説明

タービンエンジンの外ケーシングの周状のリムの対応するリングセクタからの絶縁

本発明は、ロータホイール(5)を外ケーシング(4)によって保持されたセクタ化されたリングの内側に取り付けて備えており、外ケーシング(4)が、リングセクタ(6)の下流端(13)を取り付けるために前記環状の空洞に収容される周状のリム(22)を少なくとも有しているタービンエンジンのタービン段(1)であって、リングセクタ(6)の環状の空洞の底壁(16)が、外ケーシング(4)の周状のリム(22)から半径方向に離れたままであって、両者の間に熱絶縁の空間をもたらしている一方で、周状のリム(22)に作用する半径方向の位置決め手段(24)を備えていることを特徴とするタービン段(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジンのタービン段に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンの低圧タービンは、複数の段を備えており、各々の段が、環状に並べられた固定翼を外ケーシングによって保持することによって形成されたノズルと、ノズルの下流に回転可能に取り付けられた羽根付きのホイールとを有しており、羽根付きのホイールは、リングセクタを突き合わせて外ケーシングに周状に取り付けることによって形成された円柱形または円錐台形の外被の内側に位置している。
【0003】
タービンエンジンの燃焼室を出る加圧された高温ガスが、ノズルの翼の間を通過し、タービンホイールの羽根へと流れることで、リングセクタによって形成された外被の温度を上昇させるという影響を有する。
【0004】
例えば、本出願の出願人の名義の仏国特許出願公開第2899273号明細書に記載のとおり、外ケーシングは、リングセクタの下流端を取り付けるための少なくとも1つの周状リムを有している。
【0005】
公知の方式で、各々のリングセクタの下流端に、上流側の環状の当接部と、下流側の環状の当接部と、底壁とによって画定された環状の空洞が形成されており、この空洞にケーシングの周状のリムが係合し、リングセクタが空洞の環状の当接部によってリム上の軸方向の位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2899273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケーシングの周状のリムと各々のリングセクタとの間の接触面積が大きいため、リングの熱のかなりの部分が、周状のリムを介して外ケーシングへと導かれる。これが、動作時に、使用される材料の許容可能な限界である約730℃の温度に達する可能性がある。
【0008】
これが、周状のリムおよび外ケーシングについて、劣化の多大な恐れにつながる。
【0009】
本発明の特段の目的は、この問題に対する単純、効果的、かつ安価な技術的解決策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的のため、本発明は、ロータホイールを外ケーシングによって保持されたセクタ化されたリングの内側に取り付けて備えており、各々のリングセクタが、環状の空洞が形成された下流端を有し、この環状の空洞は、上流側の環状の当接部と、下流側の環状の当接部と、底壁とによって画定されており、外ケーシングが、リングセクタの下流端を取り付けるために前記環状の空洞に収容される周状のリムを少なくとも有しているタービンエンジンのタービン段であって、リングセクタの環状の空洞の底壁が、外ケーシングの周状のリムから半径方向に離れたままであって、両者の間に熱絶縁の空間をもたらしている一方で、周状のリムに作用する半径方向の位置決め手段を備えていることを特徴とするタービン段を提供する。
【0011】
このようにして、周状のリムと各々のリングセクタとの間の接触面積が大幅に縮小されることで、周状のリムの加熱が抑えられ、より全体的には外ケーシングの加熱が抑えられる。
【0012】
本発明の一実施形態においては、半径方向の位置決め手段が、環状の空洞の底壁から突き出すように形成された少なくとも2つのスタッドを備える。
【0013】
結果として、リングセクタと周状のリムとの間の接触面積が、スタッドの端部の面積にまで抑えられる。
【0014】
好都合には、スタッドが、底壁の周方向の端部に位置する。
【0015】
これは、リングセクタについて、周状のリムに対する適切な配置を保証することを可能にする。しかしながら、リングの周方向の膨張が、周状のリムの周方向の膨張よりも大きいため、タービンエンジンの動作時にスタッドと周状のリムとの間に相対移動が生じ、摩擦および摩耗が生じる。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、リングセクタが半径方向において適切に位置することを保証するために、スタッドが、底壁の軸方向中央面から離れて位置する。
【0017】
好ましくは、接触する上述の構成要素の摩耗を抑えるために、スタッドが、底壁の軸方向中央面と底壁の周方向の端部との間に位置する。
【0018】
また、環状の当接部の各々が、環状のセクタの全周に及ぶ半径方向の表面を備えており、外ケーシングの周状リムが、リングセクタの環状の当接部の半径方向の表面の間にすき間なく取り付けられることが、好都合である。
【0019】
これは、周状のリムとリングセクタとの間のシールをもたらす。
【0020】
スタッドは、矩形の形状であってもよい。
【0021】
さらに、外ケーシングに対するリングセクタの適切な配置を保証するために、外ケーシングの周状のリムが、環状の当接部の間で軸方向に圧迫されることも好都合である。
【0022】
好ましくは、スタッドの接触面積と環状の空洞の底壁の面積との間の比が、0.1〜0.25の範囲にある。
【0023】
さらに本発明は、航空機のターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジンであって、本発明のタービン段を備えることを特徴とするタービンエンジンを提供する。
【0024】
添付の図面を参照しつつあくまでも本発明を限定するものではない例として行なわれる以下の説明を検討することで、本発明をよりよく理解することができ、本発明の他の詳細、特徴、および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】先行技術の低圧タービンの一部分の軸方向断面の概略図である。
【図2】図1の一部分の拡大である。
【図3】図2の拡大図であり、リングセクタの下流端がどのように外ケーシングの周状のリムに取り付けられるのかを示している。
【図4】図3に対応する図であり、本発明を示している。
【図5】本発明のリングセクタの一部分の斜視図である。
【図6】図1のリングセクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図3が、複数の段を備える先行技術のタービンエンジンの低圧タービン1を示しており、各々の段が、タービンの外ケーシング4によって保持された固定翼3からなるノズル2と、ノズル2の下流に取り付けられたロータホイール5とを有しており、ロータホイール5が、タービンの外ケーシング4によって周状に突き合わせて保持されたリングセクタ6によって形成される実質的に円錐台形状の外被の内側で回転する。
【0027】
ノズル2は、回転面を構成する内壁(図示せず)および外壁7を有しており、これらの回転面の間に、ガスがタービンを通過して流れる環状の通路8が画定され、内壁および外壁7は、翼3によって半径方向おいて互いに接続されている。
【0028】
ロータホイール2は、タービンシャフト(図示せず)へと固定され、各々が、外シュラウド9および内シュラウド(見て取ることができない)を備えており、外シュラウド9が、わずかなすき間でリングセクタ6によって外側から囲まれた半径方向の外リブ10を有している。
【0029】
各々のリングセクタ6が、円錐台形状の壁11と、ろう付けおよび/または溶接によって円錐台形状の壁11の半径方向内側の表面に取り付けられた摩耗可能な材料からなるブロック12とを備えており、ブロック12が、ハニカム式であり、ホイール5とリングセクタ6との間の半径方向のすき間を最小限にするためにホイール5のリブ10との摩擦によって摩耗するように設計されている。
【0030】
リングセクタの円錐台形状の壁11は、外側へと開いた環状の空洞が形成された下流端13を有しており、この外側へと開いた環状の空洞は、上流側の環状の当接部14と、下流側の環状の当接部15と、底壁16とで画定されている。環状の当接部14、15の各々が、リングセクタ6の全周に及ぶ表面を有している。さらに、底壁16が、空洞の機械加工を可能にする下流側の環状溝17および上流側の環状溝18を有している(図3を参照)。
【0031】
各々のリングセクタ6の下流端13が、下流に位置するノズル2の外壁7の2つの環状のリム(それぞれ、上流を向いた半径方向内側のリム20および半径方向外側のリム21)の間に画定された環状の空間19に係合する。
【0032】
外ケーシング4が、内側の周状のリム22を備えており、この周状のリム22が、下流を向いたフックの断面形状であり、環状セクタの円錐台形状の壁11の空洞に係合し、ノズル2の半径方向外側のリム21によって保持される。外ケーシング4の周状のリム22は、リングセクタ6の環状の当接部14、15の間で軸方向に圧迫され、この圧迫は、タービンエンジンのすべての動作段階において維持される。
【0033】
より詳しくは、前記リム22が、ノズルの半径方向外側のリム21に当接する半径方向外側の環状面と、リングセクタの底壁16に当接する半径方向内側の環状面とを有する。
【0034】
半径方向外側のリム21の上流端と、リム22と外ケーシング4との間の接続ゾーン23との間に、軸方向のすき間j1が設けられている。このすき間は、膨張の影響を補償するように機能し、タービンエンジンの動作時に実質的にゼロになってもよい。
【0035】
このように、リングセクタ6が、下流端13においてノズル2によってケーシングの周状のリム22に対して固定され、周状リム22とリングセクタ6との間のシールが、軸方向の当接部14、15および底壁16によってもたらされている。
【0036】
さらに、リングセクタ6は、上流端において、ここでは詳しくは説明しない構造によってケーシングへと取り付けられている。
【0037】
動作時、燃焼室からのガスがリングセクタ6を加熱し、次いでこの熱が、伝導によってケーシングの周状リム22へと伝えられる。
【0038】
残念なことに、リングセクタ6と周状のリム22との間の伝導の面積または接触面積が大きいため、実際に、リム22の温度が限界値(例えば、730℃)に達する可能性があり、すなわち一般的に使用される材料の最大許容温度に達する可能性がある。
【0039】
本発明のリングセクタが、図4〜図6に示されている。このリングセクタは、環状の空洞の底壁16が半径方向外側へと突き出す少なくとも2つのスタッド24を備えており、スタッドの端部が周状のリム22に対する当接面25を形成している点で、上述のセクタと相違する。スタッド24は、好ましくはリングセクタ6の上流側の当接部14の付近に配置される。
【0040】
このやり方で、周状のリム22とリングセクタ6との間の接触面積が小さくなり、絶縁空気の層が、底部16と周状リム22の内壁との間に形成される。
【0041】
スタッド24の接触面積と底壁16の面積との間の比は、0.1〜0.25の範囲にある。
【0042】
実際に、このような構造は、タービンエンジンの動作時に周状のリム22の温度を約40℃下げることを可能にする。
【0043】
図5および図6の実施形態においては、スタッド24が矩形の形状であり、底壁16の周方向の両端に位置している。
【0044】
スタッド24は、好ましくは、底壁16の軸方向中央面Pから、この中央面Pの各側に離して配置され、軸方向中央面Pと底壁16の周方向の一端との間に位置する。各々のリングセクタのケーシングに対する周方向の移動が、リングセクタの中央面Pに位置する手段によって防止されるため、リングセクタは、ケーシングに対して中央面Pの各側に膨張する。スタッド24を中央面Pに近付けると、スタッドとケーシングの周状のリム22との間の摩擦の量も少なくなる。スタッドを中央面Pから遠くに位置させると、リングセクタが中央面Pの一方の側または他方の側から傾く恐れを避けつつ、周状のリム22に対するリングセクタの良好な半径方向の位置決めが保証される。
【0045】
さらに、スタッド24は、任意の他の所望の形状を有することができ、例えば正方形、円柱形、円錐台形、などであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータホイール(5)を外ケーシング(4)によって保持されたセクタ化されたリングの内側に取り付けて備えており、各々のリングセクタ(6)が、環状の空洞が形成された下流端(13)を有し、該環状の空洞は、上流側の環状の当接部(14)と、下流側の環状の当接部(15)と、底壁(16)とによって画定されており、外ケーシング(4)が、リングセクタ(6)の下流端(13)を取り付けるために前記環状の空洞に収容される周状のリム(22)を少なくとも有しているタービンエンジンのタービン段(1)であって、
リングセクタ(6)の環状の空洞の底壁(16)が、外ケーシング(4)の周状のリム(22)から半径方向に離れたままであって、両者の間に熱絶縁の空間をもたらしている一方で、周状のリム(22)に作用する半径方向の位置決め手段(24)を備えており、位置決め手段は、環状の空洞の底壁(16)から突き出す少なくとも2つのスタッド(24)によって形成されていることを特徴とする、タービン段(1)。
【請求項2】
スタッド(24)が、底壁(16)の周方向の端部に位置することを特徴とする、請求項1に記載のタービン段(1)。
【請求項3】
スタッド(24)が、底壁(16)の軸方向中央面(P)から離れて位置していることを特徴とする、請求項1に記載のタービン段(1)。
【請求項4】
スタッド(24)が、底壁(16)の軸方向中央面(P)と底壁(16)の周方向の端部との間に位置することを特徴とする、請求項3に記載のタービン段(1)。
【請求項5】
環状の当接部(14、15)の各々が、環状のセクタの全周に及ぶ半径方向の表面を備えており、外ケーシング(4)の周状リム(22)が、リングセクタ(6)の環状の当接部(14、15)の半径方向の表面の間にすき間なく取り付けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のタービン段(1)。
【請求項6】
外ケーシング(4)の周状のリム(22)が、環状の当接部(14、15)の間で軸方向に圧迫されていることを特徴とする、請求項5に記載のタービン段(1)。
【請求項7】
スタッド(24)が矩形の形状であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のタービン段(1)。
【請求項8】
スタッド(24)の接触面積と環状の空洞の底壁(16)の面積との間の比が、0.1〜0.25の範囲にあることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のタービン段(1)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のタービン段(1)を備えることを特徴とする航空機のターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−512382(P2013−512382A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540478(P2012−540478)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052495
【国際公開番号】WO2011/064496
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】