ダイカストマシンの移動ダイプレート
【課題】ダイカストマシンのような高圧トグル機構を有する装置において、減肉軽量化したとしても金型取付板の変形を発生させるようなことのない移動ダイプレートを提供する。
【解決手段】ダイカストマシンＭの移動ダイプレート１を（ａ）金型取付面２ａ、およびタイバー１２が挿通されるタイバーガイド孔４の穿設されたタイバーガイド部３をその四隅に備える金型取付板２と、（ｂ）金型取付板２の背面にて、移動金型Ｋ１の外形をカバーするように突設され、一定の幅Ｗを持ち、その内側が凹設状に凹堀部５となっている略八角形凸畝状のバックサポート部６と、（ｃ）バックサポート部６に設けられた型締め用トグル機構Ｔのトグルアーム取付部８とで構成することにより上記課題を解決することができる。
【解決手段】ダイカストマシンＭの移動ダイプレート１を（ａ）金型取付面２ａ、およびタイバー１２が挿通されるタイバーガイド孔４の穿設されたタイバーガイド部３をその四隅に備える金型取付板２と、（ｂ）金型取付板２の背面にて、移動金型Ｋ１の外形をカバーするように突設され、一定の幅Ｗを持ち、その内側が凹設状に凹堀部５となっている略八角形凸畝状のバックサポート部６と、（ｃ）バックサポート部６に設けられた型締め用トグル機構Ｔのトグルアーム取付部８とで構成することにより上記課題を解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明はダイカストマシンの移動ダイプレートに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ダイカストマシンにおいては、鋳込みシリンダ内に供給された溶湯を高圧で射出して型締めされた金型のキャビティ空間に高圧充填し、該キャビティ空間内において溶湯を冷却し、凝固させることによってダイカスト製品を成形するようになっている。
【０００３】
前記金型は固定金型および移動金型からなり、型締装置によって移動金型が装着された移動ダイプレートを進退させ、固定金型に対して移動金型を接離させることによって、型閉、型締および型開を行うことができるようになっている。前記型締装置は、固定金型が取り付けられた固定ダイプレートおよび移動金型が取り付けられた移動ダイプレートを有し、該移動ダイプレートを進退させる型締装置としてトグル機構が移動ダイプレートとエンドフレームとの間に配設され、該トグル機構は、エンドフレームに設けられた型締シリンダよって作動する。
【０００４】
固定ダイプレートには固定金型が取り付けられ、移動ダイプレートには移動金型が取り付けられており、トグル機構を作動させて移動金型を固定金型に押し付け型締めした後、溶湯の射出が行われる。このとき、高圧型締によってトグル機構から強い力を受けた金型のエッジを境にして金型取付板が撓み、甚だしい場合には金型取付面が金型の形に変形してしまうことがある。
【０００５】
そこで、このような金型取付板の撓みや変形を防止するため、金型取付板の厚みをできるだけ厚くして剛性を高めるということが行われていたが、この方法では前記撓みや変形を防止することができるものの、その分だけ重量が大きくなり、この重量に耐えられるように装置強度を高くしなければならなかった。
【０００６】
このため、装置重量が大型化するとともに過重になり、これに加えて昨今の鉄材価格高騰のため、製造コストが大幅に上昇してしまうという問題が起こっている。
【０００７】
このような問題の解決方法の１つとして、特許文献１に記載された移動ダイプレートが提案されている(図８〜１２参照)。この移動ダイプレート１００は、金型取付板１０１の板厚を厚くすることなく、金型取付板１０１の撓みや金型取付面１０１ａの変形を防止するというもので、金型取付面１０１ａを備える金型取付板１０１と、タイバー１０７が挿通されたガイド部１４５と、トグル機構の上・下トグルアーム１０８、１０８の軸支用の上・下荷重受け部１０２、１０３と、上・下荷重受け部１０２、１０３間に架設された荷重受け部連結部材１４１と、一端が上・下荷重受け部１０２、１０３に接続され、他端が上・下荷重受け部１０２、１０３よりも前記金型取付板１０１の中心に接近した位置で該金型取付板１０１の背面に接続される荷重伝達部材１４２とで構成されている。これにより、型締時の型締負荷が金型取付板１０１に加わった場合、該型締負荷が金型取付板１０１の中心に接近した位置に作用するので曲げモーメントが小さくなり、金型取付板の板厚を厚くしなくても、金型取付板１０１の撓みや金型取付面１０１ａの変形を防止することができるとしている。
【特許文献１】特開２００３−８９１３３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
上記従来技術によれば、移動ダイプレート１００の軽量化は可能であるものの、図８、１０〜１２に示すように、荷重伝達部材１４２間に矩形状の大孔１４３が穿設されているため、ダイカストマシンのような、高温・高圧・高速の射出を行う装置ではこの部分が弱点となり、軽量化した移動ダイプレート１００では自身の撓み・変形ひいては金型を変形させるという問題点を解消することができなかった。
【０００９】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、ダイカストマシンのような高圧トグル機構を有し、高温・高圧・高速の射出を行う装置において、軽量化したとしても金型取付板の変形を発生させることのない移動ダイプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明はダイカストマシンＭの移動ダイプレート１に関し、
（ａ）金型取付面２ａ、およびタイバー１２が挿通されるタイバーガイド孔４の穿設されたタイバーガイド部３をその四隅に備える金型取付板２と、
（ｂ）金型取付板２の背面にて、金型取付板２に取り付けられた移動金型Ｋ１の外形をカバーするように設けられ、一定の幅Ｗを持ち、その内側が凹設状に凹堀部５となっている略八角形凸畝状のバックサポート部６と、
（ｃ）バックサポート部６に設けられた型締め用トグル機構Ｔのトグルアーム取付部８とで構成されたことを特徴とする。
【００１１】
また、請求項２は請求項１の更なる改良で、タイバーガイド部３とバックサポート部６とが補強リブ７で接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の移動ダイプレート１は、金型取付板２、その背面のバックサポート部６、バックサポート部６に設けられた型締め用トグル機構Ｔのトグルアーム取付部８、およびタイバーガイド部３とバックサポート部６とを接続する補強リブ７とで構成されており、バックサポート部６とトグルアーム取付部８とを主たる負荷担持構造とし、更に補強リブ７によってバックサポート部６とトグルアーム取付部８との一体化を図っている。
【００１３】
型締めによる型締負荷がダイカストマシンＭの移動ダイプレート１に加わった時、トグル機構Ｔからの高圧型締力は、トグルアーム取付部８を介して直接バックサポート部６に加わる。そしてバックサポート部６は金型取付板２に取り付けられた移動金型Ｋ１の外形をカバーするため、バックサポート部６に加わった負荷は金型取付板２を介して、直接、移動金型Ｋ１に加わることになる。金型取付板２のバックサポート部６以外の部分は直接力が加わる場所ではない。それ故、バックサポート部６とこれに設けられたトグルアーム取付部８との強度を型締力に十分対抗できるだけの強度としておけば、それ以外の部分の肉厚を大幅に減肉したとしても、移動ダイプレート１、更に言えば金型取付板２の撓みや変形を大幅に回避することができる。
【００１４】
加えて、このように移動ダイプレート１全体が大きく減肉されていたとしても、補強リブ７によってバックサポート部６とタイバーガイド部３が一体化されているため、バックサポート部６に高圧型締力が加わった時の該高圧型締力によってタイバーガイド部３の平行度が損なわれるというようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本発明のダイカストマシンの概略平面図、図２はその概略正面図である。図において、土台であるフレーム２１上の右端に固定ダイプレート２３が固定され、該固定ダイプレート２３から所定の距離を置いて左端にトグルサポート３４がフレーム２１に対してスライド自在に配設されている。そして、前記固定ダイプレート２３とトグルサポート３４との間に四本のタイバー１２が架設されている。
【００１６】
そして前記固定ダイプレート２３に対向する移動ダイプレート１が、前記タイバー１２にガイドされて固定ダイプレート２３に近接離間可能に配設されている。該固定ダイプレート２３と移動ダイプレート１との対向面がそれぞれ金型取付面２３ａ、２ａとなっており、移動金型Ｋ１、固定金型Ｋ２がそれぞれ装着できるようになっている。また、前記移動ダイプレート１の背面中央に突設された、後述するバックサポート部６内にエジェクタピンを移動させるためのエジェクタピン駆動装置Ｅが取り付けられるようになっている。
【００１７】
前記移動ダイプレート１とトグルサポート３４との間には、型締装置としてのトグル機構Ｔが設けられ、前記トグルサポート３４の背面には、型締用駆動手段としてのトグル駆動装置３０(本実施例では油圧シリンダ)が取り付けられている。トグル駆動装置３０は、油圧シリンダ等を駆動源とし、クロスヘッド３５を進退させることによって、トグル機構Ｔを作動させる。
【００１８】
トグル機構Ｔは前記クロスヘッド３５に対して揺動自在に支持された連結レバー３６、前記トグルサポート３４に対して揺動自在に取り付けられたトグル作動レバー３２、および、前記移動ダイプレート１に対して揺動自在に取り付けられたトグルアーム３３から成り、前記トグル作動レバー３２と連結レバー３６との間、および、トグル作動レバー３２とトグルアーム３３との間がそれぞれリンク結合されている。これにより、前記移動ダイプレート１が固定ダイプレート２３方向に前進して型閉した後、トグル機構Ｔにおいてトグル駆動装置３０による推進力にトグル倍率を乗じた型締力を発生させ、該型締力による型締が行われる。勿論、トグル機構Ｔを使用することなく、トグル駆動装置３０で直接型締することもできる。
【００１９】
移動ダイプレート１には、その四隅にそれぞれタイバー１２が挿通されるタイバーガイド孔４が形成されており、それぞれのタイバーガイド孔４には、前方と後方にタイバーブッシュ１２ａがそれぞれ嵌め込まれ、潤滑剤を介して該タイバーブッシュ１２ａの内周面がタイバー１２に沿って摺動して移動ダイプレート１が往復移動する。
【００２０】
移動ダイプレート１の本体部分で、略矩形の形状を持つ金型取付板２は、金型取付面２ａを有しており、この金型取付面２ａの中央部分には、例えば、移動金型Ｋ１内のキャビティに突出するエジェクタピン(図示せず)が収納されているエジェクタピン駆動装置Ｅのエジェクタロッドユニット(図示せず)を配設するための貫通孔５１が穿設されている。
【００２１】
金型取付板２の厚さは、最低限、移動金型Ｋ１が装着するための取付溝２ｂが凹設され、且つ移動金型Ｋ１を保持して変形しない程度で足るが、安全をみてそれよりもやや厚くされている。金型取付板２の背面には、移動金型Ｋ１の外形をカバーするとともに、一定の幅Ｗを有し、その内側が凹設状に凹堀部５となっている略八角形凸畝状のバックサポート部６が設けられている。従って、バックサポート部６に囲まれている部分は略八角形凹設状の凹堀部５が形成されることになる。そしてこの部分にはエジェクタピン駆動装置Ｅが装着されるようになっている。
【００２２】
バックサポート部６の上・下および両横の凸畝状辺６ａ〜６ｄは金型取付板２の上下両側辺に平行に設けられており、凸畝状辺６ａ〜６ｄの角部に設けられた傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈは本実施例ではやや立った状態（垂直の凸畝状辺６ｂ、６ｄと成す角度が小さい状態）に形成されている。勿論、移動ダイプレート１の形状に合わせ、バックサポート部６の八角形凸畝状形状はそれに合わせて変形される。したがって、傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈは、もっと寝た状態（垂直の凸畝状辺６ｂ、６ｄと成す角度が大きい状態）にすることもできる。角度としては、垂直の凸畝状辺６ｂ、６ｄに対して６０度〜３０度の範囲に設けられる。
【００２３】
そして、この傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈに対応する部分に移動金型Ｋ１の角部分が位置することになり、水平および垂直の凸畝状辺６ａ〜６ｄの部分に金型の上下および両側の辺が位置することになる。勿論、多少のはみ出しは金型取付板２に対して影響が生じない限り許容される。そしてタイバーガイド部３と傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈとの間には、両者を接続する補強リブ７がそれぞれ取り付けられている。
【００２４】
前記金型取付板２の背面側上下辺にて上下の水平凸畝状辺６ａ、６ｃの外側に平行に辺部補強リブ６ｉ、６ｊが設けられ、上下の水平凸畝状辺６ａ、６ｃを主にして該辺部補強リブ６ｉ、６ｊにかけてトグルアーム３３の軸支用としてのトグルアーム取付部８が後方に突出され、トグルアーム取付部８に掛かる型締力の大半をバックサポート部６が担持できるようになっている。また、本実施例では、トグルアーム取付部８はそれぞれ左右に分かれて形成されているが、単一のものであってもよいし、辺部補強リブ６ｉ、６ｊを外して上下の水平凸畝状辺６ａ、６ｃだけに一体的に設けてもよい。
【００２５】
固定ダイプレート２３には、射出スリーブ２４を含む溶湯の射出装置Ｓが装備されている。
【００２６】
次に、本発明装置の動作を説明する。図１に示されるトグル駆動装置３０が作動してクロスヘッド３５を前進させ、トグル機構Ｔを作動させる。これにより移動ダイプレート１が前進して移動金型Ｋ１が固定金型Ｋ２に接合して型閉が行われ、次いで、更なる型締力が作用して型締が行われる。続いて、射出装置Ｓから溶湯が高圧で射出されて前記金型Ｋのキャビティ空間に高圧充填され、背圧を掛けつつ溶湯を冷却凝固させ、ダイカスト成形品を成形する。続いてトグル駆動装置３０が逆作動してクロスヘッド３５を後退させ、移動ダイプレート１を後退させて移動金型Ｋ１を固定金型Ｋ２から離間させて型開を行い、図示されないエジェクタロッドを前進させてダイカスト成形品を取り出す。以上の動作を繰り返すことによってダイカスト成形品が成形される。
【００２７】
ここで、型締時には、トグル機構Ｔの上下のトグルアーム３３からの推力Ｆ１、Ｆ２(型締力)が移動ダイプレート１のトグルアーム取付部８に作用するが、この推力(型締力)の大半は、トグルアーム取付部８に一体的に形成されているバックサポート部６の凸畝状辺６ａ、６ｃが担持することになり、これに続く他の凸畝状辺６ｂ、６ｄ、６ｅ〜６ｈがその曲げモーメントを担持し、全体として前記推力Ｆ１、Ｆ２の大半を担持する。加えて矩形の斜線で示す大から小の移動金型Ｋ１の外周の範囲がバックサポート部６の幅Ｗの格子で示す範囲内に入っているために前記推力Ｆ１、Ｆ２によって金型取付板２の撓みや変形が回避される。このため、金型取付板２に作用する曲げモーメントが小さくなるので金型取付板２の板厚を厚くしなくても、金型取付板２が撓むことがない。
【００２８】
そしてバックサポート部６は円に近い略八角形状に形成されているため高圧型締力が加わっても捩れることが少なく、圧縮のみならず移動ダイプレート１の捩れなどにも大きな抵抗力を発揮する。
【００２９】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明の実施例におけるダイカストマシンの平面図
【図２】図１の正面図
【図３】本発明の実施例における移動ダイプレートの正面図
【図４】図３の垂直断面図
【図５】図３のＸ−Ｘ断面図
【図６】図３のＹ−Ｙ断面図
【図７】図３の断面斜視図
【図８】従来例の移動ダイプレートの斜視図
【図９】図８の側面図
【図１０】図８の部分断面図
【図１１】図９のＡ−Ａ断面図
【図１２】図１１のＢ−Ｂ断面図
【符号の説明】
【００３１】
Ｍ …ダイカストマシン
Ｋ１…金型
Ｗ …バックサポート部の幅
Ｔ …トグル機構
１ …移動ダイプレート
２ …金型取付板
２ａ…金型取付面
３ …タイバーガイド部
４ …タイバーガイド孔
５ …凹堀部
６ …バックサポート部
７ …補強リブ
８ …トグルアーム取付部
【技術分野】
【０００１】
本発明はダイカストマシンの移動ダイプレートに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ダイカストマシンにおいては、鋳込みシリンダ内に供給された溶湯を高圧で射出して型締めされた金型のキャビティ空間に高圧充填し、該キャビティ空間内において溶湯を冷却し、凝固させることによってダイカスト製品を成形するようになっている。
【０００３】
前記金型は固定金型および移動金型からなり、型締装置によって移動金型が装着された移動ダイプレートを進退させ、固定金型に対して移動金型を接離させることによって、型閉、型締および型開を行うことができるようになっている。前記型締装置は、固定金型が取り付けられた固定ダイプレートおよび移動金型が取り付けられた移動ダイプレートを有し、該移動ダイプレートを進退させる型締装置としてトグル機構が移動ダイプレートとエンドフレームとの間に配設され、該トグル機構は、エンドフレームに設けられた型締シリンダよって作動する。
【０００４】
固定ダイプレートには固定金型が取り付けられ、移動ダイプレートには移動金型が取り付けられており、トグル機構を作動させて移動金型を固定金型に押し付け型締めした後、溶湯の射出が行われる。このとき、高圧型締によってトグル機構から強い力を受けた金型のエッジを境にして金型取付板が撓み、甚だしい場合には金型取付面が金型の形に変形してしまうことがある。
【０００５】
そこで、このような金型取付板の撓みや変形を防止するため、金型取付板の厚みをできるだけ厚くして剛性を高めるということが行われていたが、この方法では前記撓みや変形を防止することができるものの、その分だけ重量が大きくなり、この重量に耐えられるように装置強度を高くしなければならなかった。
【０００６】
このため、装置重量が大型化するとともに過重になり、これに加えて昨今の鉄材価格高騰のため、製造コストが大幅に上昇してしまうという問題が起こっている。
【０００７】
このような問題の解決方法の１つとして、特許文献１に記載された移動ダイプレートが提案されている(図８〜１２参照)。この移動ダイプレート１００は、金型取付板１０１の板厚を厚くすることなく、金型取付板１０１の撓みや金型取付面１０１ａの変形を防止するというもので、金型取付面１０１ａを備える金型取付板１０１と、タイバー１０７が挿通されたガイド部１４５と、トグル機構の上・下トグルアーム１０８、１０８の軸支用の上・下荷重受け部１０２、１０３と、上・下荷重受け部１０２、１０３間に架設された荷重受け部連結部材１４１と、一端が上・下荷重受け部１０２、１０３に接続され、他端が上・下荷重受け部１０２、１０３よりも前記金型取付板１０１の中心に接近した位置で該金型取付板１０１の背面に接続される荷重伝達部材１４２とで構成されている。これにより、型締時の型締負荷が金型取付板１０１に加わった場合、該型締負荷が金型取付板１０１の中心に接近した位置に作用するので曲げモーメントが小さくなり、金型取付板の板厚を厚くしなくても、金型取付板１０１の撓みや金型取付面１０１ａの変形を防止することができるとしている。
【特許文献１】特開２００３−８９１３３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
上記従来技術によれば、移動ダイプレート１００の軽量化は可能であるものの、図８、１０〜１２に示すように、荷重伝達部材１４２間に矩形状の大孔１４３が穿設されているため、ダイカストマシンのような、高温・高圧・高速の射出を行う装置ではこの部分が弱点となり、軽量化した移動ダイプレート１００では自身の撓み・変形ひいては金型を変形させるという問題点を解消することができなかった。
【０００９】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、ダイカストマシンのような高圧トグル機構を有し、高温・高圧・高速の射出を行う装置において、軽量化したとしても金型取付板の変形を発生させることのない移動ダイプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明はダイカストマシンＭの移動ダイプレート１に関し、
（ａ）金型取付面２ａ、およびタイバー１２が挿通されるタイバーガイド孔４の穿設されたタイバーガイド部３をその四隅に備える金型取付板２と、
（ｂ）金型取付板２の背面にて、金型取付板２に取り付けられた移動金型Ｋ１の外形をカバーするように設けられ、一定の幅Ｗを持ち、その内側が凹設状に凹堀部５となっている略八角形凸畝状のバックサポート部６と、
（ｃ）バックサポート部６に設けられた型締め用トグル機構Ｔのトグルアーム取付部８とで構成されたことを特徴とする。
【００１１】
また、請求項２は請求項１の更なる改良で、タイバーガイド部３とバックサポート部６とが補強リブ７で接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の移動ダイプレート１は、金型取付板２、その背面のバックサポート部６、バックサポート部６に設けられた型締め用トグル機構Ｔのトグルアーム取付部８、およびタイバーガイド部３とバックサポート部６とを接続する補強リブ７とで構成されており、バックサポート部６とトグルアーム取付部８とを主たる負荷担持構造とし、更に補強リブ７によってバックサポート部６とトグルアーム取付部８との一体化を図っている。
【００１３】
型締めによる型締負荷がダイカストマシンＭの移動ダイプレート１に加わった時、トグル機構Ｔからの高圧型締力は、トグルアーム取付部８を介して直接バックサポート部６に加わる。そしてバックサポート部６は金型取付板２に取り付けられた移動金型Ｋ１の外形をカバーするため、バックサポート部６に加わった負荷は金型取付板２を介して、直接、移動金型Ｋ１に加わることになる。金型取付板２のバックサポート部６以外の部分は直接力が加わる場所ではない。それ故、バックサポート部６とこれに設けられたトグルアーム取付部８との強度を型締力に十分対抗できるだけの強度としておけば、それ以外の部分の肉厚を大幅に減肉したとしても、移動ダイプレート１、更に言えば金型取付板２の撓みや変形を大幅に回避することができる。
【００１４】
加えて、このように移動ダイプレート１全体が大きく減肉されていたとしても、補強リブ７によってバックサポート部６とタイバーガイド部３が一体化されているため、バックサポート部６に高圧型締力が加わった時の該高圧型締力によってタイバーガイド部３の平行度が損なわれるというようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本発明のダイカストマシンの概略平面図、図２はその概略正面図である。図において、土台であるフレーム２１上の右端に固定ダイプレート２３が固定され、該固定ダイプレート２３から所定の距離を置いて左端にトグルサポート３４がフレーム２１に対してスライド自在に配設されている。そして、前記固定ダイプレート２３とトグルサポート３４との間に四本のタイバー１２が架設されている。
【００１６】
そして前記固定ダイプレート２３に対向する移動ダイプレート１が、前記タイバー１２にガイドされて固定ダイプレート２３に近接離間可能に配設されている。該固定ダイプレート２３と移動ダイプレート１との対向面がそれぞれ金型取付面２３ａ、２ａとなっており、移動金型Ｋ１、固定金型Ｋ２がそれぞれ装着できるようになっている。また、前記移動ダイプレート１の背面中央に突設された、後述するバックサポート部６内にエジェクタピンを移動させるためのエジェクタピン駆動装置Ｅが取り付けられるようになっている。
【００１７】
前記移動ダイプレート１とトグルサポート３４との間には、型締装置としてのトグル機構Ｔが設けられ、前記トグルサポート３４の背面には、型締用駆動手段としてのトグル駆動装置３０(本実施例では油圧シリンダ)が取り付けられている。トグル駆動装置３０は、油圧シリンダ等を駆動源とし、クロスヘッド３５を進退させることによって、トグル機構Ｔを作動させる。
【００１８】
トグル機構Ｔは前記クロスヘッド３５に対して揺動自在に支持された連結レバー３６、前記トグルサポート３４に対して揺動自在に取り付けられたトグル作動レバー３２、および、前記移動ダイプレート１に対して揺動自在に取り付けられたトグルアーム３３から成り、前記トグル作動レバー３２と連結レバー３６との間、および、トグル作動レバー３２とトグルアーム３３との間がそれぞれリンク結合されている。これにより、前記移動ダイプレート１が固定ダイプレート２３方向に前進して型閉した後、トグル機構Ｔにおいてトグル駆動装置３０による推進力にトグル倍率を乗じた型締力を発生させ、該型締力による型締が行われる。勿論、トグル機構Ｔを使用することなく、トグル駆動装置３０で直接型締することもできる。
【００１９】
移動ダイプレート１には、その四隅にそれぞれタイバー１２が挿通されるタイバーガイド孔４が形成されており、それぞれのタイバーガイド孔４には、前方と後方にタイバーブッシュ１２ａがそれぞれ嵌め込まれ、潤滑剤を介して該タイバーブッシュ１２ａの内周面がタイバー１２に沿って摺動して移動ダイプレート１が往復移動する。
【００２０】
移動ダイプレート１の本体部分で、略矩形の形状を持つ金型取付板２は、金型取付面２ａを有しており、この金型取付面２ａの中央部分には、例えば、移動金型Ｋ１内のキャビティに突出するエジェクタピン(図示せず)が収納されているエジェクタピン駆動装置Ｅのエジェクタロッドユニット(図示せず)を配設するための貫通孔５１が穿設されている。
【００２１】
金型取付板２の厚さは、最低限、移動金型Ｋ１が装着するための取付溝２ｂが凹設され、且つ移動金型Ｋ１を保持して変形しない程度で足るが、安全をみてそれよりもやや厚くされている。金型取付板２の背面には、移動金型Ｋ１の外形をカバーするとともに、一定の幅Ｗを有し、その内側が凹設状に凹堀部５となっている略八角形凸畝状のバックサポート部６が設けられている。従って、バックサポート部６に囲まれている部分は略八角形凹設状の凹堀部５が形成されることになる。そしてこの部分にはエジェクタピン駆動装置Ｅが装着されるようになっている。
【００２２】
バックサポート部６の上・下および両横の凸畝状辺６ａ〜６ｄは金型取付板２の上下両側辺に平行に設けられており、凸畝状辺６ａ〜６ｄの角部に設けられた傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈは本実施例ではやや立った状態（垂直の凸畝状辺６ｂ、６ｄと成す角度が小さい状態）に形成されている。勿論、移動ダイプレート１の形状に合わせ、バックサポート部６の八角形凸畝状形状はそれに合わせて変形される。したがって、傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈは、もっと寝た状態（垂直の凸畝状辺６ｂ、６ｄと成す角度が大きい状態）にすることもできる。角度としては、垂直の凸畝状辺６ｂ、６ｄに対して６０度〜３０度の範囲に設けられる。
【００２３】
そして、この傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈに対応する部分に移動金型Ｋ１の角部分が位置することになり、水平および垂直の凸畝状辺６ａ〜６ｄの部分に金型の上下および両側の辺が位置することになる。勿論、多少のはみ出しは金型取付板２に対して影響が生じない限り許容される。そしてタイバーガイド部３と傾斜凸畝状辺６ｅ〜６ｈとの間には、両者を接続する補強リブ７がそれぞれ取り付けられている。
【００２４】
前記金型取付板２の背面側上下辺にて上下の水平凸畝状辺６ａ、６ｃの外側に平行に辺部補強リブ６ｉ、６ｊが設けられ、上下の水平凸畝状辺６ａ、６ｃを主にして該辺部補強リブ６ｉ、６ｊにかけてトグルアーム３３の軸支用としてのトグルアーム取付部８が後方に突出され、トグルアーム取付部８に掛かる型締力の大半をバックサポート部６が担持できるようになっている。また、本実施例では、トグルアーム取付部８はそれぞれ左右に分かれて形成されているが、単一のものであってもよいし、辺部補強リブ６ｉ、６ｊを外して上下の水平凸畝状辺６ａ、６ｃだけに一体的に設けてもよい。
【００２５】
固定ダイプレート２３には、射出スリーブ２４を含む溶湯の射出装置Ｓが装備されている。
【００２６】
次に、本発明装置の動作を説明する。図１に示されるトグル駆動装置３０が作動してクロスヘッド３５を前進させ、トグル機構Ｔを作動させる。これにより移動ダイプレート１が前進して移動金型Ｋ１が固定金型Ｋ２に接合して型閉が行われ、次いで、更なる型締力が作用して型締が行われる。続いて、射出装置Ｓから溶湯が高圧で射出されて前記金型Ｋのキャビティ空間に高圧充填され、背圧を掛けつつ溶湯を冷却凝固させ、ダイカスト成形品を成形する。続いてトグル駆動装置３０が逆作動してクロスヘッド３５を後退させ、移動ダイプレート１を後退させて移動金型Ｋ１を固定金型Ｋ２から離間させて型開を行い、図示されないエジェクタロッドを前進させてダイカスト成形品を取り出す。以上の動作を繰り返すことによってダイカスト成形品が成形される。
【００２７】
ここで、型締時には、トグル機構Ｔの上下のトグルアーム３３からの推力Ｆ１、Ｆ２(型締力)が移動ダイプレート１のトグルアーム取付部８に作用するが、この推力(型締力)の大半は、トグルアーム取付部８に一体的に形成されているバックサポート部６の凸畝状辺６ａ、６ｃが担持することになり、これに続く他の凸畝状辺６ｂ、６ｄ、６ｅ〜６ｈがその曲げモーメントを担持し、全体として前記推力Ｆ１、Ｆ２の大半を担持する。加えて矩形の斜線で示す大から小の移動金型Ｋ１の外周の範囲がバックサポート部６の幅Ｗの格子で示す範囲内に入っているために前記推力Ｆ１、Ｆ２によって金型取付板２の撓みや変形が回避される。このため、金型取付板２に作用する曲げモーメントが小さくなるので金型取付板２の板厚を厚くしなくても、金型取付板２が撓むことがない。
【００２８】
そしてバックサポート部６は円に近い略八角形状に形成されているため高圧型締力が加わっても捩れることが少なく、圧縮のみならず移動ダイプレート１の捩れなどにも大きな抵抗力を発揮する。
【００２９】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明の実施例におけるダイカストマシンの平面図
【図２】図１の正面図
【図３】本発明の実施例における移動ダイプレートの正面図
【図４】図３の垂直断面図
【図５】図３のＸ−Ｘ断面図
【図６】図３のＹ−Ｙ断面図
【図７】図３の断面斜視図
【図８】従来例の移動ダイプレートの斜視図
【図９】図８の側面図
【図１０】図８の部分断面図
【図１１】図９のＡ−Ａ断面図
【図１２】図１１のＢ−Ｂ断面図
【符号の説明】
【００３１】
Ｍ …ダイカストマシン
Ｋ１…金型
Ｗ …バックサポート部の幅
Ｔ …トグル機構
１ …移動ダイプレート
２ …金型取付板
２ａ…金型取付面
３ …タイバーガイド部
４ …タイバーガイド孔
５ …凹堀部
６ …バックサポート部
７ …補強リブ
８ …トグルアーム取付部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
（ａ）金型取付面、およびタイバーが挿通されるタイバーガイド孔の穿設されたタイバーガイド部をその四隅に備える金型取付板と、
（ｂ）前記金型取付板の背面にて、前記金型取付板に取り付けられた金型の外形をカバーするように設けられ、一定の幅を持ち、その内側が凹設状に凹堀部となっている略八角形凸畝状のバックサポート部と、
（ｃ）前記バックサポート部に設けられた型締め用トグル機構用のトグルアーム取付部とで構成されたことを特徴とするダイカストマシンの移動ダイプレート。
【請求項２】
前記タイバーガイド部と前記バックサポート部とが補強リブで接続されていることを特徴とする請求項１に記載のダイカストマシンの移動ダイプレート。
【請求項１】
（ａ）金型取付面、およびタイバーが挿通されるタイバーガイド孔の穿設されたタイバーガイド部をその四隅に備える金型取付板と、
（ｂ）前記金型取付板の背面にて、前記金型取付板に取り付けられた金型の外形をカバーするように設けられ、一定の幅を持ち、その内側が凹設状に凹堀部となっている略八角形凸畝状のバックサポート部と、
（ｃ）前記バックサポート部に設けられた型締め用トグル機構用のトグルアーム取付部とで構成されたことを特徴とするダイカストマシンの移動ダイプレート。
【請求項２】
前記タイバーガイド部と前記バックサポート部とが補強リブで接続されていることを特徴とする請求項１に記載のダイカストマシンの移動ダイプレート。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【公開番号】特開２０１０−８２６３０（Ｐ２０１０−８２６３０Ａ）
【公開日】平成２２年４月１５日（２０１０．４．１５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２５１２９９（Ｐ２００８−２５１２９９）
【出願日】平成２０年９月２９日（２００８．９．２９）
【出願人】（０００２２２５８７）東洋機械金属株式会社 (299)
【公開日】平成２２年４月１５日（２０１０．４．１５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年９月２９日（２００８．９．２９）
【出願人】（０００２２２５８７）東洋機械金属株式会社 (299)
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