説明

タンポン用アプリケータ

【課題】把持筒部の手触りが良好であり、しかも滑り止め用の部分が確実に指に接触することが可能なタンポン用アプリケータを提供する。
【解決手段】タンポン用アプリケータは一側に吸収体4が押し出される押し出し開口8が設けられ他側に把持筒部7が設けられた外筒2と、把持筒部7内に挿入され外筒2内への移動により吸収体4を押し出し開口8から外方へ押し出し可能な内筒3とを備える。把持筒部7の外周面の周方向の4箇所から立ち上がり、把持筒部7の径方向断面形状が頂部を弧状とする山形形状の4つの凸部11a、12a、13a、14aと、各凸部11a、12a、13a、14a間に設けられ把持筒部7の外周面からなる4つの基面部11b、12b、13b、14bとからなる凸部列11,12,13,14を有し、把持筒部7の軸方向に沿って凸部列11,12,13,14が複数列形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体を収容して使用時に吸収体を押し出すタンポン用アプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
タンポン用アプリケータは、吸収体を収容する外筒と、外筒内の吸収体を押し出す内筒とを備えている。これらの外筒及び内筒は、樹脂の射出成形により成形される。内筒は外筒内に移動するように操作され、この操作によって吸収体を外筒から押し出すように作用する。内筒の移動操作を確実に行うため、外筒には把持筒部(グリップ部)が形成されている。特許文献1〜4には、把持筒部の改良に関しての従来技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、把持筒部に平らな表面を形成し、この平らな表面にスリット溝等を形成した高摩擦構造としている。特許文献2では、把持筒部を10mm以内の窪んだ形状とし、この窪み部分に10mm未満の高さの凸部を形成した構造としている。特許文献3では、把持筒部に略楕円柱状の扁平形状部分を形成していると共に、この扁平形状部分の外周にリブ状突起を設けた構造としている。特許文献4では、把持筒部を略多角形状とすると共に外周にリブ状突起を設けた構造としている。
【特許文献1】特表2004−532712公報
【特許文献2】WO2005−0009312公報
【特許文献3】実開昭61−54822号公報
【特許文献4】実開昭61−54823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のタンポン用アプリケータにおいては、把持筒部に形成した滑り止め用の突起の手触りが悪く、指に不快感を与える問題を有している。又、滑り止め用の突起に指が接触しない場合があり、接触しない場合には、操作に不安感を与えている問題も有している。
【0005】
そこで本発明は、把持筒部の手触りが良好であり、しかも滑り止め用の部分が確実に指に接触することが可能なタンポン用アプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明のタンポン用アプリケータは、吸収体が内部に収容され一側に前記吸収体が押し出される押し出し開口が設けられ他側に把持筒部が設けられた外筒と、前記把持筒部内に挿入され前記外筒内への移動により前記吸収体を押し出し開口から外方へ押し出し可能な内筒とを備えたタンポン用アプリケータであって、前記把持筒部の外周面の周方向の4箇所から立ち上がり、前記把持筒部の径方向断面形状が頂部を弧状とする山形形状の4つの凸部と、前記各凸部間に設けられ前記把持筒部の外周面からなる4つの基面部とからなる凸部列を有し、前記把持筒部の軸方向に沿って前記凸部列が複数列形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載のタンポン用アプリケータであって、前記複数列の凸部列は、前記内筒の把持筒部への挿入側へ向けて前記凸部の把持筒部の外周面からの高さが次第に低くなるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載のタンポン用アプリケータであって、前記複数列の凸部列の隣り合う凸部間のピッチが異なっていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のタンポン用アプリケータであって、前記凸部は、前記把持筒部の外周面と平行な頂面と、この頂面の前記内筒挿入側から把持筒部の外周面に対して垂直に延びる垂直面と、頂面の前記吸収体の収容側から把持筒部の外周面に向けて下り傾斜の傾斜面とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、把持筒部に形成した凸部列に山形形状の凸部を設けているため、手触りが良好であり、操作時に不快感を与えることがない。又、凸部を周方向の4箇所に形成しているため、指が凸部に確実に接触することができ、操作時の不安感を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施形態のタンポン用アプリケータの全体を示す正面図、図2は図1のA部拡大正面図、図3は図2のB−B線断面図、図4は凸部列を示す図3と同様の箇所の断面図、図5は凸部列の関係を示す断面図、図6は凸部列の凸部の形状を示す断面図、図7は図6に示す凸部の傾斜面の傾斜度αの範囲を説明するグラフである。
【0012】
この実施形態のタンポン用アプリケータ1は、外筒2と内筒3とを有している。これらの外筒2及び内筒3のそれぞれは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンによって全体が形成されている。
【0013】
外筒2の内部には吸収体4が収容されている。吸収体4には取り出し紐5が基端部に連結されている。取り出し紐5は吸収体4の基端部から内筒3の内部を挿通し、その挿通端部が内筒3から抜き出されている。使用中に取り出し紐5を引くことにより、吸収体4を体内から引き出すことができる。
【0014】
外筒2の先端部分は径の大きな吸収体収容筒部6となっており、基端部分は径の小さな把持筒部7となっている。把持筒部7には内筒3の先端部分が挿入されており、挿入された内筒3の先端面は吸収体4に臨んでいる。吸収体収容筒部6の先端部分は押し出し開口となっており、この押し出し開口には花弁体8が連設されている。花弁体8は常時は押し出し開口の縁部で閉となっているが、内筒3によって吸収体4が押し出されるときに吸収体4によって押し広げられて開口する。これにより、吸収体4が吸収体収容筒部6から押し出されるため吸収体4を体内に挿入することができる。把持筒部7は、このような内筒3の移動操作の際に指によって把持されるグリップ部分となる。
【0015】
図2に示すように、把持筒部7の外周には複数の凸部列11、12、13、14が形成されている。複数の凸部列11、12、13、14は、使用者の指が接触することにより滑り止めとして機能する。符号15は、把持筒部7における内筒3の挿入側に形成された簸かかり部である。簸かかり部15は凸部列14よりも大径となっていることにより、使用者の指を受け止めるものである。
【0016】
それぞれの凸部列11,12,13,14は、4つの凸部11a、12a、13a、14aと、4つの基面部11b、12b、13b、14bとによって形成されている。
【0017】
図3は、凸部列11部分における径方向断面を示し、他の凸部列12,13,14も同様となっている。凸部列11の4つの凸部11aは、把持筒部7の外周面の周方向の4箇所から立ち上がっている。この実施形態では、凸部11aは周方向を4等分した4箇所から立ち上がるものである。凸部11aは頂部が弧状の山形形状となっており、このように頂部が弧状となっていることにより指への滑らかな手触りとすることができる。基面部11bは凸部11aの間に位置している。基面部11bは把持筒部7の外周面と同一面となっている。把持筒部7は円形の筒形状となっていることから、把持筒部7の外周面と同一の基面部11bも凸部11aと同様に弧状となっている。これにより、凸部列11の全体が滑らかな手触りとなる。
【0018】
図4は、凸部列11における凸部11a及び基面部11bの配置関係を示し、他の凸部列12,13,14も同様となっている。凸部11aにおける頂部は、把持筒部7の外面から0.1〜10mm、より好ましくは0.2〜1mmの範囲の高さとなるように形成される。この場合、把持筒部7の直径は、4〜25mm、より好ましくは13〜16mmとなっている。
【0019】
図4において、直線Mは、把持筒部7の中心点Oを通る中心線であり、直線N1、N2は基面部11bの幅、すなわち凸部11aが途切れている領域である。直線N1,N2は中心線Mを挟んだ両側に位置している。一方の直線N1と中心線Mとのなす角度、すなわち一の基面部11bの片側の領域Qは、1〜40°、より好ましくは5〜15°の範囲で設定することが良好である。
【0020】
このような凸部11a及び基面部11bによって凸部列11を形成することにより、滑らかな感触ばかりでなく、指が滑りにくくなる特性を有することができる。又、射出成形における型抜きの際に、凸部11aの樹脂材料の一部が基面部11bに移動することができるため、凸部11aにおけるバリの発生を抑制することができる。なお、この移動樹脂は、型抜き後においては元(凸部11a)に戻るものである。
【0021】
なお、図2においては、複数の凸部列11,12,13,14における凸部11a、12a、13a、14a及び基面部11b、12b、13b、14bが把持筒部7の経方向に対して同じ箇所に形成されるが、これに限らず、これらを経方向の異なった位置に形成しても良い。
【0022】
複数の凸部列11、12、13、14の凸部11a、12a,13a、14aは、内筒3が把持筒部7に挿入される挿入側に向けて把持筒部7の外周面からの高さが次第に低くなるように形成されている。すなわち、図2に示すように吸収体収容筒部6側の凸部列11の凸部11aの径が最も大きく、吸収体収容筒部6から離れるのにつれて、すなわち凸部列12、13、14となるのにつれて凸部11a、12a、13a、14aの径が次第に小さくなっている。これにより図2に示すように、凸部11a、12a、13a、14aの頂部を結ぶ頂部線Rは内筒3の挿入側に向かって下降する傾斜となっている。
【0023】
また、複数の凸部列11、12、13、14の凸部11a、12a,13a、14aは、内筒3が把持筒部7に挿入される挿入側に向けて把持筒部7の外周面からの高さが次第に低くなることを言い換えると、押し出し開口側に向けて把持筒部の外周面からの高さが次第に高くなるようになっている。これにより、図2に示すように、凸部11a、12a,13a、14aの頂部を結ぶ頂部線Rは、押し出し開口側に向かって上昇する傾斜となっている。
【0024】
図5は凸部列11、12、13、14における凸部11a、12a、13a、14aの高さを比較するものであり、凸部列11の凸部11aの高さをH11、凸部列12の凸部12aの高さをH12、凸部列13の凸部13aの高さをH13、凸部列14の凸部14aの高さをH14とした場合、H11>H12>H13>H14となるように設定される。例えば、H11=0.4mm、H12=0.35mm、H13=0.3mm、H14=0.25mmのように、隣り合う凸部列の高さを0.05mm刻みで異ならせることができる。この場合、凸部11aの高さH11は0.1〜10mm、より好ましくは0.2〜1mmの範囲で増減させることができ、他の凸部12a、13a、14aの高さH12、H13、H14は、これよりも順次高さが小さくなるように形成される。
【0025】
図5において、矢印Kは射出成形に用いる金型の抜き方向であり、この抜き方向Kに沿って凸部列11、12、13、14の凸部11a、12a,13a、14aが次第に低くなっている。このため、型抜きの際の無理抜きが不要となり、無理抜きに起因したバリや捲れを防止することができる。
【0026】
本実施形態において、凸部列11、12、13、14の凸部11a、12a、13a、14aは、隣り合う凸部列間のピッチ(間隔)が異なるように形成されるものである。図2及び図5において、P1は吸収体収容筒部6の基端部と凸部列11の凸部11aとの間のピッチ、P2は凸部列11の凸部11aと凸部列12の凸部12aとの間のピッチ、P3は凸部列12の凸部12aと凸部列13の凸部13aとの間のピッチ、P4は凸部列13の凸部13aと凸部列14の凸部14aとの間のピッチである。
【0027】
この実施形態において、隣接する凸部の間のピッチP2とP3、P3とP4は異なる値に設定される。例えば、P2=2.5mm、P3=2.0mm、P4=2.5mmとなるように設定される。この場合、隣接している凸部の間のピッチが異なっていれば、隣接していない凸部列の間のピッチ(P2とP3)は同じであっても良い。
【0028】
隣接する凸部の間におけるピッチの値の相違の範囲は、0.2〜5mm、より好ましくは1.5〜3mmが良好である。ピッチの値の相違の範囲が0.2mm未満では、指が接触したときにピッチの相違を感じることが難しく、5mmを越える場合には、把持筒部7が必要以上に長くなるため好ましくない。なお、吸収体収容筒部6と凸部列11の凸部11aとの間のピッチP1は、把持筒部7の長さに応じて設定することができ、例えばP1=3.0mmとすることができる。
【0029】
このように、隣接する凸部列における凸部の間のピッチを変化させることにより、使用者が把持筒部7を把持したときに、良好なグリップ感を得ることができる。
【0030】
本実施形態の凸部列11、12、13、14の凸部11a、12a,13a、14aは、軸方向断面が台形形状となるように形成される。より具体的には、図6に示すように凸部列11の凸部11a(他の凸部列12、13、14の凸部も同様)は、頂面11cの軸方向断面が把持筒部7の外周面と平行となっており、頂面11cからは垂直面11d及び傾斜面11eが連設した台形形状に形成されるものである。垂直面11dは頂面11cにおける内筒3の挿入側(図6において右側)の端部から把持筒部7の外周面に対して垂直に延びるように形成される。傾斜面11eは頂面11cにおける吸収体4の収容側(吸収体収容筒部6、図6において左側)から把持筒部7の外周面に向けて下り傾斜となって形成される。
【0031】
凸部列11における頂面11c(他の凸部列12、13、14の凸部の頂面も同様)の幅は0.1〜5mm、より好ましくは0.2〜2mmに設定される。頂面11cの幅がこの範囲を逸脱する場合には、射出成形の型抜きの際にバリや捲れが発生して好ましくない。傾斜面11eの下り傾斜の角度は、吸収体収容筒部6の高さとの関係で設定するのが好ましい。すなわち、図7に示すように、凸部列11の凸部11aの高さを吸収体収容筒部6の高さの半分とした場合には、把持筒部7の外周面に対する傾斜面11eの角度αは5〜80°、好ましくは20〜60°の範囲に設定することが好ましい。傾斜面11eの角度が90°の場合には、射出成形の型抜きの際にバリや捲れが発生し易くなる。かかる傾斜面11eの角度は他の凸部列12、13、14の凸部12a、13a、14aにおいても同様に角度に設定されるものである。
【0032】
以上の実施形態では、把持筒部7に形成した凸部列11,12,13,14に山形形状の凸部11a、12a、13a、14aを設けているため、手触りが良好であり、操作時に不快感を与えることがない。又、凸部11a、12a、13a、14aを周方向の4箇所に形成しているため、指が凸部に確実に接触することができ、操作時の不安感を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態のタンポン用アプリケータの全体を示す正面図である。
【図2】図1のA部拡大正面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】凸部列における凸部及び基面部の関係を示す断面図である。
【図5】凸部列の関係を示す断面図である。
【図6】凸部列の形状を示す断面図である。
【図7】凸部列の傾斜部の傾斜範囲を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 タンポン用アプリケータ
2 外筒
3 内筒
4 吸収体
5 取り出し紐
6 吸収体収容筒部
7 把持筒部
8 花弁体
11、12、13、14 凸部列
11a、12a、13a、14a 凸部
11b、12b、13b、14b 基面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体が内部に収容され一側に前記吸収体が押し出される押し出し開口が設けられ他側に把持筒部が設けられた外筒と、前記把持筒部内に挿入され前記外筒内への移動により前記吸収体を押し出し開口から外方へ押し出し可能な内筒とを備えたタンポン用アプリケータであって、
前記把持筒部の外周面の周方向の4箇所から立ち上がり、前記把持筒部の径方向断面形状が頂部を弧状とする山形形状の4つの凸部と、前記各凸部間に設けられ前記把持筒部の外周面からなる4つの基面部とからなる凸部列を有し、前記把持筒部の軸方向に沿って前記凸部列が複数列形成されていることを特徴とするタンポン用アプリケータ。
【請求項2】
請求項1記載のタンポン用アプリケータであって、
前記複数列の凸部列は、前記内筒の把持筒部への挿入側へ向けて前記凸部の把持筒部の外周面からの高さが次第に低くなるように形成されていることを特徴とするタンポン用アプリケータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のタンポン用アプリケータであって、
前記複数列の凸部列の隣り合う凸部間のピッチが異なっていることを特徴とするタンポン用アプリケータ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のタンポン用アプリケータであって、
前記凸部は、前記把持筒部の外周面と平行な頂面と、この頂面の前記内筒挿入側から把持筒部の外周面に対して垂直に延びる垂直面と、頂面の前記吸収体の収容側から把持筒部の外周面に向けて下り傾斜の傾斜面とを有することを特徴とするタンポン用アプリケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−233049(P2009−233049A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81964(P2008−81964)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】