生物学的サンプル上またはその中で存在し得る、微生物ならびにDNAウイルスもしくはRNAウイルスから得られる核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
核酸は、一種類の糖部分(例えばRNAおよびDNAの場合)、または、異なった糖部分の混合物(例えば、RNA/DNAキメラの場合)から構成され得る。一定の態様において、核酸は、以下の構造式に従う、リボポリヌクレオチドおよび2’−デオキシリボポリヌクレオチドである。
【0032】
【化3】

式中、各Bは、それぞれ個別に、ヌクレオチドの塩基部分(例えば、プリン、7−デアザプリン、ピリミジン、またはアナログヌクレオチド)であり;各mは、各ヌクレオチドの長さを規定し、0から数千、数万、またはそれ以上の範囲となり得;各Rは、水素、ハロゲン、−R”(ここで、各R”は、それぞれ別個に、(C1〜C6)アルキルもしくは(C5〜C14)アリールである)、−OR”、および−NR”R”を含む群からそれぞれそれぞれ別個に選択されるか、または、2個の隣接するRは、リボース糖が2’,3’−ジデヒドロリボースとなるように一緒に結合を形成し;そして、各R’は、それぞれ別個に、ヒドロキシル基または
【0033】
【化4】

であり、式中、αは0、1、または2である。
【0034】
上記図示したリボポリヌクレオチドおよび2’−デオキシポリヌクレオチドの一定の態様において、ヌクレオチド塩基Bは、既述したとおり、糖部分のC1’炭素に共有結合している。
【0035】
本明細書中で言及される用語「オリゴヌクレオチド」としては、天然に生じるヌクレオチド、ならびに、天然に生じるヌクレオチド結合および/または非天然に生じるオリゴヌクレオチド結合によって一緒に結合した改変ヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドは、一般的に、200塩基長以下を含むポリヌクレオチドサブセットである。一定の態様では、オリゴヌクレオチドは、10塩基長〜60塩基長である。一定の態様では、オリゴヌクレオチドは、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長または20塩基長〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子変異体の構築に使用するために、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドであってもアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0036】
用語「天然に生じるヌクレオチド」としては、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが挙げられる。用語「改変ヌクレオチド」としては、改変または置換された糖基等を有するヌクレオチドが挙げられる。用語「オリゴヌクレオチド結合」としては、オリゴヌクレオチド結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、ホスホロアミデート等が挙げられる。例えば、LaPlanche et al.Nucl.Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984);Stein et al.Nucl.Acids Res.16:3209(1988);Zon et al.Anti−Cancer Drug Design 6:539(1991);Zon et al.Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87−108(F.Eckstein,Ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stec et al.米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543(1990)(これらの開示は、本明細書に任意の目的で参考として援用される)参照。オリゴヌクレオチドは、検出のためのラベルを含み得る。
【0037】
また、用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、核酸アナログ、ポリヌクレオチドアナログ、およびオリゴヌクレオチドアナログを包含する。用語「核酸アナログ」、「ポリヌクレオチドアナログ」、および「オリゴヌクレオチドアナログ」は互換的に使用され、本明細書中で使用される場合、少なくとも1個のヌクレオチドアナログ、ならびに/あるいは少なくとも1個のリン酸エステルアナログおよび/または少なくとも1個のペントース糖アナログを含む核酸を意味する。また、核酸アナログの定義の範囲内に包含されるのは、リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合が、他の型の結合(例えば、N−(2−アミノエチル)−グリシンアミドおよびその他のアミド類(例えば、Nielsen et al.1991、Science 254:1497−1500;WO 92/20702;米国特許第5,719,262号、米国特許第5,698,685号参照)、モルホリノ(例えば、米国特許第5,698,685号、米国特許第5,378,841号、米国特許第5,185,144号参照)、カルバメート(例えば、StirchakおよびSummerton、1987、J.Org.Chem.52:4202参照)、メチレン(メチルイミノ)(例えば、Vasseur et al.1992、J.Am.Chem.Soc.114:4006参照)、3’−チオホルムアセタール(例えば、Jones et al.1993、J.Org.Chem.58:2983参照)、スルファメート(例えば、米国特許第5,470,967号参照)、一般的にはPNAと称される2−アミノエチルグリシン(例えば、Buchardt,WO 92/20702;Nielsen、(1991)Science 254:1497−1500参照)、およびその他(例えば、米国特許第5,817,781号;FrierおよびAltman,1997,Nucl.Acids Res.25:4429およびそこで引用されている文献参照))で置換された核酸である。リン酸エステルのアナログとしては、(i)C−Cアルキルホスホネート(例えばメチルホスホネート);(ii)ホスホルアミデート;(iii)C−Cアルキル−ホスホトリエステル;(iv)ホスホロチオエート;および(v)ホスホロジチオエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
用語「アニーリング」および「ハイブリダイゼーション」は互換的に使用され、1つの核酸が別の核酸と塩基対合する相互作用を意味し、この相互作用は、二重鎖、三重鎖、またはその他の高次構造の形成をもたらす。一定の態様において、一次的な相互作用は、塩基特異的である(例えば、ワトソン−クリック型およびフーグステン(Hoogsteen)型の水素結合によるA/TおよびG/C)。一定の態様において、塩基のスタッキングおよび疎水性相互作用も二重鎖の安定に寄与し得る。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペチド」および「タンパク質」は、相互変換可能に使用され、カルボキシル(COOH)基とアミン(NH)基との間のポリペプチド結合で結合したアミノ酸モノマーのポリマーを意味する。ペプチドは、全体的に天然に存在するアミノ酸性モノマー、天然に存在しないアミノ酸、またはそれらのキメラ混合物からなっていてもよい。他に示されない限り、アミノ酸配列が示される場合はいつでも、左から右への順序でアミノ酸がN末端からC末端へと存在すると理解される。用語「ポリペプチド」は、低分子ペプチド、それより高分子のポリペチド、一本のポリペプチド鎖を含有するタンパク質、複数のポリペプチド鎖を含有するタンパク質、および複数のサブユニットタンパク質を指してもよい。
【0040】
アミノ酸に対する変化としては、グリコシル化、メチル化、リン酸化、ビオチン化、およびアミノ酸配列を変化させないタンパク質に対する任意の共有結合付加および非共有結合付加が挙げられるが、これらに限定されない。「アミノ酸」は、本明細書中で使用される場合、酵素的または合成的のいずれかでポリペプチドまたはタンパク質に組み込まれてもよい天然または非天然の任意のアミノ酸を指す。
【0041】
用語「標的」および「標的分子」は、本明細書中で使用される場合、結合部分が探索される任意の目的分子を指す。例示的な標的としては、限定されないが、ペプチド成長因子、医薬品、細胞シグナル伝達分子、血液タンパク質、細胞表面レセプター分子の一部、核レセプターの一部、ステロイド分子、ウィルスタンパク質、抗体、抗体の一部、炭水化物、酵素、酵素の活性部位、酵素の結合部位、酵素の一部、低分子、薬物、低分子の薬物、細胞、細菌、タンパク質、タンパク質のエピトープ、タンパク質−タンパク相互作用に関与するタンパク質の表面、細胞表面エピトープ、診断用タンパク質、診断マーカー、オープンリーディングフレームによってコードされるペプチド、植物タンパク質、タンパク質−タンパク質相互作用に関与するペプチド、および食品が挙げられる。
【0042】
用語「標識」は、本明細書中で使用される場合、任意のタグ、マーカー、または同定可能な部分を指す。多くの標識が本発明において使用されてもよいことを多くの当業者は理解する。例えば、標識としては、限定されないが、フルオロフォア、放射性同位体、クロモゲン、酵素標識、抗原、重金属、染料、磁気プローブ、磁気粒子、常磁性粒子、電気泳動分子および粒子、誘電泳動粒子(dielectrophoretic particle)、リン光基(phosphorescence group)、親和性結合セットのメンバー、電気化学的検出部分、化学発光基、ビオチニル基、別の部分によって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、可動性修飾因子および誘電泳動的な変化を与える粒子が挙げられる。標識として使用される例示的なフルオロフォアとしては、限定されないが、ランタニドリン光体、FITC、ローダミン、シアニン3(Cy3)、シアニン5(Cy5)、フルオレセイン、VicTM、LizTM、TamraTM、5−FamTM、6−FamTM、およびTexas Red(Molecular Probes)が挙げられる(VicTM、LizTM、TamraTM、5−FamTM、および6−FamTM、はすべてApplied Biosystems,Foster City,CAから入手可能)。例示的な放射性同位体としては、限定されないが、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、32P、および33Pが挙げられる。例示的な酵素標識としては、限定されないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼが挙げられる。例示的な親和性結合セットとしては、限定されないが、ビオチン/アビジン、抗体/抗原、ビオチン/ストレプトアビジン、ヘキサヒスチジン/ニッケルNTA、ペンタヒスチジン/ニッケルNTA、ヘキサヒスチジン/抗ヘキサヒスチジン、e−タグ/抗e−タグ抗体、カルモジュリン結合性ペプチド/カルモジュリン、フルオレセイン/抗フルオレセイン抗体、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン抗体、リガンド/レセプター、酵素/基質等が挙げられ、ここで、検出可能なシグナルを達成するために、1つのメンバーはそのセットの他のメンバーと相互作用する。1つの例示的な親和性結合セットとしては、標的に結合したビオチン標識および蛍光標識と接合するアビジン部分が挙げられる。特定の実施形態において、本明細書中に開示される標的、潜在的な結合部分、または標的もしくは潜在的な結合部分のいずれかに結合した他の部分のうち1つ以上が1つ以上の標識をさらに含んでもよいことを当業者は理解する。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識化する種々の方法は当該技術分野で公知であり、使用されてもよい。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「分離標識」は、分離標識に結合した分子を分離標識に結合していない分子から分離するために使用される標識を指す。例示的な分離標識としては、限定されないが、親和性結合セット、可動性修飾因子、磁気粒子、別の部分によって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、可動性修飾因子、ラテックス粒子、常磁性粒子、特定の誘電泳動的な特性を有する粒子、荷電した粒子および誘電泳動的な変化を与える粒子が挙げられる。特定の実施形態では、分離標識は、分離を容易にするために他の部分と相互作用してもよく、例えば、標的分子に結合したビオチン標識は、他の分子から標的分子を効率よく分離するために、粒子に結合したストレプトアビジン部分に結合してもよい。
【0044】
「検出可能に異なる」は、本明細書中で使用される場合、異なる標識からの検出可能なシグナルが少なくとも1つの検出方法によって互いに識別可能であることを意味する。本明細書中で使用される場合、検出方法としては、限定されないが、磁場および常磁場分割、反磁性分割、電気泳動による分割、誘電泳動による分割、蛍光励起細胞分離捕集装置(FACS;fluorescence−activated cell sorting)、蛍光検出、および比色検出が挙げられる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、基質で「コーティングされた」粒子は、表面に結合した基質を有する粒子、および粒子中に包含される基質を有する粒子を指す。特定の実施形態では、基質でコーティングされた粒子は、その表面の一部分に基質を有する粒子である。特定の実施形態では、基質でコーティングされた粒子は、その表面全体に基質を有する粒子である。
【0046】
用語「結合部分」は、本明細書中で使用される場合、標的に結合する検出可能な能力を示す任意の部分を指す。標的に結合する検出可能な能力としては、限定されないが、結合部分の結合を結合部分以外の別の部分を介して間接的に検出する能力が挙げられる。結合部分のいくつかの種類としては、これらに限定されないが、レセプター、抗体、酵素、ポリペプチド、炭水化物、多糖類、他の低分子、および接近可能な区画中または宿主細胞の表面に存在可能な任意の成分の一部分が挙げられると特徴付けられている。特定の実施形態では、結合部分のすべての成分が標的に結合するための結合部分を必要とするわけではない。特定の実施形態では、結合部分内での特定の成分の置換はさらに、結合部分が標的に結合する能力を保持することを可能とし得る。
【0047】
さらに、「特異的な結合部分」は、1つ以上の標的に特異的に結合する能力を示す結合部分を指す。「特異的な結合部分」は1つ以上の標的以外の分子に結合してもよいが、1つ以上の標的以外の分子についての特異的な結合部分の親和性は、1つ以上の標的についての特異的な結合部分の親和性よりも有意に低い。特定の実施形態では、1つ以上の標的についての特異的な結合部分の親和性は、1つ以上の標的以外の分子についての特異的な結合部分の親和性よりも少なくとも5%大きい。特定の実施形態では、1つ以上の標的についての特異的な結合部分の親和性は、1つ以上の標的以外の分子についての特異的な結合部分の親和性よりも少なくとも10%大きい。特定の実施形態では、1つ以上の標的についての特異的な結合部分の親和性は、1つ以上の標的以外の分子についての特異的な結合部分の親和性よりも少なくとも15%大きい。特定の実施形態では、1つ以上の標的についての特異的な結合部分の親和性は、1つ以上の標的以外の分子についての特異的な結合部分の親和性よりも少なくとも20%大きい。逆に、「非特異的な結合部分」は、標的および非標的分子の両方について親和性を有する部分であり、ここで、1つ以上の標的についての非特異的な結合部分の親和性は、1つ以上の標的以外の分子についての非特異的な結合部分の親和性と有意に異ならない。
【0048】
用語「抗体」は、インタクトな抗体もしくはフラグメント、または抗原に特異的に結合するそれらの抗体の1つの鎖または両方の鎖のいずれかの誘導体を指す。特定の実施形態では、抗体フラグメントは、組み換えDNA技術によって製造される。特定の実施形態では、抗体フラグメントは、インタクトな抗体の酵素的または化学的開裂によって製造される。特定の実施形態では、抗体フラグメントは合成により製造される。特定の実施形態では、抗体フラグメントは化学的に製造される。抗体フラグメントとしては、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単鎖抗体、および単一ドメイン抗体が挙げられる。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「親和性結合セット」は、互いに特異的に結合する1セットの分子である。親和性結合セットとしては、限定されないが、ビオチンとアビジン、ビオチンとストレプトアビジン、レセプターとリガンド、抗体とリガンド、抗体と抗原、カルモジュリンとカルモジュリン結合タンパク質、ヘキサ−ヒスチジンとニッケルニトリロ酢酸(Ni−NTA)、ペンタ−ヒスチジンとニッケルニトリロ酢酸(Ni−NTA)、およびポリヌクレオチド配列とその相補体が挙げられる。特定の実施形態では、親和性結合セットは、抗体およびエピトープタグを含む。特定の実施形態では、エピトープタグは公知の抗体によって認識されるペプチドである。特定の実施形態では、結合される親和性結合セットは、結合していなくてもよい。例えば、特定の実施形態では、ハイブリダイズされるポリヌクレオチド配列は変性されていてもよく、ストレプトアビジンに結合したビオチンは加熱されて結合しない状態になってもよい。特定の実施形態では、抗体は、pHを下げるかまたはマグネシウム濃度を高めることによってそれらの標的から放出されてもよい。特定の実施形態では、2−イミノビオチンに結合したストレプトアビジンはpHを下げることによって放出されてもよい。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「ライブラリ」は、異なる核酸の任意の集合を指す。特定の実施形態では、ライブラリのメンバーは、それらの生物学的起源によって特徴づけられてもよく、例えば、非免疫化脾臓中で発現するmRNAをあらわすライブラリが作成されてもよい。特定の実施形態では、ライブラリは、ランダムペプチドをコードする核酸の集合であってもよい。ランダムペプチドはさらに、特定のアミノ酸残基、または特定の長さのペプチドを含みやすいように改変されてもよい。特定の実施形態では、用語「ライブラリ」は、ベクター中に含まれる異なる核酸配列の集合を指してもよい。特定の実施形態では、異なる核酸配列は別個のベクター中に含まれる。特定の実施形態では、別個のベクターは、それらの中に含まれる異なる核酸配列を除いて同一である。特定の実施形態では、用語「ライブラリ」はさらに、ベクター中に含まれない異なる核酸の集合を指してもよい。特定の実施形態では、用語「ライブラリ」は、別個のベクター中に含まれる異なる核酸配列の集合を指してもよい。特定の実施形態では、別個のベクターは、それらの中に含まれる異なる核酸配列を除いて同一である。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「ブロッキング分子」は、選択された非特異的な結合部分の量を減らすためのプロセスにおいて使用される分子を指す。例えば、特定の実施形態では、ホスホリル化タンパク質に特異的に結合する結合部分を発見することを試みる場合、ホスホリル化していないタンパク質はブロッキング分子として使用されてもよい。このような実施形態では、ホスホリル化していないタンパク質は、ホスホリル化タンパク質に対する結合と競争し得る非特異的な潜在的な結合部分に結合する。別の例は、ストレプトアビジンでコーティングされた粒子が分離工程の間に使用される場合、非特異的な結合部分の選択を減らすための宿主細胞の選択の間に、「ブロッキング分子」として遊離のストレプトアビジンを含んでもよい。別の例は、疾患細胞上に固有に存在する分子に結合する特異的な結合部分を同定するために、疾患細胞に対する結合部分の選択の間に「ブロッキング分子」として正常細胞を含んでもよい。ブロッキング分子と相互作用する非特異的な結合部分よりも特異的な潜在的な結合部分を選択するためのブロッキング分子の使用は、「ネガティブ選択」と称されてもよい。
【0052】
本明細書中で使用される場合、用語核酸「増幅」は、核酸の少なくとも1つのコピーを複製し、その核酸を有さない細胞にその核酸を移すことを指す。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「細胞分裂を必要としない様式で」の核酸増幅は、有糸細胞分裂の結果ではない核酸の増幅方法を指す。細胞分裂を必要としない様式での核酸増幅は、細胞分裂が、細胞分裂の結果ではない増幅と共に起こる方法を排除しない。例示的な方法としては、限定されないが、ファージ増幅およびアセンブリ、ヘルパーファージの使用を介するファージアセンブリ、トランスフェクション、接合、形質転換および形質導入が挙げられる。
【0054】
「非実質的な細胞分裂」を用いての核酸増幅は、細胞が実質的な時間量で細胞分裂を受けない核酸増幅を指す。特定の実施形態では、細胞は10時間より多い時間細胞分裂を受けない。特定の実施形態では、細胞は6時間より多い時間細胞分裂を受けない。特定の実施形態では、細胞は4時間より多い時間細胞分裂を受けない。特定の実施形態では、細胞は3時間より多い時間細胞分裂を受けない。特定の実施形態では、細胞は2時間より多い時間細胞分裂を受けない。特定の実施形態では、細胞は1時間より多い時間細胞分裂を受けない。
【0055】
本明細書中で使用される場合、1つの細胞から別の細胞へと核酸を「移すこと」は、1つの細胞中の核酸が別の細胞中に入る任意の方法を指す。例示的な方法は、外的操作を使用して移動を誘発する活性的な方法、および核酸が任意の外的操作なく移される方法の両方を含む。このような方法としては、限定されないが、ファージ構築および感染;感染と組み合わせたヘルパーファージの使用を介するファージ構築;形質導入;接合;形質転換;およびトランスフェクションが挙げられる。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「核酸を移すための少なくとも1つのエレメント」は、1つの細胞から別の細胞へと核酸を移すために使用される少なくとも1つの核酸か、または1つの細胞から別の細胞へと核酸を移すために使用される少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸を指す。このようなエレメントとしては、限定されないが、ファージコートタンパク質をコードする核酸、ファージ構築に必要なタンパク質をコードする核酸、ファージ複製を行うための制御エレメントおよびバクテリア接合を可能にするf+線毛(pillus)エレメントが挙げられる。「核酸を移すための少なくとも1つのエレメント」を含むベクターとしては、限定されないが、ファージベクター、およびヘルパーファージの存在下でファージを構築するファージミド、F因子、性因子、エピソーム、およびプラスミドが挙げられてもよい。例示的なファージベクターとしては、限定されないが、M13の少なくとも一部分をコードするベクター、ラムダファージの非溶菌性形態の少なくとも一部分をコードするベクター、ヘルペスウイルスの少なくとも一部分をコードするベクター、およびサイトメガロウイルスの少なくとも一部分をコードするベクターが挙げられる。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語、細胞の「表面に」は、細胞の外側表面を指す。特定の実施形態では、潜在的結合部分が細胞の「表面に」提示される場合、潜在的結合部分は細胞と会合したままである。特定の実施形態では、ポリペプチドの一部分が細胞の外膜内に保持されるため、ポリペプチドが細胞の表面に結合する。特定の実施形態では、細胞の表面に提示されるポリペプチドの一部分は外膜の内側にある。
【0058】
本明細書中で使用される場合、用語、宿主細胞の「接近可能な区画」は、標的が潜在的結合部分に結合し得る細胞の一部分を指す。特定の実施形態では、接近可能な区画は、細胞の外膜の表面である。特定の実施形態では、潜在的結合部分は可溶性形態であってもよく、その部分はなお接近可能な区画中で宿主細胞と会合しており、ただし、潜在的結合部分は細胞の内側にある。接近可能な区画中の潜在的結合部分は、例えば、バクテリア細胞の外膜の内側部分に結合してもよく、バクテリア細胞の内膜の外側部分に結合してもよく、バクテリア細胞の内膜の内側部分に結合してもよく、または、潜在的結合部分は細胞の細胞内空間内に可溶化していてもよい。例示的な接近可能な区画としては、限定されないが、バクテリア細胞のペリプラズム間隙、細胞質内空間、エンドソーム、および真核細胞の液胞が挙げられる。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語、細胞に関する「種類」は、細胞の遺伝的に異なった株を指す。特定の実施形態では、2つの細胞の種類間の遺伝的な違いは1個の遺伝子であってもよい。特定の実施形態では、2つの細胞の種類間の遺伝的な違いは、ある細胞の種類において特定の染色体外エレメントが存在するが、別の細胞の種類には存在しないことであってもよい。特定の実施形態では、細胞の異なる種類は、同じ機能を行うことが可能であってもよいが、わずかに異なる目的のために使用されてもよい。例えば、特定の実施形態では、ある細胞の種類はあるタンパク質を産生するのによりよい性能を有してもよく、一方、別の細胞の種類は感染した場合にファージを産生するのによりよい性能を有してもよい。
【0060】
用語「ウイルス」および「ファージ」は、本願明細書において互換可能に使用される。
【0061】
用語「ヘルパーファージを使用する」は、増幅において使用されるタンパク質をコードするファージの使用を指す。特定の実施形態では、ヘルパーファージによってコードされるタンパク質は、ファージの構築および産生、ならびに/またはベクターの複製において使用される。特定の実施形態では、ヘルパーファージの非存在は、ベクターの複製またはファージの構築を防ぐ。
【0062】
用語「ウィルス構築」および「ファージ構築」は、タンパク質および核酸を、核酸を用いて細胞を感染させることが可能なウイルスおよびファージ粒子に構築されることを指す。本明細書中で使用される場合、用語「ウィルス構築」および「ファージ構築」は互換可能に使用される。
【0063】
用語「移動剤」は、核酸を細胞に移動することを補助する薬剤を指す。例示的な移動剤としては、限定されないが、ファージ;接合に関与するタンパク質をコードするベクター(例えば、限定されないが、性因子、F因子、エピソーム、および他の染色体外エレメント);およびベクターを細胞内に移すことを容易にする化学薬剤が挙げられる。移動剤として作用し得る例示的な化学物質としては、限定されないが、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、塩化マンガン、塩化カリウム、ジメチルスルホキシド、コバルトヘキサミン、カルシウムリン酸塩、DEAEデキストラン、リポソーム、カチオン脂質、ポリ−L−リジン、デンドリマー、ガラニン−マストパランキメラ配列、核局在化配列、および他のペプチドベースの細胞トランスポーターが挙げられる。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「複製」は、核酸の複製を指す。特定の実施形態では、複製はベクターの複製を指す。核酸の複製としては、限定されないが、プラスミド複製、エピソーム複製、F’複製、ファージ複製、および染色体外核酸エレメントの複製が挙げられる。
【0065】
用語「感染」は、本願明細書において使用される場合、ファージと宿主細胞との相互作用による、ファージによって保有されるベクターの宿主細胞への移動を指す。特定の実施形態では、感染は、細胞に結合し、ベクターを細胞に挿入するファージを含む。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「形質転換」は、移動剤を使用しない、細胞膜を介する細胞内への核酸の移動を指す。形質転換は、典型的には、核酸のバクテリア細胞への移動を指す。
【0067】
本明細書中で使用される場合、用語「トランスフェクション」は、感染以外の手段による、細胞膜を介する細胞内への核酸の移動を指す。トランスフェクションは、典型的には、核酸の真核細胞への移動を指す。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「形質導入」は、ファージによる、1つの細胞から別の細胞への核酸の移動を指す。特定の実施形態では、形質導入の間、細胞のゲノム由来の核酸が、ファージ構築中にファージベクターに組み込まれる。
【0069】
本明細書中で使用される場合、用語「接合」は、1つのバクテリア細胞から別のバクテリア細胞への核酸の移動を指す。接合は、典型的には、稔性因子(F+)をコードする核酸を含む。特定の実施形態では、F+配列は、小さな過剰ベクター(例えばエピソーム)に見出される。典型的には、F+を含有する細胞(F+細胞)がF+を含有しない細胞(F−細胞)の存在下にある場合、F+細胞は線毛を成長させ、F−細胞に結合する。特定の実施形態では、線毛に接続した後、F+を含有する核酸はF+細胞からF−細胞に移され、以前のF−細胞はF+細胞になる。
【0070】
(ファージディスプレイ)
「ファージディスプレイ」を用いて結合部分を選択することは知られている。「ファージディスプレイ」は、ファージの表面に提示される潜在的結合部分を試験することによって結合部分を選択する方法を指す。ファージディスプレイとは対照的に、本発明において、潜在的結合部分は、宿主細胞の表面に、または宿主細胞の接近可能な区画中に提示される。ファージディスプレイ法は、例えば、de Bruin,et al.,「Selection of High−Affinity Phage Antibodies from Phage Display Libraries」,Net.Biotechnol.,17:397−399(1999);McCafferty,「Phage Display:Factors Affecting Panning Efficiency」,in Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,Kay et al.eds.,Academic Press,(1996);Bass,et al.,「Hormone Phage:An Enrichment Method for Variant Proteins with Altered Binding Properties」,Proteins,8:309−314(1990);およびBarbas,et al.,「Assembly of Combinatorial Antibody Libraries On Phage Surfaces:The Gene III Site」,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,88:7978−7982(1991)に議論されている。
【0071】
結合部分の同定のファージディスプレイ法は、典型的には、いくつかの方法に従って、多くの日数を必要とする。ファージディスプレイの典型的な方法は以下の方法を含む。
【0072】
1日目、増殖が対数増殖期(mid−log phase)になるまで宿主細胞を増殖させる。次いで、ファージ濃度を決定するためにファージストックを滴定する。1倍濃度、0.1倍濃度、0.01倍濃度等の少量のファージが存在するようにファージストックを順次希釈する。次いで、これらの希釈物をそれぞれ使用して、異なる少量の宿主細胞を感染させ、次いで、寒天で平板培養し、ファージを滴定するために一晩増殖させる。標的を有するプレートを選択において使用するために調製する。
【0073】
2日目に、ファージ感染させるために宿主細胞を再び増殖させる。標的を有するプレートを洗浄して過剰の標的を除去する。ファージ力価を決定した後にファージストックを適切に希釈し、希釈したファージを標的を有するプレートの別個のウェルに添加する。所定期間のインキュベートの後、結合部分を発現するファージをプレートに結合した標的に結合させ、結合していないファージをプレートから洗い流し、プレートを洗浄して弱く結合したファージを除去し、結合したファージをプレートから溶出させる。次いで、プレートから溶出したファージを、ファージを順次希釈することによって滴定し、対数的に増殖するバクテリア細胞に希釈物を添加し、プレートで感染した細胞を平板培養し、上に記載されるように一晩増殖させる。同時に、溶出したファージを使用して、対数的に増殖した宿主細胞培養物の第2の部分を増殖のために感染させる。数時間後、ファージは宿主細胞に感染し、さらに多くのファージを産生し、順にさらに多くの宿主細胞が感染し、さらに多くのファージを産生する。数時間後、ファージが増幅し、単離され、既知の方法に従って濃縮される。
【0074】
3日目に、ファージの単離および濃縮が完成する。次いで、濃縮したファージを、上に記載されるように、順次希釈することによって滴定し、寒天プレート上で一晩増殖させる。標的を有するさらなるプレートを調製する。
【0075】
4日目に、タイタープレートからファージを計測し、ファージの濃度を決定する。次いで、標的プレートを用いた選択プロセスを繰り返す。次いで、上に記載されるように宿主細胞培養物を感染させることによって、溶出したファージを増幅させる。後で使用するためにさらなる宿主細胞の培養を開始する。次いで、増幅したファージを一晩滴定する。次の日に、4日目に行われたプロセスを繰り返す。
【0076】
ファージディスプレイ法によって結合部分を単離するためのプロセスは、選択、増幅、および滴定に数日間かかる場合がある。ファージディスプレイ法において、典型的には、ファージを再増幅させるたびにファージを一晩滴定する。これにより、プロセス全体を終えるのに数週間かかる場合がある。
【0077】
ファージの増幅および増殖の繰り返しは、単離される潜在的結合部分における偏りを可能にする。宿主細胞をゆっくりと増殖させるファージは選択プロセスの間にそれほど提示されないようになる。同様に、宿主細胞を迅速に増殖させるファージは選択プロセスの間に過剰に提示されるようになる。増幅中に増殖を延長させるにつれて、選択の回数が増え、選択における同様の偏りが増加する。特定のファージディスプレイ技術における選択の例示的なサイクルは図5に示される。
【0078】
さらに、ファージディスプレイ技術で、潜在的結合部分の発現レベルは、選択方法の効率に影響を及ぼす。より多くの潜在的結合部分が表面に発現すればするほど、それぞれの連続した選択ステップにおける結合部分の高濃度化の効率が高くなる。糸状ファージを使用するファージディスプレイ技術は、ファージ表面に潜在的結合部分を示すために潜在的結合部分に融合した異なるタンパク質を使用することができる。遺伝子IIIタンパク質を使用するファージディスプレイは、例えば、典型的には、ファージ表面にタンパク質の1〜5個のコピーを発現する。いくつかのタンパク質は、部分の約30コピーまでを表面に示すことが可能である場合がある。
【0079】
典型的には、ファージディスプレイにおける結合部分の選択効率は、標的に結合しないバックグラウンドファージの回収によって影響を受ける。多くのファージライブラリの使用は、目的の標的に結合する特異的な結合部分を選択する機会を増やす。しかし、大きなライブラリはさらに、目的の標的に結合しない潜在的結合部分をコードする非特異的に結合するバックグラウンドファージを得る機会も増やす。それに加えて、多くのファージは、選択プロセスにおいて使用される容器およびプレートの表面に非特異的に結合する場合がある。非特異的に結合するバックグラウンドファージの数は、結合部分の選択効率を下げる場合がある。
【0080】
初めのうち、開始するファージは、ファージプールの10メンバーごとに1〜10個の結合部分を含有してもよい。多数の選択ステップの終了時には、ファージプールの10メンバーごとに1〜10個の結合部分が存在していてもよい。典型的には、それぞれの選択プロセスについて、結合部分を産生するファージを10倍〜10倍高濃度化する。例えば、最初の結合、洗浄、溶出の後、最初のファージライブラリは、ライブラリの10〜10メンバーまで減っている場合がある。これらの選択されたファージの中で、実際に標的に結合する潜在的結合部分をコードするのは1〜10メンバーのみである場合がある。
【0081】
また、結合部分を発現するファージはプレートから溶出されなければならず、多くの高アフィニティー結合部分は溶出することがないことから、結合部分として選択されない。本発明の特定の実施形態では、非常に高いアフィニティーをもつ結合部分は選択されない。
【0082】
特定のファージディスプレイ技術を用いて、ファージを滴定し、細胞およびファージを遠心分離してファージから細胞を分離し、PEG沈殿を用いてファージを濃縮する。本発明の特定の実施形態では、ファージを滴定する必要はない。本発明の特定の実施形態では、遠心分離によってファージから細胞を分離する必要はない。本発明の特定の実施形態では、PEG沈殿を用いてファージを濃縮する必要はない。
【0083】
(バクテリア表面に発現する標的を用いたファージディスプレイ)
いくつかの方法、例えば、遅延型感染性パニング(delayed infectivity panning)(DIP)は、ファージディスプレイ技術を使用する。DIPは、Benhar et al.,「Highly Efficient Selection of Phage Antibodies Mediated by Display of Antigen as Lpp−OmpA’ Fusions on Live Bacteria」,J.Mol.Biol.301:893−904(2000)中に議論されている。
【0084】
DIPは、細胞表面で標的分子を産生する増殖F+バクテリア宿主を使用する。細胞を16℃で増殖させることによって宿主細胞を一時的にF−にする。これにより、ファージによる細胞の感染を防ぐ。
【0085】
それらの表面に潜在的結合部分を有するファージを、細胞表面に提示される標的分子を発現するバクテリア細胞にさらす。次いで、結合していないファージを細胞から除去する。
【0086】
次いで、バクテリア環境の温度を、バクテリアがF+線毛を発現可能になるまで上げる。これによりファージによる感染が可能になる。次いで、ファージをバクテリアに結合していない状態にして、バクテリア細胞を感染させる。この方法では、ファージは濃度を決定するために滴定されなければならない。
【0087】
この方法では、潜在的結合部分は、細胞表面上または接近可能な区画中に提示されない。この方法における選択プロセスは、ファージ上に提示される潜在的結合部分のみを使用する。
【0088】
(特定の例示的なコンポーネントおよび方法)
(導入)
多くの例において、特定の標的に特異的に結合する部分を同定することが望ましくあり得る。特定の実施形態では、標的に結合する結合部分を同定するためのプロセスは、複数の潜在的結合部分からの結合部分の選択を含む。特定の実施形態では、複数の潜在的結合部分は、潜在的結合部分のライブラリ中にある。以下に議論されるように、ライブラリの例示的な供給源は当業者に公知である。種々の実施形態では、ライブラリの多くの異なる種類が使用され得る。
【0089】
特定の実施形態では、潜在的結合部分は、核酸によってコードされるペプチドである。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸は、さらなるポリペプチドをコードするより大きな核酸の一部分である。このような実施形態では、ポリペプチドの潜在的結合部分を含む、ポリペプチド全体をコードする核酸は、核酸のポリペプチドコード部分と呼ばれる。特定の実施形態では、このポリペプチドコード部分は、核酸ベクターの一部分である。
【0090】
特定の実施形態では、標的に結合する結合部分を同定するためのプロセスは、以下のような選択段階および後に続く増幅段階で進む。以下の議論において、宿主細胞が議論される。特定の実施形態では、もちろん、異なる宿主細胞と関連する複数の異なる潜在的結合部分を使用する。特定のこのような実施形態では、複数の異なる潜在的結合部分のいずれかが1つ以上の標的に結合するか否かを決定し得る。
【0091】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸を含むベクターを使用する。特定の実施形態では、このベクターはM13バクテリオファージベクターである。例えば、図1Aを参照のこと。特定の実施形態では、選択段階のために、このベクターは第1の宿主細胞中に含まれる。特定の実施形態では、このベクターは第1の宿主細胞内に直接配置される。ベクターを第1の宿主細胞内に配置する例示的な方法としては、限定されないが、感染、トランスフェクション、形質導入、接合、および形質転換が挙げられる。
【0092】
特定の実施形態では、ベクター中の核酸は、潜在的結合部分をあらわすための他のエレメントを含むさらなるポリペプチドをコードする。特定の実施形態では、このポリペプチドは、少なくとも1つの開始メチオニン、分泌リーダー、ペプチダーゼ開裂部位、開裂のための認識部位、リンカー部分、およびアンカー部分をさらに含む。特定の実施形態では、このポリペプチドの分泌リーダーは、ポリペプチドの少なくとも一部分を膜を介して通過可能にする。特定の実施形態では、分泌リーダーは、リーダーペプチダーゼによって開裂され得るペプチダーゼ開裂部位を含有する。特定のこのような実施形態では、ペプチダーゼ開裂部位でのタンパク質の開裂は、エピトープタグの除去を可能にし、その結果、エピトープタグなしのタンパク質が生成され得る。特定の実施形態では、このポリペプチドのアンカー部分は、膜にポリペプチドを結合する。
【0093】
特定の実施形態では、上記ベクターは、ポリペプチドコード部分の制御および転写のための他の核酸エレメントをさらに含む。特定の実施形態では、このベクターは、少なくとも1つのオペレーター、イニシエーター、プロモーター、転写開始部位、リボソーム結合部位、開始コドン、停止コドン、および転写ターミネーターをさらに含む。特定の実施形態では、ベクターは、ベクターを複製可能なエレメントをさらに含む。特定の実施形態では、ベクターは、ベクターを第2の宿主細胞に移すことが可能なエレメントをさらに含む。
【0094】
特定の実施形態では、潜在的結合部分は、第1の宿主細胞の内側で産生される。特定の実施形態では、第1の宿主細胞は、E coliである。図1Bおよび図1Cを参照のこと。特定の実施形態では、この潜在的結合部分は、細胞と関連したままであり、細胞の中で、それをコードする核酸と関連するように発現される様式で存在する。特定の実施形態では、ポテンシャル結合部位はさらに、標的に対する結合に接近可能な様式で存在する。
【0095】
特定の実施形態では、潜在的結合部分は、第1の宿主細胞の接近可能な区画中に存在する。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、第1の宿主細胞の表面に存在する。例えば、図2Aを参照のこと。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、第1の宿主細胞の膜の表面に存在する。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、バクテリアの第1の宿主細胞のペリプラズム間隙に存在する。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、接近可能な区画中に存在し、第1の宿主細胞の内膜に結合される。特定のこのような実施形態の例は図2Cに示される。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、接近可能な区画中に存在し、第1の宿主細胞の外膜に存在する。特定のこのような実施形態の例は図2Bに示される。特定の実施形態では、潜在的結合部分は膜に結合されず、第1の宿主細胞の接近可能な区画内に存在する。特定のこのような実施形態の例は図2Dおよび図2Eに示される。
【0096】
特定の実施形態では、その表面または接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞が標的にさらされる。潜在的結合部分がその標的に対して親和性を有する場合、この潜在的結合部分はこの標的に結合する。潜在的結合部分が標的に結合する非限定的な例は図1Dに示される。特定の実施形態では、このような標的は他の第2の標識(例えば、非限定な例として、図1Eに示されるようなストレプトアビジンでコーティングされた粒子)に結合する。特定の実施形態では、その表面に標的に結合する潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞は、その表面に標的に結合する潜在的結合部分を有さない第1の宿主細胞から分離される。例えば、非限定な例として、図1Fを参照のこと。特定の実施形態では、それらの接近可能な区画中に標的に結合する潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞は、それらの接近可能な区画中に標的に結合する潜在的結合部分を有さない第1の宿主細胞から分離される。
【0097】
特定の実施形態では、後に続く増幅段階が使用される。増幅は、潜在的結合部分をコードする核酸を複製すること、および潜在的結合部分をコードする核酸を、潜在的結合部分をコードする核酸を含まない少なくとも1つの第2の宿主細胞に移すことを含む。特定の実施形態では、選択された第1の宿主細胞中に潜在的結合部分をコードする核酸を複製する。例えば、図1Gを参照のこと。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸が第2の宿主細胞に移される。例えば、図1Gを参照のこと。特定の実施形態に従う潜在的結合部分の発現、分離、および増幅の例示的なサイクルは、図1Hに示される。
【0098】
特定の実施形態では、第2の宿主細胞は、核酸によってコードされる潜在的結合部分を同定するために使用される。特定の実施形態では、第2の宿主細胞は、潜在的結合部分をコードする核酸を同定するために使用される。特定の実施形態では、第2の宿主細胞は、潜在的結合部分を産生するために使用される。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、潜在的結合部分を別の部分に結合することによって同定される。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、潜在的結合部分をコードする核酸を既知の核酸配列に相補的な核酸にハイブリダイゼーションすることによって同定される。特定の実施形態では、既知の核酸配列は、既知の潜在的結合部分である。特定の実施形態では、既知の核酸配列に相補的な核酸は、基質に結合する。特定の実施形態では、既知の核酸配列に相補的な核酸は、アレイに結合する。特定の実施形態では、アレイに結合した核酸は、潜在的結合部分のライブラリ中に提示される潜在的結合部分に相補的な配列である。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、潜在的結合部分をコードする核酸を配列決定することによって同定される。
【0099】
(例示的な方法)
(例示的な選択方法)
特定の実施形態では、宿主細胞が標的に結合する潜在的結合部分を含むポリペプチドを発現する場合、その宿主細胞が選択される。特定の実施形態では、このポリペプチドは、宿主細胞の接近可能な区画中に存在する。特定の実施形態では、このポリペチドは、宿主細胞の表面に存在する。
【0100】
特定の実施形態では、細胞表面は、細胞あたり10〜10の結合部分のコピーを示し得る。特定の実施形態では、細胞表面は、細胞あたり10〜10の結合部分のコピーを示し得る。特定の実施形態では、細胞表面は、細胞あたり10〜10の結合部分のコピーを示し得る。特定の実施形態では、細胞表面は、細胞あたり100未満の結合部分のコピーを示し得る。特定の実施形態では、細胞表面は、細胞あたり10を超える結合部分のコピーを示し得る。
【0101】
特定の実施形態では、細胞あたり発現する結合部分のコピーの数は調整され得る。特定の実施形態では、誘発性の制御エレメントを含むベクターを使用する。特定の実施形態では、このベクターがインデューサー分子にさらされるかあるいは分子または細胞が誘発条件(限定されないが、温度および光を含む)にさらされる場合、潜在的結合部分を含むポリペプチドの発現が起こる。特定のこのような実施形態では、潜在的結合部分の量を調整するために、ベクターがさらされるインデューサー分子の量を制御する。このようなインデューサー分子および制御エレメントの例としては、限定されないが、araBADエレメントによって制御される発現に対するアラビノースの使用;gal Eプロモーターエレメントと組み合わせたガラクトースの使用;trp Eプロモーターエレメントと組み合わせたトリプトファンの使用;mal T、mal E、mal K、mal S、またはmal Iプロモーターエレメントと組み合わせたマルトースの使用;およびLacZプロモーターエレメントと組み合わせたイソプロピル−β−チオガラクトシド(IPTG)の使用が挙げられる。特定の実施形態では、発現する異なる潜在的結合部分の間の発現レベルの変動および不安定性の変動は、潜在的結合部分の選択に実質的に影響を与えない。
【0102】
特定の実施形態では、選択方法は、その表面に潜在的結合部分を有する細胞を標的にさらす工程を含む。特定の実施形態では、標的は、その標的についての十分な親和性を有する潜在的結合部分によって結合される。特定の実施形態では、標的の濃度は、選択される潜在的結合部分の親和性に影響を与える。特定の実施形態では、低濃度の標的を使用することは、より高い親和性の結合部分を選択する。
【0103】
特定の実施形態では、標的は、標識によって標識される。特定の実施形態では、この標的は、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞を標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞から区別する標識に直接的に結合され得る。標的に標識を直接的に結合するいくつかの方法は当業者に公知である。
【0104】
特定の実施形態では、上記標的は、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞を標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞から区別する別の部分に間接的に結合される。特定の実施形態では、この標的は、第2の標識に結合する第1の標識(例えばアフィニティー結合セットのメンバー)に結合される。特定の実施形態では、第2の標識は、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞を標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞から区別する第3の標識に結合される。例えば、特定の実施形態では、標的はビオチンに結合され得る。標的が潜在的結合部分に結合された後、この標的はストレプトアビジンに結合した磁気粒子にさらされる。このストレプトアビジンはビオチンに結合し、磁気粒子は、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞を標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞から区別するために使用される。
【0105】
間接的な結合の別の非限定的な例は、4つの標識を使用する。例えば、特定の実施形態では、標識されていない標的は、潜在的結合部分に結合し得る。標的を認識する抗体は、ビオチンに結合する。この抗体は、潜在的結合部分に結合する標的に結合する。抗体が標的に結合された後、この抗体は、ストレプトアビジンに結合した磁気粒子にさらされる。このストレプトアビジンはビオチンに結合し、この磁気粒子は、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞を標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞から区別するために使用される。
【0106】
特定の実施形態では、標的は可溶性であり、溶液中に潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞にさらされる。特定の実施形態では、可溶性の標的はビオチン化され、結合部分によって結合する前または後のいずれかに、ストレプトアビジンでコーティングされた固体基質上に捕捉され得る。特定の実施形態では、結合部分に結合した標的は、標識され得、標的に結合した細胞は、標識の観点から分離され得る。特定の実施形態では、この標的は細胞が標的にさらされる前に標識される。
【0107】
特定の実施形態では、標的に結合可能な結合部分を産生する細胞が濃縮される。特定の実施形態では、標的に結合可能な結合部分を産生する細胞の濃縮は、以下:標的に結合可能な結合部分を産生する細胞を標的にさらす工程、およびその細胞を少なくとも1つの分離方法に供する工程を含む。
【0108】
特定の実施形態では、標的に結合可能な結合部分を産生する細胞が選択される。特定の実施形態では、標的に結合した結合部分を有する選択された細胞は、標的に結合した結合部分を有さない細胞から分離される。特定の実施形態では、分離は、結合した標的を有する細胞を結合した標的を有さない細胞から区別する方法によって達成される。このような方法の非限定的な例としては、限定されないが、進行波誘電泳動、誘電泳動、電気泳動、反磁性、透析、沈降、遠心、磁気分離、クロマトグラフィーおよび蛍光励起細胞分離捕集装置が挙げられる。
【0109】
細胞の誘電泳動分離は、例えば、Rousselet,et al.,1998,「Separation of Erythrocytes and Latex Beads by Dielectrophoretic Levitation and Hyperlayer Field−Flow Fraction」,Colloids and Surfaces 140:209−216;Talary,et al.,1996,「Electromanipulation and Separation of Cells Using Travelling Electric Fields」,J.Phys.D.:Appl.Phys.29:2198−2203;およびMarkx,et al.,1995,「Dielectrophoretic Separation of Cells:Continuous Separation」,Biotechnology and Bioengineering,45:337−343に記載されている。特定の実施形態では、進行波誘電泳動は、異なる誘電泳動性を有する細胞の種類を99%を超える正確性で分離し得る。
【0110】
特定の実施形態では、可溶性の標的は、誘電泳動性の標識(例えば、非限定的な例として、ラテックスビーズまたは金粒子)に結合してもよい。特定の実施形態では、誘電泳動性の標識を有する標的が細胞に結合する場合、細胞は、その誘電泳動性に基づいて、結合した標的を有さない細胞から分離され得る。特定の実施形態では、標的は、アフィニティー結合セット(例えばビオチン)のメンバーに結合する。特定の実施形態では、誘電泳動性の標識はストレプトアビジンでコーティングされる。特定の実施形態では、誘電泳動性の標識は、Polysciences,Inc.(Warrington,PA)によって販売されるストレプトアビジンでコーティングされた10nm粒子である。このような実施形態では、潜在的結合部分に結合したビオチン化標的を有する細胞は、金粒子に結合していない細胞と比較して異なる誘電泳動性を付与する金粒子に結合する。
【0111】
特定の実施形態では、細胞の潜在的結合部分に対する標的の結合は、細胞の生理学を変化させ、細胞の誘電泳動性を変化させる。例えば、特定の実施形態では、結合部分に対する標的の結合は、細胞透過性を変化させる場合があり、結果として細胞のインピーダンスを変化させる。特定の実施形態では、結合部分に対する標的の結合は、細胞の核:細胞原形質比率を変化させる場合があり、結果として、標的が結合部分に結合していない細胞と比較して、異なる細胞の誘電泳動性を生じる。
【0112】
特定の実施形態では、磁場は、標的に結合した細胞を分離するために使用されてもよい。特定の実施形態では、標的は、磁気標識または常磁性標識に結合する。特定の実施形態では、標的は、アフィニティー結合セットのメンバー(例えばビオチン)に結合し、磁気標識または常磁性標識はストレプトアビジンでコーティングされる。特定の実施形態では、磁場は、結合した磁気標識を有する標的に結合した細胞を分離および単離するために適用されてもよい。特定の実施形態では、標的がビオチン分子に結合する場合、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気粒子は、磁場を用いて分離する前に細胞に付加されてもよい。
【0113】
特定の実施形態では、標的は、反磁性標識(例えば、銅、ビスマス、鉛、ガリウム)に結合してもよい。特定の実施形態では、標的は、常磁性標識(例えば、種々の塩、金属および高温でのニッケルおよびコバルト)に結合してもよい。特定の実施形態では、反磁性標識または常磁性標識を有する標的が細胞に結合する場合、細胞は、その反磁性または常磁性に基づいて、結合した標的を有さない細胞から分離されてもよい。特定の実施形態では、標的は、アフィニティー結合セットのメンバー(例えばビオチン)に結合する。特定の実施形態では、標識はストレプトアビジンでコーティングされる。
【0114】
特定の実施形態では、電気泳動は、標的に結合した細胞を分離するために使用されてもよい。特定の実施形態では、標的は、電荷または可動性の改変を与える標識に結合する。電気泳動分離方法において使用される例示的な標識としては、限定されないが、荷電分子、例えば、金属塩および有機アニオン、および可動性修飾子、例えば、ポリエチレングリコールが挙げられる。特定の実施形態では、細胞がこのような標的に結合する結合部分を有する場合、細胞の電気泳動易動度が変わる。このような変化により、標識化された標的に結合した結合部分を有する細胞の分離が可能になる。特定の実施形態では、標的は、アフィニティー結合セットのメンバー(例えばにビオチン)結合する。特定の実施形態では、電気泳動性の標識はストレプトアビジンに結合する。
【0115】
蛍光励起細胞分離捕集装置は、例えば、Fuchs,et al.,1991,「Targeting Recombinant Antibodies to the Surface of Escherichia coli:Fusion to a Peptidoglycan Associated Lipoprotein」,Biotechnology,9:1369−1372;Daugherty,et al.,2000,「Flow Cytometric Screening of Cell−Based Libraries」,J.Immunol.Methods,243:211−227;Daugherty et al.,1998,「Antibody Affinity Maturation Using Bacterial Surface Display」,Protein Engineering,11:825−832;およびDaugherty et al.,1999,「Development of an Optimized Expression System for the Screening of Antibody Libraries Displayed on the Escherichia coli Surface」,Protein Engineering,12:613−621に記載されている。特定の実施形態では、望ましい濃度の蛍光標識された標的が、潜在的結合部分を発現する細胞に添加されてもよい。特定の実施形態では、蛍光標識された標的とのインキュベートの後、蛍光励起細胞分離捕集装置(FACS)は、蛍光標識された標的に結合した細胞をソートし、分離するために使用されてもよい。特定の実施形態では、標的は、アフィニティー結合セットのメンバー(例えばビオチン)に結合する。特定の実施形態では、蛍光標識はアフィニティー結合セットの別のメンバー(例えばストレプトアビジン)に結合する。
【0116】
特定の実施形態では、選択が起こる領域または容器は、1つ以上の区画を含む。特定の実施形態では、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞は、標的に結合しない潜在的結合部分を有する細胞から分離するために、1つの区画に移動される。特定の実施形態では、標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞は、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞から分離するために、1つの区画に移動する。特定の実施形態では、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞は第1の区画に移動し、標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞は第2の区画に移動する。特定の実施形態では、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞を第1の区画に移動することにより、同時に、標的に結合した潜在的結合部分を有さない細胞を第2の区画に移動する。特定の実施形態では、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞は、潜在的結合部分をコードする核酸を含まない細胞を含む区画に移動する。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸を含まない細胞は、標的に結合した潜在的結合部分を有する細胞を含む区画に添加される。
【0117】
特定の実施形態では、複数の異なる結合部分を同定するために複数の異なる標的が使用されてもよい。特定のこのような実施形態では、異なる標的は異なる標識を有する。特定の実施形態では、異なる標識は検出可能に異なる。特定の実施形態では、異なる標識は異なる色の蛍光分子である。特定の実施形態では、異なる標的に結合した結合部分を有する細胞は、異なる色の蛍光分子によって区別可能である。特定の実施形態では、細胞はFACSによってソートされてもよい。特定の実施形態では、異なる標識は異なる誘電泳動性を有する粒子である。特定の実施形態では、異なる標的に結合した結合部分を有する細胞は、異なる誘電泳動の粒子によって区別可能である。特定の実施形態では、細胞は、進行波誘電泳動の勾配によってソートされてもよい。
【0118】
特定の実施形態では、複数の異なる結合部分を同定することは核酸標識を使用する。特定のこのような実施形態では、核酸標識は標的に直接結合してもよいか、またはアフィニティー結合セット(例えば、標的に結合したビオチン分子に結合可能なアビジン)に直接結合してもよい。特定の実施形態では、核酸標識は、蛍光標識に結合した相補的な核酸のハイブリダイゼーションによって検出される。特定の実施形態では、核酸標識は、核酸検出法(限定されないが、PCR、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)、OLA−PCR、TaqmanTMプローブを使用する方法、およびインターカレーティング染料を使用する方法を含む)によって検出される。
【0119】
特定の実施形態では、標識化されていない標的は、さらに高いアフィニティーを有する結合部分を選択するために使用されてもよい。特定の実施形態では、結合部分を発現する細胞の最初の選択および分離の後、選択された細胞は、次いで標識化されていない高濃度の標的と共にインキュベートされる。特定の実施形態では、低いアフィニティーを有する結合部分は、標識化された標的を放出し、標識化されていない標的に結合する。特定の実施形態では、選択された細胞は、次いで細胞に結合した標識化された標的の存在に基づいて分離される。特定の実施形態では、結合部分の特定のアフィニティーは、標的の濃度を制御することによって選択されてもよい。例えば、特定の実施形態に従う異なるアフィニティーを有する結合部分を選択する特定の例示的な方法を示す図4を参照。
【0120】
特定の実施形態では、選択のために使用される標的の量は、ファージディスプレイ技術において典型的に使用される量よりも実質的に少ない。特定の実施形態では、選択のために、50kDのタンパク質5ngが100μl体積中の1nM標的濃度のために使用される。特定の実施形態では、選択のために、100kDのタンパク質1μgが100μl体積中の100nM標的濃度のために使用される。特定の実施形態では、選択のために、100kDのタンパク質1ngが100μl体積中の100pM標的濃度のために使用される。
【0121】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸配列を含むベクターは、細胞中のファージ中に含まれる。特定の例では、ファージの表面に潜在的結合部分を含むポリペプチドを含有するファージは、選択プロセス中に標的に対する結合について宿主細胞と競争する場合がある。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、ファージの表面に存在しないが、細胞膜の表面または細胞の接近可能な区画中に存在する。特定の実施形態では、標的に対する結合について選択中に宿主細胞と競争するファージは実質的に存在しない。
【0122】
ファージディスプレイ技術を使用する場合、ファージは典型的には固体媒体から溶出される。非常に高いアフィニティーを有する結合部分をコードするファージは、典型的な溶出条件下では放出されない場合がある。このような条件では、これらの非常に高いアフィニティーを有する結合部分は使用され得ない。ファージディスプレイ技術におけるファージの溶出条件は、潜在的結合部分または標的を変性する場合がある。特定の実施形態では、潜在的結合部分および標的の変性は本発明によって避けられる。特定の実施形態では、標的に結合した結合部分を除去するために溶出ステップは使用されない。
【0123】
いくつかの選択方法では、潜在的結合部分は、標的に対する特異的なアフィニティーを有さないように選択されてもよい。特定の実施形態では、このような非特異的な結合を減らすかまたは排除することが望ましい場合がある。非限定的な例として、標的は、ストレプトアビジンでコーティングされた表面と相互作用するビオチン分子に結合する。いくつかの潜在的結合部分がストレプトアビジンに結合する場合、これらの潜在的結合部分は、標的に結合しないにもかかわらず選択される場合がある。特定の実施形態では、標識化されていない標的または他のタンパク質は、このような例において選択性を高めるために使用されてもよい。非限定的な例として、特定の実施形態では、結合部分を発現する細胞を選択するためにストレプトアビジンでコーティングされた固体表面が標的に結合するために使用される場合、ビオチン結合部位を持たない可溶性のストレプトアビジン分子を、細胞によって発現されるストレプトアビジン結合部分の選択を減らすまたは防ぐために使用することができる。可溶性のストレプトアビジンは、ストレプトアビジンに結合する潜在的結合部分に結合し、標的に結合する結合部分を選択するために使用されるストレプトアビジンでコーティングされた表面に潜在的結合部分が結合することをブロックする。
【0124】
さらに、特定の例では、ホスホリル化されたタンパク質に特異的に結合する結合部分の選択が望ましい場合がある。このような例では、タンパク質のホスホリル化していない形態に非特異的に結合する潜在的結合部分は望ましくない。特定の実施形態では、タンパク質のホスホリル化領域に対するアフィニティーを有する結合部分の選択性を高めるためにこのような望ましくない潜在的結合部分に結合させるために、可溶性のホスホリル化していないタンパク質に細胞をさらしてもよい。
【0125】
別の非限定的な例として、特定の実施形態では、癌細胞(例えば、肝臓の癌細胞)によって発現されるタンパク質に結合する潜在的結合部分を選択することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、癌細胞以外の多くの種類の細胞(例えば、正常な肝臓細胞)に結合する潜在的結合部分の選択を減らすかまたは排除することが望まれる場合がある。特定の実施形態では、潜在的結合部分を発現する細胞は、特定の非癌性細胞の種類(例えば、正常な肝臓細胞)にさらされてもよい。非癌性肝臓細胞の種類に結合する潜在的結合部分を発現する細胞は除去される。次いで、潜在的結合部分を発現する残りの細胞が、非癌性細胞の種類から誘導される癌性細胞(例えば、正常な肝臓細胞から誘導される癌性の肝臓細胞)にさらされる。特定の実施形態では、これにより、細胞の癌状態に関連しない細胞特異的な分子(例えば、肝臓細胞に特異的なタンパク質)に一般的に結合する潜在的結合部分を発現する細胞の選択を減らすかまたは排除する。
【0126】
特定の実施形態では、ビオチンを用いて癌細胞を標識化する。ビオチン標識された癌細胞を改変されていない正常細胞と一緒にされる。癌細胞にのみ結合するが正常細胞には結合しない潜在的結合部分を発現する宿主細胞は、癌細胞に結合する。改変されていない正常細胞は、非特異的に結合する潜在的結合部分を発現する他の宿主細胞に結合し、癌細胞に結合するこのような望ましくない細胞の数を排除するかまたは減らす。特定の実施形態では、ストレプトアビジンでコーティングされた細胞は、添加されてもよく、癌細胞に結合しない細胞から結合部分を発現する宿主細胞に結合した癌細胞を分離するために使用されてもよい。特定の非限定的で例示的な分離方法は上に議論され、例えば、磁気または進行波誘電泳動である。特定の実施形態では、癌細胞は、非癌細胞とは顕著に異なる誘電泳動性を有していてもよい。特定の実施形態では、癌細胞にのみ結合する潜在的結合部分を発現する宿主細胞に結合した癌細胞を、進行波誘電泳動を用いて正常細胞から分離する。
【0127】
特定の実施形態では、10細胞中の1細胞程度にまれに生じる結合部分を発現する細胞が、本発明の方法によって選択される。特定の実施形態では、10細胞における1細胞と同程度にまれに生じる結合部分を発現する細胞が、本発明の方法によって選択される。特定の実施形態では、10細胞中の1細胞程度にまれに生じる結合部分を発現する細胞が、本発明の方法によって選択される。特定の実施形態では、10細胞中の1細胞程度にまれに生じる結合部分を発現する細胞が、本発明の方法によって選択される。特定の実施形態では、10細胞中の1細胞程度にまれに生じる結合部分を発現する細胞が、本発明の方法によって選択される。
【0128】
(増幅)
特定の実施形態では、結合部分を発現する細胞の選択および分離の後、結合部分をコードするベクターを増幅する。増幅は、潜在的結合部分をコードする核酸を複製すること、および潜在的結合部分をコードする核酸を、潜在的結合部分をコードする核酸を含まない少なくとも1つの第2の宿主細胞に移すことを含む。特定の実施形態では、結合部分をコードするベクターの増幅は、結合部分の同定を可能にする。潜在的結合部分をコードする核酸を含む例示的なベクターとしては、限定されないが、プラスミド、コスミド、エピソーム、その他の染色体外エレメントおよびファージベクターが挙げられる。
【0129】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸の複製は、少なくとも1つの第1の宿主細胞中で起こる。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸の複製は、少なくとも1つの第2の宿主細胞中で起こる。このような実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸の複製は、潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移した後に起こる。
【0130】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸の複製は、酵素および第1の宿主細胞の複製活性を利用する。特定の実施形態では、プラスミド、コスミド、エピソーム中の核酸、および潜在的結合部分をコードする核酸を含む他の染色体外エレメントは、細胞分裂を必要としない様式で増幅される。このような核酸を含み得る例示的なベクターとしては、プラスミド、コスミド、エピソーム、F’エピソーム、および他の染色体外エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸の移送は、トランスフェクションによって起こる。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸の移送は、形質導入によって起こる。潜在的結合部分をコードする核酸の移送は、形質転換によって起こる。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸を含むベクターを保有する第1の宿主細胞は溶解され、そのベクターは第2の宿主細胞に吸収される。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸の移送は、エレクトロポレーションによって起こる。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸は、接合によって移送される。特定の実施形態では、第1の宿主細胞は、第1の宿主細胞から第2の宿主細胞への潜在的結合部分をコードする核酸の移送を可能にする線毛を産生する。
【0132】
特定の実施形態では、ベクターは、ベクターを複製可能なエレメントを保有する。複製可能な例示的なエレメントとしては、複製開始点、ポリメラーゼをコードする核酸、およびリボソームをコードする核酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ベクターは、ベクターを第2の宿主細胞へ移送することが可能なエレメントを保有する。ベクターを第2の宿主細胞へ移送することが可能な例示的なエレメントとしては、ウイルスコートタンパク質、F+因子、およびファージアセンブリに使用される酵素が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ベクターを第2の宿主細胞に移送には、移動剤を使用する。特定の実施形態では、移動剤は、ファージである。
【0133】
特定の実施形態では、ベクターの複製は、ファージ複製およびアセンブリにより起こる。特定の実施形態では、ベクターの複製は、ファージ複製によって起こる。特定の実施形態では、ファージ中にある潜在的結合部分をコードする核酸を含むベクターの複製は、潜在的結合部分をコードする核酸の大スケール産生を可能にする。
【0134】
特定の実施形態では、細胞中で潜在的結合部分を発現するために非溶菌性ファージ由来のベクターが用いられる。特定のこのような実施形態では、細胞は、潜在的結合部分を発現し、細胞が増殖する培地内に分泌されるファージを同時に産生する。特定の実施形態では、分泌されたファージは、感染していない細胞を感染させることができる。
【0135】
特定の実施形態では、増幅は、潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらすこと;および潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移送することによって達成される。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸を含むベクターを複製し、ファージタンパク質を産生し、ファージを構築する。特定の実施形態では、ファージは細胞を溶菌させ、ファージは第2の宿主細胞に感染することができる。特定の実施形態では、ファージは第2の宿主細胞に感染し、さらに多くのベクターが複製され、さらに多くのファージが構築される。特定の実施形態では、ファージは第2の宿主細胞を溶菌させ、第3の宿主細胞に感染することができる。特定の実施形態では、増幅は、1つ以上の一連のファージ産生およびファージ感染を含んでもよい。
【0136】
特定の実施形態では、宿主細胞は、感染後に約100〜200のファージを産生する。特定の実施形態では、200〜1,000のファージが感染後に宿主細胞によって産生される。特定の実施形態では、100未満のファージが感染後にそれぞれの宿主細胞によって産生される。特定の実施形態では、1,000を超えるファージが感染後にそれぞれの宿主細胞によって産生される。特定の実施形態では、5つの開始ファージが細胞に感染し得、3時間以内に1mlあたり1012ファージのタイターに到達するまでさらに多くのファージを複製し得る。
【0137】
特定の実施形態では、結合部分を発現する選択された細胞は、感染していない過剰の宿主細胞と混合される。特定の実施形態では、感染した細胞は、1回のファージ産生あたり100〜1,000ファージを産生し、30〜40分で感染する。特定の実施形態では、開始ファージの100〜1,000倍が1時間未満で達成される。特定の実施形態では、結合部分を発現する選択された細胞は、感染していない宿主細胞の培養物に希釈される。特定の実施形態では、細胞の数は分光測光法でモニターされる。特定の実施形態では、宿主細胞は蛍光指示薬(例えば、緑色蛍光タンパク質)を有し、細胞の数は分光蛍光法でモニターされる。
【0138】
特定の実施形態では、感染サイクルは、ファージによる細胞の感染、ファージベクターの複製および新しいファージの構築、ならびに感染した細胞の溶解、新しいファージの放出を含む。特定の実施形態では、増幅は、1回または2回の感染サイクルを介して達成され、全体の増幅プロセスには1〜1.5時間かかる。特定の実施形態では、1回の感染サイクルは、30〜40分で、開始ファージ数の少なくとも100倍よりも多いファージを産生する。
【0139】
特定の実施形態では、結合部分をコードするベクターの増幅の後に、第2の選択および分離プロセスが続いてもよい。特定の実施形態では、第2の選択および分離プロセスの後に、第2の増幅プロセスが続いてもよい。特定の実施形態では、増幅が後に続くいくつかの連続した一連の選択および分離を使用してもよい。特定の実施形態では、結合部分は2日間で選択され、作製されてもよい。
【0140】
特定の実施形態では、複製は、核酸を同定するためにベクターの複数のコピーを産生するために行われる。特定の実施形態では、ベクターはファージまたは細胞から単離され、結合部分をコードする核酸は配列決定される。特定の実施形態では、結合部分をコードする核酸の配列決定は、結合部分を同定する。特定の実施形態では、複製により、結合部分を発現する複数の新しく感染した細胞を生じる。特定の実施形態では、新しく感染した細胞は結合部分を含む可溶性のポリペプチドを産生し、結合部分はファージおよび細胞から単離され、精製される。
【0141】
特定の実施形態では、第2の宿主細胞は、核酸によってコードされる潜在的結合部分を同定するために使用される。特定の実施形態では、第2の宿主細胞は、潜在的結合部分をコードする核酸を同定するために使用される。特定の実施形態では、第2の宿主細胞は、潜在的結合部分を産生するために使用される。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、潜在的結合部分を別の部分に結合することによって同定される。増幅、選択、および同定のような異なる機能を行うための異なる宿主細胞の使用は、例えば、Zhao,Kong−Nanら,「Saccharomyces cerevisiae is Permissive for Replication of Bovine Papillomavirus Type 1」,J.of Virology,76(23):12265−12273(2002)に記載されている。
【0142】
特定の実施形態では、潜在的結合部分は、潜在的結合部分をコードする核酸の、既知の核酸配列に相補的な核酸へのハイブリダイゼーションによって同定される。特定の実施形態では、既知の核酸配列は、既知の潜在的結合部分である。特定の実施形態では、既知の核酸配列に相補的な核酸は、基質に結合する。特定の実施形態では、既知の核酸配列に相補的な核酸は、アレイに結合する。特定の実施形態では、アレイに結合した核酸は、潜在的結合部分のライブラリ中に提示される潜在的結合部分に相補的な配列である。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、潜在的結合部分をコードする核酸を配列決定することによって同定される。
【0143】
(特定の例示的な構成要素)
(特定の例示的なライブラリおよび潜在的結合部分)
特定の実施形態では、核酸配列のライブラリが、1つ以上の結合部分を選択するために使用される。特定の実施形態では、ライブラリは、異なる潜在的結合部分をコードする1セットの異なる配列を含む。例示的な潜在的結合部分としては、抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、単一ドメイン抗体、免疫化されていない脾臓由来の抗体ライブラリ、拘束されたペプチド(例えば、ジスルフィド結合形成を可能にするシステインを有する環状ペプチド)、およびランダム化ペプチド配列を含有する骨格タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、レセプター配列、他の結合タンパク質配列、および/または酵素配列である。特定の実施形態では、潜在的結合部分は、改変されているペプチドとは異なる結合特性を有するタンパク質を作製するために、改変されたか、またはランダムに変異されたペプチドである。
【0144】
特定の実施形態では、ライブラリは、異なる細胞型で発現するペプチドを表してもよい。非限定的な例として、ライブラリは、脾臓細胞中で発現するmRNAから作製されてもよい。このような実施形態では、cDNAがmRNAから作製されてもよく、cDNAは、脾臓細胞タンパク質をコードする核酸のライブラリを作製するために使用される。特定の実施形態では、ライブラリは、ランダムペプチドをコードする核酸の集合であってもよい。特定の実施形態では、ランダムペプチドはさらに、特定のアミノ酸残基、または特定の長さのペプチドを含みやすいように改変されてもよい。特定の実施形態では、核酸のライブラリはベクター中に含まれ、すべてのベクターは、核酸ライブラリのメンバーを除いて同一である。特定の実施形態では、ライブラリのメンバーはそれぞれ別個のベクター中に見出される。特定の実施形態では、ライブラリのメンバーはベクター中には存在しない。特定の実施形態では、ライブラリのメンバーは、標準的な分子生物学の技術を用いて、1個のベクターから別のベクターへと容易に移動されてもよい。
【0145】
例示的なライブラリは、cDNAとして市販され、例示的なライブラリとしては、ヒト、マウス、マウス脳、ネズミ、ショウジョウバエ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ヒト腫瘍、ヒト胎児、植物、ヒト脂肪組織、ヒト胸部、ヒト結腸、ヒト心臓、ヒト海馬、ヒト腎臓、ヒト肝臓、ヒト肺、ヒト骨格筋、ヒト卵巣、ヒト胎盤、ヒト前立腺、ヒト皮膚、ヒト脾臓、ヒト膵臓、ヒト髄質、ヒト脳腫瘍、ヒト胸部腫瘍、ヒト結腸腫瘍、ヒト海馬腫瘍、人間の胎児の脊髄、ヒト胃、ヒトアルツハイマー型脳、ショウジョウバエ胚、マウス胚、Hela細胞、K562細胞、ウサギ骨髄および末梢血からのcDNAが挙げられるが、これらに限定されない。市販のcDNAライブラリは、例えば、Invitrogen(Carlsbad,California)およびNovagen(Madison,Wisconsin)から入手可能である。
【0146】
特定の実施形態では、cDNAライブラリは、標準の分子生物学技術(例えばCurrent Protocols in Molecular Biologyに記載される技術)を使用して、任意の組織のRNAから作製されてもよい。cDNAライブラリは、発現したメッセンジャーRNAの全集合を表してもよい。あるいは、特定の条件下で1つの細胞型で異なって発現され得るmRNAは、潜在的結合部分のライブラリを作製するために使用されてもよい。
【0147】
(特定の例示的なポリペプチド構築)
特定の実施形態では、ベクターは、潜在的結合部分を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、ベクターによってコードされるポリペプチドは、N−末端メチオニンまたはバリンを有する。
【0148】
特定の実施形態では、ベクターは、炭水化物または多糖類を作製するか、または炭水化物または多糖類をタンパク質に結合させる、ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む。特定の実施形態では、ベクターは、有機化学分子を産生するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含む。例えば、特定の実施形態では、ポリペプチドは、炭水化物、多糖類、および有機化学分子のうち少なくとも1つの産生に関与する酵素または他の部分であってもよい。
【0149】
特定の実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸は、細胞の表面に提示されるポリペプチドを生じるキャリアタンパク質をコードする核酸を含む。特定の実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸は、キャリアタンパク質をコードする2つの核酸を含む。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、細胞の接近可能な画分中に提示されるポリペプチドを生じる。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、潜在的結合部分が細胞の表面または接近可能な区画中に提示されるが、ファージ表面には提示されないことを可能にする。例示的なキャリアタンパク質としては、マルトース結合タンパク質;LamB;ペチドグリカン関連タンパク質;外膜タンパク質;Lpp−OmpA;Pseudomonas aeruginosa主要リポタンパク質(Oprl);シュードモナスOrpF;phoE;ompA;氷核タンパク質;F pillin;自動輸送タンパク質;赤痢菌VirGβ;ナイセリア属IgAβ;フラジェリン;およびfibriaeが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
特定の実施形態では、ポリペチドは、分泌リーダーを含む。特定の実施形態では、ポリペチドは、2つの分泌リーダーを含む。特定の実施形態では、ポリペチドは、2つの分泌リーダーおよび2つのキャリアタンパク質を含む。特定の実施形態では、分泌リーダーは、開始アミノ酸に隣接する。特定の実施形態では、ペプチドは、分泌リーダーの後に、成熟ポリペプチドから分泌リーダーを開裂可能な開裂部位をさらに含む。特定の実施形態では、分泌リーダーは、ポリペプチドの内部にある。特定の実施形態では、分泌リーダーを有するポリペプチドは、内部バクテリア膜を介してペリプラズム間隙内に少なくとも部分的に通過する。特定の実施形態では、分泌リーダーを有するポリペプチドは、外側バクテリア膜を少なくとも部分的に通過する。特定の実施形態では、分泌リーダーは、内部バクテリア膜に対してペプチドを固定する。特定の実施形態では、分泌リーダーは、外側バクテリア膜に対してペプチドを固定する。
【0151】
特定の実施形態では、開裂部位は、リーダーペプチダーゼ配列である。特定の実施形態では、開裂部位をもたないポリペプチドは、内部バクテリア膜に対してアミノ末端で結合し、ペリプラズム間隙にポリペプチドを保持する。
【0152】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、骨格をさらに含む。骨格は、ポリペチド内でいくつかの二次構造を提供するペプチドである。特定の実施形態では、ポリペプチドに対して特定の二次構造を提供することは、潜在的結合部分が標的に結合するのを容易にし得る。例示的な骨格としては、限定されないが、ランダムに誘導体化されたペプチドループ、トリネクチン、フィブロネクチンの一部分、アンチカリン、チオレドキシン、ヒト胎盤のリボヌクレアーゼインヒビター、抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、および単一ドメイン抗体が挙げられる。
【0153】
特定の実施形態では、ポリペプチドはアンカー部分を含む。特定の実施形態では、アンカー部分は、宿主細胞の内膜に対してポリペプチドを結合し、ポリペプチドの一部分は、ペリプラズム空間の内側表面にさらされる。特定の実施形態では、アンカー部分は、膜を介して移動が実質的に不可能なペプチドである。特定の実施形態では、アンカー部分を有するポリペプチドの一部分が膜を介して移される場合、アンカー部分は膜を通らず、ポリペプチドは膜に結合する。特定の実施形態では、上記アンカー部分は、ポリペプチドを外膜に結合させ、ポリペプチドの一部分を細胞外空間にさらす。アンカー部分は、ポリペプチドのN−末端、ポリペプチドのC末端、またはポリペプチド構築物の内部にあってもよい。特定の実施形態では、アンカー部分は、ポリペプチドのC末端の近くにあり、ポリペプチドのN−末端は膜を介して分泌される。
【0154】
特定の実施形態では、結合について試験されるポリペプチドの一部分(潜在的結合部分)は、結合が典型的に起こる領域(例えば、細胞膜周辺腔または細胞外空間にさらされる。ポリペプチドを外膜に結合するのに適切なアンカー部分の例としては、限定されないが、phoA、phoE、Ipp、OmpA、OmpC、OmpF、lamb、ピリン(pillin)およびフラジェリン(flagellin)が挙げられる。ポリペプチドを内膜に結合するのに適切なアンカー部分の例としては、限定されないが、疎水性コア、免疫グロブリンアンカー部分、リーダーペプチダーゼのための部位を有さない分泌リーダー部分、および他の内膜結合タンパク質が挙げられる。
【0155】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、潜在的結合部分とアンカー部分との間にリンカー部分を含む。特定の実施形態では、上記リンカー部分は、ポリペプチドの異なる部分を分離する一連のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、リンカー部分は、ポリペプチドの他の部分によって制約されることなく、ポリペプチドの異なる一部分が他の分子と相互作用することを可能にする。特定の実施形態では、リンカー部分は、ポリペプチドのそれぞれの部分が独立して折りたたまれることを可能にする。特定の実施形態では、リンカー部分は、一連のグリシンおよび/またはセリンで構成されてもよい。リンカー部分の非限定的な例は、免疫グロブリンのヒンジ部位である。
【0156】
特定の実施形態では、ポリペチドは、アンカー部を有さず、ポリペチドは、遊離タンパク質として細胞膜周辺腔に分泌される。特定の実施形態では、ポリペチドは、細胞膜周辺腔にさらされ、ポリペチドは、リーダーペプチダーゼによって開裂されるための部位を有さない分泌リーダー部分を含む。
【0157】
特定の実施形態では、ポリペプチドをコードする配列は、タンパク質合成を停止させる翻訳ストップコドンを含む。
【0158】
(特定の例示的なベクター構築)
特定の実施形態では、ベクターの複製は、ベクター上の制御可能なエレメントによって調節される。特定の実施形態では、ベクターは、例えば、特定の薬剤を細胞培地に添加することによってか、または細胞の物理的環境の変化(例えば、光または温度による誘発)によって、外部で制御され得る複製開始点を保有する。特定の実施形態では、複製開始点は、ベクターを複製させる。
【0159】
特定の実施形態では、ベクターは、複製することが不可能であってもよく、または、ファージは、ヘルパーファージの非存在下で構築不可能であってもよい。特定の実施形態では、ベクターは、外部から制御可能なプロモーターによって制御されるウィルス構築のために使用されるタンパク質をコードする。特定の実施形態では、ベクターは、ベクター複製のため、またはベクターを別の宿主細胞に移すために使用されるタンパク質またはRNAをコードする。
【0160】
非限定的な例として、ファージベクターは、特定の化学物質が存在する場合にのみ発現するコートタンパク質をコードしてもよい。ベクターを有する宿主細胞が選択段階にある場合、化学物質は存在しない。選択後に、ベクターが増幅される場合、化学物質を宿主細胞に添加し、コートタンパク質が発現し、新しいファージが構築される。
【0161】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードするヌクレオチド配列の転写は、1つ以上の既知の転写レギュレーターを介して制御される。特定の実施形態では、ベクター配列は、オペレーター配列を含み、制御は、転写を停止するレプレッサーを結合することによって達成される。特定の実施形態では、ベクター配列は、イニシエーター配列を含み、制御は、転写を開始するアクチベーターを結合することによって達成される。
【0162】
特定の実施形態では、レプレッサーは、宿主細胞によって産生される。レプレッサーは、宿主細胞の染色体上でコードされてもよいか、または染色体外エレメント上でコードされてもよい。特定の実施形態では、レプレッサーはベクターによってコードされる。レプレッサー結合のための例示的なオペレーター配列としては、限定されないが、lacオペロンからのlacO、ラムダプロモーターからのPloおよびPro、およびaraBADプロモーターからのAraOが挙げられる。
【0163】
特定の実施形態では、アクチベーターは、宿主細胞によって産生される。アクチベーターは、宿主細胞の染色体によってコードされてもよいか、または染色体外エレメントによってコードされてもよい。特定の実施形態では、アクチベーターはベクターによってコードされる。特定の実施形態では、アクチベーターは宿主細胞に加えられる。非限定的で例示的なイニシエーター配列は、araBADオペロンからのaralである。
【0164】
特定の実施形態では、ベクターはプロモーターを含む。特定の実施形態では、プロモーターは、RNAポリメラーゼ結合部位を含む。特定の実施形態では、RNAポリメラーゼ結合部位は、Pribnowボックスまたは「−10」領域を含む。特定の実施形態では、RNAポリメラーゼ結合部位は、「−23」領域を含む。特定の実施形態では、RNAポリメラーゼ結合部位は、「−10」領域と「−23」領域との間に間隔を含む。特定の実施形態では、プロモーターは、効果的に転写されるために、実質的な二次構造を失っている。非限定的で例示的なプロモーターは、araBADオペロン、lacオペロン、Trpオペロン、Tacオペロン、Trcオペロン、T7オペロン、pLオペロンおよびpRオペロン中に見出されてもよい。
【0165】
特定の実施形態では、ベクターは、転写開始部位を含む。特定の実施形態では、上記開始部位は、実質的な二次構造を失っている。特定の実施形態では、転写されるmRNAは「A」で始まる。
【0166】
特定の実施形態では、ベクターは、リボソーム結合部位(RBS)を含む。特定の実施形態では、RBSは、Shine−Delgarno配列を含む。特定の実施形態では、RBSは、リボソーム内のrRNA(例えば、23S rRNA)に対して相補的な配列を含む。特定の実施形態では、Shine−Delgarno配列はGGAGである。特定の実施形態では、RBSは開始コドンの3〜5塩基上流にある。
【0167】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードするベクターの一部分は、5’末端に開始コドンを含む。特定の実施形態では、開始コドンはメチオニン残基をコードする。特定の実施形態では、開始コドンはATGまたはGTGである。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードするベクターの一部分は、3’末端に停止コドンを含む。特定の実施形態では、停止コドンはアミノ酸をコードしないコドンである。
【0168】
特定の実施形態では、ベクターは、実質的に転写を停止させる転写停止配列を含む。特定の実施形態では、転写停止配列は、二次構造を保有する。転写停止配列の非限定的な例は、バキュロウイルス毒素由来のBTターミネーターである。
【0169】
特定の実施形態では、複数のクローニング部位は、分泌リーダーをコードする核酸とリンカー領域をコードする核酸との間にある。特定の実施形態では、複数のクローニング部位は、いくつかの制御酵素部位を含む。特定の実施形態では、複数のクローニング部位は、潜在的結合部分をコードする核酸が挿入され、ベクターから除去されることを可能にする。
【0170】
特定の実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸はサプレッサーストップコドンを含む。サプレッサーストップコドンは、サプレッサーストップコドンを含むベクター配列が、翻訳を停止する代わりにアミノ酸を翻訳するサプレッサーtRNAを保有する宿主中にある場合、抑制される。ベクター配列がサプレッサーtRNAをもたない宿主中にある場合、サプレッサーストップコドンは、通常のストップコドンと同様に作用し、翻訳を停止する。
【0171】
特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンは、潜在的結合部分をコードする核酸とアンカー部分との間にある。特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンが抑制される場合、潜在的結合部分およびアンカー部分が両方とも翻訳されるようにポリペプチドが翻訳される。特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンが抑制されない場合、潜在的結合部分は翻訳されるが、アンカー部分は翻訳されないようにポリペプチドが翻訳される。特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンは、潜在的結合部分のC末端をコードする核酸に直接続く。特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンは、リンカー領域をコードする核酸内にある。特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンは、アンカー部分のN−末端をコードする核酸内にある。
【0172】
特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンは、潜在的結合部分を同定するための方法の選択段階中に抑制され、後に続く増幅段階中には抑制されない。
【0173】
(特定の例示的なベクター)
特定の実施形態では、ベクターは、潜在的結合部分をコードする核酸配列を含む。例示的なベクターとしては、限定されないが、プラスミド、コスミド、エピソーム、他の染色体外エレメント、バクテリオファージゲノム、ウィルスゲノム、ファージゲノム、原核細胞を感染させるウイルスのゲノム、後に続く感染のためにファージ内に封入され得る改変された染色体外核酸、真核細胞を感染させるウイルスのゲノム、昆虫細胞を感染させるウイルスのゲノム、バキュロウイルスのゲノム、植物細胞を感染させるウイルスのゲノム、酵母を感染させるウイルスのゲノム、および古細菌を感染させるウイルスのゲノムが挙げられる。特定の実施形態では、ベクターは、ポリペプチド、炭水化物、または細胞表面または細胞の接近可能な区画中に存在する他の分子をコードする核酸を含む。
【0174】
特定の実施形態では、ベクターは、細胞を感染可能なウイルスまたはファージ中に含まれる。特定の実施形態では、ベクターは、ウイルス産生可能であり、ウィルスタンパク質をコードする。特定の実施形態では、ベクターは、ファージ産生可能であり、ファージタンパク質をコードする。特定の実施形態では、ポリペプチドの発現中に、細胞はウイルスによって溶菌されない。特定の実施形態では、ベクターによって産生されるウイルスまたはファージは、感染した細胞から放出可能である。
【0175】
多くのウイルスまたはファージは、それらの複製サイクル中に2つの段階を有する。特定の場合では、第1の段階は、サイクルの溶解段階である。サイクルの溶解段階中に、細胞内のファージは、代表的にはファージゲノムのいくつかのコピーを産生し、ファージタンパク質のいくつかのコピーを産生し、新しいファージを構築する。特定の場合、細胞内のファージのいくつかのコピーの存在は、細胞を溶解または破壊し、細胞を殺し、ファージのいくつかのコピーが残る。
【0176】
特定の場合では、第2の段階は、サイクルの非溶解または溶原性の段階である。特定の場合において、2段階の複製の非溶解段階の間、ファージはファージゲノムのさらなるコピーを産生しないが、ファージゲノム中にコードされるタンパク質を産生してもよい。特定のウイルスおよびファージは、このような2段階の複製サイクルを有さない。特定のこのようなウイルスおよびファージは、常に非溶解性であってもよい。特定のこのような場合において、ファージは、ファージゲノムのさらなるコピーを産生し得、ファージタンパク質のさらなるコピーを産生し得、新しいファージを構築し得る。しかし、このようなさらなるファージの存在は、それでも細胞の溶解を生じない。
【0177】
特定の実施形態では、ベクターは、E.Coliの非溶解段階のベクター、例えばfdまたはM13であってもよい。図6は、特定の実施形態に従う例示的なバクテリオファージM13を示す。特定の実施形態では、ベクターは、潜在的結合部分を同定するためのプロセスの選択段階の少なくとも一部分中に非溶解性の、2段階(溶解/非溶解)のファージベクター(例えば、ラムダ)である。
【0178】
特定の実施形態では、単一のベクター型が本方法全体で使用される。潜在的結合部分を同定する特定の実施形態では、1つのベクター型が選択段階のために使用され、別のベクター型がその後に続く増幅段階のために使用される。
【0179】
特定の実施形態では、ベクターは、それ自身によってファージを産生または構築することはできない。非限定的な例として、コートタンパク質をコードする核酸配列をベクターから除去することができない、2段階(溶解/非溶解)のファージをもつベクター(例えば、ラムダ)を使用してもよい。特定の実施形態では、ベクターがコートタンパク質を産生しないので、ベクターは、結合部分を同定するためのプロセスの選択段階中に細胞を溶解しない。特定の実施形態では、後に続く増幅段階中に、ファージを構築してベクターを増幅するために、コートタンパク質またはコートタンパク質をコードする核酸が加えられる。特定の実施形態では、コートタンパク質は別のベクター(例えば、別のファージベクターまたはファージミド)によってコードされてもよい。特定の実施形態では、第2のヘルパーファージまたはファージミドは、ベクターが複製してファージを形成することを可能にするために使用される。
【0180】
特定の実施形態では、ベクターとしては、限定されないが、プラスミド、エピソーム、染色体外エレメント、およびコスミドが挙げられる。特定の実施形態では、ベクターは複製可能であり、ベクターをもたない第2の宿主細胞に移すことが可能である。特定の実施形態では、ベクターは、ベクターを第2の宿主細胞に直接輸送するために必要なタンパク質をコードする。
【0181】
特定の実施形態では、ベクターは複製し、潜在的結合部分をコードする核酸の複数のコピーを産生する。特定の実施形態では、ベクターは、接合、形質導入、または形質転換によって第2の宿主細胞に移すことが可能である。例示的なベクターとしては、限定されないが、pBR322、pUCプラスミド、原核生物プラスミド、酵母プラスミド、植物プラスミド、F因子エピソームおよびF’因子エピソームが挙げられる。
【0182】
(特定の例示的な宿主細胞)
特定の実施形態では、宿主細胞はベクターを含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、その宿主細胞中に直接配置されるベクターを有する。特定の実施形態では、上記宿主細胞は、ベクターによってコードされる潜在的結合部分を含むポリペプチドを産生する。特定の実施形態では、ベクターによってコードされるポリペプチドは、細胞の表面または細胞の接近可能な区画中に存在する。特定の実施形態では、宿主細胞はバクテリアであり、ポリペプチドはペリプラズム空間中に含まれる。特定の実施形態では、宿主細胞は、大スケールで潜在的結合部分を産生するために使用される。特定の実施形態では、潜在的結合部分の大スケール産生は、潜在的結合部分を同定するために使用される。
【0183】
特定の実施形態では、宿主細胞はバクテリアである。特定の実施形態では、バクテリアはグラム陰性またはグラム陽性である。特定の実施形態では、宿主細胞は、E.coliである。特定の実施形態では、宿主細胞は酵母であり、限定されないが、Saccharomyces cerevisiaeを含む。特定の実施形態では、宿主細胞は動物細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞は昆虫細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞株である。特定の実施形態では、宿主細胞は植物細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞はヒト細胞株である。例示的なヒト細胞株としては、限定されないが、NIH 3T3細胞、Jurkatt細胞およびMCF−7細胞が挙げられる。
【0184】
(本発明の特定の例示的な実施形態)
(特定の例示的な方法)
特定の実施形態では、標的に結合し得る潜在的結合部分をコードする核酸配列のライブラリが使用される。例示的な標的としては、限定されないが、タンパク質リガンド、レセプター、酵素、低分子、炭水化物、レセプター分子のフラグメント、医薬、および他の生物学的に重要な分子が挙げられる。
【0185】
特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードする核酸配列のライブラリの異なるメンバーが、別個のスクリーニングベクター中に含まれる。特定の実施形態では、図3に示されるベクターを使用し得る。図3は、オペレーター、プロモーター、転写開始領域、およびポリペプチドをコードするmRNAの転写を制御する開始コドンを含むベクターを示す。図2に示されるベクターは、N末端からC末端の方向において、分泌リーダー、分泌リーダーペプチダーゼ開裂部位、潜在的結合部位、骨格、リンカー領域、およびアンカー部分を含むポリペプチドをコードする。特定の実施形態では、図3に示されるベクターがアクチベータータンパク質の存在下で宿主細胞中にある場合、リボソームはプロモーター領域に結合し、mRNA転写物が転写される。特定の実施形態では、ベクターが宿主細胞中にある場合、ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞の表面に存在する潜在的結合部分を生じる。特定の実施形態では、キャリアタンパク質をさらに含む(または分泌リーダーの代わりにキャリアタンパク質を含む)ポリペプチドをコードする核酸を使用し得る。特定の実施形態では、スクリーニングベクターは、適切な宿主バクテリア細胞中にある場合、正常なファージ複製を可能にする。
【0186】
特定の実施形態では、潜在的結合部位を含むポリペプチドをコードするベクターがファージ内に構築される。次いで、構築されたファージは、適切な宿主バクテリア細胞を感染させるために使用され得る。
【0187】
特定の実施形態では、潜在的結合部位を含むポリペプチドをコードするベクターは、標準的な分子生物学的技術を用いて、ファージを使用することなく受容能力をもつ宿主バクテリア細胞に直接トランスフェクトされる。特定のこのような実施形態では、ベクターは、ファージ産生に必要な少なくともいくつかのエレメントのための核酸を含む。
【0188】
特定の実施形態では、選択プロセスの間、実質的に細胞溶解物を生じない媒体条件を使用する。
【0189】
特定の実施形態では、次いで、ベクターを含有する細胞が、ベクターによってコードされるポリペプチドを発現するために導入される。特定の実施形態では、ベクター上にプロモーターを導入する宿主細胞媒体に化学物質を添加することによって、発現を誘発する。特定の実施形態では、順にポリペプチド発現を誘発するアクチベータータンパク質を産生するために、宿主バクテリア細胞を誘発する化学物質(例えばガラクトース)を使用する。特定の実施形態では、これは、ベクター上の転写開始領域にアクチベータータンパク質を結合させることによって達成される。
【0190】
特定の実施形態では、ベクターから産生されるポリペプチドは、宿主バクテリア細胞の表面に提示され、その外側膜に結合したままである。特定の実施形態では、標的に結合する潜在的結合部分を発現した宿主細胞を選択するために、標識(例えば蛍光分子)を含む標的を使用する。特定のこのような実施形態では、潜在的結合部分を含むポリペプチドを発現する宿主バクテリア細胞が、標的にさらされる。宿主バクテリア細胞の表面上に発現したポリペプチドが標識した標的に結合する場合、宿主バクテリア細胞は標識を保有する。
【0191】
特定の実施形態では、次いで、宿主バクテリア細胞は、フロー分離デバイス、例えば蛍光励起細胞分離捕集装置(FACS)を用いてソートされる。特定の実施形態では、FACSは、標識されていない細胞から標識された細胞を分離する。
【0192】
特定の実施形態では、感染していないバクテリア細胞は、標識された細胞にさらされ、標的に結合する結合部分を含むポリペプチドを発現すると予想される。特定の実施形態では、ポリペプチドを発現する感染した宿主バクテリア細胞は、次いで、ファージサイクルの溶菌段階に誘発される。特定の実施形態では、感染した宿主バクテリア細胞は、ファージ産生および細胞溶解を誘発する媒体条件に供される。特定の実施形態では、ベクターを保有する宿主バクテリア細胞は、次いで、細胞あたりいくつかのファージを複製する。特定の実施形態では、1個の宿主細胞は、100〜1,000のファージを産生し得る。特定の実施形態では、これらのファージは、次いで、感染していない宿主バクテリア細胞に感染する。特定の実施形態では、ベクターの増幅の程度は、媒体中の宿主細胞の光学濃度を測定することによって、モニタリングされる。
【0193】
新しく感染した宿主バクテリア細胞は、次いで、上述のように標的に対する潜在的結合についてスクリーニングされ得る。次いで、選択された宿主バクテリア細胞は、上述のような別の一連の増幅に供され得る。
【0194】
特定の実施形態では、第2の一連の増幅において、選択された宿主バクテリア細胞は、最初に使用したバクテリア細胞とは異なる型の第2の感染していない宿主バクテリア細胞と共に配置され得る。例えば、特定の実施形態では、第2の宿主バクテリア細胞は、潜在的結合部分から発現したポリペプチドのアンカー部分を開裂するペプチダーゼを産生し得る。このような実施形態では、可溶性ポリペプチドは、細胞の外側の媒体に分泌されるように産生される。
【0195】
特定の実施形態では、可溶性のペプチドは、細胞またはファージを有さない結合部分の簡便な単離が所望され得る。
【0196】
特定の実施形態では、サプレッサーストップコドンは、潜在的結合部分をコードする核酸とアンカー部分をコードする核酸との間のベクターのリンカー領域に配置され得る。特定のこのような実施形態では、第1の宿主バクテリア細胞はサプレッサーtRNAを産生する。サプレッサーtRNAは、特定の停止コドン(サプレッサーストップコドン)を認識する場合、コドンをアミノ酸として翻訳する。典型的には、サプレッサーtRNAが存在しない場合、サプレッサーストップコドンは翻訳の停止を示す。サプレッサーtRNAを有する第1の宿主バクテリア細胞において、アンカー部分を含む全長ポリペプチドが産生される。特定の実施形態では、第2の宿主バクテリア細胞は、サプレッサーtRNAを欠いている。したがって、このような実施形態では、第2の宿主バクテリア細胞において、翻訳は停止され、潜在的結合部分を含むがアンカー部分を欠いているポリペプチドの産生を生じる。このようなポリペプチドは、可溶性ポリペプチドとして媒体中に分泌される。
【0197】
特定のこのような実施形態では、感染した第2の宿主バクテリア細胞が培養され、可溶性ポリペプチドは、第2の宿主バクテリア細胞中に発現される。特定の実施形態では、可溶性ポリペプチドは、細胞およびファージから分離される。例示的な分離技術としては、限定されないが、ろ過、透析またはアフィニティー精製の工程が挙げられる。特定の実施形態では、これにより結合部分を含む大量のポリペプチドを産生する。特定の実施形態では、このような大量のポリペプチドの産生を達成するために必要とされる時間は、数時間であり、一晩の増殖工程は必要ではない。
【0198】
特定の実施形態では、本方法は、特定の型の細胞表面ディスプレイ法を超える利点を提供し得る。特定の例では、細胞表面ディスプレイ法は、潜在的結合部分が細胞増殖に負の影響を与える場合、潜在的結合部分に対する偏りを生じ得る。本発明の特定の実施形態では、典型的には、細胞表面ディスプレイ技術において使用される程度まで細胞を増殖させる必要はなく、その結果、細胞増殖に負の影響を与える潜在的結合部分に対する偏りはほとんど存在しないか、またはまったく存在しない。
【0199】
(装置)
特定の実施形態では、選択、分離、およびその後の増幅を行うために使用し得る装置が提供される。特定の実施形態では、この装置は、潜在的結合部分をコードするポリペプチドをコードするベクターを含む、第1の宿主細胞を生じるコンポーネントを含む。特定の実施形態では、潜在的結合部分をコードするポリペプチドをコードするベクターを含む第1の宿主細胞は、第1の宿主細胞の表面に提示される潜在的結合部分を発現する。特定の実施形態では、この装置は、それらの表面に潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞を、標的にさらすコンポーネントを含む。特定の実施形態では、この装置は、標的に結合する少なくとも1つの宿主細胞を、標的に結合しない第1の宿主細胞から分離するコンポーネントを含む。特定の実施形態では、この装置は、潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞の培養物中に、分離された少なくとも1つの第1の宿主細胞を配置するコンポーネントを含む。標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第一の宿主細胞を、標的に結合しない第1の宿主細胞から分離するための例示的なコンポーネントとしては、限定されないが、進行波誘電泳動、電気泳動、反磁性、蛍光励起細胞分離捕集装置、透析、沈降および遠心分離が挙げられる。特定の実施形態では、この装置において、ベクターを含むファージが複製し、新しい宿主細胞を感染させる。特定の例示的な装置は、図7に概要が示される。
【0200】
図8は、例示的な装置において、異なるチャンバが特定の実施形態にしたがってどのように働き得るのかを示す。図8において、太線は液体の流路を表す。二本線は、進行波誘電泳動を行うために使用される、電極に供される液体の流路を表す。特定の実施形態では、電極は流路中にあってもよい。特定の実施形態では、電極は流路のいずれかの末端に配置されてもよい。図8に示される特定の実施形態において、1つのチャンバから別のチャンバへの細胞の移動は、液体の流れ、または進行波誘電泳動によって金ナノ粒子に結合した細胞の分離と組み合わせた電気泳動によって達成される。
【0201】
図8において、チャンバ4からの感染していない細胞(第1の宿主細胞)は、チャンバ5(反応チャンバ1)に移動する。潜在的結合部分をコードするファージライブラリは、チャンバ3からチャンバ5に移動し、ファージは感染していない細胞を感染させる。チャンバ5において、細胞は潜在的結合部分を発現する。ビオチン化検体(標的)は、チャンバ1からチャンバ5に移動する。潜在的結合部分は、チャンバ5において標的にさらされる。ストレプトアビジンでコーティングされた金粒子は、チャンバ2からチャンバ5に移動する。標的に結合した結合部分を有する細胞は、チャンバ5においてストレプトアビジンでコーティングされた金粒子にさらされる。標的に結合した結合部分を有するいくつかの細胞は、ビオチン−ストレプトアビジン結合を介して金粒子に結合する。
【0202】
電気泳動は、チャンバ5からチャンバ6(反応チャンバ2)に金粒子を移動するために使用される。ストレプトアビジンでコーティングされた金粒子に結合した標的に結合した結合部分を有さない細胞は、チャンバ9(廃棄チャンバ1)に移動する。
【0203】
チャンバ6中の細胞は、(例えば、細胞が配置される媒体を変えることによって)細胞中のファージが複製する条件下に配置される。チャンバ4からの感染していない細胞(第2の宿主細胞)は、チャンバ6に移動し、新しく複製されたファージは、感染していない細胞を感染させる。ファージの複製および感染していない細胞のファージ感染により、潜在的結合部分をコードする核酸を含むベクターの増幅を生じる。この細胞は、チャンバ6において、潜在的結合部分を発現する。次のチャンバ(チャンバ7)で選択および分離のプロセスが繰り返され、ベクターの増幅(ファージ複製および感染していない細胞のファージ感染を含む)も繰り返される。特定の実施形態では、選択および増幅のプロセスは、標的に結合する結合部分を選択するのに望ましい回数で、繰り返され得る。例えば、さらなるチャンバ8(反応チャンバ4)およびチャンバ10(反応チャンバ5)を参照のこと。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1−1】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図1−2】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図1−3】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図1−4】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図1−5】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図1−6】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図1−7】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図1−8】図1A〜1Gは、特定の実施形態に従う特定の例示的な方法のステップを示す。図1C〜1Gの文字Q〜Zはそれぞれ、存在する種々のポテンシャル結合部位を有する宿主細胞を表す。図1Hは、特定の実施形態に従う例示的な方法のサイクルを示す。
【図2】図2A〜2Cは、特定の実施形態に従う内膜および外膜上の潜在的結合部分の存在の特定の例示的なモードを示す。図2Dおよび2Eは、特定の実施形態に従う接近可能な区画中の潜在的結合部分が存在する特定の例示的なモードを示す。
【図3】図3は、特定の実施形態に従う例示的なベクターを示す。
【図4】図4は、特定の実施形態に従う異なるアフィニティーの結合部分を選択する特定の例示的な方法を示す。
【図5】図5は、特定のファージディスプレイ技術における選択の例示的なサイクルを示す。
【図6】図6は、特定の実施形態に従う例示的な移動剤(バクテリオファージM13)を示す。
【図7】図7は、特定の実施形態に従う例示的な装置を示す。
【図8】図8は、特定の実施形態に従う例示的な装置を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法であって、該方法は、以下:
(a)該潜在的結合部分を発現するために該潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該結合部分が該第1の宿主細胞の表面に提示される、工程;
(b)その表面に潜在的結合部分を有する、該第1の宿主細胞を標的にさらす工程;
(c)その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する、少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程;
(d)該潜在的結合部分をコードする核酸を、細胞分裂を必要としない様式で増幅させる工程であって、該増幅工程は、以下:
該潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞を少なくとも1つの選択された第1の宿主細胞にさらす工程;および
該潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す工程を包含する、工程;
(e)該標的に結合する潜在的結合部分を同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞中および前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を、その表面に標的に結合した潜在的結合部分を含まない第1の宿主細胞から分離する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞を分離する前記工程は、前記少なくとも1つの第1の宿主細胞を進行波誘電泳動にさらす工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞を分離する前記工程は、前記少なくとも1つの第1の宿主細胞を磁気にさらす工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞を分離する前記工程は、前記少なくとも1つの第1の宿主細胞をフローサイトメトリーにさらす工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する第1の宿主細胞を分離する前記工程は、前記少なくとも1つの第1の宿主細胞を蛍光励起細胞分離捕集装置にさらす工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記潜在的結合部分をコードする核酸が前記第2の宿主細胞に移された後、該第2の宿主細胞が、以下:
潜在的結合部分を発現するために該第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該潜在的結合部分が該第2の宿主細胞の表面上に提示される、工程;
その表面に潜在的結合部分を有する該第2の宿主細胞を、標的にさらす工程;
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を、選択する工程
を包含する一連の選択に供される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の宿主細胞が、前記第1の宿主細胞とは異なる種類である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の宿主細胞が、可溶性形態で前記潜在的結合部分を発現する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下:
前記第1の宿主細胞をインキュベートして、前記潜在的結合部分が該第1の宿主細胞の表面上に提示されるように該潜在的結合部分を発現した後、かつその表面に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を標的にさらす前に、その表面に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞をブロッキング分子にさらす、工程
をさらに包含し、
ここで、ブロッキング分子に結合した潜在的結合部分が標的に対して結合することから阻害される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程が、ファージ増幅を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程が、ヘルパーファージを使用する増幅を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程が、以下:
該潜在的結合部分をコードする核酸を複製させる工程;および
該潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程
を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程が、ファージへのウィルス構築を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す前記工程が、前記ファージによる該少なくとも1つの第2の宿主細胞の感染を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の宿主細胞の表面上に前記潜在的結合部分が提示されるように該潜在的結合部分を発現させた後、かつその表面上に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を標的にさらす前に、その表面上に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞をブロッキング分子にさらす、工程
をさらに包含し、
ここで、ブロッキング分子に結合した該潜在的結合部分が標的に対して結合することから阻害される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記標的が標識に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記標的がビオチンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する前記少なくとも1つの第1の宿主細胞をストレプトアビジンに結合した磁気粒子にさらす工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、以下:
第1の宿主細胞を磁場に供する工程;および
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する該少なくとも1つの第1の宿主細胞を、他の第1の宿主細胞から分離する工程
を包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、分離標識を用いて、その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する該少なくとも1つの第1の宿主細胞を、他の第1の宿主細胞から分離する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記分離標識が、ラテックス粒子、常磁性粒子、特定の誘電特性を有する粒子、可動性修飾子および荷電粒子のうちの少なくとも1つから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記分離標識が、アフィニティー結合セットの第1のメンバーであり、ここで、該アフィニティー結合セットの第1メンバーは、該アフィニティー結合セットの第2メンバーに結合可能である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記分離標識は、ビオチン、フルオレセイン、カルモジュリン結合ペプチド、ローダミンおよびジゴキシゲニンから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記アフィニティー結合セットの第2メンバーは、ストレプトアビジン、抗フルオレセイン抗体、カルモジュリン、抗ローダミン抗体および抗ジゴキシゲニン抗体から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記アフィニティー結合セットの第2メンバーは、ラテックス粒子、常磁性粒子、特定の誘電特性を有する粒子、可動性修飾子および帯電粒子のうち少なくとも1つに結合する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
その表面に標的に結合する潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程であって、その表面に標的に結合する潜在的結合部分を有する少なくとも2つの第1の宿主細胞を選択する工程を包含し、
ここで、該潜在的結合部分をコードする核酸を、細胞分裂を必要としない様式で増幅させる前記工程が、非実質的な細胞分裂を用いて該潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法であって、該方法は、以下:
(a)該潜在的結合部分を発現するために該潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該潜在的結合部分が該第1の宿主細胞の表面に提示される、工程;
(b)それらの接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を標的にさらす工程;
(c)標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程;
(d)該潜在的結合部分をコードする核酸を、細胞分裂を必要としない様式で増幅させる工程であって、該増幅工程は、
該潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらす工程;および
該潜在的結合部分をコードする核酸を該第2の宿主細胞に移す工程を包含する、工程;ならびに
(e)該標的に結合する潜在的結合部分を同定する工程
を包含する、方法。
【請求項32】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞中および前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する前記少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を、その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を含まない第1の宿主細胞から分離する工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する前記工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞を進行波誘電泳動にさらす工程を包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞を磁気にさらす工程を包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞をフローサイトメトリーにさらす工程を包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する前記工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞を蛍光励起細胞分離捕集装置にさらす工程を包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記潜在的結合部分をコードする核酸が前記第2の宿主細胞に移された後、該第2の宿主細胞が、以下:
潜在的結合部分を発現するために該第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該潜在的結合部分が該第2の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される、工程;
その接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する該第2の宿主細胞を、標的にさらす工程;
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を選択する工程
を包含する一連の選択に供される、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該宿主細胞の内膜に結合する、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該第1の宿主細胞の外膜に結合する、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該第1の宿主細胞の内膜または該第1の宿主細胞の外膜のいずれかに結合する、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程が、以下:
前記潜在的結合部分をコードする核酸を複製させる工程;および
前記潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程
を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程が、ファージへのウィルス構築を包含する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す前記工程が、前記ファージによる前記少なくとも1つの第2の宿主細胞の感染を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の宿主細胞が、可溶性形態で前記潜在的結合部分を発現する、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の宿主細胞が、前記第1の宿主細胞とは異なる種類である、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該宿主細胞の内膜に結合する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第2の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該第1の宿主細胞の外膜に結合する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該第1の宿主細胞の内膜または該第1の宿主細胞の外膜のいずれかに結合する、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記第2の宿主細胞が、可溶性形態で前記潜在的結合部分を発現する、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
以下:
前記第1の宿主細胞をインキュベートして、前記潜在的結合部分が該第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示されるように該潜在的結合部分を発現した後、かつその接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を標的にさらす前に、その接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞をブロッキング分子にさらす、工程
をさらに包含し、
ここで、ブロッキング分子に結合した該潜在的結合部分が標的に結合することから阻害される、請求項31に記載の方法。
【請求項54】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程がファージ増幅を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項55】
前記標的が標識に結合する、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
前記標識がビオチンである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する前記少なくとも1つの第1の宿主細胞をストレプトアビジンに結合した磁気粒子にさらす工程をさらに包含する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、以下:
第1の宿主細胞を磁場に供する工程;
接近可能な区画中に標的対する潜在的結合部分を有する該少なくとも1つの第1の宿主細胞を、他の第1の宿主細胞から分離する工程
を包含する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、分離標識を用いて、接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する該少なくとも1つの第1の宿主細胞を、他の第1の宿主細胞から分離する工程を包含する、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程であって、その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的な結合部分を有する少なくとも2つの第1の宿主細胞を選択する工程を包含し;そして
該潜在的結合部分をコードする核酸を細胞分裂を必要としない様式で増幅させる前記工程は、非実質的な細胞分裂を用いて該潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項61】
標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法であって、該方法は、以下:
(a)該潜在的結合部分を発現するために潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該潜在的結合部分が該第1の宿主細胞の表面に提示される、工程;
(b)その表面に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を、標的にさらす工程;
(c)その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を、選択する工程;
(d)該潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程であって、該増幅工程は、
該潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞の培養物を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらす工程;および
該潜在的結合部分をコードする核酸を第2の宿主細胞に移す工程
を包含する、工程;ならびに
(e)該標的を結合する潜在的結合部分を同定する工程
を包含する、方法。
【請求項62】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞および前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する前記少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する前記少なくとも1つの第1の宿主細胞を、その表面に標的に結合した潜在的結合部分を含まない第1の宿主細胞から分離する工程を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する前記工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞を進行波誘電泳動にさらす工程を包含する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する前記工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞を蛍光励起細胞分離捕集装置にさらす工程を包含する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記潜在的結合部分をコードする核酸が前記第2の宿主細胞に移された後、該第2の宿主細胞が、以下:
該潜在的結合部分を発現するために該第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該結合部分が該第2の宿主細胞の表面上に提示される、工程;
その表面に潜在的結合部分を有する該第2の宿主細胞を、標的にさらす工程;
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を、選択する工程
を包含する一連の選択に供される、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
前記第2の宿主細胞が、前記第1の宿主細胞とは異なる種類である、請求項61に記載の方法。
【請求項70】
前記第2の宿主細胞が、可溶性形態で前記潜在的結合部分を発現する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
以下:
前記第1の宿主細胞をインキュベートして、前記潜在的結合部分が該第1の宿主細胞の表面上に提示されるように潜在的結合部分を発現した後、かつその表面に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を標的にさらす前に、その表面に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞をブロッキング分子にさらす、工程
をさらに包含し、
ここで、ブロッキング分子に結合した潜在的結合部分が標的に結合することから阻害される、請求項61に記載の方法。
【請求項72】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程が、ファージ増幅を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項73】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程が、以下:
前記潜在的結合部分をコードする核酸を複製させる工程;および
前記潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程
を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項74】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程が、ファージへのウィルス構築を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す前記工程が、前記ファージによる前記少なくとも1つの第2の宿主細胞の感染を包含する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞をストレプトアビジンに結合した磁気粒子にさらす工程をさらに包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項77】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程であって、以下:
第1の宿主細胞を磁場に供する工程;
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を、他の第1の宿主細胞から分離する工程
を包含する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程であって、その表面に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも2つの第1の宿主細胞を選択する工程を包含し、そして、
ここで、該潜在的結合部分をコードする核酸を細胞分裂を必要としない様式で増幅させる前記工程が、非実質的な細胞分裂を用いて該潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項79】
標的に結合する潜在的結合部分を同定する方法であって、該方法は、以下:
(a)潜在的結合部分を発現するために、該潜在的結合部分をコードする核酸のライブラリを含むベクターを含む第1の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該潜在的結合部分が該第1の宿主細胞の表面に提示される、工程;
(b)それらの接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を標的にさらす工程;
(c)標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する工程;
(d)該潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程であって、該増幅工程は、
該潜在的結合部分をコードする核酸を含まない第2の宿主細胞の培養物を、選択された少なくとも1つの第1の宿主細胞にさらす工程;および
該潜在的結合部分をコードする核酸を該少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す工程を包含する、工程;ならびに
(e)該標的に結合する潜在的結合部分を同定する工程
を包含する、方法。
【請求項80】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記増幅工程は、前記潜在的結合部分をコードする核酸を前記少なくとも1つの第1の宿主細胞中および前記少なくとも1つの第2の宿主細胞中で複製させる工程を包含する、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を選択する前記工程は、その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を、その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を含まない第1の宿主細胞から分離する工程を包含する、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する前記工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞を進行波誘電泳動にさらす工程を包含する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第1の宿主細胞を分離する前記工程は、該少なくとも1つの第1の宿主細胞を蛍光励起細胞分離捕集装置にさらす工程を包含する、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記潜在的結合部分をコードする核酸が前記第2の宿主細胞に移された後、該第2の宿主細胞が、以下:
該潜在的結合部分を発現するために該第2の宿主細胞をインキュベートし、その結果、該潜在的結合部分が該第2の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される、工程;
その接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する第2の宿主細胞を、標的にさらす工程;
その接近可能な区画中に標的に結合した潜在的結合部分を有する少なくとも1つの第2の宿主細胞を、選択する工程
を包含する一連の選択に供される、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
前記第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該宿主細胞の内膜に結合する、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
前記第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該第1の宿主細胞の外膜に結合する、請求項79に記載の方法。
【請求項89】
前記第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示される前記潜在的結合部分が、該第1の宿主細胞の内膜または該第1の宿主細胞の外膜のいずれかに結合する、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を増幅させる工程が、以下:
前記潜在的結合部分をコードする核酸を複製させる工程;および
前記潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程
を包含する、請求項79に記載の方法。
【請求項91】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を移動剤へと構築する工程が、ファージへのウィルス構築を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記潜在的結合部分をコードする核酸を少なくとも1つの第2の宿主細胞に移す前記工程が、前記ファージによる該少なくとも1つの第2の宿主細胞の感染を包含する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
以下:
前記第1の宿主細胞をインキュベートして、前記潜在的結合部分が該第1の宿主細胞の接近可能な区画中に提示されるように潜在的結合部分を発現した後、かつその接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞を標的にさらす前に、その接近可能な区画中に潜在的結合部分を有する該第1の宿主細胞をブロッキング分子にさらす、工程
をさらに包含し、
ここで、前記ブロッキング分子に結合した潜在的結合部分が標的に対して結合することから阻害される、請求項79に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−501636(P2007−501636A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533195(P2006−533195)
【出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/015585
【国際公開番号】WO2005/001130
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】