説明

ダイオキシンや重金属類の不溶固定化方法及びその装置

【課題】 ダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物中のダイオキシンや重金属類の確実な不溶固定化方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 ダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物を、粒径1mm以下に破砕して破砕粒となしたうえ、該破砕粒の重量に対して5乃至15重量%割合で、シロキサン及びシラノール塩からなり分子量換算で略4,000乃至8,000の多分子量化された錯化合物状で、且そのpH値が8.0乃至12.0及びシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至75重量%に水分が25乃至55重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を噴霧混合若しくは混合混練し、而して600℃以上の温度で加熱処理しシロキサン結合の促進に伴う結合内への取り込みと且破砕粒外表面にガラス被膜を強固に包着させる、ダイオキシン及び重金属類の不溶固定化方法及びその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業廃棄物中のダイオキシンや重金属類を確実に不溶固定化し、極めて安全に再利用若しくは廃棄の可能なダイオキシンや重金属類の不溶固定化方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現状における生活廃棄物や産業廃棄物の排出量は極めて膨大量に昇り、焼却処理による減容化を図っても既に廃棄場所は極限に至っている。
これがため生活廃棄物の生ゴミ類や活泥等では土壌菌類の発酵作用や分解作用を用いて有機肥料やコンポスト化等が図られているものの、未だ廃棄量全体の削減化に寄与するまでに至っていない。
【0003】
他方産業廃棄物中には多種多様な有害化学物質、とりわけダイオキシン類や重金属類等が混在しており、これらの無害化若しくは不溶固定化を図らぬ限り再利用化も不能となり、且廃棄埋立てをなしたりすれば土壌汚染の拡散はもとより地下水への浸透流入により、重大な環境汚染が招来される結果となる。
これがためダイオキシンや重金属類を含む産業廃棄物の廃棄においては、廃棄物処理法を初めダイオキシン特別措置法或いは土壌汚染対策法等において環境汚染防止のためのガイドラインも定められるに至っている。
【0004】
ところで有害化学物質を含む産業排気物の無害化や不溶化については、高温分解法やキレート化法、コンクリート固化法或いは吸着材吸着法等が提案されているが、これらの内高温分解法においてはダイオキシンや重金属類を高温分解させるもので、ダイオキシン類においては950℃以上で熱分解することが判明しているものの、重金属類においてはその分解温度もカドミウム765℃以上、亜鉛907℃以上、ヒ素613℃以上に対しクロム2,212℃以上、錫2,270℃以上、マンガン2,097℃以上或いは銅2,595℃以上と分解温度に大きな較差が存在する。しかしながら一般的溶融炉ではせいぜい1,500乃至1,800℃程度であるから高温分解がなしえず、従って少なくとも2,600℃以上の高温度の溶融炉即ちテルミット溶融炉が要請されるためにその設備費用はもとより維持費用も極めて高価となる。加えてダイオキシンは加熱分解されても、低温度領域で再合成がなされること等により実用化には至っていない。
【0005】
そしてキレート化法においては、有機質系若しくは無機質系キレート剤のキレート作用を用いて重金属類の不溶化をなしたうえ廃棄処分をなすもので、該キレート化法ではキレート剤と産業廃棄物との混練が容易で不溶化がなしえるものとして安易に使用されてきたものの、酸性条件下では容易にキレート作用が崩壊し重金属類の再溶出がなされることが究明されており、仮令キレート処理のうえ廃棄埋立てがなされた場合にも、近年の如く雨水が酸性化している状況下では短期にキレート崩壊による土壌汚染と且地下水汚染の発生危険が著しく危惧される。
【0006】
更にコンクリート固化法においても、重金属類を一旦不溶化したうえコンクリートで固化させるものであって、コンクリート固化物も酸性条件下では短期に損壊や亀裂が発生し、且キレート処理された重金属類のキレート作用も崩壊され溶出する結果となる。
加えて吸着材吸着法においても、活性炭やゼオライト等の吸着材に吸着させて分離除去を図るものであるが、該吸着材にはダイオキシン等ガス状物の吸着は可能なるも重金属類の吸着には難点があり、且吸着されたダイオキシン類の無害化若しくは不溶化は依然として未解決である。
【0007】
かかる如きダイオキシンや重金属の無害化若しくは不溶化手段に対して、水ガラスまたは無水ガラスと発泡剤とを主な成分とする処理剤を、有害金属類を含有する廃棄物に添加して混練し200℃以上900℃以下の範囲で加熱すること、及び水ガラスまたは無水水ガラスと発泡剤とに酸を添加してpHが7以上12.5以下の範囲で加熱し、以って重金属類の溶出防止安定性と且加熱処理時の炉壁等への固着物発生を抑えて処理作業に優れる処理技術が公知されている。
【特許文献1】 特開2004−130271号公報
【0008】
ところでかかる公知技術は、水ガラス若しくは無水ガラスに発泡剤を配合のうえ産業廃棄物と混練したうえ、高温度で加熱し発泡させて産業廃棄物表面に均一に発泡ガラスで包含させること、即ち産業廃棄物を発泡ガラスでコーティングし重金属類の溶出を防止することに存するものであり、更には重金属類の溶出機構上からそのpH値を7乃至12.0に設定させると溶出が抑制されるとするものである。
【0009】
然るに無害化や不溶化を必要とする産業廃棄物、所謂特定有害産業廃棄物もそれぞれに排出される寸法や形状を初め組成成分も多種多様に亘るため、これらの外表面全体を発泡ガラスにより均一に包含された発泡ガラスコーティングを形成するためには、水ガラス若しくは無水ガラスと発泡剤との混合液を寸法や形状或いは組成成分等の異なる特定有害産業廃棄物の外表面全体に均一に塗着混合させねばならず、これがためには混合量や混合液の粘度或いは所要の発泡度合に発泡させる発泡剤の配合割合等頻雑な前工程が要請されるばかりか、発泡ガラスコーティングで不溶化を図るものであるから該特定有害産業廃棄物表面全体に均一なガラスコーティング層が形成される必要があるが、前記の如く寸法や形状或いは組成成分の変動するものでは極めて至難であって不溶化の実現には至らず、且水ガラスや無水ガラスに発泡剤を混合させ例え200℃以上の加熱温度で発泡ガラスとなしても600℃以下の温度ではその含有する水分や発泡ガス等の蒸散や揮散に基づく連続気泡構造となり且酸化珪素態の発泡ガラスであるから、連続気泡構造内を溶出する危険がある。
加えて重金属類を含む特定有害産業廃棄物中にはダイオキシン類も混在する場合が多いものの、該公知技術では何等の対処も出来ない。
【0010】
そこで発明者等はこれら周知並びに公知技術の抱える問題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定有害産業廃棄物に混在するダイオキシンや重金属類の確実な不溶固定化を図るうえからは、珪酸をホウ酸ナトリウム等の存在のもとにシロキサン・HSiO(HSiO)nSiHとシラノール塩・HSiOHとからなり、且その分子量換算で略4,000乃至8,000程度の錯化合物状で、而もそのpH値が8.0乃至12.0で且その組成がシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至75重量%と水分が25乃至55重量%割合からなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を用いることにより、少なくとも600℃以上の加熱によりシロキサンとシラノール塩とによるシロキサン結合を促進させ、ダイオキシンや重金属類が該シロキサン結合中に取り込まれ、更には600℃以上の加熱により該シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の加熱融着性の創出と水分蒸散による発泡構造で而も高温度により連続気泡が閉塞されたガラス被膜が特定有害産業廃棄物と強固に包着されること、及び特定産業廃棄物を予め1mm以下の破砕粒となしたうえ、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を噴霧混合若しくは混合混練させることにより、僅かな混合量で且全体に亘って均質な混合付着がなされ、以って確実な不溶固定化がなしえることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物特には特定有害産業廃棄物中のダイオキシンや重金属類の不溶固定化を確実に且簡便安価になすことの可能なダイオキシンと重金属類の不溶固定化方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、産業廃棄物中に混在するダイオキシン及び重金属類の確実な不溶固定化のためには、ダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物を最大でもその粒径が1mm以下に破砕して破砕粒となすことにより、少ない混合量においてもその外表面全体に均質に混合付着されるように、且シロキサン及びシラノール塩からなりその分子量換算で略4,000乃至8,000程度に多分子量化された錯化合物状で、而もそのpH値が8.0乃至12.0に保持され且シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至75重量%に水分が25乃至55重量%割合からなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を破砕粒の重量に対して5乃至15重量%割合で混合し、少なくとも600℃以上の加熱によりシロキサンとシラノール塩とのシロキサン結合を促進せしめて、このシロキサン結合内にダイオキシンや重金属類の取り込みをなし、且加熱により創出される強力な加熱融着性により、産業廃棄物外表面全体に強固に接合させ、而も加熱に伴う水分蒸散で連続気泡構造に発泡させ且高温度によるガラス化と且連続気泡構造が閉塞されたガラス被膜による包着により、確実な不溶固定化を図る方法に存する。
【0013】
加えて使用するシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液のpH値を8.0乃至12.0のアルカリに保持させたうえ、少なくとも900℃以上の温度で加熱し、ダイオキシンの加熱分解により生成される塩酸ガスのアルカリ中和と、且シロキサン結合内への取り込み及びガラス被膜による包着とによりダイオキシンの確実な不溶固定化を図る方法に存するものである。
【0014】
そしてかかる方法を実現する装置としては全体が閉鎖系内に設けられ、外部から搬入されるダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物を貯留する貯留工程と、該貯留工程よりダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物を供給のうえ、その最大粒径が1mm以下に破砕して破砕粒となす破砕工程と、この破砕粒とシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液とを噴霧混合させ若しくは混合混練させる混合工程と、この噴霧混合され若しくは混合混練された破砕粒を、少なくとも600℃以上に加熱しシロキサン結合の促進と発泡構造によるガラス被膜を包着形成させる加熱処理工程と、且加熱に伴い発生する臭気ガス及び有害ガスを除去する除去排出機構及び、加熱処理された破砕粒を徐冷する徐冷処理工程とにより構成される、ダイオキシンや重金属の不溶固定化装置に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述の如く、ダイオキシンや重金属類の混在する産業廃棄物を、その最大粒径が1mm以下に破砕して破砕粒としたうえ、シロキサン及びシラノール塩からなり且分子量換算で略4,000乃至8,000程度の錯化合物状で而もシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至75重量%と水分が25乃至55重量%割合の組成のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を用いるものであるから、その粘度も略1,200乃至8,000cP程度と低粘度のうえ粘着性をも保持することから、破砕粒に対し5乃至15重量%割合程度で噴霧混合若しくは混合混練させることでも破砕粒外表面全体に均質に混合付着され、而して600℃以上の加熱処理が施されることにより混合付着されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が急速且膨大数のシロキサン結合が促進され、ダイオキシンや重金属類が該シロキサン結合内に強固に取り込まれ、更に加熱融着性と水分蒸散により連続気泡構造を形成するとともに、高温度により該連続気泡構造が閉塞されてガラス化されたガラス被膜により強固に包着されるため、ダイオキシンや重金属類が確実に不溶固定化される。
【0016】
加えてシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液のpH値が8.0乃至12.0のアルカリ性を保持するため、900℃以上の高温度処理においてはダイオキシンの分解に伴う塩酸ガスが中和されて再合成をも防止できる。
そしてかかるダイオキシンや重金属類の不溶固定化がなされることにより極めて高価な特定有害産業廃棄物の廃棄コスト負担から、一般産業廃棄物としての安価な廃棄コストでの廃棄が可能となるばかりか、確実な不溶固定化がなされているためコンクリートとの配合による再利用化がなしえ且仮令廃棄埋設がなされ酸性環境下に晒されても再溶出の危険もなくなる。
【0017】
更に本発明のダイオキシンや重金属類の不溶固定化装置においては、主としてダイオキシンや重金属類の発生場所で不溶固定化を図るものであるから、装置規模も小型で且貯留器や破砕機、混合混練機、加熱処理機及び徐冷機等は普遍的機器装置が使用できるため、装置コストが極めて安価であるばかりか、特には破砕粒が1mm以下の粒径に破砕され、且シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が低粘度で而も粘着性を保持するため、破砕粒を拡散落下させつつシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を噴霧混合させる噴霧混合手段は、極めて短時に連続して且少ない混合量によっても破砕粒表面全体に均質に混合付着させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物を、その粒径が1mm以下に破砕して破砕粒となしたるうえシロキサン及びシラノール塩からなり、その分子量換算において略4,000乃至8,000程度の多分子量の錯化合物状で、且そのpH値が8.0乃至12.0で而もシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至75重量%に水分が25乃至55重量%割合からなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、破砕粒に対し5乃至15重量%割合で噴霧混合若しくは混合混練したうえ、600℃以上の温度で加熱処理を施しシロキサン結合の促進によるダイオキシンや重金属類の結合内の取込みと、且加熱融着性の創出と水分蒸散により連続気泡構造の生成及び高温度による連続気泡構造の閉塞に伴うガラス被膜を、破砕粒外表面に強固に包着させて不溶固定化を図る。
【実施例1】
【0019】
以下に本発明実施例を図とともに説明すれば、図1は本発明不溶固定化方法のブロック図であって、本発明の目的はダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物、特には特定有害産業廃棄物を簡便且安価に法基準に適合する不溶固定化を図り、例えばコンクリート増量材等の再利用化はもとより、仮令廃棄埋設等に際しても一般産業廃棄物なみに廃棄費用負担を著しく低減化させることにある。
これがため本発明においては、ダイオキシンや重金属類の混在する産業廃棄物の外表面全体に、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を均等に混合付着させ加熱処理により、該シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液のシロキサン結合を急速且膨大数を以って促進せしめて、該シロキサン結合内にダイオキシンや重金属類の取り込みと、加熱融着性の創出と水分蒸散に伴う連続気泡構造の形成並びに高温度による連続気泡構造の閉塞とガラス化されたガラス被膜で強固に包着させて、確実な不溶固定化を実現する技術思想を用いている。
【0020】
これがためには、ダイオキシンや重金属類の混在する産業廃棄物1の外表面全体に不溶固定化を図るシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を均質に混合付着させるうえから、それぞれに排出されたダイオキシンや重金属類が混在する産業廃棄物1を閉鎖系内に設けられた貯留工程10における貯留器10A内に一旦貯留させるとともに、破砕工程20において適宜の破砕機21でその最大粒径1mm以下、より望ましくは0.1乃至0.6mm程度の粒径に破砕させて破砕粒1Aとなすものであって、この破砕機21には特段の制約はなく実質的に0.1乃至1.0mm程度の粒径に破砕できるものであれば十分に使用できるが、ダイオキシンや重金属類の混在する産業廃棄物1は鉱滓や金属研磨片、その他硬度の高い物質も混在することから、これらを十分に破砕しえる高硬度の素材で形成されることが望まれる。
【0021】
かかる破砕機21により所要の粒径に破砕された破砕粒1Aには、該破砕粒1Aの重量に対して5乃至15重量%割合で、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を混合混練若しくは噴霧混合等の混合工程30により、その外表面全体に均質に混合付着させるもので、混合混練機30Aとしては特段の制約はなく、例示すればリボンブレンダーやヘンシェルミキサー等が挙げられる。
反面破砕粒1Aは、その粒径が0.1乃至1.0mmの微粒状に破砕されてなり、且混合されるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2も低粘度で粘着性をも有することから、図2のAに示す噴霧混合機30Bによる噴霧混合手段によることが、極めて能率的に破砕粒1Aの外表面全体に均質にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を混合付着させるうえで極めて好都合である。
【0022】
即ち該噴霧混合機30Bは、その上端が閉塞され且下端には傾斜辺を有する排出口31Bが設けられた円筒形状のケーシング31Aの上端中央には、破砕粒1Aを噴散放出する回転放出盤31Cが設けられ、この回転放出盤31Cよりケーシング31A内に破砕粒1Aが放出されるよう、該回転放出盤31Cの周面にはその全面に亘って、破砕粒1Aの粒径の略3乃至6倍程度の放出孔31Dが形成されており、且該回転放出盤31Cの上部にはホッパー31Eの破砕粒1Aを回転放出盤31Cの回転と連動してホッパー31E内の破砕粒1Aを回転放出盤31C内に移送させる移送スクリュー31Fが設けられており、更にケーシング31Aにはその内部に向って図2のBに示す如く所要の角度を以って適宜数の噴霧ノズル31Gが配設され、この噴霧ノズル31Gより所要の圧力と噴霧量を以ってシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を、放出された破砕粒1Aに対して噴霧させることにより渦流状態で噴霧混合がなされるものである。かかる場合に噴霧されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2の一部がケーシング31A内壁面に付着し流落することが発生するため、該ケーシング31Aの下部位には回収ポケット31Hを設けたうえ回収再噴霧できるよう配慮されている。
【0023】
かくして混合混練若しくは噴霧混合等の混合工程30により混合された破砕粒1Aは、不溶固定化を図るために加熱処理工程40が施される。
この加熱処理工程40は、破砕粒1Aの外表面全体に混合付着されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を加熱することにより、シロキサン結合を急速且膨大数で促進させて、ダイオキシンや重金属類を該シロキサン結合内に取り込み、且加熱融着性の創出と水分蒸散により連続気泡構造の形成と高温度による連続気泡構造を実質的に閉塞させてガラス被膜により破砕粒1Aの外表面全体を強固に包着させて不溶固定化を実現させることからによる。
【0024】
これがため使用するシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2は、珪酸・SiOnHO等を素材としてホウ酸ナトリウム等の存在下にシロキサン・HSiO(HSiO)nSiHとシラノール塩・HSiOHとからなり、分子量換算で略4,000乃至8,000程度の密な錯化合物状で且そのpHが8.0乃至12.0に保持され、而もシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至75重量%に水分が25乃至55重量%割合の組成からなるものが用いられるもので、かかるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2においては、その粘度も略1,200乃至8,000cp程度と低粘度のうえ粘着性も保持するため、混合混練性や噴霧混合性に優れることと、加熱処理工程40によりシロキサン結合が急速且膨大数に亘ってなされ、且ガラス被膜の強固な包着形成に優れることによる。
加えてそのpH値が8.0乃至12.0程度のアルカリに保持されるため、特に高温度でダイオキシンを加熱分解させた場合に生成される塩酸ガスの中和作用が発揮されるため、低温度域におけるダイオキシンの再合成即ちデノボ合成も防止されることによる。
【0025】
加熱処理工程40は、重金属類が混在されてなる破砕粒1Aでは600℃以上の温度で加熱させることにより不溶固定化がなしえるが、ダイオキシンが混在されてなる場合には900℃好ましくは950℃以上の高温度が望まれる。
この加熱処理工程40も特段の制約はなく、少なくとも600℃乃至1,000℃程度に加熱できる加熱処理装置であれば十分に使用できるもので、通常においては図3に示す如き加熱ロータリーキルン41が好都合である。
この加熱ロータリーキルン41は、その供給部41Aより供給されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2が混合付着された破砕粒1Aは、加熱ドラム41B内において転動させつつ他方に設けられた加熱バーナー41Cにより600乃至1,000℃の高温度で加熱処理がなされる。かかる場合に加熱処理時間としては略20乃至40分程度で十分な加熱処理がなしえる。
そして加熱処理されたる後は、その他端に設けられた排出部41Dより排出がなされる。
【0026】
而してかかる加熱処理工程40は極めて高温度によりなされるため、加熱処理時に発生する臭気ガスや有害ガス等を除去し外部排出させる除去排出機構42、及び高温度で加熱処理された破砕粒1Bを徐冷し再利用若しくは廃棄させるための徐冷処理工程43とが加熱処理工程40に際して付帯される。
即ち除去排出機構42は、加熱ドラム41B内において発生した臭気ガスや有害ガスは吸引パイプ42Aに設けた吸引ポンプ42Bで吸引のうえ、その吸引パイプ42Aの他端には除去槽42C内の除去水内に一旦潜入させ、臭気成分や有害ガス成分を除去洗浄させ、更に該除去槽42C内で除去洗浄された残留ガス等は集塵機42Dを介して外部排出がなされる。
【0027】
他方加熱処理された破砕粒1Bは、再利用のため若しくは廃棄処分に供するうえから徐冷する必要上徐冷処理工程43で徐冷が施される。
この徐冷処理工程43も多様な手段が考えられるが、一般的には徐冷キルン44が好都合であって、該徐冷キルン44は加熱処理された破砕粒1Bをそのホッパー部44Aより供給させたうえ、やや傾斜し且回転自在なキルン44B内を転動移送させながら徐冷しその端縁に設けた排出口44Cより排出させるもので、キルン44Bの外周面には冷却水44Dを循環させるための冷却ドラム44Eが設けられてなるものである。
【0028】
本発明においては特定有害産業廃棄物処理業者の如く膨大量の特定有害産業廃棄物の不溶固定化を図る場合では、その装置全体の処理能力を10乃至100t/日程度で形成設置させることとなるが、望ましくはダイオキシンや重金類の混在する特定有害産業廃棄物の排出企業毎に、処理能力の小さな装置を設置することで確実な不溶固定化と且廃棄費用の大幅な削減効果が莫大となるばかりか、環境保全のうえからも安心して再利用化や廃棄埋立てもできる。
【0029】
以下に本発明によるダイオキシン及び重金属の不溶固定化試験結果を述べれば、試験に用いた特定有害産業廃棄物には産業廃棄物焼却場において採取した焼却飛灰を用いた。
試験方法は、焼却飛灰が微粒粉体であることから、該焼却飛灰の重量に対して10重量%割合で、シロキサン及びシラノール塩からなりその分子量換算で略4,000に多分子量化させた錯化合物状で、且そのpHが9.5及びシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45重量%に水分が55重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を用い、小型撹拌機で10分間混合撹拌させたうえ、素焼ルツボにそれぞれ30gを計量のうえ、ダイオキシンについては加熱炉内で950℃30分間加熱処理し、重金属類については加熱炉内で700℃30分間加熱処理したものを用いた。ダイオキシンの不溶固定化の結果は表1に、重金属類の不溶固定化の結果は表2の通りである。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
ダイオキシンや重金属類が混在する特定有害産業廃棄物を粒径1mm以下に破砕した破砕粒の重量に対し5乃至15重量%割合で、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を噴霧混合若しくは混合混練し、600℃以上の加熱処理を施すことにより不溶固定化がなしえる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 本発明不溶固定化方法のブロック図である。
【図2】 噴霧混合機の説明図である。
【図3】 加熱ロータリーモルンの説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ダイオキシンや重金属類の混在する産業廃棄物
1A 破砕粒
1B 加熱処理された破砕粒
2 シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液
10 貯留工程
10A 貯留器
20 破砕工程
21 破砕機
30 混合工程
30A 混合混練機
30B 噴霧混合機
31A ケーシング
31B 排出口
31C 回転放出盤
31D 放出孔
31E 噴霧混合機のホッパー
31F 移送スクリュー
31G 噴霧ノズル
31H 回収ポケット
40 加熱処理工程
41 加熱ロータリーキルン
41A 供給部
41B 加熱ドラム
41C 加熱バーナー
41D 排出部
42 除去排出機構
42A 吸引パイプ
42B 吸引ポンプ
42C 除去槽
42D 集塵機
43 徐冷処理工程
44 徐冷キルン
44A 徐冷キルンのホッパー部
44B キルン
44C キルンの排出口
44D 冷却水
44E 冷却ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオキシン及び重金属類が混在する産業廃棄物を、その粒径が1mm以下に破砕して破砕粒となしたるうえ、シロキサン及びシラノール塩からなりその分子量換算で略4,000乃至8,000に多分子量化させた錯化合物状で、且そのpH値が8.0乃至12.0に保持され、而もシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が45乃至75重量%と水分が25乃至55重量%割合の組成からなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、破砕粒の重量に対し5乃至15重量%割合で混合混練若しくは噴霧混合のうえ、その温度が900℃以上で加熱処理して、シロキサン結合内へのダイオキシン及び重金属類の取り込みと、発生する酸性ガスの中和及び破砕粒外表面全体にガラス被膜を強固に包着させることを特徴とする、ダイオキシンや重金属類の不溶固定化方法。
【請求項2】
重金属類の混在する産業廃棄物を粒径1mm以下に破砕して破砕粒としたうえ、該破砕粒重量に対して5乃至15重量%割合でシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を混合混練若しくは噴霧混合のうえ、その温度が600℃以上で加熱処理する、請求項1記載の重金属類の不溶固定化方法。
【請求項3】
閉鎖系内において搬入されるダイオキシン及び重金属類が混在する産業廃棄物を貯留する貯留工程と、この貯留された産業廃棄物を粒径が1mm以下に破砕して破砕粒となす破砕工程と、破砕粒に対してシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を混合混練若しくは噴霧混合させる混合工程と、混合工程により破砕粒外表面全体にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が混合付着された破砕粒を、600℃以上の温度で加熱処理する加熱処理工程と、且該加熱処理工程に付帯して発生する臭気ガス及び有害ガスを除去する除去排出機構、及び徐冷させる徐冷処理工程とからなるダイオキシンや重金属類の不溶固定化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−279420(P2008−279420A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150955(P2007−150955)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(505384601)株式会社ディ・トリップ (12)
【Fターム(参考)】