説明

タンパク質補給用ゼリー状食品

【課題】
保存性の向上のためpHを低下させたタンパク質を含有したゼリー状食品において、タンパク質含量が5.0%以上であり、且つタンパク質の凝集が見られず滑らかで風味の良好であるゼリー状食品を提供する。
【解決手段】タンパク質含量が5.0%以上であり、且つタンパク質の凝集が見られず滑らかで風味の良好であるゼリー状食品をゲル化剤としてLMペクチンを0.05%〜5.0%使用、且つフィチン酸を0.01〜5.0%使用することによって、製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質補給を目的としたゼリー状食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質を補給することを目的とした食品は、粉末状、液体状等、様々な形態で市販されているが、より手軽に、より美味しく食することのできるゼリー状の食品が消費者から求められている。
【0003】
タンパク質補給を目的とする食品に求められる性質として、次の事項が挙げられる。(1)できるだけタンパク質含量が多く、効率よくタンパク質を摂取できる。(2)手軽に摂食できる。(3)美味しく摂食できる。(4)保存安定性が高い。
【0004】
ゼリー状の食品には、一般的に増粘多糖類を主体とするゲル化剤が広く利用されている。例えば、ペクチン、カラギナン、ジェランガム、寒天、グルコマンナン、カードラン、アルギン酸、タマリンドシードガム等が挙げられる。この中でもペクチンは、野菜や果実、特に柑橘類に多く含まれている天然の高分子多糖類であり、主にガラクチュロン酸とメチル化ガラクチュロン酸で構成されている。本発明に使用されるペクチンは、エステル化度が50%未満のLMペクチンである。
【0005】
ゼリー状の食品は、保存性の向上並びに清涼感のある味付けのため、酸味料がしばしば使用される。例えば、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、フィチン酸、リン酸等が上げられる、この中でも本発明に使用される、フィチン酸は、イノシトールの6リン酸エステルであり、穀類等の植物に存在する。食品に添加した場合、他の酸味料に比べて少量でpHを下げることが可能であり、酸味を付与したくない場合に適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、保存性の向上のためpHを低下させたタンパク質を含有したゼリー状食品において、タンパク質含量が5.0%以上であり、且つタンパク質の凝集が見られず滑らかで風味の良好であるゼリー状食品を製造することは困難である点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するため、本発明のタンパク質補給用ゼリー状食品では、タンパク質としてホエイタンパク質を使用し、ゲル化剤としてLMペクチンを0.05%〜5.0%使用、且つフィチン酸を0.01〜5.0%使用することによって、タンパク質含量が5.0%以上であり、且つタンパク質の凝集が見られず滑らかで風味の良好であるゼリー状食品を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、タンパク質の摂取効率が高く、美味しく摂食することができる保存性の高いタンパク質補給用ゼリー状食品をタンパク質の凝集等の問題も無く製造できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において原料として使用するタンパク質は、牛乳より製造されるホエイタンパク質であれば、特に限定されるものではなく、例えばチーズホエイを限外ろ過や脱乳糖処理して製造される濃縮ホエイタンパク質、熱変性処理をした微粒子化濃縮ホエイタンパク質等が挙げられる。
【0010】
本発明のタンパク質補給用ゼリー状食品は、上記ホエイタンパク質を5.0〜20.0%含有するが、好ましくは、5.0〜15.0%、さらに好ましくは5.0〜8.0%含有する。
【0011】
本発明ではゲル化剤としてLMペクチンを用いるが、他の増粘多糖類を併用することも出来る。増粘多糖類としては、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、デンプン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明のタンパク質補給用ゼリー状食品は、上記LMペクチンを0.05〜5.0%含有するが、好ましくは、0.2〜3.0%、さらに好ましくは0.3〜1.5%含有する。
【0013】
本発明ではLMペクチンを使用するが、ゲル強度上げる目的で2価のカチオンイオンを添加することも出来る。カチオンイオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
次に本発明のタンパク質補給用ゼリー状食品について実施例を挙げて説明するが、本発明の範囲はこれらによって、何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例では以下の原料を使用したが、同等のものであれば特に指定されるものではない。濃縮ホエイタンパク質パウダー(シンプレス100、CP Kelco製)、LMペクチン(GENU pectin type LM−104AS−J、CP Kelco製)、フィチン酸(敷島スターチ株式会社製)。
【0016】
タンパク質補給用ゼリー状食品を試作した。濃縮ホエイタンパク質パウダーをプロペラ攪拌機を用いて水に分散、溶解した。LMペクチンをプロペラで攪拌しながら、60〜85℃の湯に分散、溶解してペクチン溶液を調製した。濃縮ホエイタンパク質パウダーの溶液を湯浴中で攪拌しながら85℃まで加熱し、LMペクチン溶液を添加混合した後、砂糖を添加、溶解した。次いで攪拌しながらフィチン酸溶液を添加した。容器に充填した後、85℃の湯浴中で10分間で殺菌した。試作品のタンパク質含量は6.0%、pH 3.9である。また、比較例としてフィチン酸の代わりにクエン酸を使用してpHを調整したものも併せて試作した。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表2から分かるように、ゲル化剤にLMペクチン、酸味料としてフィチン酸を使用することで、タンパク質の凝集が見られず滑らかで風味の良好であるゼリー状食品を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のタンパク質補給用ゼリー状食品は、病院食、非常食、スポーツをする際のタンパク質補給食品等への利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホエイタンパク質とLMペクチンとフィチン酸を含有するゼリー状食品。
【請求項2】
ホエイタンパク質をタンパク質含量として5.0〜20.0%含有する請求項1記載のゼリー状食品。
【請求項3】
LMペクチンを0.05〜5.0%含有する請求項1記載のゼリー状食品。
【請求項4】
フィチン酸を0.01〜5.0%含有する請求項1記載のゼリー状食品。

【公開番号】特開2008−148606(P2008−148606A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338369(P2006−338369)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000176095)三晶株式会社 (12)
【Fターム(参考)】