タービン動翼および蒸気タービン
【課題】タービン動翼の背面側の前縁領域を通過して背面に衝突することによって生成され、背面に沿って流下する水滴や、翼根元部側に向かうにつれて増えるタービン動翼の表面に付着した水滴を、タービン動翼外方に確実に排出することができるタービン動翼を提供することができる。
【解決手段】本発明のタービン動翼1は、背面31、翼根元部37および翼先端部36を有し、回転軸(図示せず)を中心として回転する。背面31側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側には、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴7を外方へと導く分離溝2が設けられている。
【解決手段】本発明のタービン動翼1は、背面31、翼根元部37および翼先端部36を有し、回転軸(図示せず)を中心として回転する。背面31側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側には、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴7を外方へと導く分離溝2が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に付着した水滴を、外方に効率よく排出することができる分離溝を備えたタービン動翼に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン翼を湿り度が大きい蒸気中で使用する場合、湿った状態の蒸気中の水分は、水滴の形で蒸気とともにタービン内を流下する。動翼流路部では、タービン動翼は大きな周速で回転するので、水滴には気体である蒸気と比べて大きな慣性力が働く。このため、多くの水滴はタービン動翼の表面に衝突し、付着する。
【0003】
このように付着した水滴には、タービン動翼が回転することに伴って発生する遠心力と、蒸気のせん断力とが作用する。このため、このような水滴は、タービン動翼の表面上を半径方向であってタービン動翼下流側に向かって水膜となって流れる。また、水滴の一部は、タービン動翼下流から流出し次段の翼へ流入する。このような水滴をタービン動翼の外方へスムーズに排出することができないと、タービン動翼が浸食し、タービン全体としての性能が悪化するおそれがある。
【0004】
従来、図13および図14に示すように、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aに、半径方向外周側に向かって平行に延びる分離溝2を設け、タービン動翼1が回転することによって発生する遠心力によって、タービン動翼1に付着した水滴7を半径方向の外周側に排出する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、図15および図16に示すように、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー(シュラウド)3と重ならない位置であって、タービン動翼1の背面31側に、半径方向外周側に向かって平行に延びる分離溝2を設置することにより、水滴7を排出する方法も知られている。
【特許文献1】特開平11−159302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図14に示すように、分離溝2を有するタービン動翼1に対して、蒸気16は、幾何流入角αに近い角度で流入するが、これに対して、水滴7は、幾何流入角αと大きくずれて流入する。
【0007】
このとき、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8a(A部)に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7は、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aに設けられ、半径方向外周側に向かって平行に延びる分離溝2によって除去することができる。しかしながら、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8a(A部)を通過し、背面31側のB部に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができない。
【0008】
すなわち、図13および図14に示すように、分離溝2より前縁8側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域の水分を、分離溝2はタービン動翼1の外方に排出することができるが、分離溝2より後縁9側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域とタービン動翼1間の領域の水分を、タービン動翼1の外方に排出することができない。
【0009】
従って、図13および図14に示すように、分離溝2より前縁8側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域が、水分を除去することができる湿分除去可能領域RAとなり、分離溝2より後縁9側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域とタービン動翼1間の領域が、水分を除去することができない湿分除去不可能領域IAとなる。
【0010】
また、図15に示すように、一般的なタービン動翼1は、翼根元部37側断面の方が、翼先端部36側の断面よりも面積が広くなり、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれて、タービン動翼1の前縁領域8aを通り過ぎてタービン動翼1の表面に衝突する水滴7の量が増える。
【0011】
しかしながら、図15に示すように、従来の分離溝2は、タービン動翼1の半径方向外周側に向かって平行に延びている。このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができない。
【0012】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、タービン動翼の背面側の前縁領域を通過して背面に衝突することによって生成され、背面に沿って流下する水滴や、翼根元部側に向かうにつれて増えるタービン動翼の表面に付着した水滴を、タービン動翼外方に確実に排出することができるタービン動翼およびタービン動翼を有する蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、タービン動翼において、背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の前縁との間の中心線より下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0014】
本発明は、タービン動翼において、背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線より下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0015】
本発明は、タービン動翼において、背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線より下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0016】
本発明は、タービン動翼において、背面側に延在し、翼根元部から翼先端部に向かうにつれてタービン動翼の前縁方向に近づき、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0017】
本発明は、翼先端部に、翼先端部と一体または別体としてカバーが設けられ、分離溝のうち翼先端部側の部分が、前記カバーの上流端より上流側に位置し、分離溝のうち翼根元部側の部分が、前記カバーの上流端から回転軸に向かって延びる上流端部線より下流側に位置することを特徴とするタービン動翼である。
【0018】
本発明は、上述のタービン動翼を有する蒸気タービンである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を、適切な位置や適切な形状でタービン動翼の背面に設けることによって、タービン動翼の背面側の前縁領域を通過して背面に衝突することによって生成され、背面に沿って流下する水滴や、翼根元部側に向かうにつれて増えるタービン動翼の表面に付着した水滴を、タービン動翼外方に確実に排出することができるタービン動翼および当該タービン動翼を有する蒸気タービンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第1の実施の形態
以下、本発明に係るタービン動翼1の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0021】
図1および図2に示すように、タービン動翼1は、背面31および腹面32と、翼根元部37および翼先端部36とを有し、回転軸(図示せず)を中心として回転可能となっている。また、タービン動翼1は、回転する時に前方側となる前縁8と、回転するときに後方側となる後縁9とを有している。なお、タービン動翼1は、回転軸の周りで列状になって配置されている(図2参照)。また、タービン動翼1は、タービン静翼(図示せず)の下流側に配置されている。
【0022】
また、図1に示すように、タービン動翼1の背面31側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に、一部が延在し、タービン動翼1の表面に付着した水滴7をタービン動翼1外方へ導く分離溝2が2本設けられている。なお、分離溝2の本数は2本に限定する必要はない。
【0023】
次に、このような構成からなるタービン動翼1の作用について説明する。
【0024】
まず、図2において、タービン静翼(図示せず)を通過した蒸気16が、列状になったタービン動翼1の間に流入する。
【0025】
次に、このような蒸気16によって、タービン動翼1が回転軸(図示せず)の周りを大きな周速で回転し、電気を生成する。
【0026】
このとき、タービン動翼1は湿り度が大きい蒸気16内で回転するので、多くの水滴7がタービン動翼の表面に衝突し、付着する(図14参照)。ここで、図1に示すように、分離溝2の一部は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の背面31の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側に延在している。このため、図2乃至図4に示すように、本発明のタービン動翼1によると、従来の分離溝2によって除去することができなかった、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。
【0027】
従って、図2乃至図4に示すように、タービン動翼1の背面31の前縁8から最背面部33までの範囲で、タービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域を、水分を除去することができる湿分除去可能領域RAとすることができ、水分を除去することができない湿分除去不可能領域IAをタービン動翼1間の領域に留めることができる。
【0028】
この結果、タービン動翼1に付着した水滴7を確実にタービン動翼1の外方に排出することができるので、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0029】
ところで、上記では、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側に延在している態様を用いて説明したが、これに限ることなく、分離溝2は、その全部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側に延在していてもよい。
【0030】
第2の実施の形態
次に図5により本発明の第2の実施の形態について説明する。図5に示す第2の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に延在したものであり、その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0031】
図5に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
図5に示すように、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11より下流側に延在している。
【0033】
このため、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる(図2乃至図4参照)。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0034】
ところで、上記では、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に延在している態様を用いて説明したが、これに限ることなく、分離溝2は、その全部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に延在していてもよい。
【0035】
第3の実施の形態
次に図6により本発明の第3の実施の形態について説明する。図6に示す第3の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも下流側に延在したものであり、その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0036】
図6に示す第3の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
図6に示すように、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12より下流側に延在している。
【0038】
このため、従来の分離溝2によって除去することができなかった、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる(図2乃至図4参照)。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0039】
ところで、上記では、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12より下流側に延在している態様を用いて説明したが、これに限ることなく、分離溝2は、その全部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12より下流側に延在していてもよい。
【0040】
第4の実施の形態
次に図7により本発明の第4の実施の形態について説明する。図7に示す第4の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、中心線10、11、12等にとらわれることなく、分離溝2を、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づくように設けたものであり、その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0041】
図7に示す第4の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
図7に示すように、分離溝2は、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づいている。
【0043】
一般的なタービン動翼1は、翼根元部37側の断面の方が、翼先端部36側の断面よりも面積が広くなり、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれて、タービン動翼1の前縁領域8aを通り過ぎてタービン動翼1の表面に衝突する水滴7の量が増える(図3および図4参照)。
【0044】
このため、図7に示すように、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づいた(すなわち、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向から離れた)分離溝2を設けることにより、タービン動翼1の表面に付着した水滴7を確実に外方に排出することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0045】
第5の実施の形態
次に図8により本発明の第5の実施の形態について説明する。図8に示す第5の実施の形態は、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に位置したものである。また、タービン動翼1の翼先端部36であって、後縁9側にはカバー(シュラウド)3が設けられている。その他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。ところで、上流側とはタービン動翼1に流入する蒸気16の上流側を意味し、下流側とはタービン動翼1に流入する蒸気16の下流側を意味する。
【0046】
図8に示す第5の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
図8に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも上流側に位置し、かつ分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に位置している。
【0048】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0049】
第6の実施の形態
次に図9により本発明の第6の実施の形態について説明する。図9に示す第6の実施の形態は、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に位置したものである。その他の構成は、図5に示す第2の実施の形態と略同一である。
【0050】
図9に示す第6の実施の形態において、図5に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
図9に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に位置している。
【0052】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0053】
第7の実施の形態
次に図10により本発明の第7の実施の形態について説明する。図10に示す第7の実施の形態は、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも下流側に位置したものである。その他の構成は、図6に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0054】
図10に示す第7の実施の形態において、図6に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
図10に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも下流側に位置している。
【0056】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0057】
第8の実施の形態
次に図11により本発明の第8の実施の形態について説明する。図11に示す第8の実施の形態は、翼先端部36に、翼先端部36と一体または別体としてカバー3が設けられたものである。また、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸方向において、当該カバー3と重ならない範囲に設けられている。その他の構成は、図7に示す第4の実施の形態と略同一である。
【0058】
図11に示す第8の実施の形態において、図7に示す第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
図11に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸方向において、当該カバー3と重なっていない。また、分離溝2は、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づいている(すなわち、分離溝2は、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向から離れている)。
【0060】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0061】
第9の実施の形態
次に図12により本発明の第9の実施の形態について説明する。図12に示す第9の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、カバー3の上流端3uよりも上流側に位置し、かつ分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、カバー3の上流端3uから回転軸に向かって延びる上流端部線15よりも下流側に位置しているものであり、その他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0062】
図12に示す第8の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
図12に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、カバー3の上流端3uより上流側に位置し、かつ分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、カバー3の上流端3uから回転軸に向かって延びる上流端部線15より下流側に位置している。
【0064】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼を半径方向から見た断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼の翼先端部側を半径方向から見た断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼の翼根元部側を半径方向から見た断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図6】本発明の第3の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図9】本発明の第6の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図10】本発明の第7の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図11】本発明の第8の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図12】本発明の第9の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図13】従来のタービン動翼を半径方向から見た断面図。
【図14】図13に示した従来のタービン動翼の分離溝近傍を拡大した拡大図。
【図15】従来のタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図16】カバーを備えた従来のタービン動翼を半径方向から見た断面図。
【符号の説明】
【0066】
1 タービン動翼
2 分離溝
3 カバー
3u カバーの上流端
8 前縁
8a 前縁領域
9 後縁
10 回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の前縁との間の中心線
11 回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線
12 回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線
15 上流端部線
16 蒸気
31 背面
32 腹面
36 翼先端部
37 翼根元部
V タービン動翼に対する水滴の相対速度ベクトル
RA 湿分除去可能領域
IA 湿分除去不可能領域
α 幾何流入角
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に付着した水滴を、外方に効率よく排出することができる分離溝を備えたタービン動翼に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン翼を湿り度が大きい蒸気中で使用する場合、湿った状態の蒸気中の水分は、水滴の形で蒸気とともにタービン内を流下する。動翼流路部では、タービン動翼は大きな周速で回転するので、水滴には気体である蒸気と比べて大きな慣性力が働く。このため、多くの水滴はタービン動翼の表面に衝突し、付着する。
【0003】
このように付着した水滴には、タービン動翼が回転することに伴って発生する遠心力と、蒸気のせん断力とが作用する。このため、このような水滴は、タービン動翼の表面上を半径方向であってタービン動翼下流側に向かって水膜となって流れる。また、水滴の一部は、タービン動翼下流から流出し次段の翼へ流入する。このような水滴をタービン動翼の外方へスムーズに排出することができないと、タービン動翼が浸食し、タービン全体としての性能が悪化するおそれがある。
【0004】
従来、図13および図14に示すように、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aに、半径方向外周側に向かって平行に延びる分離溝2を設け、タービン動翼1が回転することによって発生する遠心力によって、タービン動翼1に付着した水滴7を半径方向の外周側に排出する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、図15および図16に示すように、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー(シュラウド)3と重ならない位置であって、タービン動翼1の背面31側に、半径方向外周側に向かって平行に延びる分離溝2を設置することにより、水滴7を排出する方法も知られている。
【特許文献1】特開平11−159302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図14に示すように、分離溝2を有するタービン動翼1に対して、蒸気16は、幾何流入角αに近い角度で流入するが、これに対して、水滴7は、幾何流入角αと大きくずれて流入する。
【0007】
このとき、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8a(A部)に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7は、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aに設けられ、半径方向外周側に向かって平行に延びる分離溝2によって除去することができる。しかしながら、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8a(A部)を通過し、背面31側のB部に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができない。
【0008】
すなわち、図13および図14に示すように、分離溝2より前縁8側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域の水分を、分離溝2はタービン動翼1の外方に排出することができるが、分離溝2より後縁9側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域とタービン動翼1間の領域の水分を、タービン動翼1の外方に排出することができない。
【0009】
従って、図13および図14に示すように、分離溝2より前縁8側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域が、水分を除去することができる湿分除去可能領域RAとなり、分離溝2より後縁9側の領域からタービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域とタービン動翼1間の領域が、水分を除去することができない湿分除去不可能領域IAとなる。
【0010】
また、図15に示すように、一般的なタービン動翼1は、翼根元部37側断面の方が、翼先端部36側の断面よりも面積が広くなり、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれて、タービン動翼1の前縁領域8aを通り過ぎてタービン動翼1の表面に衝突する水滴7の量が増える。
【0011】
しかしながら、図15に示すように、従来の分離溝2は、タービン動翼1の半径方向外周側に向かって平行に延びている。このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができない。
【0012】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、タービン動翼の背面側の前縁領域を通過して背面に衝突することによって生成され、背面に沿って流下する水滴や、翼根元部側に向かうにつれて増えるタービン動翼の表面に付着した水滴を、タービン動翼外方に確実に排出することができるタービン動翼およびタービン動翼を有する蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、タービン動翼において、背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の前縁との間の中心線より下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0014】
本発明は、タービン動翼において、背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線より下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0015】
本発明は、タービン動翼において、背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線より下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0016】
本発明は、タービン動翼において、背面側に延在し、翼根元部から翼先端部に向かうにつれてタービン動翼の前縁方向に近づき、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼である。
【0017】
本発明は、翼先端部に、翼先端部と一体または別体としてカバーが設けられ、分離溝のうち翼先端部側の部分が、前記カバーの上流端より上流側に位置し、分離溝のうち翼根元部側の部分が、前記カバーの上流端から回転軸に向かって延びる上流端部線より下流側に位置することを特徴とするタービン動翼である。
【0018】
本発明は、上述のタービン動翼を有する蒸気タービンである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を、適切な位置や適切な形状でタービン動翼の背面に設けることによって、タービン動翼の背面側の前縁領域を通過して背面に衝突することによって生成され、背面に沿って流下する水滴や、翼根元部側に向かうにつれて増えるタービン動翼の表面に付着した水滴を、タービン動翼外方に確実に排出することができるタービン動翼および当該タービン動翼を有する蒸気タービンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第1の実施の形態
以下、本発明に係るタービン動翼1の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0021】
図1および図2に示すように、タービン動翼1は、背面31および腹面32と、翼根元部37および翼先端部36とを有し、回転軸(図示せず)を中心として回転可能となっている。また、タービン動翼1は、回転する時に前方側となる前縁8と、回転するときに後方側となる後縁9とを有している。なお、タービン動翼1は、回転軸の周りで列状になって配置されている(図2参照)。また、タービン動翼1は、タービン静翼(図示せず)の下流側に配置されている。
【0022】
また、図1に示すように、タービン動翼1の背面31側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に、一部が延在し、タービン動翼1の表面に付着した水滴7をタービン動翼1外方へ導く分離溝2が2本設けられている。なお、分離溝2の本数は2本に限定する必要はない。
【0023】
次に、このような構成からなるタービン動翼1の作用について説明する。
【0024】
まず、図2において、タービン静翼(図示せず)を通過した蒸気16が、列状になったタービン動翼1の間に流入する。
【0025】
次に、このような蒸気16によって、タービン動翼1が回転軸(図示せず)の周りを大きな周速で回転し、電気を生成する。
【0026】
このとき、タービン動翼1は湿り度が大きい蒸気16内で回転するので、多くの水滴7がタービン動翼の表面に衝突し、付着する(図14参照)。ここで、図1に示すように、分離溝2の一部は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の背面31の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側に延在している。このため、図2乃至図4に示すように、本発明のタービン動翼1によると、従来の分離溝2によって除去することができなかった、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。
【0027】
従って、図2乃至図4に示すように、タービン動翼1の背面31の前縁8から最背面部33までの範囲で、タービン動翼1に対する水滴7の相対速度ベクトルVに沿って延びる領域を、水分を除去することができる湿分除去可能領域RAとすることができ、水分を除去することができない湿分除去不可能領域IAをタービン動翼1間の領域に留めることができる。
【0028】
この結果、タービン動翼1に付着した水滴7を確実にタービン動翼1の外方に排出することができるので、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0029】
ところで、上記では、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側に延在している態様を用いて説明したが、これに限ることなく、分離溝2は、その全部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10より下流側に延在していてもよい。
【0030】
第2の実施の形態
次に図5により本発明の第2の実施の形態について説明する。図5に示す第2の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に延在したものであり、その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0031】
図5に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
図5に示すように、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11より下流側に延在している。
【0033】
このため、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる(図2乃至図4参照)。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0034】
ところで、上記では、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に延在している態様を用いて説明したが、これに限ることなく、分離溝2は、その全部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に延在していてもよい。
【0035】
第3の実施の形態
次に図6により本発明の第3の実施の形態について説明する。図6に示す第3の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも下流側に延在したものであり、その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0036】
図6に示す第3の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
図6に示すように、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12より下流側に延在している。
【0038】
このため、従来の分離溝2によって除去することができなかった、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる(図2乃至図4参照)。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0039】
ところで、上記では、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12より下流側に延在している態様を用いて説明したが、これに限ることなく、分離溝2は、その全部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12より下流側に延在していてもよい。
【0040】
第4の実施の形態
次に図7により本発明の第4の実施の形態について説明する。図7に示す第4の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、中心線10、11、12等にとらわれることなく、分離溝2を、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づくように設けたものであり、その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0041】
図7に示す第4の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
図7に示すように、分離溝2は、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づいている。
【0043】
一般的なタービン動翼1は、翼根元部37側の断面の方が、翼先端部36側の断面よりも面積が広くなり、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれて、タービン動翼1の前縁領域8aを通り過ぎてタービン動翼1の表面に衝突する水滴7の量が増える(図3および図4参照)。
【0044】
このため、図7に示すように、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づいた(すなわち、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向から離れた)分離溝2を設けることにより、タービン動翼1の表面に付着した水滴7を確実に外方に排出することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0045】
第5の実施の形態
次に図8により本発明の第5の実施の形態について説明する。図8に示す第5の実施の形態は、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に位置したものである。また、タービン動翼1の翼先端部36であって、後縁9側にはカバー(シュラウド)3が設けられている。その他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。ところで、上流側とはタービン動翼1に流入する蒸気16の上流側を意味し、下流側とはタービン動翼1に流入する蒸気16の下流側を意味する。
【0046】
図8に示す第5の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
図8に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも上流側に位置し、かつ分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に位置している。
【0048】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0049】
第6の実施の形態
次に図9により本発明の第6の実施の形態について説明する。図9に示す第6の実施の形態は、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に位置したものである。その他の構成は、図5に示す第2の実施の形態と略同一である。
【0050】
図9に示す第6の実施の形態において、図5に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
図9に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11よりも下流側に位置している。
【0052】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0053】
第7の実施の形態
次に図10により本発明の第7の実施の形態について説明する。図10に示す第7の実施の形態は、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも下流側に位置したものである。その他の構成は、図6に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0054】
図10に示す第7の実施の形態において、図6に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
図10に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも上流側に位置し、分離溝2のうち翼根元部37側の部分14は、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の後縁9との間の中心線12よりも下流側に位置している。
【0056】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0057】
第8の実施の形態
次に図11により本発明の第8の実施の形態について説明する。図11に示す第8の実施の形態は、翼先端部36に、翼先端部36と一体または別体としてカバー3が設けられたものである。また、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸方向において、当該カバー3と重ならない範囲に設けられている。その他の構成は、図7に示す第4の実施の形態と略同一である。
【0058】
図11に示す第8の実施の形態において、図7に示す第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
図11に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13は、回転軸方向において、当該カバー3と重なっていない。また、分離溝2は、翼根元部37から翼先端部36に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向に近づいている(すなわち、分離溝2は、翼先端部36から翼根元部37に向かうにつれてタービン動翼1の前縁8方向から離れている)。
【0060】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【0061】
第9の実施の形態
次に図12により本発明の第9の実施の形態について説明する。図12に示す第9の実施の形態は、分離溝2の一部が、回転軸に向かって延びるタービン動翼1の軸方向中心線11とタービン動翼1の前縁8との間の中心線10よりも下流側に延在する代わりに、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、カバー3の上流端3uよりも上流側に位置し、かつ分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、カバー3の上流端3uから回転軸に向かって延びる上流端部線15よりも下流側に位置しているものであり、その他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0062】
図12に示す第8の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
図12に示すように、分離溝2のうち翼先端部36側の部分13が、カバー3の上流端3uより上流側に位置し、かつ分離溝2のうち翼根元部37側の部分14が、カバー3の上流端3uから回転軸に向かって延びる上流端部線15より下流側に位置している。
【0064】
このため、翼根元部37側に向かうにつれて増えるタービン動翼1の表面に付着した水滴7を、タービン動翼1外方に確実に排出することができる。また、タービン動翼1の翼先端部36に設けられたカバー3と干渉せず、タービン動翼1の背面31側の前縁領域8aを通過して、背面31に衝突することによって生成され、背面31に沿って流下する水滴7を除去することができる。この結果、タービン動翼1の浸食を防止することができ、タービン全体としての性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼を半径方向から見た断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼の翼先端部側を半径方向から見た断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態によるタービン動翼の翼根元部側を半径方向から見た断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図6】本発明の第3の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図9】本発明の第6の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図10】本発明の第7の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図11】本発明の第8の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図12】本発明の第9の実施の形態によるタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図13】従来のタービン動翼を半径方向から見た断面図。
【図14】図13に示した従来のタービン動翼の分離溝近傍を拡大した拡大図。
【図15】従来のタービン動翼を円周方向から見た側面図。
【図16】カバーを備えた従来のタービン動翼を半径方向から見た断面図。
【符号の説明】
【0066】
1 タービン動翼
2 分離溝
3 カバー
3u カバーの上流端
8 前縁
8a 前縁領域
9 後縁
10 回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の前縁との間の中心線
11 回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線
12 回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線
15 上流端部線
16 蒸気
31 背面
32 腹面
36 翼先端部
37 翼根元部
V タービン動翼に対する水滴の相対速度ベクトル
RA 湿分除去可能領域
IA 湿分除去不可能領域
α 幾何流入角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン動翼において、
背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線よりも下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼。
【請求項2】
タービン動翼において、
背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線よりも下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼。
【請求項3】
タービン動翼において、
背面側に延在し、翼根元部から翼先端部に向かうにつれてタービン動翼の前縁方向に近づき、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼。
【請求項4】
分離溝のうち翼先端部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線よりも上流側に位置し、
分離溝のうち翼根元部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線よりも下流側に位置することを特徴とする請求項1記載のタービン動翼。
【請求項5】
分離溝のうち翼先端部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線よりも上流側に位置し、
分離溝のうち翼根元部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線よりも下流側に位置することを特徴とする請求項2記載のタービン動翼。
【請求項6】
翼先端部に、翼先端部と一体または別体としてカバーが設けられ、
分離溝のうち翼先端部側の部分は、回転軸方向において、前記カバーと重ならないことを特徴とする請求項3記載のタービン動翼。
【請求項7】
翼先端部に、翼先端部と一体または別体としてカバーが設けられ、
分離溝のうち翼先端部側の部分は、前記カバーの上流端より上流側に位置し、
分離溝のうち翼根元部側の部分は、前記カバーの上流端から回転軸に向かって延びる上流端部線より下流側に位置することを特徴とするタービン動翼。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタービン動翼を有する蒸気タービン。
【請求項1】
タービン動翼において、
背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線よりも下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼。
【請求項2】
タービン動翼において、
背面側であって、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線よりも下流側に、一部または全部が延在し、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼。
【請求項3】
タービン動翼において、
背面側に延在し、翼根元部から翼先端部に向かうにつれてタービン動翼の前縁方向に近づき、表面に付着した水滴を外方へと導く分離溝を備えたことを特徴とするタービン動翼。
【請求項4】
分離溝のうち翼先端部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線よりも上流側に位置し、
分離溝のうち翼根元部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線よりも下流側に位置することを特徴とする請求項1記載のタービン動翼。
【請求項5】
分離溝のうち翼先端部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線よりも上流側に位置し、
分離溝のうち翼根元部側の部分は、回転軸に向かって延びるタービン動翼の軸方向中心線とタービン動翼の後縁との間の中心線よりも下流側に位置することを特徴とする請求項2記載のタービン動翼。
【請求項6】
翼先端部に、翼先端部と一体または別体としてカバーが設けられ、
分離溝のうち翼先端部側の部分は、回転軸方向において、前記カバーと重ならないことを特徴とする請求項3記載のタービン動翼。
【請求項7】
翼先端部に、翼先端部と一体または別体としてカバーが設けられ、
分離溝のうち翼先端部側の部分は、前記カバーの上流端より上流側に位置し、
分離溝のうち翼根元部側の部分は、前記カバーの上流端から回転軸に向かって延びる上流端部線より下流側に位置することを特徴とするタービン動翼。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタービン動翼を有する蒸気タービン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−137094(P2012−137094A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−59096(P2012−59096)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2006−325464(P2006−325464)の分割
【原出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2006−325464(P2006−325464)の分割
【原出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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