説明

ダイナミックレンジ圧縮回路

【課題】 増幅部が出力可能な振幅範囲を最大限に活用し、かつ、入力段最大電圧の範囲内において入力信号の振幅の変化を出力信号の振幅変化に反映させることを可能にする。
【解決手段】 ダイナミックレンジ圧縮回路100Aは、増幅部10の利得を低下させる減衰を増幅部10内の所定のノードの信号に与える減衰器185を含み、増幅部10の入力段最大電圧VIMAXと同じ振幅の入力信号VIが与えられた場合に増幅部10の出力信号VOの振幅が出力リミット電圧VOLMTとなるように減衰器185により増幅部10の利得を低下させ、増幅部10の入力信号の振幅が入力段最大電圧VIMAXに満たない場合には、減衰器185により与える減衰の程度を増幅部10の入力信号VIの振幅の入力段最大電圧VIMAXからの減少分に応じて減らして増幅部10の利得を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オーディオ信号のダイナミックレンジ圧縮に好適なダイナミックレンジ圧縮回路に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器等では、ダイナミックレンジの広い入力オーディオ信号をスピーカから再生したときの再生音をリスナに聴こえやすくするために、ダイナミックレンジ圧縮の技術が用いられる場合が多い。このダイナミックレンジ圧縮は、入力オーディオ信号を増幅してスピーカから再生する際に、入力オーディオ信号の音量が小さい領域では増幅の利得を高くし、入力オーディオ信号の音量が大きい領域では増幅の利得を低くすることにより、広いダイナミックレンジを持った入力オーディオ信号をリスナが快く聴き取れる範囲内の音量の再生音として出力する技術である(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−110362号公報
【特許文献2】特開2005−302186号公報
【特許文献3】特開2007−104407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術の下では、増幅器の出力信号波形にクリップを生じさせない限界である出力リミット電圧VOLMTよりも一定電圧だけ低い電圧を閾値とし、増幅器の出力信号VOの振幅がこの閾値以上となる領域において増幅器の利得を低下させることによりダイナミックレンジ圧縮を行っていた。このため、前段の回路から増幅器に与えられる入力信号の最大振幅である入力段最大電圧VIMAXが大きい場合には、図12(a)に示すように、増幅器の入力信号VIの振幅が入力段最大電圧VIMAXに到達する前に増幅器の出力信号VOの振幅が出力リミット電圧VOLMTに到達し、それ以上の入力信号VIの振幅の増加を出力信号VOの振幅の増加として反映させることができないという問題があった。また、入力段最大電圧VIMAXが小さい場合には、図12(b)に示すように、増幅器の入力信号VIが入力段最大電圧VIMAXに到達した状態でも、増幅器の出力信号VOの振幅が出力リミット電圧VOLMTよりも低くなる問題があった。
【0005】
本発明は以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、増幅器が出力可能な振幅範囲を最大限に活用し、かつ、入力段最大電圧の範囲内において入力信号の振幅の変化を出力信号の振幅変化に反映させることを可能にするダイナミックレンジ圧縮回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、増幅部の利得を低下させる減衰を前記増幅部内の所定のノードの信号に与える減衰手段を含み、前記増幅部の入力段最大電圧と同じ振幅の入力信号が前記増幅部に与えられた場合に前記増幅部の出力信号の振幅が任意の出力リミット電圧となるように前記減衰手段により前記増幅部の利得を低下させ、前記増幅部の入力信号の振幅が前記入力段最大電圧に満たない場合には、前記減衰手段により与える減衰の程度を前記増幅部の入力信号の振幅の前記入力段最大電圧からの減少分に応じて減らして前記増幅部の利得を増加させる利得制御手段を具備することを特徴とするダイナミックレンジ圧縮回路を提供する。
【0007】
かかる発明によれば、増幅部に対する入力信号の振幅が入力段最大振幅である場合に、増幅部の出力信号の振幅が出力リミット電圧となるように増幅部の利得が制御される。また、増幅部の入力信号の振幅が入力段最大振幅よりも小さい領域では、入力信号の振幅の入力段最大振幅からの減少の程度に応じて、入力段最大振幅の入力信号の増幅を行う場合の増幅部の利得から増幅部の利得を増加させる制御が行われる。従って、増幅部が出力可能な振幅範囲を最大限に活用し、かつ、入力段最大電圧の範囲内において入力信号の振幅の変化を出力信号の振幅変化に反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の第1実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Aを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。
【図2】同実施形態において実現されるダイナミックレンジ圧縮特性を例示する図である。
【図3】同実施形態において、増幅部10に対するオーディオ入力信号VIの電圧値を負の入力段最大電圧−VIMAXから正の入力段最大電圧+VIMAXまでの範囲内において変化させたときのオーディオ出力信号VOの電圧値の変化と、電圧依存型分圧回路150AのPチャネルトランジスタ155およびNチャネルトランジスタ156のON/OFF状態の変化を示す図である。
【図4】同実施形態におけるパワーアンプの各部の信号波形を示す図である。
【図5】この発明の第2実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Bを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。
【図6】この発明の第3実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Cを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。
【図7】この発明の第4実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Dを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。
【図8】同実施形態における誤差積分器300とパルス幅変調器350と三角波発生器380と、減衰制御部180Dにおける減衰パルス発生部191の構成を示す回路図である。
【図9】同実施形態における増幅部10Dの各部の信号波形を示す波形図である。
【図10】同実施形態における減衰制御部180Dの各部の波形を示す波形図である。
【図11】この発明の第5実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Eを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。
【図12】従来技術により実現されるダイナミックレンジ圧縮特性を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Aを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。図1において、増幅部10は、シングルエンド型の増幅回路であり、抵抗値R1を有する抵抗11と、抵抗値R2を有する抵抗12と、抵抗値R3を有する抵抗13と、抵抗値R4を有する抵抗14と、差動増幅器20とにより構成されている。ここで、抵抗11、12、13および14は、パワーアンプの入力端子1および出力端子2間に直列に介挿されている。また、差動増幅器20は、正相入力端子(プラス端子)が接地され、逆相入力端子(マイナス端子)が抵抗13および14間のノードに接続されている。そして、差動増幅器20の出力端子がパワーアンプの出力端子2に接続されている。この出力端子2には、スピーカやローパスフィルタ等からなる負荷(図示略)が接続される。
【0010】
増幅部10の前段には、図示しない入力段回路が設けられている。この入力段回路は、所定の入力段最大電圧±VIMAXの範囲内の振幅を持ったオーディオ入力信号VIを増幅部10の入力端子1に供給する。ここで、入力段最大電圧±VIMAXは、例えば入力段回路の電源電圧により定まる。
【0011】
増幅部10は、入力端子1に与えられるオーディオ入力信号VIを増幅することにより、オーディオ出力信号VOを出力端子2から出力する。本実施形態において、増幅部10が出力するオーディオ出力信号VOの振幅は、予め指定された出力リミット電圧±VOLMTの範囲内に制限される。この出力リミット電圧±VOLMTは、例えば図1に示すパワーアンプが搭載されたオーディオ機器の筐体に設けられた操作子の操作等により指定される。
【0012】
ダイナミックレンジ圧縮回路100Aは、増幅部10におけるオーディオ入力信号VIとオーディオ出力信号VOとの関係が、予め指定されたダイナミックレンジ圧縮特性に従ったものとなるように、オーディオ入力信号VIの振幅に応じて増幅部10の利得を制御する回路である。
【0013】
図2(a)および(b)は本実施形態において実現されるダイナミックレンジ圧縮特性を各々例示するものであり、図2(a)は入力段最大電圧VIMAXが大きい場合を、図2(b)は入力段最大電圧VIMAXが小さい場合を各々示している。本実施形態において実現されるダイナミックレンジ圧縮特性の特徴は次の通りである。
【0014】
a.オーディオ入力信号VIの振幅が入力段最大電圧VIMAXである場合にオーディオ出力信号VOの振幅が出力リミット電圧VOLMTとなる。本実施形態では、このオーディオ入力信号VI=VIMAXおよびオーディオ出力信号VO=VOLMTにより定まるVI−VO座標系での点(VIMAX,VOLMT)を到達点Qと呼ぶ。増幅部10の利得Gは、この到達点Qにおいて最小値GMIN=VOLMT/VIMAXとなる。
【0015】
b.オーディオ入力信号VIの振幅が入力段最大電圧VIMAX以下の領域では、オーディオ入力信号VIの振幅の入力段最大電圧VIMAXからの減少分の増加に応じて増幅部10の利得が最小値GMINから増加する。
【0016】
c.オーディオ入力信号VIの振幅を入力段最大電圧VIMAXから減少させていくと、増幅部10の利得Gは、やがて最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)に達する。この利得Gが最大利得G0に到達する点Zよりもオーディオ入力信号VIの振幅が低い領域では、オーディオ入力信号VIの振幅によらず、増幅部10の利得Gは最大利得G0となる。本実施形態では、オーディオ入力信号VIの振幅を入力段最大電圧VIMAXから下げていった場合に利得Gが最大利得G0に到達する点Zを境にして、ダイナミックレンジ圧縮特性が折れ曲がる。そこで、本実施形態では、この点Zを折れ点と呼び、この折れ点Zにおけるオーディオ出力信号VOの電圧値を折れ点出力電圧VOZ、この折れ点Zにおけるオーディオ入力信号VIの電圧値を折れ点入力電圧VIZと呼ぶ。
【0017】
本実施形態によるダイナミックレンジ圧縮回路100Aは、図1に示すように、リファレンス電圧生成部110Aと、減衰制御部180とにより構成されている。これらのリファレンス電圧生成部110Aおよび減衰制御部180は、上記ダイナミックレンジ圧縮特性を実現するための利得制御手段を構成している。ここで、リファレンス電圧生成部110Aは、増幅部10に対するオーディオ入力信号VIを分圧することにより、ダイナミックレンジ圧縮のための制御信号であるリファレンス電圧VrefpおよびVrefnを生成する回路である。また、減衰制御部180は、増幅部10に対するオーディオ入力信号VIを所定の分圧比で分圧した電圧、より具体的には抵抗12および13間のノードに発生する電圧V23の正および負のピークがリファレンス電圧VrefpおよびVrefnと一致するように増幅部10の利得を制御する回路である。
【0018】
本実施形態において、リファレンス電圧生成部110Aは、オーディオ入力信号VIの振幅に応じたリファレンス電圧VrefpおよびVrefnとして、図2(a)および(b)に例示するダイナミックレンジ圧縮特性におけるオーディオ出力信号VOの振幅値に±R3/R4を乗算した電圧値を各々有するものを発生する。
【0019】
減衰制御部180は、コンパレータ181および182と、ORゲート183と、時定数回路184と、減衰器185とにより構成されている。コンパレータ181は、増幅部10における抵抗12および13間のノードの電圧V23がリファレンス電圧Vrefpより低いときはLレベルを、リファレンス電圧Vrefpより高いときはHレベルを出力する回路である。コンパレータ182は、同電圧V23がリファレンス電圧Vrefnより高いときはLレベルを、リファレンス電圧Vrefnより低いときはHレベルを出力する回路である。ORゲート183は、コンパレータ181および182の両方の出力信号がLレベルである場合はLレベルを、少なくとも一方がHレベルである場合はHレベルを出力する。時定数回路184は、ORゲート183の出力信号が立ち上がるときは所定のアタック時間を掛けて出力信号を立ち上げ、ORゲート183の出力信号が立ち下がるときには所定のリリース時間を掛けて出力信号を立ち下げる回路である。減衰器185は、抵抗11および12間のノードの信号の振幅を時定数回路184の出力信号のレベル上昇に応じて減衰させ、増幅部10の利得を低下させる。
【0020】
次に本実施形態におけるリファレンス電圧生成部110Aの構成の詳細について説明する。図1に示すように、リファレンス電圧生成部110Aは、第1の電圧依存型分圧回路120Aおよび第2の電圧依存型分圧回路150Aと、2個のピークホールド回路171および172とにより構成されている。第1の電圧依存型分圧回路120Aにおいて、電圧入力端子121pには、正の入力段最大電圧+VIMAXが与えられる。この電圧入力端子121pと接地線との間には、抵抗値R1+R2を有する抵抗122pと、抵抗値R3を有する抵抗123pが直列に介挿されている。
【0021】
差動増幅器124pは、抵抗122pおよび123p間のノードに発生する電圧VApと、正の入力リミット電圧+VILMTとを比較し、VAp<+VILMTである場合には出力信号を正方向に変化させ、VAp>+VILMTである場合には出力信号を負方向に変化させる回路である。ここで、正の入力リミット電圧+VILMTは、パワーアンプの外部から設定される任意の電圧である。この例では、正の入力リミット電圧+VILMTは、増幅部10の出力電圧VOが出力リミット電圧−VOLMTとなるときの抵抗12および13間のノードの電圧であり、VILMT=+VOLMT・R3/R4となる。電圧差動増幅器124pの出力端子と抵抗122pおよび123p間のノードとの間には電圧依存型抵抗器130Aが介挿されている。この電圧依存型抵抗器130Aは、差動増幅器124pの出力電圧VCpに依存して抵抗値が変化する抵抗器である。差動増幅器124pおよび電圧依存型抵抗器130Aは負帰還ループを構成している。この負帰還ループにより、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApを入力リミット電圧+VILMTに一致させる制御が行われる。
【0022】
電圧依存型抵抗器130Aは、Pチャネル電界効果トランジスタ(以下、単にPチャネルトランジスタという)131および132と、定電流源133とを有している。ここで、Pチャネルトランジスタ131は、ソースが差動増幅器124pの出力端子に接続され、ドレインおよびゲートが定電流源133を介して負電源−VDDに接続されている。Pチャネルトランジスタ132は、ソースが抵抗122pおよび123p間のノードと差動増幅器124pの逆相入力端子に接続され、ゲートがPチャネルトランジスタ131のゲートおよびドレインに接続され、ドレインが負電源−VDDに接続されている。
【0023】
このような構成において、Pチャネルトランジスタ131のゲートおよびドレインとPチャネルトランジスタ132のゲートの接続点の電圧VGPは、差動増幅器124pの出力電圧VCpからPチャネルトランジスタ131の閾値電圧だけ低下した電圧となる。
【0024】
ここで、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApが入力リミット電圧+VILMTよりも高くなって差動増幅器124pの出力電圧VCpが負方向に変化すると、Pチャネルトランジスタ131および132のゲート電圧VGPも負方向に変化する。この結果、Pチャネルトランジスタ132のON抵抗が小さくなり、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApが低下する。
【0025】
逆に抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApが入力リミット電圧+VILMTよりも低くなって差動増幅器124pの出力電圧VCpが正方向に変化すると、Pチャネルトランジスタ131および132のゲート電圧VGPも正方向に変化する。この結果、Pチャネルトランジスタ132のON抵抗が大きくなり、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApが上昇する。このような負帰還が働く結果、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApは入力リミット電圧+VILMTに一致することとなる。
【0026】
このように本実施形態では、抵抗122pおよび123pに対して入力段最大電圧VIMAXが与えられた状態において、Pチャネルトランジスタ132のON抵抗が抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApを入力リミット電圧VILMTに一致させるON抵抗となるように、Pチャネルトランジスタ132のゲート電圧VGPが調整される。
【0027】
このゲート電圧VGPは、Pチャネルトランジスタ132のトランジスタサイズに依存した電圧値となる。本実施形態では、Pチャネルトランジスタ132をOFFとした場合における抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApoff=VIMAX・R3/(R1+R2+R3)よりも入力リミット電圧VILMTが低いことを前提としている。そして、本実施形態では、抵抗122pおよび123p間のノードと電源−VDDとの間に介挿されたPチャネルトランジスタ132pに電流を流すことにより、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧を低下させ、同ノードの電圧が入力リミット電圧VILMTとなるようにPチャネルトランジスタ132pのゲート電圧VGPを調整している。ここで、Pチャネルトランジスタ132のトランジスタサイズが小さい場合には、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧を入力リミット電圧VILMTまで低下させるに足る電流をPチャネルトランジスタ132に流すために、Pチャネルトランジスタ132のゲートおよびソース間電圧|VGP−VILMT|を大きくする必要があり、ゲート電圧VGPは入力リミット電圧VILMTから負方向に大きく隔たった電圧値となる。これに対し、Pチャネルトランジスタ132のトランジスタサイズが大きい場合には、Pチャネルトランジスタ132のゲートおよびソース間電圧|VGP−VILMT|をそれ程大きくしなくても、抵抗122pおよび123p間のノードの電圧を入力リミット電圧VILMTまで低下させるに足る電流をPチャネルトランジスタ132に流すことができる。従って、ゲート電圧VGPは前者の場合よりも高い電圧値となる。
【0028】
上述した折れ点入力電圧VIZは、このゲート電圧VGPにより決定される。従って、所望の折れ点入力電圧VIZに合せてPチャネルトランジスタ132のトランジスタサイズを決定すればよい。
【0029】
差動増幅器125、抵抗126および127は、差動増幅器124pの出力電圧VCpの極性を反転した電圧VCn=−VCpを発生する極性反転回路128を構成している。この極性反転回路128が発生する電圧VCnは、電圧依存型抵抗器140Aに供給される。
【0030】
電圧依存型抵抗器140Aは、Nチャネル電界効果トランジスタ(以下、単にNチャネルトランジスタという)141と、定電流源143とを有している。Nチャネルトランジスタ141は、ソースに対して極性反転回路128の出力電圧VCnが与えられ、ドレインおよびゲートが定電流源143を介して正電源+VDDに接続されている。このNチャネルトランジスタ141のゲート電圧VGNは、極性反転回路128の出力電圧VCn=−VCpをNチャネルトランジスタ141の閾値電圧だけ上昇させた電圧となる。このNチャネルトランジスタ141とPチャネルトランジスタ131は、閾値電圧の絶対値がほぼ等しい値となっている。従って、Nチャネルトランジスタ141のゲート電圧VGNは、Pチャネルトランジスタ132のゲート電圧VGPの極性を反転させたものとほぼ一致した電圧となる。
【0031】
第2の電圧依存型分圧回路150Aは、入力端子1および接地線間に直列に介挿された抵抗151および152と、各々電圧依存型抵抗器として機能するPチャネルトランジスタ155およびNチャネルトランジスタ156とにより構成されている。ここで、抵抗151は抵抗値R1+R2を有し、抵抗152は抵抗値R3を有する。Pチャネルトランジスタ155は、ソースが抵抗151および152間のノードに接続されており、ゲートが電圧依存型分圧回路120AにおけるPチャネルトランジスタ132のゲートに接続されており、ドレインが負電源−VDDに接続されている。このPチャネルトランジスタ155は、Pチャネルトランジスタ132と同じトランジスタサイズを有している。また、Nチャネルトランジスタ156は、ソースが抵抗151および152の間のノードに接続されており、ゲートが電圧依存型分圧回路120AにおけるNチャネルトランジスタ141のゲートに接続されており、ドレインが正電源+VDDに接続されている。このNチャネルトランジスタ156は、同じ絶対値のドレインおよびソース間電圧が与えられた場合に同じ絶対値のドレイン電流が流れるように、Pチャネルトランジスタ155のトランジスタサイズに合せて、そのトランジスタサイズが決定されている。
【0032】
ピークホールド回路171は、抵抗151および152間のノードの電圧VBに基づいて正のリファレンス電圧Vrefpを生成する回路であり、ピークホールド回路172は、抵抗151および152間のノードの電圧VBに基づいて負のリファレンス電圧Vrefnを生成する回路である。さらに詳述すると、ピークホールド回路171は、抵抗151および152間のノードの電圧VBに発生する正のピークに追従してリファレンス電圧Vrefpを立ち上げ、電圧VBの正のピーク以降は所定の時定数に従ってリファレンス電圧Vrefpを0Vに向けて減衰させる。また、ピークホールド回路172は、抵抗151および152間のノードの電圧VBに発生する負のピークに追従してリファレンス電圧Vrefnを立ち下げ、電圧VBの負のピーク以降は所定の時定数に従ってリファレンス電圧Vrefnの絶対値を0Vに向けて減衰させる。
【0033】
本実施形態において、ピークホールド回路171および172は、抵抗12および13間の電圧V23と抵抗151および152間のノードの電圧VBとの間に位相差が生じる場合に、この位相差に起因した誤動作が発生するのを防止する役割を果たしている。
【0034】
さらに詳述すると、次の通りである。仮にピークホールド回路171および172がなかったとすると、オーディオ入力信号VIの振幅が小さく、Pチャネルトランジスタ155およびNチャネルトランジスタ156の両方がOFFの状態でも、電圧V23と電圧VBとの間に位相差が生じた場合に、電圧V23およびVBの大小関係が入れ替わる都度、コンパレータ181および182の各出力信号にレベル反転が生じ、減衰器185による抵抗11および12間のノードの信号の減衰が不要に行われる。
【0035】
そこで、本実施形態では、電圧VBをコンパレータ181および182に直接与えるのではなく、ピークホールド回路171および172に与え、このピークホールド回路171および172から得られるリファレンス電圧VrefpおよびVrefnをコンパレータ181および182に与えるようにしているのである。この構成によれば、オーディオ入力信号VIの振幅が小さく、抵抗12および13間の電圧V23がリファレンス電圧VrefpおよびVrefn間の範囲内に収まっている場合にはコンパレータ181および182の出力信号がHレベルとならず、上記のような誤動作は発生しない。
以上が本実施形態によるダイナミックレンジ圧縮回路100Aの詳細である。
【0036】
次に本実施形態の動作を説明する。図3は増幅部10に対するオーディオ入力信号VIの電圧値を負の入力段最大電圧−VIMAXから正の入力段最大電圧+VIMAXまでの範囲内において変化させたときのオーディオ出力信号VOの電圧値の変化と、第2の電圧依存型分圧回路150AのPチャネルトランジスタ155およびNチャネルトランジスタ156のON/OFF状態の変化を示す図である。
【0037】
入力オーディオ信号VIの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXである場合、第2の電圧依存型分圧回路150Aにおける抵抗151および152間のノードの電圧VBは、入力リミット電圧+VILMTになる。これは次の理由による。第1に、第2の電圧依存型分圧回路150Aでは、第1の電圧依存型分圧回路120Aの抵抗122pおよび123pに印加されるものと同じ入力段最大電圧VIMAXが抵抗151および152に対して印加されるからである。第2に、第1の電圧依存型分圧回路120AのPチャネルトランジスタ132に印加されるものと同じゲート電圧VGPがPチャネルトランジスタ155に印加されるため、Pチャネルトランジスタ155のON抵抗RonがPチャネルトランジスタ132のON抵抗と同じになるからである。第3に、殆どの場合、Nチャネルトランジスタ156には負のゲート電圧VGNが与えられるため、入力端子1に対して入力段最大電圧VIMAXが印加された状態において、Nチャネルトランジスタ156はOFFとなるからである。
【0038】
従って、入力オーディオ信号VIに入力段最大電圧+VIMAXと同じ大きさの正のピークが生じると、抵抗151および152間のノードに入力リミット電圧+VILMTと同じ電圧値の正のピークが発生し、この正のピークのピーク値+VILMTがピークホールド回路171に正のリファレンス電圧Vrefpとして保持される。この状態では、増幅部10の抵抗12および13間のノードの電圧V23がリファレンス電圧Vrefp=+VILMTを越えると、ORゲート183からHレベルの信号が出力され、減衰部185により抵抗11および12間のノードの信号が減衰される。このような負帰還制御が働く結果、抵抗12および13間のノードの電圧V23はリファレンス電圧Vrefp=+VILMTまで低下し、増幅部10が出力するオーディオ出力信号VOの振幅は出力リミット電圧VOLMT=−VILMT・R4/R3となる。
【0039】
次に入力オーディオ信号VIの電圧値が入力段最大電圧VIMAXから0Vに向けて低下してゆくと、抵抗151および152間のノードの電圧VBが0Vに向かって低下するため、Pチャネルトランジスタ155のゲートおよびソース間電圧が減少し、Pチャネルトランジスタ155のON抵抗Ronが次第に大きくなる。
【0040】
以下、この過程における抵抗12および13間のノードの電圧V23と抵抗151および152間のノードの電圧VBとの関係について説明する。まず、抵抗12および13間のノードの電圧V23は、次式により与えられる。
V23=VI・R3/(R1+R2+R3) ……(1)
=VI・α1
ここで、α1は分圧比であり、α1=R3/(R1+R2+R3)である。
【0041】
一方、抵抗151および152間のノードの電圧VBは、次式により与えられる。
VB=VI・Rx/(R1+R2+Rx) ……(2)
=VI・α2
ここで、α2は分圧比であり、α2=Rx/(R1+R2+Rx)である。また、抵抗値Rxは、抵抗152(抵抗値R3)とこれに並列接続されたPチャネルトランジスタ155またはNチャネルトランジスタ156のON抵抗(抵抗値Ron)とからなる回路の合成抵抗であり、次式により与えられる。
Rx=R3・Ron/(R3+Ron) ……(3)
【0042】
Pチャネルトランジスタ155のON抵抗RonがPチャネルトランジスタ132のON抵抗と同じである場合、Rx<R3となるため、α2<α1となる。α2<α1の状態では、減衰器185による減衰が行われないと、抵抗12および13間のノードの電圧V23が抵抗151および152間のノードの電圧VBから生成されるリファレンス電圧Vrefpよりも大きくなる。従って、減衰器185により抵抗11および12間のノードの信号を減衰させて抵抗12および13間のノードの電圧V23をリファレンス電圧Vrefpに一致させる負帰還制御が行われる。
【0043】
そして、抵抗151および152間のノードの電圧VBが0Vに向かって低下し、Pチャネルトランジスタ155のON抵抗Ronが次第に大きくなると、前掲式(2)における抵抗値Rxが抵抗値R3に近づくため、分圧比α2が分圧比α1に近づく。これに伴い、減衰器185により抵抗11および12間のノードの信号に与えられる減衰量が次第に減り、増幅部10の利得が次第に増加する。
【0044】
以上が入力オーディオ信号VIの電圧値が入力段最大電圧VIMAXから0Vに向けて低下してゆく過程における本実施形態の動作である。
【0045】
入力端子1に対するオーディオ入力信号VIの電圧値が低下し、抵抗151および152間のノードの電圧VBが、Pチャネルトランジスタ155のゲート電圧VGPに対してPチャネルトランジスタ155の閾値電圧を加えた電圧よりも低くなると、Pチャネルトランジスタ155はOFFとなる。このPチャネルトランジスタ155がONからOFFに切り換わるときの入力端子1の入力電圧VIが上述した折れ点入力電圧+VIZとなる。
【0046】
オーディオ入力信号VIの電圧値が正であり、かつ、折れ点入力電圧VIZ以下の領域では、Pチャネルトランジスタ155がOFFとなり、前掲式(2)における抵抗値Rxが抵抗値R3となるため、抵抗151および152間のノードの電圧VBは、抵抗12および13間のノードの電圧V23と一致する。従って、減衰器185による抵抗11および12間のノードの信号の減衰は行われず、増幅部10の利得は最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)となる。
【0047】
一方、入力端子1に対して負の入力段最大電圧−VIMAXが印加された場合、第2の電圧依存型分圧回路150Aにおける抵抗151および152間のノードの電圧VBは、負の入力リミット電圧−VILMTと一致する。これは次の理由による。第1に、第2の電圧依存型分圧回路150Aでは、第1の電圧依存型分圧回路120Aの抵抗122pおよび123pに印加されるものと同じ大きさで極性を反転した入力段最大電圧−VIMAXが抵抗151および152に対して印加されるからである。第2に、理想的には第1の電圧依存型分圧回路120AのPチャネルトランジスタ132に印加されるものと同じ絶対値の負極性のゲート電圧VGNがNチャネルトランジスタ156に印加されるため、Nチャネルトランジスタ156のON抵抗が入力端子1に対して正の入力段最大電圧+VIMAXが与えられたときのPチャネルトランジスタ155のON抵抗と同じになるからである。第3に、殆どの場合、Pチャネルトランジスタ155には正のゲート電圧VGPが与えられるため、入力端子1に対して入力段最大電圧−VIMAXが印加された状態において、Pチャネルトランジスタ155はOFFとなるからである。
【0048】
次に入力端子1に対して与えられる電圧が入力段最大電圧−VIMAXから0Vに向けて上昇してゆくと、抵抗151および152間のノードの電圧VBが0Vに向かって上昇する。このため、Nチャネルトランジスタ156のゲートおよびソース間電圧が減少し、Nチャネルトランジスタ156のON抵抗Ronが大きくなり、前掲式(2)の抵抗値Rxが抵抗値R3に近づき、分圧比α2が増加して分圧比α1に近づく。この結果、増幅部10の利得が次第に増加する。そして、入力端子1に対する入力電圧が上昇し、抵抗151および152間のノードの電圧VBが、Nチャネルトランジスタ156のゲート電圧VGNからNチャネルトランジスタ156の閾値電圧を差し引いた電圧よりも高くなると、Nチャネルトランジスタ156はOFFとなる。このNチャネルトランジスタ156がONからOFFに切り換わるときの入力端子1の入力電圧VIが折れ点入力電圧−VIZとなる。
【0049】
オーディオ入力信号VIの電圧値が負であり、かつ、負の折れ点入力電圧−VIZ以上の領域では、抵抗151および152間のノードの電圧VBは、抵抗12および13間のノードの電圧V23と一致する。従って、減衰器185による抵抗11および12間のノードの信号の減衰は行われず、増幅部10の利得は最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)となる。
【0050】
図4(a)〜(c)は本実施形態におけるパワーアンプの各部の信号波形を示す図である。図4(a)は、入力オーディオ信号VIの振幅を次第に大きくした場合において、減衰器185による減衰を行わせなかった場合における抵抗12および13間のノードの電圧V23’と、抵抗151および152間のノードの電圧VBの波形を示している。また、図4(b)は、同様の場合における抵抗12および13間のノードの電圧V23の波形V23’と、抵抗151および152間のノードの電圧VBの波形と、リファレンス電圧VrefpおよびVrefnの各波形を示している。また、図4(c)は、同様の場合における抵抗12および13間のノードの電圧V23の波形V23’と、リファレンス電圧VrefpおよびVrefnの各波形と、増幅部10から得られるオーディオ出力信号VOの電圧値を抵抗12および13間のノードの電圧値に換算した波形VO’=VO×R3/R4を示している。これらの図において、+VIZ’および−VIZ’は、オーディオ入力信号VIの電圧値が各々折れ点電圧+VIZおよび−VIZである場合における抵抗12および13間のノードの電圧である。
【0051】
オーディオ入力信号VIの振幅が小さく、電圧V23’が電圧+VIZ’および−VIZ’間の範囲内にある場合(オーディオ入力信号VIの振幅が折れ点電圧+VIZおよび−VIZ間の範囲内にある場合)には、Pチャネルトランジスタ155およびNチャネルトランジスタ156がOFFとなり、電圧VBの波形は電圧V23’の波形と一致する。
【0052】
オーディオ入力信号VIの振幅が大きくなり、電圧V23’が電圧+VIZ’を上回ると(オーディオ入力信号VIの振幅が折れ点電圧+VIZを上回ると)、電圧V23’が電圧+VIZ’を上回っている領域では、Pチャネルトランジスタ155がONとなるため、電圧VBは電圧V23’よりも低くなる。また、電圧V23’が電圧−VIZ’を下回ると(オーディオ入力信号VIの振幅が折れ点電圧−VIZを下回ると)、電圧V23’が電圧−VIZ’を下回っている領域では、Nチャネルトランジスタ156がONとなるため、電圧VBは電圧V23’よりも高くなる(以上、図4(a)参照)。この場合の入力オーディオ信号VIの電圧値に対する電圧VBの依存性は、図3を参照して説明した通りである。
【0053】
そして、図4(b)に示すように、リファレンス電圧Vrefpは、電圧VBの正のピークに追従して立ち上がり、それ以降はピーク値を保持し、リファレンス電圧Vrefnは、電圧VBの負のピークに追従して立ち下がり、それ以降はピーク値を保持する。
【0054】
オーディオ入力信号VIの振幅が小さく、電圧V23’がリファレンス電圧VrefpおよびVrefn間の範囲内にある場合、減衰器185による抵抗11および12間のノードの信号の減衰は行われない。従って、増幅部10では、オーディオ信号VIが最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)で増幅され、オーディオ出力信号VOが得られる。オーディオ入力信号VIの振幅が大きく、電圧V23’がリファレンス電圧VrefpおよびVrefn間の範囲を越える領域では、減衰器185による抵抗11および12間のノードの信号の減衰が行われる。このため、オーディオ信号VIは、増幅部10においてR4/(R1+R2+R3)よりも低い利得で増幅される。
【0055】
ここで、前掲図3を参照して説明したように、増幅部10の利得は、オーディオ入力信号VIの振幅が入力段最大電圧+VIMAXおよび−VIMAXであるときにオーディオ信号VOの振幅が出力リミット電圧−VOLMTおよび+VOLMTとなるように調整される。従って、オーディオ入力信号VIの振幅が入力段最大電圧+VIMAXおよび−VIMAX間の範囲内にある限り、オーディオ入力信号VIに対して波形歪のないオーディオ出力信号VOが得られる(図4(c)における波形VO’参照)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、入力段最大電圧+VIMAXが指定された場合に、オーディオ入力信号VIの振幅が入力段最大電圧+VIMAXとなるときにオーディオ出力信号VOの振幅が出力リミット電圧VOLMTとなるような最適なダイナミックレンジ圧縮特性(前掲図2(a)および(b)参照)を自動的に実現することができる。従って、増幅部10が出力可能なオーディオ出力信号VOの振幅範囲を最大限に利用し、出力波形に歪を発生させることなく、オーディオ入力信号VIの増幅を増幅部10に行わせることができる。
【0057】
<第2実施形態>
図5はこの発明の第2実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Bを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。なお、この図5に示す第2実施形態と上記第1実施形態(図1)において、互いに共通する部分には同一の符号が使用されている。本実施形態によるダイナミックレンジ圧縮回路100Bでは、上記第1実施形態(図1)におけるリファレンス電圧生成部110Aがリファレンス電圧生成部110Bに置き換えられている。このリファレンス電圧生成部110Bは、第1の電圧依存型分圧回路120Bと第2の電圧依存型分圧回路150Bとにより構成されている。また、上記第1実施形態では、共通の電圧VBがピークホールド回路171および172に供給されたが、本実施形態ではリファレンス電圧生成部110Bから別個の電圧VBpおよびVBnがピークホールド回路171および172に各々供給されるようになっている。
【0058】
第1の電圧依存型分圧回路120Bには、負の入力段最大電圧−VIMAXが印加される電圧入力端子121nと、この電圧入力端子121nと接地線との間に直列に介挿された抵抗値R1+R2の抵抗122nと抵抗値R3の抵抗123nが追加されている。差動増幅器124pと、電圧依存型抵抗器130Aと、抵抗122pおよび123pとからなる回路の構成は、上記第1実施形態の第1の電圧依存型分圧回路120Aと同様である。本実施形態では、上記第1実施形態における極性反転回路128が削除されて、その代わりに差動増幅器124nが追加され、上記第1実施形態における電圧依存型抵抗器140Aが電圧依存型抵抗器140Bに置き換えられている。
【0059】
差動増幅器124nは、抵抗122nおよび123n間のノードに発生する電圧VAnと、負の入力リミット電圧−VILMTとを比較し、VAn<−VILMTである場合には出力信号VCnを正方向に変化させ、VAn>−VILMTである場合には出力信号VCnを負方向に変化させる回路である。この差動増幅器124nの出力端子と抵抗122nおよび123n間のノードとの間には電圧依存型抵抗器140Bが介挿されている。この電圧依存型抵抗器140Bは、上記第1実施形態における電圧依存型抵抗器140Aに対してNチャネルトランジスタ142を追加した構成となっている。このNチャネルトランジスタ142は、ゲートがNチャネルトランジスタ141のゲートおよびドレインに接続され、ドレインが電源+VDDに接続され、ソースが抵抗122nおよび123n間のノードに接続されている。
【0060】
このような構成において、Nチャネルトランジスタ141のゲートおよびドレインとNチャネルトランジスタ142のゲートの接続点の電圧VGNは、差動増幅器124nの出力電圧VCnからNチャネルトランジスタ141の閾値電圧だけ上昇した電圧となる。
【0061】
ここで、抵抗122nおよび123n間のノードの電圧VAnが入力リミット電圧−VILMTよりも低くなって差動増幅器124nの出力電圧VCnが正方向に変化すると、Nチャネルトランジスタ141および142のゲート電圧VGNも正方向に変化する。この結果、Nチャネルトランジスタ142のON抵抗が小さくなり、抵抗122nおよび123n間のノードの電圧VAnが上昇する。
【0062】
逆に抵抗122nおよび123n間のノードの電圧VAnが入力リミット電圧−VILMTよりも高くなって差動増幅器124nの出力電圧VCnが負方向に変化すると、Nチャネルトランジスタ141および142のゲート電圧VGNも負方向に変化する。この結果、Nチャネルトランジスタ142のON抵抗が大きくなり、抵抗122nおよび123n間のノードの電圧VAnが低下する。このような負帰還が働く結果、抵抗122nおよび123n間のノードの電圧VAnは入力リミット電圧−VILMTに一致することとなる。
【0063】
第2の電圧依存型分圧回路150Bでは、上記第1実施形態(図1)の第2の電圧依存型分圧回路150Aに対して、入力端子1および接地線間に直列に介挿された抵抗値R1+R2の抵抗153と抵抗値R3の抵抗154が追加されている。そして、Pチャネルトランジスタ155は、ゲートに対して電圧依存型抵抗器130Aからのゲート電圧VGPが与えられ、ドレインが電源−VDDに接続され、ソースが抵抗151および152間のノードに接続されている。また、Nチャネルトランジスタ156は、ゲートに対して電圧依存型抵抗器140Bからのゲート電圧VGNが与えられ、ドレインが電源+VDDに接続され、ソースが抵抗153および154間のノードに接続されている。ここで、Nチャネルトランジスタ156と電圧依存型抵抗器140BのNチャネルトランジスタ142は、同じトランジスタサイズを有しており、同じソース電圧が与えられたときに同じON抵抗となる。この第2の電圧依存型分圧回路150Bにおいて、抵抗151および152間のノードの電圧VBpはピークホールド回路171に供給され、抵抗153および154間のノードの電圧VBnはピークホールド回路172に供給される。
【0064】
本実施形態では、正の入力段最大電圧+VIMAXの分圧結果である入力抵抗122pおよび123p間のノードの電圧VApが入力リミット電圧VILMTとなるようにPチャネルトランジスタ132に対するゲート電圧VGPが調整され、この調整されたゲート電圧VGPがPチャネルトランジスタ155のゲートに与えられる。また、負の入力段最大電圧−VIMAXの分圧結果である入力抵抗122nおよび123n間のノードの電圧VAnが入力リミット電圧−VILMTとなるようにNチャネルトランジスタ142に対するゲート電圧VGNが調整され、この調整されたゲート電圧VGNがNチャネルトランジスタ156のゲートに与えられる。
【0065】
ここで、入力端子1に対するオーディオ入力信号VIの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXである場合には、抵抗151および152間のノードの電圧VBpは入力リミット電圧VILMTとなる。また、入力端子1に対するオーディオ入力信号VIの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXである場合には、抵抗153および154間のノードの電圧VBnは入力リミット電圧−VILMTとなる。従って、入力端子1に対するオーディオ入力信号VIの振幅が±VIMAXである場合、ピークホールド回路171が出力するリファレンス電圧Vrefpは入力リミット電圧+VILMTとなり、ピークホールド回路172が出力するリファレンス電圧Vrefnは入力リミット電圧−VILMTとなる。そして、抵抗12および13間の電圧V23がこのリファレンス電圧Vrefp=+VILMTおよびVrefn=−VILMT間の範囲を越えるのに応じて減衰器185による信号の減衰が行われる。この結果、増幅部10が出力するオーディオ出力信号VOの振幅は±VOLMTとなる。
【0066】
入力端子1に対するオーディオ入力信号VIの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXから低下すると、その低下分に応じて抵抗151および152間のノードの電圧VBpが低下し、Pチャネルトランジスタ155のON抵抗が増加し、電圧VBpを発生するための分圧比はR3/(R1+R2+R3)に向けて増加する。また、入力端子1に対するオーディオ入力信号VIの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXから上昇すると、その上昇分に応じて抵抗153および154間のノードの電圧VBnが上昇し、Nチャネルトランジスタ156のON抵抗が増加し、電圧VBnを発生するための分圧比はR3/(R1+R2+R3)に向けて増加する。
【0067】
従って、オーディオ入力信号VIの振幅が入力段最大電圧±VIMAXから減少すると、その減少分に応じて、オーディオ入力信号VIの振幅に対するリファレンス電圧VrefpおよびVrefnの絶対値の比が大きくなり、増幅部10の利得は次第に増加する。
【0068】
そして、オーディオ入力信号VIの振幅が減少して、折れ点入力電圧以下になると、Pチャネルトランジスタ155およびNチャネルトランジスタ156がOFFとなり、以降、増幅部10の利得は一定値R4/(R1+R2+R3)となる。
以上のように本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0069】
<第3実施形態>
図6はこの発明の第3実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Cを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。上記第1および第2実施形態におけるダイナミックレンジ圧縮回路はシングルエンド型の増幅部10に適用された。これに対し、本実施形態によるダイナミックレンジ圧縮回路100Cは、増幅部10Cに適用される。この増幅部10Cは、入力端子1pおよび1nに与えられる正逆2相のオーディオ入力信号VIpおよびVInを差動増幅し、出力端子2pおよび2nから差動増幅結果である正逆2相のオーディオ出力信号VOpおよびVOnを出力する差動増幅型の増幅回路である。
【0070】
増幅部10Cにおいて、入力端子1pおよび出力端子2n間には、抵抗値R1の抵抗11pと、抵抗値R2の抵抗12pと、抵抗値R3の抵抗13pと、抵抗値R4の抵抗14nが直列に介挿されている。また、入力端子1nおよび出力端子2p間には、抵抗値R1の抵抗11nと、抵抗値R2の抵抗12nと、抵抗値R3の抵抗13nと、抵抗値R4の抵抗14pが直列に介挿されている。差動増幅器21は、正相入力端子が抵抗13pおよび14n間のノードが接続され、逆相入力端子が抵抗13nおよび14p間のノードが接続され、正相出力端子が出力端子2pに接続され、逆相出力端子が出力端子2nに接続されている。この差動増幅器21は、正相入力端子と逆相入力端子を仮想接地状態として、抵抗11p、12pおよび13pを介して入力される正相オーディオ入力信号VIpと抵抗11n、12nおよび13nを介して入力される逆相オーディオ入力信号VInの差動増幅を行う。
【0071】
ダイナミックレンジ圧縮回路100Cは、リファレンス電圧生成部110Cと、減衰制御部180Cとにより構成されている。このダイナミックレンジ圧縮回路100Cも、上記第1および第2実施形態と同様、前掲図2(a)および(b)に例示のダイナミックレンジ圧縮特性を実現するものである。リファレンス電圧生成部110Cは、所望の入力段最大電圧VIMAXに適したダイナミックレンジ圧縮特性を実現するためのリファレンス電圧VrefpおよびVrefnをオーディオ入力信号VIpおよびVInから生成する回路である。減衰制御部180Cは、上記第1実施形態の減衰制御部180と同様の役割を果たす回路であり、コンパレータ186および187と、ORゲート188と、時定数回路189と、減衰器190とにより構成されている。
【0072】
コンパレータ186は、増幅部10Cにおける抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pがリファレンス電圧Vrefpより低いときはLレベルを、リファレンス電圧Vrefpより高いときはHレベルを出力する回路である。コンパレータ187は、抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nがリファレンス電圧Vrefnより低いときはLレベルを、リファレンス電圧Vrefnより高いときはHレベルを出力する回路である。ORゲート188は、コンパレータ186および187の両方の出力信号がLレベルである場合はLレベルを、少なくとも一方がHレベルである場合はHレベルを出力する。
【0073】
時定数回路189は、ORゲート188の出力信号が立ち上がるときは所定のアタック時間を掛けて出力信号を立ち上げ、ORゲート188の出力信号が立ち下がるときはに所定のリリース時間を掛けて出力信号を立ち下げる回路である。減衰器190は、例えば電界効果トランジスタにより構成されており、抵抗11pおよび12p間のノードと抵抗11nおよび12n間のノードとの間に介挿されている。この減衰器190は、時定数回路189の出力信号の電圧が上昇するのに応じてON抵抗が低くなり、抵抗11pおよび12p間のノードに発生する信号と抵抗11nおよび12n間のノードに発生する信号を減衰させ、増幅部10Cの利得を低下させる。
【0074】
次にリファレンス電圧生成部110Cについて説明する。このリファレンス電圧生成部110Cは、第1の電圧依存型分圧回路120Cおよび第2の電圧依存型分圧回路150Cと、ピークホールド回路173および174とにより構成されている。
【0075】
第1の電圧依存型分圧回路120Cは、電圧入力端子201および接地線間に直列に介挿された抵抗値R1+R2の抵抗202と抵抗値R3の抵抗203とを有している。ここで、電圧入力端子201には正の入力段最大電圧+VIMAXが与えられる。また、第1の電圧依存型分圧回路120Cは、電圧入力端子204および接地線間に直列に介挿された抵抗値R1+R2の抵抗205と抵抗値R3の抵抗206とを有している。ここで、電圧入力端子204には負の入力段最大電圧−VIMAXが与えられる。抵抗202および203間のノードと抵抗205および206間のノードとの間には電圧依存型抵抗器210が介挿されている。そして、差動増幅器220は、抵抗202および203間のノードの電圧VAが入力リミット電圧+VILMTとなるように電圧依存型抵抗器210の抵抗を制御する。
【0076】
さらに詳述すると、電圧依存型抵抗器210は、Nチャネルトランジスタ211および212と定電流源213とにより構成されている。ここで、Nチャネルトランジスタ211は、ドレインおよびゲートがNチャネルトランジスタ212のゲートに接続されるとともに、定電流源213を介して電源+VDDに接続されている。また、Nチャネルトランジスタ211のソースは差動増幅器220の出力端子に接続されている。従って、Nチャネルトランジスタ211および212のゲート電圧VGNは、差動増幅器220の出力電圧よりもNチャネルトランジスタ211の閾値電圧だけ高い電圧値となる。Nチャネルトランジスタ212は、ドレインが抵抗202および203間のノードに接続され、ソースが抵抗205および206間のノードに接続されている。
【0077】
差動増幅器220は、抵抗202および203間のノードの電圧VAと入力リミット電圧+VILMTとを比較し、VA>+VILMTの場合はNチャネルトランジスタ211のソースに与える出力信号を立ち上げる。この結果、Nチャネルトランジスタ211および212のゲート電圧VGNが上昇し、Nチャネルトランジスタ212のON抵抗が小さくなり、抵抗202および203間のノードの電圧VAが低下する。逆にVA<+VILMTの場合、差動増幅器220は、Nチャネルトランジスタ211のソースに与える出力信号を立ち下げる。この結果、Nチャネルトランジスタ211および212のゲート電圧VGNが低下し、Nチャネルトランジスタ212のON抵抗が大きくなり、抵抗202および203間のノードの電圧VAが上昇する。このような負帰還制御が働く結果、抵抗202および203間のノードの電圧VAは入力リミット電圧+VILMTと一致することとなる。
【0078】
第2の電圧依存型分圧回路150Cは、抵抗値R1+R2の抵抗231および233と、抵抗値R3の抵抗232および234と、Nチャネルトランジスタ235とにより構成されている。ここで、抵抗231および232は、入力端子1pおよび接地線間に直列に介挿され、抵抗233および234は、入力端子1nおよび接地線間に直列に介挿されている。Nチャネルトランジスタ235は、ドレインが抵抗231および232間のノードに接続され、ソースが抵抗233および234間のノードに接続されている。そして、Nチャネルトランジスタ235のゲートには、Nチャネルトランジスタ212のゲートに与えられるものと同じゲート電圧VGNが与えられる。
【0079】
ピークホールド回路173は、抵抗231および232間のノードの電圧に正のピークが発生する都度、リファレンス電圧Vrefpをそのピーク電圧に追従させる。ピークホールド回路174は、抵抗233および234間のノードの電圧に正のピークが発生する都度、リファレンス電圧Vrefnをそのピーク電圧に追従させる。
【0080】
本実施形態では、正の入力段最大電圧+VIMAXの分圧結果である入力抵抗202および203間のノードの電圧VAが入力リミット電圧+VILMTとなるようにNチャネルトランジスタ212に対するゲート電圧VGNが調整され、この調整されたゲート電圧VGNがNチャネルトランジスタ235のゲートに与えられる。
【0081】
ここで、入力端子1pに対するオーディオ入力信号VIpの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXであり、入力端子1nに対するオーディオ入力信号VInの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXである場合、Nチャネルトランジスタ235のON抵抗はNチャネルトランジスタ212のON抵抗と同じになる。従って、抵抗231および232間のノードの電圧VBpは入力リミット電圧+VILMTとなる。一方、入力端子1pに対するオーディオ入力信号VIpの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXであり、入力端子1nに対するオーディオ入力信号VInの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXである場合にもNチャネルトランジスタ235のON抵抗はNチャネルトランジスタ212のON抵抗と同じになる。この場合、抵抗233および234間のノードの電圧VBnが入力リミット電圧+VILMTとなる。従って、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が±VIMAXである場合、ピークホールド回路173が出力するリファレンス電圧Vrefpは入力リミット電圧+VILMTとなり、ピークホールド回路174が出力するリファレンス電圧Vrefnも入力リミット電圧+VILMTとなる。そして、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pがリファレンス電圧Vrefp=+VILMTを越えた場合または抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nがリファレンス電圧Vrefn=+VILMTを越えた場合に減衰器190による信号の減衰が行われる。従って、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が±VIMAXである場合、増幅部10Cが出力するオーディオ出力信号VOpおよびVOnの振幅は±VOLMTとなる。
【0082】
オーディオ入力信号VIpの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXから低下すると、その低下分に応じて抵抗231および232間のノードの電圧VBpが低下し、Nチャネルトランジスタ235のON抵抗が増加し、電圧VBpを発生するための分圧比はR3/(R1+R2+R3)に向けて増加する。また、オーディオ入力信号VInの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXから低下すると、その低下分に応じて抵抗233および234間のノードの電圧VBnが低下し、Nチャネルトランジスタ235のON抵抗が増加し、電圧VBnを発生するための分圧比はR3/(R1+R2+R3)に向けて増加する。
【0083】
従って、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が入力段最大電圧±VIMAXから減少すると、その減少分に応じて、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅に対するリファレンス電圧VrefpおよびVrefnの比が大きくなり、増幅部10Cの利得は次第に増加し、増幅部10の利得は最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)に近づいてゆく。
【0084】
そして、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が減少し、Nチャネルトランジスタ235のゲート電圧VGNと、抵抗231および232間のノードの電圧VBpまたは抵抗233および234間のノードの電圧VBnのうち低い方の電圧との差分が、Nチャネルトランジスタ235の閾値電圧よりも小さくなると、Nチャネルトランジスタ235がOFFとなる。このときのオーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が折れ点入力電圧VIZとなる。そして、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が折れ点入力電圧VIZよりも小さい領域では、増幅部10の利得は最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)となる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によれば、増幅部10Cが出力可能な振幅範囲±VOLMTを最大限に活用し、かつ、入力段最大電圧±VIMAXの範囲内において入力信号VIpおよびVInの振幅の変化を出力信号VOpおよびVOnの振幅変化に反映させるダイナミックレンジ圧縮特性が実現される。
【0086】
<第4実施形態>
図7はこの発明の第4実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Dを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。なお、この図7に示す第4実施形態と上記第3実施形態(図6)において、互いに共通する部分には同一の符号が使用されている。本実施形態によるダイナミックレンジ圧縮回路100Dは、差動増幅型のD級増幅器である増幅部10Dに適用される。この増幅部10Dでは、上記第3実施形態における差動増幅器21が削除され、誤差積分器300、パルス幅変調器350および三角波発生器380が追加されている。ダイナミックレンジ圧縮回路100Dでは、上記第3実施形態における減衰制御部180Cが減衰制御部180Dに置き換えられている。この減衰制御部180Dでは、減衰制御部180Cの時定数回路189が減衰パルス発生部191に置き換えられている。上記第3実施形態におけるリファレンス電圧生成部110Cは、リファレンス電圧生成部110Dに置き換えられている。このリファレンス電圧生成部110Dは、第1の電圧依存型分圧回路120Dおよび第2の電圧依存型分圧回路150Dを有している。ここで、第1の電圧依存型分圧回路120Dは、上記第3実施形態の第1の電圧依存型分圧回路120Cにおける抵抗値R3の抵抗203および206を抵抗値R3+R4の抵抗203’および206’に置き換えた構成となっている。第2の電圧依存型分圧回路150Dは、上記第3実施形態の第2の電圧依存型分圧回路150Cにおける抵抗値R3の抵抗232および234を抵抗値R3+R4の抵抗232’および234’に置き換えた構成となっている。
【0087】
図8は増幅部10Dにおける誤差積分器300とパルス幅変調器350と三角波発生器380と、減衰制御部180Dにおける減衰パルス発生部191の構成を示す回路図である。
【0088】
誤差積分器300は、抵抗11p、12pおよび13pを介して正相のオーディオ入力信号VIpが正相入力端子301pに与えられるとともに、抵抗11n、12nおよび13nを介して逆相のオーディオ入力信号VInが逆相入力端子301nに与えられる。また、誤差積分器300の正相入力端子301pには、抵抗14nを介して逆相のオーディオ出力信号(デジタル信号)VOnが帰還され、誤差積分器300の逆相入力端子301nには、抵抗14pを介して正相のオーディオ出力信号VOpが帰還される。そして、誤差積分器300は、このようにして与えられるオーディオ入力信号VIpおよびVInと、オーディオ出力信号VOpおよびVOnとの誤差を積分して、積分結果を示す正逆2相の信号VDpおよびVDnを正相出力端子302pおよび逆相出力端子302nから各々出力する回路である。
【0089】
誤差積分器300としては各種のものが考えられるが、図示の例では、差動増幅器310と、4個のキャパシタ311〜314と2個の抵抗315および316により構成された2次の誤差積分器300が用いられている。ここで、差動増幅器310の正相入力端子および逆相入力端子は、各々誤差積分器300の正相入力端子301pおよび逆相入力端子301nとなっており、差動増幅器310の正相出力端子と逆相出力端子は、各々誤差積分器300の正相出力端子302pおよび逆相出力端子302nとなっている。そして、差動増幅器310の正相入力端子と逆相出力端子との間には、誤差を積分するためのキャパシタ311および312が直列に介挿されており、これらのキャパシタの共通接続点は抵抗315を介して接地されている。また、差動増幅器310の逆相入力端子と正相出力端子との間にも、誤差を積分するためのキャパシタ313および314が直列に介挿されており、これらのキャパシタの共通接続点は抵抗316を介して接地されている。
【0090】
パルス幅変調器350の正相入力端子351pおよび逆相入力端子351nは、誤差積分器300の正相出力端子302pおよび逆相出力端子302nに接続されている。また、パルス幅変調器350の三角波入力端353には、三角波発生器380から出力される三角波信号TRが与えられる。そして、パルス幅変調器350の正相出力端子352pおよび逆相出力端子352nは、増幅部10Dの出力端子2pおよび2nとなっている。パルス幅変調器350は、三角波入力端353に与えられる三角波信号TRを用いて、誤差積分器300の出力信号VDpおよびVDnのレベルに応じたパルス幅の正逆2相のデジタル信号を生成し、オーディオ出力信号VOpおよびVOnとして正相出力端子352pおよび逆相出力端子352nから各々出力する回路である。
【0091】
このパルス幅変調器350も各種の構成のものが考えられるが、図示の例では、三角波信号TRが各々正相入力端子に与えられ、誤差積分器300の正相出力信号VDpおよび逆相出力信号VDnが各々の逆相入力端子に与えられるコンパレータ361pおよび361nと、コンパレータ361pおよび361nの出力信号VEpおよびVEnのレベルを各々反転して出力するインバータ362pおよび362nと、コンパレータ361nの出力信号VEnとインバータ362pの出力信号が入力されるNANDゲート363pと、コンパレータ361pの出力信号VEpとインバータ362nの出力信号が入力されるNANDゲート363nと、NANDゲート363pおよび363nの出力信号のレベルを各々反転して、正相出力端子352pおよび逆相出力端子352nから信号VOpおよびVOnとして各々出力するインバータ364pおよび364nにより構成されている。
【0092】
次に減衰パルス発生部191について説明する。ORゲート188は、図7におけるコンパレータ186および187の各出力信号V11およびV12の論理和を出力する。キャパシタ371および抵抗372は積分器370を構成している。この積分器370と電源VDDとの間には定電流源188Aおよびスイッチ188Bが直列に介挿されている。そして、スイッチ188Bは、ORゲート188の出力信号がHレベルであるときにON、LレベルであるときにOFFとなる。従って、積分器370は、ORゲート188の出力信号がHレベルである期間は、定電流源188Aから供給される電流の積分を行い、ORゲート188の出力信号がLレベルである期間は、キャパシタ371の容量値および抵抗372の抵抗値により定まる時定数に従って積分値を減衰させる。差動増幅器373は、その出力端子と逆相入力端子とが短絡されており、積分器370の出力電圧を第1の比較用電圧VC1として後段に伝えるボルテージフォロワバッファを構成している。このボルテージフォロワバッファから出力される第1の比較用電圧VC1は、抵抗375を介して差動増幅器374の逆相入力端子に与えられる。この差動増幅器374の逆相入力端子と出力端子との間には抵抗375と同じ抵抗値の抵抗376が介挿されており、差動増幅器374の正相入力端子には三角波信号TRの振幅VTRの半分の大きさの基準レベル+VTR/2が与えられる。ここで、差動増幅器374の出力電圧をVC2とすると、次式が成立する。
(VC1+VC2)/2=VTR/2 ……(4)
これをVC2について解くと次のようになる。
VC2=VTR−VC1 ……(5)
すなわち、抵抗375および376と差動増幅器374からなる回路は、差動増幅器373から第1の比較用電圧VC1が出力される場合に、電圧VTRよりも電圧VC1だけ低い第2の比較用電圧VC2を出力する反転増幅器として働く。
【0093】
コンパレータ377は、第1の比較用電圧VC1と三角波信号TRとを比較し、後者が前者よりも高い場合にHレベルの信号を、そうでない場合にはLレベルの信号を出力する。また、コンパレータ378は、第2の比較用電圧VC2と三角波信号TRとを比較し、前者が後者よりも高い場合にHレベルの信号を、そうでない場合にはLレベルの信号を出力する。ロウアクティブORゲート379は、コンパレータ377または378の各出力信号の少なくとも一方がLレベルであるときにHレベル(アクティブレベル)となる減衰指令パルスSWを出力する。
以上が本実施形態の構成である。
【0094】
次に本実施形態の動作を説明する。図9は増幅部10Dの各部の信号波形を示す波形図である。誤差積分器300は、オーディオ入力信号VIpおよびVInと、デジタル信号であるオーディオ出力信号VOpおよびVOnとの誤差を積分するため、その出力信号VDpおよびVDnの波形は、入力アナログ信号VIpおよびVInの波形に対して、オーディオ出力信号に相当するリップルが重畳したような波形となる。パルス幅変調器350では、この誤差積分器300の出力信号VDpおよびVDnと三角波信号TRとの比較が行われる。そして、VDp>VDnである期間は、図9の左側に示すように、三角波信号TRのレベルが信号VDnのレベルを越えてから信号VDpのレベルに至るまでの期間および三角波信号TRのレベルが信号VDpのレベルを下回ってから信号VDnのレベルに至るまでの期間、デジタル信号VOpがHレベルとなり、デジタル信号VOnは継続的にLレベルとされる。また、VDn>VDpである期間は、図9の右側に示すように、三角波信号TRのレベルが信号VDpのレベルを越えてから信号VDnのレベルに至るまでの期間および三角波信号TRのレベルが信号VDnのレベルを下回ってから信号VDpのレベルに至るまでの期間、デジタル信号VOnがHレベルとなり、デジタル信号VOpは継続的にLレベルとされる。このようにして、パルス幅変調器350では、誤差積分器300の2相の出力信号VDpおよびVDnのレベル差に比例したパルス幅を有するオーディオ出力信号VOpおよびVOnが発生される。
【0095】
図9に示すように、増幅部10Dがパルス幅変調されたオーディオ出力信号VOpを出力する期間は、オーディオ出力信号VOnは0Vとなる。この間、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pは、オーディオ入力信号VIpを分圧比(R3+R4)/(R1+R2+R3+R4)により分圧した電圧値となる。そして、増幅部10Dは、この間、抵抗13pおよび14n間のノードの電圧に対して、抵抗13nおよび14p間のノードの電圧を一致(仮想短絡)させて増幅動作を行う。また、増幅部10Dがパルス幅変調されたオーディオ出力信号VOnを出力する期間は、オーディオ出力信号VOpは0Vとなる。この間、抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nは、オーディオ入力信号VInを分圧比(R3+R4)/(R1+R2+R3+R4)により分圧した電圧値となる。そして、増幅部10Dは、この間、抵抗13nおよび14p間のノードの電圧に対して、抵抗13pおよび14n間のノードの電圧を一致(仮想短絡)させて増幅動作を行う。そこで、本実施形態では、上述したように、リファレンス電圧生成部110Dにおける抵抗203’、206’、232’および234’の各抵抗値をR3+R4にしているのである。
【0096】
次に減衰制御部180Dの動作について説明する。図10(a)は、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pがリファレンス電圧Vrefp以下であり、かつ、抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nがリファレンス電圧Vrefn以下であり、コンパレータ186および187の出力信号V11およびV12がLレベルを維持している場合における減衰制御部180Dの各部の波形を示している。この場合、ORゲート188の出力信号が継続的にLレベルとなるため、第1の比較用電圧VC1は0V、第2の比較用電圧VC2は+VTRとなる。このため、三角波信号TRは、比較用電圧VC1およびVC2と交差せず、減衰パルスSWは発生せず、スイッチである減衰器190は継続的にOFFとなり、抵抗11pおよび12p間のノードのアナログ信号VIp’の波形と、抵抗11nおよび12n間のノードのアナログ信号VIn’の波形は、図示のように、オーディオ入力信号VIpおよびVInに対して相似形の波形となる。
【0097】
図10(b)は、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pがリファレンス電圧Vrefpを上回り、または抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nがリファレンス電圧Vrefnを上回り、コンパレータ186または187の出力信号V11またはV12がHレベルとなる場合における減衰制御部180Dの各部の波形を示している。この場合、第1の比較用電圧VC1は、信号V11またはV12がHレベルになったときに上昇し、信号V11またはV12がLレベルになった以後は、次に信号V11またはV12がHレベルになるまでの間、キャパシタ371の蓄積電荷が抵抗372を介して放電されるのに従って低下する、という脈動を繰り返す。また、第1の比較用電圧VC1がこのような挙動を示すのに伴い、第2の比較用電圧VC2(=+VTR−VC1)は、電圧+VTRから低下し、電圧VC1と同様の脈動を繰り返す。このため、三角波信号TRが比較用電圧VC1およびVC2と交差し、三角波信号TRが電圧VC1よりも低い期間および三角波信号TRが電圧VC2よりも高い期間にHレベル(アクティブレベル)となる減衰パルスSWがロウアクティブORゲート379から断続的に出力される。
【0098】
ここで、減衰器190は、この減衰パルスSWがLレベルの期間はOFF、Hレベルの期間はONとなる。このため、減衰器190の両端におけるアナログ信号VIp’およびVIn’は、減衰パルスSWがLレベルの期間は、元の入力アナログ信号VIpおよびVInに対応した信号値、減衰パルスSWがHレベルの期間は0Vとなり、図示のように、一定時間間隔で間引きを行った波形となる。従って、誤差積分器300に対して実質的に入力されるアナログ信号が減衰し、増幅部10Dの利得が低下する。
【0099】
このように本実施形態では、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pがリファレンス電圧Vrefpを越え、または抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nがリファレンス電圧Vrefnを越えると、増幅部10Dの利得を低下させる負帰還制御が働き、電圧V23pおよびV23nがリファレンス電圧VrefpおよびVrefnと一致するように、増幅部10Dの利得が自動的に調整される。従って、本実施形態においても、上記第3実施形態と同様、前掲図2(a)および(b)のようなダイナミックレンジ圧縮特性を実現することができる。
【0100】
<第5実施形態>
図11はこの発明の第5実施形態であるダイナミックレンジ圧縮回路100Eを備えたパワーアンプの構成を示す回路図である。このダイナミックレンジ圧縮回路100Eは、例えば上記第3実施形態における増幅部10Cまたは上記第4実施形態における増幅部10Dに適用される。図11に示すように、本実施形態によるダイナミックレンジ圧縮回路100Eは、リファレンス電圧生成部110Eと、減衰制御部180Eとにより構成されている。
【0101】
リファレンス電圧生成部110Eは、上記第1実施形態における第1の電圧依存型分圧回路120Aまたは上記第2実施形態における第1の電圧依存型分圧回路120Bと同様な構成の第1の電圧依存型分圧回路と、第2の電圧依存型分圧回路150Eと、4個のピークホールド回路175p、176p、175nおよび176nとを有する。
【0102】
第2の電圧依存型分圧回路150Eは、入力端子1pおよび接地線間に直列に介挿された抵抗241pおよび242pと、同じく入力端子1pおよび接地線間に直列に介挿された抵抗241nおよび242nとを有している。また、第2の電圧依存型分圧回路150Eは、入力端子1nおよび接地線間に直列に介挿された抵抗243pよび244pと、同じく入力端子1nおよび接地線間に直列に介挿された抵抗243nおよび244nとを有している。ここで、抵抗241p、243p、241nおよび243nは、抵抗値R1+R2を有している。また、抵抗242p、244p、242nおよび244nは、ダイナミックレンジ圧縮回路100Eを上記第3実施形態の増幅部10Cに適用する場合には、図示の通り、抵抗値R3を有するものが用いられ、上記第4実施形態の増幅部10Dに適用する場合には、抵抗値R3+R4を有するものが用いられる。第1の電圧依存型分圧回路の分圧用の抵抗(例えば図1の抵抗122pおよび123pのうちの抵抗123p)についても同様である。
【0103】
また、第2の電圧依存型分圧回路150Eは、Pチャネルトランジスタ245pおよび246pと、Nチャネルトランジスタ245nおよび246nを有している。ここで、Pチャネルトランジスタ245pは、ソースが抵抗241pおよび242p間のノードに接続され、ドレインが電源−VDDに接続されている。また、Pチャネルトランジスタ246pは、ソースが抵抗243pおよび244p間のノードに接続され、ドレインが電源−VDDに接続されている。また、Nチャネルトランジスタ245nは、ソースが抵抗241nおよび242n間のノードに接続され、ドレインが電源+VDDに接続されている。また、Nチャネルトランジスタ246nは、ソースが抵抗243nおよび244n間のノードに接続され、ドレインが電源+VDDに接続されている。
【0104】
電圧依存型分圧回路120Aまたは120Bである第1の電圧依存型分圧回路は、オーディオ入力信号VIpまたはVInの電圧値が入力段電源電圧+VIMAXである場合に抵抗241pおよび242p間のノードの電圧VBp1と抵抗243pおよび244p間のノードの電圧VBp2とを入力リミット電圧+VILMTとするゲート電圧VGPを発生し、このゲート電圧VGPをPチャネルトランジスタ245pおよび246pの各ゲートに供給する。また、電圧依存型分圧回路120Aまたは120Bである第1の電圧依存型分圧回路は、オーディオ入力信号VIpまたはVInの電圧値が入力段電源電圧−VIMAXである場合に抵抗241nおよび242n間のノードの電圧VBn1と抵抗243nおよび244n間のノードの電圧VBn2とを入力リミット電圧−VILMTとするゲート電圧VGNを発生し、このゲート電圧VGNをNチャネルトランジスタ245nおよび246nの各ゲートに供給する。
【0105】
ピークホールド回路175pは、電圧VBp1に生じる正のピークに基づいてリファレンス電圧Vrefp1を発生し、ピークホールド回路176pは、電圧VBp2に生じる正のピークに基づいてリファレンス電圧Vrefp2を発生する。さらに詳述すると、ピークホールド回路175pは、電圧VBp1に生じる正のピークに追従させてリファレンス電圧Vrefp1を立ち上げ、その後再び電圧VBp1に正のピークが発生するまでリファレンス電圧Vrefp1を十分に大きな時定数に従って減衰させる動作を繰り返す。ピークホールド回路176pも同様である。
【0106】
ピークホールド回路175nは、電圧VBn1に生じる負のピークに基づいてリファレンス電圧Vrefn1を発生し、ピークホールド回路176nは、電圧VBn2に生じる負のピークに基づいてリファレンス電圧Vrefn2を発生する。さらに詳述すると、ピークホールド回路175nは、電圧VBn1に生じる負のピークに追従させてリファレンス電圧Vrefn1を立ち下げ、その後再び電圧VBn1に負のピークが発生するまでリファレンス電圧Vrefn1を十分に大きな時定数に従って減衰させる動作を繰り返す。ピークホールド回路176nも同様である。
【0107】
減衰制御部180Eは、4個のコンパレータ193p、194p、193nおよび194nと、ORゲート195と、上記第3実施形態における時定数回路189または上記第4実施形態における減衰パルス発生部191に相当するものとを有する。
【0108】
ここで、コンパレータ193pは、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pとリファレンス電圧Vrefp1とを比較し、V23p>Vrefp1の場合にHレベルを、V23p<Vrefp1の場合にLレベルを出力する。コンパレータ194pは、抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nとリファレンス電圧Vrefp2とを比較し、V23n>Vrefp2の場合にHレベルを、V23n<Vrefp2の場合にLレベルを出力する。コンパレータ193nは、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pとリファレンス電圧Vrefn1とを比較し、V23p<Vrefn1の場合にHレベルを、V23p>Vrefn1の場合にLレベルを出力する。コンパレータ194nは、抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nとリファレンス電圧Vrefn2とを比較し、V23n<Vrefn2の場合にHレベルを、V23n>Vrefn2の場合にLレベルを出力する。ORゲート195は、コンパレータ193p、194p、193nおよび194nの各出力信号の論理和を上記第3実施形態における時定数回路189または上記第4実施形態における減衰パルス発生部191に相当するものに供給する。そして、上記第3実施形態または第4実施形態と同様、時定数回路189または減衰パルス発生部191に相当するものの出力信号は減衰器190に供給される。
【0109】
本実施形態によれば、入力端子1pに対するオーディオ入力信号VIpの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXであり、入力端子1nに対するオーディオ入力信号VInの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXである場合、抵抗241pおよび242p間のノードの電圧VBp1が入力リミット電圧+VILMTとなり、抵抗243nおよび244n間のノードの電圧VBn2が入力リミット電圧−VILMTとなる。一方、入力端子1pに対するオーディオ入力信号VIpの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXであり、入力端子1nに対するオーディオ入力信号VInの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXである場合、抵抗243pおよび244p間のノードの電圧VBp2が入力リミット電圧+VILMTとなり、抵抗241nおよび242n間のノードの電圧VBn1が入力リミット電圧−VILMTとなる。
【0110】
従って、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が±VIMAXである場合、ピークホールド回路175pおよび176pが出力するリファレンス電圧Vrefp1およびVrefp2は入力リミット電圧+VILMTとなり、ピークホールド回路175nおよび176nが出力するリファレンス電圧Vrefn1およびVrefn2は入力リミット電圧−VILMTとなる。そして、抵抗12pおよび13p間のノードの電圧V23pまたは抵抗12nおよび13n間のノードの電圧V23nがリファレンス電圧Vrefp1=Vrefp2=+VILMTを上回った場合およびリファレンス電圧Vrefn1=Vrefn2=−VILMTを下回った場合に減衰器190による信号の減衰が行われる。従って、前掲図2(a)および(b)に示すように、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が±VIMAXである場合、増幅部10Cまたは10Dが出力するオーディオ出力信号VOpおよびVOnの振幅は±VOLMTとなる。
【0111】
オーディオ入力信号VIpの電圧値が正、オーディオ入力信号VInの電圧値が負である場合において、オーディオ入力信号VIpの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXから低下すると、その低下分に応じて抵抗241pおよび242p間のノードの電圧VBp1が低下し、Pチャネルトランジスタ245pのON抵抗が増加し、電圧VBp1を発生するための分圧比はR3/(R1+R2+R3)に向けて増加する。また、オーディオ入力信号VInの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXから上昇すると、その上昇分に応じて抵抗243nおよび244n間のノードの電圧VBn2が上昇し、Nチャネルトランジスタ246nのON抵抗が増加し、電圧VBn2を発生するための分圧比はR3/(R1+R2+R3)に向けて増加する。オーディオ入力信号VIpの電圧値が入力段最大電圧−VIMAXから上昇し、オーディオ入力信号VInの電圧値が入力段最大電圧+VIMAXから低下する場合も同様であり、電圧VBp2、VBn1を発生するための分圧比は、R3/(R1+R2+R3)に向けて増加する。このため、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅が±VIMAXから減少するに従い、増幅部10Cまたは10Dの利得は、最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)に向けて増加する。
【0112】
そして、オーディオ入力信号VIpおよびVInの振幅がPチャネルトランジスタ245pおよび246p、Nチャネルトランジスタ245nおよび246nをOFFさせる折れ点入力電圧以下になる領域では、増幅部10Cまたは10Dの利得は、最大利得G0=R4/(R1+R2+R3)となる。
以上のように、本実施形態によれば、上記第1および第2実施形態と同様な効果が得られる。
【0113】
以上、この発明の第1〜第5実施形態について説明したが、これ以外にも、この発明には他の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0114】
(1)上記第1および第2実施形態では、正のリファレンス電圧Vrefpおよび負のリファレンス電圧Vrefnを発生し、抵抗12および13間のノードの電圧V23をリファレンス電圧+Vrefpおよび−Vrefn間の範囲内に収める負帰還制御を行った。しかし、そのようにする代わりに、例えば正のリファレンス電圧Vrefpのみを発生し、ピークホールド回路171の時定数またはピーク値を維持する期間を上記第1および第2実施形態の2倍にして、抵抗12および13間のノードの電圧V23をリファレンス電圧+Vrefp以内に収める負帰還制御を行うようにしてもよい。この態様は、回路構成が簡素になるという利点がある。
【0115】
(2)上記実施形態では、第1および第2の電圧依存型分圧回路を電界効果トランジスタを用いて構成したが、バイポーラトランジスタを用いて構成してもよい。
【0116】
(3)上記各実施形態では、増幅部の利得を低下させる減衰を発生させる減衰器をオーディオ入力信号の入力経路に設けたが、それ以外の箇所に設けてもよい。例えば上記第1実施形態では、差動増幅器20の出力端子から逆相入力端子への負帰還を行わせるための抵抗14を互いに直列接続された2個の抵抗に置き換え、それらの抵抗間のノードに減衰器を接続してもよい。
【0117】
(4)上記第3および第4実施形態では、Nチャネルトランジスタ211、212および235により電圧依存型分圧回路を構成したが、Pチャネルトランジスタにより電圧依存型分圧回路を構成してもよい。
【0118】
(5)上記第1および第2実施形態では、ゲート電圧VGPを正の電圧、ゲート電圧VGNを負の電圧として、ダイナミックレンジ圧縮特性に折れ点Zを生じさせた。しかし、ゲート電圧VGPを負の電圧、ゲート電圧VGNを正の電圧として、ダイナミックレンジ圧縮特性に折れ点Zを生じさせないようにしてもよい。
【0119】
(6)上記各実施形態において、出力リミット電圧VOLMTは、増幅部が出力可能な最大電圧としてもよく、パワー制限等の目的のために、図示しない操作部の操作等により任意に設定し得るようにしてもよい。また、図示しない操作部の操作等により入力リミット電圧VILMTが設定された場合に、この設定された入力リミット電圧VILMTに基づいて出力リミット電圧VOLMTが設定されるように構成してもよい。
【0120】
(7)上記各実施形態において、多彩なダイナミックレンジ圧縮特性を実現するために、入力段最大電圧±VIMAXを入力段回路の最大出力電圧とは無関係に任意に設定し得るように構成してもよい。
【符号の説明】
【0121】
10,10C,10D…増幅部、100A,100B,100C,100D,100E…ダイナミックレンジ圧縮回路、110A,110B,110C,110D,110E…リファレンス電圧発生部、180,180C,180D,180E…減衰制御部、185,190…減衰器、120A,120B,120C,120D…第1の電圧依存型分圧回路、150A,150B,150C,150D,150E…第2の電圧依存型分圧回路、171,172,173,174,175p,176p,175n,176n…ピークホールド回路、130A,140A,140B,210…電圧依存型抵抗器、184,189…時定数回路、191…減衰パルス発生部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅部の利得を低下させる減衰を前記増幅部内の所定のノードの信号に与える減衰手段を含み、前記増幅部の入力段最大電圧と同じ振幅の入力信号が前記増幅部に与えられた場合に前記増幅部の出力信号の振幅が任意の出力リミット電圧となるように前記減衰手段により前記増幅部の利得を低下させ、前記増幅部の入力信号の振幅が前記入力段最大電圧に満たない場合には、所定の最大利得を限度として、前記減衰手段により与える減衰の程度を前記増幅部の入力信号の振幅の前記入力段最大電圧からの減少分に応じて減らして前記増幅部の利得を増加させる利得制御手段を具備することを特徴とするダイナミックレンジ圧縮回路。
【請求項2】
前記利得制御手段は、
前記増幅部に対する入力信号を当該入力信号の電圧値に依存した分圧比で分圧してリファレンス電圧を発生するリファレンス電圧発生手段と、
前記増幅部に対する入力信号を所定の分圧比で分圧した電圧が前記リファレンス電圧を越えるのに応じて前記減衰手段により前記増幅部内の所定のノードの信号に減衰を与えて前記増幅部の利得を低下させる減衰制御手段とを具備し、
前記リファレンス電圧発生手段は、前記増幅部に対する入力信号の振幅が前記増幅部の入力段最大電圧である場合に、前記増幅部の出力信号の振幅を前記出力リミット電圧に減衰させる大きさのリファレンス電圧が発生される分圧比で前記増幅部に対する入力信号を分圧し、前記増幅部に対する入力信号の振幅が前記入力段最大振幅に満たない場合には、前記リファレンス電圧を発生するための分圧比を前記増幅部に対する入力信号の振幅の前記入力段最大電圧からの減少分に応じて増加させることを特徴とする請求項1に記載のダイナミックレンジ圧縮回路。
【請求項3】
前記リファレンス電圧発生手段は、第1および第2の電圧依存型分圧回路を含み、
前記第1の電圧依存型分圧回路は、
互いに直列接続され、前記入力段最大電圧が与えられる第1および第2の抵抗と、
抵抗値が制御電圧に依存するとともに、両端間電圧の減少に応じて抵抗値が増加する電圧依存型抵抗器であって、前記第1の抵抗および前記第2の抵抗間のノードと他の所定のノードに両端が接続された第1の電圧依存型抵抗器と、
前記第1の抵抗および前記第2の抵抗間のノードの電圧が前記出力リミット電圧を前記増幅部に出力させるための前記増幅部の入力電圧である入力リミット電圧となるように前記第1の電圧依存型抵抗器に対する制御電圧を制御する手段を有し、
前記第2の電圧依存型分圧回路は、
互いに直列接続され、前記増幅部に対する入力信号が与えられる第3および第4の抵抗と、
前記第1の電圧依存型抵抗器に与えられる制御電圧が与えられ、抵抗値が前記制御電圧に依存するとともに、両端間電圧の減少に応じて抵抗値が増加する電圧依存型抵抗器であって、前記第3の抵抗および前記第4の抵抗間のノードと他の所定のノードに両端が接続された第2の電圧依存型抵抗器とを具備し、
前記第3の抵抗および前記第4の抵抗間のノードの電圧に基づいて前記リファレンス電圧を発生することを特徴とする請求項2に記載のダイナミックレンジ圧縮回路。
【請求項4】
前記リファレンス電圧発生手段は、前記第2の電圧依存型分圧回路の分圧結果である出力信号のピークを保持することにより前記リファレンス電圧を発生するピークホールド回路を有することを特徴とする請求項3に記載のダイナミックレンジ圧縮回路。
【請求項5】
前記減衰手段は、前記増幅部に対する入力信号の経路上のノードの信号を減衰させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイナミックレンジ圧縮回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−151687(P2012−151687A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9195(P2011−9195)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】