説明

ダイナミック閾値を有するガンマカメラ

エミッション・コンピュータ断層撮影スキャナのガンマカメラでイベントの位置を見つける方法が提供される。ガンマカメラは、イベントを見るよう配置されたセンサのマトリックスを含む。センサは、イベントに反応する夫々の出力を有する。方法は、マトリックスのうち、イベントに応じて、マトリックス中の他のセンサに対して最高の出力を有する第1のセンサを識別する段階と、第1のセンサに対して最も近い近傍のマトリックス中の多数の第2のセンサを識別する段階と、識別されたセンサからの多数の出力を総出力へと組み合わせ、多数の出力は少なくとも1であり全ての識別されたセンサの数よりも少ない、段階と、総出力に占める割合である閾値を決定する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各医療撮像の技術に関連する。本発明は、ガンマカメラに関して特定の用途があり、これについて特に参照して説明する。本発明は、ポジトロン・エミッション断層撮影(「PET」)及びシングル・フォトン・エミッション・コンピュータ断層撮影(「SPECT」)を含むエミッション・コンピュータ断層撮影(「ECT」)、全身核走査、トランスミッション撮像等に関して使用可能である。当業者は、本発明が他の同様の用途及び診断撮像モードにも従うことを認めるであろう。
【背景技術】
【0002】
診断核撮像法、即ち、ECTは、典型的には例えば患者といった検査の対象への注射といった放射性追跡子の定性的及び定量的検査に関連する。ECTスキャナは、通常は、その中に対象を受容する検査領域を見るよう可動ガントリ上に取り付けられた1つ又はそれ以上の放射線検出器又はガンマカメラを有する。一般的には、例えば、検出可能な放射線を発生する1つ又はそれ以上の放射性核種又は放射性医薬品が対象の中に導入される。放射性医薬品は、その画像が生成されるべき関心となる1つ又は複数の器官へ進行することが望ましい。検出器は、選択された経路又は走査軌跡に沿って対象を操作し、放射線イベントは各ガンマカメラ上で検出される。
【0003】
従来のシンチレーション検出器では、検出器は、大きいシンチレーション結晶又はより小さいシンチレーション結晶の行列から作られるシンチレータを有する。いずれの場合も、シンチレータは、センサの行列によって見られる。一般的に用いられるセンサは、光増倍管(「PMT」)である。放射線吸収材料のグリッド状又はハネカム状のアレイを含むコリメータは、シンチレータに当たる放射線の許容の角度を制限するようシンチレータと検査されるべき対象との間に配置されうる。PMTの相対的な出力は、検出された放射線イベントの場所及びエネルギーを示す信号を発生するよう処理及び補正される。放射線データは、次に、関心領域の画像表現へと再構成される。
【0004】
シンチレータに当たる各放射線イベントは、PMTによって見られる対応する閃光(シンチレーション)を発生する。閃光の源に近い個々のPMTは、当該PMTによって見られる光の度合いに影響を与える。イベントを見る各PMTは、対応する電気パルスを発生する。電気パルスの夫々の大きさは、一般的には閃光からの各PMTの距離に比例する。PMTからの出力に基づき、ガンマカメラは放射線イベントをマップし、即ちシンチレータに当たる放射線のエネルギー及び位置を決定する。
【0005】
イベント位置測定の従来の方法は、イベントの発生後にPMTによって出力される信号を加算及び重み付けするAnger法として知られている。イベント位置測定のためのAnger法は、簡単な第1のモーメント計算に基づく。より特定的には、エネルギーは一般的には全てのPMT信号の和として測定され、位置は一般的には全てのPMT信号の「質量の中心」又は重心として測定される。
【0006】
重心の計算を行うために幾つかの方法が使用されてきた。完全にアナログのカメラでは、全てのかかる計算(例えば、加算、重み付け、分割)は、アナログ回路を用いてなされる。ハイブリッドアナログ/ディジタルカメラでは、加算及び重み付けはアナログ回路を用いて行われるが、加算された値はディジタル化され、位置の最終計算はディジタルで行われる。「完全にディジタル」なカメラでは、PMT出力信号は、個々にディジタル化される。用いられる上述の種類のカメラの種類に関わらず、最終的に再構成される画像の質及び/又は精度は、実際のイベント位置又は場所に一致するよう、イベントの位置又は場所を正確に測定又は他の方法で決定することに依存する。
【0007】
一般的には、シンチレーション閃光は、主にPMTの小さい下位集合に含まれる。例えば、一般的には50個又は60個のオーダであるPMTの総数のうち、全信号の90%超が、シンチレーション閃光に最も近い7つのPMTでしばしば検出される。しかしながら、より遠くのPMTへと望ましくなく浮遊するシンチレータからの光、PMT出力中の雑音等は、従来のAnger法における重心の計算に影響を与えうるものであり、なぜならば全てのPMT出力は位置決め計算に用いられるからである。従って、これは、イベント位置測定の人工的なシフトを生じさせうる。浮遊信号はまた、シンチレータ中で殆ど同時に生ずるイベントによる高い計数率を生じさせる傾向がある。2つのイベントが略同時に生ずるとき、それらの「質量中心」は2つの中間にあり、イベントは実際に生じない。再び、イベントは結果として誤って位置決めされうる。
【0008】
浮遊又は他の望ましくない信号(即ち実際のイベント及び/又はその真の位置に対して容易に確かめられる関係を有さないもの)は、一般的には実際の観察されるイベントに関連付けられる及び/又は対応するPMT信号と比較してより低いPMT信号振幅によって特徴付けられる。この区別を用いて、浮遊信号に関連する誤った位置決め問題を扱う技術が開発されている。特に、これらの技術は、重心の計算に用いられるPMTの数を選択的に制限し、及び/又は、選択されたPMTからのそれに対する寄与を制限することを目的とする。
【0009】
1つのオプションは、任意の閾値を設定することであり、また、イベントについての重心計算から、閾値を満たさない振幅を有するPMT出力を無視することである。或いは、PMT出力を無視するのではなく、PMT出力振幅は閾値の量によって減少されえ、それにより閾値を下回るPMT出力から任意の寄与を効果的に除去することにより閾値の量を減少しうる。しかしながら、この技術は、望ましくなく自由度が低く、時々は、重心の計算に必要であったであろうPMT出力を除去又は無視しうるものであり、または、重心の計算に必要でなかったであろうPMT出力(例えば、イベントからかなり離れているPMTからの)を依然として含むものでありうる。
【0010】
他のアプローチは、各イベントについて、最も高い出力振幅及び多数の(通常は6つの)その最も近い近傍のPMTを選択することを含む。これらの7つのPMTのみからの出力(7−PMTクラスタとして知られる)は、当該イベントの重心を計算するのに使用される。PMTが最密6方充填構造として知られるものとして配置されるとき、7−PMTクラスタは、中心PMT(即ち最も高い出力振幅)と、6つの周囲PMTとを含む。外側にあるPMTを除去することはまた、それらから遠隔ノイズを除去する。図8は、7−PMTクラスタ技術を用いて発生されるイベントデータの典型的な例を示す。明らかにはっきりとした六方形アーティファクトは、イベントの誤った位置決めを表わす。
【0011】
図9は、組み合わされた閾値処理及び7−PMTクラスタ技術を用いて発生されるイベントデータを例示的に示す図である。この組み合わされた技術により、7−PMTクラスタは、同じように選択され、しかしながら、閾値が設定され、各イベントに対して、閾値よりも小さい振幅を有するPMT出力が当該イベントに対する重心計算から除去される。再び、PMT出力を除外するのではなく、PMT出力振幅は、閾値の量だけ減少されえ、それにより閾値を下回るPMT出力からの任意の寄与を効果的に除去する。全てのPMTからのPMT出力振幅は、総和され又は全体として合計され、閾値はこの合計に占める割合(例えば3%)として設定される。イベントの誤った位置決めを示す六方アーティファクトは、図8と比較して改善されているが、図9の中に依然として明らかに存在する。
【0012】
上述の組み合わされた技術又はアプローチでは、イベントがPMTのうちの1つの境界の実質的に下又は十分に中に生ずる場合、PMT及び6つの周囲のPMTは、重心の計算に適切に寄与し、位置決めは比較的良く動作する。2重点(即ち2つのPMTが出会うか集中するところの近傍の領域)又は3重点(即ち3つのPMTが出会うか集中するところの近傍の領域)で、又はその近傍でイベントが生ずるときに、問題が生ずる。例えば、中心のPMT310及び6つの周囲のPMT312a乃至312fを含む最密6方充填7−PMTクラスタ300を示す図11を参照すると、典型的な2重点は点320によって一般的に示され、典型的な3重点は点322によって一般的に示される。イベントが2重点320で生ずるとき、2つのPMT(即ちPMT310及び312a)はイベントを最も強く見、2つの他のPMT(即ちPMT312b及び312f)もまたこれを強く見る。また、比較的弱いにもかかわらず、これらの4つのPMTの周りにはイベントを見ることができるかなり多数のPMTがある。それらの出力が使用されると、3つの他のPMT(即ちPMT312c,312d及び312e)は、イベントの所定の位置に対してかなりの影響を与え、これらが2重点を比較的弱く見ているときでさえ、「全体に占める割合」の閾値を越えるのに十分でありうる。しかしながら、それらが閃光を見る相対的な弱さに関して、3つの他のPMT312c,312d及び312eの出力は、閃光が見られる程度よりも、個々の利得変動、ランダムノイズ、及びイベントの位置決めに適切に信頼できるものではない要因に、より大きく基づくものであり得る。3重点322の近くでは、類似した問題が生ずる。「全体に占める割合」の閾値は、単純に、より良い空間的な位置決めを与えるよう更に高められ得るものではなく、なぜならば、かかる増加は高い又は中心PMT310の近くに、より大きい「糸巻き歪み」効果を生じさせる傾向があるからである。
【0013】
六方アーティファクトを取り扱う更なる他のアプローチは、高いPMT信号を減少させ、低いPMT信号を増幅させる圧縮法を組み込む。これは、六方アーティファクトを減少させうるが、位置の精度を犠牲にしたときにのみである(即ち、これはイベントの位置を誤らせ、これは真のイベント位置をぼけさせる)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、上述のアプローチ及び/又は技術にもかかわらず、これまでのところ、イベントの位置を見つけることを改善することが依然として所望である。本発明は、上述の及び他の過大を克服する、そのための新規且つ改善されたガンマカメラ及び技術について考える。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの面によれば、エミッション・コンピュータ断層撮影(ECT)スキャナのガンマカメラでイベントの位置を見つける方法が提供される。ガンマカメラは、イベントを見るよう配置されたセンサの行列を含む。センサは、イベントに応ずる夫々の出力を有する。方法は、マトリックスのうち、イベントに応じて、マトリックス中の他のセンサに対して最高の出力を有する第1のセンサを識別する段階と、第1のセンサに対して最も近い近傍のマトリックス中の多数の第2のセンサを識別する段階と、識別されたセンサからの多数の出力を総出力へと組み合わせ、多数の出力は少なくとも1であり全ての識別されたセンサの数よりも少ない、段階と、総出力に占める割合である閾値を決定する段階とを含む。
【0016】
本発明の他の面によれば、エミッション・コンピュータ断層撮影スキャナ内のイベントの位置を見つけるガンマカメラが提供される。ガンマカメラは、イベントを見るよう配置されたセンサのマトリックスを含み、センサはイベントに応ずる夫々の出力を有し、マトリックスのうち、イベントに応じて、マトリックス中の他のセンサに対して最高の出力を有する第1のセンサを識別する手段と、第1のセンサに対して最も近い近傍のマトリックス中の多数の第2のセンサを識別する手段と、識別されたセンサからの多数の出力を総出力へと組み合わせ、多数の出力は少なくとも1であり全ての識別されたセンサの数よりも少ない、手段と、総出力に占める割合である閾値を決定する手段とを含む。
【0017】
本発明の他の面によれば、エミッション・コンピュータ断層撮影(ECT)スキャナは、放射性核種の分布を含む検査される対象が配置された検査領域を含む。検出器は、検査領域から発せられる放射線イベントを見るよう配置され、センサはイベントに応ずる夫々の出力を有する。プロセッサは、(i)マトリックスのうち、イベントに応じて、マトリックス中の他のセンサに対して最高の出力を有する第1のセンサを識別し、(ii)第1のセンサに対して最も近い近傍のマトリックス中の多数の第2のセンサを識別し、(iii)識別されたセンサからの多数の出力を総出力へと組み合わせ、多数の出力は少なくとも1であり全ての識別されたセンサの数よりも少ない、(iv)総出力に占める割合である閾値を決定する。
【0018】
本発明の他の面によれば、エミッション・コンピュータ断層撮影(ECT)の方法は、イベントを見るセンサのマトリックスに対して検出されたイベントの位置を近似する段階と、検出されたイベントの近似された位置が実質的にマトリックスのセンサの境界内であるかどうかを判定する段階とを有する。検出されたイベントの近似された位置が実質的にマトリックスのセンサの境界内であると判定されると、近似された位置に最も近い第1の数のセンサがサンプリングされる。そうでなく、検出されたイベントの近似された位置が実質的にマトリックスのセンサの境界内でないと判定されると、近似された位置に最も近い第2の数のセンサがサンプリングされ、第2の数は第1の数よりも小さい。検出されたイベントについての位置はサンプリングされたセンサから発生される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の1つの利点は、よりよい空間解像度及びイベント位置決めから生ずる画質を改善する可能性である。
【0020】
本発明の他の利点は、ガンマカメラから取得された画像中の六方アーティファクトを減少させる可能性である。
【0021】
本発明の更なる他の利点及び利益は、望ましい実施例の以下の詳細な説明を読み理解することにより当業者により明らかとなろう。
【0022】
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の配置の形、並びに、様々な段階及び段階の形をとりうる。図面は、望ましい実施例を例示するためだけのものであって、本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1を参照するに、ECTスキャナ10は、検査領域16内に配置された対象14(望ましくは放射性核種分布を含む)に対向し対象14の周りの動きのために取り付けられた複数の検出器ヘッド(「検出器」)即ちガンマカメラ12を含む。各検出器12は、放射線イベント(例えば、シンチレータ20に当たる放射性核種分布からの放射線の光線)を閃光即ちシンチレーションへ変換するシンチレータ20を含む。センサのマトリックス22、例えば59個のセンサは、シンチレータ20からの閃光を見る又は受光するよう配置される。望ましい実施例では、センサのマトリックスは、PMTの6方最密充填構造とされる。しかしながら、他のセンサ及びパッキング構造も考えられる。
【0024】
各センサ22は、受光した閃光に応じて、例えばアナログ電気パルス等の夫々の出力信号を発生し、出力信号は受光した閃光に比例する。アナログ信号出力の場合、各センサ22は、夫々のアナログ出力をディジタル信号へ変換するアナログ・ディジタル(A/D)変換器24に任意に電気的に接続される。「完全にディジタルな」カメラ12を示すが、「完全にアナログの」又は「ハイブリッド・アナログ/ディジタル」カメラもまた適切に使用されうる。以下詳述するように、プロセッサ26は、生ずる夫々のシンチレーション・イベントの位置及び/又はエネルギーを測定するか他の方法で決定する。シンチレータ20上のイベントの位置は、x及びy座標と公称される2次元(2D)デカルト座標系の中で分解及び/又は決定される。しかしながら、他の座標系も考えられる。
【0025】
図1及び図2を参照するに、ステップAにおいて、放射線が検出され、センサ出力信号へ変換され、センサ出力信号はプロセッサ26へ送信される。次に、ステップBにおいて、プロセッサ26は、イベントが生ずることを検出し、イベントの場所及び/又はエネルギーを決定するために使用及び/又はサンプリングされるセンサ出力を識別及び/又は選択する。任意に、ステップBにおいて、センサ出力を選択する代わりに、又は、それに加えて、プロセッサは、特定のセンサ出力がイベントの位置及び/又はエネルギーの決定又は計算に寄与する範囲を調整する。ステップCにおいて、プロセッサ26は、イベントの場所及び/又はエネルギーを計算するか他の方法で決定する。最後に、ステップDにおいて、位置が見つけられたイベントから画像が再構成され、画像は対象14内の放射性核種の分布を表わす。
【0026】
図2乃至図4を参照するに、各ステップA及びBは、以下の説明する複数の各サブステップを含む。説明を容易とするため、各サブステップはステップ(図2参照)及びサブステップ(図3及び図4参照)の両方を特定する参照番号で識別される。
【0027】
図1乃至図3を参照するに、各放射線イベントは、サブステップA1内のセンサのマトリックス22内で検出される。放射線は、放射性同位元素の崩壊を生じさせるガンマ量子を生成する。崩壊量子は、望ましくは、シンチレーションを生じさせるドープされたヨウ化ナトリウム(NaI)を含むシンチレータ20に当たる。シンチレーションからの光は、多数のセンサ22に亘って分布される。図5に示すように、放射線イベントによって作られる典型的なシンチレーションは、任意の場所28を中心とする。所与のセンサ22が見るか受光する特定のシンチレーションからの光の量は、イベントからのセンサの距離(参照番号d1乃至d19で示す)につれて徐々に減少する傾向がある。センサのマトリックス22の一部のみが図5に示されることが理解されるべきである。
【0028】
吸収されたガンマ量子のエネルギーは、サブステップAにおいてシンチレータ20によって場所28において閃光へ変換又は変形される。センサ22は、サブステップA3においてシンチレーション光を検出(受光)する。次に、センサ22は、サブステップA4において夫々の出力信号を生成する。関連するセンサ出力信号は、サブステップA3においてセンサ22によって受光されたシンチレーション光の夫々の量に比例する。使用されるとき、A/D変換器24は、サブステップA5においてアナログ出力信号を夫々のディジタル出力へ変換する。ディジタル出力は、サブステップA6においてプロセッサ26へ送信される。所与のイベントについて、各センサ22の出力値は、センサの出力信号の応答をイベントへ統合すること(即ち、センサ22の出力パルスについて振幅又は強度対時間をプロットする曲線の下側の面積又は幾らかの部分を見つけること);イベントに対するセンサの出力信号応答のピーク振幅、又は、観察された光の量に比例する又は適当に関連する他の尺度、によって任意に決定される。
【0029】
ここで図1、図2及び図4を参照するに、プロセッサ26は、各センサの出力値を分析することによりサブステップB1中で生ずる(開始する)イベントを検出する。望ましい実施例では、プロセッサ26は、センサ出力値がトリガ振幅を超えるときに、イベントが生ずることをトリガ(検出)する。
【0030】
サブステップB2において、全ての他のセンサ22に対して最も高い出力値を有するセンサ22が識別され、多数のそれに対して最も近い近傍センサ22もまたサブステップB3において識別される。適切に、センサ22の最密6方充填構造マトリックスでは(図5に示すように)、識別される最も近い近傍のセンサ22の数は6つであり、従って7−PMTクラスタを画成し、中心センサ22は、最も高い出力値を有するものであり、6つの最も近い近傍のセンサ22がこれを囲む。
【0031】
サブステップB4では、閾値は、各検出されたイベントに対して動的に決定される。閾値は、サブステップB2及びB3で識別される全てのセンサ22からの出力値の総計に、又は総計に占める割合に基づくものでないことが望ましい(集合的に、識別されたセンサと称される)。むしろ、閾値は識別されたセンサのうちの1つからの出力値に、又は出力値に占める割合に基づくものであり、或いは、閾値は識別されたセンサのうちの複数の、しかし全てではない出力値の総計に、又は総計に占める割合に基づく(例えば、7−PMTクラスタでは、識別されたセンサのうち2つ乃至6つ)。望ましくは、識別されたセンサによって7−PMTクラスタが画成される場合、閾値は、3番目に高い出力値を有する識別されたセンサからの出力値に占める割合(例えば30%)として計算又は決定される。図7は、かかる実施例に従って得られる典型的なイベントデータを示す。しかしながら、他の割合もまた考えられ、割合を、3番目に高いもの以外の順位とされた相対的な出力値を有する識別されたセンサの出力値に基づくものとすることも考えられる。同様に、割合を、例えば2番目に高いもの及び3番目に高いものとして順位付けされた様々な順位の相対出力値を有する識別されたセンサの複数の、しかし全てではない合計された出力値に占める割合に基づくものとすることが考えられる。
【0032】
サブステップB5において、識別されたセンサのうちのどれが、サブステップB4において決定された閾値に合うか超過する出力値を有するかが決定される。かかるセンサは、センサの識別された下位集合と称される。これに関して、「下位集合」の語は、その要素として、識別されたセンサ全てを有する集合を含む。次にステップCにおいて、特定のイベントは、サブステップB5で決定された識別された下位集合のセンサから取得された出力値のみを用いて、即ち識別された下位集合の要素ではないセンサの出力値を考慮に入れることなく、決定される。場所は、望ましくは、識別されたセンサの下位集合から得られる出力値の重心として、例えば識別された下位集合の要素ではないセンサからの出力値を無視するAnger和を用いて計算される。
【0033】
或いは、位置決定から、決定された閾値に合わない又は超過しない識別されたセンサからの出力値を除外するのではなく、全ての識別されたセンサからの出力値は決定された閾値の量によって決定され、それにより、全ての識別されたセンサからの変更された出力値を用いる続く位置決定において閾値を下回る値を有する識別されたセンサからの寄与を効果的に除去する。より特定的には、サブステップB5において、サブステップB4からの決定された閾値は、サブステップB2及びB3からの全ての識別されたセンサの出力値から差し引かれ、負の結果にはゼロ(0)の値が与えられる。次に、ステップCにおいて、全ての識別されたセンサから結果として得られる出力値(サブステップB5において減少されている)を用いて、特定のイベントの位置が決定される。
【0034】
図7を図8及び図9と対照させることによって容易にわかるように、結果は、六角形アーティファクトのかなりの(実際には殆ど完全な)除去により明らかとなるようなイベントの誤った位置決めの相対的な減少である。例えば、識別されたセンサがセンサの最密6方充填マトリックスの7−PMTクラスタを画成し、閾値が本願に提案される技術による3番目に高い順位の出力値を有するPMTから得られる出力値の約30%に設定される場合を考える。イベントが中心PMTの近くである場合、全ての外側の6つのPMT出力は、イベントの付近のPMTにより閾値を超える可能性が高く、中心PMT出力は、定義によれば3番目に高い順位の出力を有するPMTから取得される出力値の30%よりも大きいため、確かに閾値を上回る。従って、イベントの位置決めを利用するために、7つの全てのPMTの出力は、Anger和の位置決定に正しく含まれる。しかしながら、中心PMTの境界の近くで、又は、PMTの間で生ずるイベントについては、全ての出力値よりも少ない出力値が位置決定に寄与する。例えば、3重点の近傍では、イベントに最も近い3つのPMTのみが、そこからのPMTの夫々の距離による閾値を超える出力を有する可能性がある。やはり、イベント位置決めを利用するために、より遠隔なPMTからの出力は、位置決定に正しく寄与せず、又はAnger和に含まれない。このように、これらの領域で(即ち、3重点で又はその近傍で、及び、同様に2重点で又はその近傍で)生ずるイベントに関連する上述の問題は解決される。これらの線に沿って、他の適切なセンサ出力選択方法では(図6に示すように)、イベントの位置の近似はステップ100において決定される。次に、決定段階102において、近似位置がセンサ22の境界にあるかその近傍にあるか、又は、センサ22の間にあるかが決定される。近似位置がセンサ22の境界の確実に内側である場合、ステップ104において、近似位置に最も近い第1の数のセンサが、ステップ106において、例えばAnger和を用いて、最終位置決定を発生するようサンプリングされる。そうでなければ、近似位置がステップ102において、センサの境界にあるかその近傍にあり、又は、センサの間にあると決定されると、ステップ104において、近似位置に最も近いセンサの第2の数の(第1の数よりも少ない)センサは、ステップ106において最終位置決定を発生するようサンプリングされる。
【0035】
図1に示すスキャナ10は、SPECTモード又はPETモードのいずれかで望みに応じて選択的に動作可能である。SPECTモードでは、カメラ12は、特定の方向、即ち既知の光線に沿った放射線の許容を制限するようそれに取り付けられたコリメータを有する。従って、シンチレータ20上で放射線が検出される決定された位置とカメラ12の角度位置は、各放射線イベントが生ずる光線を決定する。これらの光線軌跡及びカメラ角度位置(例えば、角度位置分解器60から得られる)は、光線を、画像メモリ64内の体積画像表現へ逆投影するか他の方法で再構成する再構成プロセッサ62へ運ばれる。
【0036】
PETモードでは、コリメータは除去される。従って、単一のシンチレーション・イベントの位置は光線を定義しない。しかしながら、PETスキャンにおいて用いられる放射性核種は、放射線の2つの光子が、直径方向上反対の位置に、即ち180度離して同時に発せられる、消滅(annihilation)イベントを受ける。一致検出器66は、2つのカメラ12上のシンチレーションがいつ同時に生ずるかを検出する。2つの同時のシンチレーションの位置は、消滅イベントを通じた光線の端点を定義する。光線又は軌跡計算器68は、同時に受信したシンチレーション・イベントの各対からの対象14を通じて対応する光線を計算する。光線計算器68からの光線軌跡は、体積画像表現への再構成のために再構成プロセッサ60へ運ばれる。
【0037】
SPECTモード及びPETモードの両方で、ビデオプロセッサ70は、画像表現データをモニタ72での表示のために処理及び/又はフォーマットする。
【0038】
図10を参照するに、本発明の他の実施例によるスキャナが図示される。この実施例の理解を容易とするために、同様の構成要素は同様の参照番号で示され、以前に参照されていない構成要素は新しい参照番号で示される。スキャナ10は、検査領域16内に配置された対象14の周りの動きのために取り付けられた3つの検出器又はカメラ12を含み、対象にはエミッション放射線を放出する放射性核種が注射されている。各検出器12は、注射された放射性核種を閃光エネルギー又はシンチレーションへ変換するシンチレータ20を含む。任意に、放射線源202は、エミッション放射線とは異なるエネルギーのトランスミッション放射線の扇形を生じさせる。検出器20上のコリメータ204は、経路又は光線を制限及び画成し、これに沿って各検出器20はエミッション及びトランスミッション放射線を受け入れる。結果として得られるシンチレーションの位置及び受光検出器20の位置は、光線を一意に決定する。即ち、プロセッサ26は、検出器20の面上の各シンチレーションのエネルギー及び位置、従って放射線がそれに沿って発せられる光線を決定する。シンチレーションが生じ、検出器20の夫々の位置からの、位置及びエネルギーが決定されると、再構成プロセッサ60は、エミッションデータから画像表現を再構成し、これはデータに関連付けられる決定されたエネルギーを介して区別される。放射線源202が用いられると、改善された画像のためにエミッションデータを補正するためにトランスミッションデータ(データに関連付けられるエネルギーを介して同様に識別される)が、例えば対象14の減衰マップ等を発生することにより、用いられる。画像表現は、画像メモリ62内に格納され、これにアクセスし、ビデオプロセッサ70は、モニタ72上の表示のために画像表現データを処理する。再び、スキャナ10は、PETモードでコリメータ204を用いることなく使用されうる。スイッチ又は他の適切な制御部206は、モード選択のために任意に提供される。カメラ20のうちの1つの上に配置されていることが示されているが、放射線源202は任意にほかのどの位置に設けられてもよいことが認められるべきである。
【0039】
本発明について、望ましい実施例を参照して説明した。明らかに、上述の説明を読み理解することにより他人に対して変更及び修正が生じるであろう。本発明は、特許請求の範囲及びその均等のものに含まれる限り、全てのかかる変更及び修正を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の面による典型的なECTスキャナを示す図である。
【図2】本発明の面による典型的な方法を示す全体フローチャートである。
【図3】図2のフローチャートに示すステップを実行する典型的なサブステップを示すフローチャートである。
【図4】図2のフローチャートに示すステップを実行する典型的なサブステップを示すフローチャートである。
【図5】本発明の面による、シンチレーション・イベントからセンサの最密充填6方構造への典型的な光の広がりを示す図である。
【図6】本発明の面による典型的な方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施する面により得られるイベントデータを示す図である。
【図8】従来技術のアプローチを実施することにより得られるイベントデータを示す図である。
【図9】従来技術のアプローチを実施することにより得られるイベントデータを示す図である。
【図10】本発明の面による他の典型的なECTスキャナを示す図である。
【図11】最密充填6方7−PMTクラスタ内の2重点及び3重点の典型的な位置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッション・コンピュータ断層撮影スキャナのガンマカメラでイベントの位置を見つける方法であって、前記ガンマカメラはイベントを見るよう配置されたセンサのマトリックスを含み、前記センサはイベントに応ずる夫々の出力を有し、
前記マトリックスのうち、イベントに応じて、前記マトリックス中の他のセンサに対して最高の出力を有する第1のセンサを識別する段階と、
前記第1のセンサに対して最も近い近傍の前記マトリックス中の多数の第2のセンサを識別する段階と、
前記識別されたセンサからの多数の出力を総出力へと組み合わせ、前記多数の出力は少なくとも1であり全ての前記識別されたセンサの数よりも少ない、段階と、
前記総出力に占める割合である閾値を決定する段階とを有する、方法。
【請求項2】
前記識別されたセンサのうちのどれが、イベントに応じて、前記閾値以上の出力を有するかを決定し、これを識別されたセンサの下位集合に含める段階と、
前記識別されたセンサの下位集合から出力をサンプリングする段階と、
前記サンプリングされた出力を有するイベントの位置を決定する段階とを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
全ての前記識別されたセンサから前記イベントに応じて出力をサンプリングする段階と、
夫々のサンプリングされた出力を前記閾値だけ減少させる段階と、
前記減少されたサンプリングされた出力を有するイベントの位置を決定する段階とを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第2の識別されたセンサの数は6個である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記センサは光増倍管である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記マトリックスは最密充填6方パターンに配置される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記総出力に含まれる前記出力の数は1つである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記総出力に含まれる前記1つの出力は、前記他の識別されたセンサに対して3番目に高い出力を有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
エミッション・コンピュータ断層撮影スキャナ内のイベントの位置を見つけるガンマカメラであって、前記ガンマカメラは、
イベントを見るよう配置されたセンサのマトリックスを含み、前記センサはイベントに応ずる夫々の出力を有し、
前記マトリックスのうち、イベントに応じて、前記マトリックス中の他のセンサに対して最高の出力を有する第1のセンサを識別する手段と、
前記第1のセンサに対して最も近い近傍の前記マトリックス中の多数の第2のセンサを識別する手段と、
前記識別されたセンサからの多数の出力を総出力へと組み合わせ、前記多数の出力は少なくとも1であり全ての前記識別されたセンサの数よりも少ない、手段と、
前記総出力に占める割合である閾値を決定する手段とを有する、ガンマカメラ。
【請求項10】
前記識別されたセンサのうちのどれが、イベントに応じて、前記閾値以上の出力を有するかを決定し、これを識別されたセンサの下位集合に含める手段と、
前記識別されたセンサの下位集合から出力をサンプリングする手段と、
前記サンプリングされた出力を有するイベントの位置を決定する手段とを更に有する、
請求項9記載のガンマカメラ。
【請求項11】
全ての前記識別されたセンサから前記イベントに応じて出力をサンプリングする手段と、
夫々のサンプリングされた出力を前記閾値だけ減少させる手段と、
前記減少されたサンプリングされた出力を有するイベントの位置を決定する手段とを更に有する、請求項9記載のガンマカメラ。
【請求項12】
入射する放射線イベントをセンサのマトリックスによって見られる閃光へと変換するシンチレータを更に有する、請求項9記載のガンマカメラ。
【請求項13】
前記センサは光増倍管である、請求項12記載のガンマカメラ。
【請求項14】
前記マトリックスは最密充填6方パターンに配置される、請求項13記載のガンマカメラ。
【請求項15】
前記識別されたセンサは7−PMTクラスタを画成する、請求項14記載のガンマカメラ。
【請求項16】
前記総出力に含まれる前記出力の数は1つである、請求項15記載のガンマカメラ。
【請求項17】
前記総出力に含まれる1つの出力は、7−PMTクラスタ内の3番目に高い出力を有する識別されたセンサに対応する、請求項15記載のガンマカメラ。
【請求項18】
放射性核種の分布を含む検査される対象が配置された検査領域と、
前記検査領域から発せられる放射線イベントを見るよう配置され、各センサはイベントに応ずる夫々の出力を有する、センサのマトリックスを有する検出器と、
(i)前記マトリックスのうち、イベントに応じて、前記マトリックス中の他のセンサに対して最高の出力を有する第1のセンサを識別し、
(ii)前記第1のセンサに対して最も近い近傍の前記マトリックス中の多数の第2のセンサを識別し、
(iii)前記識別されたセンサからの多数の出力を総出力へと組み合わせ、前記多数の出力は少なくとも1であり全ての前記識別されたセンサの数よりも少ない、
(iv)前記総出力に占める割合である閾値を決定する、
プロセッサとを有する、エミッション・コンピュータ断層撮影スキャナ。
【請求項19】
前記プロセッサは更に、
(v)前記識別されたセンサのうちのどれが、イベントに応じて、前記閾値以上の出力を有するかを決定し、これを識別されたセンサの下位集合に含め、
(vi)前記識別されたセンサの下位集合から出力をサンプリングし、
(vii)前記サンプリングされた出力を有するイベントの位置を決定する、
請求項18記載のエミッション・コンピュータ断層撮影スキャナ。
【請求項20】
前記プロセッサは更に、
(v)全ての前記識別されたセンサから前記イベントに応じて出力をサンプリングし、
(vi)夫々のサンプリングされた出力を前記閾値だけ減少させ、
(vii)前記減少されたサンプリングされた出力を有するイベントの位置を決定する、
請求項18記載のエミッション・コンピュータ断層撮影スキャナ。
【請求項21】
イベントを見るセンサのマトリックスに対して検出されたイベントの位置を近似する段階と、
前記検出されたイベントの近似された位置が実質的に前記マトリックスのセンサの境界内であるかどうかを判定する段階と、
前記検出されたイベントの近似された位置が実質的に前記マトリックスのセンサの境界内であると判定されると、前記近似された位置に最も近い第1の数のセンサがサンプリングされる段階と、
前記検出されたイベントの近似された位置が実質的に前記マトリックスのセンサの境界内でないと判定されると、前記近似された位置に最も近い第2の数のセンサがサンプリングされ、前記第2の数は前記第1の数よりも小さく、
前記サンプリングされたセンサから前記検出されたイベントについての位置を発生する段階とを有する、エミッション・コンピュータ断層撮影の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−508344(P2006−508344A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554773(P2004−554773)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005123
【国際公開番号】WO2004/049001
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】