説明

ターボ機械における換気及び与圧部品

【課題】単純で経済的で実効的な解決策を提供し、ターボ機械の燃料消費率を低減することができるようにすることであり、タッピング装置を少なくとも一部回避するのを可能とするエネルギ源が取り付けられたターボ機械を提供すること。
【解決手段】複流ターボ機械(10)は、基本的に、ファン(14)と、コンプレッサ(20)と、燃焼チャンバ(21)と、タービン(22)と、排気ケーシング(24)とを備え、燃焼チャンバ(21)の下流に取り付けられ、かつタービンから出る高温ガスの流れ(B)と熱接触するホットチャンバと、ファン(14)とタービン(22)及び排気ケーシング(24)周りの流れとによって生成された低温ガスの流れ(A)と熱接触するコールドチャンバとを有する、スターリングエンジン(53)によって駆動される補助空気コンプレッサ(48)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のジェットエンジンのような複流ターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械において、ターボ機械のユニットを動作させるためにエネルギをタッピングするのは一般的である。エネルギのタッピングは、例えば、燃料ポンプ、アクチュエータ、若しくはコンピュータ電源を駆動するために、又はオイルチャンバを与圧するためにさえも提供される。航空機のジェットエンジンの場合には、追加のタッピング装置は、通常、例えば搭載する電源供給のために、制御面等の航空機のアクチュエータへの電力供給のために、又は航空機の客室の与圧のためにさえもなされる。
【0003】
そのようなエネルギのタッピングは、主に、ターボ機械の高圧コンプレッサを循環する空気流からの空気のタッピングと、このターボ機械の高圧ローター上の機械的なタッピング装置とから構成される。
【0004】
ここで、これらタッピング装置は、ターボ機械のコンプレッサの部分で追加の作業をともない、その特定の燃料消費率の増加をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、単純で経済的で実効的なこの問題の解決策を提供し、ターボ機械の特定の燃料消費率を低減することができるようにすることであり、その主題は、上述したタッピング装置を少なくとも一部回避するのを可能とするエネルギ源が取り付けられたターボ機械である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、基本的に、ファンと、コンプレッサと、燃焼チャンバと、タービンと、排気ケーシングとを備える複流ターボ機械を提案する。このターボ機械は、燃焼チャンバの下流に取り付けられ、かつタービンから出る高温ガスの流れと熱接触するホットチャンバと、ファンとタービン及び排気ケーシング周りの流れとによって生成された低温ガスの流れと熱接触するコールドチャンバとを有する、スターリングエンジンによって駆動される補助空気コンプレッサを備える。
【0007】
一般に「スターリングエンジン」と称されるスターリングサイクル熱エンジンは、機械的エネルギを生み出すために、タービンから出る高温ガスの流れ又は一次流れと、ファンによって生成された低温ガスの流れ又は二次流れとの間の温度差を利用するのを可能とする。このタイプのエネルギは、40%のオーダの非常に良好な効率と、非常に良好な信頼性及び長寿命とに特徴がある。
【0008】
このようなエンジンの理論上の作動サイクルは、4つの連続したフェーズを備える:ホットチャンバ内の作動流体に関する等積加熱フェーズ、これに続く等温膨張フェーズ、そして、コールドチャンバ内の作動流体に関する等積冷却フェーズ、これに続く等温圧縮フェーズである。
【0009】
スターリングエンジンによって生み出される機械的エネルギは、このターボ機械の高圧コンプレッサ内で循環する空気流の空気のタッピング要求を低減するために、加圧下の空気をターボ機械の部品に供給するように意図される補助空気コンプレッサを駆動するのに使用される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、スターリングエンジンは、タービンケーシング又は排気ケーシングに固定されており、それは、スターリングエンジン及び補助コンプレッサの収容のために、一次及び二次流れの流路(arteries)間の大きい自由空間の利益を享受するのを可能とする。公称作動速度での高温ガスの一次流れと低温ガスの二次流れとの間の温度差がそこにおいて約450度であるとき(スターリングエンジンが良好に作動するのを可能とするために十分な温度勾配を示す)に、この領域は、なおさら適切となる。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、スターリングエンジンは、低温ガスの流れ内に配置された熱交換器と、高温ガスの流れ内に配置された熱交換器とを備え、これら熱交換器は、内部及び/又は外部翼を備えるのが好ましい。
【0012】
これら熱交換器は、スターリングエンジンの効率を最適化するために、低温ガスの流れ及び高温ガスのそれぞれと、スターリングエンジンに含まれる作動流体との間の熱交換を最大化するのを可能とする。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、補助空気コンプレッサの吐出口は、部品換気又は与圧手段を補助コンプレッサの吐出口又はターボ機械のコンプレッサから空気をタッピングする手段のいずれかに接続して、被制御又は自動二位置バルブに取り付けられたパイプを介して、ターボ機械の部品を換気又は与圧する手段に接続されている。
【0014】
したがって、ターボ機械が低速度で作動する場合には、高温ガスと低温ガスとの間の温度勾配は、スターリングエンジンを良好に作動可能とするには不十分であり、ターボ機械の部品の冷却又は与圧は、ターボ機械のコンプレッサからの空気流をタッピングすることによって通常保証される。被制御バルブが換気又は与圧手段を補助コンプレッサの吐出口に接続する位置に切り替わるのは、スターリングエンジンを良好に作動可能とするのに十分なレベルに速度が到達するときだけである。
【0015】
有利には、バルブは、例えばタービン内を通過するガスの温度測定に基づく電子制御ブロックによって制御される。
【0016】
変形例として、バルブは、ターボ機械の冷却及び与圧に必要な圧力レベルに較正された自動チェックバルブである。
【0017】
添付された図面を参照しながら、限定されない例として与えられる以下の説明を読むことにより、本発明はより理解され、本発明の他の詳細、利点、及び特徴は、より明確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、ファンホイール14がエンジンボディ16の上流に取り付けられたナセル12を備える複流ジェットエンジン10を示している。エンジンボディ16は、基本的に、上流から下流にかけて、コンプレッサ20と、燃焼チャンバ21と、タービン22と、排気ケーシング24と、排出コーン26とを備える。
【0019】
ファンホイール14は、当業者にとって周知の方法でジェットエンジンのタービン22によって回転駆動される。エンジンが作動している間、ファン14は、ファンダクト18のジェットエンジン周りの後部に向かって流れてエンジンの推力の一部を供給する空気の二次流れAを発生する。エンジンに流入する空気の一部は、ジェットエンジンの入口コンプレッサ20に送る一次流れBを形成し、燃料チャンバ21内で燃料と混合される。燃焼チャンバから出た燃焼ガスは、タービン22を駆動し、排気ケーシング24の2つの同軸壁部32、34の間に排出され、排出コーン26に沿って流れながらジェットエンジンから出る。
【0020】
ファンダクト18は、それぞれ内側28及び外側30の2つの略円筒状の同軸壁部を備える。ファンダクトの内壁部28は、一般に、IFD(内側ファンダクト;Inner Fan Duct)と称される一方で、外壁部30は、一般に、OFD(外側ファンダクト;Outer Fan Duct)と称されてナセル12によって囲まれている。
【0021】
それぞれ内側32及び外側34の排気ケーシング24の2つの同軸壁部は、構造的な放射アーム36によって接続されている。
【0022】
排気ケーシング24の各放射アーム36は、アーム36の部分40が一次流れBを遮断する一方で、このアームの他の部分42が二次流れAを遮断するように、ケーシングの同軸壁部32、34をファンダクト18の円筒状壁部28、30に接続している。
【0023】
図1の上半分にみることができる放射アーム36は、ベータ型スターリングサイクルエンジンを備える。このエンジンは、通常、これらチャンバに含まれて移動ピストンの運動によって一方のチャンバから他に移動する作動流体の循環のために接続されたホットチャンバとコールドチャンバとを備える。
【0024】
ホットチャンバは、高温空気の一次流れBを遮断するアーム36の部分40内に配置される一方で、コールドチャンバは、低温空気の二次流れAを遮断するアーム36の部分42内に配置される。
【0025】
翼38は、一方では、高温空気の流れBと、放射アームの部分40内に配置されたホットチャンバに含まれる作動流体との間の熱交換を最適化し、他方では、低温空気の流れAと、このアームの部分42内に配置されたコールドチャンバに含まれる作動流体との間の熱交換を最適化するために、有利には、これらアームの部分40、42の高さで放射アーム36の外側及び/又は内側表面に形成されている。
【0026】
作動流体は、コールド及びホットチャンバ内での循環中に、作動ピストンを直線的に駆動することにより、4つの連続するフェーズ、順番に、冷却、圧縮、加熱、そして膨張から構成されるスターリング熱力学サイクルを示す。
【0027】
移動及び作動ピストンは、ホット及びコールドチャンバに接続された作動チャンバ内に収容されており、この作動チャンバが一次及び二次流れに熱接触しないように、一次流れBと二次流れAとの流路の間、すなわち、排気ケーシングの外壁部34とファンダクトを区切る内壁部28との間の、一般に「流路間」と称される空間44内に配置されている。作動チャンバはまた、この壁部32と接触する一次流れとの熱交換が断熱手段によって制限されるならば、排気ケーシングの内壁部32の径方向の内面に固定されてもよい。
【0028】
スターリングエンジンの作動ピストンは、流路間空間44内に収容されて例えばそれらの冷却又は与圧を担うターボ機械の部品に加圧下の空気を送るように意図された補助空気コンプレッサの移動ユニットを形成又は駆動する。
【0029】
図2は、加圧下の空気をターボ機械の部品に分配する回路(図示しない)の入口46に対する補助コンプレッサ48の空気吐出口の接続を略示している。
【0030】
ターボ機械の高圧コンプレッサ20内を流れる空気流上のタッピング50、52は、二次流れAの低温ガスと一次流れBの高温ガスとの間の温度差が小さすぎてスターリングエンジン53が補助コンプレッサ48を駆動するのに十分な機械力を供給することができないようなジェットエンジンの作動フェーズの間、加圧空気分配回路に送るように設けられる。
【0031】
二位置バルブ54は、一次流れと二次流れとの間の温度差がスターリングエンジンによって補助コンプレッサ48が駆動されるのに十分でない限り、又は、スターリングエンジン若しくは補助コンプレッサが故障した場合に、巡航速度で、ジェットエンジンの起動フェーズの間、空気分配回路の入口を、高圧コンプレッサ20の4段目のタッピング50と高圧コンプレッサ20の9段目のタッピング52とに交互に接続するのを可能とする。
【0032】
二位置バルブ56は、ジェットエンジンが上述した作動状況の1つである場合にはバルブ54に、スターリングエンジン53が補助コンプレッサ48を効率よく駆動するのを可能とする閾値に一次流れと二次流れとの間の温度差が到達する場合には補助コンプレッサ48に、空気分配回路の入口を交互に接続するために使用される。
【0033】
バルブ54、56は、スターリングエンジンの付近におけるターボ機械内の高温及び低温ガスの流れの温度測定に基づくFADEC型の電子制御ブロックによって制御される。
【0034】
あるいは、バルブは、タッピング50、52によって及び補助コンプレッサ48によって送られる空気の圧力測定に基づいて制御されてもよい。
【0035】
バルブはまた、自動化されてもよく、加圧空気分配回路に送るのに必要な圧力レベルに較正されてもよい。
【0036】
この空気分配回路は、例えば、ターボ機械のベアリング収容カバーの与圧、低圧分配器の1段目の換気、低圧タービンディスクのリムの換気、高圧タービンディスクの下流に位置する空洞のパージを担う。
【0037】
これを行うために、補助コンプレッサ48は、公称作動速度で、0.3バールのオーダの相対圧力で約1.5kg/sの流速の空気を送る。このコンプレッサは、約120mmの長さに対して約100mmの直径を有する円筒の形状をとる。
【0038】
このコンプレッサの駆動は、スターリングエンジンによってコンプレッサまで送られる約10kWの機械力を必要とし、このエンジンは、全体として約200mmの長さに対して約100mmの直径を有する円筒の形状をとる。
【0039】
一般に、本発明は、したがって、ジェットエンジンの燃焼チャンバから発する高温ガスの一次流れに含まれる熱エネルギを機械力に変換することができるスターリングエンジンによって駆動される補助コンプレッサのおかげで、ジェットエンジンのコンプレッサ内の推進流れに使用される空気流上のタッピングの使用を制限するのを可能とする。
【0040】
本発明は、明らかに航空機のジェットエンジンに限定されず、いかなるタイプの複流ターボ機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかるターボ機械の軸断面略図である。
【図2】図1のターボ機械の拡大軸断面略図である。
【符号の説明】
【0042】
10 複流ジェットエンジン
12 ナセル
14 ファンホイール
16 エンジンボディ
18 ファンダクト
20 コンプレッサ
21 燃焼チャンバ
22 タービン
24 排気ケーシング
26 排出コーン
28、30、32、34 同軸壁部
36 放射アーム
38 翼
40、42 放射アームの部分
44 流路間空間
46 入口
48 補助コンプレッサ
50、52 タッピング
53 スターリングエンジン
54、56 二位置バルブ
A 二次流れ
B 一次流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的に、ファンと、コンプレッサと、燃焼チャンバと、タービンと、排気ケーシングとを備える複流ターボ機械であって、このターボ機械が、燃焼チャンバの下流に取り付けられ、かつタービンから出る高温ガスの流れと熱接触するホットチャンバと、ファンとタービン及び排気ケーシング周りの流れとによって生成された低温ガスの流れと熱接触するコールドチャンバとを有する、スターリングエンジンによって駆動される補助空気コンプレッサを備える、複流ターボ機械。
【請求項2】
スターリングエンジンが、タービンケーシング又は排気ケーシングに固定されている、請求項1に記載のターボ機械。
【請求項3】
スターリングエンジンが、低温ガスの流れ内に配置された熱交換器と、高温ガスの流れ内に配置された熱交換器とを備える、請求項1に記載のターボ機械。
【請求項4】
熱交換器が、内部及び/又は外部翼を備える、請求項3に記載のターボ機械。
【請求項5】
補助空気コンプレッサの吐出口が、部品換気又は与圧手段を補助コンプレッサの吐出口又はターボ機械のコンプレッサから空気をタッピングする手段のいずれかに接続して、被制御又は自動二位置バルブに取り付けられたパイプを介して、ターボ機械の部品を換気又は与圧する手段に接続されている、請求項1に記載のターボ機械。
【請求項6】
バルブが、タービン内を通過するガスの温度によって制御される、請求項5に記載のターボ機械。
【請求項7】
バルブが、電子制御ブロックによって制御される、請求項5に記載のターボ機械。
【請求項8】
バルブが、ターボ機械の換気及び与圧に必要な圧力レベルに較正された自動チェックバルブである、請求項5に記載のターボ機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−57972(P2009−57972A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−219011(P2008−219011)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)