ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料及びその製造方法
【課題】放電プラズマ焼結法を利用することにより、製造過程での粒子のダメージを少なくし、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法は、所定の厚さの金属を表面に被覆したダイヤモンド粒子を所定量、1Kpaないし1.5Gpaの圧力を加えた状態で、100Pa以下の真空雰囲気下で、0.1℃/s(0.1K/s)ないし8.3℃/s(8.3K/s)の昇温速度で昇温して、343℃ないし1083℃の範囲で恒温保持するように10秒ないし7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することに特徴を有する。
【解決手段】本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法は、所定の厚さの金属を表面に被覆したダイヤモンド粒子を所定量、1Kpaないし1.5Gpaの圧力を加えた状態で、100Pa以下の真空雰囲気下で、0.1℃/s(0.1K/s)ないし8.3℃/s(8.3K/s)の昇温速度で昇温して、343℃ないし1083℃の範囲で恒温保持するように10秒ないし7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法及びその方法により製造された複合材料に関し、より詳細には、外周面を金属膜で被覆したダイヤモンド粒子を使用してパルス通電焼結法により製造するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSIの高集積化、高速化に伴い、超LSIを用いた小型電子機器における内部発熱の、問題はより深刻になり、温度上昇による超LSIチップ自体の誤動作が深刻な問題となりつつある。例えば、ノートパソコンの場合、筐体はA4サイズ、B5サイズさらにはより小型化が進んでいるが、同時にCPUのクロック周波数やハードディスクドライブの回転数は増加し、その結果、発熱量が増大している。デジタルカメラの分野では、CCDの画素数向上や動画撮影機能を充実させながらも消費電力の低減が図られているため、単位体積あたりの発熱密度はほぼ一定である。しかしながら、本体体積自体も小さくなる傾向にあるため、放熱面積が小さくなり、結果として温度上昇率の増加を招いている。したがって、高熱伝導材料の開発が急務となりつつある。
最近、下記特許文献1及び2に示されるように、700 W/mKの高熱伝導率を有する炭素繊維強化型Al基複合材料が開発された。ただし、700 W/mKは炭素繊維の長手方向の熱伝導率で、炭素繊維と垂直方向の熱伝導率は20〜50 W/mKと極端に低い。高熱伝導性ジョイントとしては有効だが、材料全体としての放熱特性は銀や銅を下回る。
【0003】
これに対して本発明者等は、上記の問題を解決する3次元的に均一な高熱伝導性を有する材料として、現存する材料中最も高い熱伝導率(2000 W/mK)を有するダイヤモンド粒子を、金属中で銀に次いで高い熱伝導率(385 W/mK)を有する銅(以下Cu)中に分散した、ダイヤモンド粒子分散型Cu基複合材料に注目した。この材料は過去に、ダイヤモンド粒子のプリフォームの隙間に吸引含浸法で溶融Cuを導入して作製された例(ダイヤモンド粒子の体積分率55%で420 W/mKの熱伝導率)、および、超高圧・超高温プレスを用いて、ダイヤモンド粉とCu粉の混合粉末を4〜5GPaの加圧下において1423Kで成形した例(ダイヤモンド体積分率50%〜80%で226〜742 W/mKの熱伝導率)が報告されているが、いずれもダイヤモンド粒子を多く含有する割には高熱伝導率が得られておらず、熱伝導率の実測値はMaxwell-Euckenの式による計算値の40〜60%程度しか満足していない。ここで、Maxwell-Euckenの式による計算値とは、次式
〔数式1〕
λ={2λ1+λ2+2V(λ2−λ1)}・λ1/{2λ1+λ2−V(λ2−λ1)
(但し、λは、複合材料の熱伝導率、λ1は、マトリックス金属(この場合Cu)の熱伝導率、λ2 は、分散粒子(この場合ダイヤモンド)の熱伝導率、Vは、複合材料中の分散粒子(この場合ダイヤモンド)の体積分率(Vol.%)である。)
により計算して得られた値である。
【0004】
上記のように計算値の40〜60%程度しか満足していない理由は、従来の吸引含浸成形、及び、超高圧・超高温プレス成形というプロセシング技術に起因するものと思われるためである。すなわち、ダイヤモンド粒子と銅マトリックスを密着させようとするあまり、溶融状態(温度>1356K)のCuとダイヤモンド粒子が直接接触するため、成形中にダイヤモンド粒子が劣化し、ダイヤモンド粒子そのものの熱伝導率が低下するためである。さらに、ダイヤモンド粒子とCu粉末とを別々に混合して複合化していることも問題である。すなわち、別々に混合するために、複合材料中でのダイヤモンド粒子の均一分散が得られにくくなり、複合材料としての熱伝導率の低下を招くためである。
【0005】
【特許文献1】特開2005−200676号公報
【特許文献2】特開2006−307358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そもそも複合材料の発想は、あまり熱伝導性は良くない(熱伝導率が10〜400 W/mK)が、柔らかく柔軟性を有する金属(Cu、Al、Mg等)中に、硬いが、そのマトリックス金属の熱伝導率を遥かに凌ぐとてつもなく高い熱伝導率を有する粒子(熱伝導率が1000〜2000 W/mK)を分散させて、高い熱伝導率を有し且つ加工性に富む材料を作ろうとするのが目的である。しかしながら、高い熱伝導率を有する分散粒子は、値段の高いものが多いので、粒子体積分率(複合材料中で粒子がしめる体積の割合)は低い値のほうが良いということになる。それ以外にも高い熱伝導率を有する分散粒子は、硬くて脆い物が多い。従って、入れすぎると、たとえ、CuやAlのように粘りのある材料をマトリックス金属として選んだ場合でも、複合化したとき脆くなる。出来れば、高熱伝導率と粘りを両立したい。そのためにも、少ない粒子体積分率で高熱伝導率を確保したい。ところが、従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法のように、複合化処理中に粒子が高温に長時間さらされるとダメージを受けて劣化するため、複合材料の高熱伝導率確保のため、粘りをやや犠牲にしてでも多くの粒子を埋め込まねばならない。そのことが、複合材料のコスト高や脆化を招くことになる。
【0007】
本発明は、かかる従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法により形成されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の上記のような問題点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、放電プラズマ焼結法を利用することによって、製造過程での粒子のダメージを少なくし、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、製造過程でのダイヤモンド粒子の熱伝導性の低下を少なくし、ダイヤモンド粒子とマトリックスの密着性に優れた、高熱伝導性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供する。
本発明の別の目的は、外表面に柔軟性を有しかつ熱伝導率の高い金属を被覆したダイヤモンド粒子を使用し、放電プラズマ焼結法を利用すると共に焼結時の条件、特に、恒温保持温度および恒温保持時間を制御することにより、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、上記方法により製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供することである。
【0008】
請求項1の発明によれば、所定の厚さの金属を表面に被覆したダイヤモンド粒子を所定量、1Kpaないし1.5Gpaの圧力を加えた状態で、100Pa以下の真空雰囲気下で、0.1℃/s(0.1K/s)ないし8.3℃/s(8.3K/s)の昇温速度で昇温して、343℃ないし1083℃の範囲で恒温保持するように10秒ないし7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法が提供される。
この発明によれば、ダイヤモンドの粒子体積分率が低くても熱伝導率の高いダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を短時間で製造できる。
【0009】
上記発明において、前記銅被覆層の厚さは、1μmないし5000μmであってもよく、好ましくは、5μmないし3000μm、より好ましくは、10μmないし2000μmであるとよい。
なお、銅被覆層の厚さの上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、被覆処理を長時間行えば、技術的には被覆可能な数値である。
また、上記発明において、前記ダイヤモンド粒子の直径は、1μmないし3000μmであってもよく、好ましくは、10μmないし500μm、より好ましくは20μmないし400μmであるとよい。
なお、ダイヤモンド粒子の直径の上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、購入価格が高額であることを考慮しなければ、技術的には使用可能な数値である。
更に、上記発明において、前記恒温保持する時間が、好ましくは、20秒ないしは5400秒(90分)であってもよく、より好ましくは、60秒ないし2700秒であるとよい。
更にまた、また、上記発明において、前記所定の真空雰囲気は、0ないし10Paであるとより好ましい。
また、前記昇温速度は、好ましくは、0.5℃/s(0.5K/s)ないし2.5℃/s(2.5K/s)であってもよく、より好ましくは、0.83℃/s(0.83K/s)ないし2.0℃/s(2.0K/s)であるとよい。
上記発明において、前記金属被覆層が銅である場合、前記所定の圧力が、好ましくは1KPaないし1.5GPaであり、より好ましくは、2.5kPaないし500MPaである。
上記発明において、前記金属被覆層がアルミニウムである場合、前記所定の圧力が、1KPaないし1.2GPaであり、より好ましくは、2.5kPaないし400MPaである。
また、上記発明において、前記金属被覆層が銅である場合、前記恒温保持する温度が、好ましくは、450℃以上、1083℃未満であり、より好ましくは、450℃以上、950℃以下である。
また、上記発明において、前記金属被覆層がアルミニウムである場合、前記恒温保持する温度は、343℃以上、660℃未満であり、より好ましくは、343以上、594℃以下である。
請求項8に記載の発明によれば、上記方法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料であって、ダイヤモンド体積分率が10 Vol.%で熱伝導度が234 W/mkからダイヤ体積分率が60 Vol.%で熱伝導度が805 W/mkの範囲の特性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が提供される。
ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、金属が銅の場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が18.0Vol.%で熱伝導度が417W/mkからダイヤ体積分率が50Vol.%で熱伝導度が689W/mkの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が19.8Vol.%で熱伝導度が431W/mkからダイヤ体積分率が43.3Vol.%で熱伝導度が654 W/mkの範囲の特性を有する。
また、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、金属がアルミニウムの場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が20.0Vol.%で熱伝導度が285W/mkからダイヤ体積分率が50Vol.%で熱伝導度が506W/mkの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が21.3Vol.%で熱伝導度が311W/mkからダイヤ体積分率が41.1Vol.%で熱伝導度が420W/mkの範囲の特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法について説明する。
まず、図1[A]に示すように、ダイヤモンド粒子2の外周に所定の厚さの金属層1を被覆した金属被覆ダイヤモンド粒子3を所定量を用意する。ここで、被覆する金属層1の厚さは、金属の種類或いは用いるダイヤモンド粒子2の直径により異なるが、好ましくは、1μmないし5000μmである。その理由は、厚さが上記範囲より薄いと、成形中に銅がダイヤモンド粒子間隙を埋め尽くす量に達せず、材料中にポアを残存することとなる為であり、また、上記範囲より厚すぎると、成形後の材料中のダイヤモンド粒子体積分率が極端に低下し、材料の高熱伝導率が得られないためである。金属被膜の厚さは、より好ましくは、5μmないし3000μmである。厚さは銅被覆の場合及びアルミニウム被覆の場合でも同じである。
銅層の最も好ましい厚さは、10μmないし2000μmである。その理由は、この範囲内であれば、薄すぎるときに生ずると考えられる、昇温中に低温域で荷重を付加した場合に発生しやすいダイヤモンド粒子そのものの破損を防げるからである。また、厚すぎるときに生ずると考えられる、成形中での、ダイヤモンド粒子の材料中での分散の均一性の乱れも防ぐことが出来るからである。アルミニウム層の最も好ましい被覆厚さも10μmないし2000μmであり、その理由は上記銅についての理由と同じである。なお、金属被覆の厚さはダイヤモンド粒子の直径の大きさにより変わる。
ダイヤモンド粒子の直径は、その表面への銅被覆層の厚さにより異なるが、好ましくは、1μmないし3000μmである。その理由は、ダイヤモンド粒子直径が上記範囲よりも小さいと、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を招くからであり、また上記範囲より大きすぎると、材料中でのダイヤモンド粒子同士の接触や、成形中の銅被覆層の塑性変形による、粒子間隙への充填不足により、材料中への未接合部分の残存を来たすこととなるからである。ダイヤモンド粒子のより好ましい直径は、10μmないし500μmであり、更に好ましくは、20μmないし400μmである。その理由は、この範囲にすると、高温域における短時間での劣化を防止でき、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を防止でき、また、昇温中において低温域で荷重を付加した場合の破損を阻止できるからである。更に、市場で容易に入手可能なことも理由である。
【0011】
このように形成された金属被覆ダイヤモンド粒子3を所定量、図2[B]及び[C]に示される円筒状のグラファイト(又は導電性セラミック)製のダイ5内で上下の円柱状のパンチ6及び7の間に装入する。このようにして所定量の金属被覆ダイヤモンド粒子3が装入されたダイ5及びパンチ6、7を、図2[A]に示されるように、パルス通電加圧装置10の真空チャンバー11内で一対の通電加圧電極12及び13の間に、パンチ6及び7の外端が通電加圧電極12及び13の対応する端部にそれぞれ接触するように、セットする。このパルス通電加圧装置10は、放電プラズマ焼結法又はパルス通電加圧焼結法(プラズマ活性化焼結法又は放電焼結法とも呼ばれる)の原理を応用した加圧焼結装置であるが、市販の放電プラズマ焼結装置(例えば、SPSシンテックス(株)製、DR.Sinter)を使用してもよい。セットした語、真空チャンバー11内を所定の真空度の雰囲気に保ち、パルス通電加圧接合装置10の加圧装置15により一対の通電加圧電極12、13を介して所定量の金属被覆ダイヤモンド粒子3に所定の範囲の圧力を加えた状態の下で、電源装置16から通電電極に所定の電圧、電流の直流パルス電流(直流電流と直流パルス電流の重畳電流でも良い。)を流す。
【0012】
上記所定の真空状態とは、好ましくは、100Pa以下の真空度、より好ましくは、10Pa以下の真空度を言う。その理由は、真空状態が100Paを超えると、被覆金属層の表面の急速酸化が起こり、粒子同士の接合を阻害し、成形後の強度低下を招く恐れがあるからである。また、10Pa以下の真空度を保つことにより、マトリックスとしての銅被覆層の酸素吸収による脆化をほとんど防止でき、成形体としての変形能の低下を避けることができるからである。
【0013】
所定の圧力とは、被覆する金属の種類によっても異なるが、銅を用いた場合、好ましくは1Kpaないし1.5Gpaで、アルミニウムを用いた場合、好ましくは1Kpaないし1.2Gpaである。その理由はいずれも。圧力が上記範囲より低いと成形後の材料中に未接合部分が残存することとなるからであり、また、上記範囲より高すぎるとカーボン(グラファイト)又は導電性セラミックダイの破損、もしくは、材料のパンチとダイとの間の隙間への侵入が起こるからである。アルミニウムの好ましい上限値が銅の好ましい上限値より小さいのは、アルミニウムは加工硬化したときの耐力が、銅よりも小さいためである。圧力のより好ましい値は、銅を用いた場合、2.5kPaないし500MPaであり、アルミニウムを用いた場合、2.5kPaないし400MPaである。
【0014】
更に、直流電圧は、好ましくは、0.1Vないし10.0Vであり、直流パルス電流は被覆金属の種類及び被覆金属層の厚さ並びに粒子の焼結に必要な昇温速度によって異なるが、銅或いはアルミニウムの場合、好ましくは、1Aないし30000Aである。その理由は、その電流地が上記範囲より低すぎると、放電不十分による材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、その範囲より高すぎると材料製造中の部分的溶融によるポアの材料中への残存を来たすこととなるからである。電流のより好ましい値は、50Aないし25000Aである。
【0015】
上記のように直流パルス電流を流すと、金属被覆ダイヤモンド粒子は昇温し始める。温度が所定の値になったら、その温度(恒温保持温度)を所定の時間(恒温保持時間)保持するように、通電電極を通して流すパルス電流を調節する。粒子の温度は粒子に近接して設けた温度センサによって測定しても、公知の間接的に測定する温度センサでもよい。
昇温速度は、被覆金属の種類によって異なるが、銅或いはアルミニウムを被覆してある場合、好ましくは、0.1K/sないし8.3K/sである。その理由は、その昇温速度が上記範囲より低すぎると、放電不十分により粒子表面が充分活性化されず、接合強度の低下や材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、高すぎると材料製造中の部分的溶融によるポアの材料中への残存を来たすこととなるからである。より好ましい昇温速度は、0.5K/sないし2.5K/sである。
【0016】
また、上記恒温保持温度は、被覆する金属の種類によって異なるが、好ましくは、被覆金属の融点よりも低く、80%の冷間加工を受けた被覆金属の再結晶温度より高い温度範囲、より好ましくは、被覆金属の融点の90%の温度と、ダイヤモンド粒子の熱伝導率の低下が始まる温度(950℃)の両方の温度よりも低く、80%の冷間加工を受けた被覆金属の再結晶温度より高い温度範囲である。その理由は、温度がこの範囲より低いと、成形中の被覆金属層の軟化不足により、材料中の未接合部分の残存が発生することとなるからである。また、温度がこの範囲より高いと、高温で極端に軟化した被覆金属の塑性流動によるパンチとダイの隙間への侵入、被覆金属の部分的溶融による材料中へのポアの残存等が起こるからである。
また、被覆金属が銅であり、内側の粒子がダイヤモンドである場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくは450℃以上1083℃未満であり、より好ましくは、450℃以上、975℃以下であり、最も好ましくは、450℃以上、950℃以下である。ここで、最低温度に変化が無いのは、荷重を50kg/mm2(500MPa)に設定すれば、80%の冷間加工を受けた銅被覆層の場合でも密着成形は可能だからである。
一方、被覆金属がアルミニウムであり、内側の粒子がダイヤモンドである場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくは343℃以上660℃未満であり、より好ましくは、343℃以上、594℃以下である。
接合が完了した後、通電を停止し、加圧装置による加圧を解除する。
【0017】
被覆金属として銅を用いた上記恒温保持温度の範囲を限定したより詳細な理由は以下の通りである。
ダイヤモンドの融点は3727℃であるが、銅の融点が1083℃である。但し、融点ギリギリでは使用できないので、ダイとパンチの間に侵入しないギリギリの強度を保つ温度ということで、最高温度は、銅の融点の90%を採用して975℃となる。次に、最低温度は次のようにして決まる。すなわち、銅の耐力は加工されることにより上昇する。加工なしで、23kg/mm2(230MPa)、冷間加工率20%で29kg/mm2(290MPa)、40%で35kg/mm2(350MPa)、60%で41kg/mm2(410MPa)、80%で43kg/mm2(430MPa)というふうに冷間加工率の上昇で耐力は、大きく向上する。さて、放電プラズマ焼結法による成形中には、銅被覆層の塑性変形を伴いながら焼結が進行する。したがって、あまり、低温で成形すると、ダイヤモンド粒子表面の銅被覆層同士が完全に密着しないうちに銅が硬化して途中で銅の変形がとまってしまう恐れがある。それを避けるには、銅の再結晶温度以上で成形する必要がある。冷間加工により加工硬化した金属材料はその材料の有する再結晶温度以上に加熱されることにより加工前に近い硬さに戻すことが出来る。銅の再結晶温度は、冷間加工率10%で800℃(1073K)、50%で600℃(873K)、80%で450℃(723K)である。以上から、最低温度は450℃(723K)となる。
次に、好ましい温度範囲であるが、これは、銅の高温での強度低下と、および、ダイヤモンド粒子の高温での劣化による熱伝導率の低下の2点から考察する必要がある。
まず、銅の融点は1083℃であるが、成形中にダイとパンチの隙間(直径の差において0.04mm)に銅が侵入しないために必要な高温強度は、融点の90%以下で得られる。従って、銅が、隙間に侵入しないための臨界温度Tcは次式(1)で表すことが出来る。
Tc=0.9Tm(℃) −−−−−−−−−−−−(1)
ここで、Tmは融点である。
銅の融点1083℃とTmに代入することにより、Tcは975℃と計算できる。
次に、ダイヤモンド粒子自体の恒温保持中の劣化による熱伝導率の低下であるが、ダイヤモンド粒子の熱伝導率は、所定の温度で真空中で1時間恒温保持した場合、950℃では、元々の2000W/mKであるが、1000℃では1800W/mK、1050℃では1600W/mK、1150℃では1200W/mKである。このようにダイヤモンド粒子の熱伝導率は恒温保持温度の増大により直線的に減少すると考えられるので、ダイヤモンドの熱伝導率λは、次式(2)で表すことが出来る。
λ=2000−4(T−950)(W/mK)―――――――(2)
ここで、Tは恒温保持温度である。
λ<2000という境界条件の上で、(2)式よりダイヤモンド粒子を劣化させない恒温保持温度は950℃と計算できる。
【0018】
また、マトリックスとしてアルミニウムを用いた上記温度範囲を限定したより詳細な理由は以下のとおりである。
ダイヤモンドの融点は3727℃であるが、アルミニウムの融点が660℃である。但し、融点ギリギリでは使用できないので、ダイとパンチの間に侵入しないギリギリの強度を保つ温度ということで、最高温度は、アルミニウムの融点の90%を採用して594℃となる。次に最低温度は、次のようにして決まる。すなわちAlの耐力もCu同様加工されることにより上昇する。加工なしでは20MPa程度であるが、冷間加工率80%で400MPa程度に上昇する。さて、放電プラズマ焼結法による成形中には、Al被覆層の塑性変形を伴いながら焼結が進行する。したがって、あまり、低温で成形すると、ダイヤモンド粒子表面のAl被覆層同士が完全に密着しないうちにAlが硬化して途中でAlの変形がとまってしまう恐れがある。それを避けるには、Alの再結晶温度以上で成形する必要がある。冷間加工により加工硬化した金属材料はその材料の有する再結晶温度以上に加熱されることにより加工前に近い硬さに戻すことが出来る。Alの再結晶温度は、冷間加工率80%で343℃(616K)である。以上から、最低温度は343℃(616K)となる。
次に好ましい温度範囲であるが、これは、Alの高温での強度低下、および、ダイヤモンド粒子の高温での劣化による熱伝導率の低下の2点から考察する必要がある。 まず、Alの融点は660℃であるが、成形中にダイとパンチの隙間(直径の差において0.04mm)にAlが侵入しないために必要な高温強度は、融点の90%以下で得られる。従って、Alが、隙間に侵入しないための臨界温度Tcは前述の式(1)で表すことが出来る。
Tc=0.9Tm(℃) −−−−−−−−−−−−(1)
ここで、Tmは融点である。
Alの融点660℃をTmに代入することにより、Tcは594℃と計算できる。
次に、ダイヤモンド粒子自体の恒温保持中の劣化による熱伝導率の低下であるが、これは前述のとおり、Alの融点より高温の950℃以上で生ずる。したがって、恒温保持温度の範囲は、好ましくは、343℃〜659℃(Alが溶けず、ダイヤモンド粒子が劣化しない。)であり、より好ましくは、343℃〜594℃(Alが溶けず、ダイヤモンド粒子が劣化せず、ダイとパンチの隙間にAlが侵入しない。)
なお、最低温度に変化がないのは、荷重を400MPaに設定すれば、80%の冷間加工率を受けたAl被覆層を有するダイヤモンド粒子の場合でも密着成形は可能だからである。
【0019】
上記放電プラズマ焼結は次のような過程を経て進行し、最終製品であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が得られる。すなわち図1[B]に示されるように、所定の圧力を加えた状態で、直流パルス電流を流すと、ダイヤモンド粒子表面に被覆された金属層同士の隙間で火花放電しながら焼結が進行する。火花放電の生じた場所は局所的高温状態となるため、被覆金属層の表面部分で局所的な、溶融、蒸発、凝縮が繰り返し起こり、接合部分の塑性変形とあいまって、急速に接合が進行する。すなわち、放電プラズマ焼結法の場合、内部のダイヤモンド粒子はさほど加熱されないのに、火花の飛んでいる銅被覆層表面付近だけが極端に加熱されるという、試料内部での温度分布が生じる。そのために、ダイヤモンド粒子そのものにダメージを与えずに成形することが可能となる。そして、最終的には図1[C]に示されるような、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料8が得られる。
【0020】
放電プラズマ焼結法を用いて、種々の温度、時間で成形したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料のかさ密度の変化を示せば、図3のグラフのようになる。また、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度873K(600℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図4のグラフのように、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度973K(700℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図5のグラフのように、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1073K(800℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図6のグラフのように、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1173K(900℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図7のグラフのようになる。
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度1173K、保持時間2100秒という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示せば図8のようなる。
放電プラズマ焼結法を用いて種々の条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の焼結温度による変化を示せば図9のグラフのようになり、種々の方法で作成されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、複合材料中のダイヤモンド体積分率による変化を示せば図10のグラフのようになる。更に、放電プラズマ焼結法を用いて種々の条件で作製したダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値を比較して示すと図11のグラフのようになる。更にまた、0.06Paの真空中で1時間熱処理されたダイヤモンドの熱伝導率の、熱処理温度による変化を示せば図12のグラフのようになる。
【実施例1】
【0021】
表面に、厚さ35.8μmの銅を被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を1.86g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は900℃(1173K)の
条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パル
スの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は1000Aであった。
【実施例2】
【0022】
表面に、厚さ23.8μmの銅を被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を1.71g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は900℃(1173K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パルスの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は1000Aであった。
【実施例3】
【0023】
表面に、厚さ16.1μmの銅を被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を1.56g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は900℃(1173K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パルスの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は1000Aであった。
【実施例4】
【0024】
表面に、厚さ33.7μmのAlを被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を0.68g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は500℃(773K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パル
スの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は600Aであった。
【実施例5】
【0025】
表面に、厚さ24.9μmのAlを被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を0.7g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は500℃(773K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パル
スの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は600Aであった。
【実施例6】
【0026】
表面に、厚さ17.2μmのAlを被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を0.72g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は500℃(773K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パルスの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は600Aであった。
【0027】
上記Cu被覆ダイヤモンド粒子を使用した実施例1で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は19.8Vol.%であり、実施例2で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は31.1Vol.%であった。実施例3で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、43.3Vol.%であった。これらの複合材料の室温における熱伝導率を測定した結果、前者の熱伝導率は431W/mKであり、中者の熱伝導率は504W/mKであり、後者の熱伝導率は654 W/mKであった。一方従来材の場合、吸引含浸法で製造されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料では、粒子体積分率55Vol.%で熱伝導率が420W/mKである。また、超高温・超高圧プレス法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料でも、粒子体積分率60Vol.%で熱伝導率が540W/mKであり、粒子体積分率65Vol.%で熱伝導率が573W/mKである。したがって、実施例3で製造された複合材料の方が、従来材よりも小さい粒子体積分率で高い熱伝導率を有し、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料としては優れていることがわかる。また、Al被覆ダイヤモンド粒子を使用した実施例4、5及び6で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、それぞれ、21.3Vol.%、29.8Vol.%及び41.1 Vol.%であり、それらの熱伝導率は、それぞれ、311W/mK、342W/mK及び420 W/mKであった。実施例4、5及び6によれば、これも実施例1、2及び3のCu被覆ダイヤモンド粒子を用いた場合と同様に、Maxwell-Euckenの式による計算値の80%以上の熱伝導率を有する複合材料を得ることが出来る。
このように、本発明によれば安価で品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造することが出来る。また、耐摩耗性の優れた複合材料を安価に製造できる。
【0028】
本発明の産業上の利用可能な分野としては、たとえば下記のものが挙げられる。
・電子機器における、超LSIチップ、LSIを実装した回路基盤、表示素子におけるバックライト、バッテリー等の放熱用冷却フィン。
・ PCハードディスク用冷却フィン
・ デジタルカメラ用冷却フィン
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の金属基複合材料の焼結過程を説明する模式図であり、[A]は銅を被覆したダイヤモンド粒子の拡大断面図、[B]は焼結開始前の状態を示す焼結型の断面図であり、[C]は焼結後の状態を示す焼結型の断面図である。
【図2】[A]は本発明の金属基複合材料の焼結方法を実施する放電プラズマ焼結装置の概略説明図、[B]は焼結型の縦断面図、[C]は焼結型の横断面図である。
【図3】放電プラズマ焼結法を用いて、種々の温度、時間で成形したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料のかさ密度の変化を示すグラフである。
【図4】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度873K(600℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図5】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度973K(700℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図6】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1073K(800℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図7】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1173K(900℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図8】放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度1173K、保持時間2100秒という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図9】放電プラズマ焼結法を用いて種々の条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の焼結温度による変化を示すグラフである。
【図10】種々の方法で作成されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、複合材料中のダイヤモンド体積分率による変化を示すグラフである。
【図11】ダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値の比較を示すグラフである。
【図12】0.06Paの真空中で1時間熱処理されたダイヤモンドの熱伝導率の、熱処理温度による変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 金属被覆層
2 ダイヤモンド粒子
3 金属被覆層を表面に有するダイヤモンド粒子
4 熱伝対
5 ダイ
6 下パンチ
7 上パンチ
8 ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料
10 パルス通電加圧装置
11 真空チャンバー
12 通電加圧電極
13 通電加圧電極
15 加圧装置
16 電源装置
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法及びその方法により製造された複合材料に関し、より詳細には、外周面を金属膜で被覆したダイヤモンド粒子を使用してパルス通電焼結法により製造するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSIの高集積化、高速化に伴い、超LSIを用いた小型電子機器における内部発熱の、問題はより深刻になり、温度上昇による超LSIチップ自体の誤動作が深刻な問題となりつつある。例えば、ノートパソコンの場合、筐体はA4サイズ、B5サイズさらにはより小型化が進んでいるが、同時にCPUのクロック周波数やハードディスクドライブの回転数は増加し、その結果、発熱量が増大している。デジタルカメラの分野では、CCDの画素数向上や動画撮影機能を充実させながらも消費電力の低減が図られているため、単位体積あたりの発熱密度はほぼ一定である。しかしながら、本体体積自体も小さくなる傾向にあるため、放熱面積が小さくなり、結果として温度上昇率の増加を招いている。したがって、高熱伝導材料の開発が急務となりつつある。
最近、下記特許文献1及び2に示されるように、700 W/mKの高熱伝導率を有する炭素繊維強化型Al基複合材料が開発された。ただし、700 W/mKは炭素繊維の長手方向の熱伝導率で、炭素繊維と垂直方向の熱伝導率は20〜50 W/mKと極端に低い。高熱伝導性ジョイントとしては有効だが、材料全体としての放熱特性は銀や銅を下回る。
【0003】
これに対して本発明者等は、上記の問題を解決する3次元的に均一な高熱伝導性を有する材料として、現存する材料中最も高い熱伝導率(2000 W/mK)を有するダイヤモンド粒子を、金属中で銀に次いで高い熱伝導率(385 W/mK)を有する銅(以下Cu)中に分散した、ダイヤモンド粒子分散型Cu基複合材料に注目した。この材料は過去に、ダイヤモンド粒子のプリフォームの隙間に吸引含浸法で溶融Cuを導入して作製された例(ダイヤモンド粒子の体積分率55%で420 W/mKの熱伝導率)、および、超高圧・超高温プレスを用いて、ダイヤモンド粉とCu粉の混合粉末を4〜5GPaの加圧下において1423Kで成形した例(ダイヤモンド体積分率50%〜80%で226〜742 W/mKの熱伝導率)が報告されているが、いずれもダイヤモンド粒子を多く含有する割には高熱伝導率が得られておらず、熱伝導率の実測値はMaxwell-Euckenの式による計算値の40〜60%程度しか満足していない。ここで、Maxwell-Euckenの式による計算値とは、次式
〔数式1〕
λ={2λ1+λ2+2V(λ2−λ1)}・λ1/{2λ1+λ2−V(λ2−λ1)
(但し、λは、複合材料の熱伝導率、λ1は、マトリックス金属(この場合Cu)の熱伝導率、λ2 は、分散粒子(この場合ダイヤモンド)の熱伝導率、Vは、複合材料中の分散粒子(この場合ダイヤモンド)の体積分率(Vol.%)である。)
により計算して得られた値である。
【0004】
上記のように計算値の40〜60%程度しか満足していない理由は、従来の吸引含浸成形、及び、超高圧・超高温プレス成形というプロセシング技術に起因するものと思われるためである。すなわち、ダイヤモンド粒子と銅マトリックスを密着させようとするあまり、溶融状態(温度>1356K)のCuとダイヤモンド粒子が直接接触するため、成形中にダイヤモンド粒子が劣化し、ダイヤモンド粒子そのものの熱伝導率が低下するためである。さらに、ダイヤモンド粒子とCu粉末とを別々に混合して複合化していることも問題である。すなわち、別々に混合するために、複合材料中でのダイヤモンド粒子の均一分散が得られにくくなり、複合材料としての熱伝導率の低下を招くためである。
【0005】
【特許文献1】特開2005−200676号公報
【特許文献2】特開2006−307358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そもそも複合材料の発想は、あまり熱伝導性は良くない(熱伝導率が10〜400 W/mK)が、柔らかく柔軟性を有する金属(Cu、Al、Mg等)中に、硬いが、そのマトリックス金属の熱伝導率を遥かに凌ぐとてつもなく高い熱伝導率を有する粒子(熱伝導率が1000〜2000 W/mK)を分散させて、高い熱伝導率を有し且つ加工性に富む材料を作ろうとするのが目的である。しかしながら、高い熱伝導率を有する分散粒子は、値段の高いものが多いので、粒子体積分率(複合材料中で粒子がしめる体積の割合)は低い値のほうが良いということになる。それ以外にも高い熱伝導率を有する分散粒子は、硬くて脆い物が多い。従って、入れすぎると、たとえ、CuやAlのように粘りのある材料をマトリックス金属として選んだ場合でも、複合化したとき脆くなる。出来れば、高熱伝導率と粘りを両立したい。そのためにも、少ない粒子体積分率で高熱伝導率を確保したい。ところが、従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法のように、複合化処理中に粒子が高温に長時間さらされるとダメージを受けて劣化するため、複合材料の高熱伝導率確保のため、粘りをやや犠牲にしてでも多くの粒子を埋め込まねばならない。そのことが、複合材料のコスト高や脆化を招くことになる。
【0007】
本発明は、かかる従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法により形成されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の上記のような問題点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、放電プラズマ焼結法を利用することによって、製造過程での粒子のダメージを少なくし、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、製造過程でのダイヤモンド粒子の熱伝導性の低下を少なくし、ダイヤモンド粒子とマトリックスの密着性に優れた、高熱伝導性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供する。
本発明の別の目的は、外表面に柔軟性を有しかつ熱伝導率の高い金属を被覆したダイヤモンド粒子を使用し、放電プラズマ焼結法を利用すると共に焼結時の条件、特に、恒温保持温度および恒温保持時間を制御することにより、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、上記方法により製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供することである。
【0008】
請求項1の発明によれば、所定の厚さの金属を表面に被覆したダイヤモンド粒子を所定量、1Kpaないし1.5Gpaの圧力を加えた状態で、100Pa以下の真空雰囲気下で、0.1℃/s(0.1K/s)ないし8.3℃/s(8.3K/s)の昇温速度で昇温して、343℃ないし1083℃の範囲で恒温保持するように10秒ないし7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法が提供される。
この発明によれば、ダイヤモンドの粒子体積分率が低くても熱伝導率の高いダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を短時間で製造できる。
【0009】
上記発明において、前記銅被覆層の厚さは、1μmないし5000μmであってもよく、好ましくは、5μmないし3000μm、より好ましくは、10μmないし2000μmであるとよい。
なお、銅被覆層の厚さの上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、被覆処理を長時間行えば、技術的には被覆可能な数値である。
また、上記発明において、前記ダイヤモンド粒子の直径は、1μmないし3000μmであってもよく、好ましくは、10μmないし500μm、より好ましくは20μmないし400μmであるとよい。
なお、ダイヤモンド粒子の直径の上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、購入価格が高額であることを考慮しなければ、技術的には使用可能な数値である。
更に、上記発明において、前記恒温保持する時間が、好ましくは、20秒ないしは5400秒(90分)であってもよく、より好ましくは、60秒ないし2700秒であるとよい。
更にまた、また、上記発明において、前記所定の真空雰囲気は、0ないし10Paであるとより好ましい。
また、前記昇温速度は、好ましくは、0.5℃/s(0.5K/s)ないし2.5℃/s(2.5K/s)であってもよく、より好ましくは、0.83℃/s(0.83K/s)ないし2.0℃/s(2.0K/s)であるとよい。
上記発明において、前記金属被覆層が銅である場合、前記所定の圧力が、好ましくは1KPaないし1.5GPaであり、より好ましくは、2.5kPaないし500MPaである。
上記発明において、前記金属被覆層がアルミニウムである場合、前記所定の圧力が、1KPaないし1.2GPaであり、より好ましくは、2.5kPaないし400MPaである。
また、上記発明において、前記金属被覆層が銅である場合、前記恒温保持する温度が、好ましくは、450℃以上、1083℃未満であり、より好ましくは、450℃以上、950℃以下である。
また、上記発明において、前記金属被覆層がアルミニウムである場合、前記恒温保持する温度は、343℃以上、660℃未満であり、より好ましくは、343以上、594℃以下である。
請求項8に記載の発明によれば、上記方法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料であって、ダイヤモンド体積分率が10 Vol.%で熱伝導度が234 W/mkからダイヤ体積分率が60 Vol.%で熱伝導度が805 W/mkの範囲の特性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が提供される。
ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、金属が銅の場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が18.0Vol.%で熱伝導度が417W/mkからダイヤ体積分率が50Vol.%で熱伝導度が689W/mkの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が19.8Vol.%で熱伝導度が431W/mkからダイヤ体積分率が43.3Vol.%で熱伝導度が654 W/mkの範囲の特性を有する。
また、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、金属がアルミニウムの場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が20.0Vol.%で熱伝導度が285W/mkからダイヤ体積分率が50Vol.%で熱伝導度が506W/mkの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が21.3Vol.%で熱伝導度が311W/mkからダイヤ体積分率が41.1Vol.%で熱伝導度が420W/mkの範囲の特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法について説明する。
まず、図1[A]に示すように、ダイヤモンド粒子2の外周に所定の厚さの金属層1を被覆した金属被覆ダイヤモンド粒子3を所定量を用意する。ここで、被覆する金属層1の厚さは、金属の種類或いは用いるダイヤモンド粒子2の直径により異なるが、好ましくは、1μmないし5000μmである。その理由は、厚さが上記範囲より薄いと、成形中に銅がダイヤモンド粒子間隙を埋め尽くす量に達せず、材料中にポアを残存することとなる為であり、また、上記範囲より厚すぎると、成形後の材料中のダイヤモンド粒子体積分率が極端に低下し、材料の高熱伝導率が得られないためである。金属被膜の厚さは、より好ましくは、5μmないし3000μmである。厚さは銅被覆の場合及びアルミニウム被覆の場合でも同じである。
銅層の最も好ましい厚さは、10μmないし2000μmである。その理由は、この範囲内であれば、薄すぎるときに生ずると考えられる、昇温中に低温域で荷重を付加した場合に発生しやすいダイヤモンド粒子そのものの破損を防げるからである。また、厚すぎるときに生ずると考えられる、成形中での、ダイヤモンド粒子の材料中での分散の均一性の乱れも防ぐことが出来るからである。アルミニウム層の最も好ましい被覆厚さも10μmないし2000μmであり、その理由は上記銅についての理由と同じである。なお、金属被覆の厚さはダイヤモンド粒子の直径の大きさにより変わる。
ダイヤモンド粒子の直径は、その表面への銅被覆層の厚さにより異なるが、好ましくは、1μmないし3000μmである。その理由は、ダイヤモンド粒子直径が上記範囲よりも小さいと、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を招くからであり、また上記範囲より大きすぎると、材料中でのダイヤモンド粒子同士の接触や、成形中の銅被覆層の塑性変形による、粒子間隙への充填不足により、材料中への未接合部分の残存を来たすこととなるからである。ダイヤモンド粒子のより好ましい直径は、10μmないし500μmであり、更に好ましくは、20μmないし400μmである。その理由は、この範囲にすると、高温域における短時間での劣化を防止でき、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を防止でき、また、昇温中において低温域で荷重を付加した場合の破損を阻止できるからである。更に、市場で容易に入手可能なことも理由である。
【0011】
このように形成された金属被覆ダイヤモンド粒子3を所定量、図2[B]及び[C]に示される円筒状のグラファイト(又は導電性セラミック)製のダイ5内で上下の円柱状のパンチ6及び7の間に装入する。このようにして所定量の金属被覆ダイヤモンド粒子3が装入されたダイ5及びパンチ6、7を、図2[A]に示されるように、パルス通電加圧装置10の真空チャンバー11内で一対の通電加圧電極12及び13の間に、パンチ6及び7の外端が通電加圧電極12及び13の対応する端部にそれぞれ接触するように、セットする。このパルス通電加圧装置10は、放電プラズマ焼結法又はパルス通電加圧焼結法(プラズマ活性化焼結法又は放電焼結法とも呼ばれる)の原理を応用した加圧焼結装置であるが、市販の放電プラズマ焼結装置(例えば、SPSシンテックス(株)製、DR.Sinter)を使用してもよい。セットした語、真空チャンバー11内を所定の真空度の雰囲気に保ち、パルス通電加圧接合装置10の加圧装置15により一対の通電加圧電極12、13を介して所定量の金属被覆ダイヤモンド粒子3に所定の範囲の圧力を加えた状態の下で、電源装置16から通電電極に所定の電圧、電流の直流パルス電流(直流電流と直流パルス電流の重畳電流でも良い。)を流す。
【0012】
上記所定の真空状態とは、好ましくは、100Pa以下の真空度、より好ましくは、10Pa以下の真空度を言う。その理由は、真空状態が100Paを超えると、被覆金属層の表面の急速酸化が起こり、粒子同士の接合を阻害し、成形後の強度低下を招く恐れがあるからである。また、10Pa以下の真空度を保つことにより、マトリックスとしての銅被覆層の酸素吸収による脆化をほとんど防止でき、成形体としての変形能の低下を避けることができるからである。
【0013】
所定の圧力とは、被覆する金属の種類によっても異なるが、銅を用いた場合、好ましくは1Kpaないし1.5Gpaで、アルミニウムを用いた場合、好ましくは1Kpaないし1.2Gpaである。その理由はいずれも。圧力が上記範囲より低いと成形後の材料中に未接合部分が残存することとなるからであり、また、上記範囲より高すぎるとカーボン(グラファイト)又は導電性セラミックダイの破損、もしくは、材料のパンチとダイとの間の隙間への侵入が起こるからである。アルミニウムの好ましい上限値が銅の好ましい上限値より小さいのは、アルミニウムは加工硬化したときの耐力が、銅よりも小さいためである。圧力のより好ましい値は、銅を用いた場合、2.5kPaないし500MPaであり、アルミニウムを用いた場合、2.5kPaないし400MPaである。
【0014】
更に、直流電圧は、好ましくは、0.1Vないし10.0Vであり、直流パルス電流は被覆金属の種類及び被覆金属層の厚さ並びに粒子の焼結に必要な昇温速度によって異なるが、銅或いはアルミニウムの場合、好ましくは、1Aないし30000Aである。その理由は、その電流地が上記範囲より低すぎると、放電不十分による材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、その範囲より高すぎると材料製造中の部分的溶融によるポアの材料中への残存を来たすこととなるからである。電流のより好ましい値は、50Aないし25000Aである。
【0015】
上記のように直流パルス電流を流すと、金属被覆ダイヤモンド粒子は昇温し始める。温度が所定の値になったら、その温度(恒温保持温度)を所定の時間(恒温保持時間)保持するように、通電電極を通して流すパルス電流を調節する。粒子の温度は粒子に近接して設けた温度センサによって測定しても、公知の間接的に測定する温度センサでもよい。
昇温速度は、被覆金属の種類によって異なるが、銅或いはアルミニウムを被覆してある場合、好ましくは、0.1K/sないし8.3K/sである。その理由は、その昇温速度が上記範囲より低すぎると、放電不十分により粒子表面が充分活性化されず、接合強度の低下や材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、高すぎると材料製造中の部分的溶融によるポアの材料中への残存を来たすこととなるからである。より好ましい昇温速度は、0.5K/sないし2.5K/sである。
【0016】
また、上記恒温保持温度は、被覆する金属の種類によって異なるが、好ましくは、被覆金属の融点よりも低く、80%の冷間加工を受けた被覆金属の再結晶温度より高い温度範囲、より好ましくは、被覆金属の融点の90%の温度と、ダイヤモンド粒子の熱伝導率の低下が始まる温度(950℃)の両方の温度よりも低く、80%の冷間加工を受けた被覆金属の再結晶温度より高い温度範囲である。その理由は、温度がこの範囲より低いと、成形中の被覆金属層の軟化不足により、材料中の未接合部分の残存が発生することとなるからである。また、温度がこの範囲より高いと、高温で極端に軟化した被覆金属の塑性流動によるパンチとダイの隙間への侵入、被覆金属の部分的溶融による材料中へのポアの残存等が起こるからである。
また、被覆金属が銅であり、内側の粒子がダイヤモンドである場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくは450℃以上1083℃未満であり、より好ましくは、450℃以上、975℃以下であり、最も好ましくは、450℃以上、950℃以下である。ここで、最低温度に変化が無いのは、荷重を50kg/mm2(500MPa)に設定すれば、80%の冷間加工を受けた銅被覆層の場合でも密着成形は可能だからである。
一方、被覆金属がアルミニウムであり、内側の粒子がダイヤモンドである場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくは343℃以上660℃未満であり、より好ましくは、343℃以上、594℃以下である。
接合が完了した後、通電を停止し、加圧装置による加圧を解除する。
【0017】
被覆金属として銅を用いた上記恒温保持温度の範囲を限定したより詳細な理由は以下の通りである。
ダイヤモンドの融点は3727℃であるが、銅の融点が1083℃である。但し、融点ギリギリでは使用できないので、ダイとパンチの間に侵入しないギリギリの強度を保つ温度ということで、最高温度は、銅の融点の90%を採用して975℃となる。次に、最低温度は次のようにして決まる。すなわち、銅の耐力は加工されることにより上昇する。加工なしで、23kg/mm2(230MPa)、冷間加工率20%で29kg/mm2(290MPa)、40%で35kg/mm2(350MPa)、60%で41kg/mm2(410MPa)、80%で43kg/mm2(430MPa)というふうに冷間加工率の上昇で耐力は、大きく向上する。さて、放電プラズマ焼結法による成形中には、銅被覆層の塑性変形を伴いながら焼結が進行する。したがって、あまり、低温で成形すると、ダイヤモンド粒子表面の銅被覆層同士が完全に密着しないうちに銅が硬化して途中で銅の変形がとまってしまう恐れがある。それを避けるには、銅の再結晶温度以上で成形する必要がある。冷間加工により加工硬化した金属材料はその材料の有する再結晶温度以上に加熱されることにより加工前に近い硬さに戻すことが出来る。銅の再結晶温度は、冷間加工率10%で800℃(1073K)、50%で600℃(873K)、80%で450℃(723K)である。以上から、最低温度は450℃(723K)となる。
次に、好ましい温度範囲であるが、これは、銅の高温での強度低下と、および、ダイヤモンド粒子の高温での劣化による熱伝導率の低下の2点から考察する必要がある。
まず、銅の融点は1083℃であるが、成形中にダイとパンチの隙間(直径の差において0.04mm)に銅が侵入しないために必要な高温強度は、融点の90%以下で得られる。従って、銅が、隙間に侵入しないための臨界温度Tcは次式(1)で表すことが出来る。
Tc=0.9Tm(℃) −−−−−−−−−−−−(1)
ここで、Tmは融点である。
銅の融点1083℃とTmに代入することにより、Tcは975℃と計算できる。
次に、ダイヤモンド粒子自体の恒温保持中の劣化による熱伝導率の低下であるが、ダイヤモンド粒子の熱伝導率は、所定の温度で真空中で1時間恒温保持した場合、950℃では、元々の2000W/mKであるが、1000℃では1800W/mK、1050℃では1600W/mK、1150℃では1200W/mKである。このようにダイヤモンド粒子の熱伝導率は恒温保持温度の増大により直線的に減少すると考えられるので、ダイヤモンドの熱伝導率λは、次式(2)で表すことが出来る。
λ=2000−4(T−950)(W/mK)―――――――(2)
ここで、Tは恒温保持温度である。
λ<2000という境界条件の上で、(2)式よりダイヤモンド粒子を劣化させない恒温保持温度は950℃と計算できる。
【0018】
また、マトリックスとしてアルミニウムを用いた上記温度範囲を限定したより詳細な理由は以下のとおりである。
ダイヤモンドの融点は3727℃であるが、アルミニウムの融点が660℃である。但し、融点ギリギリでは使用できないので、ダイとパンチの間に侵入しないギリギリの強度を保つ温度ということで、最高温度は、アルミニウムの融点の90%を採用して594℃となる。次に最低温度は、次のようにして決まる。すなわちAlの耐力もCu同様加工されることにより上昇する。加工なしでは20MPa程度であるが、冷間加工率80%で400MPa程度に上昇する。さて、放電プラズマ焼結法による成形中には、Al被覆層の塑性変形を伴いながら焼結が進行する。したがって、あまり、低温で成形すると、ダイヤモンド粒子表面のAl被覆層同士が完全に密着しないうちにAlが硬化して途中でAlの変形がとまってしまう恐れがある。それを避けるには、Alの再結晶温度以上で成形する必要がある。冷間加工により加工硬化した金属材料はその材料の有する再結晶温度以上に加熱されることにより加工前に近い硬さに戻すことが出来る。Alの再結晶温度は、冷間加工率80%で343℃(616K)である。以上から、最低温度は343℃(616K)となる。
次に好ましい温度範囲であるが、これは、Alの高温での強度低下、および、ダイヤモンド粒子の高温での劣化による熱伝導率の低下の2点から考察する必要がある。 まず、Alの融点は660℃であるが、成形中にダイとパンチの隙間(直径の差において0.04mm)にAlが侵入しないために必要な高温強度は、融点の90%以下で得られる。従って、Alが、隙間に侵入しないための臨界温度Tcは前述の式(1)で表すことが出来る。
Tc=0.9Tm(℃) −−−−−−−−−−−−(1)
ここで、Tmは融点である。
Alの融点660℃をTmに代入することにより、Tcは594℃と計算できる。
次に、ダイヤモンド粒子自体の恒温保持中の劣化による熱伝導率の低下であるが、これは前述のとおり、Alの融点より高温の950℃以上で生ずる。したがって、恒温保持温度の範囲は、好ましくは、343℃〜659℃(Alが溶けず、ダイヤモンド粒子が劣化しない。)であり、より好ましくは、343℃〜594℃(Alが溶けず、ダイヤモンド粒子が劣化せず、ダイとパンチの隙間にAlが侵入しない。)
なお、最低温度に変化がないのは、荷重を400MPaに設定すれば、80%の冷間加工率を受けたAl被覆層を有するダイヤモンド粒子の場合でも密着成形は可能だからである。
【0019】
上記放電プラズマ焼結は次のような過程を経て進行し、最終製品であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が得られる。すなわち図1[B]に示されるように、所定の圧力を加えた状態で、直流パルス電流を流すと、ダイヤモンド粒子表面に被覆された金属層同士の隙間で火花放電しながら焼結が進行する。火花放電の生じた場所は局所的高温状態となるため、被覆金属層の表面部分で局所的な、溶融、蒸発、凝縮が繰り返し起こり、接合部分の塑性変形とあいまって、急速に接合が進行する。すなわち、放電プラズマ焼結法の場合、内部のダイヤモンド粒子はさほど加熱されないのに、火花の飛んでいる銅被覆層表面付近だけが極端に加熱されるという、試料内部での温度分布が生じる。そのために、ダイヤモンド粒子そのものにダメージを与えずに成形することが可能となる。そして、最終的には図1[C]に示されるような、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料8が得られる。
【0020】
放電プラズマ焼結法を用いて、種々の温度、時間で成形したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料のかさ密度の変化を示せば、図3のグラフのようになる。また、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度873K(600℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図4のグラフのように、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度973K(700℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図5のグラフのように、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1073K(800℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図6のグラフのように、ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1173K(900℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示せば、図7のグラフのようになる。
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度1173K、保持時間2100秒という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示せば図8のようなる。
放電プラズマ焼結法を用いて種々の条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の焼結温度による変化を示せば図9のグラフのようになり、種々の方法で作成されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、複合材料中のダイヤモンド体積分率による変化を示せば図10のグラフのようになる。更に、放電プラズマ焼結法を用いて種々の条件で作製したダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値を比較して示すと図11のグラフのようになる。更にまた、0.06Paの真空中で1時間熱処理されたダイヤモンドの熱伝導率の、熱処理温度による変化を示せば図12のグラフのようになる。
【実施例1】
【0021】
表面に、厚さ35.8μmの銅を被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を1.86g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は900℃(1173K)の
条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パル
スの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は1000Aであった。
【実施例2】
【0022】
表面に、厚さ23.8μmの銅を被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を1.71g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は900℃(1173K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パルスの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は1000Aであった。
【実施例3】
【0023】
表面に、厚さ16.1μmの銅を被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を1.56g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は900℃(1173K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パルスの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は1000Aであった。
【実施例4】
【0024】
表面に、厚さ33.7μmのAlを被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を0.68g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は500℃(773K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パル
スの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は600Aであった。
【実施例5】
【0025】
表面に、厚さ24.9μmのAlを被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を0.7g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は500℃(773K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パル
スの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は600Aであった。
【実施例6】
【0026】
表面に、厚さ17.2μmのAlを被覆した直径100μmのダイヤモンド粒子を0.72g用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10mmm、高さ3mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされ銅被覆ダイヤモンド粒子に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は500℃(773K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50MPaとした。また、パルスの電圧は2.5Vで、昇温時における直流パルス電流は1400A、恒温保持中の電流は600Aであった。
【0027】
上記Cu被覆ダイヤモンド粒子を使用した実施例1で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は19.8Vol.%であり、実施例2で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は31.1Vol.%であった。実施例3で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、43.3Vol.%であった。これらの複合材料の室温における熱伝導率を測定した結果、前者の熱伝導率は431W/mKであり、中者の熱伝導率は504W/mKであり、後者の熱伝導率は654 W/mKであった。一方従来材の場合、吸引含浸法で製造されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料では、粒子体積分率55Vol.%で熱伝導率が420W/mKである。また、超高温・超高圧プレス法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料でも、粒子体積分率60Vol.%で熱伝導率が540W/mKであり、粒子体積分率65Vol.%で熱伝導率が573W/mKである。したがって、実施例3で製造された複合材料の方が、従来材よりも小さい粒子体積分率で高い熱伝導率を有し、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料としては優れていることがわかる。また、Al被覆ダイヤモンド粒子を使用した実施例4、5及び6で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、それぞれ、21.3Vol.%、29.8Vol.%及び41.1 Vol.%であり、それらの熱伝導率は、それぞれ、311W/mK、342W/mK及び420 W/mKであった。実施例4、5及び6によれば、これも実施例1、2及び3のCu被覆ダイヤモンド粒子を用いた場合と同様に、Maxwell-Euckenの式による計算値の80%以上の熱伝導率を有する複合材料を得ることが出来る。
このように、本発明によれば安価で品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造することが出来る。また、耐摩耗性の優れた複合材料を安価に製造できる。
【0028】
本発明の産業上の利用可能な分野としては、たとえば下記のものが挙げられる。
・電子機器における、超LSIチップ、LSIを実装した回路基盤、表示素子におけるバックライト、バッテリー等の放熱用冷却フィン。
・ PCハードディスク用冷却フィン
・ デジタルカメラ用冷却フィン
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の金属基複合材料の焼結過程を説明する模式図であり、[A]は銅を被覆したダイヤモンド粒子の拡大断面図、[B]は焼結開始前の状態を示す焼結型の断面図であり、[C]は焼結後の状態を示す焼結型の断面図である。
【図2】[A]は本発明の金属基複合材料の焼結方法を実施する放電プラズマ焼結装置の概略説明図、[B]は焼結型の縦断面図、[C]は焼結型の横断面図である。
【図3】放電プラズマ焼結法を用いて、種々の温度、時間で成形したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料のかさ密度の変化を示すグラフである。
【図4】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度873K(600℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図5】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度973K(700℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図6】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1073K(800℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図7】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料を温度1173K(900℃)で放電プラズマ焼結する際の、かさ密度及びダイ温度の時間変化を示すグラフである。
【図8】放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度1173K、保持時間2100秒という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図9】放電プラズマ焼結法を用いて種々の条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の焼結温度による変化を示すグラフである。
【図10】種々の方法で作成されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、複合材料中のダイヤモンド体積分率による変化を示すグラフである。
【図11】ダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値の比較を示すグラフである。
【図12】0.06Paの真空中で1時間熱処理されたダイヤモンドの熱伝導率の、熱処理温度による変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 金属被覆層
2 ダイヤモンド粒子
3 金属被覆層を表面に有するダイヤモンド粒子
4 熱伝対
5 ダイ
6 下パンチ
7 上パンチ
8 ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料
10 パルス通電加圧装置
11 真空チャンバー
12 通電加圧電極
13 通電加圧電極
15 加圧装置
16 電源装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、所定の厚さの金属を表面に被覆したダイヤモンド粒子を所定量、1Kpaないし1.5Gpaの圧力を加えた状態で、100Pa以下の真空雰囲気下で、0.1℃/s(0.1K/s)ないし8.3℃/s(8.3K/s)の昇温速度で昇温して、343℃ないし1083℃の範囲で恒温保持するように10秒ないし7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層の厚さが1μmないし5000μmであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記ダイヤモンド粒子の直径が1μmないし3000μmであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層がアルミニウムであり、前記所定の圧力が、1KPaないし1.2GPaであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層が銅であり、前記恒温保持する温度が450℃以上、1083℃未満であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記恒温保持する温度が450℃ないし975℃であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層がアルミニウムであり、前記恒温保持する温度が343℃以上、660℃未満であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料であって、ダイヤモンド体積分率が10 Vol.%で熱伝導度が234W/mKからダイヤモンド体積分率が60 Vol.%で熱伝導度が805W/mKの範囲の特性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料。
【請求項1】
ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、所定の厚さの金属を表面に被覆したダイヤモンド粒子を所定量、1Kpaないし1.5Gpaの圧力を加えた状態で、100Pa以下の真空雰囲気下で、0.1℃/s(0.1K/s)ないし8.3℃/s(8.3K/s)の昇温速度で昇温して、343℃ないし1083℃の範囲で恒温保持するように10秒ないし7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層の厚さが1μmないし5000μmであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記ダイヤモンド粒子の直径が1μmないし3000μmであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層がアルミニウムであり、前記所定の圧力が、1KPaないし1.2GPaであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層が銅であり、前記恒温保持する温度が450℃以上、1083℃未満であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記恒温保持する温度が450℃ないし975℃であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法において、
前記金属被覆層がアルミニウムであり、前記恒温保持する温度が343℃以上、660℃未満であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料であって、ダイヤモンド体積分率が10 Vol.%で熱伝導度が234W/mKからダイヤモンド体積分率が60 Vol.%で熱伝導度が805W/mKの範囲の特性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【公開番号】特開2008−248324(P2008−248324A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91415(P2007−91415)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月 9日に第27回日本熱物性シンポジウムにて発表
【出願人】(505301941)SPSシンテックス株式会社 (10)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【出願人】(507103994)株式会社マイクロブライト (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月 9日に第27回日本熱物性シンポジウムにて発表
【出願人】(505301941)SPSシンテックス株式会社 (10)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【出願人】(507103994)株式会社マイクロブライト (3)
【Fターム(参考)】
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