ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置
【課題】ダイキャストマシンの射出スリーブに溶融金属電磁ポンプを使用して溶融金属の充填を行うに当たり、射出スリーブと溶融金属電磁ポンプとの接続部分の早期の劣化を防止し、安定した運転を可能とする。
【解決手段】溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’をダイキャストマシン21の射出スリーブ20に緩衝継手28を介して接続した。この緩衝継手28は、パッキン材37を円筒状に積み重ねて溶融金属の通路を囲む搬送路としてのパッキン部を形成し、このパッキン材37により形成される筒状のパッキン部を耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持した継手である。例えば、パッキン材37は金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆してなる。
【解決手段】溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’をダイキャストマシン21の射出スリーブ20に緩衝継手28を介して接続した。この緩衝継手28は、パッキン材37を円筒状に積み重ねて溶融金属の通路を囲む搬送路としてのパッキン部を形成し、このパッキン材37により形成される筒状のパッキン部を耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持した継手である。例えば、パッキン材37は金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイキャスト金型に溶融アルミニウム等の溶融金属を充填するために使用されるダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置に関し、特にダイキャスト金型に溶融金属を送り出す射出スリーブに溶融金属電磁ポンプを使用して溶融金属を供給するダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイキャスト鋳造においては、固定金型に設けた射出スリーブに定量の溶融金属を給湯し、その後油圧により駆動されるプランジャの先端に設けたプランジャチップで射出スリーブ内に充填した溶融金属を金型のキャビティ内に送り込む。この動作を繰り返すことにより、鋳造サイクル毎にダイキャスト金型のキャビティに溶融金属を給湯することが行われている。
【0003】
図10は、このような溶融金属充填装置を備えたダイキャスト鋳造装置の概略を示す。
台座51の上には、同台座51上に固定された固定盤52と、台座51の上を図10において左右にスライドする可動盤55とが設けられている。固定盤52には固定金型53が取り付けられ、可動盤55にはダイバー57を介して可動金型54が取り付けられている。図示してない油圧機構により前記可動盤55がスライドするのに伴い、前記可動金型54が図10の左右方向に往復し、固定金型53に接触−離間する。可動金型54が固定金型53に接触した時に、可動金型54と固定金型53との間にキャビティ58が形成される。
【0004】
固定金型53に射出スリーブ60が設けられている。この射出スリーブ60は、水平に配置され、その一端側は固定金型53の可動金型54側に開口し、可動金型54が固定金型53に接触したとき形成される前記キャビティ58にゲート65を介して通じている。他方、射出スリーブ60の他端側は固定盤52からその外側に突出し、その上部に溶融金属を投入し、充填するための溶融金属投入口64が開口している。この射出スリーブ60の中には、プランジャチップ62がスライド自在に配置され、このプランジャチップ62は、図示してない油圧シリンダにより駆動されるプランジャロッド63の先端に設けられている。
【0005】
可動金型54は、図示してない油圧機構により可動盤55が台座51の上をスライドするのに伴い移動するが、この可動金型には、油圧シリンダ56により駆動される押し出しピン59が取り付けられている。後述する脱型時に、油圧シリンダ56により押し出しピン59の先端が可動金型54と固定金型53との間に形成されるキャビティ58内に押し込まれ、キャビティ58内の成形品が押し出される。
【0006】
このダイキャスト鋳造装置では、図10に示すように、可動金型54が固定金型53に接触し、可動金型54と固定金型53との間にキャビティ58が形成される。またラドル61により溶融金属投入口64から射出スリーブ60の中に溶融金属が投入される。その後、図11に示すように、図示してない油圧機構により、プランジャロッド63が延伸し、その先端のプランジャチップ62が図において左方向にスライドし、射出スリーブ60の中の溶融金属をゲート65を通してキャビティ58の中に押し出す。
【0007】
この溶融金属の押し出しに際しては、まずプランジャチップ62が射出スリーブ60の溶融金属投入口64を通過し、なお且つ溶融金属が射出スリーブ60の中をキャビティ58側に押し出され、図11(A)に示すように、ゲート65を塞ぐまでの間、プランジャチップ62は低速で押し出される。続いて、プランジャチップ62の押し出し速度を一挙に速くし、図11(B)に示すように、射出スリーブ60の中の溶融金属をゲート65からキャビティ58の中に充填する。その後、プランジャチップ62が減速し、キャビティ58の中の溶融金属を加圧することで、キャビティ58の中に充填された溶融金属に含まれる気泡が潰され、この気泡がキャビティ58の成形品内で非常に小さな空洞として残る。
【0008】
こうして溶融金属が、キャビティ58に充填完了した後、可動金型54と可動金型53によって冷却され、キャビティ58の中で凝固してダイカスト鋳物となる。その後、図示してない油圧機構により可動金型54が移動して固定金型53から離れると共に、油圧シリンダ56により押し出しピン59の先端が可動金型54から固定金型53側に押し出され、ダイカスト鋳物が可動金型54から押し出されて脱型される。この間前記プランジャチップ62は、図10に示す原位置に復帰する。以下、これを繰り返すことにより、順次鋳物が鋳造される。
【0009】
しかし、このような従来の溶融金属充填装置では、次のような問題があった。第一に、図示してない坩堝から溶融金属をラドル61で汲み上げ、これを溶融金属投入口64から射出スリーブ60の中に充填するので、ラドル61で坩堝の表面から酸化物を汲み上げてしまう。またラドル61で溶融金属を搬送し、溶融金属投入口64に投入する間に溶融金属の表面が大気に触れて酸化する。更に、射出スリーブ60の溶融金属投入口64が開口しているため、この溶融金属投入口64からラドルによる給湯時の空気巻き込みと射出スリーブ60内でも溶融金属に空気が入り込みやすく、鋳物に酸化物が混じりやすい。第二に、ラドル61で坩堝から溶融金属を汲み上げ、これを搬送して射出スリーブ60の溶融金属投入口64に投入する間に溶融金属の温度が低下しやすい。この温度低下を避けるため、坩堝の溶融金属の温度を高くすると、大気の水分が溶融金属に接触して分解し、その分解時水素が溶融金属に入り、溶融金属が固まって鋳物になるときに空洞、いわゆる巣が生じやすい。
【0010】
このような問題に対し、例えば下記特許文献1のように、溶融金属を送り出す電磁ポンプを使用して射出スリーブ60に溶融金属を充填することも提案されている。この特許文献1ではまた、射出スリーブに溶融金属を投入する部分にアルゴン等の不活性ガスを注入し、溶融金属が大気中の酸素と接触し、反応して酸化することを防止する手段が提案されている。このように、電磁ポンプを使用して射出スリーブ60に溶融金属を供給すれば、前述のような問題の多くを解決することが出来る。
【0011】
しかし、溶融金属電磁ポンプを使用して射出スリーブ60に溶融金属を給湯するには、溶融金属電磁ポンプのダクトを射出スリーブ60に接続する必要がある。ところが、ダイキャストマシンでは、前述したように、鋳物を鋳造する1サイクル毎に可動盤55が可動金型54を伴って台座51の上をスライドして往復動し、可動金型54が固定金型53に接触−離間を繰り返す。また射出スリーブ60でも油圧シリンダの動作により、プランジャチップ62が往復動し、キャビティ58への溶融金属の充填を繰り返す。この繰り返し動作により、溶融金属電磁ポンプと射出スリーブとの接続部分が耐えず振動を受け、その接続状態が早期に劣化するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−137051号公報
【特許文献2】特開2000−126861号公報
【特許文献3】特開平06−106330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述した従来のダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置における前述の課題に鑑み、ダイキャストマシンの射出スリーブに溶融金属電磁ポンプを使用して溶融金属の充填を行うに当たり、射出スリーブと溶融金属電磁ポンプとの接続部分の早期の劣化を防止し、安定した運転が可能なダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、前記の目的を達成するため、溶融金属電磁ポンプ10からダイキャストマシン21の射出スリーブ20に溶融金属を充填するに当たり、溶融金属電磁ポンプ10と射出スリーブ20とを、特殊な耐熱性、耐震性を有する緩衝継手28を使用して接続することにより、射出スリーブ20と溶融金属電磁ポンプ10との接続部の振動を前記緩衝継手28により吸収し、緩衝するようにした。
【0015】
すなわち、本発明によるダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置は、溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’をダイキャストマシン21の射出スリーブ20に緩衝継手28を介して接続した。この緩衝継手28は、パッキン材37を円筒状に積み重ねて溶融金属の通路を囲む搬送路としてのパッキン部を形成し、このパッキン材37により形成される筒状のパッキン部を耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持した継手である。
【0016】
例えば、パッキン材37は金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆してなる。芯材52としては、例えば耐熱性、耐蝕性、耐酸化性、耐クリープ性などの高温特性に優れたニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金(商品名「インコネル」)の線材を用いるのがよい。この芯材52に黒鉛51を被覆してリング状としたパッキン材37を複数個積み重ねて筒状のパッキン部とする。或いは長尺なパッキン材37をらせん状に密巻きして筒状筒状のパッキン部とする。このパッキン部を両側から耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持し、このフランジ36、36に溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’やノズル30、或いは射出スリーブ20を接続する。
【0017】
前記パッキン材37の積み重ねからなるパッキン部の外側はステンレス製等のベローズ40で覆い、このベローズ40の両端を前記フランジ36、36に固定する。このベローズ40にマイクロヒータ等を組み込み、ベローズ40の内側を保温し、パッキン部の内側を通る溶融金属の凝固を防止する。
【0018】
このような緩衝継手28は、金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆したパッキン材37が溶融金属の流路の長手方向に幾重にも重ね合わせられるため、その部分が撓んときに、パッキン材37が少しずつずれて、その撓みを吸収する。また溶融金属の流路の長手方向への伸びや縮みに対しても、パッキン材37がこれを吸収する。これにより、振動や変位を吸収しやすい継手となり得る。しかも、金属製のワイヤからなる芯材52を黒鉛51で被覆したパッキン材37は、高い耐熱性と耐腐蝕性とを有する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明によるダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置では、前述のような緩衝継手28を介してダイキャストマシン21の射出スリーブ20と溶融金属電磁ポンプ10とを接続しているので、ダイキャストマシン21が鋳造サイクルを繰り返しても、前記緩衝継手28が接続部分の振動や変位を吸収し、当該接続部分を安定して保持する。しかも、溶融金属の温度や腐蝕に対して高い耐性を有する緩衝継手28でもあるので、信頼性の高いダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の一実施例を示す別方向からの要部断面図である。
【図3】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の緩衝継手を示す正面図である。
【図4】図3のA方向の半断面図である。
【図5】図3と図4で示した緩衝継手に使用されるパッキン材の例を示す断面図である。
【図6】図3と図4で示した緩衝継手に使用されるベローズの例を示す断面図である。
【図7】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例を示す断面図である。
【図8】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例を示す断面図である。
【図9】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例を示す別方向からの要部断面図である。
【図10】ダイキャストマシンの従来例を示す断面図である。
【図11】ダイキャストマシンの従来例の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明では、溶融金属電磁ポンプ10を使用してダイキャストマシン21の射出スリーブ20に溶融金属を充填し、溶融金属電磁ポンプ10と射出スリーブ20とを、特殊な耐震性を有する緩衝継手28を使用して接続することにより、その目的を達成する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0022】
図1と図2は、本発明によるダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置の一実施例である。
このダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置は、溶融金属電磁ポンプを使用してダイキャストマシン21の射出スリーブ20に溶融金属を充填する。図2に示されたように、ダイキャストマシン21は、固定盤36に取り付けられた固定型37と、図示してない可動盤に取り付けられ、前記固定型37に接触−離間する可動型38とからなる金型を有する。図2に示されたように、可動型38が固定型37に接触したとき、そられの間に鋳物を成型する空間となるキャビティ31が形成される。
【0023】
図2に示されたように、射出スリーブ20には、図示してない油圧シリンダにより駆動されるプランジャ33の先端に設けられたプランジャチップ34がスライド自在に挿入されている。またこの射出スリーブ20には、上方に開口した溶融金属の投入口が設けられている。プランジャ33によりプランジャチップ34が図2において左方向に押し出されることにより、前記投入口から射出スリーブ20に給湯された溶融金属がゲート32を通って前記キャビティ32に充填される。
【0024】
図1に示すように、前記射出スリーブ20に溶融金属を供給するための溶融金属電磁ポンプ10は、誘導子を有し、この電磁作用により溶融金属槽11に収納された溶融金属12を前記射出スリーブ20に供給する。図1に示した例では、溶融金属電磁ポンプは、上側の給湯誘導子14と、下側の立上誘導子24との2段の誘導子を有する。
【0025】
ポンプ側ダクト1が斜めに配置され、溶融金属槽11に収納された溶融金属12に前記ポンプ側ダクト1の下端が差し込まれている。ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分の周囲には、磁性体製のヨーク15にコイル16を巻回した上側の給湯誘導子14が配置されている。ヨーク15は、ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分を囲むようにその外周側に嵌め込まれており、このヨーク15に三相コイルを構成するコイル16が巻回されている。この給湯誘導子14には、冷却器23が設けられ、駆動時に冷却される。
【0026】
さらに前記ポンプ側ダクト1には、前記給湯誘導子14より下側の部分の周囲に立上誘導子24が配置されている。この立上誘導子24は、前記の給湯誘導子14と同様に、前記ポンプ側ダクト1の誘導子14より下側の部分の外周に嵌め込まれた磁性体製のヨーク25にコイル26を巻回したものである。この立上誘導子24のコイル26は耐熱性を有する無機絶縁ケーブルにより巻回されている。無機絶縁ケーブルは、ステンレスチューブ等からなるシースの中に導電線を収納し、この導電線とシースとの間にマグネシア粉末等の無機絶縁粉末を充填して絶縁した構造を有する。いわゆるシースケーブルと呼ばれる。このような無機絶縁ケーブルは、耐熱性が高く、800℃の温度にも耐えることが出来る。このため立上用誘導子24は、冷却手段を有しない無冷却としながら、大きな電流を通電するのに適しており、その分だけ給湯誘導子14のコイル16に比べて立上誘導子24のコイル26の巻数は少なくすることが出来る。
【0027】
この立上誘導子24は、耐熱性を有するセラミック等からなる筒状の保護ケース17で囲まれている。この保護ケース17の上端開口部は、上側の給湯誘導子14の下端面に固定されている。また、この保護ケース17の下端の開口部は、前記ポンプ側ダクト1の下端と密に接合されており、この接合部に囲まれた内側は、ポンプ側ダクト1の下端の溶融金属12の導入口18となっている。
【0028】
前記ポンプ側ダクト1の上端には、く字形のエルボ管からなる給湯側ダクト1’がフランジ継手等の継手5、5’を介して密に接続されている。前記保護管3の給湯側ダクト1’に近い一端部の周囲にフランジ6が延設され、このフランジ6の外周に近い部分が前記ポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’とを接続する前記の継手5、5’の間に挟持されている。これにより、保護管3の中のコア2、22がポンプ側ダクト1の中心に位置するよう保持されている。フランジ6には、溶融金属12の通路となる複数の円弧状の通過孔7が設けられている。給湯側ダクト1’は、図示してないバネ等により手前のポンプ側ダクト1に弾力的に押しつけられている。この状態で継手5、5’の間に挿入された耐熱性のガスケットにより継手5、5’の部分のシール性が確保されている。
【0029】
これらポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’は、セラミック等の耐熱性、耐蝕性のある材料で作られており、その外周に設けた保温用のマイクロヒータ等からなるヒータ9、9’により溶融金属12の融点以上の温度に加熱され、溶融金属12の凝固を防ぐ。
溶融金属槽11の中の溶融金属12に液面センサー等のセンサー13が設けられ、これにより溶融金属槽11の中の溶融金属12の液位が検知される。前記立上誘導子24は、このセンサー13で検知される溶融金属12の液面より下に挿入される。
【0030】
給湯側ダクト1’の先端に溶融金属ノズル30が接続されている。この溶融金属ノズル30の下方を向いた先端は、前記射出スリーブ20の溶融金属投入口に差し込まれている。またこの溶融金属ノズル30は緩衝継手28を介して射出スリーブ20に連結されている。射出スリーブ20と緩衝継手28との間には、緩衝シールパッキン35が挿入され、射出スリーブ20と緩衝継手28との緩衝性及び気密性が保持されている。
【0031】
溶融金属ノズル30の上端には、溶融金属液面計19が設けられ、これにより溶融金属ノズル30の先端部分、すなわち溶融金属投入口から射出スリーブ20の中の溶融金属の液面が検知される。またこの部分には、アルゴン等の不活性ガスを噴出するガスノズル27とリークバルブ45とが設けられている。ガスノズル27には、アルゴン等の不活性ガスを貯えた図示してないガスボンベがやはり図示してないバルブ又はインジェクタを介して接続されている。このガスノズル27からは、前述した溶融金属電磁ポンプ10の給湯を停止する時に協働して堰29を越流する流れを切断する為、適時溶融金属ノズル30の先端に向けてガスが噴射される。リークバルブ45は、溶融金属ノズル30内のガスを適時外部に放出するのに使用される。
【0032】
前記給湯側ダクト1’と溶融金属ノズル30との接続部分であって、給湯側ダクト1’の終端部分に堰29が設けられている。この堰29は、給湯側ダクト1’の流路底面が手前の部分より一段高くなるよう隆起した形状を有している。給湯側ダクト1’からはこの堰29を越えて溶融金属ノズル30側に溶融金属が流れ出る。
【0033】
図3と図4は、前記の緩衝継手28を示している。この緩衝継手28は、同一内外径のリング状のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、さらにその外側により大きな内外径のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成している。或いは長尺なパッキン材37をらせん状に密巻きコイル状とし、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成しても良い。何れの場合も隣接するパッキン材37は相互に密に積み重ねて筒状のパッキン部を形成し、これを溶融金属の流路とする。
【0034】
例えば図5(A)に示すように、同一内外径のリング状のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、さらにその外側により大きな内外径のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成する。或いは図5(B)に示すように金属線を芯材52として用い、この芯材52に黒鉛51を被覆したパッキン材37をらせん状に密巻きコイル状とし、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成しても良い。何れの場合も隣接するパッキン材37は相互に密に積み重ねて筒状のパッキン部を形成し、これを溶融金属の流路とする。
【0035】
芯材52としては、例えば耐熱性、耐蝕性、耐酸化性、耐クリープ性などの高温特性に優れたニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金(商品名「インコネル」)の線材のうち高温バネ性がある物が好適である。これに黒鉛51を被覆し、前述のリング状或いは密巻きコイル状のパッキン材37とする。
【0036】
図4に示されたように、このパッキン材37からなるパッキン部を両側から耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持する。このフランジ36、36は、窒化珪素等の耐熱性及び溶融アルミニウムに対して耐蝕性のあるセラミックで作られている。
【0037】
前記パッキン材37の外側に図6に示すようなステンレス等の薄い金属板からなるベローズ40を被せ、このベローズ40の両端をフランジ押え金具39、39と共に前記フランジ36、36を挟むベローズ押え金具38、38でフランジ36、36に固定している。このベローズ40にマイクロヒータ等を組み込み、ベローズ40の内部のパッキン材37を保温することにより、パッキン部の内側を通る溶融金属の凝固を防止する。
【0038】
射出スリーブ20では、図2に示したプランジャチップ34の摺動に伴い、溶融金属をダイキャストマシン21のキャビティ31に毎回定量ずつ射出する度に振動又は変位し、この振動や変位が給湯側ダクト1’や溶融金属ノズル30に及ぶ。このとき、前記緩衝継手28では、パッキン材37が積み重ねられているため、パッキン材37が相互に摺動して振動や変位を吸収し、その前後の給湯側ダクト1’や溶融金属ノズル30に及ぼす振動や変位を小さくする。これにより、前記射出スリーブ20内でプランジャチップ34が摺動しても、継手部分における溶融金属の漏れ等を未然に防止することが出来る。
【0039】
このようなダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置では、まず立上誘導子24を駆動し、溶融金属槽11の溶融金属12をポンプ側ダクト1に汲み上げ、ポンプ側ダクト1の中の溶融金属を給湯誘導子14の電磁力が作用するレベルまで汲み上げる。その後給湯誘導子14の出力をさらに大きくするとポンプ側ダクト1の中の溶融金属が押し上げられ、溶融金属12が給湯側ダクト1’の中を上昇し、そのレベルが堰29の高さに達する。このレベルは、給湯側ダクト1’を通して溶融金属を射出スリーブ20に充填する直前の状態、すなわち給湯待機状態である。この給湯待機状態で給湯誘導子14の出力を徐々に増大すると共に、立上誘導子24の出力を一定量ずつ減少させ零まで持ってゆき、給湯誘導子14の出力だけでポンプ側ダクト1の溶融金属12のレベルを前述の堰29の高さに維持する。
【0040】
次にこの給湯待機状態のレベルから溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力をさらに増大させ、溶融金属のレベルを給湯待機状態の高さ以上に立上げることにより、溶融金属が堰29を越流し、ノズル30を通って溶融金属が射出スリーブ20に流れ込み、充填される。このとき、ガスノズル27から溶融金属ノズル30の中に不活性ガスを注入し、溶融金属ノズル30の中を不活性ガス雰囲気とする。同時に、溶融金属液面計19により堰29を越流する湯面高さを検知して流量が測定され、所定の給湯量を溶融金属ノズル30の先端部分、すなわち溶融金属投入口から射出スリーブ20の中に溶融金属を給湯する。
【0041】
次に、堰29を越流する湯面の高さを前記溶融金属液面計19により検知して所定の流量になったところで、溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力を下げ、給湯側ダクト1’の中の溶融金属のレベルを堰29の高さに戻す。これにより、給湯側ダクト1’から溶融金属ノズル30側への溶融金属の越流が停止される。同時にガスノズル27から溶融金属ノズル30の中に注入される不活性ガスにより、溶融金属ノズル30の中に残った溶融金属を射出スリーブ20へ送り出され、充填を終了する。
【0042】
その後、図2に示すプランジャチップ34が同図において左方向へ移動し、射出スリーブ20に充填された溶融金属をゲート32を通してダイキャストマシン21の金型のキャビティ31に充填する。この時のプランジャチップ34の動作は、前述した従来のものと同じである。その後、鋳物の成型が行われると共に、図2に示すプランジャチップ34が同図において右に復帰する。
以下、これを繰り返しながら、キャビティ31への溶融金属の充填による鋳造が行われる。
【0043】
なお、溶融金属ノズル30から溶融金属を射出スリーブ20に給湯する際に、溶融金属ノズル30から噴出する溶融金属の流速が速すぎる時は、その反動で射出スリーブ20の壁から溶融金属が溶融金属ノズル30側に跳ね返ってくることがある。そのようなときは、図2に二点鎖線で示すように、溶融金属ノズル30を若干傾斜させ、その先端がゲート32側またはその反対側に向くようにするとよい。
【0044】
次に、図7に示したダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例について説明する。
図1に示した実施例では、溶融金属ノズル30を垂直に立て、その先端を真下に向けて射出スリーブ20に接続した。これに対し、図7に示した実施例では、溶融金属ノズル30を斜めにしている。また、図1に示した実施例では、溶融金属ノズル30に接続される給湯側ダクト1’を水平にして溶融金属ノズル30に接続したが、この図7の実施例では、斜めに設置されたポンプ側ダクト1の延長上に給湯側ダクト1’を接続し、この斜めの湯側ダクト1’に溶融金属ノズル30を直接接続している。湯側ダクト1’と溶融金属ノズル30の底面はそれらの接続部分で最も高くなり、その部分が堰29となる。
【0045】
図7に示した実施例におけるその他の構成は図1〜図3により前述した前記ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の実施例と基本的に同じであり、同じ部分は同じ符合で示している。動作も基本的に同じである。使用している緩衝継手28も、図3〜図6により前述したものと同じである。それらの詳細については、重複するので説明を省略する。
【0046】
次に、図8と図9に示したダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例について説明する。
溶融金属電磁ポンプ10のポンプ側ダクト1の上端には、く字形のエルボ管からなる給湯側ダクト1’がフランジ継手等の継手5、5’を介して密に接続されている。この給湯側ダクト1’の中間部分の上部には、フランジ筒30が設けられている。このフランジ筒30の中には、溶融金属液面計19が設けられ、これにより給湯側ダクト1’の溶融金属の液面の高さが検知される。またこのフランジ筒30には、アルゴン等の不活性ガスを噴出するガスノズル27の吹き出し口が配設されている。このガスノズル27には、アルゴン等の不活性ガスを貯えた図示してないガスボンベがやはり図示してないバルブ又はインジェクタを介して接続されている。このガスノズル27からは、供給側ダクト1’の中にガスが噴射される。さらにフランジ筒30には、潤滑剤を噴射する潤滑剤ノズル41の吹き出し口が射出スリーブ20の前記溶融金属供給口42に向けて配設されている。この潤滑剤ノズル41からは、溶融金属供給口42から射出スリーブ20内に向けて潤滑剤が噴射される。
【0047】
給湯側ダクト1’の先端は緩衝継手28を介して射出スリーブ20の側面に設けた溶融金属供給口42に接続されている。給湯側ダクト1’の背後には、バネ受け部材43と反力壁との間にバネ44が挿入され、このバネ44の弾力で給湯側ダクト1’の先端が緩衝継手28を介して射出スリーブ20に押し当てられている。さらに射出スリーブ20と緩衝継手28との間には、緩衝シールパッキン35が挿入され、射出スリーブ20と緩衝継手28との緩衝性及び気密性が保持されている。緩衝継手28の構成は、図3〜図6により前述したものと同じである。
【0048】
前記給湯側ダクト1’が接続された溶融金属供給口42は、図示の例では円形の開口部であるが、その下半分は堰29で遮られている。具体的にはこの堰29は、溶融金属供給口42の下半分が隆起した形状を有している。給湯側ダクト1’からはこの堰29を越えて射出スリーブ20側に溶融金属が流れ込む。
射出スリーブ20の溶融金属供給口42より先端側の上部、すなわちプランジャチップ34の待機位置の上部には、プランジャチップ34に潤滑剤を注入するための潤滑剤注入口43が設けられている。
【0049】
このようなダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置では、まず立上誘導子24を駆動し、溶融金属槽11の溶融金属12をポンプ側ダクト1に汲み上げ、ポンプ側ダクト1の中の溶融金属を給湯誘導子14の電磁力が作用するレベルまで汲み上げる。その後給湯誘導子14の出力をさらに大きくするとポンプ側ダクト1の中の溶融金属が押し上げられ、溶融金属12が給湯側ダクト1’の中を上昇し、そのレベルが堰29の高さに達する。このレベルは、給湯側ダクト1’を通して溶融金属を射出スリーブ20に充填する直前の状態、すなわち給湯待機状態である。この給湯待機状態で給湯誘導子14の出力を徐々に増大すると共に、立上誘導子24の出力を一定量ずつ減少させ、給湯誘導子14の出力だけでポンプ側ダクト1の溶融金属12のレベルを前述の堰29の高さに維持する。
【0050】
この給湯側ダクト1’の溶融金属のレベルは、フランジ筒30の中に設けられた溶融金属液面計19により検知され、堰29から越流する流量が測定され、この情報をもとに溶融金属電磁ポンプ10の前述した出力制御が行われる。またフランジ筒30の中に配管されたガスノズル27から給湯側ダクト1’内にアルゴン等の不活性ガスが噴出される。これにより、給湯側ダクト1’内が不活性ガス雰囲気に維持され、その中の溶融金属の酸化が防止される。
【0051】
次にこの給湯待機状態のレベルから溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力をさらに増大させ、溶融金属のレベルを給湯待機状態の高さ以上に立上げることにより、溶融金属が堰29を越流し、射出スリーブ20に流れ込み、給湯される。図8の方式が他の図1,図7と大きく違う所は、射出スリーブ20に直接堰29が付いているため、湯面検知だけでも所定の給湯量が制御出来る事であり、従って前記溶融金属液面計19により検知される給湯側ダクト1’内の溶融金属の液面の高さが所定の高さになったところで、溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力を下げ、給湯側ダクト1’の中の溶融金属のレベルを堰29の高さに戻す。これにより、給湯側ダクト1’から溶融金属ノズル30側への溶融金属の越流が停止され、射出スリーブ20に残った余分の溶融金属は堰29を越流して給湯側ダクト1’側へ戻る。これにより射出スリーブ20への溶融金属の給湯が終了する。
【0052】
こうして射出スリーブ20に充填される溶融金属のレベルは、丁度堰29の高さまでとなる。射出スリーブ20へ充填する溶融金属の必要量は、一般的には射出スリーブ20の内容積の1/2程度である。堰29の高さは、この射出スリーブ20への溶融金属の必要充填量に対応するよう設計して設けておく。ただし、堰29を大幅に越流すると射出スリーブから戻る湯が多くなって、その戻り湯の温度は低下していることから、次の給湯に影響するので、戻り湯が少ない適正な給湯が望ましい事は言うまでもない。
【0053】
その後、図9に示すプランジャチップ34が同図において左方向へ移動し、射出スリーブ20に充填された溶融金属をゲート32を通してダイキャストマシン21の金型のキャビティ31に充填する。この時のプランジャチップ34の動作は、前述した従来のものと同じである。その後、鋳物の成型が行われると共に、図9に示すプランジャチップ34が同図において右に復帰する。
【0054】
このようなプランジャチップ34の動作において、そのプランジャチップ34の動きに合わせて、前記フランジ筒30に設けた潤滑剤ノズル41から射出スリーブ20の前記溶融金属供給口42を通過するプランジャチップ34に向けて潤滑剤を噴射することが出来る。プランジャチップ34の射出スリーブ20内での往復移動を円滑にすることが出来る。
【0055】
図8と図9に示した実施例におけるその他の構成は図1〜図3により前述した前記ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の実施例と基本的に同じであり、同じ部分は同じ符合で示している。使用している緩衝継手28も、図3〜図6により前述したものと同じである。それらの詳細については、重複するので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によるは、ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置は、ダイキャストマシンの射出スリーブに溶融アルミニウム等の溶融金属を充填するのに使用出来るので、比較的小形の鋳物を多量に生産出来るアルミダイキャスト鋳造等の分野で利用することが出来る。
【符号の説明】
【0057】
1’ 溶融金属電磁ポンプのダクト
10 溶融金属電磁ポンプ
20 射出スリーブ
21 ダイキャストマシン
28 緩衝継手
31 キャビティ
36 フランジ
37 パッキン材
51 黒鉛
52 芯材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイキャスト金型に溶融アルミニウム等の溶融金属を充填するために使用されるダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置に関し、特にダイキャスト金型に溶融金属を送り出す射出スリーブに溶融金属電磁ポンプを使用して溶融金属を供給するダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイキャスト鋳造においては、固定金型に設けた射出スリーブに定量の溶融金属を給湯し、その後油圧により駆動されるプランジャの先端に設けたプランジャチップで射出スリーブ内に充填した溶融金属を金型のキャビティ内に送り込む。この動作を繰り返すことにより、鋳造サイクル毎にダイキャスト金型のキャビティに溶融金属を給湯することが行われている。
【0003】
図10は、このような溶融金属充填装置を備えたダイキャスト鋳造装置の概略を示す。
台座51の上には、同台座51上に固定された固定盤52と、台座51の上を図10において左右にスライドする可動盤55とが設けられている。固定盤52には固定金型53が取り付けられ、可動盤55にはダイバー57を介して可動金型54が取り付けられている。図示してない油圧機構により前記可動盤55がスライドするのに伴い、前記可動金型54が図10の左右方向に往復し、固定金型53に接触−離間する。可動金型54が固定金型53に接触した時に、可動金型54と固定金型53との間にキャビティ58が形成される。
【0004】
固定金型53に射出スリーブ60が設けられている。この射出スリーブ60は、水平に配置され、その一端側は固定金型53の可動金型54側に開口し、可動金型54が固定金型53に接触したとき形成される前記キャビティ58にゲート65を介して通じている。他方、射出スリーブ60の他端側は固定盤52からその外側に突出し、その上部に溶融金属を投入し、充填するための溶融金属投入口64が開口している。この射出スリーブ60の中には、プランジャチップ62がスライド自在に配置され、このプランジャチップ62は、図示してない油圧シリンダにより駆動されるプランジャロッド63の先端に設けられている。
【0005】
可動金型54は、図示してない油圧機構により可動盤55が台座51の上をスライドするのに伴い移動するが、この可動金型には、油圧シリンダ56により駆動される押し出しピン59が取り付けられている。後述する脱型時に、油圧シリンダ56により押し出しピン59の先端が可動金型54と固定金型53との間に形成されるキャビティ58内に押し込まれ、キャビティ58内の成形品が押し出される。
【0006】
このダイキャスト鋳造装置では、図10に示すように、可動金型54が固定金型53に接触し、可動金型54と固定金型53との間にキャビティ58が形成される。またラドル61により溶融金属投入口64から射出スリーブ60の中に溶融金属が投入される。その後、図11に示すように、図示してない油圧機構により、プランジャロッド63が延伸し、その先端のプランジャチップ62が図において左方向にスライドし、射出スリーブ60の中の溶融金属をゲート65を通してキャビティ58の中に押し出す。
【0007】
この溶融金属の押し出しに際しては、まずプランジャチップ62が射出スリーブ60の溶融金属投入口64を通過し、なお且つ溶融金属が射出スリーブ60の中をキャビティ58側に押し出され、図11(A)に示すように、ゲート65を塞ぐまでの間、プランジャチップ62は低速で押し出される。続いて、プランジャチップ62の押し出し速度を一挙に速くし、図11(B)に示すように、射出スリーブ60の中の溶融金属をゲート65からキャビティ58の中に充填する。その後、プランジャチップ62が減速し、キャビティ58の中の溶融金属を加圧することで、キャビティ58の中に充填された溶融金属に含まれる気泡が潰され、この気泡がキャビティ58の成形品内で非常に小さな空洞として残る。
【0008】
こうして溶融金属が、キャビティ58に充填完了した後、可動金型54と可動金型53によって冷却され、キャビティ58の中で凝固してダイカスト鋳物となる。その後、図示してない油圧機構により可動金型54が移動して固定金型53から離れると共に、油圧シリンダ56により押し出しピン59の先端が可動金型54から固定金型53側に押し出され、ダイカスト鋳物が可動金型54から押し出されて脱型される。この間前記プランジャチップ62は、図10に示す原位置に復帰する。以下、これを繰り返すことにより、順次鋳物が鋳造される。
【0009】
しかし、このような従来の溶融金属充填装置では、次のような問題があった。第一に、図示してない坩堝から溶融金属をラドル61で汲み上げ、これを溶融金属投入口64から射出スリーブ60の中に充填するので、ラドル61で坩堝の表面から酸化物を汲み上げてしまう。またラドル61で溶融金属を搬送し、溶融金属投入口64に投入する間に溶融金属の表面が大気に触れて酸化する。更に、射出スリーブ60の溶融金属投入口64が開口しているため、この溶融金属投入口64からラドルによる給湯時の空気巻き込みと射出スリーブ60内でも溶融金属に空気が入り込みやすく、鋳物に酸化物が混じりやすい。第二に、ラドル61で坩堝から溶融金属を汲み上げ、これを搬送して射出スリーブ60の溶融金属投入口64に投入する間に溶融金属の温度が低下しやすい。この温度低下を避けるため、坩堝の溶融金属の温度を高くすると、大気の水分が溶融金属に接触して分解し、その分解時水素が溶融金属に入り、溶融金属が固まって鋳物になるときに空洞、いわゆる巣が生じやすい。
【0010】
このような問題に対し、例えば下記特許文献1のように、溶融金属を送り出す電磁ポンプを使用して射出スリーブ60に溶融金属を充填することも提案されている。この特許文献1ではまた、射出スリーブに溶融金属を投入する部分にアルゴン等の不活性ガスを注入し、溶融金属が大気中の酸素と接触し、反応して酸化することを防止する手段が提案されている。このように、電磁ポンプを使用して射出スリーブ60に溶融金属を供給すれば、前述のような問題の多くを解決することが出来る。
【0011】
しかし、溶融金属電磁ポンプを使用して射出スリーブ60に溶融金属を給湯するには、溶融金属電磁ポンプのダクトを射出スリーブ60に接続する必要がある。ところが、ダイキャストマシンでは、前述したように、鋳物を鋳造する1サイクル毎に可動盤55が可動金型54を伴って台座51の上をスライドして往復動し、可動金型54が固定金型53に接触−離間を繰り返す。また射出スリーブ60でも油圧シリンダの動作により、プランジャチップ62が往復動し、キャビティ58への溶融金属の充填を繰り返す。この繰り返し動作により、溶融金属電磁ポンプと射出スリーブとの接続部分が耐えず振動を受け、その接続状態が早期に劣化するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−137051号公報
【特許文献2】特開2000−126861号公報
【特許文献3】特開平06−106330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述した従来のダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置における前述の課題に鑑み、ダイキャストマシンの射出スリーブに溶融金属電磁ポンプを使用して溶融金属の充填を行うに当たり、射出スリーブと溶融金属電磁ポンプとの接続部分の早期の劣化を防止し、安定した運転が可能なダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、前記の目的を達成するため、溶融金属電磁ポンプ10からダイキャストマシン21の射出スリーブ20に溶融金属を充填するに当たり、溶融金属電磁ポンプ10と射出スリーブ20とを、特殊な耐熱性、耐震性を有する緩衝継手28を使用して接続することにより、射出スリーブ20と溶融金属電磁ポンプ10との接続部の振動を前記緩衝継手28により吸収し、緩衝するようにした。
【0015】
すなわち、本発明によるダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置は、溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’をダイキャストマシン21の射出スリーブ20に緩衝継手28を介して接続した。この緩衝継手28は、パッキン材37を円筒状に積み重ねて溶融金属の通路を囲む搬送路としてのパッキン部を形成し、このパッキン材37により形成される筒状のパッキン部を耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持した継手である。
【0016】
例えば、パッキン材37は金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆してなる。芯材52としては、例えば耐熱性、耐蝕性、耐酸化性、耐クリープ性などの高温特性に優れたニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金(商品名「インコネル」)の線材を用いるのがよい。この芯材52に黒鉛51を被覆してリング状としたパッキン材37を複数個積み重ねて筒状のパッキン部とする。或いは長尺なパッキン材37をらせん状に密巻きして筒状筒状のパッキン部とする。このパッキン部を両側から耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持し、このフランジ36、36に溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’やノズル30、或いは射出スリーブ20を接続する。
【0017】
前記パッキン材37の積み重ねからなるパッキン部の外側はステンレス製等のベローズ40で覆い、このベローズ40の両端を前記フランジ36、36に固定する。このベローズ40にマイクロヒータ等を組み込み、ベローズ40の内側を保温し、パッキン部の内側を通る溶融金属の凝固を防止する。
【0018】
このような緩衝継手28は、金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆したパッキン材37が溶融金属の流路の長手方向に幾重にも重ね合わせられるため、その部分が撓んときに、パッキン材37が少しずつずれて、その撓みを吸収する。また溶融金属の流路の長手方向への伸びや縮みに対しても、パッキン材37がこれを吸収する。これにより、振動や変位を吸収しやすい継手となり得る。しかも、金属製のワイヤからなる芯材52を黒鉛51で被覆したパッキン材37は、高い耐熱性と耐腐蝕性とを有する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明によるダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置では、前述のような緩衝継手28を介してダイキャストマシン21の射出スリーブ20と溶融金属電磁ポンプ10とを接続しているので、ダイキャストマシン21が鋳造サイクルを繰り返しても、前記緩衝継手28が接続部分の振動や変位を吸収し、当該接続部分を安定して保持する。しかも、溶融金属の温度や腐蝕に対して高い耐性を有する緩衝継手28でもあるので、信頼性の高いダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の一実施例を示す別方向からの要部断面図である。
【図3】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の緩衝継手を示す正面図である。
【図4】図3のA方向の半断面図である。
【図5】図3と図4で示した緩衝継手に使用されるパッキン材の例を示す断面図である。
【図6】図3と図4で示した緩衝継手に使用されるベローズの例を示す断面図である。
【図7】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例を示す断面図である。
【図8】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例を示す断面図である。
【図9】ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例を示す別方向からの要部断面図である。
【図10】ダイキャストマシンの従来例を示す断面図である。
【図11】ダイキャストマシンの従来例の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明では、溶融金属電磁ポンプ10を使用してダイキャストマシン21の射出スリーブ20に溶融金属を充填し、溶融金属電磁ポンプ10と射出スリーブ20とを、特殊な耐震性を有する緩衝継手28を使用して接続することにより、その目的を達成する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0022】
図1と図2は、本発明によるダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置の一実施例である。
このダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置は、溶融金属電磁ポンプを使用してダイキャストマシン21の射出スリーブ20に溶融金属を充填する。図2に示されたように、ダイキャストマシン21は、固定盤36に取り付けられた固定型37と、図示してない可動盤に取り付けられ、前記固定型37に接触−離間する可動型38とからなる金型を有する。図2に示されたように、可動型38が固定型37に接触したとき、そられの間に鋳物を成型する空間となるキャビティ31が形成される。
【0023】
図2に示されたように、射出スリーブ20には、図示してない油圧シリンダにより駆動されるプランジャ33の先端に設けられたプランジャチップ34がスライド自在に挿入されている。またこの射出スリーブ20には、上方に開口した溶融金属の投入口が設けられている。プランジャ33によりプランジャチップ34が図2において左方向に押し出されることにより、前記投入口から射出スリーブ20に給湯された溶融金属がゲート32を通って前記キャビティ32に充填される。
【0024】
図1に示すように、前記射出スリーブ20に溶融金属を供給するための溶融金属電磁ポンプ10は、誘導子を有し、この電磁作用により溶融金属槽11に収納された溶融金属12を前記射出スリーブ20に供給する。図1に示した例では、溶融金属電磁ポンプは、上側の給湯誘導子14と、下側の立上誘導子24との2段の誘導子を有する。
【0025】
ポンプ側ダクト1が斜めに配置され、溶融金属槽11に収納された溶融金属12に前記ポンプ側ダクト1の下端が差し込まれている。ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分の周囲には、磁性体製のヨーク15にコイル16を巻回した上側の給湯誘導子14が配置されている。ヨーク15は、ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分を囲むようにその外周側に嵌め込まれており、このヨーク15に三相コイルを構成するコイル16が巻回されている。この給湯誘導子14には、冷却器23が設けられ、駆動時に冷却される。
【0026】
さらに前記ポンプ側ダクト1には、前記給湯誘導子14より下側の部分の周囲に立上誘導子24が配置されている。この立上誘導子24は、前記の給湯誘導子14と同様に、前記ポンプ側ダクト1の誘導子14より下側の部分の外周に嵌め込まれた磁性体製のヨーク25にコイル26を巻回したものである。この立上誘導子24のコイル26は耐熱性を有する無機絶縁ケーブルにより巻回されている。無機絶縁ケーブルは、ステンレスチューブ等からなるシースの中に導電線を収納し、この導電線とシースとの間にマグネシア粉末等の無機絶縁粉末を充填して絶縁した構造を有する。いわゆるシースケーブルと呼ばれる。このような無機絶縁ケーブルは、耐熱性が高く、800℃の温度にも耐えることが出来る。このため立上用誘導子24は、冷却手段を有しない無冷却としながら、大きな電流を通電するのに適しており、その分だけ給湯誘導子14のコイル16に比べて立上誘導子24のコイル26の巻数は少なくすることが出来る。
【0027】
この立上誘導子24は、耐熱性を有するセラミック等からなる筒状の保護ケース17で囲まれている。この保護ケース17の上端開口部は、上側の給湯誘導子14の下端面に固定されている。また、この保護ケース17の下端の開口部は、前記ポンプ側ダクト1の下端と密に接合されており、この接合部に囲まれた内側は、ポンプ側ダクト1の下端の溶融金属12の導入口18となっている。
【0028】
前記ポンプ側ダクト1の上端には、く字形のエルボ管からなる給湯側ダクト1’がフランジ継手等の継手5、5’を介して密に接続されている。前記保護管3の給湯側ダクト1’に近い一端部の周囲にフランジ6が延設され、このフランジ6の外周に近い部分が前記ポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’とを接続する前記の継手5、5’の間に挟持されている。これにより、保護管3の中のコア2、22がポンプ側ダクト1の中心に位置するよう保持されている。フランジ6には、溶融金属12の通路となる複数の円弧状の通過孔7が設けられている。給湯側ダクト1’は、図示してないバネ等により手前のポンプ側ダクト1に弾力的に押しつけられている。この状態で継手5、5’の間に挿入された耐熱性のガスケットにより継手5、5’の部分のシール性が確保されている。
【0029】
これらポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’は、セラミック等の耐熱性、耐蝕性のある材料で作られており、その外周に設けた保温用のマイクロヒータ等からなるヒータ9、9’により溶融金属12の融点以上の温度に加熱され、溶融金属12の凝固を防ぐ。
溶融金属槽11の中の溶融金属12に液面センサー等のセンサー13が設けられ、これにより溶融金属槽11の中の溶融金属12の液位が検知される。前記立上誘導子24は、このセンサー13で検知される溶融金属12の液面より下に挿入される。
【0030】
給湯側ダクト1’の先端に溶融金属ノズル30が接続されている。この溶融金属ノズル30の下方を向いた先端は、前記射出スリーブ20の溶融金属投入口に差し込まれている。またこの溶融金属ノズル30は緩衝継手28を介して射出スリーブ20に連結されている。射出スリーブ20と緩衝継手28との間には、緩衝シールパッキン35が挿入され、射出スリーブ20と緩衝継手28との緩衝性及び気密性が保持されている。
【0031】
溶融金属ノズル30の上端には、溶融金属液面計19が設けられ、これにより溶融金属ノズル30の先端部分、すなわち溶融金属投入口から射出スリーブ20の中の溶融金属の液面が検知される。またこの部分には、アルゴン等の不活性ガスを噴出するガスノズル27とリークバルブ45とが設けられている。ガスノズル27には、アルゴン等の不活性ガスを貯えた図示してないガスボンベがやはり図示してないバルブ又はインジェクタを介して接続されている。このガスノズル27からは、前述した溶融金属電磁ポンプ10の給湯を停止する時に協働して堰29を越流する流れを切断する為、適時溶融金属ノズル30の先端に向けてガスが噴射される。リークバルブ45は、溶融金属ノズル30内のガスを適時外部に放出するのに使用される。
【0032】
前記給湯側ダクト1’と溶融金属ノズル30との接続部分であって、給湯側ダクト1’の終端部分に堰29が設けられている。この堰29は、給湯側ダクト1’の流路底面が手前の部分より一段高くなるよう隆起した形状を有している。給湯側ダクト1’からはこの堰29を越えて溶融金属ノズル30側に溶融金属が流れ出る。
【0033】
図3と図4は、前記の緩衝継手28を示している。この緩衝継手28は、同一内外径のリング状のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、さらにその外側により大きな内外径のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成している。或いは長尺なパッキン材37をらせん状に密巻きコイル状とし、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成しても良い。何れの場合も隣接するパッキン材37は相互に密に積み重ねて筒状のパッキン部を形成し、これを溶融金属の流路とする。
【0034】
例えば図5(A)に示すように、同一内外径のリング状のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、さらにその外側により大きな内外径のパッキン材37を円筒形となるように複数個積み重ね、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成する。或いは図5(B)に示すように金属線を芯材52として用い、この芯材52に黒鉛51を被覆したパッキン材37をらせん状に密巻きコイル状とし、溶融金属の流路となる筒状のパッキン部を形成しても良い。何れの場合も隣接するパッキン材37は相互に密に積み重ねて筒状のパッキン部を形成し、これを溶融金属の流路とする。
【0035】
芯材52としては、例えば耐熱性、耐蝕性、耐酸化性、耐クリープ性などの高温特性に優れたニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金(商品名「インコネル」)の線材のうち高温バネ性がある物が好適である。これに黒鉛51を被覆し、前述のリング状或いは密巻きコイル状のパッキン材37とする。
【0036】
図4に示されたように、このパッキン材37からなるパッキン部を両側から耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持する。このフランジ36、36は、窒化珪素等の耐熱性及び溶融アルミニウムに対して耐蝕性のあるセラミックで作られている。
【0037】
前記パッキン材37の外側に図6に示すようなステンレス等の薄い金属板からなるベローズ40を被せ、このベローズ40の両端をフランジ押え金具39、39と共に前記フランジ36、36を挟むベローズ押え金具38、38でフランジ36、36に固定している。このベローズ40にマイクロヒータ等を組み込み、ベローズ40の内部のパッキン材37を保温することにより、パッキン部の内側を通る溶融金属の凝固を防止する。
【0038】
射出スリーブ20では、図2に示したプランジャチップ34の摺動に伴い、溶融金属をダイキャストマシン21のキャビティ31に毎回定量ずつ射出する度に振動又は変位し、この振動や変位が給湯側ダクト1’や溶融金属ノズル30に及ぶ。このとき、前記緩衝継手28では、パッキン材37が積み重ねられているため、パッキン材37が相互に摺動して振動や変位を吸収し、その前後の給湯側ダクト1’や溶融金属ノズル30に及ぼす振動や変位を小さくする。これにより、前記射出スリーブ20内でプランジャチップ34が摺動しても、継手部分における溶融金属の漏れ等を未然に防止することが出来る。
【0039】
このようなダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置では、まず立上誘導子24を駆動し、溶融金属槽11の溶融金属12をポンプ側ダクト1に汲み上げ、ポンプ側ダクト1の中の溶融金属を給湯誘導子14の電磁力が作用するレベルまで汲み上げる。その後給湯誘導子14の出力をさらに大きくするとポンプ側ダクト1の中の溶融金属が押し上げられ、溶融金属12が給湯側ダクト1’の中を上昇し、そのレベルが堰29の高さに達する。このレベルは、給湯側ダクト1’を通して溶融金属を射出スリーブ20に充填する直前の状態、すなわち給湯待機状態である。この給湯待機状態で給湯誘導子14の出力を徐々に増大すると共に、立上誘導子24の出力を一定量ずつ減少させ零まで持ってゆき、給湯誘導子14の出力だけでポンプ側ダクト1の溶融金属12のレベルを前述の堰29の高さに維持する。
【0040】
次にこの給湯待機状態のレベルから溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力をさらに増大させ、溶融金属のレベルを給湯待機状態の高さ以上に立上げることにより、溶融金属が堰29を越流し、ノズル30を通って溶融金属が射出スリーブ20に流れ込み、充填される。このとき、ガスノズル27から溶融金属ノズル30の中に不活性ガスを注入し、溶融金属ノズル30の中を不活性ガス雰囲気とする。同時に、溶融金属液面計19により堰29を越流する湯面高さを検知して流量が測定され、所定の給湯量を溶融金属ノズル30の先端部分、すなわち溶融金属投入口から射出スリーブ20の中に溶融金属を給湯する。
【0041】
次に、堰29を越流する湯面の高さを前記溶融金属液面計19により検知して所定の流量になったところで、溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力を下げ、給湯側ダクト1’の中の溶融金属のレベルを堰29の高さに戻す。これにより、給湯側ダクト1’から溶融金属ノズル30側への溶融金属の越流が停止される。同時にガスノズル27から溶融金属ノズル30の中に注入される不活性ガスにより、溶融金属ノズル30の中に残った溶融金属を射出スリーブ20へ送り出され、充填を終了する。
【0042】
その後、図2に示すプランジャチップ34が同図において左方向へ移動し、射出スリーブ20に充填された溶融金属をゲート32を通してダイキャストマシン21の金型のキャビティ31に充填する。この時のプランジャチップ34の動作は、前述した従来のものと同じである。その後、鋳物の成型が行われると共に、図2に示すプランジャチップ34が同図において右に復帰する。
以下、これを繰り返しながら、キャビティ31への溶融金属の充填による鋳造が行われる。
【0043】
なお、溶融金属ノズル30から溶融金属を射出スリーブ20に給湯する際に、溶融金属ノズル30から噴出する溶融金属の流速が速すぎる時は、その反動で射出スリーブ20の壁から溶融金属が溶融金属ノズル30側に跳ね返ってくることがある。そのようなときは、図2に二点鎖線で示すように、溶融金属ノズル30を若干傾斜させ、その先端がゲート32側またはその反対側に向くようにするとよい。
【0044】
次に、図7に示したダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例について説明する。
図1に示した実施例では、溶融金属ノズル30を垂直に立て、その先端を真下に向けて射出スリーブ20に接続した。これに対し、図7に示した実施例では、溶融金属ノズル30を斜めにしている。また、図1に示した実施例では、溶融金属ノズル30に接続される給湯側ダクト1’を水平にして溶融金属ノズル30に接続したが、この図7の実施例では、斜めに設置されたポンプ側ダクト1の延長上に給湯側ダクト1’を接続し、この斜めの湯側ダクト1’に溶融金属ノズル30を直接接続している。湯側ダクト1’と溶融金属ノズル30の底面はそれらの接続部分で最も高くなり、その部分が堰29となる。
【0045】
図7に示した実施例におけるその他の構成は図1〜図3により前述した前記ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の実施例と基本的に同じであり、同じ部分は同じ符合で示している。動作も基本的に同じである。使用している緩衝継手28も、図3〜図6により前述したものと同じである。それらの詳細については、重複するので説明を省略する。
【0046】
次に、図8と図9に示したダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の他の実施例について説明する。
溶融金属電磁ポンプ10のポンプ側ダクト1の上端には、く字形のエルボ管からなる給湯側ダクト1’がフランジ継手等の継手5、5’を介して密に接続されている。この給湯側ダクト1’の中間部分の上部には、フランジ筒30が設けられている。このフランジ筒30の中には、溶融金属液面計19が設けられ、これにより給湯側ダクト1’の溶融金属の液面の高さが検知される。またこのフランジ筒30には、アルゴン等の不活性ガスを噴出するガスノズル27の吹き出し口が配設されている。このガスノズル27には、アルゴン等の不活性ガスを貯えた図示してないガスボンベがやはり図示してないバルブ又はインジェクタを介して接続されている。このガスノズル27からは、供給側ダクト1’の中にガスが噴射される。さらにフランジ筒30には、潤滑剤を噴射する潤滑剤ノズル41の吹き出し口が射出スリーブ20の前記溶融金属供給口42に向けて配設されている。この潤滑剤ノズル41からは、溶融金属供給口42から射出スリーブ20内に向けて潤滑剤が噴射される。
【0047】
給湯側ダクト1’の先端は緩衝継手28を介して射出スリーブ20の側面に設けた溶融金属供給口42に接続されている。給湯側ダクト1’の背後には、バネ受け部材43と反力壁との間にバネ44が挿入され、このバネ44の弾力で給湯側ダクト1’の先端が緩衝継手28を介して射出スリーブ20に押し当てられている。さらに射出スリーブ20と緩衝継手28との間には、緩衝シールパッキン35が挿入され、射出スリーブ20と緩衝継手28との緩衝性及び気密性が保持されている。緩衝継手28の構成は、図3〜図6により前述したものと同じである。
【0048】
前記給湯側ダクト1’が接続された溶融金属供給口42は、図示の例では円形の開口部であるが、その下半分は堰29で遮られている。具体的にはこの堰29は、溶融金属供給口42の下半分が隆起した形状を有している。給湯側ダクト1’からはこの堰29を越えて射出スリーブ20側に溶融金属が流れ込む。
射出スリーブ20の溶融金属供給口42より先端側の上部、すなわちプランジャチップ34の待機位置の上部には、プランジャチップ34に潤滑剤を注入するための潤滑剤注入口43が設けられている。
【0049】
このようなダイキャストスリーブへの溶融金属充填装置では、まず立上誘導子24を駆動し、溶融金属槽11の溶融金属12をポンプ側ダクト1に汲み上げ、ポンプ側ダクト1の中の溶融金属を給湯誘導子14の電磁力が作用するレベルまで汲み上げる。その後給湯誘導子14の出力をさらに大きくするとポンプ側ダクト1の中の溶融金属が押し上げられ、溶融金属12が給湯側ダクト1’の中を上昇し、そのレベルが堰29の高さに達する。このレベルは、給湯側ダクト1’を通して溶融金属を射出スリーブ20に充填する直前の状態、すなわち給湯待機状態である。この給湯待機状態で給湯誘導子14の出力を徐々に増大すると共に、立上誘導子24の出力を一定量ずつ減少させ、給湯誘導子14の出力だけでポンプ側ダクト1の溶融金属12のレベルを前述の堰29の高さに維持する。
【0050】
この給湯側ダクト1’の溶融金属のレベルは、フランジ筒30の中に設けられた溶融金属液面計19により検知され、堰29から越流する流量が測定され、この情報をもとに溶融金属電磁ポンプ10の前述した出力制御が行われる。またフランジ筒30の中に配管されたガスノズル27から給湯側ダクト1’内にアルゴン等の不活性ガスが噴出される。これにより、給湯側ダクト1’内が不活性ガス雰囲気に維持され、その中の溶融金属の酸化が防止される。
【0051】
次にこの給湯待機状態のレベルから溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力をさらに増大させ、溶融金属のレベルを給湯待機状態の高さ以上に立上げることにより、溶融金属が堰29を越流し、射出スリーブ20に流れ込み、給湯される。図8の方式が他の図1,図7と大きく違う所は、射出スリーブ20に直接堰29が付いているため、湯面検知だけでも所定の給湯量が制御出来る事であり、従って前記溶融金属液面計19により検知される給湯側ダクト1’内の溶融金属の液面の高さが所定の高さになったところで、溶融金属電磁ポンプ10の給湯誘導子14の出力を下げ、給湯側ダクト1’の中の溶融金属のレベルを堰29の高さに戻す。これにより、給湯側ダクト1’から溶融金属ノズル30側への溶融金属の越流が停止され、射出スリーブ20に残った余分の溶融金属は堰29を越流して給湯側ダクト1’側へ戻る。これにより射出スリーブ20への溶融金属の給湯が終了する。
【0052】
こうして射出スリーブ20に充填される溶融金属のレベルは、丁度堰29の高さまでとなる。射出スリーブ20へ充填する溶融金属の必要量は、一般的には射出スリーブ20の内容積の1/2程度である。堰29の高さは、この射出スリーブ20への溶融金属の必要充填量に対応するよう設計して設けておく。ただし、堰29を大幅に越流すると射出スリーブから戻る湯が多くなって、その戻り湯の温度は低下していることから、次の給湯に影響するので、戻り湯が少ない適正な給湯が望ましい事は言うまでもない。
【0053】
その後、図9に示すプランジャチップ34が同図において左方向へ移動し、射出スリーブ20に充填された溶融金属をゲート32を通してダイキャストマシン21の金型のキャビティ31に充填する。この時のプランジャチップ34の動作は、前述した従来のものと同じである。その後、鋳物の成型が行われると共に、図9に示すプランジャチップ34が同図において右に復帰する。
【0054】
このようなプランジャチップ34の動作において、そのプランジャチップ34の動きに合わせて、前記フランジ筒30に設けた潤滑剤ノズル41から射出スリーブ20の前記溶融金属供給口42を通過するプランジャチップ34に向けて潤滑剤を噴射することが出来る。プランジャチップ34の射出スリーブ20内での往復移動を円滑にすることが出来る。
【0055】
図8と図9に示した実施例におけるその他の構成は図1〜図3により前述した前記ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置の実施例と基本的に同じであり、同じ部分は同じ符合で示している。使用している緩衝継手28も、図3〜図6により前述したものと同じである。それらの詳細については、重複するので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によるは、ダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置は、ダイキャストマシンの射出スリーブに溶融アルミニウム等の溶融金属を充填するのに使用出来るので、比較的小形の鋳物を多量に生産出来るアルミダイキャスト鋳造等の分野で利用することが出来る。
【符号の説明】
【0057】
1’ 溶融金属電磁ポンプのダクト
10 溶融金属電磁ポンプ
20 射出スリーブ
21 ダイキャストマシン
28 緩衝継手
31 キャビティ
36 フランジ
37 パッキン材
51 黒鉛
52 芯材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイキャストマシン21のキャビティ31内に鋳造用の溶融金属を充填するための射出スリーブ20に溶融金属を充填するダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置において、溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’をダイキャストマシン21の射出スリーブ20に緩衝継手28を介して接続し、この緩衝継手28がパッキン材37を円筒状に積み重ねて溶融金属の通路を囲む搬送路としてのパッキン部を形成し、このパッキン材37により形成される筒状のパッキン部を耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持した継手であることを特徴とするダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項2】
パッキン材37が金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆してなることを特徴とする請求項1に記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項3】
芯材52がニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金の線材からなることを特徴とする請求項2に記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項4】
リング状のパッキン材37を複数個積み重ねて筒状のパッキン部としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項5】
長尺なパッキン材37をらせん状に密巻きして筒状筒状のパッキン部としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項1】
ダイキャストマシン21のキャビティ31内に鋳造用の溶融金属を充填するための射出スリーブ20に溶融金属を充填するダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置において、溶融金属電磁ポンプ10のダクト1’をダイキャストマシン21の射出スリーブ20に緩衝継手28を介して接続し、この緩衝継手28がパッキン材37を円筒状に積み重ねて溶融金属の通路を囲む搬送路としてのパッキン部を形成し、このパッキン材37により形成される筒状のパッキン部を耐熱性を有するセラミックからなる一対の配管接続用のフランジ36、36で挟持した継手であることを特徴とするダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項2】
パッキン材37が金属製のワイヤを芯材52とし、この芯材52に黒鉛51を被覆してなることを特徴とする請求項1に記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項3】
芯材52がニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金の線材からなることを特徴とする請求項2に記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項4】
リング状のパッキン材37を複数個積み重ねて筒状のパッキン部としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【請求項5】
長尺なパッキン材37をらせん状に密巻きして筒状筒状のパッキン部としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイキャストスリーブへの溶融金属給湯装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−223779(P2012−223779A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91699(P2011−91699)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
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