説明

ダイクッション機構の制御装置

【課題】機械特性が変化する場合でもダイクッション機構を高精度で制御する。
【解決手段】ダイクッション機構とスライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、力を指令する力指令手段と、力を検出する力検出手段と、力指令手段が指令した力指令値と力検出手段が検出した力検出値とに基づいてサーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、速度指令作成手段においては、力指令値と力検出値との間の差から定まる力偏差に力ゲインを乗ずることにより速度指令が作成されており、スライドおよびダイクッションの間に作用する力の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて力ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。力の指標は力指令値または力検出値である。力の指標の代わりに、バネ要素の変位量またはダイクッション機構の位置に応じてバネ定数相当量を定めるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイクッション機構の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
曲げ、絞り、打抜き等のプレス加工を行うプレス機械において、加工動作中に、プレス加工に用いる第一の型を支持する可動側の支持部材(一般にスライドと称する)に対し、第二の型を支持する支持部材(一般にボルスタと称する)の側から所用の力(圧力)を加える付属装置として、ダイクッション機構を装備することは知られている。ダイクッション機構は通常、所定の圧力で保持した可動要素(一般にはクッションパッドと称する)に、型閉め方向へ移動中のスライド(または第一の型)を直接または間接に衝突させた後、型閉め(成形)を経て型開きに至るまで、クッションパッドがスライドに力(圧力)を加えながら、スライドと共に移動するように構成されている。この間、例えば、クッションパッドとスライドとの間に被加工素材の加工箇所の周辺領域を挟持することにより、被加工素材の皺の発生を防止することができる。
【0003】
ダイクッション機構を用いたプレス加工の精度を向上させるためには、クッションパッドがスライドと共に移動する間、スライドに対し一定の力(圧力)を安定して加えることが要求される。しかし、従来のダイクッション機構は、油空圧装置を駆動源としているものが多く、スライドの衝突時の外因による急激な圧力変動に応答して、スライドに対する力(圧力)を一定値に制御することが一般に困難であった。そこで、近年、応答性に優れた力制御を可能とすべく、サーボモータを駆動源とするダイクッション機構が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されるダイクッション機構は、プレス機械のスライドの下方に設置されるクッションパッドを、スライドの昇降動作に対応して、サーボモータにより昇降動作させる機構を有する。スライドが下降(すなわち加工動作)する間、サーボモータは、スライドがクッションパッドに衝突力を加えた後は、サーボモータは、クッションパッドの位置に対応させて予め定めた力指令値に基づく力制御により動作して、クッションパッドをスライダと共に移動させながら、クッションパッドからスライダに加わる力(圧力)を調整する。なお、衝突および圧力の検知は、クッションパッドを介してサーボモータの出力軸に加わる負荷を検出することにより行われる。
【特許文献1】特開平10−202327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような従来のサーボモータ駆動によるダイクッション機構においては、制御に用いられる設定ゲインはプレス機械の加工動作において一定であった。
【0006】
しかしながら、ダイクッション機構の機械特性はダイクッション機構とスライドとの間に作用する力(圧力)に応じて変化するので力制御の物理的なゲインは変化する。このため、スライドとダイクッションとの間に作用する力が大きい場合には、物理的なゲインが大きくなり、駆動時に振動が生じやすくなる。一方、スライドとダイクッションとの間に作用する力が小さい場合には、ダイクッション機構の制御性が低下することになる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、機械特性が変化する場合であっても、ダイクッション機構を高精度で制御することのできるダイクッション機構の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じさせる力を指令する力指令手段と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じている力を検出する力検出手段と、前記力指令手段が指令した力指令値と前記力検出手段が検出した力検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、前記速度指令作成手段においては、前記力指令値と前記力検出値との間の差から定まる力偏差に力ゲインを乗ずることにより前記速度指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記スライドおよび前記ダイクッションの間に作用する力の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記力ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0009】
すなわち1番目の発明においては、力の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて力ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。
【0010】
2番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じさせる力を指令する力指令手段と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じている力を検出する力検出手段と、前記力指令手段が指令した力指令値と前記力検出手段が検出した力検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、前記速度指令作成手段においては、前記力指令値と前記力検出値との間の差から定まる力偏差と第一力ゲインとの積に、前記力偏差の積分値と第二力ゲインとの積を加算することにより前記速度指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記スライドおよび前記ダイクッションの間に作用する力の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一力ゲインおよび/または前記第二力ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0011】
すなわち2番目の発明においては、力の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて第一力ゲインおよび/または第二力ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。
【0012】
3番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じさせる力を指令する力指令手段と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じている力を検出する力検出手段と、前記力指令手段が指令した力指令値と前記力検出手段が検出した力検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差に速度ゲインを乗ずることにより前記電流指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記スライドおよび前記ダイクッションの間に作用する力の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0013】
すなわち3番目の発明においては、力の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて速度ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。
【0014】
4番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じさせる力を指令する力指令手段と、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間に生じている力を検出する力検出手段と、前記力指令手段が指令した力指令値と前記力検出手段が検出した力検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差と第一速度ゲインとの積に、前記速度偏差の積分値と第二速度ゲインとの積を加算することにより前記電流指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記スライドおよび前記ダイクッションの間に作用する力の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一速度ゲインおよび/または前記第二速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0015】
すなわち4番目の発明においては、力の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて第一速度ゲインおよび/または第二速度ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。
【0016】
5番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明において、前記力の指標は、前記力指令手段が指令した力指令値である。
すなわち5番目の発明においては、比較的簡易な構成により、力の指標を容易に利用することができる。
【0017】
6番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明において、前記力の指標は、前記力検出手段が検出した力検出値である。
すなわち6番目の発明においては、実際に検出された力検出値を用いているので、より適正に力ゲインまたは速度ゲインを変更することができる。
【0018】
7番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、さらに、時間に応じて前記力ゲインを変更するようにした。
すなわち7番目の発明においては、時間を考慮することにより、さらに適正に力ゲインを変更することができる。
【0019】
8番目の発明によれば、3番目または4番目の発明において、さらに、時間に応じて前記速度ゲインを変更するようにした。
すなわち8番目の発明においては、時間を考慮することにより、さらに適正に速度ゲインを変更することができる。
【0020】
9番目の発明によれば、7番目または8番目の発明において、前記時間は、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の衝突からの時間である。
機械特性の変動はスライドとダイクッション機構との間の衝突後からの時間に応じて変化することが分かっているので、9番目の発明においては、衝突後からの時間を考慮することにより、力ゲインまたは速度ゲインをさらに適正に変更することができる。
【0021】
10番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出値との間の差から定まる位置偏差に位置ゲインを乗ずることにより前記速度指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記位置ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0022】
すなわち10番目の発明においては、バネ要素の変位量から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて位置ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、力検出手段を用いる必要性を排除できる。
【0023】
11番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出値との間の差から定まる位置偏差と第一位置ゲインとの積に、前記位置偏差の積分値と第二位置ゲインとの積を加算することにより前記速度指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一位置ゲインおよび/または第二位置ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0024】
すなわち11番目の発明においては、バネ要素の変位量から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて第一位置ゲインおよび/または第二位置ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、力検出手段を用いる必要性を排除できる。
【0025】
12番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差に速度ゲインを乗ずることにより前記電流指令が作成されており、さらに、前記電流指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0026】
すなわち12番目の発明においては、バネ要素の変位量から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて速度ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、力検出手段を用いる必要性を排除できる。
【0027】
13番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差と第一速度ゲインとの積に、前記速度偏差の積分値と第二速度ゲインとの積を加算することにより前記電流指令が作成されており、さらに、前記電流指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一速度ゲインおよび/または第二速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0028】
すなわち13番目の発明においては、バネ要素の変位量から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて第一速度ゲインおよび/または第二速度ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、力検出手段を用いる必要性を排除できる。
【0029】
14番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出値との間の差から定まる位置偏差に位置ゲインを乗ずることにより前記速度指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション装置に関する位置の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記位置ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0030】
すなわち14番目の発明においては、ダイクッション装置に関する位置の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて位置ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、バネ要素の変位量を検出することなしにゲインを変更することができる。
【0031】
15番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出値との間の差から定まる位置偏差と第一位置ゲインとの積に、前記位置偏差の積分値と第二位置ゲインとの積を加算することにより前記速度指令が作成されており、さらに、前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション装置に関する位置の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一位置ゲインおよび/または第二位置ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0032】
すなわち15番目の発明においては、ダイクッション装置に関する位置の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて第一位置ゲインおよび/または第二位置ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、バネ要素の変位量を検出することなしにゲインを変更することができる。
【0033】
16番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差に速度ゲインを乗ずることにより前記電流指令が作成されており、さらに、前記電流指令作成手段においては、前記ダイクッション装置に関する位置の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0034】
すなわち16番目の発明においては、ダイクッション装置に関する位置の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて速度ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、バネ要素の変位量を検出することなしにゲインを変更することができる。
【0035】
17番目の発明によれば、サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差と第一速度ゲインとの積に、前記速度偏差の積分値と第二速度ゲインとの積を加算することにより前記電流指令が作成されており、さらに、前記電流指令作成手段においては、前記ダイクッション装置に関する位置の指標から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一速度ゲインおよび/または第二速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置が提供される。
【0036】
すなわち17番目の発明においては、ダイクッション装置に関する位置の指標から定まるバネ要素のバネ定数相当量に基づいて第一速度ゲインおよび/または第二速度ゲインを変更しているので、プレス機械の加工動作にわたって応答性を一定に保つことができ、駆動時に機械特性が変化したとしても、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となる。さらに、この場合には、バネ要素の変位量を検出することなしにゲインを変更することができる。
【0037】
18番目の発明によれば、14番目から17番目のいずれかの発明において、前記位置の指標は、前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値である。
19番目の発明によれば、14番目から17番目のいずれかの発明において、前記位置の指標は、前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値である。
20番目の発明によれば、14番目から17番目のいずれかの発明において、前記スライドは前記サーボモータにより駆動するようになっており、さらに、前記スライドの位置を指令するスライド位置指令作成手段を具備し、前記位置の指標は、前記スライド位置指令作成手段により指令された前記スライドの位置指令値である。
21番目の発明によれば、14番目から17番目のいずれかの発明において、前記スライドは前記サーボモータにより駆動するようになっており、さらに、前記スライドの位置を指令するスライド位置指令作成手段と、前記スライドの位置を検出するスライド位置検出手段とを具備し、前記位置の指標は、前記スライド位置検出手段が検出した前記スライドの位置検出値である。
すなわち18番目から21番目の発明においては、比較的簡易な構成により位置の指標を容易に利用することができる。
【0038】
22番目の発明によれば、10番目から11番目または14番目から15番目のいずれかの発明において、さらに、時間に応じて前記位置ゲインを変更するようにした。
すなわち22番目の発明においては、時間を考慮することにより、さらに適正に位置ゲインを変更することができる。
【0039】
23番目の発明によれば、12番目から13番目または16番目から17番目のいずれかの発明において、さらに、時間に応じて前記速度ゲインを変更するようにした。
すなわち23番目の発明においては時間を考慮することにより、さらに適正に速度ゲインを変更することができる。
【0040】
24番目の発明によれば、22番目または23番目の発明において、前記時間は、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の衝突からの時間である。
機械特性の変動はスライドとダイクッション機構との間の衝突後からの時間に応じて変化することが分かっているので、24番目の発明においては、衝突後からの時間を考慮することにより、位置ゲインまたは速度ゲインをさらに適正に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1(a)および図1(b)は本発明に基づく制御装置10を備えたプレス機械のダイクッション機構20の基本構成を示す模式図であり、それぞれプレス機械の開放状態および閉鎖状態を示している。これら図面に示されるように、二つの支持部12がベース11から鉛直方向に延びており、これら支持部12の先端には、平板状のボルスタ15がダンパ13をそれぞれ介して配置されている。これら図面に示されるように、ボルスタ15の下方には、ダイクッション機構20が設けられている。
【0042】
本発明に基づくダイクッション機構20は、ボルスタ15の下面に対して垂直方向に伸縮するバネ要素30と、プレス機械に組み込まれていてスライド24の動作に対応して移動するクッションパッド16と、クッションパッド16を昇降させるサーボモータ18とを含んでいる。図示されるように、バネ要素30の底面はクッションパッド16に保持されている。ここで、バネ要素30は、ゴム等の弾性体、バネまたは油室などを採用することができる。なお、図示されるバネ要素30と例えばクッションパッド16とをまとめて単一のバネ要素30としてもよい。また、バネ要素30の頂面から延びる複数のクッションピン31はボルスタ15の孔を通ってボルスタ15から突出している。被加工素材35はクッションピン31の先端に支持されている。
【0043】
スライド24はプレス加工に用いる第一型26を支持している。そして、スライド24がボルスタ15に支持された第二型27に対し、プレス加工に要求される速度Vで接近又は離反する方向へ移動する。このスライド24がサーボモータ18によって移動する構成であってもよい。
【0044】
クッションパッド16は、第二型27に関連して配置され、ボールねじ装置17を介して、サーボモータ18の出力軸に接続されている。スライド24(又は第一型26)は、型閉め方向へ移動する間に、所定位置に待機していたクッションパッド16に直接又は間接に衝突する。そして通常は、型閉め(成形)を経て型開きに至るまで、クッションパッド16がスライド24に所要の力(圧力)Fを加えながらスライド24と共に移動するように構成されている。
【0045】
このような動作は本発明に基づくプレス機械の制御装置10により行われている。図1(a)および図1(b)を参照しつつ、プレス機械の具体的な動作を説明する。プレス機械の動作時には、スライド24が下降し、第一型26が被加工素材35を介して複数のクッションピン31を押圧する。これにより、バネ要素30が鉛直方向に圧縮され、クッションパッド16が下方に押される。クッションパッド16の下降動作に応じて、サーボモータ18がボルスタ15を同様に下降させるよう回転する。バネ要素30に作用する力(圧力)が大きくなると、クッションピン31がさらに下降し、被加工素材35がスライド24の第一型26とボルスタ15の第二型27との間で把持されてプレス加工される。このとき、ボルスタ15はスライド24によってわずかながら下降する。次いで、スライド24がその下死点に到達すると、スライド24は上昇開始し、他の部材も初期位置まで戻ってプレス加工が終了する。
【0046】
このように、制御装置10はサーボモータ18を制御してクッションパッド16とスライド24との間に相関的な圧力(すなわち力F)を生じさせている。図1(a)および図1(b)から分かるように、この圧力(すなわち力F)を検出する力検出部21は制御装置10に接続されている。同様に、サーボモータ18に設けられたモータ速度検出部22も制御装置10に接続されている。図1(a)および図1(b)に示されるように、バネ要素30の鉛直方向位置を検出することのできる位置検出部25が支持部12に隣接して配置されており、この位置検出部25も制御装置10に接続されている。位置検出部25はダイクッション機構20の鉛直方向位置、特にクッションパッド16の鉛直方向位置を検出すると共に、スライド24の鉛直方向位置も検出することができる。つまり、位置検出部25はダイクッション位置検出部およびスライド位置検出部としての役目を果たしうる。なお、力検出部21は公知の力覚センサを、モータ速度検出部22は公知のエンコーダを、位置検出部25は公知のリニアスケールを、それぞれ採用することができる。また、ダイクッション機構の鉛直方向位置を検出するための専用の位置検出部(図示しない)および、スライド24の鉛直方向位置を検出する専用の位置検出部(図示しない)を別途設けるようにしてもよい。
【0047】
図2は本発明の第一の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す機能ブロック図である。図2に示されるように、第一の実施形態に基づく制御装置10は、ダイクッション機構20に生じさせる力Fを指令する力指令部51と、ダイクッション機構20が生じている力Fを検出する力検出部21と、力指令部51が指令した力指令値C1および力検出部21が検出した力検出値D1からサーボモータ18の速度を作成する速度指令作成部52とを備えて構成される。
【0048】
速度指令作成部52においては、力指令値C1と力検出値D1との間の力偏差Δ1(=C1−D1)を求め、この力偏差Δ1にゲインG0を乗ずることにより速度指令値C2が作成されている。従来技術においてはプレス加工時においてゲインが一定であったので、ダイクッションの機械特性が力に応じて変化する場合には力制御の物理的なゲインが変化して応答性が変化するという不具合があった。これに対し、本発明においては、プレス機械の動作時にゲインG0を変更し、それにより、応答性を一定に維持するようにしている。
【0049】
以下、図2および図3を参照しつつ、本発明の第一の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置によるゲインの算出について説明する。なお、図3に示されるフローチャートのプログラム100、および後述するプログラム120、130、200は制御装置10の図示しない記憶部に予め記憶されているものとする。
【0050】
図3におけるステップ101においては、ダイクッション機構20とスライド24との間に生じる力の指標Fを取込む。本発明において、力の指標Fは、ダイクッション機構20とスライド24との間に生じる力を表する値であり、力指令部51が指令した力指令値C1または力検出部21が検出した力検出値D1が採用される。図2における点線はゲインを算出するのに用いられる力指令値C1および力検出値D1の流れを示しており、これら力指令値C1および力検出値D1のうちの所定のいずれか一方がOR回路58にて選択されて、力の指標Fとして速度指令作成部52に供給される。なお、OR回路58が力指令値C1を選択するように予め設定されている場合には、後述するように比較的簡易な構成により、ゲインを求めることができる。一方、OR回路58が力検出値D1を選択するように予め設定されている場合には、実際の検出値に基づいてゲインをより適正に設定することが可能となる。
【0051】
次いで、取込まれた力の指標Fから、ステップ102においてバネ要素30のバネ定数相当量kを決定する。制御装置10の図示しない記憶部には、力の指標Fとバネ定数相当量kとの関係を示すテーブル(図4(a)を参照されたい)が予め組み入れられている。ここで、バネ定数相当量kとは、スライド24とダイクッション機構20との間に鉛直方向に作用する力をバネ要素30の鉛直方向変位量で除算することにより得られる値である。このようなバネ定数相当量kと力の指標Fとの間の関係を示すテーブルは実験等により予め求められている。バネ要素30とクッションパッド16とをまとめて単一のバネ要素30とする場合には、このようなバネ要素30に対して同様に求められたテーブル(図示しない)が参照されるものとする。ステップ102においては、図4(a)に示されるようなテーブルに基づいて、力の指標Fからバネ定数相当量kが決定される。なお、図4(a)に示されるようなテーブルの代わりに、力の指標Fとバネ定数相当量kとの間の所定の関係式を用いて、バネ定数相当量kを算出するようにしてもよい。
【0052】
次いで、ステップ103に進み、現在の設定ゲインG0(本態様においては力ゲイン)をバネ定数相当量kで除算し、それにより、得られた値を新たな設定ゲインG0とする。すなわち、ステップ103においては、バネ定数相当量kに反比例するようにゲインが設定されるので、プレス機械の動作時に物理的なゲイン(=ゲイン×バネ定数相当量k)は実質的に一定に維持される。
【0053】
その後、ステップ104に進み、新たな設定ゲインG0よりサーボモータ18の速度指令C2(=G0×Δ1)を算出する。そして、図2に示されるように、この速度指令C2をサーボモータ18に出力する。このような制御はプレス機械の動作時に繰り返し行われ、ゲインは一定に維持されるように随時変更される。すなわち、本発明においては、力の指標Fから定まるバネ定数相当量kを用いてゲインを変更しているので、応答性を一定に維持することができ、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となっている。
【0054】
なお、前述した態様においては所謂比例動作に基づいて速度指令C2を算出していたが、他の手法、例えばPI動作に基づいて、速度指令C2を算出するようにしてもよい。
【0055】
以下、PI動作に基づいて速度指令C2を算出する手法について簡単に説明する。この場合にも、はじめに力指令値C1と力検出値D1との間の力偏差Δ1(=C1−D1)を同様に求める。次いで、力偏差Δ1に乗ずべき第一ゲインG1(本態様においては力ゲイン)と、力偏差Δ1の積分値∫Δ1に乗ずべき第二ゲインG2(本態様においては力ゲイン)とを求める。これら第一ゲインG1、第二ゲインG2の求め方は、ゲインG0の場合と同様である。すなわち、図4(a)に示されるテーブルから力の指標Fに対応するバネ定数相当量kを求め、次いで、ステップ103の場合と同様に、現在の第一ゲインG1、第二ゲインG2をバネ定数相当量kでそれぞれ除算し、それにより、得られた値をそれぞれ新たな第一ゲインG1、第二ゲインG2とする。その後、力偏差Δ1と新たな第一ゲインG1との積(G1×Δ1)に、力偏差Δ1の積分値∫Δ1と新たな第二ゲインG2との積(G2×∫Δ1)を加算して、これを速度指令C2(=G1×Δ1+G2×∫Δ1)として出力する。このような場合には、二つのゲインを用いているために、前述した場合よりも高精度での制御が可能となる。
【0056】
図5は本発明の第一の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す他の機能ブロック図である。図5においては、力指令部51で指令された力指令値C1および力検出部21で検出された力検出値D1から、速度指令作成部52において速度指令C2を作成する。図5に示される態様においては速度指令C2は前述した比例動作またはPI動作に基づいて作成されるが、速度指令C2の作成に用いられるゲインG0またはゲインG1、G2は所定の設定値のままであり、バネ定数相当量kによってこれらゲインが変更されないものとする。
【0057】
図5に示される態様においては、作成された速度指令C2は制御装置10の電流指令作成部54に供給される。一方、サーボモータ18に設けられたモータ速度検出部22によってサーボモータ18の回転速度が速度検出値D2として検出され、同様に電流指令作成部54に供給される。
【0058】
電流指令作成部54においては、速度指令値C2と速度検出値D2との間の速度偏差Δ2(=C2−D2)を求め、この速度偏差Δ2にゲインG3(本態様においては速度ゲイン)を乗ずることにより電流指令値C3が作成されている。従来技術においてはプレス加工時においてゲインが一定であったので、ダイクッションの機械特性が力に応じて変化する場合には力制御の物理的なゲインが変化して応答性が変化するという不具合があった。これに対し、本発明においては、プレス機械の動作時にゲインG3を変更し、それにより、応答性を一定に維持するようにしている。
【0059】
ゲインの算出方法は、図3に示されるフローチャートの場合と概ね同様であるので、主に相違点について説明する。ステップ101においては、速度指令値C2および速度検出値D2のうちの所定のいずれか一方がOR回路58にて選択されて、力の指標Fとして電流指令作成部54に供給される。そして、ステップ102において、図4(a)に示されるテーブルまたは所定の関係式を用いてバネ定数相当量kを決定する。
【0060】
次いで、ステップ103において、現在の設定ゲインG3をバネ定数相当量kで除算し、それにより、得られた値を新たな設定ゲインG3とする。その後、ステップ104に進み、新たな設定ゲインG3よりサーボモータ18の電流指令C3(=G3×Δ2)を算出する。そして、図5に示されるように、この電流指令C3をサーボモータ18に出力する。このような制御はプレス機械の動作時に繰り返し行われ、ゲインは一定に維持されるように随時変更される。従って、本実施形態においても、力の指標Fから定まるバネ定数相当量kを用いてゲインを変更しているので、プレス加工時において応答性を一定に維持することができ、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となっている。
【0061】
当然のことながら、PI動作に基づいて電流指令C3を算出するようにしてもよい。この場合にも、はじめに速度指令値C2と速度検出値D2との間の速度偏差Δ2(=C2−D2)を同様に求める。次いで、速度偏差Δ2に乗ずべき第一ゲインG4(本態様においては速度ゲイン)と、速度偏差Δ2の積分値∫Δ2に乗ずべき第二ゲインG5(本態様においては速度ゲイン)とを求める。第一ゲインG4、第二ゲインG5の求め方は、ゲインG0の場合と同様である。すなわち、図4(a)に示されるテーブルから力の指標Fに対応するバネ定数相当量kを求め、次いで、ステップ103の場合と同様に、現在の第一ゲインG4、第二ゲインG5をバネ定数相当量kでそれぞれ除算し、それにより、得られた値をそれぞれ新たな第一ゲインG4、第二ゲインG5とする。その後、速度偏差Δ2と新たな第一ゲインG4との積(G4×Δ2)に、速度偏差Δ2の積分値∫Δ2と新たな第二ゲインG5との積(G5×∫Δ2)を加算して、これを電流指令C3(=G4×Δ2+G5×∫Δ2)として出力する。このような場合にも、二つのゲインを用いているために、前述した場合よりも高精度での制御が可能となるのは明らかである。
【0062】
図6は、本発明の第二の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す機能ブロック図である。図6に示されるように、第二の実施形態に基づく制御装置10は、位置検出部25により検出されたバネ要素30の変位量が所定の変位量になるようにダイクッション機構20の位置、例えばクッションパッド16の位置を指令するダイクッション位置指令部61と、ダイクッション機構20の位置、例えばクッションパッド16の位置を検出するダイクッション位置検出部25と、ダイクッション位置指令部61が指令したダイクッション位置指令値C1’およびダイクッション位置検出部25が検出したダイクッション位置検出値D1’からサーボモータ18の速度を作成する速度指令作成部62とを備えて構成される。
【0063】
速度指令作成部62においては、ダイクッション位置指令値C1’とダイクッション位置検出値D1’との間の位置偏差Δ1’(=C1’−D1’)を求め、この位置偏差Δ1’にゲインG0’(本態様においては位置ゲイン)を乗ずることにより速度指令値C2’が作成されている。従来技術においてはゲインが一定であったので、ダイクッションの機械特性が力に応じて変化する場合には力制御の物理的なゲインが変化して応答性が変化するという不具合があった。これに対し、本発明においては、プレス機械の動作時にゲインG0’を変更し、それにより、応答性を一定に維持するようにしている。
【0064】
以下、図6および図7のプログラム120を参照しつつ、本発明の第二の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置によるゲインの算出について説明する。
【0065】
プログラム120のステップ121においては、ダイクッション位置検出部25により検出されるダイクッション機構20のバネ要素30の変位量を取込む。ここで、図1(a)および図1(b)を参照すると、プレス機械が開放状態にある図1(a)においては、バネ要素30の上端および下端の鉛直方向位置はそれぞれA1、B1で示されている。そして、図1(b)に示されるようにプレス機械が閉鎖すると、バネ要素30は鉛直方向に変位し、その上端および下端の鉛直方向位置はそれぞれA2、B2になる。このような場合には、制御装置10によってバネ要素30の変位量xは、x={(A1−B1)−(A2−B2)}であると算出される。そして、図6から分かるように、この変位量xが速度指令作成部62に供給される。
【0066】
次いで、取込まれた変位量xから、ステップ122においてバネ要素30のバネ定数相当量kを決定する。制御装置10の図示しない記憶部には、図4(a)に示されるテーブルと同様な、変位量xとバネ定数相当量kとの関係を示すテーブル(図4(b)を参照されたい)が予め組み入れられている。ステップ122においては、図4(b)に示されるようなテーブルに基づいて、変位量xからバネ定数相当量kが決定される。なお、図4(b)に示されるようなテーブルの代わりに、変位量xとバネ定数相当量kとの間の所定の関係式を用いて、バネ定数相当量kを算出するようにしてもよい。
【0067】
次いで、ステップ123に進み、現在の設定ゲインG0’をバネ定数相当量kで除算し、それにより、得られた値を新たな設定ゲインG0’とする。すなわち、ステップ123においては、バネ定数相当量kに反比例するようにゲインが設定されるので、プレス機械の動作時に物理的なゲイン(=ゲイン×バネ定数相当量k)は実質的に一定に維持される。
【0068】
その後、ステップ124に進み、新たな設定ゲインG0’よりサーボモータ18の速度指令C2’(=G0’×Δ1’)を算出する。そして、図6に示されるように、この速度指令C2’をサーボモータ18に出力する。このような制御はプレス機械の動作時に繰り返し行われ、ゲインは一定に維持されるように随時変更される。すなわち、本発明においては、変位量xから定まるバネ定数相当量kを用いてゲインを変更しているので、応答性を一定に維持することができ、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となっている。
【0069】
本実施形態においても、PI動作に基づいて、速度指令C2’を算出するようにしてもよい。この場合にも、はじめにダイクッション位置指令値C1’とダイクッション位置D1’との間の位置偏差Δ1’(=C1’−D1’)を同様に求める。次いで、位置偏差Δ1’に乗ずべき第一ゲインG1’(本態様においては位置ゲイン)と、位置偏差Δ1’の積分値∫Δ1’に乗ずべき第二ゲインG2’(本態様においては位置ゲイン)とを求める。第一ゲインG1’、第二ゲインG2’の求め方は、ゲインG0’の場合と同様である。すなわち、図4(b)に示されるテーブルから変位量xに対応するバネ定数相当量kを求め、次いで、ステップ103の場合と同様に、現在の第一ゲインG1’、第二ゲインG2’をバネ定数相当量kでそれぞれ除算し、それにより、得られた値をそれぞれ新たな第一ゲインG1’、第二ゲインG2’とする。その後、位置偏差Δ1’と新たな第一ゲインG1’との積(G1’×Δ1’)に、位置偏差Δ1’の積分値∫Δ1’と新たな第二ゲインG2’との積(G2’×∫Δ1’)を加算して、これを速度指令C2’(=G1’×Δ1’+G2’×∫Δ1’)として出力する。このような場合にも、二つのゲインを用いているために、前述した場合よりも高精度での制御が可能となるのは明らかである。
【0070】
図8は本発明の第二の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す他の機能ブロック図である。図8においては、ダイクッション位置指令部61で指令されたダイクッション位置指令値C1’およびダイクッション位置検出部25で検出されたダイクッション位置検出値D1’から、速度指令作成部62において速度指令C2’を作成する。図8に示される態様においては速度指令C2’は前述した比例動作またはPI動作に基づいて作成されるが、速度指令C2’の作成に用いられるゲインG0’またはゲインG1’、G2’は所定の設定値のままであり、バネ定数相当量kによってこれらゲインが変更されないものとする。
【0071】
図8においては、作成された速度指令C2’は制御装置10の電流指令作成部64に供給される。一方、サーボモータ18に設けられたモータ速度検出部22によってサーボモータ18の回転速度が速度検出値D2’として検出され、同様に電流指令作成部64に供給される。
【0072】
電流指令作成部64においては、速度指令値C2’と速度検出値D2’との間の速度偏差Δ2’(=C2’−D2’)を求め、この速度偏差Δ2’にゲインG3’(本態様においては速度ゲイン)を乗ずることにより電流指令値C3’が作成されている。従来技術においてはゲインが一定であったので、ダイクッションの機械特性が力に応じて変化する場合には力制御の物理的なゲインが変化して応答性が変化するという不具合があった。これに対し、本発明においては、プレス機械の動作時にゲインG3’を変更し、それにより、応答性を一定に維持するようにしている。
【0073】
ゲインの算出方法は、図7に示されるフローチャートの場合と概ね同様であるので、主に相違点について説明する。プログラム120のステップ121において、バネ要素30の変位量xを前述したように算出して取込んだ後で、ステップ122において、図4(b)に示されるテーブルまたは所定の関係式を用いてバネ定数相当量kを決定する。
【0074】
次いで、ステップ123において、現在の設定ゲインG3’をバネ定数相当量kで除算し、それにより、得られた値を新たな設定ゲインG3’とする。その後、ステップ124に進み、新たな設定ゲインG3’よりサーボモータ18の電流指令C3’(=G3’×Δ2’)を算出する。そして、図8に示されるように、この電流指令C3’をサーボモータ18に出力する。このような制御はプレス機械の動作時に繰り返し行われ、ゲインは一定に維持されるように随時変更される。従って、本実施形態においても、変位量xから定まるバネ定数相当量kを用いてゲインを変更しているので、応答性を一定に維持することができ、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となっている。
【0075】
当然のことながら、PI動作に基づいて電流指令C3’を算出するようにしてもよい。この場合にも、はじめに速度指令値C2’と速度検出値D2’との間の速度偏差Δ2’(=C2’−D2’)を同様に求める。次いで、速度偏差Δ2’に乗ずべき第一ゲインG4’(本態様においては速度ゲイン)と、速度偏差Δ2’の積分値∫Δ2’に乗ずべき第二ゲインG5’(本態様においては速度ゲイン)とを求める。第一ゲインG4’、第二ゲインG5’の求め方は、ゲインG0’の場合と同様である。すなわち、図4(b)に示されるテーブルから変位量xに対応するバネ定数相当量kを求め、次いで、ステップ123の場合と同様に、現在の第一ゲインG4’、第二ゲインG5’をバネ定数相当量kでそれぞれ除算し、それにより、得られた値をそれぞれ新たな第一ゲインG4’、第二ゲインG5’とする。その後、速度偏差Δ2’と新たな第一ゲインG4’との積(G4’×Δ2’)に、速度偏差Δ2’の積分値∫Δ2’と新たな第二ゲインG5’との積(G5’×∫Δ2’)を加算して、これを電流指令C3’(=G4’×Δ2’+G5’×∫Δ2’)として出力する。このような場合にも、二つのゲインを用いているために、前述した場合よりも高精度での制御が可能となるのは明らかである。また、図6および図8に示される第二の実施形態においては力検出部21を排除することができるのが明らかであろう。
【0076】
さらに、図9は、本発明の第三の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す機能ブロック図である。図9に示される態様においては、図6に示される場合と同様に、ダイクッション位置指令部61で指令されたダイクッション位置指令値C1’およびダイクッション位置検出部25で検出されたダイクッション位置検出値D1’から、速度指令作成部62において速度指令C2’を作成する。図9に示される態様においては速度指令C2’は前述した比例動作またはPI動作に基づいて作成されるが、速度指令C2’の作成に用いられるゲインG0’またはゲインG1’、G2’は所定の設定値のままであり、バネ定数相当量kによってこれらゲインが変更されないものとする。
【0077】
図9においては、作成された速度指令C2’は制御装置10の電流指令作成部64に供給される。一方、サーボモータ18に設けられたモータ速度検出部22によってサーボモータ18の回転速度が速度検出値D2’として検出され、同様に電流指令作成部64に供給される。
【0078】
電流指令作成部64においては、速度指令値C2’と速度検出値D2’との間の速度偏差Δ2’(=C2’−D2’)を求め、この速度偏差Δ2’にゲインG3’(本態様においては速度ゲイン)を乗ずることにより電流指令値C3’が同様に作成されている。
【0079】
第三の実施形態におけるゲインの算出方法を、図10のプログラム130を参照しつつ説明する。図10におけるプログラム130のステップ131においては、ダイクッション機構20に関する位置の指標Hを取込む。本発明において、位置の指標Hは、プレス機械の動作時におけるダイクッション機構20の少なくとも一部分(例えばクッションパッド16)の位置を表する値であり、例えばダイクッション位置指令部61により指令されるダイクッション位置指令値C1’またはダイクッション位置検出部25により検出されるダイクッション位置検出値D1’である。また、スライド24がサーボモータ18によって駆動される場合には、プレス機械の閉鎖時においてスライド位置指令作成部63により指令されるスライド24のスライド位置指令値C4、またはスライド位置検出部25により検出されるスライド24のスライド位置検出値D4を位置の指標Hとして採用するようにしてもよい。
【0080】
図9における点線はゲインを算出するのに用いられるダイクッション位置指令値C1’、ダイクッション位置検出値D1’、スライド位置指令値C4およびスライド位置検出値D4の流れを示しており、これらのうちの所定の一つがOR回路68にて選択されて、位置の指標Hとして電流指令作成部64に供給される。なお、OR回路68がダイクッション位置指令値C1’またはスライド位置指令値C4を選択するように予め設定されている場合には、後述するように比較的簡易な構成により、ゲインを求めることができる。一方、OR回路68がダイクッション位置検出値D1’またはスライド位置検出値D4を選択するように予め設定されている場合には、実際の検出値に基づいてゲインをより適正に設定することが可能となる。
【0081】
次いで、取込まれた位置の指標Hから、ステップ132においてバネ要素30のバネ定数相当量kを決定する。前述したのと同様に、制御装置10の図示しない記憶部には、図4(a)に示されるテーブルと同様な、位置の指標Hとバネ定数相当量kとの関係を示すテーブル(図4(c)を参照されたい)が予め組み入れられている。ステップ132においては、図4(c)に示されるようなテーブルに基づいて、位置の指標Hからバネ定数相当量kが決定される。なお、図4(c)に示されるようなテーブルの代わりに、位置の指標Hとバネ定数相当量kとの間の所定の関係式を用いて、バネ定数相当量kを算出するようにしてもよい。
【0082】
次いで、ステップ133において、現在の設定ゲインG3’をバネ定数相当量kで除算し、それにより、得られた値を新たな設定ゲインG3’とする。その後、ステップ134に進み、新たな設定ゲインG3’よりサーボモータ18の電流指令C3’(=G3’×Δ2’)を算出する。そして、図9に示されるように、この電流指令C3’をサーボモータ18に出力する。このような制御はプレス機械の動作時に繰り返し行われ、ゲインは一定に維持されるように随時変更される。従って、本実施形態においても、位置の指標Hから定まるバネ定数相当量kを用いてゲインを変更しているので、応答性を一定に維持することができ、ダイクッション機構を高精度で制御することが可能となっている。また、図9に示される第三の実施形態においては、バネ要素30の変位量を検出することなしにゲインを変更することが可能となっている。なお、当然のことながら、前述した実施形態と同様に、PI動作に基づいて電流指令C3’を算出するようにしてもよい。
【0083】
ところで、図2、図5、図6、図8および図9には、速度指令作成部52、62または電流指令作成部54、64に接続されたカウンタ59またはカウンタ69が示されている。これらカウンタ59、69はプレス機械の作動開始からの経過時間、特にスライド24とクッションパッド16との衝突開始からの経過時間を記録する。図11には、スライド24とクッションパッド16との衝突開始からの経過時間を記録するためのカウンタ59、69の動作が示されている。図11のフローチャートとして示されるプログラム200から分かるように、これらカウンタ59、69は、スライド24とクッションパッド16とが衝突開始すると(ステップ201)、カウントを開始するようになる(ステップ202)。
【0084】
このプログラム200は、前述したプログラム100、120、130に割込可能になっている。具体的には、プログラム200はプログラム100、120、130のそれぞれの最初のステップ101、121、131より前に割込み、衝突が生じた場合にはその経過時間をカウントする。そして、衝突が生じた場合には各プログラムにおいてバネ定数相当量kを決定する際(ステップ102、122、132)に、カウント値CNTを考慮したテーブル(マップ)を使用することができる。
【0085】
図12(a)から図12(c)はバネ定数相当量kのマップを示す図であり、それぞれプログラム100、120、130において使用されるマップを示している。これら図面から分かるように、バネ定数相当量kは力の指標F(または変位量x、位置の指標H)とカウンタ59、69のカウント値CNTとの関数として実験等により予め求められ、マップの形で制御装置10の記憶部(図示しない)に記憶されている。機械特性の変動はスライドとダイクッション機構との間の衝突後からの時間に応じて変化することが分かっているので、本態様においては衝突後からの時間を考慮することにより、バネ定数相当量kをより適正に求めることができ、従って、ゲインをさらに適正に変更することができる。
【0086】
なお、スライド24とクッションパッド16とが衝突してからのカウント値CNTの代わりに、プレス機械が動作してからのカウント値CNTを用いるようにしてもよく、この場合にも前述したのと概ね同様な効果を得ることができる。
【0087】
また、図面には示さないものの、プログラム100、120、130のステップ101、121、131においてそれぞれ力の指標F、変位量xおよび位置の指標Hを取込む代わりに、カウンタ59、69のカウント値CNTを取込むようにし、次いでカウント値CNTとバネ定数相当量kとからなる図4(a)に示されるようなテーブル(図示しない)から、バネ定数相当量kを決定するようにしてもよい。
【0088】
以上、本発明のいくつかの好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載範囲内において様々な修正を施すことができる。例えばPI動作に基づいて速度指令値C2、C2’または電流指令C3、C3’を作成する際に、第一ゲインおよび第二ゲインのうちの一方のみを変更するようにしてもよい。また、電流指令C3を作成する実施形態において、ゲインの変更を速度指令値C2作成時および電流指令C3作成時の両方に対して行うようにしてもよい。さらに、前述した態様のいくつかを適宜組み合わせることが本発明の範囲に含まれるのは当業者であれば明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】(a)本発明に基づく制御装置を備えたプレス機械のダイクッション機構の基本構成を示す模式図であり、開放状態を示している。(b)本発明に基づく制御装置を備えたプレス機械のダイクッション機構の基本構成を示す模式図であり、閉鎖状態を示している。
【図2】本発明の第一の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置によるゲインを求めるためのフローチャートである。
【図4】(a)力の指標Fとバネ定数相当量kとの関係を示す図である。(b)変位量xとバネ定数相当量kとの関係を示す図である。(c)位置の指標Hとバネ定数相当量kとの関係を示す図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す他の機能ブロック図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置によるゲインを求めるためのフローチャートである。
【図8】本発明の第二の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す他の機能ブロック図である。
【図9】本発明の第三の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置を示す機能ブロック図である。
【図10】本発明の第三の実施形態に基づくダイクッション機構の制御装置によるゲインを求めるためのフローチャートである。
【図11】カウンタの使用を説明するためのフローチャートである。
【図12】(a)バネ定数相当量kのマップを示す図である。(b)バネ定数相当量kのマップを示す他の図である。(c)バネ定数相当量kのマップを示すさらに他の図である。
【符号の説明】
【0090】
10 制御装置
11 ベース
12 支持部
13 ダンパ
15 ボルスタ
16 クッションパッド
17 ボールねじ装置
18 サーボモータ
20 ダイクッション機構
21 力検出部
22 モータ速度検出部
24 スライド
25 位置検出部(変位量検出手段、ダイクッション位置検出部、スライド位置検出部)
30 バネ要素
31 クッションピン
35 被加工素材
51 力指令部
52、62 速度指令作成部
54、64 電流指令作成部
58、68 OR回路
59、69 カウンタ
61 ダイクッション位置指令部
62 速度指令作成部
63 スライド位置指令作成部
64 電流指令作成部
C1 力指令値
C1’ ダイクッション位置指令値
C2、C2’ 速度指令値
C3、C3’ 電流指令
C4 スライド位置指令値
D1 力検出値
D1’ ダイクッション位置検出値
D2 速度検出値
D2’ 速度検出値
D4 スライド位置検出値
G0、G1、G2 力ゲイン
G0’、G1’、G2’ 位置ゲイン
G3、G4、G5 速度ゲイン
G3’、G4’、G5’ 速度ゲイン
F 力の指標
H 位置の指標
k バネ定数相当量
x バネ要素の変位量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、
前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、
前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、
前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、
前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、
前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出値との間の差から定まる位置偏差に位置ゲインを乗ずることにより前記速度指令が作成されており、
さらに、前記速度指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記位置ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置。
【請求項2】
サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、
前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、
前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、
前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、
前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段とを具備し、
前記速度指令作成手段においては、前記ダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出値との間の差から定まる位置偏差と第一位置ゲインとの積に、前記位置偏差の積分値と第二位置ゲインとの積を加算することにより前記速度指令が作成されており、
さらに、前記速度指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一位置ゲインおよび/または第二位置ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置。
【請求項3】
サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、
前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、
前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、
前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、
前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、
前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、
前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、
前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差に速度ゲインを乗ずることにより前記電流指令が作成されており、
さらに、前記電流指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置。
【請求項4】
サーボモータを駆動源としてプレス機械のスライドに対して力を生ずるダイクッション機構の制御装置であって、
前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の力に応じて変位するバネ要素と、
前記バネ要素の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量が所定の変位量になるように前記ダイクッション機構の位置を指令するダイクッション位置指令手段と、
前記ダイクッション機構の位置を検出するダイクッション位置検出手段と、
前記ダイクッション位置指令手段が指令したダイクッション位置指令値と前記ダイクッション位置検出手段が検出したダイクッション位置検出値とに基づいて前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令作成手段と、
前記サーボモータの速度を検出する速度検出手段と、
前記速度指令手段が指令した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値とに基づいて前記サーボモータの電流指令を作成する電流指令作成手段とを具備し、
前記電流指令作成手段においては、前記速度指令値と前記速度検出値との間の差から定まる速度偏差と第一速度ゲインとの積に、前記速度偏差の積分値と第二速度ゲインとの積を加算することにより前記電流指令が作成されており、
さらに、前記電流指令作成手段においては、前記変位量検出手段により検出された前記バネ要素の変位量から定まる前記バネ要素のバネ定数相当量に基づいて前記第一速度ゲインおよび/または第二速度ゲインを変更するようにしたダイクッション機構の制御装置。
【請求項5】
さらに、時間に応じて前記位置ゲインを変更するようにした請求項1、2に記載のダイクッション機構の制御装置。
【請求項6】
さらに、時間に応じて前記速度ゲインを変更するようにした請求項3、4に記載のダイクッション機構の制御装置。
【請求項7】
前記時間は、前記ダイクッション機構と前記スライドとの間の衝突からの時間である請求項5または6に記載のダイクッション機構の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−87073(P2008−87073A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331929(P2007−331929)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2005−150574(P2005−150574)の分割
【原出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】