説明

ターンオーバー装置

本発明は、中心軸上に空洞部を有する大型構造物をターンオーバーするターンオーバー装置に関し、大型構造物をターンオーバーするために大型構造物のフレームへ投入時、フレームを開閉することなく大型構造物の投入を可能とすることで、ターンオーバー装置の構造を単純化しながらも作業空間の活用度を向上させ、大型構造物を安定的にターンオーバーすることができるターンオーバー装置を提供することを課題とする。
本発明の一つの特徴に従ったターンオーバー装置は、空洞部を有する大型構造物が投入される空間Sが中央部に形成され、前記空間Sに投入される大型構造物の前記空洞部に結合される一対の固定用コーンが空間Sの上下部に設置され、前記一対の固定用コーンに各々連結され固定用コーンを移動させる固定用シリンダーを含むフレーム;前記フレームの一側で回転軸を介して前記フレームに連結され、フレームを回転させる回転駆動部;前記フレームに一体に固定され、前記回転駆動部によって回転される回転軸を中心とする円形の補強フレーム;及び前記補強フレームの外周面に接するように前記補強フレームの下部に設置される複数の支持ローラーを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンオーバー装置に関し、より詳細には、船舶用プロペラのような中心軸上に空洞部を有する大型構造物をターンオーバーするターンオーバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、大型プロペラの製作過程において、プロペラを鋳造した後、様々な機械加工(例えば、押し湯切断、プロペラ移送用アイボルト孔の加工、ボスの下面切断、ボスの上面切断、内径ボーリング、ブレード前面のミリング、ブレード後面のミリング、ブレード前面の研削、ブレード後面の研削、プロペラの調査、移送など)のために、略6〜8回程プロペラをターンオーバーする必要がある。
【0003】
従来のプロペラのターンオーバー作業は、次のような手順で行われる。1)プロペラのボスの側面中央部に形成されたネジ穴にプロペラのターンオーバー用アイボルトを掛ける。2)アイボルトに主巻き上げワイヤーロープを連結し、頭上クレーンでプロペラを持ち上げ、直立させる。3)下方へ向かっているプロペラのブレードに補助巻き上げワイヤーロープを連結し、頭上クレーンでプロペラを持ち上げ、水平に維持する。4)水平状態のプロペラを細砂で充填されたピットに配置する。
【0004】
しかしながら、従来のワイヤーロープを利用した方法は、ワイヤーロープが太く、重いので取り扱いが困難であり、また、ターンオーバー作業時ブレードが破損する恐れがあり、さらに、事故が発生する可能性が高いという問題点がある。
【0005】
それで、本願の出願人は、大型プロペラのターンオーバー作業をより容易に、かつ、安全に行うために、ターンオーバー装置を発明したことがある。このターンオーバー装置は、韓国登録特許公報第0478248号(以下、「特許文献」と略する)に開示されている。上記特許文献の図1を参照すると、ターンオーバー装置は、左右側の下部フレーム24、24’に各々ク組み立てられた上部フレーム22、22’、上部フレーム22、22’の間に設置された主軸12、主軸12に設置されたメインブーム10、10’を含み、プロペラを固定するための、油圧シリンダー40、ボステーブル14、ボスコーン軸38及びボスコーン16がメインブーム10、10’に設置されており、主軸12を駆動する油圧モーター36が上部フレーム22に設置されている。上記特許文献に開示されたターンオーバー装置は、大型プロペラのターンオーバー作業を容易に、かつ、安全に行うことができる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献に開示されたターンオーバー装置は、重量物を配置する空間を確保するために、メインブームが水平方向へ回転する。このため、上部メインブームは、回転連結部に対して片持ち梁の形状であり、回転連結部への過負荷で頻繁に故障し、ターンオーバー装置の寿命が短くなる問題点がある。また、重量物を配置するメインブームが長すぎると同時に、メインブームと重量物とが結合されてターンオーバーされるので、ターンオーバー装置の大きさ及びターンオーバー作業に必要になる面積が過度であるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第0478248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するために工夫したものであり、プロペラのような空洞部を有する大型構造物をターンオーバーするために大型構造物のフレームへ投入時、フレームを開閉することなく大型構造物の投入を可能とすることで、ターンオーバー装置の構造を単純化しながらも作業空間の活用度を向上させ、大型構造物を安定的にターンオーバーすることができるターンオーバー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一つの特徴に従ったターンオーバー装置は、空洞部を有する大型構造物が投入される空間Sが中央部に形成され、前記空間Sに投入される大型構造物の前記空洞部に結合される一対の固定用コーンが空間Sの上下部に設置され、前記一対の固定用コーンに各々連結され固定用コーンを移動させる固定用シリンダーを含むフレーム;前記フレームの一側で回転軸を介して前記フレームに連結され、フレームを回転させる回転駆動部;前記フレームに一体に固定され、前記回転駆動部によって回転される回転軸を中心とする円形の補強フレーム;及び前記補強フレームの外周面に接するように前記補強フレームの下部に設置される複数の支持ローラーを含む。
【0010】
本発明の他の特徴に従ったターンオーバー装置は、前記フレームが、前記固定用コーンをフレームの前方へ移動させる移動可能な補助フレーム;及び前記フレームから前記移動可能な補助フレームを摺動させる摺動駆動部;を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記の手段を採用することで、従来の開閉型フレームより、大型構造物の投入及びターンオーバー作業による作業空間の活用度を向上させ、ターンオーバー装置の構造を単純化し、フレーム及び大型構造物の自重に対する十分な強度を有し、ターンオーバー作業の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、従来の大型プロペラのターンオーバー装置を示した正面図である。
【図2】図2は、本発明の望ましい実施例に従ったターンオーバー装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の望ましい実施例に従ったターンオーバー装置を示す側面図である。
【図4】図4は、本発明に従ったフレームの作動状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4の部分拡大図である。
【図6】図6は、本発明に従ったフレームに設置された移動可能な補助フレームの作動状態を示す側断面図である。
【図7】図7は、本発明に従ったフレームにプロペラが配置された状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明に従った移動可能な補助フレームによってプロペラがフレームへ投入された状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、フレームの回転によるプロペラの回転状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【0014】
図1は、従来の大型プロペラのターンオーバー装置を示した正面図であり、図2は、本発明の望ましい実施例に従ったターンオーバー装置を示す斜視図であり、図3は、本発明の望ましい実施例に従ったターンオーバー装置を示す側面図であり、図4は、本発明に従ったフレームの作動状態を示す斜視図であり、図5は、図4の部分拡大図であり、図6は、本発明に従ったフレームに設置された移動可能な補助フレームの作動状態を示す側断面図である。図2及び図3を参照すると、本発明の望ましい実施例に従ったターンオーバー装置は、フレーム100、回転駆動部110、及び支持ローラー130を含む。
【0015】
フレーム100は、大型プロペラのような空洞部を有する大型構造物が投入される空間Sが中央部に形成され、「ユ」形状である。フレーム100には、空間Sに投入される大型構造物の空洞部に結合される一対の固定用コーン143、143”と、一対の固定用コーン143、143”に各々連結され、一対の固定用コーン143、143”を移動させる固定用シリンダー141、141”とが設置される。
【0016】
回転駆動部110は、フレームを回転させるものであり、フレーム100の一側の中央部に形成された回転軸111を介してフレーム100に連結される。回転軸111は、軸受を介して支持構造物によって支持される。
【0017】
フレーム100は、回転駆動部110に連結された回転軸111によって支持された片持ち梁の構造である。大型構造物を支持してターンオーバーするフレーム100の安定した支持構造を確保するために、ターンオーバー装置にフレーム100の補強構造が提供される。
【0018】
つまり、ターンオーバー装置は、フレーム100に一体に固定され、回転駆動部110によって回転される回転軸111を中心とする円形の補強フレーム120を含む。また、ターンオーバー装置は、補強フレーム120の外周面に接するように補強フレーム120の下部に配置される複数の支持ローラーを含む。
【0019】
補強フレーム120は、フレームの回転経路に沿って形成される。また、補強フレーム120は、フレーム100の空間Sへ投入される大型構造物の重量重心線に近く配置され、フレーム100の空間Sへ投入される大型構造物の荷重が支持ローラー130によって安定的に支持されるのが望ましい。
【0020】
図3乃至6を参照すると、本発明に従ったフレームは、移動可能な補助フレーム140、140”と摺動駆動部145、145”とを更に含む。これにより、フレーム100の空間Sへ大型構造物を投入するとき、あるいは、大型構造物をターンオーバーして様々な加工作業を行った後、大型構造物をフレーム100から分離するとき、フレーム100や補強フレーム120等のターンオーバー装置の構成部分による妨害が防止される。
【0021】
図3に示されたように、移動可能な補助フレーム140、140”は、大型構造物が投入される空間Sの上下部に設置された一対の固定用コーン143、143”の各々に対応し、同様な構造でフレーム100の上下部に設置される。以下、図5及び6を参照しながら、フレーム100の下部に設置された移動可能な補助フレーム140と摺動駆動部145について説明し、補助フレーム140”と摺動駆動部145”については具体的な説明を省略する。
【0022】
移動可能な補助フレーム140は、フレーム100に設置された摺動駆動部145によってフレーム100に対し前方へ移動可能に設置される。フレーム100の側面にガイドローラー147を形成し、補助フレーム140の内側にガイドレール148を形成することで、ガイドレール148がガイドローラー147によって移動可能に支持され、補助フレーム140を正確で安定的に移動可能にするのが望ましい。固定用コーン143は、移動可能な補助フレーム140の上面に設置され、補助フレーム140と連動する。
【0023】
固定用コーン143を上方へ移動させる固定用シリンダー141と固定用ロッド142とが移動可能な補助フレーム140に設置されてもよい。また、図示されたように、固定用シリンダー141から上下移動する固定用ロッド142がフレーム100に固定され、移動可能な補助フレーム140に設置された固定用コーン143が固定用ロッド142と分離可能な構造であってもよい。
【0024】
つまり、フレーム100に設置された固定用シリンダー141が作動しない場合、固定用ロッド142は、固定用コーン143から分離される。一方、固定用コーン143上に大型構造物を配置し、移動可能な補助フレーム140と共にフレーム100の空間Sへ移動した場合、固定用コーン143は、固定用ロッド142の上面に位置する。固定用シリンダー141が作動すると、固定用ロッド142が上方へ移動し、その上端142aが固定用コーン143の下端143aに結合され、移動可能な補助フレーム140の固定用コーン143は、固定用ロッド142と連動して上方へ移動する。
【0025】
このように、固定用ロッド142と固定用コーン143とを分離可能な構造とすることで、大型構造物が配置された移動可能な補助フレーム140へ荷重を低減することができる。更に、支持ローラー130によって補強フレーム120を支持することにより発生するターンオーバー装置の構造的な不安定性を解消することができる。
【0026】
一方、摺動駆動部145は、一端がフレーム100に設置され、フレーム100の前方へ延びる他端が移動可能な補助フレーム140に連結される一つ以上のシリンダーで構成してもよい。また、上記の実施例のような固定用ロッド142と固定用コーン143とが分離可能な構造において、固定用ロッド142が固定用コーン143と分離した場合のみ摺動駆動部145を作動可能とすることで、摺動駆動部145の誤作動による固定用ロッド142と固定用コーン143との結合部の破損を防止することもできる。
【0027】
上記のような構造のターンオーバー装置を利用して空洞部を有する大型構造物、例えば、船舶用プロペラをターンオーバーする作業過程について説明する。
【0028】
図7は、本発明に従ったフレームにプロペラが配置された状態を示す斜視図であり、図8は、本発明に従った移動可能な補助フレームによってプロペラがフレームへ投入された状態を示す斜視図であり、図9は、フレームの回転によるプロペラの回転状態を示す斜視図である。
【0029】
まず、図5を参照すると、作業対象物のプロペラPを配置する前に、フレーム100の一側(下部)の摺動駆動部145を作動して移動可能な補助フレーム140をフレーム100の前方に移動させる。
【0030】
次に、プロペラPの空洞部P1を移動可能な補助フレーム140の上面に設置された固定用コーン143に配置する。
【0031】
次に、摺動駆動部145を反対方向へ作動して移動可能な補助フレーム140をフレーム100に向けて移動させ、プロペラPを空間Sへ投入する。
【0032】
また、プロペラPの上下にある固定用シリンダー141,141"を作動させ、フレーム100の上下部に設置された一対の固定用コーン143,143"を相互近く移動させる。一対の固定用コーン143,143"を相互近く移動させることで、プロペラPは、下部の固定用コーン143と連動して上方へ移動され、空洞部P1の上面が上側固定用コーン143"に結合し、フレーム100の空間Sの中央で固定される。
【0033】
プロペラPの投入と固定が完了すると、回転駆動部110を作動してフレーム100を回転させ、円形の補強フレーム120が回転するフレーム100と共に回転する。また、支持ローラー130は、回転する補強フレーム120の外周面の下部を支持し、回転中のフレーム100、補強フレーム120、及びプロペルロPの荷重を安定的に支持する。
【0034】
プロペラPの投入及び分離過程では、フレーム100の下部にある移動可能な補助フレーム140、140"及び摺動駆動部145、145”を作動する。よって、図示された本発明の実施例に反し、移動可能な補助フレーム140、140”及び摺動駆動部145、145”を「ユ」形状のフレーム100の一側(例えば、下部)のみに設置してもよい。しかしながら、プロペラPに対しフレーム100の両側(上下部)に移動可能な補助フレーム140、140”及び摺動駆動部145、145”を設置して、プロペラPのターンオーバー回数やターンオーバーされたプロペラPの位置等に係らず、プロペラPを自由に投入及び分離することが望ましい。
【0035】
上記のように、本発明に従ったターンオーバー装置は、大型構造物(例えば、プロペラ)の投入及び分離のためのフレーム100の開閉構造を採用せず、移動可能な補助フレーム140,140"を有する一体型構造のフレームを採用することで、重量物である大型構造物の固定及びターンオーバー作業による作業空間の活用度を向上させる。また、補強フレーム120と支持ローラー130を利用することで、フレーム及び固定された大型構造物の自重に対する十分な強度が確保できる。更に、ターンオーバー作業時、フレームと大型構造物との位置正確度と安全性を確保することができる。
【0036】
以上、本発明に従った望ましい実施例について説明したが、本発明は、この実施例に限定されず、本発明の技術分野に属する通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲及び要旨を外れずに種々の変形及び変更が可能であることは自明である。
【符号の説明】
【0037】
100 フレーム
110 回転駆動部
111 回転軸
120 補強フレーム
130 指示ローラー
140、140” 移動可能な補助フレーム
141、141” 固定用シリンダー
142、142” 固定用ロッド
143、143” 固定用コーン
145、145” 摺動空間部
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部を有する大型構造物が投入される空間Sが中央部に形成され、前記空間Sに投入される大型構造物の前記空洞部に結合される一対の固定用コーンが空間Sの上下部に設置され、前記一対の固定用コーンに各々連結され固定用コーンを移動させる固定用シリンダーを含むフレーム;
前記フレームの一側で回転軸を介して前記フレームに連結され、フレームを回転させる回転駆動部;
前記フレームに一体に固定され、前記回転駆動部によって回転される回転軸を中心とする円形の補強フレーム;及び
前記補強フレームの外周面に接するように前記補強フレームの下部に設置される複数の支持ローラー
を含むことを特徴とするターンオーバー装置。
【請求項2】
前記フレームは、
前記固定用コーンをフレームの前方へ移動させる移動可能な補助フレーム;及び
前記フレームから前記移動可能な補助フレームを摺動させる摺動駆動部;
を含むことを特徴とする請求項1に記載のターンオーバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−514870(P2011−514870A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546692(P2010−546692)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000593
【国際公開番号】WO2010/053230
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(594006932)ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド (31)
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI HEAVY INDUSTRIES CO., LTD.